IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トーメーコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-検眼装置 図1
  • 特許-検眼装置 図2
  • 特許-検眼装置 図3
  • 特許-検眼装置 図4
  • 特許-検眼装置 図5
  • 特許-検眼装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/107 20060101AFI20220916BHJP
   A61B 3/16 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61B3/107
A61B3/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018170716
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020039700
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳人
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-280938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0199165(US,A1)
【文献】特開2000-254098(JP,A)
【文献】特開昭62-207431(JP,A)
【文献】特開2001-187023(JP,A)
【文献】特開2018-050922(JP,A)
【文献】特開2011-251061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の顔を支持するように構成される支持構造と、
前記被検者の眼である被検眼を照明するように構成される照明光源と、
前記被検眼からの反射光を受光するように構成される撮像素子を備える、前記被検眼を観察するための観察光学系と、
前記照明光源を点灯及び消灯させ、前記照明光源が点灯しているときに前記撮像素子により撮影された画像である第一画像及び前記照明光源が消灯しているときに前記撮像素子により撮影された画像である第二画像を前記撮像素子から取得し、前記第一画像と前記第二画像との間の相違に基づき、前記被検者の顔が前記支持構造に置かれているか否かを判定するように構成される制御部と、
を備える検眼装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一画像と前記第二画像との間の輝度の相違に基づき、前記被検者の顔が前記支持構造に置かれているか否かを判定する請求項1記載の検眼装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一画像と前記第二画像との間の輝度の差が基準以上であるとき、前記被検者の顔が前記支持構造に置かれていると判定し、前記輝度の差が基準未満であるとき、前記被検者の顔が前記支持構造に置かれていないと判定する請求項2記載の検眼装置。
【請求項4】
前記支持構造に対する前記観察光学系の相対位置を変更するための駆動系
を備え、
前記制御部は、前記被検者の顔が前記支持構造に置かれていると判定したことを条件に、前記駆動系を制御し、前記観察光学系を前記被検眼に位置合わせする請求項1~請求項3のいずれか一項記載の検眼装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記照明光源が点灯しているときに前記撮像素子により撮影された画像に基づき、前記被検眼の瞳孔位置を検出し、前記瞳孔位置に基づき、前記駆動系を制御して、前記観察光学系を前記被検眼に位置合わせする請求項4記載の検眼装置。
【請求項6】
前記被検眼の角膜に光を照射し、その反射光を受光することにより、角膜頂点の位置を検出する位置検出系
を備え、
前記制御部は、
前記被検者の顔が前記支持構造に置かれていると判定したことを条件に、前記照明光源が点灯しているときに前記撮像素子により撮影された画像に基づき、前記被検眼の瞳孔位置を検出し、前記検出された瞳孔位置に基づき、前記駆動系を制御して、前記観察光学系を前記被検眼に位置合わせする粗アライメント処理と、
前記粗アライメント処理の実行後に、前記位置検出系から得られた前記角膜頂点の位置に基づき、前記駆動系を制御して、前記観察光学系を前記被検眼に位置合わせする精アライメント処理と、
を実行することによって、前記観察光学系を前記被検眼に段階的に位置合わせする請求項4又は請求項5記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者を検出するための構成を備える検眼装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、公知の検眼装置は、所定周波数で発光素子を点滅させることによって、指標光を発射する一方、受光素子からの受光信号をバイパス回路に通すことにより、受光信号から所定周波数の信号を選択的に抽出する。被検者が存在する場合には、被検者から反射した指標光の成分がバイパス回路を通じて抽出される。検眼装置は、この抽出信号に基づき、被検者の有無を判定する。
【0003】
被検者の顔が載置されるあご台にセンサを設けて、被検者の有無を判定する検眼装置もまた知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-254098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検者を検出するための従来の構成には、検眼には直接的に関係しない専用回路等の物理的構成が含まれる。そこで、本開示の一側面によれば、検眼のための構成を有意義に活用して、被検者を検出可能な検眼装置を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る検眼装置は、支持構造と、照明光源と、観察光学系と、制御部とを備える。支持構造は、被検者の顔を支持するように構成される。照明光源は、被検者の眼である被検眼を照明するように構成される。観察光学系は、被検眼を観察するために設けられ、被検眼からの反射光を受光するように構成される撮像素子を備える。
【0007】
制御部は、照明光源を点灯及び消灯させ、照明光源が点灯しているときに撮像素子により撮影された画像である第一画像及び照明光源が消灯しているときに撮像素子により撮影された画像である第二画像を撮像素子から取得し、第一画像と第二画像との間の相違に基づき、被検者の顔が支持構造に置かれているか否かを判定するように構成される。
【0008】
この検眼装置によれば、検眼に用いられる照明光源及び観察光学系を利用して被検者の顔が支持構造に置かれているか否かを判定する。従って、本開示の一側面によれば、検眼のための構成を有意義に活用して、被検者を検出することができる。
【0009】
本開示の一側面によれば、制御部は、第一画像と第二画像との間の輝度の相違に基づき、被検者の顔が支持構造に置かれているか否かを判定してもよい。被検者の顔が支持構造に置かれている場合には、照明光源からの反射光が、撮像素子に届くために、第一画像の輝度が第二画像に比べて高くなる。従って、制御部は、被検者の顔が支持構造に置かれているか否かを輝度の相違に基づき、良好に判定することができる。
【0010】
本開示の一側面によれば、制御部は、第一画像と第二画像との間の輝度の差が基準以上であるとき、被検者の顔が支持構造に置かれていると判定し、輝度の差が基準未満であるとき、被検者の顔が支持構造に置かれていないと判定してもよい。
【0011】
本開示の一側面によれば、検眼装置は、支持構造に対する観察光学系の相対位置を変更するための駆動系を備えてもよい。制御部は、被検者の顔が支持構造に置かれていると判定したことを条件に、駆動系を制御し、観察光学系を被検眼に位置合わせしてもよい。この検眼装置によれば、被検者の顔が支持構造に置かれたことに応じて、適切且つ迅速に検眼のためのアライメント処理を行うことができる。
【0012】
本開示の一側面によれば、制御部は、照明光源が点灯しているときに撮像素子により撮影された画像に基づき、被検眼の瞳孔位置を検出し、瞳孔位置に基づき、駆動系を制御して、観察光学系を被検眼に位置合わせしてもよい。
【0013】
本開示の一側面によれば、検眼装置は、被検眼の角膜に光を照射し、その反射光を受光することにより、角膜頂点の位置を検出する位置検出系を備えてもよい。制御部は、粗アライメント処理と、精アライメント処理と、を実行することによって観察光学系を被検眼に段階的に位置合わせしてもよい。
【0014】
粗アライメント処理は、被検者の顔が支持構造に置かれていると判定したことを条件に、照明光源が点灯しているときに撮像素子により撮影された画像に基づき、被検眼の瞳孔位置を検出し、検出された瞳孔位置に基づき、駆動系を制御して、観察光学系を被検眼に位置合わせする処理であってもよい。
【0015】
精アライメント処理は、位置検出系から得られた角膜頂点の位置に基づき、駆動系を制御して、観察光学系を被検眼に位置合わせする処理であってもよい。精アライメント処理は、粗アライメント処理の実行後に、実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】検眼装置の外観構成を表す図である。
図2】検眼装置の内部構成を表すブロック図である。
図3】光学系の構成を表す図である。
図4】制御装置が実行するアライメント処理のフローチャートである。
図5】輝度に関する説明図である。
図6図6A及び図6Bは、光源の反射点間の距離に基づく被検眼のZ方向位置の検出方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の検眼装置1は、被検眼Eの角膜の厚みを測定するパキメータ、及び、眼圧を測定するトノメータとして機能するように構成される。この検眼装置1は、ヘッド部3と、本体部5と、支持構造7と、ディスプレイ9とを備える。
【0018】
ヘッド部3は、本体部5に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に相対移動可能に取り付けられている。支持構造7は、被検者の顔、特には、被検者の顎を支持するように構成され、本体部5に固定される。ディスプレイ9は、ヘッド部3の被検者と向き合う前部とは反対側の後部に設けられる。検眼時には、被検者の顔が支持構造7に配置される。これにより、被検眼Eの位置は、被検者の顔が支持構造7に支えられることにより安定する。検眼時には、更に、ヘッド部3が本体部5に対してXYZ方向に相対移動して、ヘッド部3に内蔵される光学系が、被検眼Eに位置合わせされる。
【0019】
図2に示すように、ヘッド部3は、アライメント光学系100、観察光学系300、固視光学系400、第一測定光学系500、及び第二測定光学系600を上記光学系として備える。
【0020】
本体部5は、制御装置700、記憶装置710、XYZ駆動制御系720、及び操作系740を備える。制御装置700は、検眼装置1の全体を統括制御し、被検眼Eの測定データを処理するように構成される。制御装置700は、例えば、プロセッサ701及び一時記憶メモリ703を備え、記憶装置710が記憶するプログラムに従う処理をプロセッサ701が実行するように構成される。記憶装置710は、例えばフラッシュメモリ等の、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリで構成される。
【0021】
XYZ駆動制御系720は、制御装置700からの指示に基づき、ヘッド部3を本体部5に対してXYZ方向に相対移動させるように構成される。操作系740は、検査者からの操作を受け付けるために、ジョイスティック741を備える。更に、タッチパネル(図示せず)が、操作系740の一部として、ディスプレイ9の画面上に設けられてもよい。ディスプレイ9は、制御装置700に制御されて、被検眼Eの画像、並びに、測定された眼圧及び角膜厚等の各種情報を検査者に向けて表示するように構成される。
【0022】
図3に示すように、ヘッド部3に内蔵されるアライメント光学系100は、光源101、ホットミラー102、対物レンズ103、及びホットミラー104を備える。光源101は、アライメント光を出力するように構成される。
【0023】
光源101からのアライメント光は、ホットミラー102で反射され、対物レンズ103を通り、ホットミラー104で反射された後、見口200を通って、被検眼Eの角膜に向けて照射される。光源101は、例えば、赤外光を出力するLEDである。
【0024】
見口200は、ノズル201及び平面ガラス205を備える。ノズル201は、被検眼Eと対向する透明な窓部材201aと、窓部材201aの中央に噴射口201bを形成する圧縮空気の噴射路としての開口部201cと、を備え、眼圧測定時には、この開口部201cを通じて噴射口201bから被検眼Eに向けて圧縮空気が送出される。上記ホットミラー104で反射されたアライメント光は、見口200の平面ガラス205及びノズル201の開口部201cを通って、被検眼Eに照射される。
【0025】
被検眼Eの角膜で反射された光は、主光軸O1上に配置された、観察光学系300の二次元撮像素子(CCD)306で受光される。これにより、アライメント光に対応する反射光は、二次元撮像素子306で撮影される。反射光の撮影画像を含む二次元撮像素子306からの画像信号は、制御装置700で処理される。制御装置700は、この画像信号に含まれる反射光に基づいて、被検眼Eの角膜頂点のXY方向の位置を検出する。XYZ駆動制御系720は、検出されたXY方向の位置に基づき、ヘッド部3を被検眼Eに対してXY方向に位置合わせするように移動させる。このようにアライメント光学系は、位置検出系として機能する。
【0026】
観察光学系300は、光源301、光源302、対物レンズ303、ダイクロイックミラー304、結像レンズ305、及び二次元撮像素子306を備える。光源301及び光源302は、被検眼Eの前眼部領域を照明するように設けられる。光源301及び光源302には、アライメント用の光源101よりも短波長の赤外光を出力するLEDが採用される。以下では、光源301及び光源302からの光を観察光と表現する。
【0027】
光源301及び光源302からの観察光は、被検眼Eで反射する。その反射光は、ホットミラー104を透過し、対物レンズ303、ダイクロイックミラー304、結像レンズ305を通って、二次元撮像素子(CCD)306で受光される。この受光動作により、被検眼Eの前眼部領域は、二次元撮像素子306で撮影され、二次元撮像素子306からは、その撮影画像を表す画像信号が出力される。制御装置700は、この二次元撮像素子306からの画像信号に基づき、被検眼Eの前眼部画像を、ディスプレイ9に表示させるように、ディスプレイ9を制御する。
【0028】
この他、固視光学系400は、光源401、リレーレンズ403、及び反射ミラー404を備える。光源401は、被検者の固視を促す光(以下、固視光と表現する。)を照射するように動作する。この固視光は、リレーレンズ403を通り、反射ミラー404で反射した後、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104を通って、被検眼Eの網膜上で結像する。この固視光により、被検眼Eは、眼圧検査などの眼特性を検査可能な固視状態に置かれる。光源401には、被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0029】
眼圧測定用の第一測定光学系500は、光源501、ハーフミラー502、集光レンズ503、及び受光素子504を備える。光源501からの光(以下、第一測定光と表現する。)は、ハーフミラー502を透過後、ホットミラー102及び対物レンズ103を透過し、ホットミラー104で反射して主光軸O1を通り、平面ガラス205、ノズル201の開口部201cを通って、被検眼Eの角膜に照射される。
【0030】
被検眼Eの角膜に照射した光は、角膜で反射し、往路を戻るように、ノズル201の開口部201c及び平面ガラス205を通り、ホットミラー104で反射し、対物レンズ103及びホットミラー102を通り、ハーフミラー502で反射し、集光レンズ503を通って、受光素子504で受光される。
【0031】
眼圧検査時には、ノズル201から圧縮空気が被検眼Eの角膜に向けて噴射される。圧縮空気が噴射されると被検眼Eの角膜が変位変形し、これにより受光素子504で受光される光量が変化する。被検眼Eの眼圧は、この光量の変化の度合いから算出される。
【0032】
光源501には、観察光より長波長で、且つ、アライメント光より短波長の赤外光を出力するLEDが採用される。このように、アライメント光、観察光、固視光、第一測定光の波長が設定され、ホットミラー102、104及びダイクロイックミラー304の反射/透過特性が適宜設定されることにより、これら4つの光は適切な光路に沿って伝播する。
【0033】
角膜厚測定用の第二測定光学系600は、光源601、レンズ602、円柱レンズ603、及び受光素子604を備える。光源601からの光(以下、第二測定光と表現する。)は、レンズ602により平行光に変換された後、見口200の透明な窓部材201aを通って被検眼Eの角膜に照射される。角膜に照射された第二測定光は、被検眼Eの角膜内皮および角膜上皮で反射する。これらの反射光は、見口200の透明な窓部材201aを通って円柱レンズ603を通り受光素子604で受光される。光源601には、例えば、可干渉性を有するスーパールミネッセントダイオード(SLD)が採用される。光源601には、SLDに限らずレーザーダイオード(LD)のように可干渉性をもつ光源(ダイオード)が採用されてもよい。
【0034】
光源601として可干渉性光源を用いた場合には、スペックルノイズが発生し、角膜厚の測定精度が低下する可能性があるが、上記のように被検眼Eの角膜内皮および角膜上皮で反射された第二測定光を、円柱レンズ603を通しライン状の光とすることにより、スペックルノイズを低減することができる。
【0035】
受光素子604からの受光信号は、制御装置700で処理される。制御装置700は、この受光信号から特定される被検眼Eの角膜内皮からの反射光と、角膜上皮からの反射光との受光面上の受光位置の差に基づき、被検眼Eの角膜厚を測定するように動作する。
【0036】
付言すれば、第二測定光学系600は、検眼前にZアライメント光学系としても利用される。受光素子604における反射光の受光位置は、被検眼Eの角膜のZ方向の位置に応じて変化する。制御装置700は、この受光位置に基づき、被検眼Eの角膜のZ方向の位置を検出する。XYZ駆動制御系720は、この検出位置に基づき、被検眼Eに対するヘッド部3のZ方向の位置を調整する。
【0037】
検眼装置1において、被検眼Eに対するヘッド部3のZ方向の位置合わせは、例えば二次元撮像素子306からの画像信号が示す被検眼Eの前眼部画像に基づき自動で行われ(粗アライメント)、その後、第二測定光に基づいて、自動で精度よく行われる(精アライメント)。上述したように、被検眼Eに対するヘッド部3のXY方向の位置合わせも同様に、二次元撮像素子306からの画像信号が示す被検眼Eの前眼部画像に基づき自動で行われ(粗アライメント)、その後、アライメント光に基づいて、自動で精度よく行われる(精アライメント)。自動での粗アライメントが不可能であるときには、ジョイスティック741を用いて検査者による手動で粗アライメントが行われる。
【0038】
続いて、制御装置700が実行するアライメント処理の詳細を、図4を用いて説明する。制御装置700は、図4に示すアライメント処理を繰返し実行することにより、被検者の顔が支持構造7に置かれているとき、自動で被検眼Eに対するヘッド部3の位置合わせを行うように構成される。
【0039】
アライメント処理を開始すると、制御装置700は、精アライメント処理を実行可能であるか否かを判断する(S110)。被検眼Eに対するヘッド部3の相対位置が、精アライメント処理を実行可能な範囲内にあるとき、制御装置700は、S110で肯定判断し、それ以外の場合に、S110で否定判断する。
【0040】
精アライメント処理が実行可能であるか否かを判断するために、制御装置700は、光源101からアライメント光を照射して、二次元撮像素子306から画像信号を取得することができる。そして、画像信号にアライメント光に対応する反射光成分が含まれ、その反射光成分から角膜頂点の位置を検出することができる場合に、精アライメント処理を実行可能であると判断することができる。
【0041】
S110で精アライメント処理を実行可能であると判断すると(S110でYes)、制御装置700は、S220に移行して、精アライメント処理を実行する。その後、アライメント処理を終了する。一方、S110で否定判断すると、制御装置700は、S120に移行する。
【0042】
S120において、制御装置700は、光源301及び光源302を点灯及び消灯させる。そして、点灯時及び消灯時のそれぞれにおいて二次元撮像素子306から画像信号を取得する。点灯時の画像信号は、点灯時の二次元撮像素子306の撮影画像(受光画像)を表す。消灯時の画像信号は、消灯時の二次元撮像素子306の撮影画像(受光画像)を表す。
【0043】
その後、制御装置700は、取得した画像信号に基づき、点灯時の撮影画像の輝度B1と、消灯時の撮影画像の輝度B2とを算出する(S130)。更に、制御装置700は、点灯時の輝度B1と消灯時の輝度B2との差である輝度差BD=B1-B2を算出する(S140)。輝度B1及び輝度B2は、撮影画像全体における各画素の輝度の和又は平均であってもよいし、撮影画像の予め定められた中央部における各画素の輝度の和又は平均であってもよい。
【0044】
その後、制御装置700は、上記算出した輝度差BDに基づいて、被検者の顔が支持構造7に置かれているか否かを判断する(S150)。図5に示すように、被検者の顔が支持構造7に置かれていない場合、二次元撮像素子306に到達する光は、外部から見口200を介して伝播する背景光がほとんどであり、二次元撮像素子306の撮影画像の輝度は、光源301及び光源302が点灯しているか否かに依らず、低い。図5では、輝度が低いことをハッチングの描写で示している。
【0045】
これに対し、被検者の顔が支持構造7に置かれている場合には、光源301及び光源302からの光が、被検者の顔、特に眼で反射し、その反射光が二次元撮像素子306で受光されるため、撮影画像の輝度は、消灯時には低いが点灯時には高い。S150では、このような現象を利用して、輝度差BDに基づき、被検者の顔が支持構造7に置かれているか否かを判断する。
【0046】
具体的に、制御装置700は、輝度差BDが予め定められた閾値以上であるとき、被検者の顔が支持構造7に置かれていると判断し(S150でYes)、それ以外の場合に、被検者の顔が支持構造7に置かれていないと判断することができる(S150でNo)。
【0047】
制御装置700は、被検者の顔が支持構造7に置かれていないと判断すると(S150でNo)、S120に移行して、光源301及び光源302を再度、点灯及び消灯させる。その後、S130~S150の処理を再度実行する。再度の点灯及び消灯は、直前の点灯及び消灯とは、一定間隔空けて実行することができる。
【0048】
制御装置700は、被検者の顔が支持構造7に置かれていると判断すると(S150でYes)、ヘッド部3をZ方向の原点位置に配置し、被検眼Eを撮影し、瞳孔を検出する(S160)。
【0049】
具体的に、制御装置700は、まずXYZ駆動制御系720を介してヘッド部3をZ方向の原点位置に移動させる。原点位置は、被検眼Eの瞳孔を撮影可能な範囲で、ヘッド部3が被検眼EからZ方向に最も離れた位置に対応する。ここで、ヘッド部3を原点位置に配置するのは、後のヘッド部3の移動によって被検者に(特には被検眼Eに)ヘッド部3が接触しないようにするためである。
【0050】
その後、制御装置700は、ヘッド部3を原点位置に配置した状態で、光源301及び光源302を点灯させ、その点灯時の画像信号を二次元撮像素子306から取得することにより、被検眼Eを撮影する。この画像信号は、基本的には、被検眼Eの前眼部領域の撮影画像を表す。制御装置700は、取得した画像信号を解析し、画像信号が示す前眼部領域の撮影画像において黒い円形領域を検出することにより、被検眼Eの瞳孔及びそのXY方向の位置を検出する。
【0051】
ここで瞳孔を検出することができた場合、制御装置700は、S170で肯定判断して、S180に移行する。一方、制御装置700は、瞳孔を検出することができなかった場合、S170で否定判断して、S120に移行する。
【0052】
S180に移行すると、制御装置700は、検出された瞳孔の位置に基づいて、XY方向の粗アライメント処理を実行する。即ち、制御装置700は、ヘッド部3を、検出された瞳孔の中心に位置あわせするように、XYZ駆動制御系720を介してヘッド部3をXY方向に移動させる。
【0053】
その後、制御装置700は、Z方向の粗アライメント処理を実行可能であるか否かを判断する(S190)。具体的に、制御装置700は、二次元撮像素子306からの画像信号を解析し、瞳孔に写る光源301の反射光の位置と瞳孔に写る光源302の反射光の位置との間の距離Dを算出可能であるか否かを判断する。
【0054】
解析対象の画像信号は、XY方向の粗アライメント処理(S180)が実行された後の撮影動作により得られた画像信号であり得る。即ち、S190において、制御装置700は、上記判断のために、光源301及び光源302を点灯させた状態で、その点灯時の画像信号を新しく二次元撮像素子306から取得して、この画像信号を解析することができる。別例として、S190での判断は、XY方向の粗アライメント処理を実行する前の処理(S160)で取得した画像信号に基づいて、行われてもよい。
【0055】
本実施形態においては、光源301及び光源302が被検眼Eの左右に配置されている。このため、距離Dを算出可能である場合には、被検眼Eの曲率の差に起因する誤差を含むものの、距離Dから被検眼EのZ方向の位置をおよそ特定可能である。例えば、図6Aに示されるように距離Dが長い場合には、図6Bに示される距離Dが短い場合よりも、被検眼Eとヘッド部3との距離が近いことを示している。図6A及び図6Bに示されるハッチングされた円形領域は、被検眼Eを示し、白い円形領域は、被検眼Eに映る反射光を示す。距離DとZ方向の被検眼Eの位置との関係式は、予め実験により又は卓上計算により導出することができる。
【0056】
制御装置700は、予め定められた正常範囲の距離Dを算出可能であるとき、Z方向の粗アライメント処理を実行可能であると判断し、それ以外の場合に、Z方向の粗アライメント処理を実行不可能であると判断することができる。
【0057】
制御装置700は、Z方向の粗アライメント処理を実行可能であると判断すると(S190でYes)、上記距離Dから特定される被検眼EのZ方向の位置に基づいて、Z方向の粗アライメント処理を実行する(S200)。即ち、制御装置700は、ヘッド部3を、被検眼Eの位置からZ方向に適切な距離離れた位置に位置合わせするように、XYZ駆動制御系720を介してヘッド部3をZ方向に移動させる。その後、S110に移行する。この場合には、基本的に、被検眼Eに対するヘッド部3の相対位置が、精アライメント処理を実行可能な範囲内にある。従って、制御装置700は、S110で肯定判断して、S220に移行し、精アライメント処理を実行する。
【0058】
一方、制御装置700は、Z方向の粗アライメント処理を実行可能ではないと判断すると(S190でNo)、ディスプレイ9を通じて、Z方向の位置合わせを手動で行うように検査者に指示し、ジョイスティック741の操作を受け付けて、ヘッド部3を本体部5に対して相対移動させる(S210)。検査者は、ディスプレイ9に表示される被検眼Eの前眼部領域の撮影画像に基づいて、手動によりヘッド部3を被検眼Eに位置合わせすることができる。
【0059】
制御装置700は、このような手動操作が終了すると、S110に移行する。手動操作によりヘッド部3が精アライメント処理を実行可能な位置まで調整されている場合、制御装置700は、S110で肯定判断し、精アライメント処理を実行する(S220)。あるいは、制御装置700は、S210への移行後、手動操作によって粗アライメント処理が実行可能になると、手動操作の受付を終了してS200と同様に粗アライメント処理を実行した後、S110に移行し、ここで肯定判断して、精アライメント処理(S220)を実行することができる。
【0060】
精アライメント処理(S220)において、制御装置700は、二次元撮像素子306からの画像信号に含まれるアライメント光の反射光成分に基づき、被検者の角膜頂点の位置を検出し、被検眼Eの角膜頂点の位置に、ヘッド部3を位置合わせするように、XYZ駆動制御系720を介して、ヘッド部3をXY方向に移動させる。
【0061】
更に、制御装置700は、第二測定光学系600を制御して、光源601から第二測定光を照射し、その反射光の受光信号を受光素子604から取得し、取得した受光信号に含まれる反射光成分から特定される被検眼EのZ方向の位置に対して適切な位置に、ヘッド部3を位置合わせするように、XYZ駆動制御系720を介して、ヘッド部3をZ方向に移動させる。その後、制御装置700は、図4に示すアライメント処理を終了する。制御装置700は、このアライメント処理の終了後、検眼処理、具体的には、角膜厚の測定処理及び眼圧の測定処理を実行することができる。
【0062】
以上に説明した本実施形態の検眼装置1によれば、被検眼Eの観察のために設けられた照明用の光源301及び光源302の点灯及び消灯により、支持構造7に置かれた被検者の顔を検出することができる。そして、検出後には、自動で被検眼Eに対してヘッド部3の位置合わせを行うことができる。従って、検眼のための検査者の負荷を抑えつつ、迅速に、検眼のための準備動作を自動で実行することができる。これは、検査時間の短縮に貢献する。従って、本実施形態によれば、利便性の高い検眼装置1を提供することができる。
【0063】
更に言えば、本実施形態では、被検者の顔を自動検出して、自動でヘッド部3の位置合わせを行うので、被検者の顔が支持構造7に置かれていないのにもかかわらず、不要に位置合わせのためのヘッド部3の駆動が行われるのを抑制することができる。
【0064】
更に、本実施形態では、被検者の顔を検出するための構成として専用部品を必要としない。即ち、専用のハードウェアを必要とせず、光源301及び光源302の点滅、及び、撮影画像の解析といったソフトウェア処理のみで、被検者の顔を検出することができる。従って、本実施形態によれば、検眼装置における検眼のための構成を有意義に活用して、被検者を検出することができる。
【0065】
以上に、本開示の例示的実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0066】
1…検眼装置、3…ヘッド部、5…本体部、7…支持構造、9…ディスプレイ、100…アライメント光学系、200…見口、300…観察光学系、301…光源、302…光源、303…対物レンズ、304…ダイクロイックミラー、305…結像レンズ、306…二次元撮像素子、400…固視光学系、500…第一測定光学系、600…第二測定光学系、700…制御装置、710…記憶装置、720…XYZ駆動制御系、740…操作系。
図1
図2
図3
図4
図5
図6