(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】高統合度かつ高性能のロボット関節モジュール
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20220916BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20220916BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220916BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20220916BHJP
【FI】
B25J17/00 E
F16H1/28
H02K7/116
H02K11/21
(21)【出願番号】P 2021546417
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2019106113
(87)【国際公開番号】W WO2020125095
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】201811561682.8
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521161428
【氏名又は名称】杭州宇▲樹▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王▲興▼▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼知雨
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0053000(US,A1)
【文献】特開2018-029459(JP,A)
【文献】特開2018-084268(JP,A)
【文献】特開2018-093590(JP,A)
【文献】特開2018-100744(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03270000(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第102916523(CN,A)
【文献】特開2005-297081(JP,A)
【文献】特表2010-533830(JP,A)
【文献】特開昭63-039782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
F16H 1/28
H02K 7/116
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を動かして運動させるモータアセンブリ(1)と減速機アセンブリ(3)とを含む高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールであって、モータアセンブリ(1)はモーメントを出力するためのモータ回転子(12)とモータフレーム(13)とを含み、
前記減速機アセンブリ(3)にリングギア(33)が設けられ、前記リングギア(33)は摩擦力発生器(42)によりモータフレーム(13)に当接されており、
モータ回転子(12)又は減速機アセンブリ(3)の出力端からリングギア(33)へ伝達されるトルクがリングギア(33)とモータフレーム(13)との間の摩擦トルクより小さくなる場合、減速機アセンブリ(3)のリングギア(33)は摩擦力発生器(42)による摩擦トルクでモータフレーム(13)に固定され、モータ回転子(12)により減速機アセンブリ(3)の出力端は動かされて回転するようになり、
モータ回転子(12)又は減速機アセンブリ(3)の出力端からリングギア(33)へ伝達されるトルクがリングギア(33)とモータフレーム(13)との間の摩擦トルクより大きくなる場合、減速機アセンブリ(3)のリングギア(33)はモータ回転子(12)又は減速機アセンブリ(3)の出力端に動かされて摩擦力発生器(42)による摩擦トルクを克服し、モータフレーム(13)に対して回転するようにな
り、
前記モータ回転子(12)は貫通してモータフレーム(13)のキャビティに置かれ、前記モータフレーム(13)の外側にフロントエンドカバー(43)が設けられ、前記摩擦力発生器(42)はモータフレーム(13)とフロントエンドカバー(43)とによる収納室に組み付けられており、
前記フロントエンドカバー(43)はモータフレーム(13)に固定接続され、そのキャビティに摩擦力発生器(42)が押圧されて組み付けられており、リングギア(33)は摩擦力発生器(42)に押されてモータフレーム(13)へ押圧され摩擦ばめになり、環状の摩擦面を有するものであり、
前記リングギア(33)に環状の摩擦ディスク(41)が設けられ、前記摩擦ディスク(41)はモータフレーム(13)又はリングギア(33)と摩擦しながら接続され、耐摩耗材料で製造されたものであり、
遊星キャリア(34)とモータフレーム(13)との間には中空構造を持つ出力エンコーダ(39)が組み付けられ、前記モータ回転子(12)とモータフレーム(13)との間にモータエンコーダ(2)が組み付けられ、前記モータエンコーダ(2)と出力エンコーダ(39)は磁気エンコーダ,誘導エンコーダ,静電容量式エンコーダ,回転トランス,光電式エンコーダを含むがそれらに限られず、前記出力エンコーダ(39)は主に前記リングギア(33)が摩擦して摺動する場合においても前記減速機アセンブリ(3)の出力端に対するリアルタイムな角度検知を可能にするためのものであり、
前記摩擦力発生器(42)は受動弾性素子であり、皿ばね,波形ばね及びコイルばねを含むがそれらに限られず、
前記モータアセンブリ(1)はモータ固定子・巻線(11)と、モータリアエンドカバー(14)とをさらに含み、
前記減速機アセンブリ(3)は太陽歯車(31)と、遊星歯車(32)と、リングギア(33)と、遊星キャリア(34)と、出力フランジ(35)と、出力軸受エンドカバー(37)とをさらに含み、
前記摩擦ディスク(41),摩擦力発生器(42)及びフロントエンドカバー(43)によりモーメント規制アセンブリ(4)が構成され、
前記モータフレーム(13),摩擦ディスク(41),リングギア(33),摩擦力発生器(42)及びフロントエンドカバー(43)により摩擦モーメント規制機構が構成されており、
前記モータ回転子(12)のシャフトは中空構造を有し、モータ回転子(12)と一体に設けられるか別体として固定接続される構造とされており、前記モータエンコーダ(2)は中空構造を有し、前記太陽歯車(31)も中空構造を有しながら、モータ回転子(12)に固定接続されていることを特徴とする高統合度かつ高性能のロボット関節モジュール。
【請求項2】
前記遊星歯車(32)にデュプレックスギアが採用され、一般的な遊星歯車(32)を採用することに比べると、減速機の重量と体積のわずかな向上で高い減速比を実現することが可能になり、
前記遊星キャリア(34)と出力フランジ(35)は固定接続されており、いずれも軸の肩を有することで、互いに固定接続されるとともに前記出力フランジ(35)における出力軸受(36)をしっかりと挟むようになることを特徴とする、請求項
1に記載の高統合度かつ高性能のロボット関節モジュール。
【請求項3】
前記出力軸受(36)に交差ころ軸受が採用され、モータリアエンドカバー軸受(15),モータフレーム軸受(16)及び中心軸受(38)については少なくともいずれか二つを設けるようにし、前記モータアセンブリ(1)はアウターロータ型永久磁石モータとされていることを特徴とする、請求項
2に記載の高統合度かつ高性能のロボット関節モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールに関し、ロボット機器の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
高性能のロボット関節動力モジュールはロボットにおいて肝心な部品となっており、その性能はロボットの運動性能へ多大な影響を与えている。望ましいロボット関節動力構造としては、出力トルク/重量密度が大きくて構造が簡単かつコンパクトで、生産・製造コストが低い等の特性が考えられている。
【0003】
高性能歩行ロボットやロボットアーム又は外骨格等のようなものに適用される関節動力モジュールについては、地面・地形が複雑で変化が多いながら外部からの衝撃と干渉もあるため、ロボット関節モータによる駆動モーメントが関節減速機の耐えられる最大モーメントより大きくなるか、又は減速機の出力軸を介して減速機へ伝達される外部からの最大モーメントが関節減速機の耐えられる最大モーメントより大きくなる場合、ロボット関節の減速機は過負荷の作動状態に陥り、減速機歯車等の関節部品が破損してしまった。
【0004】
そして、これらの稼働状況では、ロボット関節は長期間にわたって往復して作動しながら、地面や外部環境からの衝撃荷重を受けているため、その減速機における各歯の噛合面が不均一に摩耗することは厳しくなってしまった。
【0005】
さらには、大きい出力トルク/重量密度や簡単かつコンパクトな構造及び低い生産・製造コスト等の需要を満たすために、よく使用されているロボット関節動力モジュールは取捨を行うことが多く、つまり、関節モジュールにおいて中心軸穴を開口しないようにし、それにより、中空部材経由の配線が行えなくなり、ケーブルはそのままロボット関節の外に吊り下げられて、ロボット構造の安全性や美観に悪影響を与えてしまった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の問題点に対して、本発明は、摩擦滑りに基づくモーメント規制が可能で、それぞれの複雑稼働状況に適し、関節が衝撃荷重を受けている場合に関節部品が破損しない高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールを提供することをその目的とする。
【0007】
本発明は、関節モジュールに軸穴が開口され、中空部材を経由して配線するか他の部品を貫通させることができ、構造が美観を持っているコンパクトで高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールを提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段として提案されている。
関節を動かして運動させるモータアセンブリと減速機アセンブリとを含む高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールであって、モータアセンブリはモーメントを出力するためのモータ回転子とモータフレームとを含み、
前記減速機アセンブリにリングギアが設けられ、前記リングギアは摩擦力発生器によりモータフレームに当接されており、
モータ回転子又は減速機アセンブリの出力端からリングギアへ伝達されるトルクがリングギアとモータフレームとの間の摩擦トルクより小さくなる場合、減速機アセンブリのリングギアは摩擦力発生器による摩擦トルクでモータフレームに固定され、モータ回転子により減速機アセンブリの出力端は動かされて回転するようになり、
本発明では、モータ回転子又は減速機アセンブリの出力端からリングギアへ伝達されるトルクがリングギアとモータフレームとの間の摩擦トルクより大きくなる場合、減速機アセンブリのリングギアはモータ回転子又は減速機アセンブリの出力端に動かされて摩擦力発生器による摩擦トルクを克服し、モータフレームに対して回転するようになることで、減速機アセンブリとモータフレームの摩擦滑りが発生し、減速機アセンブリが受けるモーメントは規制されるようになり、そして、減速機がモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機の破損は防止されており、そのため、本発明はそれぞれの複雑稼働状況に適用可能なものとなり、関節が衝撃荷重を受けている場合に関節部品が破損することはなくなる。
【0009】
好ましくは、前記モータ回転子は貫通してモータフレームのキャビティに置かれ、前記モータフレームの外側にフロントエンドカバーが設けられ、前記摩擦力発生器はモータフレームとフロントエンドカバーとによる収納室に組み付けられており、構造がコンパクトかつ確実で、生産・製造しやすいものとなる。
【0010】
好ましくは、前記フロントエンドカバーはモータフレームに固定接続され、そのキャビティに摩擦力発生器が押圧されて組み付けられており、リングギアは摩擦力発生器に押されてモータフレームへ押圧され摩擦ばめになり、環状の摩擦面を有するものである。前記環状の摩擦面により、リングギアと摩擦力発生器又はモータフレームとの間の摩擦面積が大きくなり、摩耗が軽減し放熱性能が向上している。
【0011】
好ましくは、前記リングギアに環状の摩擦ディスクが設けられ、前記摩擦ディスクはモータフレーム又はリングギアと摩擦しながら接続され、耐摩耗材料で製造されたものであり、別体の前記摩擦ディスクを採用することで、今後のメンテナンスや交換の利便性を図っている。
【0012】
好ましくは、遊星キャリアとモータフレームとの間には中空構造を持つ出力エンコーダが組み付けられ、前記モータ回転子とモータフレームとの間にモータエンコーダが組み付けられ、前記モータエンコーダと出力エンコーダは磁気エンコーダ,誘導エンコーダ,静電容量式エンコーダ,回転トランス,光電式エンコーダを含むがそれらに限らず、前記出力エンコーダは主に前記リングギアが摩擦して摺動する場合においても前記減速機アセンブリの出力端に対するリアルタイムな角度検知を可能にするためのものである。
【0013】
本発明では、遊星キャリアとモータフレームとの間にエンコーダを増設することで、コンパクトな構造を確保しながら、出力軸に対する角度検知が可能になり、モータにだけエンコーダを有する関節モジュールに比べ、制御性能が大きく向上している。
【0014】
好ましくは、前記摩擦力発生器は受動弾性素子であり、皿ばね,波形ばね及びコイルばねを含むがそれらに限らず、構造が簡単かつ確実であり、製造コストが低い。
【0015】
好ましくは、前記摩擦力発生器は能動制御素子であり、押圧力を発生してリングギアとモータフレームを密着させるように押圧して摩擦ばめとすることができ、前記能動制御素子は電気磁石と電歪材料を含むがそれらに限らない。能動制御素子によれば、前記摩擦力発生器は実際の需要に応じて前記リングギアと前記モータフレームとの間の最大摩擦モーメントをリアルタイムかつ動的に調整することが可能になり、関節モジュールをそれぞれの稼働状況に適させやすくしている。
【0016】
好ましくは、
前記モータアセンブリはモータ固定子・巻線と、モータリアエンドカバーとをさらに含み、
前記減速機アセンブリは太陽歯車と、遊星歯車と、リングギアと、遊星キャリアと、出力フランジと、出力軸受エンドカバーとをさらに含み、
前記摩擦ディスク,摩擦力発生器及びフロントエンドカバーによりモーメント規制アセンブリが構成され、
前記モータフレーム,摩擦ディスク,リングギア,摩擦力発生器及びフロントエンドカバーにより摩擦モーメント規制機構が構成されている。
【0017】
本発明はモーメント規制を行うことができ、モータから出力フランジへのモーメント規制及び出力フランジからモータへのモーメント規制が実現されている。ロボット関節モジュールの信頼性は大きく向上している。そして、たまに発生しているモーメント規制による減速機におけるリングギアのモータフレームに対する滑りは、減速機全体の摩耗を均一にすることに役立ち、関節モジュールの耐用年数が大きく向上している。
【0018】
好ましくは、前記モータ回転子のシャフトは中空構造を有し、モータ回転子と一体に設けられるか別体として固定接続される構造とされており、前記モータエンコーダは中空構造を有し、前記太陽歯車も中空構造を有しながら、モータ回転子に固定接続されている。本発明では、関節モジュールに軸穴を開口することで、構造がコンパクトでモーメント/重量密度が大きくなるとともに、中空構造が実現され、関節モジュールの実際応用において中空部材を経由して配線するか他の部品を貫通させることが容易になり、また、ケーブルは関節モジュール内部に組み付けられるようになり、より安全性と美観を持つ関節モジュール構造が実現されている。
【0019】
好ましくは、
前記遊星歯車にデュプレックスギアが採用され、一般的な遊星歯車を採用することに比べると、減速機の重量と体積のわずかな向上で高い減速比を実現することが可能になり、
前記遊星キャリアと出力フランジは固定接続されており、いずれも軸の肩を有することで、互いに固定接続されるとともに前記出力フランジにおける出力軸受をしっかりと挟むようになり、追加部品で軸受を軸方向に固定する必要がなく、部品点数が低減し、関節モジュールの重量と体積及びコストの低下を図っている。
【0020】
好ましくは、前記出力軸受に交差ころ軸受が採用され、それにより、関節モジュールの出力軸の軸方向力に対する耐性が向上し、モータリアエンドカバー軸受,モータフレーム軸受及び中心軸受については少なくともいずれか二つを設けるようにし、前記モータアセンブリはアウターロータ型永久磁石モータとされており、それにより、関節構造がよりコンパクトになり、モータの製造プロセスが一層簡単になってコストが低下している。
【発明の効果】
【0021】
従来技術に比べ、本発明は以下の有益な効果がある。
本発明では、モータ回転子又は減速機アセンブリの出力端からリングギアへ伝達されるトルクがリングギアとモータフレームとの間の摩擦トルクより大きくなる場合、減速機アセンブリのリングギアはモータ回転子又は減速機アセンブリの出力端に動かされて摩擦力発生器による摩擦トルクを克服し、モータフレームに対して回転するようになることで、減速機アセンブリとモータフレームの摩擦滑りが発生し、減速機アセンブリが受けるモーメントは規制されるようになり、そして、減速機がモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機の破損は防止されており、そのため、本発明はそれぞれの複雑稼働状況に適用可能なものとなり、関節が衝撃荷重を受けている場合に関節部品が破損することはなくなる。
【0022】
さらに本発明では、関節モジュールに軸穴を開口することで、構造がコンパクトでモーメント/重量密度が大きくなるとともに、中空構造が実現されている。関節モジュールの実際応用において中空部材を経由して配線するか他の部品を貫通させることが容易になる。また、ケーブルは関節モジュール内部に組み付けられて外付けが不要となり、関節モジュールの統合度が向上し、外部環境によるケーブルに発生可能な破損が回避され、より安全性と美観を持つ関節モジュール構造が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】本発明による摩擦力発生器に能動制御素子を採用する場合の全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的や解決手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面及び実施例に合わせて本発明をより詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明の限定となるものではないことは理解されたい。
【0025】
代わりに、請求項により定義される本発明の精神と範囲に基づくあらゆる置換,変更,等価方法及び解決手段は本発明に含まれている。さらには、本発明をより良好に理解するために、後述する本発明の詳述においては特定の細部がいくつか述べられている。当業者にとっては、これらの細部がなくても、本発明を完全に理解できるはずである。
【0026】
図1~4に示されるように、関節を動かして運動させるモータアセンブリ1と減速機アセンブリ3とを含む高統合度かつ高性能のロボット関節モジュールであって、モータアセンブリ1はモーメントを出力するためのモータ回転子12とモータフレーム13とを含む。
【0027】
前記減速機アセンブリ3にリングギア33が設けられ、前記リングギア33は摩擦力発生器42によりモータフレーム13に当接されている。
【0028】
モータ回転子12又は減速機アセンブリ3の出力端からリングギア33へ伝達されるトルクがリングギア33とモータフレーム13との間の摩擦トルクより小さくなる場合、減速機アセンブリ3のリングギア33は摩擦力発生器42による摩擦トルクでモータフレーム13に固定され、モータ回転子12により減速機アセンブリ3の出力端は動かされて回転するようになる。
【0029】
モータ回転子12又は減速機アセンブリ3の出力端からリングギア33へ伝達されるトルクがリングギア33とモータフレーム13との間の摩擦トルクより大きくなる場合、減速機アセンブリ3のリングギア33はモータ回転子12又は減速機アセンブリ3の出力端に動かされて摩擦力発生器42による摩擦トルクを克服し、モータフレーム13に対して回転するようになる。そして、減速機がモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機の破損は防止されている。
【0030】
本発明による摩擦ディスク41を増設した実施例は以下の通りである。
前記リングギア33に環状の摩擦ディスク41が設けられ、前記摩擦ディスク41はモータフレーム13又はリングギア33と摩擦しながら接続され、耐摩耗材料で製造されたものであり、別体の前記摩擦ディスク41を採用することで、今後のメンテナンスや交換の利便性を図っている。
【0031】
本発明による具体的な構造の実施例は以下の通りである。
前記モータアセンブリ1はモータ固定子・巻線11と、モータリアエンドカバー14とをさらに含み、前記減速機アセンブリ3は太陽歯車31と、遊星歯車32と、リングギア33と、遊星キャリア34と、出力フランジ35と、出力軸受エンドカバー37とをさらに含み、前記摩擦ディスク41,摩擦力発生器42及びフロントエンドカバー43によりモーメント規制アセンブリ4が構成され、前記モータフレーム13,摩擦ディスク41,リングギア33,摩擦力発生器42及びフロントエンドカバー43により摩擦モーメント規制機構が構成されている。
【0032】
本発明による摩擦力発生器42の組付けの実施例は以下の通りである。
前記モータ回転子12は貫通してモータフレーム13のキャビティに置かれ、前記モータフレーム13の外側にフロントエンドカバー43が設けられ、前記摩擦力発生器42はモータフレーム13とフロントエンドカバー43とによる収納室に組み付けられており、構造がコンパクトかつ確実である。
【0033】
前記フロントエンドカバー43はモータフレーム13に固定接続され、そのキャビティに摩擦力発生器42が押圧されて組み付けられており、リングギア33は摩擦力発生器42に押されてモータフレーム13へ押圧され摩擦ばめになり、環状の摩擦面を有するものである。前記環状の摩擦面により、リングギア33と摩擦力発生器42又はモータフレーム13との間の摩擦面積が大きくなり、摩耗が軽減し放熱性能が向上している。
【0034】
本発明によるエンコーダを増設した実施例は以下の通りである。
遊星キャリア34とモータフレーム13との間には中空構造を持つ出力エンコーダ39が組み付けられ、前記モータ回転子12とモータフレーム13との間にモータエンコーダ2が組み付けられ、前記モータエンコーダ2と出力エンコーダ39は磁気エンコーダ,誘導エンコーダ,静電容量式エンコーダ,回転トランス,光電式エンコーダを含むがそれらに限らず、前記出力エンコーダ39は主に前記リングギア33が摩擦して摺動する場合においても前記減速機アセンブリ3の出力端に対するリアルタイムな角度検知を可能にするためのものである。
【0035】
本発明による摩擦力発生器42の一つの実施例は以下の通りである。
前記摩擦力発生器42は受動弾性素子であり、皿ばね,波形ばね及びコイルばねを含むがそれらに限らず、構造が簡単かつ確実である。
【0036】
本発明による摩擦力発生器42のもう一つの実施例は以下の通りである。
前記摩擦力発生器42は能動制御素子であり、押圧力を発生してリングギア33とモータフレーム13を密着させるように押圧して摩擦ばめとすることができ、前記能動制御素子は電気磁石と電歪材料を含むがそれらに限らない。能動制御素子によれば、前記摩擦力発生器42は実際の需要に応じて前記リングギア33と前記モータフレーム13との間の最大摩擦モーメントをリアルタイムかつ動的に調整することが可能になり、関節モジュールをそれぞれの稼働状況に適させやすくしている。
【0037】
本発明による中空部材経由の配線の一つの実施例は以下の通りである。
前記モータ回転子12のシャフトは中空構造を有し、モータ回転子12と一体に設けられるか別体として固定接続される構造とされており、前記モータエンコーダ2は中空構造を有し、前記太陽歯車31も中空構造を有しながら、モータ回転子12に固定接続されている。本関節モジュールは、構造がコンパクトでモーメント/重量密度が大きくなるとともに、中空構造が実現され、関節モジュールの実際応用において中空部材を経由して配線するか他の部品を貫通させることが容易になる。
【0038】
本発明による遊星歯車32の一つの実施例は以下の通りである。
前記遊星歯車32にデュプレックスギアが採用され、一般的な遊星歯車32を採用することに比べると、減速機の重量と体積のわずかな向上で高い減速比を実現することが可能になり、
前記遊星キャリア34と出力フランジ35は固定接続されており、いずれも軸の肩を有することで、互いに固定接続されるとともに前記出力フランジ35における出力軸受36をしっかりと挟むようになり、追加部品で軸受を軸方向に固定する必要がなく、部品点数が低減し、関節モジュールの重量と体積及びコストの低下を図っている。
【0039】
本発明による軸受の設置の実施例は以下の通りである。
前記出力軸受36に交差ころ軸受が採用され、それにより、関節モジュールの出力軸の軸方向力に対する耐性が向上し、モータリアエンドカバー軸受15,モータフレーム軸受16及び中心軸受38については少なくともいずれか二つを設けるようにし、前記モータアセンブリ1はアウターロータ型永久磁石モータとされており、それにより、関節構造がよりコンパクトになり、モータの製造プロセスが一層簡単になってコストが低下している。
【0040】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の制限となるものではなく、本発明の精神と原則の範囲においてなされたあらゆる変更,等価置換及び改良等は本発明の保護範囲に含まれるはずである。
【符号の説明】
【0041】
1…モータアセンブリ、2…モータエンコーダ、3…減速機アセンブリ、4…モーメント規制アセンブリ、11…モータ固定子・巻線、12…モータ回転子、13…モータフレーム、14…モータリアエンドカバー、15…モータリアエンドカバー軸受、16…モータフレーム軸受、31…太陽歯車、32…遊星歯車、33…リングギア、34…遊星キャリア、35…出力フランジ、36…出力軸受、37…出力軸受エンドカバー、38…中心軸受、39…出力エンコーダ、41…摩擦ディスク、42…摩擦力発生器、43…フロントエンドカバー。