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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20220916BHJP
   G01B 7/00 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
F15B15/28 J
F15B15/28 L
G01B7/00 101E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017248623
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019113150
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】五反田 遼祐
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150971(JP,A)
【文献】特表2015-511359(JP,A)
【文献】特開2013-072653(JP,A)
【文献】特開2012-073135(JP,A)
【文献】特開2004-085578(JP,A)
【文献】特開平10-110710(JP,A)
【文献】実開平07-038706(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/28
B64C 13/40,
G01B 7/00,
G01D 5/00- 5/62,
G08B 13/12,13/22-13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダに摺動可能に設けられたピストンユニットと、
前記ピストンユニットに取り付けられたプローブを有しており、前記シリンダに対する前記ピストンユニットの位置を検出する差動変圧器と、
少なくとも一部が前記プローブ内に設けられた閉ループ構造体と、
前記閉ループ構造体における物理的な変化を検出するセンサユニットと、
を備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記センサユニットは、前記閉ループ構造体を流れる電流または磁束に関する物理量を検出するように構成されている、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記センサユニットは、前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている、請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記センサユニットは、前記閉ループ構造体を流れる電流の電流値に基づいて前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記閉ループ構造体は、磁性材料からなり、
前記センサユニットは、前記閉ループ構造体からの漏れ磁束を検知することにより前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている、
請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記閉ループ構造体は、前記プローブよりも靱性が高い材料からなる、請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記差動変圧器は、前記プローブに設けられたコアを有し、
前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブ及び前記コアに形成されている、
請求項5または請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記閉ループ構造体は、前記コアよりも靱性が高い材料からなる、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブに形成された貫通孔内に設けられている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。本開示は、より具体的には、差動変圧器を備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の輸送機器及び各種産業機械では、可動部材を駆動するためにアクチュエータが用いられている。アクチュエータの一種として流体圧式アクチュエータがある。流体圧式アクチュエータは、一般に、シリンダと、当該シリンダの内部空間を2つの圧力室に区画するピストンを有するピストンユニットと、シリンダに対するピストンユニットの位置を検出する位置検出器と、を有している。ピストンユニットには、シリンダの外部へ突出するピストンロッドが設けられており、このピストンロッドが駆動対象の可動部材と連結される。
【0003】
流体圧式アクチュエータでは、サーボ機構によりピストンユニットの位置が制御される。サーボ機構は、位置検出器により検出されたピストンユニットの位置に基づいて2つの圧力室に供給される作動流体の圧力を調整することで、ピストンユニットのシリンダ内での位置を制御する。
【0004】
流体圧式アクチュエータに適用可能な位置検出器として、差動変圧器が知られている。特開2011-127674号公報(特許文献1)には、航空機の舵面を駆動するための流体圧式アクチュエータが開示されており、当該アクチュエータにおけるピストンの位置は、差動変圧器の一種である線形可変差動変圧器(LVDT)により検出されている。
【0005】
LVDTは、一般に、ピストン又はピストンロッドに固定された棒状のプローブと、当該プローブの先端に設けられたコアと、シリンダに固定されたコイルアッセンブリと、を備える。コイルアッセンブリは、交流の入力電圧によって励磁される一次コイルと、当該一次コイルの軸方向両側に設けられた一組の二次コイルと、を有している。LVDTは、ピストンユニットの変位に応じて、コイルアッセンブリに対するコアの位置が変化するように構成される。このコイルアッセンブリに対するコアの位置の変化により、各二次コイルに生じる誘導電圧の差である差動電圧が変化するため、この差動電圧に基づいてコアの基準位置に対する位置が検出される。コアの基準位置は、差動電圧がゼロとなるヌル点におけるコアの位置である。コアはピストンユニットと一体に移動するため、差動電圧に基づいてピストンユニットの位置を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-127674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクチュエータが正常に作動するためには、LVDT等の差動変圧器によりピストンユニットの位置を正しく検出することが必要である。
【0008】
本開示の目的の一つは、差動変圧器のヘルスモニタリングを行うことが可能なアクチュエータを提供することである。本開示のこれ以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるアクチュエータは、シリンダと、前記シリンダに摺動可能に設けられたピストンユニットと、前記シリンダに対する前記ピストンユニットの位置を検出する差動変圧器と、少なくとも一部が前記差動変圧器内に設けられた閉ループ構造体と、前記閉ループ構造体における物理的な変化を検出するセンサユニットと、を備える。
【0010】
上記のアクチュエータによれば、センサユニットによって閉ループ構造体における物理的な変化が検出されるので、この検出結果に基づいて差動変圧器の健全性を判断することができる。また、閉ループ構造体により、差動変圧器に対して構造的な冗長性を付与することができる。これにより、差動変圧器に破断が起こりにくくすることができる。
【0011】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体を流れる電流または磁束に関する物理量を検出するように構成されている。
【0012】
上記のアクチュエータによれば、センサユニットによって閉ループ構造体を流れる電流又は磁束を検出することにより、差動変圧器の健全性を判断することができる。例えば、差動変圧器が破断または劣化すると閉ループ構造体の電気抵抗や磁気抵抗が変化するので、差動変圧器内に形成された閉ループ構造体を流れる電流または磁束の変化を検知することにより、差動変圧器の健全性をモニタリングすることができる。
【0013】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている。
【0014】
上記のアクチュエータによれば、センサユニットによって差動変圧器内に形成された閉ループ構造体が開放されたことを検知することにより、差動変圧器の破断または劣化を検知することができる。
【0015】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体を流れる電流の電流値に基づいて前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている。
【0016】
上記のアクチュエータによれば、閉ループ構造体を流れる電流の電流値によって当該閉ループ構造体が開放されたことを検知することにより、差動変圧器の破断または劣化を検知することができる。
【0017】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体は、磁性材料からなり、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体からの漏れ磁束を検知することにより前記閉ループ構造体が開放されたことを検知するように構成されている。
【0018】
上記のアクチュエータによれば、閉ループ構造体からの漏れ磁束によって当該閉ループ構造体が開放されたことを検知することにより、差動変圧器の破断または劣化を検知することができる。
【0019】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記差動変圧器は、前記ピストンユニットに取り付けられたプローブを有し、前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブに形成されている。
【0020】
上記のアクチュエータによれば、プローブの破断または劣化を検知することができる。
【0021】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体は、前記プローブよりも靱性が高い材料からなる。
【0022】
上記のアクチュエータによれば、高靱性の閉ループ構造体により、プローブに対して構造的強度を付与することができる。これにより、プローブが破断されにくくなる。
【0023】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記差動変圧器は、前記プローブに設けられたコアを有し、前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブ及び前記コアに形成されている。
【0024】
上記のアクチュエータによれば、コアの破断または劣化も検知することができる。
【0025】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体は、前記コアよりも靱性が高い材料からなる。
【0026】
上記のアクチュエータによれば、高靱性の閉ループ構造体により、コアに対して構造的強度を付与することができる。これにより、コアが破断されにくくなる。
【0027】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブ及び前記コアの少なくとも一方に形成された貫通孔内に設けられている。
【0028】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器の動作の障害とならないように閉ループ構造体を形成できる。
【0029】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記貫通孔は、第1内径を有する第1孔部分と、前記第1内径よりも小さな第2内径を有する第2孔部分と、を有するように形成され、前記第2孔部分は、前記第1孔部分よりも、前記プローブが前記ピストンユニットに取り付けられる取付位置から遠位に配されている。
【0030】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器に溜まった水を貫通孔経由で掻き出すことができる。
【0031】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体の少なくとも一部は、前記プローブ及び前記コアの少なくとも一方に形成された溝の内部に設けられている。
【0032】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器の動作の障害とならないように閉ループ構造体を形成できる。
【0033】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記溝は、第1外径を有する第1溝部分と、前記第1外径よりも大きな第2外径を有する第2溝部分と、を有するように形成され、前記第2溝部分は、前記第1溝部分よりも、前記プローブが前記ピストンユニットに取り付けられる取付位置から遠位に配されている
【0034】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器に溜まった水を溝経由で掻き出すことができる。
【0035】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記閉ループ構造体は、前記プローブ及び前記コアの少なくとも一方に螺旋形状に形成されている。
【0036】
上記のアクチュエータによれば、螺旋形状の閉ループ構造体により、プローブ及びコアの少なくとも一方を補強することができる。
【0037】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体における物理的な変化に応じて、点灯、点滅、又は消灯するランプをさらに備える。
【0038】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器の破断または劣化をランプで伝達することができる。
【0039】
本発明の一態様によるアクチュエータにおいて、前記センサユニットは、前記閉ループ構造体における物理的な変化に応じて生成した信号を外部装置に送信するように構成される。
【0040】
上記のアクチュエータによれば、差動変圧器の破断または劣化を外部装置でモニタリングできる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の実施形態によって、差動変圧器のヘルスモニタリングを行うことが可能なアクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態によるアクチュエータが用いられるシステムを模式的に示す図である。
図2図1のアクチュエータの断面図である。
図3図1のアクチュエータが備える差動変圧器を模式的に示す図である。
図4a図3の差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図である。
図4b図4aのI-I線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図5a】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図である。
図5b図5aのII-II線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図6a】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図である。
図6b図6aのIII-III線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図7a】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図である。
図7b図7aのIV-IV線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるコアの模式的な断面図である。
図9】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるコアの模式的な断面図である。
図10】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの断面を模式的に示す図である。
図11】本発明の別の実施形態におけるセンサユニットを説明するブロック図である。
図12a】本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図である。
図12b図12aのV-V線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0043】
以下、添付の図面を適宜参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。各図面において共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0044】
本発明は、シリンダと、当該シリンダに摺動可能に設けられたピストンユニットと、当該ピストンユニットの位置を検出する差動変圧器と、を備えるアクチュエータに適用され得る。図1及び図2を参照して、本発明の一態様によるアクチュエータ及び当該アクチュエータが用いられるシステムについて説明する。
【0045】
図1は、本発明の一態様によるアクチュエータ10を作動させることにより航空機の動翼1Aを駆動する動翼駆動システム1を模式的に示す図であり、図2は、アクチュエータ10の断面を模式的に示す図である。動翼1Aは、例えば、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、及び昇降舵(エレベータ)などの主操縦翼面、または、フラップ及びスポイラーなどの二次操縦翼面である。動翼駆動システム1は、本発明によるアクチュエータが用いられるシステムの一例である。本発明によるアクチュエータは、動翼駆動システム以外にも様々なシステムにおいて用いられ得る。
【0046】
動翼駆動システム1は、動翼1Aを駆動させるためのアクチュエータ10と、アクチュエータ10に圧油を供給する油圧源2と、アクチュエータ10から排出された油を貯留するリザーバ3とを備えている。図示の実施形態において、アクチュエータ10は、油圧式アクチュエータである。本発明を適用可能なアクチュエータは油圧式アクチュエータには限られないことに留意されたい。例えば、本発明は、圧油以外の作動液体により作動される液体圧式アクチュエータや、圧縮空気により作動される空気圧式アクチュエータにも適用され得る。
【0047】
アクチュエータ10は、中空のシリンダ11と、シリンダ11内に設けられたピストンユニット12と、を有する。シリンダ11は、その長手方向(軸線Aに沿う方向)の一方が開口し、他方が閉塞されている。シリンダ11は、第1シリンダ部材11aと、第2シリンダ部材11bと、第3シリンダ部材11cと、を有する。第1シリンダ部材11a、第2シリンダ部材11b、及び第3シリンダ部材11cは、互いに固定されている。
【0048】
第1シリンダ部材11aは、長手方向の一方が開口し他方が閉塞された有底の筒状に形成されている。第3シリンダ部材11cは、長手方向の両端が開口した筒状に形成されており、第1シリンダ部材11aの内側に螺合されている。第2シリンダ部材11bは、長手方向の両端が開口した筒状に形成されており、第1シリンダ部材11a及び第3シリンダ部材11cの内側に嵌め合わされている。図示の実施形態では、本明細書で説明されている第1シリンダ部材11a、第2シリンダ部材11b、及び第3シリンダ部材11cは例示であり、第1シリンダ部材11a、第2シリンダ部材11b、及び第3シリンダ部材11cの形状、配置、及び接合態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。シリンダ11は、第1シリンダ部材11a、第2シリンダ部材11b、及び第3シリンダ部材11c以外の部材を含んでもよい。
【0049】
ピストンユニット12は、ピストン13と、ピストン13に接続されたピストンロッド14と、ピストンロッド14に取り付けられたクレビス15と、を有する。ピストン13及びピストンロッド14は、シリンダ11の内部に配置されている。ピストンロッド14は、その一部がシリンダ11の開口を介してシリンダ11の外部に突出している。
【0050】
ピストン13は、円筒形状に形成されている。ピストン13は、その外周面が第1シリンダ部材11aの内周面と当接するように、第1シリンダ部材11aの内側に配置されている。これにより、ピストン13は、シリンダ11を第1油圧室19aおよび第2油圧室19bに区画する。
【0051】
ピストンロッド14は、中空の筒状に形成された第1筒状部材14aと、第1筒状部材14aの一方の端部を閉塞する中実部14bと、中実部14bから第1筒状部材14とは反対側に延びる円筒形状の第2筒状部材14cと、を有する。ピストンロッド14は、その外周面が第2シリンダ部材11bの内周面と当接するように設けられている。ピストンロッド14の外周面と第2シリンダ部材11bの内周面との間は、Oリング等のシール部材が配されている。このシール部材により、圧油が第1油圧室19a内に封止される。
【0052】
クレビス15は、動翼1Aに回動可能に取り付けられる取付部15aと、この取付部15aから突出する軸部15bとを有する。軸部15bの外表面には雄ねじが形成されており、第2筒状部材14cの内周面には雌ねじが形成されている。軸部15bは、第2筒状部材14cに螺合されている。軸部15bには、キー部材16を介して固定リング17が螺合されている。軸部15bは、固定リング17により、第2筒状部材14cに締め付けられる。
【0053】
ピストンユニット12は、シリンダ11に対してその中心軸Aに沿って移動可能に設けられている。ピストンユニット12が中心軸Aに沿った第1移動方向W1に移動するとアクチュエータ10は伸長し、ピストンユニット12が中心軸A沿った第2移動方向W2に移動するとアクチュエータ10は収縮する。図2には、収縮したアクチュエータ10が示されている。アクチュエータ10は、第1油圧室19a及び第2油圧室19bに対して圧油が給排されることで作動する。アクチュエータ10が作動されるとピストン13がシリンダ11内で変位することにより、ピストンロッド14及びクレビス15を介して動翼1Aが駆動される。
【0054】
図示され本明細書で説明されているピストンユニット12は例示であり、ピストンユニット12の構成部材の形状、配置、及び接合態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。例えば、ピストンユニット12において、ピストンロッド14とクレビス15とは一部材として形成されてもよい。
【0055】
ピストンロッド14の第1筒状部材14aの内部には、ピストンユニット12の位置を検出する差動変圧器20が設けられている。差動変圧器20は、円筒形状のハウジング20aを備えており、このハウジング20a内に後述する様々な構成部材を収容している。ハウジング20aは、その一方の端部において、第1シリンダ部材11aに固定されている。差動変圧器20からは、電力ケーブル28がハウジング20aの外部に引き出されている。差動変圧器20の詳細については後述する。
【0056】
図1に示されているように、アクチュエータ10と油圧源2およびリザーバ3との間には、制御弁4が設けられている。制御弁4は、油圧源2と油路7aにより接続されており、リザーバ3とは油路7bにより接続されている。また、制御弁4は、油圧アクチュエータ11の第1油圧室19aと油路8aにより接続されており、油圧アクチュエータ11の第2油圧室19bと油路8bにより接続されている。シリンダ11は、第1ポート18a及び第2ポート18bを有する。油路8aは、第1ポート18aを介して第1油圧室19aと連通し、油路8bは、第2ポート18bを介して第2油圧室19bと連通している。
【0057】
制御弁4は、例えばソレノイドバルブであり、フライトコントローラ5の指令に基づいてアクチュエータコントローラ6から入力される制御信号に基づいて、各油圧室19a,19bへ連通する圧油の経路を切り替え可能に構成される。制御弁4は、例えば、第1油圧室19aに油を供給し第2油圧室19bから油を排出する第1連通位置、第1油圧室19aから油を排出し第2油圧室19bに油を供給する第2連通位置、および、各油圧室19a,19bへの油の供給および各油圧室19a,19bからの油の排出を遮断する遮断位置に切り替え可能に構成される。
【0058】
フライトコントローラ5は、差動変圧器20からの検知信号に基づいてピストンユニット12の位置を特定し、特定されたピストンユニット12の位置に基づいて、動翼1Aの位置が航空機の飛行状態に応じた目標位置となるようにフィードバック制御を行うことができる。
【0059】
次に、図3をさらに参照して、ピストンユニット12の位置を検出する差動変圧器20について説明する。図3は、差動変圧器20の一部分を拡大して示す模式的な拡大断面図である。図3においては、ハウジング20aの図示が省略されている。
【0060】
図示の実施形態において、差動変圧器20は、線形可変差動変圧器(LVDT)である。差動変圧器20は、インナーケース22a、アウターケース22b、一次コイル23a、一組の二次コイル23b,23c、プローブ24、及びコア25を有している。
【0061】
アウターケース22bは、第1アウターケース22b1と、第2アウターケース22b2と、を有する。第1アウターケース22b1及び第2アウターケース22b2はいずれも円筒形状に形成されている。第2アウターケース22b2は、第1アウターケース22b1の内側に設けられている。インナーケース22aは、第1アウターケース22b1の一方の開放端を閉塞する基部22a1と、この基部22a1から中心軸A方向に延伸する円筒形状の円筒部22a2と、を有する。第1アウターケース22b1の一方の開放端がインナーケース22aの基部22a1で閉塞されているため、差動変圧器20は、有底の筒形状を有する。
【0062】
一次コイル23a及び二次コイル23b,23cはそれぞれ、インナーケース22aとアウターケース22bとの間に保持されている。これらのコイルは、中心軸Aに沿って差動変圧器20の底から開口に向かって、二次コイル23b、一次コイル23a、二次コイル23cの順に配置されている。
【0063】
一次コイル23aは、交流の入力電圧によって励磁される。二次コイル23b,23cは、コア25を介して一次コイル23aと磁気結合する。よって、一次コイル23aが励磁されることにより、二次コイル23b,23cには誘導電圧が生じる。
【0064】
プローブ24は、中心軸Aに沿って延伸する棒状のプローブ本体24aと、このプローブ24aの一端に設けられた固定軸部24bと、を有する。プローブ24は、固定軸部24bにおいて、ピストンロッド14に固定される。具体的には、固定軸部24bの外表面には雄ねじが形成されており、図2に示されているようにこの固定軸部24bがピストンロッド14の中実部14bに螺合されることにより、プローブ24がピストンロッド14に固定される。プローブ24は、ピストンユニット12と一体に変位するように構成及び配置される。
【0065】
コア25は、円柱状に形成され、プローブ24の先端に固定されている。コア25は、プローブ24と一体に変位するように構成及び配置される。コア25は、例えば、パーマロイ、電磁軟鉄、またはこれら以外の材料から形成される。
【0066】
差動変圧器20においては、ピストンユニット12の変位に応じてコア25が中心軸Aに沿って移動すると、一次コイル23a及び二次コイル23b,23cに対してコア25が移動する。一次コイル23aが励磁されているときに一次コイル23a及び二次コイル23b,23cに対するコア25の位置が変化すると、二次コイル23bに生じる誘導電圧と二次コイル23cに生じる誘導電圧との差である差動電圧が変化するため、この差動電圧に基づいてコアの基準位置に対する位置が検出される。コアの基準位置は、差動電圧がゼロとなるヌル点におけるコアの位置である。コア25はピストンユニット12と一体に移動するため、差動電圧に基づいてピストンユニット12の位置を検知することができる。差動電圧は、フライトコントローラ5またはこれ以外の情報処理ユニットに対して出力される
【0067】
本明細書で具体的に説明されている差動変圧器20は例示であり、差動変圧器20の構成部材の形状、配置、及び接合態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。例えば、プローブ24は螺合以外の方法でピストンロッド14に接合され得る。また、プローブ24は、プローブ24及びコア25がピストンユニット12と一体に移動することができる限り、ピストンユニット12に任意の方法で取り付けられる。
【0068】
次に、差動変圧器の破断または劣化を検出するための閉ループ構造体及び閉ループ構造体における物理的な変化を検出するセンサユニットについて説明する。アクチュエータ10には、閉ループ構造を有する閉ループ構造体50が設けられている。閉ループ構造体50は、少なくともその一部が差動変圧器20の内部に設けられる。
【0069】
閉ループ構造体50には、閉ループ構造体50における物理的な変化を検出するセンサユニット30が設けられる。センサユニット30により検出される物理量は、閉ループ構造体50における物理的な変化に応じて変化する。センサユニット30により検出される物理量は、閉ループ構造体50に破断または劣化が生じたときに、その破断または劣化の発生の前後で変化する任意の物理量である。例えば、センサユニット30は、閉ループ構造体50を流れる電流または磁束に関する物理量を検出することができる。閉ループ構造体50を流れる電流に関する物理量は、例えば、閉ループ構造体50に所定の電圧を印加した際に閉ループ構造体50に流れる電流の電流値である。閉ループ構造体50を流れる磁束に関する物理量は、例えば、閉ループ構造体50から漏れ出す漏れ磁束の磁束である。
【0070】
本発明の一実施形態における閉ループ構造体について、図4a及び図4bをさらに参照してさらに説明する。図4aは、本発明の一実施形態による差動変圧器に備えられているプローブ及びコアの断面とセンサユニットとを模式的に示す図であり、図4bは、図4aのI-I線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0071】
図示のように、アクチュエータ10に設けられている閉ループ構造体50は、導電性に優れたワイヤ27、このワイヤ27に接続された電源31、及び、この電源31と直列に設けられたLEDランプ等のランプ32を備える。図示の実施形態では、センサユニット30は、電源31とランプ32とを含んでいる。センサユニット30は、アクチュエータ10に、ピストンユニット12と一体に移動できるように設けられる。センサユニット30をピストンユニット12と一体に移動できるように設けることにより、センサユニット30をシリンダ11に設けた場合よりも、ワイヤ27の長さを短縮することができる。
【0072】
閉ループ構造体50においては、電源31から印可される電圧によって、ワイヤ27及びランプ32に電流が流れ、ランプ32が点灯する。このように、閉ループ構造体50の閉ループ構造に沿って、電気的な閉回路が構成されている。ワイヤ27が破断した場合には、閉ループ構造体50内の電気的な閉回路は開放され、ワイヤ27及びランプ32には電流が流れなくなるため、ランプ32は消灯する。
【0073】
このように、ランプ32は、閉ループ構造体50の一部分を構成するとともに、閉ループ構造体50の破断の有無を検知するセンサユニット30の構成部品としても機能する。
【0074】
図示の実施形態においては、プローブ24及びコア25に、ワイヤ27を挿通させるための穴構造26が形成されている。この穴構造26は、第1貫通孔26a、第2貫通孔26b、第3貫通孔26c、第4貫通孔26d、及び第5貫通孔26eを有する。第1貫通孔26a及び第2貫通孔26bは、プローブ24に形成されている。第1貫通孔26a及び第2貫通孔26bはいずれも、中心軸Aに沿ってプローブ24の一端から他端まで延伸している。第3貫通孔26c及び第4貫通孔26dは、コア25に形成されている。第3貫通孔26c及び第4貫通孔26dはいずれも、中心軸Aに沿ってコア25の一端から他端まで延伸している。第3貫通孔26cは、第1貫通孔26aと連通するように形成されており、第4貫通孔26dは、第2貫通孔26bと連通するように形成されている。また、第3貫通孔26cと第4貫通孔26dとは、中心軸Aに垂直な方向に伸びる第5貫通孔26eにより接続されている。
【0075】
第3貫通孔26c、第4貫通孔26d、及び第5貫通孔26eは、図4bに示されているように、コア25となる円柱形状の素体を中心軸Aに沿って半割りとした半割部材25a,25bを準備し、この半割部材25a,25bのそれぞれの接合面に、第3貫通孔26c、第4貫通孔26d、及び第5貫通孔26eにそれぞれ対応する形状の溝を形成したのち、当該半割部材25a,25bを互いに接合することで形成される。これと同様に、第1貫通孔26a及び第2貫通孔26bは、プローブ24となる円柱形状の素体を中心軸Aに沿って半割りとした半割部材に溝を形成した後、これらの半割部材を接合することで形成される。
【0076】
ワイヤ27の一部は、プローブ24及びコア25内に、第1貫通孔26a、第3貫通孔26c、第5貫通孔26e、第4貫通孔26d、及び第2貫通孔26bを通過するように配置されている。ワイヤ27のうちプローブ24及びコア25の外側にある部分は、図2に示されているように、固定軸部24bの端部からピストンロッド14の第2筒状部材14cに入り、この第2筒状部材14c内を中心軸Aに沿って案内され、次に、第2シリンダ部材11bと固定リング17との間の隙間からシリンダ11の外部に引き出され、シリンダ11の外部においてセンサユニット30(具体的には、電源31及びランプ32)に接続される。
【0077】
上記の実施形態では、ワイヤ27の一部分は、プローブ24及びコア25の両方の内部に配置されているが、ワイヤ27の一部分は、プローブ24及びコア25の少なくとも一方の内部に配置されていればよい。ワイヤ27を流れる電流が漏れ出さないようにするために、プローブ24及びコア25のうち少なくともワイヤ27と接する部位は、絶縁性に優れた絶縁材料から形成される。また、第2シリンダ部材11bのうちワイヤ27と接する部位も絶縁材料から形成される。
【0078】
本明細書で説明されているワイヤ27は例示であり、ワイヤ27の形状、アクチュエータ10内における配置、センサユニット30との接続態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。
【0079】
本明細書で説明されているセンサユニット30は例示であり、センサユニット30の配置、構成部材、及び閉ループ構造体の物理的な変化の検出原理は本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。
【0080】
次に、動翼駆動システム1及びアクチュエータ10の動作について説明する。動作開始時に、ピストンユニット12は中立位置にあるものとする。このとき、コア25は、差動電圧がゼロとなる基準位置にある。
【0081】
アクチュエータコントローラ6は、アクチュエータ10を収縮させる場合、フライトコントローラ5からの指令に基づいて、制御弁4を第1連通位置とすることで、第1油圧室19aに油を供給し第2油圧室19bから油を排出する。これにより、ピストンユニット12は、中立位置から第2移動方向W2に移動する。
【0082】
ピストンユニット12が第2移動方向W2への移動を開始すると、コア25もピストンユニット12の移動に応じて移動方向W2へ移動する。これにより、コア25は、基準位置から二次コイル23bに近づく方向へ移動する。これにより、生じる差動電圧がフライトコントローラ5に出力される。
【0083】
一方、アクチュエータ10を伸長させる場合、アクチュエータコントローラ6は、制御弁4を第2連通位置とすることで、第2油圧室19bに油を供給し第1油圧室19aから油を排出する。これにより、ピストンユニット12は、第1移動方向W1に移動する。
【0084】
ピストンユニット12が第1移動方向W1への移動を開始すると、コア25もピストンユニット12の移動に応じて移動方向W1へ移動する。これにより、コア25は、二次コイル23cに近づく方向へ移動する。これにより、生じる差動電圧がフライトコントローラ5に出力される。
【0085】
フライトコントローラ5では、差動電圧に基づいてピストンユニット12の位置が特定され、この特定されたピストンユニット12の位置に基づいて、アクチュエータ10のフィードバック制御が行われる。
【0086】
以上のように、アクチュエータ10を作動させると、プローブ24及びコア25がピストンロッド14内を移動する。プローブ24及びコア25は、他の部材との焼き付き、応力腐食割れ、またはこれら以外の原因により完全にまたは部分的に破断する可能性がある。
【0087】
上記実施形態によれば、閉ループ構造体50の少なくとも一部がプローブ24及びコア25の少なくとも一方の内部に設けられており、センサユニット30により閉ループ構造体50における物理的な変化を検出することができるため、プローブ24やコア25に破断が生じた場合には、この破断により閉ループ構造体50において生じる物理的な変化をセンサユニット30で検知することができる。具体的には、プローブ24やコア25において、閉ループ構造体50内の電気的な閉回路が開放される程度の破断または劣化が生じた場合には、センサユニット30において電源31により電圧が印加されてもランプ32が点灯しないため、センサユニット30により、プローブ24やコア25における破断や劣化を検出することができる。
【0088】
上記実施形態によれば、閉ループ構造体50を構成するワイヤ27は、プローブ24及びコア25の少なくとも一方に形成された穴構造26内に設けられているため、差動変圧器20の動作の障害とならない。
【0089】
本発明の別の実施形態について、図5a及び図5bを参照して説明する。図5aは、本発明の別の実施形態による差動変圧器に備えられているプローブ及びコアの断面とセンサユニットとを模式的に示す図であり、図5bは、図5aのII-II線に沿った断面を模式的に示す断面図である。図5a及び図5bに示されている実施形態では、図4a及び図4bの実施形態におけるコア25の代わりにコア125が設けられている。
【0090】
コア125は、プローブ24に接続された第1部分125aと、この第1部分に接続された第2部分125bと、を有する。第1部分125aと第2部分125bとは一体に形成されている。第2部分125bは、第1部分125aよりも固定軸部24bから遠位に配されている。
【0091】
コア125の第1部分125aには、コア第1貫通孔126a及びコア第2貫通孔126bが形成されている。コア第1貫通孔126a及びコア第2貫通孔126bはいずれも、中心軸Aに沿ってコア125の第1部分125aの一端から他端まで延伸している。コア第1貫通孔126aは、プローブ24に形成された第1貫通孔26aと連通しており、コア第2貫通孔126bは、プローブ24に形成された第2貫通孔26bと連通している。コア第1貫通孔126aは、第1貫通孔26aと同じ内径を有するように形成されてもよく、コア第2貫通孔126bは、第2貫通孔26bと同じ内径を有するように形成されてもよい。
【0092】
コア125の第2部分125bには、コア第3貫通孔127a、コア第4貫通孔127b、及び、コア第3貫通孔127aとコア第4貫通孔127bとを接続するコア第5貫通孔127cが形成されている。コア第3貫通孔127a及びコア第4貫通孔127bはいずれも、中心軸Aに沿ってコア125の第2部分125bの一端から他端まで延伸している。コア第3貫通孔127aはコア第1貫通孔126aと連通されており、コア第4貫通孔127はコア第2貫通孔126bと連通されている。
【0093】
コア第3貫通孔127aは、コア第1貫通孔126aよりも小さな内径を有するように形成され、コア第4貫通孔127bは、コア第2貫通孔126bよりも小さな内径を有するように形成される。コア第3貫通孔127aの内径がコア第1貫通孔126aの内径よりも小さく、また、コア第4貫通孔127bの内径がコア第2貫通孔126bの内径よりも小さいため、第1部分125aと第2部分125bとの境界には段差が生じる
【0094】
上記実施形態によれば、有底の差動変圧器20の底に溜まった水を、コア第3貫通孔127aとコア第1貫通孔126aとの境界に形成された段差、及び、コア第4貫通孔127bとコア第貫通孔126bとの境界に形成された段差によりトラップし、このトラップされた水をプローブ24及びコア125の第1移動方向W1への移動によって差動変圧器20の外部に排出することができる。
【0095】
本発明のさらに別の実施形態においては、プローブ24に形成されている第1貫通孔26aのうち固定軸部24bから遠位にある部分を小径に形成することにより、上記と同様の原理で、差動変圧器20の底に溜まった水を差動変圧器20の外部に排出することができる。
【0096】
次に、図6a及び図6bを参照して本発明のさらに別の実施形態について説明する。図6aは、本発明の別の実施形態による差動変圧器に備えられているプローブ及びコアの断面とセンサユニットとを模式的に示す図であり、図6bは、図6aのIII-III線に沿った断面を模式的に示す断面図である。図6a及び図6bに示されている実施形態では、図4a及び図4bの実施形態におけるプローブ24の代わりにプローブ224が設けられ、コア25の代わりにコア225が設けられている。
【0097】
プローブ224の外表面には、プローブ第1溝226a及びプローブ第2溝226bが形成されている。プローブ第1溝226a及びプローブ第2溝226bはいずれも、中心軸Aに沿って延伸している。プローブ第1溝226a及びプローブ第2溝226bはいずれも断面V字形状に形成されている。
【0098】
コア225の外表面には、コア第1溝227a及びコア第2溝227bが形成されている。コア第1溝227a及びコア第2溝227bはいずれも、中心軸Aに沿って延伸している。図6bに示されているように、コア第1溝227a及びコア第2溝227bはいずれも断面V字形状に形成されている。コア225には、コア第1溝227aの底部とコア第2溝227bの底部とを連結する連結孔228が形成されている。
【0099】
ワイヤ27は、その一部が、プローブ第1溝226a、コア第1溝227a、連結孔228、コア第2溝227b、及びプローブ第2溝226bを通過するように配置されている。
【0100】
当該実施形態によれば、上記の実施形態と同様の原理で、センサユニット30により、プローブ224やコア225における破断や劣化を検出することができる。また、閉ループ構造体50を構成するワイヤ27は、プローブ224及びコア225に形成された溝内に設けられているため、差動変圧器20の動作の障害とならない。
【0101】
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図7a及び図7bを参照して説明する。図7aは、本発明の別の実施形態による差動変圧器に備えられているプローブ及びコアの断面とセンサユニットとを模式的に示す図であり、図7bは、図7aのIV-IV線に沿った断面を模式的に示す断面図である。図7a及び図7bに示されている実施形態では、図6a及び図6bの実施形態におけるコア225の代わりにコア325が設けられている。
【0102】
コア325は、プローブ224に接続された第1部分325aと、この第1部分325aにプローブ224と反対側において接続された第2部分325bと、を有する。第2部分325bは、第1部分325aよりも固定軸部24bから遠位に配されている。
【0103】
コア325の第1部分325aには、コア第1溝327a及びコア第2溝327bが形成されている。コア第1溝327a及びコア第2溝327bはいずれも、中心軸Aに沿ってコア325の第1部分325aの一端から他端まで延伸している。
【0104】
コア325の第2部分325bには、コア第3溝329a、コア第4溝329b、及び、コア第3溝329aとコア第4溝329bとを接続する連通孔328が形成されている。コア第3溝329a及びコア第4溝329bはいずれも、中心軸Aに沿ってコア325の第2部分325bの一端から他端まで延伸している。
【0105】
コア第3溝329aはコア第1溝327aよりも浅く形成され、コア第4溝329bはコア第2溝327bよりも浅く形成されている。これにより、コア325の第1部分325aと第2部分325bとの境界には段差が形成される。
【0106】
上記実施形態によれば、有底の差動変圧器20の底に溜まった水を、コア325の第1部分325aと第2部分325bとの境界形成された段差によりトラップし、このトラップされた水をプローブ224及びコア325の第1移動方向W1への移動によって差動変圧器20の外部に排出することができる。
【0107】
本発明のさらに別の実施形態においては、プローブ224に形成されているプローブ第1溝226a及びプローブ第2溝226bの各々において、固定軸部24bから遠位にある部分を小径に形成することにより、上記と同様の原理で、差動変圧器20の底に溜まった水を差動変圧器20の外部に排出することができる。
【0108】
ワイヤ27が配置される溝は、断面V字形状ではなく、図8及び図9に示されているように、平坦な底部を有していてもよい。
【0109】
図8は、図6に示されている実施形態の変形例を示す。図8に示されている実施形態においては、図6に示されているコア225に代えてコア425が設けられている。図8のコア425には、コア第1溝227aに代えてコア第1溝427aが形成されており、コア第2溝227bに代えてコア第2溝427bが形成されている。コア第1溝427a及びコア第2溝427bの底部はそれぞれ、平坦に形成されている。
【0110】
図9は、図7に示されている実施形態の変形例を示す。図9に示されている実施形態においては、図7に示されているコア325に代えてコア525が設けられている。図9のコア525には、コア325のコア第1溝327a、コア第2溝327b、コア第3溝329a、及びコア第4溝329bに代えて、コア第1溝527a、コア第2溝527b、コア第3溝529a、及びコア第4溝529bがそれぞれ形成されている。コア第1溝527a、コア第2溝527b、コア第3溝529a、及びコア第4溝529bの底部はいずれも平坦に形成されている。
【0111】
これと同様に、プローブ224の外表面に形成されるワイヤ27を収容するための溝も、図8及び図9に示されているように、平坦な底部を有する形状に形成されてもよい。
【0112】
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の別の実施形態による差動変圧器に備えられているプローブ及びコアの断面を模式的に示す図である。図10に示されている実施形態では、図7a及び図7bの実施形態におけるプローブ224の代わりにプローブ624が設けられ、コア325の代わりにコア625が設けられている。
【0113】
図示のように、プローブ624の外表面には、螺旋形状のプローブ溝624aが二重に形成されており、コア625の外表面には、螺旋形状のコア溝625aが二重に形成されている。図示のように、プローブ溝624a及びコア溝625aは、中心軸Aの周りに巻回されながら中心軸Aの方向に並進する螺旋形状に形成されている。
【0114】
このプローブ溝624a及びコア溝625a内には導電材料からなるワイヤ127が設けられている。ワイヤ127は、二重螺旋であるプローブ溝624aの一方の螺旋経路内をコア625の方向に向かって延伸し、次に二重螺旋であるコア溝625aの一方の螺旋経路内をコア625の先端に向かって延伸し、コア溝625aの先端で折り返される。ワイヤ127は、コア溝625aの先端で折り返された後、コア溝625aの他方の螺旋経路内をプローブ624に向かって延伸し、次に、プローブ溝624aの他方の螺旋経路内をプローブ624の基端に向かって延伸する。このように配されたワイヤ127の両端部を引き出して、センサユニット30に接続することにより、閉回路構造が形成される。
【0115】
図10に示されている実施形態によれば、螺旋形状のワイヤ127により、プローブ624及びコア625を補強することができる。
【0116】
次に、センサユニットの変形例について説明する。上記のように、センサユニット30は、閉ループ構造体50またはそれ以外の本発明に適用される閉ループ構造体における物理的な変化を検出するように構成される。センサユニット30の変形例の一つを図11に示す。図11は、本発明の別の実施形態におけるセンサユニット30を説明するブロック図である。
【0117】
図11に示されている実施形態におけるセンサユニット30は、電源31と直列に接続された電流センサ33と、コントローラ34と、LEDランプ等のランプ32と、を備えている。
【0118】
電流センサ33は、ワイヤ27を流れる電流の電流値を検出し、検出した電流値をコントローラ34に出力するように構成される。
【0119】
コントローラ34は、各種の演算処理を行うCPUと、各種プログラム及び各種データを格納するメモリと、電流センサ33、ランプ32、及びこれら以外の機器と接続される機器インタフェースと、外部装置40と通信を行うための通信インタフェースと、を備える。
【0120】
一実施形態において、コントローラ34は、電流センサ33からの電流値に基づいて、閉ループ構造体50に破断及び劣化の少なくとも一方が発生したことを特定できるように構成されてもよい。コントローラ34は、例えば、電流センサ33からの電流値が、所定の下限値よりも低くなったときに、閉ループ構造体50に破断または劣化が起こったと判定するように構成される。閉ループ構造体50が開放されたときには、ワイヤ27を流れる電流はゼロとなるため、コントローラ34は、電流センサ33からの電流値がゼロとなったときに閉ループ構造体50が開放されたと判定するように構成されてもよい。
【0121】
コントローラ34は、閉ループ構造体50に破断または劣化が起こったと判定したときに、ランプ32を点灯又は点滅させるように構成されてもよい。ランプ32は、正常時に点灯しており、閉ループ構造体50に破断または劣化が起こった場合に、コントローラ34の制御により消灯するように構成されてもよい。
【0122】
コントローラ34は、その通信インタフェースを介して、各種データを外部装置40に送信することができる。例えば、コントローラ34は、電流センサ33からの電流値またはそれ以外の閉ループ構造50の物理的な変化に応じて生成される信号を外部装置40に送信することができる。閉ループ構造50の物理的な変化に応じて生成される信号は、電流センサ33以外の様々なセンサにより検出される閉ループ構造50の物理的な状態を表す様々な物理量を示す信号であってもよい。コントローラ34と外部装置40との間の通信リンクは、無線リンクであってもよく、有線リンクであってもよい。コントローラ34は、閉ループ構造体50に破断または劣化が起こったと判定したときに、異常検出信号を外部装置40に対して送信するように構成されてもよい。異常検出信号は、閉ループ構造
体50に破断または劣化が起こったことを示す信号である。
【0123】
オペレータは、外部装置40において、コントローラ34から受信したデータを用いて、差動変圧器20の破断または劣化をモニタリングすることができる。
【0124】
次に、図12a及び図12bを参照して、センサユニット30において閉ループ構造体を流れる磁束に関する物理量が検出される実施形態について説明する。図12aは、本発明の別の実施形態における差動変圧器が備えるプローブ及びコアの模式的な断面図であり、図12bは、図12aのV-V線に沿った断面を模式的に示す断面図である。図示の実施形態における差動変圧器は、プローブ724と、コア725と、一部分がプローブ724及びコア725の内部に設けられた閉ループ構造体150と、を備える。
【0125】
図示のように、プローブ724及びコア725には、磁性材料からなる閉ループ構造体150の一部が埋め込まれている。閉ループ構造体150は、その全体がプローブ724及びコア725の少なくとも一方の内部に埋め込まれていてもよい。閉ループ構造体150は、磁性材料から成る構造体であり、閉ループ構造を有するように形成される。閉ループ構造体150に沿って閉磁路が構成されるようにするため、プローブ724及びコア725のうち少なくとも閉ループ構造体150と接する部位は、非磁性材料から形成される。
【0126】
閉ループ構造体150の周囲には、コイル37が巻回されている。コイル37には、電源36が接続されている。コイル37は、電源36から印可される交流電圧によって励磁されるように構成されている。励磁されたコイル37から発生する磁束は、閉ループ構造体150に沿って形成される閉磁路を通過する。
【0127】
本実施形態におけるセンサユニット30は、磁気センサ38とコントローラ34とを備えている。磁気センサ38は、閉ループ構造体150からの漏れ磁束を検出するように構成される。磁気センサ38は、例えば、ホール素子である。磁気センサ38の検出値は、コントローラ34に対して出力される。
【0128】
コントローラ34は、磁気センサ38からの検出値が、所定の上限値よりも高くなったときに、閉ループ構造体150に破断または劣化が起こったと判定するように構成されてもよい。閉ループ構造体150に破断または劣化が起こったときには、閉ループ構造体150の磁気抵抗が高くなるため、閉ループ構造体150からその外部への磁束の漏れが発生しやすくなる。磁気センサ38の検出値は、閉ループ構造体150からの漏れ磁束またはその磁束密度を示すため、コントローラ34は、磁気センサ38の検出値が上限値よりも高くなったときに、閉ループ構造体150に破断または劣化が起こったと判定することができる。
【0129】
センサユニット30は、ランプを備えてもよい。コントローラ34は、閉ループ構造体150に破断または劣化が起こったと判定したときに、当該ランプを点灯、消灯、または点滅させるように構成されてもよい。
【0130】
コントローラ34は、磁気センサ38の検出値を外部装置40に送信するように構成されてもよい。コントローラ34は、閉ループ構造体150に破断または劣化が起こったと判定したときに、異常検出信号を外部装置40に対して送信するように構成されてもよい。
【0131】
本発明の一実施形態において、閉ループ構造体50は、プローブ24、プローブ224、及びプローブ624よりも靱性が高い材料から形成されてもよい。閉ループ構造体150は、プローブ724よりも靱性が高い材料から形成されてもよい。閉ループ構造体50は、コア25、コア125、コア225、コア325、コア425、コア525、及びコア625よりも靱性が高い材料から形成されてもよい。閉ループ構造体150は、コア725よりも靱性が高い材料から形成されてもよい。このように閉ループ構造体50及び閉ループ構造体150を高靱性の材料から形成することにより、各プローブ及び各コアに構造的冗長性を付与することができるので、各プローブ及び各コアが破断しにくくなる。
【0132】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0133】
例えば、本明細書で明示的に説明されたアクチュエータ10及び差動変圧器20の構成部材の具体的な形状及び配置は例示である。本発明の趣旨に反しない限り、アクチュエータ10及び差動変圧器20の各構成部材の形状、配置、及び機能は、適宜変更され得る。
【0134】
コントローラ34により行われる制御及び演算の一部は、フライトコントローラ5及びアクチュエータコントローラ6の少なくとも一方で実行されてもよい。コントローラ34により行われる制御及び演算の一部又は全部は、システム1に備えられる又はシステム1の外部にある複数のコントローラによって分散して実行されてもよい。
【0135】
センサユニット30により検出される物理量は、本明細書で明示的に挙げられたものには限定されない。例えば、センサユニット30で検出される物理量には、閉ループ構造体50、閉ループ構造体150、またはこれら以外の本発明に適用可能な閉ループ構造体の電気抵抗、電気容量、磁気抵抗、及びこれら以外の閉ループ構造体50に破断または劣化が生じたときにその破断または劣化の発生の前後で変化する任意の物理量が含まれ得る。
【符号の説明】
【0136】
10 アクチュエータ
11 シリンダ
12 ピストンユニット
20 差動変圧器
24,224,624,724 プローブ
25,125,225,325,425,525,625,725 コア
27,127 ワイヤ
30 センサユニット
31,36 電源
32 ランプ
33 電流センサ
37 コイル
38 磁気センサ
40 外部装置
50,150 閉ループ構造体
125a,325a 第1部分
125b,325b 第2部分
126a コア第1貫通孔
126b コア第2貫通孔
127a コア第3貫通孔
127b コア第4貫通孔
226a プローブ第1溝
226b プローブ第2溝
227a,327a,427a,527a コア第1溝
227b,327b,427b,527b コア第2溝
325a 第1部分
325b 第2部分
329a,529a コア第3溝
329b,529b コア第4溝
624a プローブ溝
625a コア溝
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b