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特許7142340水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システム
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20220916BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20220916BHJP
   B63G 8/39 20060101ALI20220916BHJP
   B63B 43/18 20060101ALI20220916BHJP
   G08G 3/02 20060101ALI20220916BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20220916BHJP
   G01S 15/74 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C11/48 D
B63G8/39
B63B43/18
G08G3/02 A
B63B49/00 Z
G01S15/74
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018069430
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177832
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岡本 章裕
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094976(JP,A)
【文献】特開2013-028296(JP,A)
【文献】特開2015-217882(JP,A)
【文献】特開2001-308766(JP,A)
【文献】特開2001-247087(JP,A)
【文献】特開2001-247085(JP,A)
【文献】特開2016-013829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0003193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63C 11/48
B63G 8/39
B63B 43/18
G08G 3/02
B63B 49/00
G01S 15/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の中に存在する水中探査機と音響通信を行なう水上浮体が、前記水上浮体に備えた自動船舶識別装置(AIS)により、前記水中探査機近傍の水域に存在する前記自動船舶識別装置(AIS)を備えた他の浮体の位置、速度、及び針路に関する情報を前記自動船舶識別装置(AIS)を介して入手し、前記水上浮体又は前記水中探査機が、前記水中探査機の水中探査機位置と深度に基づいた水面までの浮上所要時間と、前記他の浮体の前記位置、前記速度、及び前記針路とを考慮して前記水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定して前記音響通信を介して通信することを特徴とする水中探査機の情報共有方法。
【請求項2】
前記水上浮体が、前記水中探査機の前記浮上時刻及び前記浮上位置を前記自動船舶識別装置(AIS)を介して、前記他の浮体に配信することを特徴とする請求項1に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項3】
前記水上浮体が、把握した前記水中探査機の近傍の前記自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手し、前記水中探査機を浮上させる前記浮上時刻及び前記浮上位置の決定に利用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項4】
前記水上浮体と前記水中探査機との通信を、前記水中探査機の管制を行う水上管制体を中継して行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項5】
前記水上浮体又は前記水上管制体により前記水中探査機の音響測位を行い前記水中探査機位置を求め、前記浮上位置及び前記浮上時刻の決定に利用することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項6】
前記水中探査機が移動体である場合に、前記移動体の前記水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を前記他の浮体に配信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項7】
浮上させる前記水中探査機が複数機である場合に、前記水上浮体が、複数機の前記水中探査機の水面までの前記浮上所要時間をそれぞれ考慮して、複数の前記水中探査機を浮上させる前記浮上時刻及び前記浮上位置を決定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項8】
前記水中探査機が水面に浮上した後、無線通信により前記水上浮体又は前記水上管制体と通信を行い、前記水中探査機の前記水上浮体への揚収に利用することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項9】
水面に浮上した後、前記水中探査機に搭載した電波による測位手段により、前記水中探査機が自己の前記水中探査機位置を検出し、前記水上浮体又は前記水上管制体に前記無線通信を介して伝えることを特徴とする請求項8に記載の水中探査機の情報共有方法。
【請求項10】
水の中に存在する水中探査機と、前記水中探査機に設けた水中探査機音響通信手段と、水上浮体と、前記水上浮体に設けた自動船舶識別装置(AIS)と、前記水上浮体に設けた前記水中探査機音響通信手段と音響通信を行なう水上浮体音響通信手段と、前記水上浮体又は前記水中探査機に設けた前記水中探査機の水面までの浮上所要時間を考慮して前記水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定する浮上決定手段とを備え、前記浮上決定手段が、前記水中探査機の水中探査機位置と深度に基づいた水面までの前記浮上所要時間と、前記水上浮体の前記自動船舶識別装置(AIS)で得た前記水中探査機近傍の水域に存在する前記自動船舶識別装置(AIS)を有した他の浮体の位置、速度、及び針路に関する情報を利用して前記浮上時刻及び前記浮上位置を決定することを特徴とする水中探査機の情報共有システム。
【請求項11】
前記水上浮体が、決定した前記水中探査機の前記浮上時刻及び前記浮上位置を前記自動船舶識別装置(AIS)を介して、前記自動船舶識別装置(AIS)を有した前記他の浮体に配信することを特徴とする請求項10に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項12】
前記水上浮体が、把握した前記水中探査機近傍の前記自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手する障害物情報入手手段を備え、前記障害物情報入手手段で得られた前記情報を、前記浮上決定手段の前記水中探査機を浮上させる前記浮上時刻及び前記浮上位置の決定に利用することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項13】
前記水中探査機の管制を行う水上管制体を備え、前記水上管制体は、前記水中探査機音響通信手段と前記音響通信を行う水上管制体音響通信手段を有し、前記水上浮体と前記水中探査機との通信を中継することを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項14】
前記水上浮体又は前記水上管制体が、前記水中探査機の音響測位を行う音響測位手段を備え、前記浮上決定手段が、前記音響測位手段による前記水中探査機の音響測位結果である前記水中探査機位置を前記浮上位置及び前記浮上時刻の決定に利用することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項15】
前記水中探査機が移動体である場合に、前記移動体の前記水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を前記自動船舶識別装置(AIS)を介して前記他の浮体に配信することを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項16】
前記水中探査機が、水面に浮上した後、前記水上浮体又は前記水上管制体と無線通信を行う無線通信手段を有していることを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の水中探査機の情報共有システム。
【請求項17】
前記水中探査機が、水面に浮上した後、自己の前記水中探査機位置を検出する電波による測位手段を有し、前記測位手段で検出した自己の前記水中探査機位置を前記無線通信手段を介して伝えることを特徴とする請求項16に記載の水中探査機の情報共有システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の中に存在する水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋等において、水中に潜航する水中探査機を用いた水底探査が行われている。水中探査機の航行位置、浮上位置、又は調査範囲等の情報は、支援母船のみが把握しており、周辺を航行する他船等は浮上した水中探査機を目視等でしか把握できない。
特に、調査の効率化のために水中探査機を複数機同時に潜航させる場合は、水中探査機の調査範囲が拡大するため、支援母船は水中探査機が存在する周辺水域にとどまって他船等を警戒することが困難となる。
また、水中探査機が小型の場合、水面に浮上した水中探査機を他船から目視等で発見することは困難であるため、水中探査機が浮上して揚収に備えているとき、又は漂流しているときに、航行中の他船等と衝突するリスクが高まる。
【0003】
ここで、特許文献1には、第1領域に関する情報を取得する第1サブシステムと、第2領域に関する情報を取得する第2サブシステムと、第1領域に関する情報と第2領域に関する情報を結合処理する手段と、結合処理した情報をユーザに提示する手段と、AIS(自動船舶識別装置)に関連するデータの関係付け及び評価を実施する手段を備えた乗物又は設備のためのシステムが開示されている。
また、特許文献2には、GPS情報から測定した自船の位置、針路、速度を含むAIS情報を他船に送信するとともに、自船のAIS情報と他船のAIS情報から衝突確率を算出し、閾値以上のときに警報を発する船舶用航行支援装置が開示されている。
また、特許文献3には、船舶にGPS受信データを入力してAIS情報データを無線等により送信する通信手段を搭載し、陸上基地にAIS情報データを受信する受信手段と、取得したAIS情報データを周辺海域に放送するAIS送受信装置とを設け、陸上基地でAIS情報データ送信の代行を行う船舶航行情報システムが開示されている。
また、特許文献4には、水上航走体に搭載され、音響測位機が取得する水中航走体の位置に基づいて、水上航走体が水中航走体に近づくように水上航走体を航走させる第1の処理と、音響通信可能な位置まで走行した水上航走体が水中航走体との間でデータ通信するように音響通信を制御する第2の処理とを実行する航走支援装置が開示されている。
また、特許文献5には、水中航走体を浮上させる場合は、浮上予定位置の位置情報を呼び出して、水中航走体のソーナーにより、浮上予定位置とその周辺領域をスキャンし、その結果を基に浮遊物が検出されない浮上予定位置を水中航走体の実際の浮上位置として選定する水中航走体の浮上位置選定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-503908号公報
【文献】特開2013-28296号公報
【文献】特開2003-109200号公報
【文献】特開2017-16533号公報
【文献】特開2015-217882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、AISに関連するデータの関係付け及び評価についての記載があるが、AISにより得たデータをどのように処理するかという程度の記載にとどまり、AISは単に情報収集用のセンサの一つとして扱われているに過ぎない。
また、特許文献2は、AIS情報の送受信によって衝突危険性を他船と共有することにより船舶同士の衝突回避を図るものであり、水中探査機の衝突回避に関するものではない。
また、特許文献3は、水中探査機の衝突回避に関するものではない。また、陸上基地側に受信手段等の機器を設置する必要がある。
また、特許文献4は、水上航走体を個々の水中航走体に近づけて制御を行うことで、広域の調査においても水中航走体による水底等の調査精度を向上させようとするものであり、水中航走体と他船との衝突回避に関するものではない。
また、特許文献5は、水中航走体自らが浮上時にソーナーを用いて安全な浮上位置を選定しようとするものであるが、他船は水中航走体の浮上位置を把握することができない。また、浮上位置の選定は水中航走体のソーナーによりスキャン可能な範囲に限定される。
【0006】
そこで本発明は、水中探査機が他船等と衝突する可能性を低減できる水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載に対応した水中探査機の情報共有方法においては、水の中に存在する水中探査機と音響通信を行なう水上浮体が、水上浮体に備えた自動船舶識別装置(AIS)により、水中探査機近傍の水域に存在する自動船舶識別装置(AIS)を備えた他の浮体の位置、速度、及び針路に関する情報を自動船舶識別装置(AIS)を介して入手し、水上浮体又は水中探査機が、水中探査機の水中探査機位置と深度に基づいた水面までの浮上所要時間と、他の浮体の位置、速度、及び針路とを考慮して水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定して音響通信を介して通信することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、自動船舶識別装置(AIS)を介して得られた他の浮体に関する情報を考慮して、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を決定するため、浮上した水中探査機が他の浮体と衝突する可能性を低減することができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、水上浮体が、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を自動船舶識別装置(AIS)を介して、他の浮体に配信することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、他の浮体が自動船舶識別装置(AIS)を介して水中探査機の浮上時刻及び浮上位置に関する情報を入手し、水中探査機との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性をさらに低減することができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、水上浮体が、把握した水中探査機の近傍の自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手し、水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置の決定に利用することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機が自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物と衝突する可能性を低減することができる。
【0010】
請求項4記載の本発明は、水上浮体と水中探査機との通信を、水中探査機の管制を行う水上管制体を中継して行うことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、水中探査機が水上浮体から離れて水上管制体の管制下におかれている場合であっても、水中探査機が水上浮体や他の浮体等と衝突する可能性を低減することができる。
【0011】
請求項5記載の本発明は、水上浮体又は水上管制体により水中探査機の音響測位を行い水中探査機位置を求め、浮上位置及び浮上時刻の決定に利用することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、水中探査機のより正確な位置が反映された浮上時刻及び浮上位置を水上浮体又は水上管制体で決定することができる。
【0012】
請求項6記載の本発明は、水中探査機が移動体である場合に、移動体の水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を他の浮体に配信することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、水中を移動する水中探査機の航行位置や航行可能範囲を他の浮体と共有することで、他の浮体が水中探査機の航行位置や航行可能範囲の航行を避けるなどの衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性を低減することができる。
【0013】
請求項7記載の本発明は、浮上させる水中探査機が複数機である場合に、水上浮体が、複数機の水中探査機の水面までの浮上所要時間をそれぞれ考慮して、複数の水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、水中探査機同士の衝突をも防止し、スムーズに浮上させることができる。
【0014】
請求項8記載の本発明は、水中探査機が水面に浮上した後、無線通信により水上浮体又は水上管制体と通信を行い、水中探査機の水上浮体への揚収に利用することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機の位置を把握して、水上浮体への水中探査機の揚収をスムーズに行うことができる。
【0015】
請求項9記載の本発明は、水面に浮上した後、水中探査機に搭載した電波による測位手段により、水中探査機が自己の水中探査機位置を検出し、水上浮体又は水上管制体に無線通信を介して伝えることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機の位置をより正確に水上浮体から把握することができ、揚収にかかる時間の短縮が可能となる。また、浮上した水中探査機のより正確な位置を他の浮体に配信することができる。
【0016】
請求項10記載に対応した水中探査機の情報共有システムにおいては、水の中に存在する水中探査機と、水中探査機に設けた水中探査機音響通信手段と、水上浮体と、水上浮体に設けた自動船舶識別装置(AIS)と、水上浮体に設けた水中探査機音響通信手段と音響通信を行なう水上浮体音響通信手段と、水上浮体又は水中探査機に設けた水中探査機の水面までの浮上所要時間を考慮して水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定する浮上決定手段とを備え、浮上決定手段が、水中探査機の水中探査機位置と深度に基づいた水面までの浮上所要時間と、水上浮体の自動船舶識別装置(AIS)で得た水中探査機近傍の水域に存在する自動船舶識別装置(AIS)を有した他の浮体の位置、速度、及び針路に関する情報を利用して浮上時刻及び浮上位置を決定することを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、自動船舶識別装置(AIS)を介して得られた他の浮体に関する情報を考慮して、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を決定するため、浮上した水中探査機が他の浮体と衝突する可能性を低減することができる。
【0017】
請求項11記載の本発明は、水上浮体が、決定した水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を自動船舶識別装置(AIS)を介して、自動船舶識別装置(AIS)を有した他の浮体に配信することを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、他の浮体が自動船舶識別装置(AIS)を介して水中探査機の浮上時刻及び浮上位置に関する情報を入手し、水中探査機との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性をさらに低減することができる。
【0018】
請求項12記載の本発明は、水上浮体が、把握した水中探査機近傍の自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手する障害物情報入手手段を備え、障害物情報入手手段で得られた情報を、浮上決定手段の水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置の決定に利用することを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機が自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物と衝突する可能性を低減することができる。
【0019】
請求項13記載の本発明は、水中探査機の管制を行う水上管制体を備え、水上管制体は、水中探査機音響通信手段と音響通信を行う水上管制体音響通信手段を有し、水上浮体と水中探査機との通信を中継することを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、水中探査機が水上浮体から離れて水上管制体の管制下におかれている場合であっても、水中探査機が水上浮体や他の浮体等と衝突する可能性を低減することができる。
【0020】
請求項14記載の本発明は、水上浮体又は水上管制体が、水中探査機の音響測位を行う音響測位手段を備え、浮上決定手段が、音響測位手段による水中探査機の音響測位結果である水中探査機位置を浮上位置及び浮上時刻の決定に利用することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、水中探査機のより正確な位置が反映された浮上時刻及び浮上位置を水上浮体又は水上管制体で決定することができる。
【0021】
請求書15記載の本発明は、水中探査機が移動体である場合に、移動体の水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を自動船舶識別装置(AIS)を介して他の浮体に配信することを特徴とする。
請求書15に記載の本発明によれば、水中を移動する水中探査機の航行位置や航行可能範囲を他の浮体と共有することで、他の浮体が水中探査機の航行位置や航行可能範囲の航行を避けるなどの衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性を低減することができる。
【0022】
請求書16記載の本発明は、水中探査機が、水面に浮上した後、水上浮体又は水上管制体と無線通信を行う無線通信手段を有していることを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機の位置を把握して、水上浮体への水中探査機の揚収をスムーズに行うことができる。
【0023】
請求書17記載の本発明は、水中探査機が、水面に浮上した後、自己の水中探査機位置を検出する電波による測位手段を有し、測位手段で検出した自己の水中探査機位置を無線通信手段を介して伝えることを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、浮上した水中探査機の位置をより正確に水上浮体から把握することができ、揚収にかかる時間の短縮が可能となる。また、浮上した水中探査機のより正確な位置を他の浮体に配信することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水中探査機の情報共有方法によれば、自動船舶識別装置(AIS)を介して得られた他の浮体に関する情報を考慮して、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を決定するため、浮上した水中探査機が他の浮体と衝突する可能性を低減することができる。
【0025】
また、水上浮体が、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を自動船舶識別装置(AIS)を介して、他の浮体に配信する場合には、他の浮体が自動船舶識別装置(AIS)を介して水中探査機の浮上時刻及び浮上位置に関する情報を入手し、水中探査機との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性をさらに低減することができる。
【0026】
また、水上浮体が、把握した水中探査機の近傍の自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手し、水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置の決定に利用する場合には、浮上した水中探査機が自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物と衝突する可能性を低減することができる。
【0027】
また、水上浮体と水中探査機との通信を、水中探査機の管制を行う水上管制体を中継して行う場合には、水中探査機が水上浮体から離れて水上管制体の管制下におかれている場合であっても、水中探査機が水上浮体や他の浮体等と衝突する可能性を低減することができる。
【0028】
また、水上浮体又は水上管制体により水中探査機の音響測位を行い水中探査機位置を求め、浮上位置及び浮上時刻の決定に利用する場合には、水中探査機のより正確な位置が反映された浮上時刻及び浮上位置を水上浮体又は水上管制体で決定することができる。
【0029】
また、水中探査機が移動体である場合に、移動体の水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を他の浮体に配信する場合には、水中を移動する水中探査機の航行位置や航行可能範囲を他の浮体と共有することで、他の浮体が水中探査機の航行位置や航行可能範囲の航行を避けるなどの水中探査機との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性を低減することができる。
【0030】
また、浮上させる水中探査機が複数機である場合に、水上浮体が、複数機の水中探査機の水面までの浮上所要時間をそれぞれ考慮して、複数の水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定する場合には、水中探査機同士の衝突をも防止し、スムーズに浮上させることができる。
【0031】
また、水中探査機が水面に浮上した後、無線通信により水上浮体又は水上管制体と通信を行い、水中探査機の水上浮体への揚収に利用する場合には、浮上した水中探査機の位置を把握して、水上浮体への水中探査機の揚収をスムーズに行うことができる。
【0032】
また、水面に浮上した後、水中探査機に搭載した電波による測位手段により、水中探査機が自己の水中探査機位置を検出し、水上浮体又は水上管制体に無線通信を介して伝える場合には、浮上した水中探査機の位置をより正確に水上浮体から把握することができ、揚収にかかる時間の短縮が可能となる。また、浮上した水中探査機のより正確な位置を他の浮体に配信することができる。
【0033】
本発明の水中探査機の情報共有システムによれば、自動船舶識別装置(AIS)を介して得られた他の浮体に関する情報を考慮して、水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を決定するため、浮上した水中探査機が他の浮体と衝突する可能性を低減することができる。
【0034】
また、水上浮体が、決定した水中探査機の浮上時刻及び浮上位置を自動船舶識別装置(AIS)を介して、自動船舶識別装置(AIS)を有した他の浮体に配信する場合には、他の浮体が自動船舶識別装置(AIS)を介して水中探査機の浮上時刻及び浮上位置に関する情報を入手し、水中探査機との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性をさらに低減することができる。
【0035】
また、水上浮体が、把握した水中探査機近傍の自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物の情報を入手する障害物情報入手手段を備え、障害物情報入手手段で得られた情報を、浮上決定手段の水中探査機を浮上させる浮上時刻及び浮上位置の決定に利用する場合には、浮上した水中探査機が自動船舶識別装置(AIS)を有していない浮体又は漂流物と衝突する可能性を低減することができる。
【0036】
また、水中探査機の管制を行う水上管制体を備え、水上管制体は、水中探査機音響通信手段と音響通信を行う水上管制体音響通信手段を有し、水上浮体と水中探査機との通信を中継する場合には、水中探査機が水上浮体から離れて水上管制体の管制下におかれている場合であっても、水中探査機が水上浮体や他の浮体等と衝突する可能性を低減することができる。
【0037】
また、水上浮体又は水上管制体が、水中探査機の音響測位を行う音響測位手段を備え、浮上決定手段が、音響測位手段による水中探査機の音響測位結果である水中探査機位置を浮上位置及び浮上時刻の決定に利用する場合には、水中探査機のより正確な位置が反映された浮上時刻及び浮上位置を水上浮体又は水上管制体で決定することができる。
【0038】
また、水中探査機が移動体である場合に、移動体の水中探査機位置である航行位置及び/又は航行可能範囲を自動船舶識別装置(AIS)を介して他の浮体に配信する場合には、水中を移動する水中探査機の航行位置や航行可能範囲を他の浮体と共有することで、他の浮体が水中探査機の航行位置や航行可能範囲の航行を避けるなどの衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性を低減することができる。
【0039】
また、水中探査機が、水面に浮上した後、水上浮体又は水上管制体と無線通信を行う無線通信手段を有している場合には、浮上した水中探査機の位置を把握して、水上浮体への水中探査機の揚収をスムーズに行うことができる。
【0040】
また、水中探査機が、水面に浮上した後、自己の水中探査機位置を検出する電波による測位手段を有し、測位手段で検出した自己の水中探査機位置を無線通信手段を介して伝える場合には、浮上した水中探査機の位置をより正確に水上浮体から把握することができ、揚収にかかる時間の短縮が可能となる。また、浮上した水中探査機のより正確な位置を他の浮体に配信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施形態による水中探査機の情報共有システムを示す概略図
図2】同水中探査機の情報共有システムを示す概略図
図3】本発明の他の実施形態による水中探査機の情報共有システムを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態による水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システムについて説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態による水中探査機の情報共有システムを示す概略図である。
図1及び図2では、海洋や湖沼等において、水上浮体1から調査水域に水中探査機2を投入し、水底の鉱物資源やエネルギー資源等の調査作業等を行う状態を示している。水中探査機2は、水上浮体1に積載して調査水域まで運搬してきたものである。なお、調査作業等とは、調査作業そのものに加え、採取作業、救助作業、運搬作業、観測作業、又は捜索作業等、およそ水中において水中探査機2が行なう作業行為の全体を含む。
本実施形態による情報共有システムは、水上浮体1と水中探査機2を備える。なお、図1では一台の水中探査機2を示しているが、水中探査機2を複数投入することもできる。
【0043】
水上浮体1は、水中探査機2に対して管制を行う。本実施形態において水上浮体1は、調査母船としている。
水上浮体1は、自動船舶識別装置(AIS)11と、水中探査機2との音響信号による双方向の通信に用いる水上浮体音響通信手段12と、水中探査機2の水面までの浮上所要時間を考慮して水中探査機2を浮上させる浮上時刻及び浮上位置の少なくとも一方を決定する浮上決定手段13と、水中探査機2が航行している水域周辺に存在する自動船舶識別装置(AIS)を有していない船舶等の他の浮体又は漂流物101の情報を入手する障害物情報入手手段14と、水中探査機2へ向けて信号を発して音響測位を行う音響測位手段15を備えている。
【0044】
本実施形態において水中探査機2は、水上浮体1との接続にケーブルを用いずに水中を自律的に航走する無索自律無人型の航走体(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)としている。
水中探査機2は、水上浮体1との音響信号による双方向の通信に用いる水中探査機音響通信手段21と、水面に浮上した後に水上浮体1との無線通信に用いる無線通信手段22と、水面に浮上した後に電波により自己の位置を検出する測位手段23と、水上浮体1の音響測位手段15から発せられる信号に対して返答を行う音響トランスポンダ24と、水中における自機の位置の測定に用いる航行用センサ25を備えている。
なお、水中探査機2が、浮上決定手段を備える場合には、水中探査機2は、水面までの浮上所要時間を考慮して浮上時刻及び浮上位置の少なくとも一方を自ら決定することができる。
【0045】
水中探査機2には、水上浮体1から投入される前に、水中における調査範囲や調査対象等の航行条件が、水上浮体1に乗船しているオペレーターによって設定される。調査水域に投入された水中探査機2は、設定された航行条件に従って潜航及び航行を開始する。
水中探査機2が潜航すると、水上浮体1と水中探査機2間の電波は水によって遮断される。このため、水上浮体1と水中探査機2間の情報通信は、水中探査機2が水中にあるときは水中音響通信によって行われる。
また、水中探査機2は、水面に浮上している間は電波を利用して測位手段23により自己の測位を行い、水中を航行中は航行用センサ25に切り替えて自己の測位を行う。航行用センサ25には、例えば、加速度計やジャイロといった各種水中センサの計測結果を踏まえて測位等を行う慣性航法装置(INS)を用いることができる。
水上浮体1からは、音響測位手段15による水中音響測位により、音響トランスポンダ24が搭載されている水中探査機2の水中位置を測位することができる。また、水上浮体1からは、水上浮体音響通信手段12を用いた水中音響通信により、測位結果を水中探査機2に送信することや、簡単な指令を送ることができる。
水中探査機2は、緊急事態と判断した場合や、水上浮体1から水中音響通信で緊急浮上の指令を受信した場合には、スラスタを停止し、バラストを投下して緊急浮上することができる。
【0046】
図1に示すように、水上浮体1は、水中探査機2が航行している水域に、自動船舶識別装置(AIS)を有した他の浮体100が存在する場合、他の浮体100に関する位置や速度、針路等の情報を自動船舶識別装置(AIS)11を介して入手し、入手した情報を浮上決定手段13へ送信する。他の浮体100は、船舶、洋上ブイ、又は洋上中継器等である。
また、水上浮体1は、水中探査機2が航行している水域に、自動船舶識別装置(AIS)を有していない船舶等の他の浮体又は漂流物(以下、「障害物」という)101が存在する場合、障害物101に関する位置や速度、針路等の情報を障害物情報入手手段14により入手し、入手した情報を浮上決定手段13へ送信する。障害物情報入手手段14は、例えば全方位監視レーダーである。また、監視員による目視を障害物情報入手手段14とすることもできる。
また、水上浮体1は、音響測位手段15により水中探査機2の測位を行い、測位結果を浮上決定手段13へ送信する。浮上決定手段13による浮上時刻及び浮上位置の決定に、音響測位手段15によって測位した水中探査機2の位置を用いることで、より正確な水中探査機2の位置が反映された浮上時刻及び浮上位置を水上浮体1で決定することができる。
【0047】
水上浮体1は、浮上決定手段13において、受信した他の浮体100に関する情報、障害物101に関する情報、及び音響測位手段15による測位結果と、水中探査機2が水面に浮上するまでにかかる浮上所要時間を用いて、水中探査機2を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定する。浮上所要時間は、水中探査機2の深度や動力、調査水域の状況等に基づいて定める。
そして、水上浮体1は、浮上決定手段13が決定した浮上時刻及び浮上位置を、水上浮体音響通信手段12を用いた音響通信により水中探査機2へ指示する。浮上決定手段13が決定した浮上時刻及び浮上位置は、自動船舶識別装置(AIS)11により得られた他の浮体100の位置等に関する情報、及び障害物情報入手手段14により得られた障害物101の位置等に関する情報を考慮して定められているため、浮上した水中探査機2が他の浮体100、又は障害物101と衝突する可能性を低減することができる。
また、水上浮体1は、取得した他の浮体100又は障害物101に関する情報に基づいて、水中探査機2の航行ルートを他の浮体100又は障害物101の下方を避けるものに変更し、変更した航行ルートを水上浮体音響通信手段12により水中探査機2へ送信してもよい。これにより、水中探査機2をより安全に航行させることができる。
【0048】
水上浮体1は、水上浮体1の位置の他、自動船舶識別装置(AIS)で取得した他の浮体100及び障害物101に関する情報を、水上浮体音響通信手段12により水中探査機2へ送信することができる。これにより水中探査機2は、他の浮体100及び障害物101の存在を把握できるため、これらとの衝突を回避しやすくなる。
また、水中探査機2が浮上決定手段を有する場合は、水中探査機2は浮上時刻及び浮上位置を自ら決定する際に、受信した他の浮体100又は障害物101に関する情報を用いることができる。なお、水中探査機2は自ら決定した浮上時刻及び浮上位置を、水中探査機音響通信手段21を用いて水上浮体1へ送信する。
【0049】
水中探査機2が複数機投入されている場合、水上浮体1は、各水中探査機2について、水面までの浮上所要時間をそれぞれ算出し、各水中探査機2を浮上させる浮上時刻及び浮上位置を決定することが好ましい。これにより、水中探査機2同士の衝突をも防止し、スムーズに浮上させることができる。
【0050】
図2に示すように、水上浮体1は、水中探査機2の浮上時刻及び浮上位置を自動船舶識別装置(AIS)11を介して、他の浮体100に配信する。このように水中探査機2の浮上時刻及び浮上位置を他の浮体100と共有することにより、他の浮体100が水中探査機2との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突の可能性をさらに低減することができる。
水上浮体1から他の浮体100への情報配信には、例えば、国際海事機関(IMO)で規格が定められているASM(AISのアプリケーション特定メッセージ(Application Specific Message)を付加した通信)を使用することができる。
【0051】
また、本実施形態のように水中探査機2が水中を航走する移動体である場合には、水中探査機2の航行位置及び航行可能範囲の少なくとも一方を、自動船舶識別装置(AIS)11を介して他の浮体100に配信することが好ましい。
水中を移動する水中探査機2の航行位置や航行可能範囲を他の浮体100と共有することで、他の浮体100が水中探査機2の航行位置や航行可能範囲の航行を避けるなどの水中探査機2との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突可能性を低減することができる。
【0052】
図2に示すように、水中探査機2は、水面に浮上した後は、無線通信手段22を用いて水上浮体1と無線通信を行う。これにより、浮上した水中探査機2の位置を水上浮体1から把握して、水上浮体1への水中探査機2の揚収をスムーズに行うことができる。
また、水上浮体1は、浮上した水中探査機2の位置を自動船舶識別装置(AIS)11を用いて他の浮体100に配信する。これにより、他の浮体100が自動船舶識別装置(AIS)を介して浮上した水中探査機2の位置に関する情報を入手し、水中探査機2との衝突回避行動を取りやすくなるため、衝突の可能性をさらに低減することができる。
この際、水中探査機2は、搭載したGPS等の電波による測位手段23によって自己の位置を検出し、検出結果を水上浮体1に無線通信を介して伝えることが好ましい。これにより、浮上した水中探査機2の位置をより正確に水上浮体1から把握することができ、揚収にかかる時間の短縮が可能となる。また、浮上した水中探査機2のより正確な位置を他の浮体100に配信することができる。
【0053】
なお、本実施形態において水上浮体1は支援母船としたが、自動船舶識別装置(AIS)11を備えた無人船、洋上ブイ、又は洋上中継器とすることもできる。
また、水中探査機2は、無索自律無人型の航走体(移動体)としたが、水底に設置される地震計やカメラ等といった自己浮上型センサとすることもできる。
【0054】
図3は、本発明の他の実施形態による水中探査機の情報共有システムを示す概略図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態においては、水上浮体1と水中探査機2との通信を、水中探査機2の管制を行う水上管制体3を中継して行う。水上管制体3は水上浮体1から離れた水域において水中探査機2の管制を行うことができるため、水中探査機2の調査範囲を広げることができる。なお、水上管制体3は、自動船舶識別装置(AIS)を有していない。
【0055】
水上管制体3には、例えば、洋上中継器(ASV:Autonomous Surface Vehicle)を用いることができる。水上浮体1から調査水域に進水させた水上管制体3は、垂直翼31の上部が水面上に突き出た半潜水状態で用いられる。垂直翼31の上部には、GPS等の水上管制体測位手段32と、衛星通信アンテナ及び無線LANアンテナ等の水上管制体無線通信手段33が搭載されている。水上管制体3は、水上管制体測位手段32を用いてGNSS(全地球航法衛星システム)衛星からのGNSS信号を受信することにより、自己の位置を把握できる。また、水上管制体無線通信手段33を用いて水上浮体1との無線通信を行うことができる。
また、水上管制体3には舵及びプロペラを有する移動手段が設けられており、水上管制体3は移動手段によって水面の近傍を移動することができる。
また、水上管制体3の下面には、水中探査機2の位置を測定する水上管制体音響測位手段34と、水中探査機2と音響信号による双方向通信を行うための水上管制体音響通信手段35が設けられている。水上管制体3は、水上管制体音響測位手段34を用いて水中探査機2を測位し、水上管制体無線通信手段33を用いて測位結果を水上浮体1へ送信する。又は水上管制体3は、水中探査機2が自ら検出した位置を、水上管制体音響通信手段35を用いて受信し、水上浮体1へ送信する。水上浮体1は、受信した水中探査機2の位置を、自動船舶識別装置(AIS)11を用いて他の浮体100に配信する。
これにより、水中探査機2が水上浮体1から離れて水上管制体3の管制下におかれている場合であっても、水中探査機2が水上浮体1や他の浮体100や障害物101と衝突する可能性を低減することができる。
また、水上浮体1は、水上管制体3の位置や速度等の情報を、自動船舶識別装置(AIS)11を用いて他の浮体100に配信することができる。これにより、他の浮体100が自動船舶識別装置(AIS)を介して水上管制体3の位置等に関する情報を入手し、水上管制体3との衝突回避行動を取りやすくなるため、水上管制体3に他の浮体100が衝突することを防止できる。
【0056】
また、水上浮体1は、自動船舶識別装置(AIS)11により入手した他の浮体100の情報や、障害物情報入手手段14により入手した障害物101の情報を、水上管制体3を中継して、水中探査機2へ配信する。これにより、水中探査機2が他の浮体100や障害物101に衝突することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水中探査機の情報共有方法、及び水中探査機の情報共有システムを適用することにより、水中探査機が船舶等と衝突する可能性を低減することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 水上浮体
2 水中探査機
3 水上管制体
11 自動船舶識別装置(AIS)
12 水上浮体音響通信手段
13 浮上決定手段
14 障害物情報入手手段
15 音響測位手段
21 水中探査機音響通信手段
22 無線通信手段
23 測位手段
32 水上管制体音響通信手段
34 水上管制体音響測位手段
100 自動船舶識別装置(AIS)を備えた他の浮体
101 自動船舶識別装置(AIS)を有していない他の浮体又は漂流物
図1
図2
図3