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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】トルクレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/143 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
B25B23/143
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019006189
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114611
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】大河 祐樹
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164949(JP,A)
【文献】特開2018-164948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328756(US,A1)
【文献】特開2010-194702(JP,A)
【文献】特許第3048560(JP,B1)
【文献】実開昭63-10075(JP,U)
【文献】特開2018-8345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/143
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付対象に係合される係合部を支点として持ち手を回転させることにより、前記締付対象に加わる締付トルクが設定トルクになるように前記締付対象を締め付けるトルクレンチであって、
前記持ち手を一端側に有し、他端側に筒部を有するレンチ本体と、
前記係合部を有し、当該係合部から延びる一端側が前記筒部に差し込まれて回転可能に軸支されたヘッドと、
前記筒部内部に設置され、前記締付トルクが前記設定トルクを越えるまで、前記レンチ本体の前記ヘッドに対する相対的な回転を制限する制限状態となり、前記締付トルクが前記設定トルクを越えると、前記制限を解除した解除状態へ切り替わる切替機構とを具備し、
前記切替機構が前記解除状態へ切り替わった場合に、前記レンチ本体が前記ヘッドに対して相対的に回転し、前記レンチ本体と前記ヘッドとが互いに接触するように構成されており、
前記レンチ本体又は前記ヘッドの一方又は双方が、前記接触箇所に弾性部材を備えていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
前記レンチ本体と前記ヘッドとが接触したことを報知する報知機構をさらに備えている請求項1記載のトルクレンチ。
【請求項3】
前記報知機構が、前記弾性部材の接触面に設置された金属片を備えている請求項2記載のトルクレンチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトルクレンチとして、例えば、特許文献1に示すように、持ち手を一端側に有し、他端側に筒部を有するレンチ本体と、締付対象と係合する係合部を有し、当該係合部から延びる一端側が筒部に差し込まれて回転可能に軸支されたヘッドと、持ち手の回転に伴って締付トルクが設定トルクを越えた場合に、レンチ本体のヘッドに対する相対的な回転を制限する制限状態から前記制限を解除した解除状態へ切り替わる切替機構とを具備した構造のものがある。
【0003】
なお、前記従来のトルクレンチにおいては、切替機構が解除状態になった場合に、これに伴ってレンチ本体がヘッドに対して相対的に回転(空転)し、レンチ本体の筒部内面とヘッドとが接触(衝突)する。そして、ユーザは、この時生じる接触音(衝突音)によって締付対象の締付トルクが設定トルクに達したことを感知できるようになっている。
【0004】
ここで、前記従来のトルクレンチを用いて締付作業を実施した場合における締付対象に加わる締付トルクの時間変化を示すグラフを図5に図示する。図5から分かるように、持ち手を回転させ始めると、締付トルクが設定トルクになるまで徐々に上昇する(図5中、T1~T2)。そして、締付トルクが設定トルクに達すると、締付トルクが急激に降下する(図5中、T2~T3)。これは、切替機構が制限状態から解除状態に切り替わり、レンチ本体がヘッドに対して相対的に回転したためである。なお、この時生じる接触音を感知して直ちに持ち手の回転を停止させれば、締付対象を設定トルクで締め付けることができる。
【0005】
ところが、実際には、接触音を感知しても作業者は直ちに持ち手の回転を停止できないため、切替機構が解除状態に切り替わった後も更に持ち手の回転が続行される。なお、レンチ本体の筒部内面にヘッドが接触した状態になると、持ち手を回転される力が前記切替機構を介することなくレンチ本体からヘッドへ直接伝達されるようになる。このため、前記のように持ち手の回転が続行されると、締付トルクが設定トルクを越えて上昇し(図5中、T3~T4)、大きなオーバートルク(図5中、Y)が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭52-22476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、オーバートルクを抑制できるトルクレンチを提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るトルクレンチは、締付対象に係合される係合部を支点として持ち手を回転させることにより、前記締付対象に加わる締付トルクが設定トルクになるように前記締付対象を締め付けるトルクレンチであって、前記持ち手を一端側に有し、他端側に筒部を有するレンチ本体と、前記締付対象と係合する係合部を有し、当該係合部から延びる一端側が前記筒部に差し込まれて回転可能に軸支されたヘッドと、前記筒部内部に設置され、前記持ち手の回転に伴って前記締付トルクが前記設定トルクを越えるまで、前記レンチ本体の前記ヘッドに対する相対的な回転を制限する制限状態となり、前記持ち手の回転に伴って前記締付トルクが前記設定トルクを越えると、前記制限を解除した解除状態へ切り替わる切替機構とを具備し、前記切替機構が前記解除状態へ切り替わった場合に、前記レンチ本体が前記ヘッドに対して相対的に回転し、前記レンチ本体と前記ヘッドとが互いに接触するように構成されており、前記ヘッド又は前記レンチ本体の一方又は双方が、前記接触箇所に弾性部材を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
このようなものであれば、ヘッド又はレンチ本体の一方又は双方が、その接触箇所に弾性部材を備えているので、切替機構が解除状態に切り替わり、レンチ本体の筒部内面にヘッドが接触した状態で更に持ち手の回転が続行されたとしても、当該持ち手の回転が弾性部材の変形によって吸収されてヘッドに伝達され難くなる。これにより、オーバートルクが抑制される。なお、制限状態は、持ち手に回転させる力が加わった状態で締付対象に加わる締付トルクが増加する状態であり、解除状態は、持ち手に回転させる力が加わった状態で締付対象に加わる締付トルクが増加しない状態である。より具体的には、解除状態は、持ち手に回転させる力が加わった状態で締付対象に加わる締付トルクが一時的に減少する状態である。
【0010】
また、前記レンチ本体と前記ヘッドとが接触したことを報知する報知機構をさらに備えてもよい。
【0011】
レンチ本体又はヘッドのいずれか一方が、その接触箇所にゴム等の弾性部材を備えていると、レンチ本体とヘッドとが接触(衝突)した時に接触音(衝突音)が発生し難くなる、そこで、前記レンチ本体と前記ヘッドとが接触したことを報知する報知機構をさらに備えればよい。なお、報知機構による報知方法としては、音、光、振動等が考えられる。
【0012】
前記報知機構は、具体的には、前記弾性部材の接触面に設けられた金属片を備えるものであってもよい。
【0013】
従来のトルクレンチは、レンチ本体の筒部及びヘッドをそれぞれ金属製とし、レンチ本体の筒部内面とヘッドとの接触によって発生する金属音により、ユーザは、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクになったことを感知していた。そこで、弾性部材の接触面に金属片を設置することにより、レンチ本体とヘッドとが衝突した時に従来のトルクレンチと同様に金属音が生じるようになる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成したトルクレンチによれば、オーバートルクを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るトルクレンチの全体構成を示す模式図である。
図2】実施形態に係るトルクレンチの切替機構周辺を拡大して示す模式図である。
図3】実施形態に係るトルクレンチによる締付作業における締付対象に加わる締付トルクの時間変化を示すグラフである。
図4】その他の実施形態に係るトルクレンチの切替機構周辺を拡大して示す模式図である。
図5】従来のトルクレンチによる締付作業における締付対象に加わる締付トルクの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るトルクレンチを図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係るトルクレンチ100は、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクになるように当該締付対象を締め付けるためのものである。なお、締付対象としては、ネジ、ボルト、ナット等が挙げられる。
【0018】
<実施形態> 本実施形態に係るトルクレンチ100は、図1に示すように、レンチ本体10と、ヘッド20と、切替機構30と、報知機構40と、設定トルク調節機構50と、を備えている。
【0019】
前記レンチ本体10は、持ち手11を一端側に有すると共に、他端側に筒部12を有する棒状のものである。なお、レンチ本体10は、その筒部12が金属製になっている。そして、レンチ本体10の筒部12には、ヘッド20がその一部を差し込んだ状態で回転可能に軸支されている。また、レンチ本体10の筒部12内部には、ヘッド20と持ち手11との間に切替機構30が設置されており、持ち手11終端部に設定トルク調節機構50が設置されている。
【0020】
前記ヘッド20は、締付対象と係合する係合部21を有するものである。本実施形態の係合部21は、ラチェット機構を有しており、締付対象と係合するソケット22が着脱可能に接続された構造になっている。なお、係合部21は、ソケット22やビットのように締付対象に合わせて交換できる先端工具を備える態様のものに限らず、例えば、係合部21自体がレンチ、スパナ、ドライバー等の先端形状に形成されている態様のものであってもよい。さらに、係合部21は、ラチェット機構を有しないものであってもよい。
【0021】
また、前記ヘッド20は、係合部21から延びる軸体23を有している。なお、係合部21は、レンチ本体10の筒部12外方に配置されている。そして、軸体23は、レンチ本体10の筒部12内方へ差し込まれて当該筒部12に対して回転可能に軸支されている。具体的には、軸体23は、レンチ本体10の筒部12に対し、その筒部12の軸方向と直交する方向へ貫通する支軸24によって回転可能に軸止めされている。これにより、軸体23は、支軸24を回転軸とし、その回転方向に位置する筒部12の対向する内面12a,12b間で回転できるように構成されている。
【0022】
なお、前記本実施形態のヘッド20には、軸体23の先端側に筒部12の一方の内面12aに向かって突出する校正ネジ25が設けられている。また、ヘッド20は、軸体23の先端側に筒部12の他方の内面12bと対向するように弾性部材26を備えている。なお、弾性部材26は、弾力性を有するものであり、外力が加わることによって変形するものである。具体的には、弾性部材26は、ゴム等によって形成されている。
【0023】
前記切替機構30は、締付作業において、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクを越えるまで、レンチ本体10のヘッド20に対する相対的な回転を制限する制限状態となり、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクを越えると、前記制限を解除した解除状態へ切り替わるように構成されている。そして、持ち手11を回転させる力を加えた状態で、切替機構30が制限状態から解除状態に切り替わると、レンチ本体10がヘッド20に対して相対的に回転(空転)し、レンチ本体10の筒部12における他方の内面12bとヘッド20の軸体23とが衝突して接触するように構成されている。
【0024】
なお、本実施形態の切替機構30は、クラッチ式のものであり、具体的には、所謂トグル機構によって構成されている。本実施形態の切替機構30は、レンチ本体10の筒部12内部を軸方向に沿ってスライドするスライド部材31と、スライド部材31をヘッド20側へと押圧する弾性体32と、ヘッド20とスライド部材31とを連結するリンク部材33と、を備えている。そして、切替機構30は、弾性体32の弾力をスライド部材31及びリンク部材33を介してヘッド20に伝達するように構成されている。なお、本実施形態の弾性体32は、コイルバネである。
【0025】
ここで、本実施形態の切替機構30の動作を詳細に説明する。なお、図1(a)及び図2(a)に示すトルクレンチは、切替機構30が制限状態になっており、図1(b)及び図2(b)に示すトルクレンチは、切替状態30が解除状態になっている。
【0026】
前記切替機構30は、制限状態になると、弾性体32の弾力によってヘッド20の軸体23をレンチ本体10の筒部12における一方の内面12aに向けて押圧する。これにより、切替機構30は、レンチ本体10のヘッド20に対する相対的な回転を制限する。そして、切替機構30は、持ち手11の回転に伴って締付対象に加わる締付トルクが設定トルクになるまで制限状態を維持する。
【0027】
前記制限状態において、持ち手11を所定方向(図1(a)中、矢印A方向)へ回転させる力が増加すると、締付対象に加わる締付トルクが増加し(図3中、T1~T2)、これに伴ってレンチ本体10がヘッド20に対して相対的に回転しようとする力も増加する。
【0028】
なお、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力が増加するに従って、切替機構30が、スライド部材31がヘッド20に押されて弾性体32の弾力と抗する方向(図1(a)中、矢印C方向)へスライドすると共に、リンク部材33がスライド部材32の摺動方向(筒部12の軸方向)に対する回転角度(図2(a)中、θ)を減少させる方向へ回転しようとする。
【0029】
そして、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力が更に増加し、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクを越えると、切替機構30は、リンク部材33が前記回転角度を減少させる方向へ回転する。これにより、切替機構30が、ヘッド20の軸体23を筒部12の一方の内面12aに向けて押圧する力が急激に減少して解除状態に切り替わる。その結果、レンチ本体10がヘッド20に対して相対的に回転(空転)し、これにより、締付対象に加わる締付トルクも急激に減少する(図3中、T2~T3)。そして、図1(b)及び図2(b)に示すように、レンチ本体10の筒部12における他方の内面12bとヘッド20の軸体23とが互いに衝突して接触する。
【0030】
なお、従来のトルクレンチは、レンチ本体10の筒部12における他方の内面12bとヘッド20の軸体23とが互いに接触した接触状態になると、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力が切替機構30を介することなく直接ヘッド20へ伝達されるようになる。よって、接触状態になった後、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力が更に増加すると、締付対象に加わる締付トルクも再び増加する。しかし、本実施形態によれば、接触状態になった後、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力が更に増加しても、持ち手11を回転させる力が弾性部材26の変形によって吸収されてヘッド20へ伝達され難くなる(図3中、T3~T4)。これにより、締付対象に加わるオーバートルク(図3中、Xにて示す)が抑制される。なお、例えば、図3においては、ピークトルク(図3中、T4)が設定トルクを僅かに越えるに留まっている。
【0031】
因みに、本実施形態の切替機構30は、解除状態になっても、ヘッド20の軸体23を筒部12の一方の内面12aに向けて押圧するように構成されている。このため、切替機構30は、持ち手11を前記所定方向へ回転させる力がある程度弱まると、再び制限状態へと復帰する(図3中、T5~T6)。
【0032】
前記報知機構40は、締付トルクが設定トルクに達したことをユーザに報知するものである。なお、報知機構40は、切替機構30が制限状態から解除状態に切り替わった場合に、レンチ本体10とヘッド20とが互いに衝突(接触)することを利用して報知するように構成されている。具体的には、報知機構40は、レンチ本体10の金属製の筒部12における他方の内面12bと、ヘッド20の弾性部材26における当該他方の内面12bと対向(接触)する面に設けられた金属片41と、を備えている。すなわち、報知機構40は、ヘッド20とレンチ本体10との接触箇所をいずれも金属で構成したものである。これにより、ヘッド20がレンチ本体10に衝突した場合に、金属の衝突音が生じるように構成されている。
【0033】
前記設定トルク調節機構50は、切替機構30の弾性体32をヘッド20側へ押圧する力を変化させることよって設定トルクを調節するものである。すなわち、設定トルク調節機構50によって、弾性体32をヘッド20側へ押圧する力を増加させると、これに伴って弾性体32がスライド部材31を押圧する力が増加する。これにより、切替機構30が、ヘッド20の軸体23を筒部12の一方の内面12aに押圧する力が増加し、その結果、設定トルクを大きくするように調節できる。一方、設定トルク調節機構50によって、弾性体32をヘッド20側へ押圧する力を減少させると、これに伴って弾性体32がスライド部材31を押圧する力が減少する。これにより、切替機構30が、ヘッド20の軸体23を筒部12における一方の内面12aに押圧する力が減少し、その結果、設定トルクを小さくするように調節できる。なお、本実施形態の設定トルク調節機構50は、持ち手11の終端に設けられたダイヤル51を回転させることによって設定トルクを調節できるように構成されている。
【0034】
<その他の実施形態> 前記実施形態1においては、切替機構30として、所謂トグル機構を用いたが、これに限定されることなく、図4に示す切替機構30を用いてもよい。具体的には、図4に示す切替機構30は、クランク式のものであり、具体的には、レンチ本体10の筒部12内部を軸方向に沿ってスライドするスライド部材31と、スライド部材31をヘッド20側へと押圧する弾性体32と、ヘッド20とスライド部材31との間に介在するリンクブロック34と、を備えている。
【0035】
なお、前記切替機構30は、制限状態になると、図4(a)に示すように、弾性体32の弾性によってヘッド20及びスライド部材31に対して面接触するリンクブロック34を当該ヘッド20側へ押圧する。これにより、レンチ本体10のヘッド20に対する相対的な回転を制限する。
【0036】
そして、持ち手11を回転させる力が増加し、締付対象に加わる締付トルクが設定トルクを越えると、図4(b)に示すように、リンクブロック34が回転して解除状態に切り替わる。その結果、レンチ本体10がヘッド20に対して相対的に回転(空転)し、これに伴って締付対象に加わる締付トルクが急激に減少する。そして、レンチ本体10における筒部12内面12a,12bとヘッド20の軸体23とが互いに衝突する。
【0037】
このような構成によれば、係合部21を支点として持ち手11をいずれの方向へ回転させても、切替機構30が制限状態から解除状態へ切り替わる。よって、レンチ本体10の筒部12における両内面12a,12bとヘッド20の軸体23とが互いに衝突する位置に弾性部材26を備えるように構成すればよい。また、この場合、ラチェット機構に回転方向を切り替えることができる機構を設ければよい。
【0038】
前記実施形態においては、ヘッド20が弾性部材26を備える構成としたが、これに限定されることなく、レンチ本体10がヘッド20と接触する位置に弾性部材26を備える構成としてもよい。また、ヘッド20及びレンチ本体10が共に互いに接触する位置に弾性部材26を備える構成としてもよく、この場合には、各弾性部材26に金属片41を設けて報知機構40とすればよい。
【0039】
また、前記報知機構40は、金属同士を衝突させる構成に限らず、例えば、レンチ本体10とヘッド20とが接触した場合に通電し、音、光、振動等を発生させるような機構のものであってもよい。具体的には、例えば、ヘッド20及びレンチ本体10の接触箇所のいずれかにスイッチを設置し、ヘッド20及びレンチ本体が接触した場合に、スイッチが押圧されてブザーが鳴るような構成としてもよい。
【0040】
また、前記実施形態においては、弾性部材26としてゴムを使用したが、例えば、コイルバネや板バネ等の金属製の弾性部材を使用してもよい。
【0041】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
100 トルクレンチ
10 レンチ本体
11 持ち手
12 筒体
20 ヘッド
21 係合部
26 弾性部材
30 切替機構
40 報知機構
41 金属片

図1
図2
図3
図4
図5