(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ヒートシンク構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20220916BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220916BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220916BHJP
H05F 3/02 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
H01L23/40 E
H05K7/20 B
H05K7/20 D
H05K7/20 F
H05K9/00 G
H05F3/02 T
H05F3/02 L
(21)【出願番号】P 2018100332
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】淺井 悠介
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-042582(JP,A)
【文献】特開2015-082282(JP,A)
【文献】特開2010-103370(JP,A)
【文献】特開2004-186294(JP,A)
【文献】特表2010-503189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H05K 7/20
H05K 9/00
H05F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料により形成されたカバーと、
前記カバーを貫通し、前記カバーの内外を通電可能とするコネクタ部と、
前記カバーの内部に位置する基板及び当該基板上に設けられた電子部品と、
前記電子部品の放熱を行うため、前記カバーの内部に位置しており導電性材料により形成されたヒートシンク部と、を備え、
前記ヒートシンク部は、
前記電子部品を伝熱可能な状態で押さえる押さえ部と、
前記押さえ部の周辺に位置し、前記基板に対向しており、
前記カバーにおける天面から離間し、かつ、前記押さえ部よりも前記基板から離間している周辺部と、
前記押さえ部と前記周辺部とを連結する立ち上げ部と、
前記カバーにおける天面に対向するものであって、前記周辺部よりも前記天面に近い位置にある突出部と、を有し、
前記周辺部は、前記立ち上げ部よりも前記コネクタ部に近い位置にあるヒートシンク構造。
【請求項2】
前記ヒートシンク部は、前記電子部品側に設けられた下ヒートシンク部と、前記天面側に設けられた上ヒートシンク部の2部品から構成されており、
前記カバーと前記ヒートシンク部との間に、絶縁性のある絶縁部が設けられている、請求項1に記載のヒートシンク構造。
【請求項3】
前記押さえ部は、前記電子部品に対向する部分に平坦面を有し、
前記平坦面の形成範囲は、前記電子部品の前記押さえ部に対向する面の範囲に対して等しい範囲、または、小さい範囲である、請求項1または2に記載のヒートシンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI等の電子部品の放熱に用いられるヒートシンク構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に配置されたLSI等の電子部品を放熱するために用いられるヒートシンク構造として、例えば、特許文献1に記載された構造が存在する。特許文献1における
図3に示されているように、電子部品は基板に取りつけられており、基板を覆うように金属製のカバーが設けられている。そして、カバーには外部から電気配線を接続して基板に通電させるためのコネクタ部が設けられている。また、カバーの内部には電子部品を放熱するためのヒートシンク部材が設けられている。ヒートシンク部材は導電性材料により形成されている。
【0003】
カバーにおけるコネクタ部周辺にカバーの外部から静電気が印加された場合、カバーの内部における空間に電磁波が放出されることがある。この放出された電磁波によりカバーの内部に静電場が生じる。これにより、ヒートシンク部材に電位差が発生する。そして、電磁波が消失した後には前記電位差が元に戻ろうとすることから、ヒートシンク部材に電流が発生する。
【0004】
この電流の発生に伴い、ヒートシンク部材の周囲に磁界が発生する(アンペアの右ねじの法則)。この発生した磁界内に基板(例えばプリント基板)上の電気配線が存在すると、電磁誘導によりこの電気配線に起電力(電圧)が発生する。つまり、この電圧は、コネクタ部周辺にカバーの外部から静電気が印加されたことに伴い、間接的に生じる電圧である。この電圧が基板上のLSI等の電子部品に加わると、当該電子部品に誤動作等の悪影響を及ぼす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、コネクタ部の周辺に静電気が印加された場合であっても、電子部品に悪影響を及ぼすことを抑制できるヒートシンク構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導電性材料により形成されたカバーと、前記カバーを貫通し、前記カバーの内外を通電可能とするコネクタ部と、前記カバーの内部に位置する基板及び当該基板上に設けられた電子部品と、前記電子部品の放熱を行うため、前記カバーの内部に位置しており導電性材料により形成されたヒートシンク部と、を備え、前記ヒートシンク部は、前記電子部品を伝熱可能な状態で押さえる押さえ部と、前記押さえ部の周辺に位置し、前記基板に対向しており、前記押さえ部よりも前記基板から離間している周辺部と、を有するヒートシンク構造である。
【0008】
この構成によれば、基板に対向した周辺部が、押さえ部よりも基板から離間している。このため、周辺部にカバーの内部に静電場が生じることで電流が発生した結果、周辺部の周囲に磁界が発生しても、基板上の電気配線に電磁誘導による電流が発生しにくい。
【0009】
そして、前記カバーと前記ヒートシンク部との間に、絶縁性のある絶縁部が設けられていることもできる。
【0010】
この構成によれば、カバーに静電気が印加された場合でも、静電気が最短経路を通ろうとしてヒートシンク部に流れることが、絶縁部によって抑制される。
【0011】
そして、前記押さえ部は、前記電子部品に対向する部分に平坦面を有し、前記平坦面の形成範囲は、前記電子部品の前記押さえ部に対向する面の範囲に対して等しい範囲、または、小さい範囲とできる。
【0012】
この構成によれば、カバーの内部に静電場が生じることへの対策を行いつつ、ヒートシンク部に良好な放熱性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、周辺部の周囲に磁界が発生しても、基板上の電気配線に電磁誘導による電流が発生しにくい。よって、コネクタ部の周辺に静電気が印加された場合であっても、電子部品に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヒートシンク構造を示す縦断面図である。
【
図2】前記ヒートシンク構造の作用を説明する要部拡大図(その1)である。
【
図3】前記ヒートシンク構造の作用を説明する要部拡大図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。なお、以下の説明における上下左右は、
図1に示した状態における方向に対応している。ただし、本発明の実施に当たり、方向が以下に説明する方向だけに限定されるものではない。
【0016】
本実施形態のヒートシンク構造1は、一例として、産業機械等に搭載されるコントローラに内蔵される。このようなコントローラが情報処理のために有するCPU6は、稼働時に発熱するので、放熱のためにこのヒートシンク構造1が用いられる。また、例えば産業機械に搭載されるコントローラは小型化が要請されていることが通常であるから、小さい内部スペースに必要な内部構造をレイアウトする必要があるとの制約があるとの事情がある。
【0017】
本実施形態のヒートシンク構造1は、導電性材料により形成されたカバー2を備える。カバー2は例えば、種々の金属材料(例えばアルムニウム合金)により形成することができる。このカバー2は、図示下面側が開放されており、例えば平板状とされた支持板3にねじ止め等により取り付けることができる。本実施形態におけるカバー2は、天面21が沿うように位置する平面方向(図示左右方向)の寸法に対して、側面22が沿うように位置する厚さ方向(図示上下方向)の寸法が小さく形成されている。このような形状であるから、特に対策を講じなかったとすると、カバー2の天面21に静電気が印加された場合、この静電気は最短経路を通ろうとして、カバー2の内部を通り図示下方へと流れることになる。このことへの対策は後述する。なお、天面21及び側面22に内外連通した開口部を設けることもできる。
【0018】
カバー2には、当該カバー2を貫通して内外を通電可能とするコネクタ部4が設けられている。本実施形態では側面22に設けられている。コネクタ部4にはプラグを接続することで、カバー2の外部に対して電気配線を接続することができる。また、図示はしていないが、カバー2の内部に配置された種々の部品(基板5、CPU6を含む)にコネクタ部4から延びる電気配線が接続されている。
【0019】
カバー2に囲まれた内部の空間には基板5(具体的にはプリント基板)が設けられている。この基板5上に、LSIからなる電子部品であるCPU6が設けられている。基板5は支持板3に取り付けられた基板支持部31の上に乗せられており、カバー2の内部に浮くように位置している。CPU6はカバー2の天面21に対向して設けられている。
【0020】
また、カバー2の内部には、CPU6から生じる熱を放熱するためのヒートシンク部7が設けられている。このヒートシンク部7は導電性材料により形成されており、下ヒートシンク部71と上ヒートシンク部72の2部品から構成されている。上下ヒートシンク部71,72の各々は、例えば平板状の金属板(アルミニウム合金製の板等)が折り曲げられて形成される。ただし、折り曲げに限定されず、種々の方法で形成できる。
【0021】
下ヒートシンク部71は、基板5から図示上方に立ち上げられたスペーサ32に取り付けられている。下ヒートシンク部71は、押さえ部711と、押さえ部711の周辺に位置する周辺部712と、押さえ部711と周辺部712とを連結する立ち上げ部713と、を有する。周辺部712は立ち上げ部713を介して押さえ部711に隣接している。
【0022】
押さえ部711は、CPU6を伝熱可能な状態で押さえる部分である。本実施形態では、CPU6の上面に下放熱シート8が乗せられており、この下放熱シート8の図示上面に押さえ部711が当接している。このため、CPU6に生じた熱は下放熱シート8を介して、接触伝熱により押さえ部711に伝達される。
【0023】
この押さえ部711は、CPU6に対して対向する面(図示下面)に平坦面714を有し、平坦面714よりも周辺部712寄りの位置には湾曲部715が形成されている。この湾曲部715に立ち上げ部713が接続されている。このように平坦面714の全面が(下放熱シート8を介して)CPU6の図示上面を押さえることから、CPU6の熱を逃がすための伝熱面積が有効に確保されている。
【0024】
また、この平坦面714の形成範囲は、CPU6の押さえ部711に対向する面(図示上面)の範囲に対して等しい範囲、または、小さい範囲である。このような範囲で平坦部を形成することにより、カバー2の内部に静電場が生じることへの対策(後述)を行いつつ、ヒートシンク部7に良好な放熱性を持たせることができる。
【0025】
周辺部712は、基板5に対向しており、押さえ部711よりも基板5から離間している部分である。このため、押さえ部711と周辺部712との間には段差71aが存在する。離間に係る距離に関しては、周辺部712に、仮にカバー2の内部に生じた静電場によって生じた電流から磁界が発生し、この磁界により基板5上の電気配線に生じる起電力(電圧)が、CPU6に悪影響を及ぼさない程度となるような距離を、アンペアの右ねじの法則における計算式等を用いることによって決定することができる。
【0026】
立ち上げ部713は、本実施形態の場合、周辺部712の基板5からの離間を確保すべく、押さえ部711に対して垂直に立ち上げられている。
【0027】
このような下ヒートシンク部71の形状により、周辺部712を、押さえ部711よりも基板5から離間させることができる。このため
図2に示すように、カバー2の側面22のうちコネクタ部4の周辺に静電気Eが印加されたことにより、カバー2の内部に静電場Faが生じることで下ヒートシンク部71における周辺部712に、電流Iaが発生した結果、周辺部712の周囲に磁界Fbが発生しても、
図2で矢印にて示したように、この周辺部712の周囲に生じた磁界Fbは基板5から離れた位置にあることから、基板5に掛りにくい。更に、立ち上げ部713の周囲に生じた磁界Fbも、水平方向において回ることから、立ち上げ部713よりも図示下方に位置する基板5に掛りにくい。このため、基板5上の電気配線に電磁誘導による起電力(電圧)が発生しにくい。よって、コネクタ部4の周辺に静電気Eが印加された場合であっても、電子部品であるCPU6に、前記起電力(電圧)による悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0028】
上ヒートシンク部72は、下ヒートシンク部71に重ねられる形でスペーサに取り付けられている。この上ヒートシンク部72は、図示上方に立ち上げられた突出部721を有しており、この突出部721がカバー2における天面21に対し対向している。そして、上ヒートシンク部72とカバー2との間には、上放熱シート9が介在している。上放熱シート9は上ヒートシンク部72とカバー2とに当接している。このため、上ヒートシンクの熱を、上放熱シート9を経由してカバー2に逃がすことができる。
【0029】
また、特にこの上放熱シート9は絶縁性を有していることで絶縁部として機能する。このため、上放熱シート9を熱が通ることはできるが、電流が通ることは抑制される。よって
図3に示すように、カバー2に静電気Eが印加された場合であっても、静電気Eがカバー2の内部に位置するヒートシンク部7に流れることが、絶縁部である上放熱シート9によって抑制される。印加された静電気Eは電流Ibとして、カバー2の天面21及び側面22を流れてアースされた部分まで流れることになる。このため、カバー2の内部に流れ込んだ静電気が、カバー2の内部において磁界を生じさせ、この磁界によって基板5に起電力(電圧)が生じてCPU6が誤作動することを防止できる。
【0030】
ここで、静電気は印加された部分からアースされた部分との間で最短経路を通るから、前記絶縁部はその最短経路に設けることが効果的である。本実施形態のカバー2は、水平方向寸法よりも厚み方向寸法の方が小さい形状を有している。このため、厚み方向に対して横切るように絶縁部としての上放熱シート9を設けることにより、静電気がカバー2の内部を通り抜けることを防止できる。
【0031】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、前記実施形態における電子部品は、LSIからなるCPU6であったが、熱の対策が必要な程度に発熱する電子部品であればよく、電子部品の種類は限定されない。また、前記実施形態のCPU6は図示のように平たい形状であって、CPU6の押さえ部711に対向する面が略平面とされていたが、電子部品の形状は限定されない。
【0033】
また、前記実施形態では、下ヒートシンク部71と上ヒートシンク部72とは別個の部品であった。しかし、これに限られず、下ヒートシンク部71と上ヒートシンク部72とを一体の部品として形成し、当該部品中で下方に向かうように折り曲げられた部分を下ヒートシンク部71とし、上方に向かうように折り曲げられた部分を上ヒートシンク部72とすることもできる。
【0034】
また、前記実施形態では、立ち上げ部713は押さえ部711及び周辺部712に対して垂直に屈曲した形状であった。しかしこれに限定されず、押さえ部711及び周辺部712に対して斜め上方に延びる形状であってもよい。
【0035】
また、前記実施形態における上下ヒートシンク部71,72の各々は、1枚の帯状の板が水平方向における一方向(
図1における左右方向)において折り曲げられて形成されていた。しかしこれに限らず、プレス加工等により、水平方向における一方向と前記一方向に対して直交する方向の両方に折り曲げがなされてもよい。
【0036】
更に、下ヒートシンク部71について、例えば折り曲げ以外の方法によって形成した場合、湾曲部715を形成しないこともできる。
【0037】
また、前記実施形態では、上下ヒートシンク部71,72の各々は1枚の板から形成された一体の部品であった。しかし、例えば下ヒートシンク部71において押さえ部711と周辺部712及び立ち上げ部713とを別体で形成することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 ヒートシンク構造
2 カバー
4 コネクタ部
5 基板
6 電子部品、CPU
7 ヒートシンク部
711 押さえ部
714 平坦面
712 周辺部
9 絶縁部、上放熱シート