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  • 特許-舗装部の防草工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】舗装部の防草工法
(51)【国際特許分類】
   E01H 11/00 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
E01H11/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018192251
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060050
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】718005858
【氏名又は名称】清水 勇
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3173280(JP,U)
【文献】特開2005-083140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝成形機で雑草の根が張っている土の部分まで掘起こすことで空間を形成し、雑草の根元を抜根除去した所にセメントミルクを充填することを特徴とする舗装部の防草工法。
【請求項2】
前記空間に充填したセメントミルクの上部で、かつ舗装面より下方位置にモルタル(1:3)を充填することを特徴とする請求項1に記載された舗装部の防草工法。
【請求項3】
前記空間に充填したモルタル(1:3)の上部で、かつ舗装面より突出すようにコーキング材を充填することを特徴とする請求項2に記載された舗装部の防草工法。
【請求項4】
前記空間は歩道と歩車道境界ブロックとの隙間、またはアスファルト舗装の亀裂(ひび割れ)、またはコンクリート構造物の継ぎ目に形成することを特徴とする請求項1乃至3に記載された舗装部の防草工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装と構造物の隙間や舗装の継ぎ目・亀裂(ひび割れ)からの雑草の繁茂を防止する舗装部の防草工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路築造においては、図4に示すように舗装部は、転落防止柵基礎2の上部に転落防止柵1が固定配置されている。また、車道6には中央分離帯8が設けられ、前記中央分離帯8は中央分離帯コンクリート13と縁石7で構成されている。前記車道6と歩車道境界ブロック4との間にはエプロン5が配置されている。前記エプロン5には排水用の開口が設けられている。前記舗装部は一般的にアスファルト舗装とコンクリート構造で成り立っており、異なる性質であるため一体的な構造として施工が出来ないため、どうしても目地が発生してしまう。また、当初は密着を図りながら施工を行うが、アスファルト舗装である歩道3とコンクリート構造物である歩車道境界ブロック4の膨張や収縮の比率が異なるため、完成後早ければ数か月で継ぎ目において分離し隙間10が現れる。また、経年劣化や自然環境の変化により舗装の継ぎ目9や隙間10や亀裂(ひび割れ)Kが生じてしまう。
【0003】
また、アスファルト舗装とコンクリート構造物の接着面においては、アスファルト乳剤等で接着を図り施工するのが一般的であるが、綿密な施工を行うも異なる性質の部材であるため接着が出来る物ではなく、経年劣化等により隙間10が出来てしまう。
【0004】
さらに、経年劣化等や交通車両の振動によっても、構造物との剥離が発生し、隙間10が生じてしまう。
【0005】
前記隙間10や亀裂(ひび割れ)Kに砂塵や雑草種子が入り、降雨により雑草11が発芽して成長していく。このような道路のアスファルト舗装とコンクリート構造物との隙間10やアスファルト舗装の継ぎ目9・亀裂(ひび割れ)Kに雑草11が生育させないための雑草生育防止の工法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、道路舗装と縁石に生じた隙間に生えた雑草、及びコケ、ゴミを除去してから隙間にプライマーを塗布し、樹脂エマルジョンにセメントを混合して撹拌したシーリング材を容器から隙間に流し込んで充填する。その後シーリング材を乾燥固化させる雑草生育防止工法が記載されている。また、特許文献2では、コンクリート構造物とアスファルト構造物の境界など各種構造物の境界部、例えば歩道の縁石ブロックとアスファルト舗装の境界部の隙間に生育した雑草及び土砂分を除去した後、同隙間を水で洗浄し、その後に隙間全体に無収縮性のモルタルを充填する雑草の生育防止工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-083140号公報
【文献】特開平11-081264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1(特開2005-083140)の雑草生育防止工法では、シーリング材が乾燥硬化させると示されていますが、硬化することにより、当初施工と同様にひび割れや亀裂が生じてしまい、そこから雑草が発芽してしまうため、不十分である。
【0009】
特許文献2(特開平11-081264)の雑草生育防止工法では、無収縮性のモルタルを充填することが開示されているが、ビニール系のエマルジョンだけでは、隙間への付着が弱く、振動や雨水によってはがれてしまうことが多く、また、接着剤はコストがかかるという問題があった。無収縮性のモルタルは、充填後、繰り返しの交通荷重でひび割れを生じやすく、長時間の雑草の生育を防止することが困難であった。
【0010】
除草(草刈り)作業は年間数回実施しており、表面上は奇麗に見えますが根は全くダメージを受けていないため、概ね一か月もすれば元の状態に戻っている。特に歩道部の雑草の繁茂が著しいと交通弱者である歩行者や自転車・高齢者の電動車椅子等が車道を走ることにより事故の要因になるため、雑草が生えないようにする必要がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、施工後にアスファルト舗装とコンクリート構造物を破損させることなく、アスファルト舗装とコンクリート構造物との間に生じる隙間や亀裂に雑草が生えるのを確実に防止できるとともに、簡単な構造で、施工作業を簡単に行え、低コストで施工できる舗装部の防草工法を提供することにある。
【0012】
自然発生する雑草は、成長力、繁殖力が強く、表面上の刈り取り処理だけでは、地下茎はダメージを受けていないため、一ヶ月もすれば、元の状態に戻っている。特に春から秋の間は雑草の生育が早いため、一定期間後には、再度刈り取り作業が必要となり、良好な道路等の環境の保全や道路補修等の維持管理コストを増大させている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
溝成形機で雑草の根元を抜根除去することにより空間を形成し、該空間は雑草の根が張っている土部分まで掘起こして形成している。
【0014】
前記空間にセメントミルクを充填する。
【0015】
前記空間に充填したセメントミルクの上部で、かつ舗装面より下方位置にモルタル(1:3) を充填する。
【0016】
前記空間に充填したモルタル(1:3)の上部で、前記空間に接着剤を塗り、かつ舗装面より突出すようにコーキング材を充填する。
【0017】
歩道と歩車道境界ブロックとの隙間、アスファルト舗装の亀裂(ひび割れ)、コンクリート構造物の継ぎ目に生育した雑草を抜根除去するための空間を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、構造物の境界部に発生した隙間が閉鎖され簡単な手段で雑草の生育を防止することが可能となる。
【0019】
アスファルト舗装とコンクリート構造物が一体化されたため、構造体としての強度も向上する。
【0020】
毎年数回実施している除草の費用が節減できる。
【0021】
歩道の有効幅を狭めていた雑草が無くなることにより広く使えるので、歩行者及び自転車や高齢者の電動車椅子の安全と快適さが確保できる。
【0022】
雑草による悪景観が解消される。
【0023】
作業時における交通規制の制限の解消が出来る。
【0024】
交通安全の確保が出来る。
【0025】
雑草の繁殖により傷んだ舗装の維持管理費が節減できる。
【0026】
本発明は新設工事の時や、舗装打ち換えの時にも利用できる。
【0027】
雑草によるアスファルト舗装の傷みが無くなるので長持ちし、資源の節減ができる。
【0028】
薬剤を使用しないので環境に良い。
【0029】
防草シート方式に比べて、曲線部の作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明実施例の舗装部の防草工法の手順を示す説明図である。
図2】本発明実施例の舗装部の防草工法の終了状態を示す舗装部の断面図である。
図3図2A部分の拡大図である。
図4】道路構造に於ける雑草の繁茂状態の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の特徴を示す図面で具体的に説明する。本発明は歩道3と歩車道境界ブロック4との隙間10における防草工法について説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
図1(a)に示すように、雑草11は歩道3と歩車道境界ブロック4の隙間10に生育している。前記雑草11の根12はアスファルト舗装されている歩道3の下にある土18内で張っている。
【0033】
まず、前処理として図1(b)に示すように、アスファルトで舗装している歩道3と歩車道境界ブロック4の隙間10に生育した雑草11の地下茎の抜根除去を行なうとともに空間Sを形成する。抜根除去には溝成形機(図示せず)で行う。前記溝成形機は、例えば溝掃除機(ミカサMCG-50、図示せず)を使用し、前記溝掃除機には溝を切削するワイヤーブレードが取り付けられている。しかし、地下一帯に張っている細かい根に対しては、ワイヤーブレードは届かないが、生育に必要な構成は崩壊させている。溝掃除機のワイヤーブレードとは、ワイヤー0.5mm20本をひねり強力にしてある。またコケ、ゴミ、砂及び
小石等の作業に支障をきたす物の除去を十分に行う。ワイヤーブレードで掻き出された雑草11の除去は、手作業により集め一輪車にて搬出し、2t車に載せて処分する。
【0034】
次に図1(c)に示すように、雑草の根12及び空間Sに対してセメントミルク14を充填する。セメントミルク14とは、セメントを水だけで練ったもので、セメントは水と反応すると水酸化カルシウム(消石灰)を発生させ、強アルカリ性を示す性質がある。
強アルカリ性とは、水素イオン濃度(PH)で示す時(範囲1~14)におおむね最大値(14)に近いところをいう。
雑草11が生える土質は弱酸性(PH6~6.5)で生育する。
強アルカリ性の物質は、タンパク質を溶かす性質があり雑草11の根12はタンパク質で構成されているため溶けてなくなってしまう。
【0035】
この後図1(d)に示すように、モルタル(1:3) 15を舗装面より5mm程下まで埋める
。この段階でも地下からの生育は考えられないが、表面への種子の飛散により、モルタルの硬化後の自然環境の変化や自動車等の振動により、ひび割れや亀裂(ひび割れ)Kが生じて発芽してしまう可能性がある。
モルタル(1:3) 15とは、セメントと砂を1:3の割合で混ぜ、水で練ったものである。
砂とは、直径5mmまでの砂利を指す。
【0036】
その後図1(e)に示すように、前記空間の内側面及びモルタル(1:3)の上面にも丁寧にまんべんなく接着剤17(セメダインシリコンシーラント専用プライマーB)を塗る。次に、粘着性が強く柔軟性に優れたコーキング材16(セメダイン シリコンシーラント8060)を充填する。この作業は、この工法の施工上の一番の重要なところであり、丁寧にまんべんなく塗らないと後にコーキング材16が剥がれてしまう。
塗面を平滑に均す作業を行ない、特に工具や方法は限定されず仕上げる。
セメダイン シリコンシーラント8060は、耐水性・耐熱性・耐候性に優れ硬化後は、ゴム状弾性体になりひび割れがない。
また、使用温度範囲は-50℃~150℃であり、日本の気候に適している。
おおむね10分程度の養生でゴム状弾性体になれば作業は完了する。
【0037】
図2は、歩道3と車道6の間にあるコンクリート構造物を断面図に表したもので、Bは歩道3の中に亀裂K(ひび割れ)から生えている雑草11及び、Aは歩道3と歩車道境界ブロック4、Cは歩車道境界ブロック4とエプロン5、Dはエプロン5と車道6との間に形成される隙間10から生えている雑草11を防草工法にて施工した後の状態を示している。
【0038】
図3に示すように、図2のA部分の拡大したものであり、図1の(a)から(e)の手段で終了状態であるが、この中で特に前記空間の内側面及びモルタル(1:3)の上面に接着剤17を、丁寧にまんべんなく塗る作業が重要である。
【符号の説明】
【0039】
1、転落防止柵
2、転落防止柵基礎
3、歩道
4、歩道境界ブロック
5、エプロン
6、車道
7、縁石
8、中央分離帯
9、中央分離帯コンクリート・歩道のアスファルト舗装の継ぎ目
10、隙間(クラック含む)
11、雑草
12、雑草の根
13、中央分離帯コンクリート
14、セメントミルク
15、モルタル(1:3)
16、コーキング材
17、接着剤
18、土
S、空間
K、亀裂
図1
図2
図3
図4