(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】足操作式のスライドラッチ錠
(51)【国際特許分類】
E05C 1/10 20060101AFI20220916BHJP
E05C 1/16 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
E05C1/10
E05C1/16 A
(21)【出願番号】P 2021017402
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520117329
【氏名又は名称】堀部 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100137899
【氏名又は名称】大矢 広文
(72)【発明者】
【氏名】堀部 泰隆
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0042756(KR,A)
【文献】特開2008-280792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0071962(US,A1)
【文献】実開昭63-037777(JP,U)
【文献】実開昭59-000875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00-21/02
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉不能な戸先パネルおよび戸尻パネルと、前記戸先パネルと前記戸尻パネルとの間に配置され、前記戸尻パネルと蝶番或いは回転軸を介して連結される開閉自在なドアパネルと、を備えた開き戸式のドアの、前記ドアパネルの前記戸先パネル側に設置される内締り錠における錠機
構において、前記錠機構の内部に収容される摺動自在のラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルに設置したストライクに前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルの施解錠を行うスライドラッチ錠であって、
前記ラッチには、使用者の片方の足の全部または一部を乗せるのに十分な面積を持った平面、曲面、または、線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面のいずれかに相当する操作面を有する操作体が連結されており、
前記操作体には緩衝材を冠着し、前記操作体は、内締りをする室内側の前記ドアパネルの面上で床面に近い位置に突設され、
前記使用者は、前記操作体の前記操作面に片方の前記足の全部または一部を乗せて鉛直下方に踏力を掛けつつ、前記ラッチと連動する前記操作体を水平方向にスライド操作することにより、前記使用者が手指で錠部分に触れることなく施解錠を可能にすることを特徴とした、足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項2】
前記室内側の前記床面から、前記使用者の片方の前記足の全部または一部が接触する前記操作体の前記操作面までの高さが230ミリメートル以下の範囲であることを特徴とした、請求項1に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項3】
前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに埋設された前記錠機構である錠箱に収容される摺動自在の前記ラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルの側面に穿設されたストライクに前記ドアパネルの側面から前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項4】
前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルの面上に添設された前記錠機構である台座に収容される摺動自在の前記ラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルの面上に添設されたストライクに前記ドアパネルの面上から前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項5】
前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルの面上に水平に添設された前記錠機構である溝レールを備えた台座の前記溝レール上を、全長が縦断面視略C字形の棒状のラッチが自在に摺動し、前記戸先パネルの面上に突設され、前記溝レールの縦断面と略同等な断面を有するストライクに対して前記ラッチがスライドして嵌合することで施錠、或いは前記ストライクから前記ラッチがスライドして抜脱することで解錠、することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項6】
前記スライドラッチ錠の前記操作体に、略垂直壁、滑止突起物、滑止体のうちのいずれか一つ以上の補助部材を備えたことを特徴とした、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項7】
前記スライドラッチ錠の前記操作体を、前記使用者の足先を挿入することが可能な開口した開口部を備えた略円筒形状または多角筒形状の筒状体とし、
前記筒状体の内周が前記使用者の前記足先を乗せるのに十分な面積を持った平面または曲面を有することを特徴とした、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項8】
前記ドアパネルの内締りをする前記室内側の面から突設する前記操作体が、前記錠機構の内部を摺動する前記ラッチに直接連結されず、竿状のロッド或いは屈曲性を有するワイヤーを介して前記ラッチを従動させることで前記ドアパネルを施解錠することを特徴とした、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【請求項9】
前記開き戸式のドアの設置場所が公共トイレであることを特徴とした、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が活動する空間に取り付けられた開き戸式のドアの錠であって、トイレの個室等に設置される内締りのスライドラッチ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのトイレの個室のドアに設置さている錠は、使用者が指先で摘まんで施解錠するものがほとんどである。一方で、近年、防疫に対する人々の意識において細菌やウイルスへの警戒心が驚くほどの高まりを見せており、特に公共の場における設備、用具などにできる限り直接、触れたくないと感じる人の割合が増えている。特にトイレという場所柄、従来からの衛生問題の上に防疫問題も重なり、人々が公共トイレで「自らの手のひらや指先で触れるものを一つでも減らし、事後の手洗いや消毒を徹底しなければならない」と考えることは必然的な流れであり、社会全体もそのような方向へ変化しつつある。
【0003】
このような変化の流れを先取りしたかのように思える発明が特許文献1の発明である。この発明は、トイレットの開き扉に取り付けられたラッチを戸先側の壁に取り付けられて踏み込みペダルで上下動する受座を操作して、積極的に手を使うことなく施解錠を行うトイレット扉用施錠装置を提供するものと解される。内開き式扉と外開き式扉で機構が異なっており、それぞれ自動的に開方向と閉方向の回転力を有する扉と組合せて、断面コ字形のペダルを適時適切に踏み込んでトイレット内側における施解錠を扉にさわることなく実施するものである。また、機構が簡単であり、かつ操作が容易であるとのことである。
【0004】
同様に、トイレのドア部分に触れることなくトイレの使用が簡易に行える装置を提案している発明として特許文献2がある。トイレ内に設けられた非接触センサ、トイレのドアの開閉状態を検出するセンサ、そしてトイレのドアの施解錠やドア自体の開閉を自動で行える駆動手段を適切に制御して、使用者がドア部分と完全に触れることがないようにしたトイレ装置である。また、使用表示ランプ、不測の事態に対応する制御手段やクラッチ機構も備え、安価かつ製作容易なものとのことである。
【0005】
【文献】特許第2893254号公報
【文献】特開2016-89603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されているトイレット扉用施錠装置は、積極的に手を使うことなく踏み込みペダルを操作して施解錠するという素晴らしい装置ではあるが、戸先パネル側のラッチ位置から床面付近にかけて設けられる特殊な受座とペダルの機構は、ある程度の費用や設置の手間暇も必要となり、必ずしも簡単とは言い切れない。また、トイレット扉の開く方向によっては、ペダルの操作が直感的に理解し難く、初めての使用者が戸惑いを覚える可能性も考えられる。
【0007】
また、特許文献2は、トイレのドア部分に触れないようにするためにセンサや駆動装置を多用してドアの開閉から施解錠まで自動化する徹底した考え方の発明であるが、複数の内の少なくとも一つのセンサが故障した場合や使用中に動力源を喪失した場合など非常時の対応が難しいことが想定される。更に、トイレ内という他人の目を気にすることがないプライベート空間において、使用者が自分の意にそぐわない動きをした設備に対して粗野な扱いをする傾向は否めず、結果として駆動装置の故障する頻度が高まることも想定しておく必要がある。
【0008】
一方、前記特許文献1でも同様なことが述べられているが、現代において不衛生であることは、いつ感染症や食中毒などの病気にかかってもおかしくないということを意味し、今や人々が生活する上で最も注意の払われている分野の一つである。中でも手指に付着したウイルスや細菌は、手洗いや消毒が不十分であった場合、口や目を経由して体内に取り込んでしまう危険があると言われている。家庭内のトイレであればこまめな清掃、消毒も行き届くであろうが、不特定多数の人が利用する公共トイレでは必ずしも十分でないことがある。使用者の中には、その様な衛生に関わる不安に苛まれながら使用している人も少なからず存在すると思われる。
【0009】
本発明は、構造や取付け施工が簡単で、特許文献1、特許文献2の洞察を踏まえつつ、前記のような使用者の不安を一つでも取り除くべく、トイレの開き戸式のドアに数多く採用されるスライドラッチ錠について使用者が操作部分(ツマミ等)を手指で触れなくても施解錠が可能な錠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、開閉不能な戸先パネルおよび戸尻パネルと、前記戸先パネルと前記戸尻パネルとの間に配置され、前記戸尻パネルと蝶番或いは回転軸を介して連結される開閉自在なドアパネルと、を備えた開き戸式のドアの、前記ドアパネルの前記戸先パネル側に設置される内締り錠における錠機構において、前記錠機構の内部に収容される摺動自在のラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルに設置したストライクに前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルの施解錠を行うスライドラッチ錠であって、
前記ラッチには、使用者の片方の足の全部または一部を乗せるのに十分な面積を持った平面、曲面、または、線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面のいずれかに相当する操作面を有する操作体が連結されており、前記操作体には緩衝材を冠着し、前記操作体は、内締りをする室内側の前記ドアパネルの面上で床面に近い位置に突設され、
前記使用者は、前記操作体の前記操作面に片方の前記足の全部または一部を乗せて鉛直下方に踏力を掛けつつ、前記ラッチと連動する前記操作体を水平方向にスライド操作することにより、前記使用者が手指で錠部分に触れることなく施解錠を可能にすることを特徴とした、足操作式のスライドラッチ錠である。
【0011】
請求項2の発明は、前記室内側の前記床面から、前記使用者の片方の前記足の全部または一部が接触する前記操作体の前記操作面までの高さが230ミリメートル以下の範囲であることを特徴とした、請求項1に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0012】
請求項3の発明は、前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに埋設された前記錠機構である錠箱に収容される摺動自在の前記ラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルの側面に穿設されたストライクに前記ドアパネルの側面から前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0013】
請求項4の発明は、前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルの面上に添設された前記錠機構である台座に収容される摺動自在の前記ラッチを水平方向にスライド操作し、前記戸先パネルの面上に添設されたストライクに前記ドアパネルの面上から前記ラッチの先端を挿脱することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0014】
請求項5の発明は、前記開き戸式のドアの内締りをする前記室内側の前記ドアパネルに備える前記スライドラッチ錠であって、
内締りをする前記室内側の前記ドアパネルの面上に水平に添設された前記錠機構である溝レールを備えた台座の前記溝レール上を、全長が縦断面視略C字形の棒状のラッチが自在に摺動し、前記戸先パネルの面上に突設され、前記溝レールの縦断面と略同等な断面を有するストライクに対して前記ラッチがスライドして嵌合することで施錠、或いは前記ストライクから前記ラッチがスライドして抜脱することで解錠、することによって前記ドアパネルを施解錠できることを特徴とした、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0015】
請求項6の発明は、前記スライドラッチ錠の前記操作体に、略垂直壁、滑止突起物、滑止体のうちのいずれか一つ以上の補助部材を備えたことを特徴とした、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0016】
請求項7の発明は、前記スライドラッチ錠の前記操作体を、前記使用者の足先を挿入することが可能な開口した開口部を備えた略円筒形状または多角筒形状の筒状体とし、
前記筒状体の内周が前記使用者の前記足先を乗せるのに十分な面積を持った平面または曲面を有することを特徴とした、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0017】
請求項8の発明は、前記ドアパネルの内締りをする前記室内側の面から突設する前記操作体が、前記錠機構の内部を摺動する前記ラッチに直接連結されず、竿状のロッド或いは屈曲性を有するワイヤーを介して前記ラッチを従動させることで前記ドアパネルを施解錠することを特徴とした、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【0018】
請求項9の発明は、前記開き戸式のドアの設置場所が公共トイレであることを特徴とした、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の足操作式のスライドラッチ錠である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、開き戸式のドアの内締りをする室内側に備えられたスライドラッチ錠のラッチに、使用者の片方の足の全部を乗せる、または、片方の足の一部を掛ける(以下、合わせて便宜上「乗せる」とする)のに十分な面積の操作面を持った操作体を連結する。そして、操作体は、使用者が足を使って操作できるようにドアパネルの下方である床面の近くに設置され、従って、使用者は、直接手指で触れずにスライドラッチ錠を施解錠することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、使用者が操作するために乗せる足と操作体とが接触する操作面を床面から上方へ高さが230ミリメートル以下の範囲としており、この範囲は国内の一般的な建築物の階段の一段の高さ基準と同等であるため、使用者は、無理なくスライドラッチ錠の操作体に片方の足を乗せて操作することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、一般的に「彫り込みデッドボルト」と呼ばれる形式の埋設型スライドラッチ錠の基本構造を利用しているため、安価かつ簡単に製作して取付け施工することが可能な、請求項1に記載の足操作式のスライドラッチ錠を実現することができる。また、錠機構の一部がドアパネルに埋設する構成であるため、突設する操作体を確実強固に取り付けることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、一般的に「面付けデッドボルト」と呼ばれる形式の添設型スライドラッチ錠の基本構造を利用しているため、安価かつ簡単に製作して取付け施工することが可能な請求項1に記載の足操作式のスライドラッチ錠を実現することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、一般的に「リムボルト」と呼ばれる形式の添設型スライドラッチ錠の基本構造を利用しているため、安価かつ簡単に製作して取付け施工することが可能な請求項1に記載の足操作式のスライドラッチ錠を実現することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠が備える操作体の操作面に略垂直壁、或いは滑止突起物、或いは滑止体を補助部材として付設することによって使用者が操作体に乗せた足の滑りを防止し、安定的かつ確実にラッチを操作して施解錠することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠が備える操作体が開口した開口部を備えた筒状体であるため、使用者は、筒状体の内周底面に対して鉛直下方に踏力を掛けつつ、筒状体の内周側面が略垂直壁と同等の機能を果たすことから、挿入した足先や足の側面によって安定的かつ確実にラッチを操作して施解錠することができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠の備えるラッチと操作体がロッドやワイヤーを介して分離する構成であるため、設計上の都合等で操作体をドアパネルの下部に残し、スライドラッチ錠のラッチの部分だけをドアパネルの下部以外の位置へ移動させなければならないような場合であっても設計対応することができる。これにより、ドアパネルの下部の操作体を左右(水平方向H)へスライド操作することでドアパネルの下部以外に位置するラッチを摺動し、ドアパネルを施解錠することができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠を備える開き戸式のドアを公共トイレという場所に設置することで公衆衛生上の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】足操作式のスライドラッチ錠を適用したトイレの開き戸式のドアの模式図である。
【
図2】彫り込みデッドボルト形式の足操作式のスライドラッチ錠の一例を図示した斜視図である。
【
図3】足操作式のスライドラッチ錠の操作体の高さについて図示したものである。
【
図4】面付けデッドボルト形式の足操作式のスライドラッチ錠の一例を図示した斜視図である。
【
図5】リムボルト形式の足操作式のスライドラッチ錠の一例を図示した斜視図である。
【
図6】リムボルト形式の足操作式のスライドラッチ錠の断面図である。
【
図7】足操作式のスライドラッチ錠の操作体の操作面に補助部材を設けた状態の斜視図で(a)は2つ略垂直壁、(b)は1つ略垂直壁、(c)は滑止突起物、(d)は滑止体である。
【
図8】足操作式のスライドラッチ錠の操作体の操作面を(A)板状物の端面部を連続して並列したもの、(B)棒状物の尖端部を連続して配列したもの、で構成した一例をそれぞれ図示したものである。
【
図9】足操作式のスライドラッチ錠の操作体を筒状体としたもので、(イ)は略円形断面の筒状体、(ロ)は多角形断面の筒状体である。
【
図10】足操作式のスライドラッチ錠のラッチと操作体が分離されている実施形態の概略を例示したものである。但し、部分的にドアパネル内部を透視した箇所を含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ドアパネル1、戸先パネル2、戸尻パネル3等の各パネルで構成される開き戸式のドアにおいて使用される内締り錠で、より具体的には、使用者7の足8で施解錠を行うことができる足操作式のスライドラッチ錠である。すなわち、本発明は、使用者7が自らの「足8」で操作して施解錠できる構造のスライドラッチ錠であることをその特徴とし、使用者7が手指で錠部分に触れることなく施解錠が可能な効果を奏する。本発明の足操作式のスライドラッチ錠が設けられるドアは、開き戸式のドアであればどのような場所にあってもよく、不特定多数の人が利用する種々の場所が考えられる。例えば、トイレ、オフィス、工場、倉庫、学校、商業施設、医療・福祉施設、公共施設等が考えられる。尚、開き戸式のドアの面の表裏に関しては、内締り錠で施解錠の操作を行う室内側INを裏面1a、2a、その反対側を表面とし、また、ラッチという名称に関しては、錠機構13の締り部位として可動する部分を指すものとする。以下、公共トイレT個室への適用を例に挙げて、本発明の実施形態を説明する。
【0030】
まず、周知のスライドラッチ錠の構造の基本的な構成として、開閉不能な戸先パネル2および戸尻パネル3と、戸先パネル2と戸尻パネル3の間に配置され、戸尻パネル3に蝶番5或いは回転軸(不図示)を介して連結される開閉自在なドアパネル1と、を備えた開き戸式のドアの裏面1a、2a(内締りをする室内側IN)において設けられ、可動する締り部位としてのラッチ9を水平方向Hへスライド操作することによって施解錠するラッチ錠である。また、回転軸としては、例えば、ピボットヒンジ(中心吊型や持出吊型)が挙げられるが、ピボットヒンジ以外の他の形式であってもよい。
【0031】
スライドラッチ錠の主要な構成物として、ドアパネル1に設けられる錠箱10または台座11と、この錠箱10または台座11に収容されるラッチ9と、戸先パネル2に設けられてラッチの先端9aが挿脱するストライク14とを備える。本実施形態では、ラッチ9が収容された錠箱10または台座11を錠機構13と呼称する。
【0032】
図2、
図4等で図示する「デッドボルト式」の場合の錠機構13としては、錠箱10または台座11の内部には、水平に凹部または凸部が形成され、その凹部の内側または凸部の外側の空間にラッチ9が収容嵌合され、そして、その凹部または凸部に沿ってラッチ9が左右(水平方向H)に摺動する。また、戸先パネル2に設けられるストライク14には、ラッチの先端9aが挿脱する穴14aが形成されており、この穴14aにラッチの先端9aが挿脱する。このストライクの穴14aにラッチの先端9aが挿脱する必要があるため、ストライク14は、ラッチの先端9aの突出範囲内に配置する。
図5、
図6で図示する「リムボルト式」の場合の錠機構13としては、溝レール12を備えた台座11と、溝レール12に摺動自在に嵌合する全長が縦断面視略C字形の棒状のラッチ9とを備えている。そして、戸先パネル2の裏面2a上に、凸錠(例えば、頭部が膨出した円柱状)のストライク14が突設されており、台座11がドアパネル1の裏面1a上に水平に添設されることによりラッチの先端9aがドアパネル1の裏面1a上から出没可能とし、ストライク14にラッチの先端9aが嵌合、抜脱する。
【0033】
本発明の足操作式のスライドラッチ錠は、周知のスライドラッチ錠の構造を利用している。したがって、錠機構13がラッチ9のスライドによって施解錠できるものと同様の効果を奏する物であればどのような構造であってもよい。以下にその構造の例を示す。
【0034】
スライドラッチ錠には、主に埋設型と添設型とに分けられる。埋設型のデッドボルト式は、ドアパネル1の室内側INの面から戸先パネル2側の側面1bにかけてドアパネル1の内部にスペースを確保し、このスペースにラッチ9およびラッチ9を収納する錠箱10を埋設するようにネジ等でドアパネル1に固定する。そして、戸先パネル2の側面2bには、戸先パネルの側面2bに垂直な穴14bが穿設されたストライク14が添着され、ラッチの先端9aをストライクの穴14aに挿脱自在とすることによって施解錠を可能とするものである。このように、ラッチの先端9aがドアパネルの側面1bから出没可能、且つ戸先パネルの側面2bのストライク14に挿脱自在とすることを特徴としている。
【0035】
一方、添設型のデッドボルト式またはリムボルト式は、ドアパネル1および戸先パネル2の内部に空間および穴を設ける必要のない構成であり、ドアパネル1の裏面1aの上にラッチ9およびラッチ9を収納する台座11を、戸先パネル2の裏面2aの上には突出したストライク14をネジ等で固定する。添設型では、ラッチ9が台座11の凸部内を摺動することができ、ストライク14に形成された穴14aにラッチの先端9aを挿脱自在とすることによって施解錠を可能とするものである。尚、ストライク14は、後述するようなL字状、凸状の他、円柱状等、どの様な形状であってもよい。
【0036】
本発明の足操作式のスライドラッチ錠の構成物品としては、既述したように、戸先パネル2に設けるストライク14、ドアパネル1に設ける錠箱10または台座11、錠箱10または台座11に内在するラッチ9、更にこのラッチ9を足8で操作する操作体16がある。この操作体16は、一般的な手で操作するスライドラッチ錠のツマミに相当する部分であり、使用者7の片方の足8の全部または一部を乗せるのに十分な面積を持つ操作面17を有する。使用者7は、使用者7の片方の足8と接触する操作体16の操作面17に使用者7の片方の足8の全部または一部を乗せて鉛直下方Vに踏力を掛けつつ、操作体16および操作体16に連動するラッチ9を左右(水平方向H)へスライド操作することにより、ドアパネル1の施解錠をすることができる。
【0037】
一般的なスライドラッチ錠であれば、使用者7の手元近くに位置するツマミを指先で摘まんで動かすことで施解錠するが、ドアを施解錠するこのツマミは不特定多数の人が触れるだけに、必ずしも衛生的であるとは言えない。特に公共トイレTや医療・福祉施設等のドアの施解錠であれば尚更である。本発明の足操作式のスライドラッチ錠であれば使用者7は、直接、手で錠のツマミに触れることなくドアパネル1を施解錠できる。尚、足操作する操作体16の材質に関しては特に限定されないが、足8で操作するものであるため、十分な強度を有する材質であることが望ましい。
【0038】
また、本発明の操作体16は、使用者7と足操作式のスライドラッチ錠が接触する部分であり、使用者7が片方の足8の全部または一部を乗せるのに十分な面積を有する。使用者の片方の足8(操作側となる片足)を操作体16に乗せ、もう一方の足8(軸側となる片足)を軸足として床面15に着けて、片方の足8(操作側となる片足)で鉛直下方Vに踏力を掛けながら水平方向Hに操作体16を操作して施錠するので使用者7は、体勢を維持し易いという利点がある。また、解錠する場合も同様に使用者7は、両方の足8がそれぞれ支えられているので、安定した姿勢で水平方向Hに操作体16を操作することができる。尚、
図1では、使用者7の左足を操作側の足8とし、右足を軸側の足8として表現しているが、反対に、使用者7の右足を操作側の足8とし、左足を軸側の足8としてもよいことは勿論である。
【0039】
一方、外出先等でプライベートな空間を確保する状況において、全てを自動装置に頼るのも時代の潮流かも知れないが、やはり自分で確実に対象物を操作する方がより安心感を得られるのではなかろうか。しかし、公共トイレTの設備になるべく手指で触りたくないと願っても通常、トイレ個室のドアノブや錠のツマミに触れざるを得ない。これに対して、例えば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠の付いた開き勝手のドアであれば、手の甲や肘、持っていればカバン等で押してドアを閉めることができ、施解錠に至っては片方の足8で事足りる。これにより使用者7が抱く不安を一部でも取り除くことができれば、本発明の足操作式のスライドラッチ錠は、その役割を十分に果たしていると考えられる。
【0040】
図1は、埋設型である足操作式のスライドラッチ錠の錠機構13をドアパネル1の裏面1aの下方に設け、戸先パネル2と戸尻パネル3との間に、蝶番5を介して戸尻パネル3と連結された開き勝手の内開きドアパネル1から使用者7がトイレ個室に入り、手の甲側でドアパネル1に装着された抗菌パネル6を押して閉めようとしている様子を示している。使用者7は、ドアを閉め切った後、片方の足8の足先8aを操作体16に乗せ、ドアパネル1側から戸先パネル2側へ操作体16をスライドさせることで施錠を行う。
図2は、
図1の中の埋設型の足操作式のスライドラッチ錠と同じであり、
図2で図示した錠機構13は、一般的に「彫り込みデッドボルト」と呼ばれる。
【0041】
操作体16は、内締りをする室内側INのドアパネル1の面(裏面1a)上で床面15に近い位置に突設されているが、更に、
図3に示す通り、床面15から使用者7の足8が操作体16と接触する面までの距離、すなわち、床面15から操作体16の操作面17までの高さhを230ミリメートル以下の範囲としてもよく、この高さに関しては、国内の一般的な建築物の階段の一段の高さ基準と同等としている。これにより使用者7は、無理なく本発明のスライドラッチ錠に足8を掛けることができる。階段の踏面から次の踏面までの高さが「蹴上げ」であるが、建築基準法施行令第23条では、住宅の階段(共同住宅の共用階段を除く。)の蹴上げは二十三センチメートル以下と規定されている。本発明においても床面15から操作体16の操作面17までの高さhを230ミリメートル以下の範囲とし、この床面15から操作体16の操作面17までの高さhを建築基準法施行令第23条で定める蹴上げの高さ規定に適合するものであることを特徴の一つとしている。
【0042】
図4は、本発明におけるスライドラッチ錠を一般的に「面付けデッドボルト」と呼ばれる添設型のスライドラッチ錠に置き換えた一例であり、ラッチ9が収容される凹部を備えた台座11がドアパネル1の裏面1aの上に水平に添設し、ストライクの穴14aが穿設された略L字形のストライク14は、戸先パネル2の裏面2aの上に添設した状態となっている。ラッチ9は台座11に係合し、この台座11に対して水平方向Hに摺動する。そして、このラッチ9には、スライドラッチ錠を足8で操作する操作体16が連結して、または一体化して備わる。
【0043】
図5は、本発明におけるスライドラッチ錠を一般的に「リムボルト」と呼ばれる添設型のスライドラッチ錠に置き換えた一例であり、ドアパネル1の裏面1aの上に添設した台座11には長手方向に溝レール12を備えており、同様に戸先パネル2の裏面2aには突設した凸形状のストライク14がある。ラッチ9は、台座11の溝レール12およびストライク14に嵌合するように縦断面視略C字形状とし、台座11の溝レール12に沿って摺動自在とすると共にラッチの先端9aがストライクの穴14aに嵌合、抜脱自在とする。そして、このラッチ9には、スライドラッチ錠を足8で操作する操作体16が連結して、または一体化して備わる。
図6は、上記のリムボルト形式の足操作式のスライドラッチ錠の断面図であり、摺動するラッチ9(リムボルト)の外殻に操作体16が固設される状態を現している。
【0044】
図7は、埋設型の足操作式のスライドラッチ錠において、使用者7がスライドラッチ錠の操作体16を円滑に操作できるように使用者7の足8と接触する操作面17に付設する補助部材のいくつかの例を図示している。(a)は、二つの略垂直壁18であり、その間の操作体16に足8を乗せて左右いずれかの略垂直壁18に力を加えることで使用者7の動かしたい方向へ操作体16を操作することができる。(b)は、一つの略垂直壁18であり、操作しようとする方向と反対側の操作体16に足8を乗せて操作体16の長手方向略中央から立ち上がる略垂直壁18に力を加えることで使用者7の動かしたい方向へ操作体16を足操作することができる。(c)は、滑止突起物19であり、操作体16の操作面17に略均一に配置したものである。使用者7の足裏と操作体16との間の滑りを防止して、使用者7の動かしたい方向へ力を加えることで操作体16を足操作することができる。(d)は、滑止体20であり、操作体16の操作面17に貼付したものである。代表的なものとして滑止体20の表面に凹凸を付けたゴム、弾性樹脂などがある。(c)と同様に使用者7の足裏と操作体16との間の滑りを防止して、使用者7の動かしたい方向へ力を加えることで操作体16を足操作することができる。
【0045】
また、上記の補助部材に関して、
図7の略垂直壁18、滑止突起物19、滑止体20は、操作体16と一体成型でも操作体16と別の部材であってもよい。
図7の(a)、(b)で図示した略垂直壁は、操作体16と使用者7の足8が接触する操作面17に対して垂直であっても、傾斜していてもよい。
図7の(d)で図示した操作体16と使用者7の足8が接触する操作面17に貼付する滑止体20は、表面に凹凸のある平板状の部材であっても、可撓性のあるシート状の部材であってもよい。或いは、操作体16の操作面17に使用者7の足8が滑り難くなるような波状等の模様を刻設してもよい。
【0046】
図8は、本発明の足操作式のスライドラッチ錠の操作体16が連続して拡がりを持つ面(平面、曲面)ではなく、線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面として構成される場合を示している。
図8(A)は、板状物21を略鉛直に立てて連続的に間隔を空けて配列し、個々の板状物21の頂上となる端面部21aを仮想的に結んでできる面を操作面17として使用するものであり、同様に、
図8(B)は、棒状物22を略鉛直に立てて連続的に間隔を空けて配列し、個々の棒状物22の頂点となる尖端部22aを仮想的に結んでできる面を操作面17として使用するものである。使用者7は、これらの線状若しくは点状の連続を以て為すところの面を有する操作体16の操作面17に片方の足8を乗せて操作体16をスライド操作して施解錠を行う。
【0047】
図9は、使用者7が本発明のスライドラッチ錠を足操作するための操作体16であって、開口部25から使用者7の足先8aを挿入することができる筒状体としている。
図9(イ)は、略円形の断面をした筒状体の一例で、略円筒形体をした操作体16である。使用者7の足先8aを
図9(イ)の様に開口した筒状体へ挿入し、操作面17となる下部の内周底面に踏力を掛けつつ、略垂直壁18と同じ役割をする左右いずれかの内周側面にも力を加えることで使用者7の動かしたい方向へ操作体16を操作することができる。すなわち、室内側INに開口する開口部25を有する円筒状の操作体16の内周側面に使用者7の足8の側面を当接することにより、容易にラッチ9を左右(水平方向H)へ操作することができる。
図9(ロ)は、多角筒形状の筒状体の一例で、矩形の筒状体をした操作体16であるが、他に三角形、台形、六角形、八角形等であってもよい。
図9(イ)と同様に、操作面17となる筒状体の内周底面に踏力を掛けつつ、略垂直壁18と同じ役割をする左右いずれかの内周側面にも力を加えることで使用者7の動かしたい方向へ操作体16を操作することができる。すなわち、室内側INに開口する開口部25を有する筒状の操作体16の内周側面に使用者7の足8の側面を当接することにより、容易にラッチ9を左右(水平方向H)へ操作することができる。
【0048】
これまで本発明の足操作式のスライドラッチ錠を図示する上で、例えば、ドアパネル1への設置に関して埋設型のスライドラッチ錠で描写したものであっても添設型のそれへ交換できることは勿論である。また、本発明におけるスライドラッチ錠が埋設型であろうが添設型であろうが、
図1~
図8等で図示した面状或いは
図9で図示した筒状のいずれの操作体16であっても連結することが可能である。更に、面状の操作体16に付設する補助部材(略垂直壁18、滑止突起物19、滑止体20)の選択は、本発明のスライドラッチ錠が埋設型或いは添設型のいずれであっても影響を受けないことは言うまでもない。
【0049】
ところで、本発明の足操作式のスライドラッチ錠は、ドアパネル1の所定の下部にあって、錠機構13のラッチ9と操作体16とが直結した形式のものであったが、これらは必ずしも直結している必要はない。設計上の都合等で操作体16をドアパネル1の下部に残し、スライドラッチ錠の部分だけをドアパネル1の下部以外の位置へ移動させなければならない場合が考えられる。その方法として竿状のロッド30や屈曲性を有するワイヤー(不図示)などを利用した機構が考えられる。その方法の一例を以下、
図10を使って説明する。
【0050】
図10は、連結した2本の竿状のロッド30を用いてスライドラッチ錠の錠機構13のラッチ9だけをドアパネル1の略中央の高さまで移設した例である。具体的な構成について説明する。竿状のロッド30は、ジョイント軸35を介してジョイント連結された上下2本のロッド30である上ロッド31および下ロッド32で構成されている。これらの上ロッド31および下ロッド32には長手方向の略中央に回動するための支点穴31a、32aがそれぞれ設けられている。また、上ロッド31の上方には長穴状の可動穴31bを備え、上ロッド31の下方には、下ロッド32とジョイント軸35で連結する軸穴31cを備えている。下ロッド32の上方には長穴状の上可動穴32bを、下方には長穴状の下可動穴32cを備えている。ドアパネル1の内部には上固定軸36および下固定軸37が固設されている。ラッチ9および操作体16にはドアパネル1の内部に向かって軸9b、16bがそれぞれ突設されている。
【0051】
ドアパネル1の内部には、竿状のロッド30である連結された上ロッド31および下ロッド32が埋設されているが、その際の配置構成について説明する。ラッチの軸9bに上ロッド31の上方の可動穴31bを嵌合し、操作体の軸16bに下ロッドの下可動穴32cを嵌合する。上ロッドの可動穴31bは、ラッチ9に力を加える軸9bを抱えながら、回動時に上固定軸36との距離を調整する。また、下ロッドの上可動穴32bは、下部の操作体16に力を加える軸16bを抱える。そして、ドアパネル1の内部に固設した上固定軸36に上ロッドの支点穴31aを嵌合し、下固定軸37に下ロッドの支点穴32aを嵌合し、上固定軸36を支点として上ロッド31が回動自在となり、下固定軸37を支点として下ロッド32が回動自在とする。したがって、この操作体16を左右(水平方向H)へスライド操作することでドアパネル1の内部の上下2本の竿状のロッド30を介して操作体16から分離されたラッチ9を従動することができる。
【0052】
本発明は、室内を使用していない場合にドアパネル1が施錠されず常時、開いている常開ドア、或いは室内を使用している場合にドアパネル1が施錠されずに常時、閉じられている常閉ドアのいずれのタイプのドアにも使用することができる。常開ドアの利用方法としては、ドアパネル1が開いている室内に入った後、使用者7は手の甲や肘等でドアパネル1を閉め、操作体16を片方の足8で操作して施錠する。逆に、反対方向へ操作体16を操作して解錠すれば開き勝手のドアパネル1が自動で開状態になるので、それから室外へ出ることができる。一方、常閉ドアの利用方法としては、使用者7は閉まっているドアパネル1を手の甲や肘等で押し開けて室内に入り、閉まり勝手のドアパネル1が自動で閉状態になるのを待って片方の足8で操作体16を操作して施錠する。逆に、反対方向に操作体16を操作すれば解錠することはできるが、そのままではドアパネル1が動かない。したがって、手の甲や肘等でも引く動作ができる大き目の特殊な取手が必要になるかも知れない。但し、上記の常開ドアまたは常閉ドアでは、使用者7が足8を使ってドアパネル1や操作体16を動かせば、途中の施解錠を含め入室から退出までドアに関して一度も手指を使うこと無く出入りすることも不可能ではない。
【0053】
また、図示しないが、本発明の操作体16にゴム等の緩衝材を冠着してドアストッパーとしての機能を兼ね備える構成も考えられる。具体的には、ドアパネル1が室内側INに開く場合、ドアを全開にするとドアパネル1の室内側INの戸先側の角が室内を仕切る仕切りパネル4に当たって傷付くことがあるが、ドアパネル1の裏面1aに突設した操作体16の突端に緩衝材を冠着して防止することができる。このような構成にすれば、いずれかのパネルや床に別途にドアストッパーを取り付け施工する必要がなく、設置コストを下げることができる。
【0054】
施錠の必要性を伴う公共トイレTの個室においては、不特定多数の使用者7が施解錠の操作を行い、一般的には錠のツマミに手指で触れて操作する。不特定多数の人が触れる物にはできれば手指で直接触りたくないと思うことは無理からぬことであるが、インフルエンザ等のウイルス性感染症が流行する季節ではより一層警戒心が高まる。周知のとおり、ウイルス性の感染症は瞬く間に感染が拡大する恐れがあるため、感染の拡大を予防することは社会的な責務であり、一人ひとりが予防対策を心掛けることが基本である。手洗いの徹底は言うまでもないが、不特定多数の人が触る物にできるだけ手指で直接触れないようにして感染リスクを下げることが重要であり、そのための設備的な対応も望まれるところである。本発明は、構造に関しては、従来からのスライドラッチ錠のツマミを操作体16に置き換えただけのものであり、取付けに関しては、現に設置している錠を取り外す等をして代りにドアパネル1の下方に添設するだけで足り、既存の開き戸式のドアに簡単に取り付けることができる。すなわち、構造が簡単で電源手配も不要で部品点数も少ないため、安価且つ簡単に施工を行うことができ、早期に導入することが可能である。
【0055】
尚、各図において各実施例を示したが、図を分かり易くする等のために、一部構成を省略、簡略化、透視化した部分を含むため、本発明は図示した実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施例に記載の技術、または、その他の公知や周知の技術を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:ドアパネル
1a:裏面
1b:側面
2:戸先パネル
2a:裏面
2b:側面
3:戸尻パネル
4:仕切りパネル
5:蝶番
6:抗菌パネル
7:使用者
8:足
8a:足先
9:ラッチ
9a:先端
9b:軸
10:錠箱
11:台座
12:溝レール
13:錠機構
14:ストライク
14a:穴
15:床面
16:操作体
16b:軸
17:操作面
18:略垂直壁
19:滑止突起物
20:滑止体
21:板状物
21a:端面部
22:棒状物
22a:尖端部
25:開口部
30:ロッド
31:上ロッド
31a:支点穴
31b:可動穴
31c:軸穴
32:下ロッド
32a:支点穴
32b:上可動穴
32c:下可動穴
35:ジョイント軸
36:上固定軸
37:下固定軸
h:床面から操作体の操作面までの高さ
T:公共トイレ
IN:室内側
V:鉛直下方
H:水平方向