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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ネット構造の伸縮性経編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/00 20060101AFI20220916BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20220916BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
D04B21/00 A
D04B21/10
D04B21/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018153716
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026604
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】596137151
【氏名又は名称】アサヒマカム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】樋爪 静史
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155463(JP,A)
【文献】特開2015-229813(JP,A)
【文献】特開2017-201064(JP,A)
【文献】特開2017-214686(JP,A)
【文献】特開2003-213551(JP,A)
【文献】特開2007-084970(JP,A)
【文献】国際公開第2011/070828(WO,A1)
【文献】国際公開第02/50352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00-11/14
A41C1/00-5/00
A41D31/00-31/32
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筬にそれぞれハーフセットに通糸された非弾性糸を互いに対称的にラッピングさせて編成されたネット編組織を有する支持組織と、他の一対の筬にそれぞれハーフセットに通糸された弾性糸を互いに対称的にラッピングさせて編成された伸縮性付与組織との組み合わせにより編成されたネット構造の伸縮性経編地であって、
前記ネット編組織の前記非弾性糸同士が互いに交絡して成るネット連結部において、前記伸縮性付与組織の前記弾性糸が二目編みされており、
前記伸縮性付与組織の繰り返し単位における前記弾性糸のラッピング移動範囲が、前記ネット編組織の繰り返し単位における前記非弾性糸のラッピング移動範囲よりも大きいことを特徴としたネット構造の伸縮性経編地。
【請求項2】
前記ネット編組織のネット連結部において、前記伸縮性付与組織の前記弾性糸が開き目で二目編みされていることを特徴とした請求項1に記載のネット構造の伸縮性経編地。
【請求項3】
前記ネット編組織の繰り返し単位のおける前記非弾性糸のラッピング移動範囲が3ウエールであり、
前記伸縮性付与組織の繰り返し単位における前記弾性糸のラッピング移動範囲が5ウエールまたは7ウエールであること特徴とした請求項1または請求項2に記載のネット構造の伸縮性経編地。
【請求項4】
さらに他の弾性糸が経挿入されていることを特徴とした請求項1~請求項3のいずれかに記載のネット構造の伸縮性経編地。
【請求項5】
前記弾性糸が熱融着性を有することを特徴とした請求項1~請求項4のいずれかに記載のネット構造の伸縮性経編地。
【請求項6】
前記支持組織及び又は前記伸縮性付与組織が、ジャカード編機による変化組織を含むことを特徴とした請求項1~請求項5のいずれかに記載のネット構造の伸縮性経編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネット構造の伸縮性経編地、より詳しくは、ファンデーション、スポーツウエア等に使用するネット構造の経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ショーツ、ガードル、ブラジャー等のファンデーションその他の女性用下着や、レオタード、水着等のスポーツウエアにおいては、デザイン性や風合い等は勿論のこと、その着用感が快適であることが重要であり、これらファンデーション等に使用される伸縮性経編地には、通気性やタテ・ヨコ方向における良好な伸縮性が求められる。
【0003】
さらに、ファンデーション等に使用される伸縮性経編地には、縁始末を不要にしたフリーカット機能が求められる。一般的な経編地の場合、裁断したままの状態では、その裁断縁が解れてしまうため、従来では、裁断縁部を折り返して縫合したり、他の布を当てたりする縁始末を行う必要があったが、このような縁始末をすると、縁部の厚みが増してしまい、ファンデーション等としての着用感やデザイン性が損われるのである。
【0004】
現在までに、タテ・ヨコ方向の伸縮性を向上させた伸縮性経編地として、例えば下記特許文献1に記載のものが提案されている。この経編地は、非弾性糸が二枚の筬にハーフセットに通糸されて編成されるネット構造の地組織に、ヨコ方向の伸縮性を得るための第一弾性糸がフルセットに通糸されて部分緯糸として挿入されると共に、タテ方向の伸縮性を得るための第二弾性糸がフルセットに通糸されて同一ウエール上に挿入されて編成されたものである。
【0005】
しかしながら、この経編地は、弾性糸が挿入組織のみで編み込まれているため、確かに優れた伸縮性を示すものの、縁始末を不要とするフリーカット機能を備えるものではなかった。
【0006】
一方、フリーカット機能を備えた伸縮性経編地として、例えば下記特許文献2に記載のものが提案されている。この経編地は、相対向する一対のハーフセットネット組織を構成する非弾性糸と、相対向する一対のハーフセットネット組織を構成する弾性糸とが同行して編成されたものである。
【0007】
しかしながら、この経編地は、タテ方向には優れた伸縮性を有するものの、ヨコ方向に伸び易い網のような組織構造をしているため、ヨコ方向に伸ばした場合の反発力が弱く、その回復が遅い難点があった。したがって、この経編地は、フリーカット機能は備えているものの、裁断縁部をそのまま、衣類の袖口や襟口等に使用した場合、そのサポート力が甘く、ずれ易くなる難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-70893号公報
【文献】特開2013-155463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の伸縮性経編地に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、タテ方向だけでなくヨコ方向にも優れた伸縮性を備え、かつ、優れたフリーカット機能を備えたネット構造の伸縮性経編地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対の筬にそれぞれハーフセットに通糸された非弾性糸を互いに対称的にラッピングさせて編成されたネット編組織を有する支持組織と、他の一対の筬にそれぞれハーフセットに通糸された弾性糸を互いに対称的にラッピングさせて編成された伸縮性付与組織との組み合わせにより編成されたネット構造の伸縮性経編地であって、
前記ネット編組織の前記非弾性糸同士が互いに交絡して成るネット連結部において、前記伸縮性付与組織の前記弾性糸が二目編みされており、
前記伸縮性付与組織の繰り返し単位における前記弾性糸のラッピング移動範囲が、前記ネット編組織の繰り返し単位における前記非弾性糸のラッピング移動範囲よりも大きいことを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記ネット編組織のネット連結部において、前記伸縮性付与組織の前記弾性糸が開き目で二目編みされていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記ネット編組織の繰り返し単位における前記非弾性糸のラッピング移動範囲が3ウエールであり、前記伸縮性付与組織の繰り返し単位における前記弾性糸のラッピング移動範囲が5ウエールまたは7ウエールであること特徴としている。
【0013】
また、本発明は、さらに他の弾性糸が経挿入されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、前記弾性糸が熱融着性を有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、前記支持組織及び又は前記伸縮性付与組織が、ジャカード編機による変化組織を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るネット構造の伸縮性経編地は、非弾性糸により編成された支持組織と、弾性糸により編成された伸縮性付与組織との組み合わせにより編成され、この支持組織がネット編組織を有しているので、通気性に優れている。さらに、ネット編組織のネット連結部において伸縮性付与組織の弾性糸が二目編みされているので、優れた解れ止め効果を発揮し、フリーカット機能を向上させることができる。しかも、伸縮性付与組織の繰り返し単位における弾性糸のラッピング移動範囲が、ネット編組織の繰り返し単位における非弾性糸のラッピング移動範囲よりも大きいので、複数本の弾性糸がネット編組織のネット孔部を渡ることになり、特にヨコ方向の伸縮性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態のネット構造の伸縮性経編地の非弾性糸及び弾性糸の各編成組織図と糸通し図である。
図2】第一実施形態のネット構造の伸縮性経編地の支持組織の編成組織図である。
図3】第一実施形態のネット構造の伸縮性経編地の伸縮性付与組織の編成組織図である。
図4】第一実施形態のネット構造の伸縮性経編地の編成組織図である。
図5】第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地の非弾性糸及び弾性糸の各編成組織図と糸通し図である。
図6】第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地の支持組織の編成組織図である。
図7】第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地の伸縮性付与組織の編成組織図である。
図8】第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地の編成組織図である。
図9】第三実施形態のネット構造の伸縮性経編地の非弾性糸及び弾性糸の各編成組織図と糸通し図である。
図10】第三実施形態のネット構造の伸縮性経編地の編成組織図である。
図11】第四実施形態のネット構造の伸縮性経編地の非弾性糸及び弾性糸の編成組織図と糸通し図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「第一実施形態」
図1図4に示すように、本発明に係る第一実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、非弾性糸1・2により編成された支持組織と、弾性糸3・4により編成された伸縮性付与組織との組み合わせにより編成されている。
【0019】
支持組織は、図1及び図2に示すように、一対の筬GB1・GB2にそれぞれ、1イン1アウトのハーフセットで通糸された非弾性糸1・2を、互いに対称的にラッピングさせることによって、ネット編組織(ハーフセットネット組織)として編成されている。このネット編組織は、図2に示すように、非弾性糸1・2同士が互いに交絡することにより複数のネット連結部Lが形成されており、これらネット連結部L同士の間にネット孔部Oが形成されている。
【0020】
本実施形態のネット編組織は、4コースアトラス組織から成り、その繰り返し単位における非弾性糸1・2のラッピング移動範囲Pは、3ウエールである。つまり、本実施形態のネット編組織は、4コースの繰り返し単位において非弾性糸1・2が、一列に並んで隣り合う計3本の編針に亘ってラッピング移動を行うことにより編成されており、本実施形態のネット構造の伸縮性経編地において、非弾性糸1・2は、3ウエールの範囲で左右に振られている。
【0021】
伸縮性付与組織は、図1及び図3に示すように、他の一対の筬GB3・GB4にそれぞれ、1イン1アウトのハーフセットで通糸された弾性糸3・4を、互いに対称的にラッピングさせて編成されており、これら弾性糸3・4はそれぞれ、上述した支持組織のネット編組織の各ネット連結部Lの位置において、開き目により二目編みされている。
【0022】
本実施形態の伸縮性付与組織は、図3に示すように、その繰り返し単位における弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが5ウエールである。つまり、本実施形態の伸縮性付与組織は、4コースの繰り返し単位において弾性糸3・4が、一列に並んで隣り合う計5本の編針に亘ってラッピング移動を行うことにより編成されており、本実施形態のネット構造の伸縮性経編地において、弾性糸3・4は、5ウエールの範囲で左右に振られている。
【0023】
なお、本発明に用いる非弾性糸としては、基本的には通常の経編地と同様の糸材料を使用することができる。弾性糸に比べて伸縮性あるいは弾性の小さい糸であればよい。具体的には、例えばナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、綿、絹などの天然繊維を、経編地の用途や性能に応じて適宜、選択することができる。これらの繊維のフィラメント糸、紡績糸、交撚糸などのいずれの形態でもよい。
【0024】
また、本発明に用いる弾性糸としては、一般に弾性糸として知られる糸材料を使用することができる。具体的には、例えばポリウレタン弾性糸、ポリウレタン弾性糸を芯材とするカバーリングヤーン、ポリエーテルエステル系弾性糸等を、経編地の用途や性能に応じて適宜、選択することができる。
【0025】
また、本発明において、支持組織及び伸縮性付与組織の各編み目は、開き目であっても閉じ目であってもよく、経編地の用途や性能に応じて適宜、選択することができる。
【0026】
このように本実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、その支持組織がネット孔部Oを多数有するネット編組織で構成されているので、その通気性に優れている。
【0027】
そして、本実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、ネット編組織の各ネット連結部Lにおいて伸縮性付与組織の弾性糸3・4が二目編みされているので、優れた解れ止め効果を発揮する。つまり、図4に示すように、弾性糸3及び弾性糸4による二目連続する編目が、ネット編組織の各ネット連結部Lをその左右から二重に締め付けることになるため、各ネット連結部Lの非弾性糸1・2の編目が変形してループの離脱を防ぐことができ、フリーカット機能を大幅に向上させることができる。
【0028】
しかも、本実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、伸縮性付与組織の繰り返し単位における弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが、支持組織のネット編組織の繰り返し単位における非弾性糸1・2のラッピング移動範囲Pよりも大きいので、図4に示すように、複数本の弾性糸3・4が左右からネット編組織の各ネット孔部Oを渡ることになり、特にヨコ方向の伸縮性を向上させることができる。
【0029】
従来の伸縮性経編地は、タテ方向に比べてヨコ方向の弾性力が格段に弱かったが、本発明に係るネット構造の伸縮性経編地は、ヨコ方向の弾性力を強化することができるので、編機によるタテ方向及びヨコ方向の伸縮バランスの調整も容易になる。また、タテ方向だけでなく、ヨコ方向においても、伸び、弾性力、回復性などの生地の伸縮特性の設計の自由度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、ネット編組織の各ネット連結部Lにおいて、弾性糸3・4が開き目により二目編みされているので、編機で容易に編成することができる。
【0031】
「第二実施形態」
図5図8に示す、第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、その支持組織及び伸縮性付与組織の繰り返し単位が6コースである点に主たる特徴があり、他の構成は上述した第一実施形態と同様である。
【0032】
第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地においても、図6及び図7に示すように、ネット編組織の各ネット連結部Lの位置において、伸縮性付与組織の弾性糸3・4が二目編みされているので、図8に示すように、弾性糸3及び弾性糸4による二目連続する編目が、ネット編組織の各ネット連結部Lをその左右から二重に締め付けることになり、優れた解れ止め効果を発揮する。
【0033】
そして、伸縮性付与組織の繰り返し単位における弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが5ウエールであり、支持組織のネット編組織の繰り返し単位における非弾性糸1・2のラッピング移動範囲Pの3ウエールよりも大きいので、複数本の弾性糸3・4が左右からネット編組織の各ネット孔部Oを渡ることになり、ヨコ方向の伸縮性を向上させることができる。
【0034】
第二実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、ネット編組織の繰り返し単位が6コースであるため、繰り返し単位が4コースである第一実施形態よりも、ネット編組織の各ネット孔部Oがコース方向に拡大するが、第二実施形態においても、ネット編組織の各ネット連結部Lで弾性糸3・4が二目編みされているので、ネット編組織の各ネット孔部O内の2ヶ所でそれぞれ、弾性糸3・4が渡ることになり、優れた伸縮特性を発揮する。
【0035】
「第三実施形態」
図9及び図10に示す、第三実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、伸縮性付与組織の繰り返し単位における弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが7ウエールである点に主たる特徴があり、支持組織は、上述した第二実施形態の支持組織と同様である。
【0036】
第三実施形態のネット構造の伸縮性経編地においても、図9及び図10に示すように、ネット編組織の各ネット連結部Lの位置において、伸縮性付与組織の弾性糸3・4が二目編みされているので、図10に示すように、弾性糸3及び弾性糸4による二目連続する編目が、ネット編組織の各ネット連結部Lをその左右から二重に締め付けることになり、優れた解れ止め効果を発揮する。
【0037】
そして、伸縮性付与組織の繰り返し単位における弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが7ウエールであり、支持組織のネット編組織の繰り返し単位における非弾性糸1・2のラッピング移動範囲Pの3ウエールよりも大きいので、ネット編組織の各ネット孔部Oを複数本の弾性糸3・4が左右から渡ることになり、ヨコ方向の伸縮性を向上させることができる。
【0038】
第三実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、伸縮性付与組織の弾性糸3・4のラッピング移動範囲Qが7ウエールであるため、ラッピング移動範囲Qが5ウエールである第二実施形態よりも多くの弾性糸3・4を編み込むことができ、図10に示すように、ネット編組織の各ネット孔部O内の3ヶ所でそれぞれ、弾性糸3・4が渡ることになり、ヨコ方向の伸縮性をさらに向上させることができる。
【0039】
「第四実施形態」
図11に示す、第四実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、伸縮性付与組織の弾性糸3・4とは別の弾性糸5・6が経挿入されている点に主たる特徴があり、他の構成は、上述した第三実施形態と同様である。
【0040】
即ち、第四実施形態のネット構造の伸縮性経編地は、他の一対の筬GB5・GB6にそれぞれ、1イン1アウトのハーフセットで通糸された非弾性糸5・6が、2コース毎に互いに対称的に振られて同一ウエール上に経挿入されている。これら非弾性糸5・6の経挿入によりタテ方向の伸縮性をさらに向上させることができる。
【実施例
【0041】
第四実施形態のネット構造の伸縮性経編地と同じ編成組織(図11)を採用し、表1に示す糸使いにより実施例1~実施例3のネット構造の伸縮性経編地を編成した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1は、インナーウエア生地として要求される物性を得るための経編地であり、実施例2は、非弾性糸として吸湿性機能を備えたポリエステル加工糸を使用した経編地であり、実施例3は、挿入弾性糸として繊度の大きいものを使用した経編地である。なお、表1に示した糸使いのほか、筬GB1・GB2に通糸されるナイロン糸やポリエステル糸などの非弾性糸は、17T~235Tの繊度のものを使用することができ、筬GB3・GB4に通糸される弾性糸は、22T~156Tの繊度のものを使用することができ、筬GB5・GB6に通糸される挿入弾性糸は、33T~670Tの繊度のものを使用することができる。
【0044】
これら実施例1~3の経編地はいずれも、良好な通気性を示し、タテ・ヨコ方向の伸縮特性に優れ、そして、どの方向に裁断しても支持組織の非弾性糸のループの離脱は認められなかった。
【0045】
以上、各実施形態のネット構造の伸縮性経編地について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0046】
例えば、本発明に係るネット構造の伸縮性経編地は、熱融着性を有する弾性糸を使用してもよい。このことで、編成後のヒートセット時に弾性糸同士あるいは弾性糸と非弾性糸とが融着し、解れ止め効果をさらに向上させることができる。
【0047】
また、本発明に係るネット構造の伸縮性経編地は、支持組織や伸縮性付与組織が、ジャカード編機による変化組織を部分的に含んでいてもよい。このことで、生地の厚みを増すことなく柄や模様を有する経編地や、部分的に伸縮特性の異なる経編地とすることができる。
【0048】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、2 非弾性糸
3、4 弾性糸
5、6 弾性糸
GB1、GB2 筬
GB3、GB4 筬
L ネット連結部
O ネット孔部
P 非弾性糸のラッピング移動範囲
Q 弾性糸のラッピング移動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11