(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】微細気泡発生器
(51)【国際特許分類】
B01F 25/10 20220101AFI20220916BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20220916BHJP
B01F 25/434 20220101ALI20220916BHJP
B01F 25/435 20220101ALI20220916BHJP
【FI】
B01F25/10
B01F23/2373
B01F25/434
B01F25/435
(21)【出願番号】P 2021099346
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2022-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599082872
【氏名又は名称】荒川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸久
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117040(WO,A1)
【文献】特開2003-181258(JP,A)
【文献】特開2016-195988(JP,A)
【文献】特開2010-240592(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1370229(KR,B1)
【文献】特開2018-134587(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049650(WO,A1)
【文献】特開2012-139646(JP,A)
【文献】特開2009-274045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
A47K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流通する流路に設けられ、流路を流通する液体中に気泡を発生させる微細気泡発生器において、
内周面に周方向に螺旋状に延びる第1の螺旋状部が設けられ、内部を軸方向に液体が流通する
軸方向一対の筒状の外側部材と、
外周面が外側部材の内周面と所定間隔をおいて対向するように外側部材内に配置され、外周面に周方向に螺旋状に延びる第2の螺旋状部が設けられた
軸方向一対の内側部材と、
軸方向一方の外側部材及び内側部材と軸方向他方の外側部材及び内側部材との間に配置され、各内側部材を支持するとともに、液体を軸方向に流通可能な貫通孔を有する中間部材とを備え、
各内側部材及び中間部材の径方向中央部を一方の内側部材の液体流入側から他方の内側部材の液体流出側まで軸方向に貫通する液体流通孔を設け、
前記流体が、一方の外側部材の第1の螺旋状部と
一方の内側部材の第2の螺旋状部との間
と前記液体流通孔とをそれぞれ流通するとともに、
一方の外側部材と一方の内側部材との間から流出した液体が中間部材の貫通孔を通り、他方の外側部材の第1の螺旋状部と他方の内側部材の第2の螺旋状部との間を流通し、前記液体流通孔から流出した液体と他方の内側部材の液体流出側で合流するように構成した
ことを特徴とする微細気泡発生器。
【請求項2】
前記第1の螺旋状部と第2の螺旋状部とを互いに軸方向のピッチが異なるように形成した
ことを特徴とする請求項1記載の微細気泡発生器。
【請求項3】
前記外側部材の液体流入側に下流側に向かって内径が縮小するテーパ部を設けた
ことを特徴とする請求項1または2記載の微細気泡発生器。
【請求項4】
前記第1の螺旋状部と第2の螺旋状部とを螺旋のねじれ方向が互いに反対向きになるように形成した
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の微細気泡発生器。
【請求項5】
前記中間部材の径方向中央部から軸方向に延びる固定部材を備え、
固定部材によって各内側部材を支持するとともに、
固定部材に前記液体流通孔を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の微細気泡発生器。
【請求項6】
内周面に内ネジ部が設けられ、軸方向両端を開口した筒状の本体ケースを備え
、
前記各内側部材が支持された中間部材を各外側部材
の間に配置した状態で、各外側部材の外周面に設けられた外ネジ部を本体ケースの
内周面に設けられた内ネジ部に螺合する
とともに、各外側部材によって中間部材を軸方向に挟持することにより、各外側部材、各内側部材及び中間部材を本体ケースに組み付けた
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の微細気泡発生器。
【請求項7】
前記貫通孔を中間部材の周方向
複数箇所に設けるとともに、
各貫通孔の内周面に周方向に螺旋状に延びる第3の螺旋状部を設けた
ことを特徴とする請求項1
乃至6の何れか一項記載の微細気泡発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道水や工業用水等の流路を流通する液体中に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液体中に含有される気泡として、いわゆるマイクロバブルやナノバブルと称される微細な気泡が注目されており、各種洗浄、浄化、水産業、農業、医療、美容、食品加工等、各種分野への実用化が進められている。例えば、工業用途では、精密機械部品の洗浄、配管内の異物の付着防止、上下水や湖沼等の水質改善や異臭防止等に利用されている。また、美容・健康分野では、温浴、皮膚洗浄等に効果的であることが知られている。
【0003】
一般に、マイクロバブルは直径1μm以上100μm以下、ナノバブルは直径1μm未満の気泡をいうが、特にナノバブルは極めて微小であるため、ほとんど浮上せず、液体中で長期間(数週間~数ヶ月)残存することから、その利用分野でのより高い効果が期待されている。
【0004】
このような微細気泡を発生させる装置としては、流路に設けられた液体流通部内に外部から気体を導入し、流路内を流通する液体と混合することにより、液体中に微細気泡を発生させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、2または3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-119623号公報
【文献】特開2008-229516号公報
【文献】特開2014-121689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例のように液体中に外部から気体を導入するようにしたものでは、気体を供給するためのコンプレッサ等の機器が必要になり、構造が複雑になるという問題点があった。また、液体中に外部から気体を導入する場合、一般的に液体の圧力は気体の圧力より低くする必要があるため、導入する気体の圧力限界により高液圧下での発生が困難であるという問題点もあった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部から気体を導入することなく液体中に微細気泡を発生させることのできる微細気泡発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、液体が流通する流路に設けられ、流路を流通する液体中に気泡を発生させる微細気泡発生器において、内周面に周方向に螺旋状に延びる第1の螺旋状部が設けられ、内部を軸方向に液体が流通する軸方向一対の筒状の外側部材と、外周面が外側部材の内周面と所定間隔をおいて対向するように外側部材内に配置され、外周面に周方向に螺旋状に延びる第2の螺旋状部が設けられた軸方向一対の内側部材と、軸方向一方の外側部材及び内側部材と軸方向他方の外側部材及び内側部材との間に配置され、各内側部材を支持するとともに、液体を軸方向に流通可能な貫通孔を有する中間部材とを備え、各内側部材及び中間部材の径方向中央部を一方の内側部材の液体流入側から他方の内側部材の液体流出側まで軸方向に貫通する液体流通孔を設け、前記流体が、一方の外側部材の第1の螺旋状部と一方の内側部材の第2の螺旋状部との間と前記液体流通孔とをそれぞれ流通するとともに、一方の外側部材と一方の内側部材との間から流出した液体が中間部材の貫通孔を通り、他方の外側部材の第1の螺旋状部と他方の内側部材の第2の螺旋状部との間を流通し、前記液体流通孔から流出した液体と他方の内側部材の液体流出側で合流するように構成している。
【0009】
これにより、一方の外側部材の第1の螺旋状部と一方の内側部材の第2の螺旋状部との間の隙間に液体が流通するとともに、中間部材の貫通孔を通り、他方の外側部材の第1の螺旋状部と他方の内側部材の第2の螺旋状部との間を流通し、液体が第1の螺旋状部と第2の螺旋状部との間から流出する際の減圧効果によりキャビテーションを起こし、液体中に微細気泡が発生する。その際、外側部材の内周面側を流通する液体は第1の螺旋状部に沿って旋回しながら流通し、内側部材の外周面側を流通する液体は第2の螺旋状部に沿って旋回しながら流通することから、旋回流によりキャビテーションが促進される。従って、外部のコンプレッサ等によって空気を導入することなく液体中に微細気泡を発生させることが可能となる。また、一方の内側部材の液体流入側の一部の液体が液体流通孔内を流通し、他方の外側部材の第1の螺旋状部と他方の内側部材の第2の螺旋状部との間を流通した液体と液体流通孔から流出した液体とが他方の内側部材の液体流出側で合流することから、外側部材及び内側部材間から流出した旋回流よりも流速の大きい直進流が液体流通孔から旋回流の中心に吐出される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部のコンプレッサ等によって空気を導入することなく液体中に微細気泡を発生させることができるので、構造の簡素化を図ることができ、工業用及び家庭用への普及を図ることができる。また、旋回流によりキャビテーションを促進することができるので、微細気泡の発生量を増大させることができる。また、外側部材及び内側部材間から流出した旋回流よりも流速の大きい直進流を液体流通孔から旋回流の中心に吐出することができるので、速度差及び圧力差の大きい旋回流と直進流とが混ざり合うことによりキャビテーションを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示す微細気泡発生器の側面断面図
【
図7】液体の流通状態を示す微細気泡発生器の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図9は本発明の一実施形態を示すもので、流路を流通する液体中に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器を示すものである。
【0013】
本実施形態の微細気泡発生器1は、内部に液体を流通する本体ケース10と、本体ケース10内に配置される軸方向一対の外側部材20と、各外側部材20内にそれぞれ配置される軸方向一対の内側部材30と、各外側部材20及び各内側部材30の間に配置される中間部材40と、各内側部材30を中間部材40に固定する固定部材50とから構成されている。
【0014】
本体ケース10は軸方向両端を開口した円筒状の部材からなり、その外周面の軸方向中央には工具把持用の六角ナット部11が形成されている。本体ケース10の外周面には、継手等の配管部品と螺合する外ネジ部12が設けられ、外ネジ部12は本体ケース10の軸方向一端と六角ナット部11との間と、本体ケース10の軸方向他端と六角ナット部11との間に亘ってそれぞれ形成されている。本体ケース10の内周面には、各外側部材20と螺合する内ネジ部13が設けられ、内ネジ部13は本体ケース10の軸方向一端から他端に亘って形成されている。
【0015】
外側部材20は軸方向両端を開口した円筒状の部材からなり、その外周面には本体ケース10の内ネジ部13に螺合する外ネジ部21が軸方向一端から他端に亘って形成されている。外側部材20の内周面の軸方向一端側にはテーパ部22が設けられ、テーパ部22は外側部材20の軸方向内側から外側に向かって徐々に拡径するように形成されている。また、外側部材20の内周面には第1の螺旋状部23が設けられ、第1の螺旋状部23は外側部材20の内周面の軸方向他端とテーパ部22との間に亘って形成されている。第1の螺旋状部23は外側部材20の内周面に形成された内ネジからなり、ネジの山部23a及び谷部23bが外側部材20の周方向に連続して螺旋状に延びるように形成されている。
【0016】
内側部材30は円柱状の部材からなり、外周面が外側部材20の内周面と所定間隔をおいて対向するように外側部材20内に配置されている。内側部材30の軸方向両端面はテーパ部31からなり、テーパ部31は径方向中心側が軸方向外側に突出するように形成されている。内側部材30の径方向の中心には軸方向に貫通するネジ孔32が設けられ、ネジ孔32には固定部材50が螺合するようになっている。また、内側部材30の外周面には第2の螺旋状部33が設けられ、第2の螺旋状部33は内側部材30の外周面の軸方向一端から他端に亘って形成されている。第2の螺旋状部33は内側部材30の内周面に形成された外ネジからなり、ネジの山部33a及び谷部33bが内側部材30の周方向に連続して螺旋状に延びるように形成されている。この場合、外側部材20及び内側部材30は、第1の螺旋状部23のピッチP1 と第2の螺旋状部33のピッチP2 とが互いに異なるように形成されており、本実施形態では第1の螺旋状部23のピッチP1 を第2の螺旋状部33のピッチP2 よりも大きくしている。
【0017】
中間部材40は軸方向に短い円柱状の部材からなり、その外径が本体ケース10の内ネジ部13の内径と等しくなるように形成されている。中間部材40の径方向の中心には軸方向に貫通するネジ孔41が設けられ、ネジ孔41には固定部材50が螺合するようになっている。また、中間部材40には軸方向に貫通する複数の貫通孔42が設けられ、各貫通孔42はネジ孔41を中心に中間部材40の周方向に等間隔で配置されている。各貫通孔42の内周面には第3の螺旋状部43がそれぞれ設けられ、第3の螺旋状部43は貫通孔42の内周面の軸方向一端から他端に亘って形成されている。第3の螺旋状部43は貫通孔42の内周面に形成された内ネジからなり、ネジの山部及び谷部が貫通孔42の周方向に連続して螺旋状に延びるように形成されている。
【0018】
固定部材50は軸方向に長い円柱状の部材からなり、その外周面には中間部材40のネジ孔41に螺合する外ネジ部51が軸方向一端から他端に亘って形成されている。固定部材50は、各内側部材30と中間部材40とを挿通可能な長さに形成され、固定部材50の径方向の中心には軸方向に貫通する液体流通孔52が設けられている。
【0019】
以上のように構成された微細気泡発生器1を組み立てる場合は、
図6に示すように、まず固定部材50の軸方向中央に中間部材40を螺合し、固定部材50の軸方向両端側に各内側部材30を螺合することにより、中間部材40によって各内側部材30を支持する。次に、各内側部材30、中間部材40及び固定部材50からなる組体を本体ケース10内の軸方向中央に配置した後、本体ケース10内の軸方向両側に各外側部材20をそれぞれ螺合する。その際、各外側部材20によって中間部材40を軸方向両側から締め付けることにより、各内側部材30、中間部材40及び固定部材50の組体が本体ケース10に確実に固定される。
【0020】
次に、本実施形態の微細気泡発生器1における気泡の発生作用を
図7に基づいて説明する。
【0021】
まず、本体ケース10の軸方向一端側から流入した液体は一方の外側部材20のテーパ部22によって流速及び圧力を増加された後、一部の液体が固定部材50の液体流通孔52に流入し、他の液体が軸方向一方の外側部材20の内周面と軸方向一方の内側部材30の外周面との間に流入する。外側部材20と内側部材30との間の隙間を流通する液体は流速及び圧力が急激に増加し、外側部材20と内側部材30との間から流出する際の減圧効果によりキャビテーションを起こし、液体中に微細気泡が発生する。また、外側部材20の内周面側を流通する液体は第1の螺旋状部23に沿って旋回しながら流通し、内側部材30の外周面側を流通する液体は第2の螺旋状部33に沿って旋回しながら流通する。
【0022】
次に、軸方向一方の外側部材20と内側部材30との間を通過した液体は中間部材40の各貫通孔42内に流入し、各貫通孔42内の液体は第3の螺旋状部43に沿って旋回しながら流通する。
【0023】
続いて、各貫通孔42から流出した液体は、軸方向他方の外側部材20の内周面と内側部材30の外周面との間を流通し、軸方向一方の外側部材20及び内側部材30間を流通する場合と同様、外側部材20と内側部材30との間から流出する際の減圧効果によりキャビテーションを起こし、液体中に微細気泡が発生する。その際、外側部材20の内周面側を流通する液体は第1の螺旋状部23に沿って旋回しながら流通し、内側部材30の外周面側を流通する液体は第2の螺旋状部33に沿って旋回しながら流通する。
【0024】
この後、軸方向他方の外側部材20及び内側部材30間を通過した液体は、固定部材50の液体流通孔52から吐出する液体と合流し、本体ケース10の軸方向他端側から外部に流出する。その際、液体流通孔52から吐出する液体が最大流速となるが、外側部材20及び内側部材30間から流出する液体は流速及び圧力が減少するため、液体流通孔52から吐出する液体との速度差及び圧力差が大きくなり、これらの液体の流れの境界部分におけるキャビテーションにより更に微細気泡が発生する。また、液体流通孔52から吐出する液体は直進流であるのに対し、外側部材20及び内側部材30間から流出する液体は旋回流であるため、これらの液体が混ざり合う際のキャビテーションも促進される。
【0025】
ここで、本実施形態の微細気泡発生器1を用いて実験を行ったところ、
図8に示す結果が得られた。この実験は、
図2に示す外側部材20の第1の螺旋状部23の内径D1 (山部23aの内径)を10.5mm、外側部材20の第1の螺旋状部23のピッチP1 を1.5mm、外側部材20の第1の螺旋状部23のねじれ方向を右ねじれ、固定部材50の液体流通孔52の内径D3 を1.5mmとし、内側部材30の第2の螺旋状部33の外径D2 (山部33aの外径)と、内側部材30の長さLと、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向がそれぞれ異なる実施例1~10について実験を行った。
【0026】
この場合、実施例1は、内側部材30の外径D2 を10.0mm、内側部材30の長さLを8mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を右ねじれとし、実施例2は、内側部材30の外径D2 を10.0mm、内側部材30の長さLを12mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を右ねじれとし、実施例3は、内側部材30の外径D2 を10.0mm、内側部材30の長さLを8mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれとし、実施例4は、内側部材30の外径D2 を10.0mm、内側部材30の長さLを12mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれとし、実施例5は、内側部材30の外径D2 を9.5mm、内側部材30の長さLを8mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれ、実施例6は、内側部材30の外径D2 を9.5mm、内側部材30の長さLを12mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれ、実施例7は、内側部材30の外径D2 を9.0mm、内側部材30の長さLを8mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれ、実施例8は、内側部材30の外径D2 を9.0mm、内側部材30の長さLを12mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれとし、実施例9は、内側部材30の外径D2 を8.5mm、内側部材30の長さLを8mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれとし、実施例10は、内側部材30の外径D2 を8.5mm、内側部材30の長さLを12mm、内側部材30の第2の螺旋状部33のねじれ方向を左ねじれとした。
【0027】
尚、外側部材20の第1の螺旋状部23と内側部材30の第2の螺旋状部33との間隔S(山部23aと山部33aとの径方向の間隔)は、内側部材30の外径D2 が10.0mmの場合は0.25mm、D2 が9.5mmの場合は0.5mm、D2 が9.0mmの場合は0.75mm、D2 が8.5mmの場合は1.0mmとなる。
【0028】
本実験では、
図9に示すように、水Wを貯留した第1の容器2内に、微細気泡発生器1の一端側が継手3を介して接続された水中ポンプ4を配置し、微細気泡発生器1の他端側に継手5を介して接続されたホース6から第2の容器7に水Wを吐出するようにした実験装置を用いた。
【0029】
実験方法としては、水中ポンプ4の吐出圧を0.044Mpaとし、まず微細気泡発生器1が接続されていない装置(ホース7が継手のみで水中ポンプ3に接続されたもの)で吐出量、流路面積、平均粒子径、最大頻度径及び粒子個数濃度の測定を行った。ここで測定された粒子は水に含まれる不純物であるため、以下の測定結果(微細気泡発生器1を接続した場合)における粒子個数濃度は、継手のみの場合の粒子個数濃度の測定値を減じた数値をあらわす。
【0030】
次に、微細気泡発生器1が接続された実験装置により、水中ポンプ3で吸引した水Wを微細気泡発生器1に流通させ、ホース7から第2の容器5に回収した水Wに含まれる気泡を実施例1~10について測定した。この測定では、吐出量及び流路面積を測定するとともに、水中に浮遊するナノバブルの濃度分布や直径の測定方法として知られている粒子軌跡解析法を用い、平均粒子径、最大頻度径及び粒子個数濃度を測定した。
【0031】
実験の結果、各実施例1~10の平均粒子径及び最大頻度径はすべて1μm未満(ナノバブル)であり、実施例1~10はいずれもナノバブルを発生させることが確認された。また、粒子個数濃度は実施例10が最も高いという結果が得られた。実施例10は、第1の螺旋状部23のねじれ方向が右ねじれにあるのに対し、第2の螺旋状部33のねじれ方向が左ねじれであり、互いにねじれ方向が反対向きであることから、第1の螺旋状部23に沿って流通する液体の旋回方向と第2の螺旋状部33に沿って流通する液体の旋回方向が互いに逆方向となり、ねじれ方向が同一方向の実施例1及び2に比べてキャビテーション促進効果が高いと考えられる。また、実施例10は、内側部材30の長さLが最も長く、第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33との間の間隔Sが最も大きい分、各螺旋状部23,33間での流速が減少し、固定部材50の液体流通孔52から吐出する液体との流速差及び圧力差が大きくなるため、キャビテーションが増大し、旋回流により気泡発生量が他の実施例1~9よりも多くなったものと考えられる。更に、実施例10は、第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33との間の間隔Sが最も大きいため、気泡発生量のみならず液体の吐出量も最大となる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、筒状の外側部材20の内周面に設けられた第1の螺旋状部23と、外側部材20内に配置された内側部材30の周面に設けられた第2の螺旋状部33との間の隙間に液体を流通させるようにしたので、液体が第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33との間から流出する際の減圧効果によりキャビテーションを起こし、本体ケース10内の流路を流通する液体中に微細気泡を発生させることができる。その際、外側部材20の内周面側を流通する液体は第1の螺旋状部23に沿って旋回しながら流通し、内側部材30の外周面側を流通する液体は第2の螺旋状部33に沿って旋回しながら流通するので、旋回流によりキャビテーションを促進することができ、微細気泡の発生量を増大させることができる。これにより、外部のコンプレッサ等によって空気を導入することなく微細気泡を発生させることができるので、構造の簡素化を図ることができ、工業用及び家庭用への普及を図ることができる。更に、外部から気体を導入する場合と異なり、高液圧下での気泡の発生が可能となるので、気泡の微細化及び発生量の増大に極めて有利である。
【0033】
また、第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33とを互いに軸方向のピッチP1 ,P2 が異なるように形成したので、各螺旋状部23,33の軸直角任意断面における隙間の大きさが周方向で不均一になり、各ピッチが同一で隙間の大きさが周方向で均一の場合に比べてキャビテーションが生じやすくなり、微細気泡の発生量を増大させることができる。
【0034】
更に、外側部材20の液体流入側に下流側に向かって内径が徐々に縮小するテーパ部22を設けたので、第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33との間に流入する前の液体の流速及び圧力をテーパ部22によって増加させることができ、キャビテーション効果をより高めることができる。
【0035】
また、第1の螺旋状部22と第2の螺旋状部23とを螺旋のねじれ方向が互いに反対向きになるように形成することにより、第1の螺旋状部22側の流れと第2の螺旋状部33側の流れを互いに逆方向の旋回流とすることができるので、ねじれ方向が互いに同一方向の場合に比べてキャビテーションが生じやすくなり、微細気泡の発生量を増大させることができる。
【0036】
更に、内側部材20の径方向中央部を軸方向に貫通する液体流通孔52を設けたので、外側部材20及び内側部材30間から流出した旋回流よりも流速の大きい直進流を液体流通孔52から旋回流の中心に吐出することができ、速度差及び圧力差の大きい旋回流と直進流とが混ざり合うことによりキャビテーションを促進することができる。
【0037】
また、外側部材20及び内側部材30を本体ケース10内に軸方向一対ずつ設けるとともに、軸方向一方の外側部材20及び内側部材30と軸方向他方の外側部材20及び内側部材30との間に液体を軸方向に流通可能な中間部材40を設け、中間部材40によって各内側部材30を支持するとともに、中間部材40を各外側部材20によって軸方向に挟持した状態で各外側部材20の外ネジ部21を本体ケース10の内ネジ部13に螺合することにより、各外側部材20、各内側部材30及び中間部材40を本体ケース10に組み付けるようにしたので、溶接、別部品のボルトやナット等を用いることなく組み立てることができ、極めて容易に製造することができる。また、本体ケース10内の各部材同士の締結によって組み立てが完結するので、本体ケース10を継ぎ目や孔のない単一の部材によって形成することができ、水圧に対する密閉性及び耐久性を高めることができる。
【0038】
更に、中間部材40に液体を軸方向に流通可能な複数の貫通孔42を互いに周方向に間隔をおいて設けるとともに、各貫通孔42の内周面に周方向に螺旋状に延びる第3の螺旋状部43を設けたので、各貫通孔42内の液体を第3の螺旋状部43に沿って旋回させながら流通させることができ、旋回により液体中に含まれる気泡の微細化を促進することができる。
【0039】
尚、前記実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1…微細気泡発生器、10…本体ケース、11…内ネジ部、20…外側部材、21…外ネジ部、22…テーパ部、23…第1の螺旋状部、30…内側部材、33…第2の螺旋状部、40…中間部材、42…貫通孔、43…第3の螺旋状部、50…固定部材、P1 ,P2 …ピッチ。
【要約】
【課題】外部から気体を導入することなく液体中に微細気泡を発生させることのできる微細気泡発生器を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、筒状の外側部材20の内周面に設けられた第1の螺旋状部23と、外側部材20内に配置された内側部材30の周面に設けられた第2の螺旋状部33との間の隙間に液体を流通させるようにしたので、液体が第1の螺旋状部23と第2の螺旋状部33との間から流出する際の減圧効果によりキャビテーションを起こし、液体中に微細気泡を発生させることができる。その際、外側部材20の内周面側を流通する液体は第1の螺旋状部23に沿って旋回しながら流通し、内側部材30の外周面側を流通する液体は第2の螺旋状部33に沿って旋回しながら流通するので、旋回流によりキャビテーションを促進することができ、微細気泡の発生量を増大させることができる。
【選択図】
図7