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特許7142325探索支援システム、探索システム及び探索支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】探索支援システム、探索システム及び探索支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/904 20190101AFI20220916BHJP
   G06F 16/9038 20190101ALI20220916BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20220916BHJP
【FI】
G06F16/904
G06F16/9038
G06F16/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018144909
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020021303
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100169591
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉武 道子
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221444(WO,A1)
【文献】特開2012-014308(JP,A)
【文献】特開2009-104525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物性関係性データベースと、関係性判定部と、入力部と、表示部とを備える探索支援システムであって、
前記物性関係性データベースは、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、前記原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶し、
前記関係性判定部は、前記複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つが前記入力部を介して始点とされ、合わせてその増減方向が指定されたとき、前記始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が前記物性関係性データベースに規定されており前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性を、前記物性関係性データベースに記憶されている前記関係性関数に基づいて特定し、特定された増減特性に応じて前記表示部に表示させる、
探索支援システム。
【請求項2】
請求項1において、前記探索支援システムは、表示グラフ生成部をさらに有し、
前記表示グラフ生成部は、前記物性パラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとし対応するノード間をエッジとし、前記始点に対応するノードと前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードとを含むグラフを生成可能であり、
前記表示部は、前記始点に対応するノードを第1の表示状態で表示し、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードを当該物性パラメータの増減特性に応じた表示状態で表示する、
探索支援システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記関係性判定部は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定された増減特性を、その増減の方向と程度に基づいて、予め規定された複数の区分の中から該当する区分を特定し、
前記表示部は、当該物性パラメータに対応するノードを、特定された区分に応じた表示状態で表示する、
探索支援システム。
【請求項4】
請求項3において、予め規定された前記複数の区分は、原因側物性パラメータの物性値が増加したときの結果側物性パラメータの物性値の増減が、指数的に増加する場合、べき乗で増加する場合、線形で増加する場合、線形よりも緩やかに増加する場合、線形よりも緩やかに減少する場合、線形で減少する場合、べき乗で減少する場合、指数的に減少する場合、一意に特定できない場合である、
探索支援システム。
【請求項5】
請求項2、請求項3または請求項4において、
前記表示部は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された増減特性の増減方向が増加または減少のうちいずれか指定される一方である物性パラメータに対応するノードを当該増減特性に応じた表示状態で表示し、それ以外の物性パラメータに対応するノードを前記所定の範囲の外にある物性パラメータに対応するノードと同様の表示状態で表示する、
探索支援システム。
【請求項6】
請求項2、請求項3または請求項4において、
前記物性関係性データベースは、前記グラフを構成するノードとエッジのうちの少なくとも一部に付与される属性情報をさらに記憶し、
前記表示部は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された前記増減特性に加えて、前記始点から当該物性パラメータに対応するノードに至る経路上のノードとエッジに付与された属性情報に基づいて、当該ノードの表示状態を決定する、
探索支援システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項において、
前記物性関係性データベースは、前記関係性関数について、前記結果側物性パラメータの物性値を求めるための、前記原因側物性パラメータの物性値を引数とする関数として記憶し、
前記関係性判定部によって、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定される、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性は、
当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点と対をなすとき、その対について規定された関係性関数の変化として特定され、
当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点から他の物性パラメータを経由して規定されるとき、前記始点から当該物性パラメータに至る経路で規定されている複数の物性パラメータ対についてそれぞれ規定された関係性関数を累積的に合成した関数の変化として特定される、
探索支援システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載される、前記関係性判定部と、前記入力部と、前記表示部とを含むユーザーインターフェースと、前記物性関係性データベースと、さらにグラフ生成部と、グラフ探索部とを備える探索システムであって、
前記グラフ生成部は、前記物性関係性データベースに基づいて、物性関係性グラフを生成し、
前記物性関係性グラフは、前記物性関係性データベースに記憶される前記複数の物性パラメータ対を構成する複数の物性パラメータのそれぞれに対応する複数のノードと、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対のそれぞれに対応する一対のノード間を接続する複数のエッジとによって構成され、
前記入力部を介して探索条件として始点と終点とを指定した経路探索が指示されたとき、
前記グラフ探索部は、前記物性関係性グラフを対象とする経路探索を行い、当該始点から当該終点に至る経路を抽出し、その結果を前記表示部に出力する、
探索システム。
【請求項9】
入力部と表示部とを備え、記憶装置にアクセス可能な計算機上で動作するソフトウェアとして実装された探索支援方法であって、
前記記憶装置には、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、前記原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する物性関係性データベースが保持され、
前記探索支援方法は、前記入力部を介して始点として指定された、前記複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つと、合わせて指定されたその増減方向を入力する、始点情報入力工程と、
前記始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が前記物性関係性データベースに規定されており、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性を、前記物性関係性データベースに記憶されている前記関係性関数に基づいて特定する、関係性判定工程と、
特定された前記増減特性に応じて前記表示部に表示させる、表示工程と、を含む、
探索支援方法。
【請求項10】
請求項9において、前記探索支援方法は、表示グラフ生成工程をさらに有し、
前記表示グラフ生成工程は、前記物性パラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとし対応するノード間をエッジとし、前記始点に対応するノードと前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードとを含むグラフを生成し、
前記表示工程は、前記始点に対応するノードを第1の表示状態で表示し、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードを当該物性パラメータの増減特性に応じた表示状態で前記表示部に表示させる、
探索支援方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記関係性判定工程は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定された増減特性を、その増減の方向と程度に基づいて、予め規定された複数の区分の中から該当する区分を特定し、
前記表示工程は、当該物性パラメータに対応するノードを、特定された区分に応じた表示状態で前記表示部に表示させる、
探索支援方法。
【請求項12】
請求項11において、予め規定された前記複数の区分は、原因側物性パラメータの物性値が増加したときの結果側物性パラメータの物性値の増減が、指数的に増加する場合、べき乗で増加する場合、線形で増加する場合、線形よりも緩やかに増加する場合、線形よりも緩やかに減少する場合、線形で減少する場合、べき乗で減少する場合、指数的に減少する場合、一意に特定できない場合である、
探索支援方法。
【請求項13】
請求項10、請求項11または請求項12において、
前記表示工程は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された増減特性の増減方向が増加または減少のうちいずれか指定される一方である物性パラメータに対応するノードを当該増減特性に応じた表示状態で表示し、それ以外の物性パラメータに対応するノードを前記所定の範囲の外にある物性パラメータに対応するノードと同様の表示状態で前記表示部に表示させる、
探索支援方法。
【請求項14】
請求項10、請求項11または請求項12において、
前記物性関係性データベースは、前記グラフを構成するノードとエッジのうちの少なくとも一部に付与される、属性情報をさらに記憶し、
前記表示工程は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された前記増減特性に加えて、前記始点から当該物性パラメータに対応するノードに至る経路上のノードとエッジに付与された属性情報に基づいて、当該ノードの表示状態を決定する、
探索支援方法。
【請求項15】
請求項10から請求項14のいずれか1項において、
前記物性関係性データベースは、前記関係性関数について、前記結果側物性パラメータの物性値を求めるための、前記原因側物性パラメータの物性値を引数とする関数として記憶し、
前記関係性判定工程において、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定される、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性は、
当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点と対をなすとき、その対について規定された関係性関数の変化として特定され、
当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点から他の物性パラメータを経由して規定されるとき、前記始点から当該物性パラメータに至る経路で規定されている複数の物性パラメータ対についてそれぞれ規定された関係性関数を累積的に合成した関数の変化として特定される、
探索支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データベースを使った物性の関係性の探索を支援する探索支援システム、探索システム及び探索支援方法に関し、特に物性パラメータ間の関係性を表すグラフを対象とする経路探索に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
材料研究における予測や設計の目標は、目的の特性を持つ材料を特定することである。このために旧来から多用されてきた手法は、条件-特性チャートから目的の特性を持つ材料の特定を目指す手法である。これは複数の条件のうち特定の1つの条件のみを変化させたときの特性の変化を観測してチャートを作成し、そのチャートを補間または外挿することによって、目的の特性を持つ条件を求め、それに合致する材料を特定する方法である。ここでいう「チャート」とは、折れ線グラフ等を表す「グラフ」と同義であるが、後述する、ノードとエッジから成る「グラフ」と区別する目的で別の語を用いる。
【0003】
このとき、複数の条件のうち特定の1つの条件のみを変化させたときの特性の変化は、自ら実験を行って入手することが多い。多数の文献を調査しても上記特定の条件以外の条件がすべて同じであるデータを大量に入手することは困難だからである。
【0004】
特許文献1には、所望の特性を有する新規材料の構成物質情報を、客観的に探索することが可能な探索システムが開示されている。
【0005】
同文献に開示される探索システムは、複数(多数)の物質についてそれぞれ複数の物性パラメータ情報を有するデータベースを備える。例えば、n個の物質についてm個の物性パラメータを有するときには、データベースはn行m列のテーブル形式で表現される。このとき、個々の物質によっては実データが得られる物性パラメータだけではなく、実データが与えられていない物性パラメータがあってもよい。即ち、上記n行m列のテーブルには空欄があってもよい。
【0006】
検索対象の物性パラメータを1つの軸とし、他の物性パラメータの一部をその他の軸として、2次元または3次元以上の空間を作成して、上記データベース内の各物質をマッピングする。このとき、実データのない物性パラメータについては、多変量解析、所定の論理式に基づく計算、または、第1原理計算などを使って予測した仮想データによって補う。実データと仮想データをマッピングして得られた探索マップにおいて、予め規定したルールに基づいて所望の特性を有する物質を特定するとされる。
【0007】
特許文献1に記載される技術では、仮想データを予測するために、複数の物性パラメータ相互の関係性を利用することとなる。物性パラメータの関係性とは、異なる物性パラメータ間に存在する科学的根拠に基づいた関係性、即ち、理論的に説明され定式化された関係性であり、例えば、上記の所定の論理式に基づく計算や第1原理計算もこれに含まれる。これに加えて、経験的に得られた関係性も存在する。理論的な説明が未だなされておらず、また、定式化もされていない段階であっても、実験データから明確な相関が認められることによって、関係性の存在が知られている物性パラメータが存在する。さらに、多数の技術分野を横断的に見ることによって、関係性が知られている物性パラメータの組合せをさらに増やすことができる。
【0008】
このように、多数の技術分野を横断的に見た場合には、物性パラメータの数が非常に多くなるため、関係性の有無に依らない任意の組合せは膨大な数に上ってしまう。取り扱う物性パラメータの数をK個とすれば、そのうちの任意の2個の組合せはK!×(K-1)!/2である。したがって、特許文献1に記載されるような従来の探索システムに利用することができる関係性は、物性パラメータの組合せのうち、あくまでも既に知られた組合せに限定されることとなる。これを関係性の存在が知られていない組合せに拡張するためには、そもそも任意の組合せが上述のように膨大であるところから、有望な組合せを選ぶためにはユーザー自身の知識や経験に依るところが大きい。しかしながら、多くの技術分野を横断的に見た場合には、その全般に渡る広範な知識と経験を備えることを、ユーザーに期待するのは非現実的である。
【0009】
そこで、本願の発明者は、複数の物性パラメータの任意の組合せのうち、既に知られている関係性に基づいて、有意な関係性を有する物性パラメータの未知の組合せを探索することができる、探索システム及び探索方法を発明し、特許文献2の内容で国際出願した。
【0010】
特許文献2には、複数の物性パラメータの任意の組合せのうち、既に知られている関係性に基づいて、有意な関係性を有する、物性パラメータの未知の組合せを探索することができる、探索システム及び探索方法が開示されている。この探索システムは、データベースとグラフ生成部とグラフ探索部とを備え、以下のように構成される。データベースは、互いに関係性を有する物性パラメータの複数の対を記憶し、グラフ生成部は、データベースに記憶された複数の物性パラメータをノードとし、関係性を有すると記憶された物性パラメータ対に対応するノード間をエッジとする、グラフを生成する。グラフ探索部は、与えられる探索条件に基づいて、グラフ生成部から生成されたグラフに対する経路探索を行い、探索結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2007-18444号公報
【文献】国際公開第WO2017/221444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び2について本発明者が検討した結果、以下のような新たな課題があることがわかった。
【0013】
特許文献1に記載される技術では、仮想データを予測するために、複数の物性パラメータ相互の関係性を利用するが、その関係性は既に知られている関係性に限られることとなる。
【0014】
これに対し本願の発明者は、多数の技術分野を横断的に見た場合には、物性パラメータの数が非常に多くなるため、関係性の有無に依らない任意の組合せの中から、未知の、しかし有意な関係性を抽出することが可能であることを見出し、その解決方法として特許文献2に記載される探索システムを提案した。
【0015】
特許文献2に示される探索システム及び探索方法によれば、相互に関係性の低い分野を含むあらゆる分野を横断的に探索することができ、もって有意な関係性を有する物性パラメータの未知の組合せを抽出することができる。
【0016】
このような探索を行うユーザーにとっては、抽出された経路に基づいて、有意な関係性を有する2つの物性パラメータのうちの一方を制御して、他方を目的の物性値に調整するような、最適材料の選択や製造工程の最適化を行うことが最終的な目的であることが少なくない。
【0017】
本願の発明者は、このような探索を行うユーザーにとっては、探索そのものや探索結果の評価など以外にも、探索に先立って探索条件を決める作業が重い負担であることに気づいた。物性探索においては、多くの物性が複雑に絡み合うので、経路探索を行うとしても始点、終点を選ぶ際に候補となる物性パラメータをある程度絞り込むためにすら別途の作業負担を強いられるためである。
【0018】
本発明の目的は、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、探索条件を絞り込むための参考情報を、ユーザーに提供することができる探索支援システムを実現することである。
【0019】
このような課題を解決するための手段を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施の形態によれば、下記の通りである。
【0021】
すなわち、物性関係性データベースと、関係性判定部と、入力部と、表示部とを備える探索支援システムであって、以下のように構成される。
【0022】
前記物性関係性データベースは、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、前記原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する。
【0023】
前記入力部を介して、前記複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つが始点とされ、合わせてその増減方向が指定されたとき、前記関係性判定部は、以下のように動作するように構成される。
【0024】
前記始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が前記物性関係性データベースに規定されており前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータを抽出する。前記始点とされた原因側物性パラメータが指定された増減方向に変化したときの、抽出された物性パラメータの増減特性を、前記物性関係性データベースに記憶されている前記関係性関数に基づいて特定し、特定された増減特性に応じて前記表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の前記一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0026】
すなわち、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態1に係る探索支援システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
図3図3は、増減特性の区分の例を示す説明図である。
図4図4は、指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータの増減特性を表示した例を示す説明図である。
図5図5は、指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータの増減特性を表示した別の例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態2に係る探索支援方法の構成例を示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示すフローチャートにおけるサブルーチンの構成例を示すフローチャートである。
図8図8は、属性情報を含む、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
図9図9は、ノードに属性情報を付与するためのデータが追加された、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
図10図10は、優先度を考慮した場合の表示例である。
図11図11は、関係性関数として正確な数式を記述した、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
図12図12は、実施形態5に係る探索システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0029】
〔1〕<始点を指定すると周辺ノードの増減を可視化する探索支援システム>
本願において開示される代表的な実施の形態に係る探索支援システム(10)は、物性関係性データベース(1)と、関係性判定部(4)と、入力部(2)と、表示部(3)とを備え、以下のように構成される(図1)。
【0030】
前記物性関係性データベースは、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、前記原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する(図2)。
【0031】
前記入力部を介して、前記複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つが始点とされ、合わせてその増減方向が指定されたとき、前記関係性判定部は、以下のように動作する。
【0032】
前記始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が前記物性関係性データベースに規定されており前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータを特定する。前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの、抽出した前記物性パラメータそれぞれの増減特性を、前記物性関係性データベースに記憶されている前記関係性関数に基づいて特定し、特定された増減特性に応じて前記表示部に表示させる(図4図5)。
【0033】
これにより、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0034】
〔2〕<グラフによる可視化>
〔1〕項において、前記探索支援システムは、表示グラフ生成部(5)をさらに有し、以下のように構成される。
【0035】
前記表示グラフ生成部は、前記物性パラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとし対応するノード間をエッジとし、前記始点に対応するノードと前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードとを含む表示グラフを生成する。表示グラフは、増減特性の判定対象となるノードをすべて含み、さらにその周囲のノードを含むことが望ましい。
【0036】
前記表示部は、前記始点に対応するノードを第1の表示状態で表示し、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードを当該物性パラメータの増減特性に応じた表示状態で表示する。
【0037】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性が可視化されるので、より効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0038】
〔3〕<区分に応じた表示>
〔2〕項において、前記関係性判定部は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定された増減特性を、その増減の方向と程度に基づいて、予め規定された複数の区分の中から該当する区分を特定し(図3)、前記表示部は、当該物性パラメータに対応するノードを、特定された区分に応じた表示状態で表示する(図4図5)。
【0039】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性がより見やすい状態で可視化されるので、ユーザーによる探索作業の効率がさらに向上される。
【0040】
〔4〕<区分の具体例>
〔3〕項における予め規定された前記複数の区分は、原因側物性パラメータの物性値が増加したときの結果側物性パラメータの物性値の増減の程度に基づいて規定される、例えば以下の9通りである(図3)。
(1)指数的に増加
(2)べき乗(例えば2乗、3乗など)で増加
(3)線形で増加
(4)線形よりも緩やかに増加
(5)線形よりも緩やかに減少
(6)線形で減少
(7)べき乗(例えば2乗、3乗など)で減少
(8)指数的に減少
(9)一意に特定不能
【0041】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性がさらに見やすい状態で可視化される。
【0042】
〔5〕<正または負の相関を持つノードに限定して表示>
〔2〕項、〔3〕項または〔4〕項において、前記表示部は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された増減特性の増減方向が増加または減少のうちいずれか指定される一方である物性パラメータに対応するノードを、当該増減特性に応じた表示状態で表示し、それ以外の物性パラメータに対応するノードを前記所定範囲の外にある物性パラメータに対応するノードと同様の表示状態で表示する(図5)。
【0043】
これにより、ユーザーは、自身の関心がある正または負の相関を持つ物性パラメータに対応するノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0044】
〔6〕<優先度の高いノードに絞った強調表示>
〔2〕項、〔3〕項または〔4〕項において、前記物性関係性データベースは、前記表示グラフを構成するノードとエッジのうちの少なくとも一部に付与される属性情報をさらに記憶する(図8図9)。
【0045】
前記表示部は、前記始点から前記所定範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された前記増減特性に加えて、前記始点から当該物性パラメータに対応するノードに至る経路上のノードとエッジに付与された属性情報に基づいて、当該ノードの表示状態を決定する(図10)。
【0046】
これにより、ユーザーは、自身にとってより優先度の高い経路に対応する物性パラメータノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0047】
〔7〕<関係性関数の累積的合成>
〔1〕項から〔6〕項のいずれか1項において、前記物性関係性データベースは、前記関係性関数について、前記結果側物性パラメータの物性値を求めるための、前記原因側物性パラメータの物性値を引数とする関数として記憶し(図11)、前記探索支援システムは以下のように構成される。
【0048】
前記関係性判定部によって、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定される、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性は、当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点と対をなすとき、その対について規定された関係性関数の変化として特定される。また、当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点から他の物性パラメータを経由して規定されるとき、前記始点から当該物性パラメータに至る経路で規定されている複数の物性パラメータ対についてそれぞれ規定された関係性関数を累積的に合成した関数の変化として特定される。
【0049】
これにより、始点として指定された原因側物性パラメータの増減に対する、関係性を有する各物性パラメータの増減特性を、経由する物性パラメータが多くても正確に特定することができる。経由する物性パラメータ対の関係性を忠実にトレーするからである。
【0050】
〔8〕<探索システム>
本願において開示される代表的な実施の形態に係る探索システム(11)は、〔1〕項から〔7〕項のいずれか1項に記載される、前記関係性判定部と、前記入力部と、前記表示部とを含むユーザーインターフェース(9)と、前記物性関係性データベースと、さらにグラフ生成部(6)と、グラフ探索部(8)とを備え、以下のように構成される(図12)。
【0051】
前記グラフ生成部は、前記物性関係性データベースに基づいて、物性関係性グラフ(7)を生成する。
【0052】
前記物性関係性グラフは、前記物性関係性データベースに記憶される前記複数の物性パラメータ対を構成する複数の物性パラメータのそれぞれに対応する複数のノードと、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対のそれぞれに対応する一対のノード間を接続する複数のエッジとによって構成される。
【0053】
前記入力部を介して探索条件として始点と終点とを指定した経路探索が指示されたとき、前記グラフ探索部は、前記物性関係性グラフを対象とする経路探索を行い、当該始点から当該終点に至る経路を抽出し、その結果を前記表示部に出力する。
【0054】
これにより、〔1〕~〔7〕に記載される探索支援システムが搭載され、ユーザーの探索作業に対する支援機能が強化された探索システムが提供される。この探索システムでは、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができる。
【0055】
〔9〕<始点を指定すると周辺ノードの増減を可視化する探索支援方法>
本願において開示される代表的な実施の形態に係る探索支援方法は、入力部と出力部とを備え記憶装置にアクセス可能な計算機を使った探索支援方法であって、以下のように構成される。
【0056】
前記記憶装置には、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、前記原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する物性関係性データベース(図2)が保持されている。
【0057】
前記探索支援方法は、始点情報入力工程(S1)と、関係性判定工程(S10、S14)と、表示工程(S10、S15)とを含む(図6,7)。
【0058】
前記始点情報入力工程(S1)では、前記入力部を介して始点として指定された、前記複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つと、合わせて指定されたその増減方向が入力される。
【0059】
前記関係性判定工程(S10)では、前記始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が前記物性関係性データベースに規定されており、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータを抽出する。前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの、抽出した前記物性パラメータそれぞれの増減特性を、前記物性関係性データベースに記憶されている前記関係性関数に基づいて特定する。
【0060】
前記表示工程(S10)では、特定された前記増減特性に応じて前記表示部に表示させる。
【0061】
なお、カッコ内に示した工程S10は、一実施態様においては、関係性判定工程と表示工程の両方を含む。指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータは、多くの場合複数となり、1個ずつ順次増減特性を求め、その結果を表示させた後に、次の物性パラメータについての処理に移行する形態である。そのため、関係性判定工程と表示工程とは交互に実行されることとなる。関係性判定工程と表示工程は、この例のように混在させても良いし、明確に分離して実装しても良い。
【0062】
これにより、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0063】
〔10〕<グラフによる可視化>
〔9〕項において、前記探索支援方法は、表示グラフ生成工程(S2)をさらに有する。
【0064】
前記表示グラフ生成工程は、前記物性パラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとし対応するノード間をエッジとし、前記始点に対応するノードと前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードとを含む表示グラフを生成する。表示グラフは、増減特性の判定対象となるノードをすべて含み、さらにその周囲のノードを含むことが望ましい。
【0065】
前記表示工程は、前記始点に対応するノードを第1の表示状態で表示し、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードを当該物性パラメータの増減特性に応じた表示状態で前記表示部に表示させる。
【0066】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性が可視化されるので、より効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0067】
〔11〕<区分に応じた表示>
〔10〕項において、前記関係性判定工程は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定された増減特性を、その増減の方向と程度に基づいて、予め規定された複数の区分(図3)の中から該当する区分を特定する。前記表示工程は、当該物性パラメータに対応するノードを、特定された区分に応じた表示状態で前記表示部に表示させる(S15)。
【0068】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性がより見やすい状態で可視化されるので、ユーザーによる探索作業の効率がさらに向上される。
【0069】
〔12〕<区分の具体例>
〔11〕項における予め規定された前記複数の区分は、原因側物性パラメータの物性値が増加したときの結果側物性パラメータの物性値の増減の程度に基づいて規定される、例えば以下の9通りである(図3)。
(1)指数的に増加
(2)べき乗(例えば2乗、3乗など)で増加
(3)線形で増加
(4)線形よりも緩やかに増加
(5)線形よりも緩やかに減少
(6)線形で減少
(7)べき乗(例えば2乗、3乗など)で減少
(8)指数的に減少
(9)一意に特定不能
【0070】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性がさらに見やすい状態で可視化される。
【0071】
〔13〕<正または負の相関を持つノードに限定して表示>
〔10〕項、〔11〕項または〔12〕項において、前記表示工程は、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された増減特性の増減方向が増加または減少のうちいずれか指定される一方である物性パラメータに対応するノードを当該増減特性に応じた表示状態で表示し、それ以外の物性パラメータに対応するノードを前記所定範囲の外にある物性パラメータに対応するノードと同様の表示状態で前記表示部に表示させる(図5)。
【0072】
これにより、ユーザーは、自身の関心がある正または負の相関を持つ物性パラメータに対応するノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0073】
〔14〕<優先度の高いノードに絞った強調表示>
〔10〕項、〔11〕項または〔12〕項において、前記物性関係性データベースは、前記表示グラフを構成するノードとエッジのうちの少なくとも一部に付与される、属性情報をさらに記憶する(図8図9)。
【0074】
前記表示工程は、前記始点から前記所定範囲内にある物性パラメータそれぞれについて、特定された前記増減特性に加えて、前記始点から当該物性パラメータに対応するノードに至る経路上のノードとエッジに付与された属性情報に基づいて、当該ノードの表示状態を決定する(図10)。
【0075】
これにより、ユーザーは、自身にとってより優先度の高い経路に対応する物性パラメータノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0076】
〔15〕<関係性関数の累積的合成>
〔9〕項から〔14〕項のいずれか1項において、前記物性関係性データベースは、前記関係性関数について、前記結果側物性パラメータの物性値を求めるための、前記原因側物性パラメータの物性値を引数とする関数として記憶する(図11)。
【0077】
前記関係性判定工程において、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて特定される、前記始点として指定された原因側物性パラメータが指定された前記増減方向に変化したときの増減特性は、当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点と対をなすとき、その対について規定された関係性関数の変化として特定される。当該物性パラメータが、前記物性関係性データベースにおいて前記始点から他の物性パラメータを経由して規定されるとき、前記始点から当該物性パラメータに至る経路で規定されている複数の物性パラメータ対についてそれぞれ規定された関係性関数を累積的に合成した関数の変化として特定される。
【0078】
これにより、始点として指定された原因側物性パラメータの増減に対する、関係性を有する各物性パラメータの増減特性を、経由する物性パラメータが多くても正確に特定することができる。経由する物性パラメータ対の関係性を忠実にトレーするからである。
【0079】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る探索支援システムの構成例を示すブロック図である。
【0080】
本実施形態1に係る探索支援システム10は、物性関係性データベース1と、関係性判定部4と、入力部2と、表示部3とを備える。
【0081】
物性関係性データベース1は、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、原因側物性パラメータの増減に対する前記結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する。どのような物性パラメータの対が互いに関係性を有するかは、理論的に確立され教科書等に記載されて広く知られているような関係性が好ましいが、理論的に十分に説明されるには至ってはいなくても、経験的に知られている関係性が含まれても良い。また、物性関係性データベース1に記憶する物性パラメータ対の関係性は、できる限り多くの分野から収集されるとよい。
【0082】
物性関係性データベース1に記憶されている複数の物性パラメータ対のうちの原因側物性パラメータの一つが、入力部2を介して始点として指定され、合わせてその増減方向が指定されたとき、関係性判定部4は、以下のように動作する。
【0083】
関係性判定部4は、始点として指定された原因側物性パラメータと直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が、物性関係性データベース1に規定されており、その始点から所定の範囲内にある物性パラメータを特定する。関係性判定部4は、その物性パラメータそれぞれの増減特性を、物性関係性データベース1に記憶されている関係性関数に基づいて判定し、表示部3を介して表示させる。
【0084】
これにより、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0085】
<グラフによる可視化>
探索支援システム10は、表示グラフ生成部5をさらに有するとより好適である。
【0086】
表示グラフ生成部5は、物性関係性データベース1に記憶されている物性パラメータ対に含まれる複数の物性パラメータをノードとし対応するノード間をエッジとし、指定された始点に対応するノードとその始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードとを含む、表示用グラフを生成する。表示用グラフは、増減特性の判定対象となるノードをすべて含み、さらにその周囲のノードを含むことが望ましい。増減特性の判定対象であるノードのさらに周辺のノード(物性)をユーザーに見せることによって、ユーザーに探索範囲を変更する必要性などの判断材料を提供することができる。
【0087】
表示部3は、前期表示用グラフにおいて、始点に対応するノードを第1の表示状態で表示し、前記始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードを当該物性パラメータの増減特性に応じた表示状態で表示する。始点に対応するノードを示す「第1の表示状態」とは、ユーザーが始点として指定したことを明示するための表示であり、始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノード、あるいはその他のノードと区別するための強調表示を意味し、例えば、拡大表示、強調色表示、点滅表示などである。
【0088】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性が可視化されるので、より効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0089】
図2は、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
【0090】
図2では物性パラメータ名として、ノード名そのものを表示してあるが、ノード名には実際の物性パラメータ名が対応付けられている。原因側のノードAに対応する物性パラメータが増加したときの関係性関数が、ノードC,D,G,K,Nに対応する各結果側物性パラメータについて、それぞれ、3乗で減少、指数的に減少、3乗で増加、線形よりも緩やかに増加、線形で減少であることが記憶されている。以下は同様であるので説明を省略する。
【0091】
図2には例示していないが、関係性関数としては、指数や比例定数など、関数を定量的に規定するための定量的な値が付加的に記憶されていてもよい。また、物性関係性データベース1には、関係性がその関数で表現される条件を記憶する項目(列)がさらに含まれていても良い。
【0092】
物性関係性データベース1において、関係性関数はいくつかの類型に区分し、符号化して記憶するように構成することもできる。符号化して記憶することにより、物性関係性データベース1の物理的なデータ容量を抑えることが出来る。
【0093】
また、関係性関数としては、教科書等に記述されている関係式そのものを、計算機で読み取ることができる記述言語で表記したものを採用してもよい。実施形態3で詳述する。
【0094】
<区分に応じた表示>
関係性判定部4は、特定された増減特性を、その増減の方向と程度に基づいて、予め規定された複数の区分の中から該当する区分を特定するように構成するとより好適である。
【0095】
図3は、増減特性の区分の例を示す説明図である。
【0096】
図3に示した例では、関係性関数について、原因側物性パラメータの物性値が増加したときの結果側物性パラメータの物性値の増減の方向と程度に基づいて、以下の9通りに区分している。
(1)指数的に増加
(2)べき乗(例えば2乗、3乗など)で増加
(3)線形で増加
(4)線形よりも緩やかに増加
(5)線形よりも緩やかに減少
(6)線形で減少
(7)べき乗(例えば2乗、3乗など)で減少
(8)指数的に減少
(9)一意に特定不能
【0097】
表示部3は、当該物性パラメータに対応するノードを、特定された区分に応じた表示状態で表示する。
【0098】
これにより、関連性のある一連の物性パラメータとその相関の方向などの増減特性がより見やすい状態で可視化されるので、ユーザーによる探索作業の効率がさらに向上される。
【0099】
図4は、指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータの増減特性を表示した例を示す説明図である。
【0100】
始点として指定された物性パラメータ(ノードA)を始点として所定の範囲内にある物性パラメータ(ノードC,D,E,F,G,K,L,M,N)の増減特性が、図3に示したように区分され、それぞれに色が割り当てられている。図4は、色を割り当てる代わりに線種を割り当てて、物性パラメータの増減の方向と程度を表したものである。一重線の円は線形よりも緩やかな変化、二重線は線形の変化、細線と太線の二重線はべき乗(2乗、3乗など)の変化、三重線は指数的な変化をそれぞれ表し、それと組み合わせて実線は増加方向、破線は減少方向の変化を表す。表示部3がカラー表示可能であれば、図3に示す例のように、色によって区分を表現するのが好適である。
【0101】
図4に例示した部分グラフは、指定ノードAに対応する物性パラメータが増加したときの、ノードAを始点として経路長2ノード以内にある終点候補ノード(C,D,E,F,G,K,L,M,N)それぞれに対応する物性パラメータの増減の方向と程度を、図3に示す8通りに区分して表示されている。
【0102】
終点候補ノードCは細線と太線の二重の破線で表示されており、対応する物性パラメータが、指定ノードAに対応する物性パラメータが増えたときにべき乗で減少することがわかる。終点候補ノードDとEは三重の破線で表示されており、対応する物性パラメータが、指定ノードAに対応する物性パラメータが増えたときに指数的に減少することがわかる。以下、終点候補ノードF,G,K,L,M,Nは、それぞれ、一重破線、細線と太線の二重実線、一重実線、二重実線、三重実線、二重破線で表示されており、対応する各物性パラメータが、指定ノードAに対応する物性パラメータが増えたときに、それぞれ、線形よりも緩やかに減少、べき乗で増加、線形よりも緩やかに増加、線形で増加、べき乗で増加、線形で減少することがわかる。他のノードBについては、物性関係性グラフ3を有向グラフ、指定ノードAを始点としたときに、ノードBに至る経路が抽出されていない。もう1つのノードHについては、物性関係性グラフ3を有向グラフ、指定ノードAを始点としたときの経路は存在するが、経路長が3ノードであるので、抽出対象外とされたものである。
【0103】
図3に示した例には、「(9)一意に特定不能」が含まれている。一般に、物性パラメータ間の関係性が数式で表現され、始点と終点以外の物性パラメータの値は変化しないものとした場合、始点となる物性パラメータの物性値が決まれば、終点となる物性パラメータの物性値は、一意に決定される。しかし、相関関係に物性値に依存して相関関係が変わるものがあり、本実施形態のようにパラメータの値(物性値)が具体的に与えらない場合に一意に決定することができず、「一意に特定不能」となる場合がある。
【0104】
また、関係性判定部4に適用される、増減特性を求めるアルゴリズムによっては、「一意に特定不能」となる場合がある。本願発明の目的が、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、探索条件を絞り込むための参考情報を、ユーザーに提供することであることから、表示する増減特性に正確さを追求するよりも、表示の迅速さが優先される場合があり得る。そのため、関係性判定部4の処理を簡略化することにより、迅速に表示できること、または表示範囲を広げることを優先するために、表示される増減特性の正確さを犠牲にすることができる。
【0105】
例えば、関係性関数を図2に示すように、図3の増減特性の区分と同程度の区分で表し、始点から終点までの各経路で関係性関数を累積的に作用させる場合に、「一意に特定不能」となる場合がある。原因側Fと結果側Aの関係が、A=B+D、D=E-2F、B=C2、C=G/Fで規定されているとすると、始点Fが増加した時のノードAの増減特性は、[F-C-B-A]の経路と、[F-D-A]の経路の2通りで計算できることになる。[F-C-B-A]の経路では、Fを増加させると、CはFに反比例(減少)、BはFの二乗に逆比例で減少、よってAの増減特性は「Fの二乗に逆比例に近い形で減少」と求められる。一方、[F-D-A]の経路では、Fを増加させると、DはFに比例して減少、AはGに線形に近い形で減少、よってAの増減特性は「Fに線形に近い形で減少」と求められる。そのため、Fが増加したときのAの増減特性は「一意に特定不能」となる。
【0106】
増減特性を特定する際に、上の例のような不一致が発生した場合、以下のような方法で対処することができる。
(a)関係性関数の正確な式を改めて求めて、一意に特定する。
(b)寄与する物性パラメータの物性値を考慮して、一意に特定する。
(c)優先度を定めて、優先度の高い経路の結果を採用する。
(d)増減の程度がより弱い方を優先的に採用する。
上の例では、どちらも「減少」であるから、より緩やかな「線形よりも緩やかに減少」とする。
(e)「一意に特定不能」である旨を表示し、そのノード以降のノードへの伝播は止める。
【0107】
上述したように、表示の迅速性と表示する増減特性の正確性のバランスを考慮して、上のような対処方法を採用することができる。
【0108】
<正または負の相関を持つノードに限定して表示>
図5は、始点が指定されたときの始点から所定の範囲内にある物性パラメータの増減特性を表示した別の例を示す説明図である。
【0109】
図4には、始点に対応する物性パラメータが増加したときに、それに応じて変化する物性パラメータに対応するノードは、増減の変化の方向に関わらず強調表示する例であるが、ユーザーの関心があるのは、増加方向か減少方向かの一方であることが多い。
【0110】
そこで、探索支援システム10には、増加方向か減少方向かいずれか一方の変化方向の物性パラメータに絞って、対応するノードを強調表示することができる機能を持たせるのが好適である。すなわち、表示部3は、始点から所定の範囲内にある物性パラメータに対応するノードそれぞれについて、対応する増減方向が増加または減少のうち、いずれか指定される一方であるノードの表示を強調表示に変更し、他方のノードの表示は、それ以外のノードと同様に表示する。
【0111】
図5に例示した部分グラフは、始点として指定されたノードAに対応する物性パラメータが増加したときの、ノードAを始点として経路長2ノード以内にあるノードC,D,E,F,G,K,L,M,Nのうち、対応する物性パラメータの増減の方向が増加方向であるノードG,K,L,Mについて、その増加の程度を強調し、減少方向であるノードC,D,E,Fについては、ノードB,Hや他の無相関のノードと同様の表示としている。
【0112】
これにより、ユーザーが探索条件を入力する際にユーザーは、自身の関心がある側の正または負の相関を持つ物性パラメータに対応するノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0113】
〔実施形態2〕
実施形態1で説明した探索支援システムは、電子計算機上で動作するソフトウェアとして実装することができる。その動作は、探索支援方法の発明の一実施形態である。
【0114】
即ち、本実施形態2の探索支援方法は、入力部と出力部とを備え記憶装置にアクセス可能な計算機(不図示)を使った探索支援方法であって、以下のように構成される。
【0115】
図6図7は、実施形態2に係る探索支援方法の構成例を示すフローチャートである。
【0116】
記憶装置には、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対について、原因側物性パラメータと、結果側物性パラメータと、原因側物性パラメータの増減に対する結果側物性パラメータの増減の程度を表す関係性関数とを対応付けて記憶する物性関係性データベース1(例えば、図2)が保持されている。
【0117】
探索支援方法は、始点情報入力工程(S1)と、関係性判定工程(S10)と、表示工程(S10)とを含む。カッコ内に示した工程S10は、関係性判定工程(S14)と表示工程(S15)の両方を含む実施形態である。指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータは、多くの場合複数となり、1個ずつ順次増減特性を求め、その結果を表示させた後に、次の物性パラメータについての処理に移行するので関係性判定工程(S14)と表示工程(S15)とを交互に実行する形態となっている。関係性判定工程と表示工程は、明確に分離して実装しても良いが、本実施形態では、両方がサブルーチンS10に含まれる。
【0118】
始点情報入力工程(S1)では、物性関係性データベース1に記憶される複数の物性パラメータ対のうちの、原因側物性パラメータの1つX0が、入力部を介して始点として指定され、合わせて指定された増減方向が入力される。
【0119】
図7は、サブルーチンS10の構成例を示すフローチャートである。
【0120】
サブルーチンS10は、自身の中でS20として再帰的に呼び出される。
【0121】
サブルーチンS10では、まず、始点に関する情報が入力される(S11)。サブルーチンS10が最初に呼び出された時には、上述した図6のとおり、入力部を介して入力された原因側物性パラメータX0とその増減方向が入力される(S11)。
【0122】
始点として指定された原因側物性パラメータX0が指定された増減方向に変化したときに、それに伴って変化する増減特性を求めるべき対象の物性パラメータY[0, j]を特定する(S12)。対象の物性パラメータは、始点として指定された原因側物性パラメータX0と直接または他の物性パラメータを経由しての関係性が物性関係性データベース1に規定されており、その始点X0から所定の範囲内にある物性パラメータである。所定の範囲は、例えば、物性パラメータをノードとし関係性を有する物性パラメータ間をエッジで接続したグラフの上での経路長によって規定することができる。
【0123】
抽出された物性パラメータY[0, j]のうち、当初の始点X0から所定の範囲内にあるものについては、以降の工程に進むが、所定範囲外であればサブルーチンを終了して元の処理に復帰する(S13,S17)。
【0124】
当初の始点X0から所定の範囲内にある対象の物性パラメータについて、始点として指定された原因側物性パラメータが指定された方向に変化したときの増減特性を、物性関係性データベース1に記憶されている関係性関数に基づいて特定する(S14)。
【0125】
表示工程では、特定された増減特性に応じて前記表示部に表示させる(S15)。
【0126】
さらに、物性パラメータY[0, j]を新たな始点、その増減特性を新たな増減特性として、同じサブルーチンを再帰的に呼び出す(S20)。
【0127】
再帰呼び出しから復帰したときには、次の物性パラメータY[0, j+1]についての処理(S13)に進む。
【0128】
呼び出されたサブルーチン(S20)内では、再帰呼び出しであるから当然に、図7に示したサブルーチンと同じ処理が行われる。即ち、物性パラメータY[i-1, j]を新たな始点Xiとしたときに、次の結果側物性パラメータY[i, j]を抽出され(S12)、当初の始点X0から所定の範囲内にあるものについて(S13)、増減特性の特定(S14)とその表示(S15)が行われる。
【0129】
当初の始点X0から所定の範囲内にある対象の物性パラメータすべてについて、増減特性の特定と表示が終わるまで、再帰呼び出しが繰り返される。
【0130】
これにより、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができるなど、ユーザーの探索作業が支援される。
【0131】
本実施形態では、再帰呼び出しによるソフトウェアを使った例を示したが、一実装形態に過ぎず、他の形態でも実装可能である。
【0132】
〔実施形態3〕
実施形態1と2では、指定された始点から所定の範囲内にある物性パラメータについて、特に取捨選択することなく平等に、その増減特性を表示する実施形態について説明した。しかし、「正または負の相関を持つノードに限定して表示」で説明したように、ユーザーの関心がより高い、結果側物性パラメータや始点からそれに至る経路がある場合が少なくない。その場合、物性パラメータ間の関係性をマッピングしたグラフのノードとエッジのうちの少なくとも一部に属性情報を付与しておき、その属性情報に基づいて、ユーザーの関心がより高い、結果側物性パラメータや始点からそれに至る経路について優先的に、増減特性を表示するように構成することができる。
【0133】
図8は、属性情報を含む、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
【0134】
図8では図2と同様に、物性パラメータ名としてノード名そのものを表示してあり、原因側物性パラメータが増加したときの、対応する各結果側物性パラメータの関係性関数が、それぞれ記憶されている。
【0135】
図8ではさらに、それぞれの関係性の信頼度が付与されている。信頼度は、その物性パラメータ対の関係性が、理論的に確立された関係性か、経験的に知られているに過ぎず、理論的裏付けがなされていない関係性か、などに基づいて規定することができる。物性パラメータ間の関係性をマッピングしたグラフにおいては、エッジの属性として扱うことができる。
【0136】
信頼度が高い程、小さい値を割り当てておくことによって、始点から結果側物性パラメータまでの経路に沿って、信頼度の和を求めた時に、値が小さいほど高信頼度の経路であることになる。本実施形態の一例では、信頼度の高い経路上にある物性パラメータの増減特性を、より優先して強調表示することができる。
【0137】
図9は、ノードに属性情報を付与するためのデータが追加された、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
【0138】
図8は各エントリー(各行)がエッジに対応するので、ノードに付与する属性情報を記述するには適さない。そこで、図9に示すような、各エントリーがノードに対応するデータベースが追加される。
【0139】
図9では図8図2と同様に、物性パラメータ名としてノード名そのものを表示してあり、グラフにマッピングされた時のエッジ数が出エッジの数と入エッジに分けて記憶され、当該物性値の測定可能性、データベースデータ量、及び物性値がそれぞれ記憶されている。測定可能性は、物性値の測定の容易さを表す指標である。データベースデータ量はデータベース内に蓄積されているデータの量である。物性値は、具体的な物性値そのものである。
【0140】
図8に示したエッジに付与する属性情報、及び図9に示したノードに付与する属性情報の種類や数は一例に過ぎず、任意に変更することができる。また、エッジのみまたはノードのみに属性情報を付与しても、両方に付与しても良い。
【0141】
複数の属性情報が付与された場合には、それらを重み付け加算して経路のスコアを算出し、優先度を決めることができる。重み付けを調整することにより、重視すべき属性情報、軽視または無視して良い属性情報を選択的に変更することができる。
【0142】
図10は、優先度を考慮した場合の表示例である。ノードAを始点として、2ノード以内の物性パラメータについて、増減特性を表示する。このとき、ノードKを経由してノードEに至る経路と、ノードNを経由してノードFに至る経路が、所定のスコアを超える優先度を持つと算出されたとする。これらの経路は、例えばエッジが太線によって強調表示され、合わせて、ノードK,E,N,Fの増減特性が図3の区分に則って表示されている。
【0143】
これにより、ユーザーは、自身にとってより優先度の高い経路に対応する物性パラメータノードに絞って強調表示させることができ、経路探索の効率をさらに向上することができる。
【0144】
優先度を算出する目的からは外れるが、各ノードに当該ノードに対応する物性が属する分野を属性情報として付与してもよい。ノードに対応する物性が属する分野としては、例えば、原子的、電子的、力学的、電気的、光学的、構造的、磁気的、熱力学的などである。
【0145】
入力部2において、ユーザーに始点とする物性パラメータの入力を促すときに、分野から階層的に順次絞り込むような入力支援機能をさらに備えることにより、ユーザーの意図する物性パラメータを迅速に指定することができる環境を、ユーザーに提供することができる。
【0146】
また、図4,5,10などの表示において、ノードごとにその属する分野が判別できるように表示することができる。
【0147】
〔実施形態4〕
図2図8では、関係性関数として簡略化し区分した関係性を採用した例を示したが、正確な数式を採用することもできる。
【0148】
数式は、原因側物性パラメータの物性値を引数とし、結果側物性パラメータの物性値を求める関数とすることができ、計算機によって読み取り可能な言語で記述する。例えば、content mathMLによって記述することができる。
【0149】
図11は、関係性関数として正確な数式を記述した、物性関係性データベース1の構成例を示す説明図である。
【0150】
格子熱伝導率と電子熱伝導率から熱伝導率を求める式(式1)とゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率から熱電材料の性能係数を求める式(式2)に基づいて、物性関係性データベース1を構成した例である。式1と式2をそれぞれそのままcontent mathMLによって記述した、math ML-1とmath ML-2が関係性関数として入力されている。
【0151】
関係性判定部4によって、始点から所定の範囲内にある物性パラメータの増減特性は、上記の関係性関数を使って特定される。例えば、始点を格子熱伝導率とし、それが増加したときの、熱伝導率の増減特性は、式1を使って算出するのとまったく同等の正確性で特定される。さらに熱電材料の性能係数の増減特性は、式1を使って算出された熱伝導率の増減特性を使い、さらに式2を使って算出される。これは、式1と式2の合成関数を使って関係性関数を規定したのと等価となる。即ち、熱電材料の性能係数を求める式2における熱伝導率に式1を代入した合成関数によって、格子熱伝導率が増加したときの、熱電材料の性能係数の増減特性が正確に特定される。
【0152】
このように、物性パラメータが、物性関係性データベース1において、始点から他の物性パラメータを経由して規定されるとき、始点から当該物性パラメータに至る経路で規定されている複数の物性パラメータ対についてそれぞれ規定された関係性関数を累積的に合成した関数の変化として特定される。
【0153】
これにより、始点として指定された原因側物性パラメータの増減に対する、関係性を有する各物性パラメータの増減特性を、経由する物性パラメータが多くても正確に特定することができる。経由する物性パラメータ対の関係性を忠実にトレーするからである。
【0154】
〔実施形態5〕
以上説明した各実施形態に係る探索支援システムは、物性の関係性を探索する探索システムの一部として実装することができる。
【0155】
図12は、実施形態5に係る探索システムの構成例を示すブロック図である。
【0156】
図1に示した探索支援システムの関係性判定部4と、入力部2と、表示部3とを含むユーザーインターフェース9と、物性関係性データベース1と、さらにグラフ生成部6と、グラフ探索部8とを備える。ユーザーインターフェース9には、表示グラフ生成部5をさらに含んでもよい。
【0157】
グラフ生成部6は、物性関係性データベース1に基づいて、物性関係性グラフ7を生成する。
【0158】
物性関係性グラフ7は、物性関係性データベース1に記憶される複数の物性パラメータ対を構成する複数の物性パラメータのそれぞれに対応する複数のノードと、互いに関係性を有する複数の物性パラメータ対のそれぞれに対応する一対のノード間を接続する複数のエッジとによって構成される。
【0159】
入力部2を介して探索条件として始点と終点とを指定した経路探索が指示されたとき、グラフ探索部6は、物性関係性グラフ7を対象とする経路探索を行い、当該始点から当該終点に至る経路を抽出し、その結果を表示部3に出力する。
【0160】
これにより、実施形態1から4に記載される探索支援システムが搭載され、ユーザーの探索作業に対する支援機能が強化された探索システムが提供される。この探索システムでは、物性パラメータ間の関係性の探索に先立って、その関係性についての参考情報がユーザーに提供されるので、効率的に探索条件を絞り込むことができる。
【0161】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0162】
1 物性関係性データベース
2 入力部
3 表示部
4 関係性判定部
5 表示グラフ生成部
6 グラフ生成部
7 物性関係性グラフ
8 グラフ探索部
9 ユーザーインターフェース
10 探索支援システム
11 探索システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12