(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】検査対象物の状態評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20220916BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220916BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N21/84 D
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2017209826
(22)【出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-10-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】中村 保則
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205901(JP,A)
【文献】特開2006-132973(JP,A)
【文献】特開2014-134471(JP,A)
【文献】特開2011-180007(JP,A)
【文献】米国特許第04881405(US,A)
【文献】特開2016-223935(JP,A)
【文献】特開2013-242186(JP,A)
【文献】特開2011-123006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の状態の検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、
前記検査対象物の状態を検出する検出部と、
前記検出部に一体的に設けられた指標部と、
前記指標部と、前記検査対象物の表面の互いに離れた少なくとも2 箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記画像情報の歪みを補正し、補正済み画像情報を生成する画像補正部と、
前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された前記画像情報に対応する前記補正済み画像情報に基づいて、前記複数の基準点の位置に対する前記指標部の相対的な位置を示す位置情報を前記検査対象物の検出箇所の位置情報として生成する位置情報生成部と、
前記補正済み画像情報における
前記指標部の位置と、前記検出部における前記検査対象物の検出箇所の位置との位置関係に基づいて前記位置情報を補正する位置情報補正部と、
前記個別情報と補正された前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、
を備え
、
前記基準点の位置情報は既知であり、
前記位置情報補正部は、前記検出部の検出箇所をいずれかの前記基準点に合わせた状態における前記指標部の前記補正済み画像情報上の位置と、前記基準点の位置情報とに基づいて前記位置関係を算出する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項2】
前記検査対象物評価情報生成部は、前記個別情報と前記位置情報とを関連付けたデータファイルとして前記検査対象物評価情報を出力する、
ことを特徴とする請求項
1記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記検査対象物周辺の物理量を検出し、
前記撮像部は、前記検出部により前記物理量の変化が検出された際に撮像を行い、前記画像情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる前記物理量の変化を検出する、
ことを特徴とする請求項
3記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項5】
前記補正済み画像を表示するとともに、前記補正済み画像上の所定箇所を指定し、当該所定箇所に対応する前記検査対象物の箇所の状態を入力可能な補助入力端末を更に備え、
前記検査対象物評価情報生成部は、前記補助入力端末に入力された前記検査対象物の状態を前記個別情報として前記位置情報と関連付けて前記検査対象物評価情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記検査対象物の状態を入力可能な状態入力部を更に備え、
前記検査対象物評価情報生成部は、前記検出部が前記検査対象物の所定箇所にある際に前記状態入力部が操作された場合、当該状態入力部への操作内容に対応する前記検査対象物の状態を前記個別情報として前記位置情報と関連付けて前記検査対象物評価情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項7】
画像を表示する表示部と、
前記補正済み画像情報に基づいて前記検査対象物の表面の画像を前記表示部に表示させると共に、前記検査対象物評価情報に含まれる前記位置情報によって特定される前記検査対象物の表面の画像上の箇所に、前記検査対象物評価情報に含まれ前記位置情報に関連付けられた前記個別情報を表示させる表示制御部とを備える、
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項8】
前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え、
前記個別情報は、前記個別評価情報を含む、
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項9】
前記検査対象物は、建物躯体および前記建物躯体に接着された外装材であり、
前記評価部は、前記外装材の損傷の有無を評価する、
ことを特徴とする請求項
8記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項10】
前記建物躯体には所定の単位面積を有する単位外装材が複数接着されており、
前記検査対象物評価情報生成部は、前記損傷があると判断された検出箇所を含む前記単位外装材の損傷枚数および当該枚数に前記単位面積を掛け合せた損傷面積を前記検査対象物評価情報として生成する、
ことを特徴とする請求項
9記載の検査対象物の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の状態の検出結果またはその評価結果と検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の状態を示す情報をその検査対象物の検出箇所の位置情報と関連付けて評価する方法が種々提案されている。
特許文献1には、撮像手段によって構造物の外壁を撮像して得た撮像画像上に透明なレイヤーである描画シートを透視可能に重ねてモニター画面に表示し、描画シート上に、撮像画像に基づいて実測された各種欠陥の検査結果、欠陥内容を描画する技術が提案されている。この技術では、撮像手段は、撮像手段から構造物の任意の1点までの距離を検出する距離計と、撮像手段から任意の1点までの水平角および傾斜角を検出する角度計を備えている。
そして、距離計および角度計で得られた距離および角度を用いて2つの基準点相互間の距離を求め、モニター画面上の1画素に対応する長さを画素レートとして算出し、この画素レートによりモニター画面上の表示上の距離と実際の距離とを相互に関連付けている。
また、特許文献2は、建物外面部の状態を検出する検出部の検出結果に基づいて建物外面部の状態を評価して個別評価情報を生成し、また、検出部に一体的に設けられた指標部と、建物躯体の外面箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成し、建物外面部の状態が検出された時刻に対応して撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点の位置に対する指標部、すなわち検出部の相対的な位置を示す位置情報を検査対象物の検出箇所の位置情報として生成し、個別評価情報と位置情報とを関連付けた建物評価情報を生成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4088448号公報
【文献】特開2016-205901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献1では、画素レートを得るために距離計および角度計を用いる必要がある。そのため、検査対象物の状態を評価する装置の構成が複雑なものとなるとともに、操作に多大な手間がかかるものとなることから、装置の構成の簡素化および評価作業の効率化を図る上で改善の余地がある。
また、文献1では描画シート上に欠陥の検査結果等を描画することにより欠陥箇所が視認可能となるものの、検査結果に関するデータの汎用性を向上させる上で改善の余地がある。
また、上記文献2では、撮像画像に含まれる歪みや、撮像画像中の検出部の位置と実際の位置とのずれ等を考慮しておらず、画像上の位置と評価結果との整合性を向上させる上で改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態と検査対象物の検出箇所の位置情報とを関連付けた評価の精度および効率の向上を図る上で有利な検査対象物の状態評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、検査対象物の状態の検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、前記検査対象物の状態を検出する検出部と、前記検出部に一体的に設けられた指標部と、前記指標部と、前記検査対象物の表面の互いに離れた少なくとも2 箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記画像情報の歪みを補正し、補正済み画像情報を生成する画像補正部と、前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された前記画像情報に対応する前記補正済み画像情報に基づいて、前記複数の基準点の位置に対する前記指標部の相対的な位置を示す位置情報を前記検査対象物の検出箇所の位置情報として生成する位置情報生成部と、前記補正済み画像情報における前記指標部の位置と、前記検出部における前記検査対象物の検出箇所の位置との位置関係に基づいて前記位置情報を補正する位置情報補正部と、前記個別情報と補正された前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、を備え、前記基準点の位置情報は既知であり、前記位置情報補正部は、前記検出部の検出箇所をいずれかの前記基準点に合わせた状態における前記指標部の前記画像情報上の位置と、前記基準点の位置情報とに基づいて前記位置関係を算出することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記検査対象物評価情報生成部は、前記個別情報と前記位置情報とを関連付けたデータファイルとして前記検査対象物評価情報を出力する、ことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記検出部は、前記検査対象物周辺の物理量の変化を検出し、前記撮像部は、前記検出部により前記物理量の変化が検出された際に撮像を行い、前記画像情報を生成する、ことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる前記物理量の変化を検出する、ことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記補正済み画像を表示するとともに、前記補正済み画像上の所定箇所を指定し、当該所定箇所に対応する前記検査対象物の箇所の状態を入力可能な補助入力端末を更に備え、前記検査対象物評価情報生成部は、前記補助入力端末に入力された前記検査対象物の状態を前記個別情報として前記位置情報と関連付けて前記検査対象物評価情報を生成する、ことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、前記検出部は、前記検査対象物の状態を入力可能な状態入力部を更に備え、前記検査対象物評価情報生成部は、前記検出部が前記検査対象物の所定箇所にある際に前記状態入力部が操作された場合、当該状態入力部への操作内容に対応する前記検査対象物の状態を前記個別情報として前記位置情報と関連付けて前記検査対象物評価情報を生成する、ことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、画像を表示する表示部と、前記補正済み画像情報に基づいて前記検査対象物の表面の画像を前記表示部に表示させると共に、前記検査対象物評価情報に含まれる前記位置情報によって特定される前記検査対象物の表面の画像上の箇所に、前記検査対象物評価情報に含まれ前記位置情報に関連付けられた前記個別情報を表示させる表示制御部とを備える、ことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え、前記個別情報は、前記個別評価情報を含む、ことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、前記検査対象物は、建物躯体および前記建物躯体に接着された外装材であり、前記評価部は、前記外装材の損傷の有無を評価する、ことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、前記建物躯体には所定の単位面積を有する単位外装材が複数接着されており、前記検査対象物評価情報生成部は、前記損傷があると判断された検出箇所を含む前記単位外装材の損傷枚数および当該枚数に前記単位面積を掛け合せた損傷面積を前記検査対象物評価情報として生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、検出部による検査対象物の状態の検出結果またはその検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と、検査対象物の状態の検出がなされた時刻に対応して撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点の位置に対する検出部の相対的な位置を示す位置情報を検査対象物の検出箇所の位置情報として生成する。そして、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成するようにした。
したがって、個別情報と位置情報とを関連付けた評価を短時間で的確に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、画像情報および位置情報の補正を行うので、撮像画像に含まれる歪みや光学的誤差を補正してより精度よく検査対象物の検査を行う上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、特に撮像方向に対する検出部の厚みが大きく、指標部と検出箇所との撮像方向における距離が大きくなる場合に、誤差を軽減する上で有利である。
請求項3記載の発明によれば、検査対象物評価情報をデータファイルとして出力するので、検査対象物評価情報の汎用性を高めて検査の有用性を向上させる上で有利となる。
請求項4および5記載の発明によれば、撮像部は検出部により検査対象物周辺の物理量の変化が検出された際に撮像を行うので、一定間隔で常時撮像を行う場合と比較して、撮像部の電力消費量を軽減するとともに、個別情報に対応する画像を特定しやすくする上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、検査対象物の画像上にその状態を入力可能な補助入力端末を備えるので、検査作業をより効率的に行う上で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、検出部に検査対象物の状態を入力可能な状態入力部を設けたので、検査作業をより効率的に行う上で有利となる。
請求項8記載の発明によれば、表示部に検査対象物の表面の画像を表示させ、その上に個別情報を重畳して表示するので、検査対象物の状態を効率よく評価する上で有利となる。
請求項9記載の発明によれば、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて検査対象物の状態を的確に評価する上で有利となる。
請求項10記載の発明によれば、建物躯体に接着された外装材の損傷の有無を評価するので、外装材の損傷の有無を効率的よく評価する上で有利となる。
請求項11記載の発明によれば、損傷がある外装材の枚数および損傷面積を検査対象物評価情報として生成するので、検査対象物の損傷状態をより直感的に把握可能とする上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態において撮像部により建物外面を撮像する場合の説明図である。
【
図3】検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
【
図4】足場を利用した検査対象物に対する検出作業の説明図である。
【
図5】ゴンドラを利用した検査対象物に対する検出作業の説明図である。
【
図6】第2の実施の形態において撮像部の撮像範囲を変更させて建物外面を撮像する場合の説明図である。
【
図7】歪みを含む画像情報を模式的に示す説明図である。
【
図8】指標部の位置と、検出部の検出箇所の位置とのずれを模式的に示す説明図である。
【
図9】補助入力端末の表示画面を模式的に示す説明図である。
【
図10】位置情報に基づく評価情報の生成方法を模式的に示す説明図である。
【
図11】位置情報に基づく評価情報の生成方法を模式的に示す説明図である。
【
図12】位置情報に基づく評価情報の生成方法を模式的に示す説明図である。
【
図13】検査対象物評価情報が記録されたCSVファイルの出力例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
なお、本実施の形態では、状態評価装置10が検査対象物の状態として、建物躯体2に接着されたタイルなどの外装材4の状態を検出して評価するものである場合について説明するが、状態評価装置10が検出する検査対象物の状態は、外装材4の状態に限定されるものではなく、建物外面部のひび割れ、汚損、空洞、温度など従来公知の様々な状態を検出の対象とすることができる。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
【0009】
状態評価装置10は、外装材4の状態の評価結果と建物外面部の位置(検査対象物の検出箇所の位置)を示す位置情報とを関連付けて評価するものである。
状態評価装置10は、検出部12と、評価部14と、指標部16と、撮像部17と、画像補正部18と、位置情報生成部20と、位置情報補正部21と、検査対象物評価情報生成部22と、記憶部24と、表示部26と、表示制御部28とを含んで構成されている。
【0010】
検出部12は、検査対象物周辺の物理量およびその変化、すなわち建物外面部の状態を検出するものであり、言い換えると、建物外面部の状態を示す個別測定情報を生成するものである。なお、本実施の形態における「個別」とは、一測定箇所(または単位測定時)の、という意味である。
本実施の形態では、検出部12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材4の表面に当て付けて使用される。
また、本実施の形態では、検出部12は、検査対象物を打撃した際に生じる物理量の変化、特に外装材4を打撃した際に発生する打音および振動を個別測定情報として検出する。なお、検査対象物を打撃した際に生じる物理量の変化とは、上述した打音や振動の他、打撃力などが含まれる。
また、状態評価装置10が評価する対象が建物外面部のひび割れや汚損であれば、検出部12は例えば建物外面部を撮像してひび割れや汚損(検査対象物の色の変化)を検出する撮像装置で構成されることになる。また、状態評価装置10が評価する対象が建物外面部の温度であれば、検出部12は例えば建物外面部の温度を検出する温度計で構成されることになる。要するに、検出部12は状態評価装置10が評価する対象に対応したものが採用される。
また、本実施の形態では、検出部12により打音および振動が検出される毎に位置検出トリガ信号が検出部12から位置情報生成部20に供給されるように構成されているとともに、撮像部17に撮像を指示する撮像トリガ信号が供給されるように構成されている。
【0011】
なお、検出部12を補助する補助入力端末を設けてもよい。補助入力端末は、モニターに後述する補正済み画像を表示するとともに、補正済み画像上の所定箇所を指定し、当該所定箇所に対応する検出対象物の箇所の状態を入力可能な端末である。
本実施の形態では、後述するコンピュータ30を補助入力端末として用いるものとする。なお、補助入力端末をコンピュータ30と別体で設け、コンピュータ30と無線通信等で通信可能としてもよい。
補助入力端末(コンピュータ30)は、例えば、作業員が携帯可能なタブレット端末で構成されており、少なくともモニターおよびモニターを利用したタッチパネル機能を備える。モニターには、後述する撮像部17で撮像し、画像補正部18で補正した検査対象物の画像を表示する。
【0012】
図9は、補助入力端末の表示画面を模式的に示す説明図である。
補助入力端末であるコンピュータ30のモニター31には、検査対象物である外装材4の画像PCが表示されている。モニター31における画像の表示範囲は任意に変更可能であり、例えば現在の検出箇所の周辺を拡大表示してもよい。
画像PCの下方には、検査対象物の状態を指定する状態指定ボタンC1~C4が表示されている。ボタンC1はひび、ボタンC2は欠損・剥落、ボタンC3は汚れ、ボタンC4はその他となっている。
作業者が、検出部12を用いた作業中に目視でこれらひびや欠損、汚れ等を発見した場合、状態に対応するボタンを押下し、当該ボタンが示す状態の選択状態とする。
図9の例では、ひびに対応するボタンC1が選択されている。この状態で、ひびが生じている位置に対応する画像PC上の位置にタッチすると、当該箇所にひびを示す表示E1が表示されるとともに、この位置にひびが生じていることを示す個別情報が記録される。すなわち、後述する検査対象物評価情報生成部22は、補助入力端末に入力された検出対象物の状態を個別情報として位置情報と関連付けて検査対象物評価情報を生成する。
なお、
図9中符号E2は欠損・剥落を示すアイコン、符号E3は汚れを示すアイコンである。また、ひびや汚れについては、その形状をタッチペン等で書き込むようにしてもよい。
【0013】
また、例えば検出部12に検査対象物の状態を入力可能な状態入力部(操作ボタン等)を設けてもよい。この状態入力部は、上記状態指定ボタンC1~C4と同様、検査対象物の状態を指定するものである。
作業者が目視でこれらひびや欠損、汚れ等を発見した場合、当該ひびや欠損、汚れ等の位置に検出部12の検出箇所を合わせた状態で該当する状態入力部を操作する。これにより、当該位置にひび等が生じていることを示す個別情報が記録される。また、撮像部17に撮像を指示する撮像トリガ信号が供給され、画像情報が生成される。すなわち、検査対象物評価情報生成部22は、検出部12が検出対象物の所定箇所にある際に状態入力部が操作された場合、当該状態入力部への操作内容に対応する検出対象物の状態を個別情報として位置情報と関連付けて検査対象物評価情報を生成する。
補助入力装置や状態入力部を用いることにより、例えば検出部12としてカメラを用いて検査対象範囲を撮像し、画像解析によりひびや欠損、汚れ等を検出するのと比較して、検査の効率を向上させることができる。
【0014】
図1の説明に戻り、評価部14は、検出部12によって検出された、建物外面部の状態を示す個別測定情報に基づいて建物外面部の状態を評価して個別評価情報を生成するものである。
本実施の形態のように、建物躯体2に外装材4が接着されている建物外面部の場合、評価部14は、各検出箇所における浮き(建物躯体2と外装材4との剥離)やひび、欠損・剥落、汚れ等の有無を評価する。以下、上記のような好ましくない外装材4の状態を「損傷」という。
以下の説明では、主に建物躯体2に接着された外装材4の浮きを例にして説明する。なお、外装材の剥離によって形成された外装材背面側の空洞の深さの大小に基づいて、浮きの程度を評価するようにしてもよい。具体的には、空洞が外装材4の背面から距離a以上形成されている場合には「浮き有」、距離a未満b(<a)以上の場合には「軽度浮き有」、距離b未満0以上の場合には「浮きなし」のように評価してもよい。
評価部14による個別評価情報の生成は、検出部12で検出された打音および振動の検出信号の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいてなされ、このような個別評価情報の生成の手法として従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0015】
指標部16は、
図2に示すように、検出部12に一体的に設けられ、本実施の形態では、検出部12の筐体1202の外面に設けられている。
指標部16は、撮像部17によって撮像可能であればよく、例えば、記号やマークが付されたシールで指標部16を構成してもよく、点灯あるいは点滅する光源で指標部16を構成してもよい。
【0016】
撮像部17は、指標部16と、検査対象物の表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成するものである。
撮像部17として、CCDカメラや赤外線カメラなどの静止画あるいは動画を撮像可能な従来公知の様々な撮像装置が使用可能である。
本実施の形態では、撮像部17は、検出部12により検査対象物の物理量の変化が検出された際に撮像を行い、画像情報を生成するものとする。上述のように、本実施の形態では、検出部12は検査対象物を打撃した際に生じる物理量の変化、すなわち打音および振動を検出するものであり、撮影部17は、検出部12により打音または振動が検出された際に撮像を行い、画像情報を生成するものとする。すなわち、上述した検出部12からの撮像トリガ信号に合わせて画像の撮像を行うものとする。
また、撮像部17は、常時一定の時間間隔(例えば0.1秒単位)で静止画を撮像したり、または動画を撮像するものであってもよい。また、例えば作業者の手により任意のタイミングで撮像を行ってもよい。
【0017】
ここで、基準点について説明する。
図2に示すように、建物躯体2に複数の外装材4としてのタイルが接着剤により接着されている。
図中、符号Aは撮像部17によって撮像可能な撮像範囲を示している。
本例では、外装材4の表面に4つの基準点P1、P2、P3、P4が設けられている。
各基準点P1、P2、P3、P4は、撮像部17によって撮像可能であればよく、例えば、記号やマークが付されたシールを外装材4の表面に設けて各基準点を構成してもよく、点灯あるいは点滅する光源を外装材4の表面に取着して各基準点を構成してもよい。
そして、各基準点P1、P2、P3、P4は、それらの距離(座標位置)が既知となっている。
例えば、基準点P1を原点(0,0)とした、この原点を通る互いに直交するX軸、Y軸を設定したときに、他の基準点P2、P3、P4の位置はX座標、Y座標の値がmm単位で既知となっている。
ここで、指標部16の位置は、各基準点P1、P2、P3、P4のうち少なくとも2つの基準点を基にして三角測量の方法によって特定することができる。
【0018】
画像補正部18は、撮像部17で撮像された画像情報の歪みを補正し、補正済み画像情報を生成する。
図7は、歪みを含む画像情報を模式的に示す説明図である。
撮像部17の撮像画像は、レンズ特性等の影響により通常多少の歪みが含まれている。例えば
図7Aに示す補正前画像は、下辺に比べて上辺が短い台形形状となっている。画像補正部18は、このような補正前画像を例えば台形補正を用いて補正する。すなわち、各基準点P1、P2、P3、P4は、それらの距離(座標位置)が既知となっているため、画像上の基準点の位置が既知の座標位置と一致するように補正を行う。
この結果、
図7Bに示すような実際の外装材の形状に近い(歪みが少ない)画像へと補正を行うことができる。
【0019】
位置情報生成部20は、検査対象物の状態の検出がなされた時刻、本実施の形態では検出部12により外装材4を打撃した際に発生する打音および振動が検出された時刻に対応して撮像部17で撮像された画像情報(補正済み画像情報)に基づいて、複数の基準点の位置に対する指標部16の相対的な位置、すなわち検出部12の位置を示す位置情報を生成するものである。言い換えると、検出部12の位置を示す位置情報を検査対象物の検出箇所の位置情報として生成するものである。
なお、検出部12により外装材4を打撃した際に発生する打音および振動が検出された時刻に対応して撮像部17で撮像された画像情報とは、検出部12により打音および振動が検出された時刻と同時刻あるいはほぼ同時刻に撮像部17で撮像された画像情報であればよい。
なお、撮像部17で常時一定の時間間隔ごとに静止画を撮像する場合、位置情報生成部20は、撮像部17から時間経過と共に順次供給され、画像補正部18で補正された補正済み画像情報のうち、検出部12から供給されるトリガ信号に対応する画像情報を選択し、この選択された画像情報に基づいて複数の基準点の位置に対する指標部16の相対的な位置を示す位置情報を生成する。
【0020】
上述したように、撮像部17によって撮像された画像情報上において画素単位で各基準点P1、P2、P3、P4の位置と、指標部16の位置とが特定できるので、これらの位置に基づいて三角測量の方法によって複数の基準点の位置に対する指標部16の相対的な位置を示す位置情報を生成することが可能である。この位置情報は、前述したように例えば、mm単位のX座標、Y座標の値で算出することができる。
【0021】
なお、撮像部17が
図4のように三脚58等に固定されており、撮像時刻が隣接する画像間で撮像範囲に変化がない場合、すべての画像で上記三角測量法に基づいて位置情報を生成するのではなく、前の画像と今回の画像とにおける指標部16の位置の差分を用いて位置情報を生成してもよい。これにより、位置情報生成部20の処理負荷を軽減することができる。
一方で、撮像部17が
図5のようにゴンドラ56等に設置されており、撮像時刻が隣接する画像間で撮像範囲に変化(ぶれ)が生じる可能性がある場合、すべての画像について上記三角測量法に基づいて位置情報を生成するのが好ましい。また、このようなぶれが生じる可能性がある場合には、撮像部17の撮像範囲内に常時基準点P1、P2、P3、P4が入るように、画角を広く設定しておくのが好ましい。
【0022】
位置情報補正部21は、指標部16の位置と、検出部12における検査対象物の検出箇所の位置と位置関係に基づいて、位置情報生成部20で生成された位置情報を補正する。
図8は、指標部16の位置と、検出部12の検出箇所の位置とのずれを模式的に示す説明図である。
図8は、外装材4の位置D0(検出箇所)の状態を検出部12で検出する様子を側方側から見た図である。なお、実際は外装材4に検出部12を接触させて状態の検出を行うが、図の視認性を考慮して外装材4と検出部12とを離して図示している。
検出部12による状態検出を行う場合、検出箇所となる外装材4の位置D0と、検出部12の検出位置PXとを接触させる。また、検出部12に一体的に設けられた指標部16は、外装材4に対して鉛直方向から見てその中心点DYが検出部12の検出位置PXと一致するように配置されている。
撮像部17が、指標部16に対して鉛直方向Nαに位置する場合、指標部16の中心点DYを外装材4に投影した点は検出箇所D0と一致する。一方、撮像部17が、指標部16からの鉛直方向Nαからずれた位置、例えば位置Nβに位置する場合、指標部16の中心点DYを外装材4に投影した点は検出箇所D0からずれた位置D1となり誤差の原因となる。
このため、位置情報補正部21は、指標部16の位置(中心位置)と、検出部12における検査対象物の検出箇所の位置との位置関係情報を取得する。具体的には、例えば位置情報補正部21は、検査作業の開始前に、検出部12の検出箇所を基準点P1~P4のいずれかに合わせた状態における指標部16の画像情報上の位置と、当該基準点の実際の位置情報とに基づいて位置情報の補正量を算出する。すなわち、基準点の位置に検出部12を合わせた際の指標部16の位置情報が、既知である基準点の座標位置と一致するように補正を行う。補正の精度を向上させるため、2点以上の基準点で撮像を行い、画像情報上の全座標における補正量をそれぞれ算出するのが好ましい。
【0023】
検査対象物評価情報生成部22は、評価部14から供給される個別評価情報と、位置情報補正部21により補正された位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
また、検査対象物評価情報生成部22は、単に個別評価情報と位置情報とを関連付けるだけでなく、位置情報に基づく評価情報を生成してもよい。具体的には、例えば外装材4の損傷面積や損傷枚数(タイル等の場合)等を算出してもよい。すなわち、以下に説明するように、検査対象物評価情報生成部22は、損傷があると判断された検出箇所を含む単位外装材の損傷枚数および当該枚数に単位面積を掛け合せた損傷面積を検査対象物評価情報として生成してもよい。
【0024】
図10~
図12は、位置情報に基づく評価情報の生成方法を模式的に示す説明図である。
作業者は、予め外装材4の最小単位寸法および配列方法について検査対象物評価情報生成部22に入力しておく。
図10に示すように、外装材4がタイル等の矩形部材である場合、縦方向の寸法LY、横方向の寸法LX、および配列(
図10に示すような縦横の配列が揃ったグリッドタイプか、縦方向の配列をずらしたレンガ積タイプか)を入力する。
また、作業者は、検査対象物全体の寸法も検査対象物評価情報生成部22に入力しておく。
図10の例では検査対象物の縦寸法LH、横寸法LWを入力する。
検査対象物評価情報生成部22は、これらの情報に基づいて検査対象物上のタイルの枚数および配置位置を算出する。すなわち、横方向のタイル枚数は、検査対象物の横寸法LW/タイルの横寸法LXにより算出することができる。なお、端数が生じた場合には、例えば目地幅として処理する。作業者が目地幅を入力するようにしてもよい。また、縦方向のタイル枚数は、検査対象物の縦寸法LH/タイルの縦寸法LYにより算出することができる。この場合も、端数が生じた場合には、例えば目地幅として処理する。検査対象物全体のタイル枚数は、横方向のタイル枚数×縦方向のタイル枚数により算出することができる。これらの枚数のタイルを検査対象物の寸法上に均等配置することにより、外装材4(タイル)の配置状態を再現することができる。
なお、このような外装材4(タイル)の配置状態を、撮像部17で撮像した画像から画像解析により把握するようにしてもよい。
【0025】
このように外装材4(タイル)の配置状態を再現することにより、検査対象物上の任意の位置座標がどのタイル上にあるかを特定することができる。
図11は、個別評価情報を位置情報に合わせてプロットした図である。
図11の例では、個別評価情報としてタイル浮きの有無をプロットしており、各丸印が個々の個別評価情報を示す。網掛けがあるプロットは浮きが検出された(タイル背面に深さ方向の距離a以上の空洞が検出された)ことを示し、網掛けがないプロットは浮きが検出されなかったことを示す。
個別評価情報のみのプロットでは、浮き箇所の分布を把握できるのみであるが、タイルの配置状態と重ねることにより、浮きの生じているタイルの箇所や枚数、面積等を算出することができる。
タイルの縦方向の配列にA~G、縦方向の配列に1~7を付番し、例えば最左上のタイルをA1、最右下のタイルをG7とすると、
図12に示すように、太枠で囲んだ11枚のタイル(A7、D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、E3、E6、F2)に浮きが生じていることがわかる。また、浮きがあるタイル数11にタイル1枚当たりの面積を掛けあわせることにより、浮きが生じている面積を算出することができる。
なお、上述した例では、1箇所でも浮きが検出された場合には当該タイルを不良(浮き有)と判定しているが、不良と判定する際の検出箇所数を設定できるようにしてもよい。
【0026】
検査対象物評価情報生成部22は、例えば個別情報と位置情報とを関連付けたデータファイルとして検査対象物評価情報を生成する。検査対象物評価情報生成部22は、例えばCSVファイル形式で検査対象物評価情報を生成する。これにより、検査対象物評価情報の汎用性を向上させることができる。
図13は、検査対象物評価情報が記録されたCSVファイルの出力例を示す説明図である。
実際のCSVデータファイルは、カンマで区切られたデータが記録されているが、例えば
図13に示すような表形式で各種データを出力することも可能となる。
図13の表には、壁面番号1301、タイル配列タイプ(グリッドタイプの場合はA、レンガ積タイプの場合はB)1302、浮き有のタイル数1303およびその面積1304、軽度浮き有のタイル数1305およびその面積1306、欠損・剥落有のタイル数1307およびその面積1308、ひび割れ有のタイル数1309およびその面積1310、汚れ有のタイル数1311およびその面積1312、画像フォルダの保存場所1313、1314等が記載されている。
表形式の出力を可能とすることで、メンテナンスが必要なタイルの数や面積を状態別に把握することができ、利便性を向上することができる。
このように、検査対象物評価情報をデータファイルとして生成することにより、後述する表示部26での表示以外にも検査対象物評価情報を使用することができ、検査対象物評価情報の有用性を向上させることができる。
【0027】
記憶部24は、補正済み画像情報と検査対象物評価情報とを関連付けて記憶するものである。なお、補正前の画像情報を共に保存しておいてもよい。
【0028】
表示部26は、画像を表示するものである。
表示制御部28は、表示部26に各種情報を表示させるものである。
表示制御部28は、画像情報に基づいて建物外面の画像を表示部26に表示させると共に、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示させる。すなわち、表示部26に表示された建物外面の画像に重ね合わせて個別評価情報を表示させる。
具体的には、
図11に示すような表示がなされることになる。
図11の例では、浮きの有無についての表示例であるが、状態評価装置10のインターフェースを適宜操作することにより、他の損傷、例えばひびや欠損、汚れの生じている箇所をそれぞれ表示可能である。またはそれら損傷の状態を全て重畳して表示部26に表示してもよい。
このような表示は、例えば記憶部24に記憶されている建物外面の補正済み画像を複製し、複製した画像上に個別評価情報に対応するアイコンなどを直接描画することによって行う。表示後は、個別評価情報が書き込まれた画像を記憶部24に保存してもよい。
表示部26による個別評価情報の表示は、例えば個別評価情報をその評価内容に対応付けられた複数種類の色を呈するマークで表示することによっておこなう。より詳細には、例えば外装材4の浮きが有る箇所は赤色のマークで、外装材4の浮きが無い箇所は青色のマークで表示するなどである。
また、外装材4の浮きの度合いが大きいほど(背面の空洞が深いほど)赤色の濃度を濃くし、外装材4の浮きの度合いが小さいほど(背面の空洞が浅いほど)赤色の濃度を薄くしたマークで表示するようにしてもよい。
なお、評価結果の表示は色の濃淡や種類によって限定されるものではなく、建物外面部の状態の検出結果を示す生データや建物外面部の状態の検出結果を表す数値や建物外面部の状態の検出結果を表す情報など従来公知の様々な方法を選択してもよい。
【0029】
図1に示すように、評価部14、画像補正部18、位置情報生成部20、位置情報補正部21、検査対象物評価情報生成部22、記憶部24、表示部26、表示制御部28は、コンピュータ30によって構成することができる。
コンピュータ30は、例えば、作業員が携帯可能なタブレット端末で構成され、検出部12とケーブルで接続されている。
コンピュータ30は、CPU、ROM、RAM、タッチパネル、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは例えばフラッシュメモリなどで構成され、制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
CPUが制御プログラムを実行することで評価部14、画像補正部18、位置情報生成部20、位置情報補正部21、検査対象物評価情報生成部22、表示制御部28が実現される。
また、ROMあるいはRAMは記憶部24として機能する。
また、キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は表示部26として機能する。
【0030】
次に、
図3のフローチャートを参照して状態評価装置10の動作について説明する。
まず、
図2に示すように、評価対象となる建物躯体2に設けられた外装材4の表面に複数の基準点P1、P2、P3、P4を設置する(ステップS10)。
この際、各基準点P1、P2、P3、P4の位置は実測されており既知となっている。
次に、撮像部17によって撮像される撮像範囲Aに、各基準点P1、P2、P3、P4の全てが撮像されるように撮像部17を設置する(ステップS12)。
図4に、建物躯体2の近傍に足場54を構築し、作業者Mが足場54を利用して建物外面部に対する検出作業を行なう場合の例を示し、
図5に、作業者Mが建物上部から吊り下げられたゴンドラ56を利用して建物外面部に対する検出作業を行なう場合の例を示す。
図4に示す例では、足場54上に設置した三脚58に取り付けた撮像部17を用いて撮像範囲Aの撮像を行なう。
図5に示す例では、ゴンドラ56に設けた支持部材60に取着した撮像部17を用いて撮像範囲Aの撮像を行なう。
【0031】
作業者は、検出部12を診断対象となる外装材4の表面に当接させる(ステップS14)。
なお、
図4、
図5に示すように、検出部12の筐体1202に支持棒62の先端が取着されており、作業者Mは支持棒62を把持することにより検出部12を広い範囲にわたって容易に移動できるように図られている。
【0032】
次に、作業者Mが検出部12を操作することにより、外装材4の表面が打撃され打音や振動が検出され、その検出結果(検出信号)が評価部14に供給される(ステップS16,S18)。また、検出部12により検出を行うと同時に、打音や振動の検出に合わせて撮像部17で画像の撮像が行われる(ステップS19)。撮像された画像は、画像補正部18により台形補正等が施される(ステップS20)。
【0033】
評価部14は、検出結果に基づいて外装材4の損傷、例えば浮きの有無を判定すると共に、外装材背面に形成された空洞の深さに基づいて浮きの程度を判定する。
すなわち、評価部14は、建物外面部の状態を評価する個別評価情報としての外装材4の損傷の有無および損傷の程度を生成する(ステップS21)。
【0034】
位置情報生成部20は、検出部12による建物外面部の状態の検出がなされた時刻に対応して撮像部17で撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点P1、P2、P3、P4の位置に対する指標部16の相対的な位置を示す位置情報を生成する(ステップS22)。
検査対象物評価情報生成部22は、個別評価情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、(ステップS24)、生成された検査対象物評価情報は記憶部24に格納される(ステップS26)。
作業者Mは、次に評価を行なうべき外面箇所の有無を判断し(ステップS28)、次に評価すべき外面箇所があれば、ステップS14に戻り同様の検出動作を行なう。次に評価すべき外面箇所が無ければ、すなわち、撮像範囲Aにおける建物外面部の状態の検出が全て完了したならば、コンピュータ30のキーボードあるいはマウスを操作することで一連の操作が終了した旨を表示部26に報知する。
これにより、表示制御部28は、記憶部24に格納されている画像情報に基づいて建物躯体2の画像を表示部26に表示させると共に、記憶部24に格納されている位置情報によって特定される建物躯体2の画像上の箇所に、位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示させ(ステップS30)、一連の動作を終了する。
【0035】
この結果、例えば損傷が浮きである場合には、外装材4の浮きが有る箇所は赤色のマークが当該外装材4の画像に重ね合わせて表示される。また、外装材4の浮きが無い箇所は青色のマークが当該外装材4の画像に重ね合わせて表示される。
また、外装材4の浮きの程度が大きい(背面の空洞が深い)ほど赤色の濃度が濃いマークで表示され、外装材4の浮きの程度が小さい(背面の空洞が浅い)ほど赤色の濃度を薄くしたマークで表示される。
例えば、空洞の深さが5mm未満であれば薄い赤色、5mm以上であれば濃い赤色といったように表示される。なお、濃度は2段階に限定されず3段階以上であってもよい。
また、空洞の深さを示す数値を当該外装材4の画像に重ね合わせて表示してもよい。
【0036】
なお、本実施の形態では、画像情報と位置情報と個別評価情報とを表示部26の表示画面上に表示する場合について説明したが、コンピュータにプリンタ装置を接続し、画像情報と位置情報と個別評価情報とを印刷媒体上に印刷により表示させるようにしてもよいことは無論である。この場合、表示部26はプリンタ装置によって構成されることになる。
【0037】
以上説明したように本実施の形態によれば、検出部12による検査対象物の状態の検出結果またはその検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と、検査対象物の状態の検出がなされた時刻に対応して撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点の位置に対する検出部12の相対的な位置を示す位置情報を検査対象物の検出箇所の位置情報として生成する。そして、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成するようにした。
したがって、個別情報と位置情報とを関連付けた評価を短時間で的確に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、画像情報および位置情報の補正を行うので、撮像画像に含まれる歪みや光学的誤差を補正してより精度よく検査対象物の検査を行う上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、検査対象物評価情報をCSVファイルとして出力するので、検査対象物評価情報の汎用性を高めて検査の有用性を向上させる上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、撮像部17は検出部12により打音または振動が検出された際に撮像を行うので、一定間隔で常時撮像を行う場合と比較して、撮像部17の電力消費量を軽減するとともに、個別情報に対応する画像を特定しやすくする上で有利となる。
また、本実施の形態において、検査対象物の画像上にその状態を入力可能な補助入力端末または検査対象物の状態を入力可能な状態入力部を設けるようにすれば、検査作業をより効率的に行う上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、表示部26に検査対象物の表面の画像を表示させ、その上に個別情報を重畳して表示するので、検査対象物の状態を効率よく評価する上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、建物躯体2に接着された外装材4の損傷の有無を評価するので、外装材の損傷の有無を効率的よく評価する上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、損傷がある外装材4の枚数および損傷面積を検査対象物評価情報として生成するので、検査対象物の損傷状態をより直感的に把握可能とする上で有利となる。
【0039】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について
図6を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、評価対象となる建物外面の全域が撮像部17の撮像範囲内に収まる場合について説明した。
第2の実施の形態では、建物外面が大きく、建物外面の全域が撮像部17の撮像範囲内に収まり切れない場合について説明する。
具体的には、
図6に示すように、建物外面の面積が撮像部17の撮像範囲よりも大きいため、撮像部17の撮像範囲を第1の範囲と第2の範囲との2つの範囲に移動させて、それぞれの範囲において建物外面部の状態の検出を行なう。
【0040】
まず、評価対象となる建物外面に設けられた外装材4の表面に複数の基準点P1、P2、P3、P4を設置する。これら複数の基準点P1、P2、P3、P4により第1の基準点が構成される。この際、撮像部17によって撮像される撮像範囲は第1の範囲A1であり、第1の範囲A1内に、各第1の基準点P1、P2、P3、P4の全てが撮像されるように撮像部17を設置する。
そして、第1の実施の形態と同様の要領によって第1の範囲A1に対する建物外面部の状態の検出および評価を行なう。
第1の範囲A1に対する建物外面部の状態の検出が終了したならば、撮像部17により撮像される撮像範囲を第1の範囲A1から第1の範囲A1に隣接する第2の範囲A2に移動し、かつ、第1の範囲A1と第2の範囲A2とが互いに重複する重複範囲Bを含むように撮像部17を移動させる。
ここで、予め、重複範囲Bには、複数の第1の基準点P3、P4が含まれるように第2の範囲A2を設定する。
さらに、重複範囲Bを除く第2の範囲A2に1以上の基準点で構成される第2の基準点P5、P6を設置する。
【0041】
そして、撮像部17により第2の範囲A2が撮像した状態で、位置情報生成部20は、重複範囲Bに位置する複数の基準点P3、P4で構成される第1の基準点に基づいて重複範囲Bを除く第2の範囲A2に位置する1以上の基準点P5、P6で構成される第2の基準点の位置を特定する。
これにより位置情報生成部20は、第2の範囲における位置情報の生成を、第2の基準点の位置を用いて行なう。
以下、第1の実施の形態と同様の要領によって第2の範囲A2に対する建物外面部の状態の検出および評価を行なう。
【0042】
第2の実施の形態によれば、重複範囲Bに位置する複数の基準点で構成される第1の基準点に基づいて重複範囲Bを除く第2の範囲A2に位置する1以上の基準点で構成される第2の基準点の位置を特定し、位置情報生成部20による第2の範囲A2における位置情報の生成を第2の基準点の位置を用いて行なうようにした。
したがって、第2の範囲A2における第2の基準点の位置が既知でなくても第2の範囲A2における位置情報を正確に検出できるため、広範囲にわたって建物外面部の状態の検出および評価を効率よく行なう上で有利となる。
なお、本実施の形態では、撮像部17の撮像範囲を第1の範囲A1と第2の範囲A2との2つの範囲に移動させて建物外面部の状態の検出および評価を行なう場合について説明したが、撮像部17の撮像範囲を3つ以上の範囲に移動させて建物外面部の状態の検出および評価を行なうようにしてもよい。
この場合は、撮像部17の撮像範囲を現在の範囲から次の範囲に移動させる毎に、重複範囲を除く次の範囲に新たな基準点(第2の基準点)を設置し、現在の範囲と次の範囲との重複範囲に位置する基準点(第1の基準点)に基づいて、新たな基準点(第2の基準点)の位置を特定し、特定した新たな基準点(第2の基準点)を用いて次の範囲における位置情報の生成を行えば良い。
【0043】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、第1の基準点がP1、P2、P3、P4の4つの基準点で構成され、第2の基準点がP5,P6の2点の基準点で構成されている場合について説明したが、第1の基準点は少なくとも3つあればよく、第2の基準点は少なくとも1つあればよい。
以下、
図6を流用して説明する。
基準点P2、P5は無いものとする。
評価対象となる建物外面に設けられた外装材4の表面に複数の基準点P1、P3、P4を設置する。これら複数の基準点P1、P3、P4により第1の基準点が構成される。この際、撮像部17によって撮像される撮像範囲は第1の範囲A1であり、第1の範囲A1内に、各第1の基準点P1、P3、P4の全てが撮像されるように撮像部17を設置する。
そして、第1の実施の形態と同様の要領によって第1の範囲A1に対する建物外面部の状態の検出および評価を行なう。
第1の範囲A1に対する建物外面部の状態の検出が終了したならば、撮像部17により撮像される撮像範囲を第1の範囲A1から第1の範囲A1に隣接する第2の範囲A2に移動し、かつ、第1の範囲A1と第2の範囲A2とが互いに重複する重複範囲Bを含むように撮像部17を移動させる。
ここで、予め、重複範囲Bには、複数の第1の基準点P3、P4が含まれるように第2の範囲A2を設定する。
さらに、重複範囲Bを除く第2の範囲A2に1つの第2の基準点P6を設置する。
【0044】
そして、撮像部17により第2の範囲A2が撮像した状態で、位置情報生成部20は、重複範囲Bに位置する複数の基準点P3、P4で構成される第1の基準点に基づいて重複範囲Bを除く第2の範囲A2に位置する1つの基準点P6で構成される第2の基準点の位置を特定する。
これにより位置情報生成部20は、第2の範囲における位置情報の生成を、第2の基準点P6の位置を用いて行なう。
以下、第1の実施の形態と同様の要領によって第2の範囲A2に対する建物外面部の状態の検出および評価を行なう。
第3の実施の形態においても第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0045】
なお、実施の形態では、検査対象物が建物であり、タイルなどの外装材4の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を評価する場合、また、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
【0046】
また、実施の形態では、建物外面部の状態の検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別評価情報と、検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示部26に表示させる場合について説明した。この場合、個別評価情報は本発明の個別情報に相当する。
しかしながら、個別評価情報に代えて建物外面部の状態の検出結果を示す個別測定情報と、検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別測定情報を表示部26に表示させるようにしてもよい。この場合、個別測定情報は本発明の個別情報に相当する。
【0047】
例えば、建物外面部の状態として温度を検出する場合、温度の測定値(生データ)を個別測定情報として扱い、温度の測定値(個別測定情報)と検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた温度の測定値(個別測定情報)を表示部26に表示させるようにしてもよい。
このようにすると、検出部12によって検出された建物外面部の状態を示す個別測定情報そのものを評価する上で有利となる。
【0048】
また、温度の測定値(個別測定情報)と検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成したのち、検査対象物評価情報に含まれる個別測定情報に基づいて評価を行い、その評価結果を個別評価情報として生成し、この個別評価情報を検査対象物評価情報に含まれる位置情報と関連付けるようにしてもよい。この場合、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示部26に表示させるようにしてもよい。
このようにすると、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて建物外面部の状態を的確に評価する上で有利となる。
【符号の説明】
【0049】
2 建物躯体
4 外装材
10 状態評価装置
12 検出部
14 評価部
16 指標部
17 撮像部
18 画像補正部
20 位置情報生成部
21 位置情報補正部
22 検査対象物評価情報生成部
24 記憶部
26 表示部
28 表示制御部
30 コンピュータ