IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人福井大学の特許一覧 ▶ プロメディカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図1
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図2
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図3
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図4
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図5
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図6
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図7
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図8
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図9
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図10
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図11
  • 特許-医療用ドレーンチューブ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】医療用ドレーンチューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M1/00 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018187527
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020054635
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514282895
【氏名又は名称】プロメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松峯 昭彦
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-532208(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104548311(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0006311(US,A1)
【文献】特表2003-502091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/222527(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/326489(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/118683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/29956(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-135921(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部及び第1の排出部を有するチューブ本体、並びに当該チューブ本体を患者の皮膚の表面に固定するための固定部材を有する、 医療用ドレーンチューブ、及び
患者の皮膚の表面に固定した前記医療用ドレーンチューブの固定部材を覆うことができる吸引カバーと、第2の排出部とを有する吸引コネクターを有する医療用ドレーンチューブキット。
【請求項2】
前記固定部材が、孔部を有する、請求項1に記載の医療用ドレーンチューブキット
【請求項3】
前記チューブ本体と患者の皮膚の表面との角度が10°~60°になるように保持できる、請求項1又は2に記載の医療用ドレーンチューブキット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ドレーンチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
外科や整形外科等の手術後には、血腫の形成を防ぐ等の目的のために、医療用ドレーンチューブ(以下、単にドレーンチューブとも称する)を手術創部に留置することがある。当該ドレーンチューブは一端を創部に留置し、反対側の一端を体外に引き出し、吸引バッグ等で陰圧をかけて当該創部から滲出する血液、体液、気体等を排出する。当該ドレーンチューブは、その形状や材質について種々の検討がなされている(例えば、特許文献1及び2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-189551号公報
【文献】特開2005-81021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ドレーンチューブは、患者の皮膚に糸で緊縛されて固定されることが多い。ドレーンチューブを糸で緊縛して患者の皮膚に固定した場合、固定力が弱いため、ドレーンチューブが抜けてしまうおそれがある。また、ガーゼ交換や体動によってドレーンチューブが動くとドレーンチューブと皮膚との間の隙間が広がり、エアー漏れが生じて創内に陰圧がかからなくなり、創内の血液や膿等を吸引しづらくなることもある。さらに、創内の血液等がドレーンチューブと皮膚との隙間から漏出することがあることから衣類、シーツ等の汚染を防ぐためにガーゼで覆うことがあるが、覆ったガーゼによってドレーンチューブが折れ曲がり、創内の血液や膿等を吸引しづらくなるおそれがある。また、ガーゼで覆うと創部が隠れてしまい、経過観察がしづらくなる。
【0005】
一般的に、創部に留置されたドレーンチューブは出血等が止まれば抜去するため、ドレーンチューブは1~3日で抜去することが多いが、場合によってはそれ以上の長期留置を行うことがある。この場合、上記のような課題が生じる可能性はさらに高くなる。
【0006】
本発明は、ドレーンチューブの抜けや当該ドレーンチューブと皮膚との間の隙間が生じるのを抑制することができるドレーンチューブ及びその使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、挿入部及び第1の排出部を有するチューブ本体、並びに当該チューブ本体を患者の皮膚の表面に固定するための固定部材を有する、医療用ドレーンチューブである。
【0008】
本発明の一態様において、前記固定部材が、孔部を有する。
【0009】
本発明の一態様において、前記チューブ本体と患者の皮膚の表面との角度が10°~60°になるように保持できる。
【0010】
本発明は、前記医療用ドレーンチューブの挿入部を患者の創部内に留置する第1のステップと、第1のステップの後、前記医療用ドレーンチューブを患者の皮膚の表面に固定する第2のステップを有する、医療用ドレーンチューブの使用方法である。
【0011】
本発明の一態様において、第2のステップの後、前記チューブ本体の前記固定部材よりも排出部側を切断する第3のステップを有する。
【0012】
本発明の一態様において、第3のステップの後、患者の皮膚の表面に固定した前記医療用ドレーンチューブの固定部材を覆うことができる吸引カバーと、第2の排出部とを有する吸引コネクターの当該吸引カバーで、患者の皮膚の表面に固定された前記固定部材を覆う第4のステップを有する、
【0013】
本発明の一態様において、第4のステップの後、第2の排出部に吸引手段を接続し、前記固定部材を覆った吸引カバーの内側を陰圧にする第5のステップを有する。
【0014】
本発明は、前記医療用ドレーンチューブ、及び患者の皮膚の表面に固定した前記医療用ドレーンチューブの固定部材を、当該固定部材を覆うことができる吸引カバーと、第2の排出部とを有する吸引コネクターを有する医療用ドレーンチューブキットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固定部材によってチューブ本体を患者の皮膚の表面に固定することができるため、ドレーンチューブが抜けや当該ドレーンチューブと皮膚との間の隙間が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のドレーンチューブの構成を示す概略図
図2】本発明の一実施形態のドレーンチューブの断面を示す概略図
図3】本発明の一実施形態のドレーンチューブに係る固定部材の構成を示す概略図
図4】本発明の一実施形態のドレーンチューブの使用時の断面の一例を示す概略図
図5】本発明の一実施形態の吸引コネクターの一例を示す概略図
図6】本発明の一実施形態のドレーンチューブの使用時の状態の一例を示す概略図
図7】本発明の一実施形態の吸引コネクター及びドレーンチューブの使用状態の一例を示す概略図
図8】本発明の一実施形態のドレーンチューブの構成を示す概略図
図9】本発明の一実施形態のドレーンチューブに係る固定部材の構成を示す概略図
図10】本発明の一実施形態のドレーンチューブに係る固定部材の構成を示す概略図
図11】本発明の一実施形態のドレーンチューブに係る固定部材の構成を示す概略図
図12】本発明の一実施形態の固定部材の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ドレーンチューブ>
本実施形態のドレーンチューブを図面を参照しつつ説明する。なお、各図は本実施形態のドレーンチューブの技術思想を説明しやすくするために各部材の大きさなどを模式的に示している。
【0018】
図1は、本実施形態のドレーンチューブ1の構成を示す概略図である。当該ドレーンチューブ1は、挿入部111及び第1の排出部112を有するチューブ本体11、並びに当該チューブ本体11を患者の皮膚の表面に固定するための固定部材12を有する。
【0019】
前記チューブ本体11の両末端は孔が開いており、両孔はチューブ本体11の内腔で連通している。前記チューブ本体11の形状及び大きさ並びに材質は、本発明の効果を損なわない限り、医療用のドレーンチューブとして使用できれば特に限定されない。創部内の血液等を吸入しやすくするために、前記挿入部111は側部に1または2以上の孔(図示せず)を有していてもよい。
【0020】
図1において、前記固定部材12は、使用時に患者の皮膚の表面と糸で縫合するための複数の孔部121を有している。前記固定部材12は、前記チューブ本体11から略垂直に伸びた円形であり、前記チューブ本体11の外周面に一体的に設けられている。前記固定部材12は、ドレーンチューブ1を使用した場合に、固定部材12に覆われている患者の皮膚の状態等を確認する観点から、透明であることが好ましい。
【0021】
図2は、ドレーンチューブ1の断面を示す概略図である。前記固定部材12の外周下部122は患者の皮膚を傷つけない形状であることが好ましい。皮膚を傷つけない形状の例としては曲面が挙げられる。
【0022】
図3は、当該固定部材12を第1の排出部112方向から見た概略図である。当該固定部材12は第1の排出部112方向から見て円形または略円形をしており、複数の孔部121を有している。前記固定部材12の材質は、患者の皮膚を傷つけない材質であれば特に限定されないが、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂等が例示できる。
【0023】
図4は、ドレーンチューブ1の使用態様の一例を示す概略図である。図4は、挿入部111が患者の創部21に留置されるとともに、第1の排出部112が患者の体外に配置され、固定部材12が患者の皮膚の表面22に孔部121に糸13が通され縫合されて固定されていることを示す。チューブ本体11の第1の排出部112側の末端の孔は、公知の手動式または機械式吸引装置(図示せず)に接続され、創部21内の血液等が挿入部111側の末端の孔から第1の排出部112側の末端の孔にかけて連通するチューブ本体11の内腔を通じて排出される。ドレーンチューブ1は、固定部材12を有することによって、チューブ本体11を患者の皮膚の表面22に固定することができるため、ドレーンチューブが抜けや当該ドレーンチューブと皮膚との間の隙間が生じるのを抑制することができる。
【0024】
前記固定部材12は、前記チューブ本体11と患者の皮膚の表面22との角度124が10°~60°になるように保持できる構成を有するのが好ましく、30°~45°となるように保持できる構成を有するのがより好ましい。前記チューブ本体11が患者の皮膚の表面22に対して一定の角度を有することにより、患者の皮膚の表面及び固定部材12近傍でのチューブ本体11の折れ曲がりをさらに抑制することができる。前記チューブ本体11と患者の皮膚の表面22との角度124が10°~60°になるように保持できる構成は、固定部材12の形状も影響するため一意に定義することは困難であるが、一例としては、固定部材12の接触部分122に接触する平面123とチューブ本体11が10°~60°になる構成が挙げられる。角度124は、チューブ本体11を直線状に引っ張った時の軸と平面123がなす角度を意味してもよい。
【0025】
また、前記チューブ本体11と、固定部材12の患者の皮膚の表面22の反対側の面とがなす角度125が一定の角度を有することにより、患者の皮膚の表面及び固定部材12近傍でのチューブ本体11の折れ曲がりをさらに抑制することができる。固定部材12は、角度125が、10°~60°になるように保持できる構成を有するのが好ましく、30°~45°となるように保持できる構成を有するのがより好ましい。製造の容易性の観点から、角度124と角度125が同じことが好ましい。
【0026】
固定部材12の大きさは特に限定されず、目的の範囲で医療用ドレーンチューブの実施形態、各部材の材質、チューブ本体の太さ・硬さ等の他の要素を考慮して適宜選択できるが、一例としては直径2~5mm、厚み1~10mmである。
【0027】
<医療用ドレーンチューブの使用方法>
本実施形態の医療用ドレーンチューブの使用方法(以下、単にドレーンチューブの使用方法とも称する)を図面を参照しつつ説明する。すでに説明した構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0028】
本実施形態のドレーンチューブの使用方法は、ドレーンチューブ1の挿入部111を患者の創部21内に留置する第1のステップと、第1のステップの後、前記ドレーンチューブ1を患者の皮膚22の表面に固定する第2のステップを有する。前記ドレーンチューブ1を患者の皮膚22の表面に固定する手法としては、図4で示すように、孔部121に糸13を通して縫合して固定する手法や、患者の皮膚の表面22と前記接触部分122を両面テープで張り合わせる手法が例示できる。
【0029】
本実施形態のドレーンチューブの使用方法は、第2のステップの後、前記チューブ本体11の前記固定部材12よりも第1の排出部112側を切断する第3のステップを有するのが好ましい。図5は、第2のステップの後、前記チューブ本体11の前記固定部材12よりも第1の排出部112側を切断した状態を示す概略図である。
【0030】
本実施形態のドレーンチューブの使用方法は、第3のステップの後、吸引コネクターの吸引カバーで、患者の皮膚の表面22に固定された前記固定部材12を覆う第4のステップを有するのが好ましい。
【0031】
図6は、本実施形態に係る吸引コネクター3の構成を示す概略図である。当該吸引コネクター3は、患者の皮膚の表面22に固定した前記ドレーンチューブ1の固定部材12を覆うことができる吸引カバー31、及び第2の排出部32を有する。第4のステップを有する場合、前記第3のステップで排出部112が吸引カバー31内に収まる長さに切断するのが好ましい。
【0032】
図7は、第3のステップの後、吸引コネクター3の吸引カバー31で、患者の皮膚の表面22に固定された前記固定部材12を覆った状態を示す概略図である。例えば、吸引カバー31は、両面テープによって患者の皮膚の表面22に貼付される。固定部材12及び切断された排出部112を覆い、後述の第5のステップで吸引カバー31の内を陰圧にできる形状、及び材質であれば特に限定されない。当該吸引カバー31は、患者の皮膚の状態等を確認する観点から、透明であることが好ましい。また、吸引カバー31と皮膚の表面22の間に吸引フィルムが介在されていてもよい。吸引カバー31の一例としてはドレッシングコネクターが挙げられる。
【0033】
本実施形態のドレーンチューブの使用方法は、第4のステップの後、第2の排出部32の吸引カバー31の反対側の末端に吸引手段(図示せず)を接続し、前記固定部材12を覆った吸引カバー31の内側を陰圧にする第5のステップを有するのが好ましい。前記固定部材12を覆った吸引カバー31の内側を陰圧にすることにより、創部21内の血液等を挿入部111内の内腔を通じて外部に外出される。
【0034】
<医療用ドレーンチューブキット>
本実施形態の医療用ドレーンチューブキットは、前記ドレーンチューブ1、及び前記吸引コネクター3を有する。
【0035】
以上が、本実施形態の医療用ドレーンチューブ及びその使用方法、並びに医療用ドレーンチューブキットの一例についての説明である。
【0036】
なお、前記ドレーンチューブ1の固定部材12の形状は円形であるものとして説明した。しかしながら、前記固定部材12はチューブ本体11を固定できれば他の形状でもよい。前記固定部材12の他の形状としては、挿入部111方向に向かって広がる傘状が例示できる。図8は、挿入部111方向に向かって広がる傘状の固定部材41を有するドレーンチューブを示す概略図である。図9は、固定部材41を有するドレーンチューブの断面図を示す概略図である。
【0037】
また、前記ドレーンチューブ1の固定部材12は円形であるものとして説明した。しかしながら、固定部材12はチューブ本体11を固定できれば他の形状でもよい。図10、及び図11は、他の形状の固定部材5を排出部112側から見た概略図である。なお、例えば、固定部材が楕円系である場合、チューブ本体11は楕円の長軸方向に伸びるように設けられていることが好ましい。
【0038】
また、前記固定部材12が前記ドレーンチューブ1と一体的に構成されているものとして説明した。しかしながら、固定部材は、前記ドレーンチューブ1に取り付け、取り外しができても構わない。図12は、前記ドレーンチューブ1に取り付け、取り外しができる態様の固定部材6を示す概略図である。図12において、固定部材6は、中心付近にチューブ本体11を通すことができる穴61、及び当該穴61から固定部材6の外周方向に設けられたスリット62を有する。図12の固定部材6は、スリット62を左右に広げて穴61にチューブ本体11を通し、スリット62を閉じることによってチューブ本体11に取り付けることができる。固定部材6は、チューブ本体11の挿入部111を患者の創部内に留置した後にチューブ本体11に取り付けることができる。
【0039】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ドレーンチューブ
11 チューブ本体
111 挿入部
112 第1の排出部
12 固定部材
121 孔部
122 外周下部
123 平面
124 角度
125 角度
13 糸
21 創部
22 皮膚表面
3 吸引コネクター
31 吸引カバー
31 第2の排出部
4 ドレーンチューブ
41 固定部材
5固定部材
6 固定部材
61 穴
62 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12