(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料、成形品、および、人造大理石
(51)【国際特許分類】
C08F 283/01 20060101AFI20220916BHJP
C04B 26/18 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
C08F283/01
C04B26/18 B
(21)【出願番号】P 2018049653
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】安宅 忍
(72)【発明者】
【氏名】塚本 貴史
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127023(JP,A)
【文献】特開昭52-147673(JP,A)
【文献】特開2017-001933(JP,A)
【文献】特開2000-109526(JP,A)
【文献】特開2013-124205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/00 - 283/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と柄材とを含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
前記母材は、母材用不飽和ポリエステル樹脂と母材用充填材と低収縮化剤とを含有し、
前記柄材は、柄材用不飽和ポリエステル樹脂の硬化物と柄材用充填材とを含有し、かつ、厚みが、1.0mm以下であり、
下記式[1]を満足することを特徴とする、不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記柄材の密度は、1.60g/ml以上1.75g/ml以下であることを特徴とする、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記母材用不飽和ポリエステル樹脂は、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体とを含み、
前記母材用不飽和ポリエステルは、母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとの重合生成物であり、
前記母材用多価アルコールは、水素化ビスフェノールAを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3
のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含み、前記強化繊維の長さが1.5mm以上50mm以下であることを特徴とする、成形材料。
【請求項5】
請求項4に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項6】
請求項5に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、人造大理石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料、成形品、および、人造大理石に関し、詳しくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、成形材料の硬化物を含む成形品、および、成形材料の硬化物を含む人造大理石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人造大理石などの成形品は、浴槽、キッチンカウンターの天板、キッチンカウンターのシンク、洗面台のカウンターなどの住宅設備用途として、幅広く用いられている。
【0003】
通常、このような成形品は、樹脂組成物、充填材、および、ガラス繊維などの強化繊維を含む成形材料を硬化させて得られる。
【0004】
また、このような成形材料には、意匠性の観点から、柄材が配合される場合がある。
【0005】
例えば、成形材料として、不飽和ポリエステル樹脂、無機充填材および強化繊維(母材)と、柄材とを含み、柄材は、不飽和ポリエステル樹脂および無機充填材を含有する樹脂コンパウンドを硬化させて得られた硬化物を粉砕して得られる、人造大理石用成形材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、このような成形材料を、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)によって調製し、シート状の成形品を成形すると、成形品の表面に柄材が分散されるが、母材の収縮率と柄材の収縮率との差が大きいと、成形品の表面に凹凸が発生するという不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、とりわけ、SMCまたはTMCによって、成形材料を調製し、この成形材料を用いて成形品を成形する場合において、優れた平滑性を有する成形品を得るための不飽和ポリエステル樹脂組成物、その不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、その成形材料の硬化物を含む成形品、および、その成形材料の硬化物を含む人造大理石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、母材と柄材とを含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記母材は、母材用不飽和ポリエステル樹脂と母材用充填材と低収縮化剤とを含有し、前記柄材は、柄材用不飽和ポリエステル樹脂の硬化物と柄材用充填材とを含有し、かつ、厚みが、1.0mm以下であり、下記式[1]を満足する、不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0010】
本発明[2]は、前記柄材の密度は、1.60g/ml以上1.75g/ml以下である、上記[1]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記母材用不飽和ポリエステル樹脂は、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体とを含み、前記母材用不飽和ポリエステルは、母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとの重合生成物であり、前記母材用多価アルコールは、水素化ビスフェノールAを含む、上記[1]または[2]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、上記[1]~[3]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含み、前記強化繊維の長さが1.5mm以上50mm以下である、成形材料を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、上記[4]に記載の成形材料の硬化物を含む、成形品を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、上記[5]に記載の成形材料の硬化物を含む、人造大理石を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、母材と柄材とを含有し、母材は、母材用不飽和ポリエステル樹脂と母材用充填材と低収縮化剤とを含有し、柄材は、柄材用不飽和ポリエステル樹脂の硬化物と柄材用充填材とを含有し、かつ、厚みが、1.0mm以下であり、下記式[1]を満足する。
【0016】
そのため、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品は、平滑性に優れる。
【0017】
本発明の成形材料は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むので、この成形材料を用いて得られる成形品は、平滑性に優れる。
【0018】
本発明の成形品は、本発明の成形材料の硬化物を含むので、平滑性に優れる。
【0019】
本発明の人造大理石は、本発明の成形材料の硬化物を含むので、平滑性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、母材と柄材とを含有する。
【0021】
母材は、母材用不飽和ポリエステル樹脂と母材用充填材と低収縮化剤とを含有する。
【0022】
母材用不飽和ポリエステル樹脂は、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体とを含む。
【0023】
母材用不飽和ポリエステルは、母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとの重合生成物である。
【0024】
母材用多塩基酸は、必須成分としての不飽和多塩基酸と、任意成分としての飽和多塩基酸とを含む。
【0025】
不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アニコット酸、ジヒドロムコン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、例えば、これらの酸のハロゲン化物、例えば、これらの酸のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0026】
また、不飽和多塩基酸には、上記の脂肪族不飽和二塩基酸から誘導される酸無水物、例えば、無水マレイン酸などが含まれる。
【0027】
不飽和多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
【0028】
飽和多塩基酸としては、例えば、脂肪族飽和多塩基酸、脂環族飽和多塩基酸、芳香族飽和多塩基酸(エチレン性不飽和二重結合不含芳香族多塩基酸)、これらの酸のハロゲン化物、例えば、これらの酸のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0029】
脂肪族飽和多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など脂肪族飽和二塩基酸などが挙げられる。
【0030】
また、脂肪族飽和多塩基酸には、上記の脂肪族飽和二塩基酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸などが含まれる。
【0031】
脂環族飽和多塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cis-またはtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその混合物)、ダイマー酸などの脂環族飽和二塩基酸が挙げられる。
【0032】
芳香族飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族飽和二塩基酸が挙げられる。
【0033】
また、芳香族飽和多塩基酸には、上記の芳香族飽和二塩基酸から誘導される酸無水物、例えば、無水フタル酸などが含まれる。
【0034】
飽和多塩基酸としては、好ましくは、芳香族飽和多塩基酸が挙げられ、より好ましくは、芳香族飽和二塩基酸、さらに好ましくは、フタル酸、とりわけ好ましくは、イソフタル酸が挙げられる。
【0035】
母材用多塩基酸は、単独使用または2種以上併用でき、好ましくは、不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸を併用し、より好ましくは、無水マレイン酸およびイソフタル酸を併用する。
【0036】
不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸を併用した場合において、母材用多塩基酸100モル部に対して、不飽和多塩基酸の配合割合は、例えば、70モル部以上、好ましくは、85モル部以上、また、例えば、95モル部以下であり、飽和多塩基酸の配合割合は、例えば、5モル部以上であり、また、例えば、30モル部以下、好ましくは、15モル部以下である。
【0037】
母材用多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタンなどのアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどの脂肪族ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジメタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジエタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジエタノールもしくはその混合物)、水素化ビスフェノールAなどの脂環族ジオール、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、好ましくは、2価アルコール、より好ましくは、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、さらに好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、とりわけ好ましくは、プロピレングリコール、水素化ビスフェノールAが挙げられる。
【0038】
つまり、母材用多価アルコールは、好ましくは、水素化ビスフェノールAを含む。
【0039】
母材用多価アルコールが、水素化ビスフェノールAを含めば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)は、平滑性に優れる。
【0040】
母材用多価アルコールの水酸基価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、100mgKOH/g以上、好ましくは、150mgKOH/g以上、より好ましくは、200mgKOH/g以上であり、例えば、2000mgKOH/g以下、好ましくは、1800mgKOH/g以下、より好ましくは、1600mgKOH/g以下である。
【0041】
母材用多価アルコールは、単独使用または2種以上併用でき、好ましくは、脂肪族ジオール(アルカンジオール)および脂環族ジオールを併用し、より好ましくは、プロピレングリコールおよび水素化ビスフェノールAを併用する。
【0042】
母材用不飽和ポリエステルは、母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとを重縮合(縮合重合)することにより得られる。
【0043】
母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとを重縮合(縮合重合)させるには、母材用多価アルコールに対する母材用多塩基酸のモル比(母材用多塩基酸/母材用多価アルコール)が、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下になるように、配合し、常圧、窒素雰囲気下で撹拌する。
【0044】
反応温度としては、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上であり、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0045】
反応時間としては、例えば、8時間以上、また、例えば、30時間以下である。
【0046】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の触媒を配合することもできる。
【0047】
これにより、母材用不飽和ポリエステルが得られる。
【0048】
母材用不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、20mgKOH/g以上であり、また、例えば、40mgKOH/g未満である。
【0049】
母材用不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、6000以上、好ましくは、8000以上であり、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0050】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であり、母材用不飽和ポリエステルをGPC測定することにより求めることができる。
【0051】
母材用不飽和ポリエステルの配合割合は、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体と低収縮化剤との総量(以下、母材樹脂成分)に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、45質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下である。
【0052】
母材用重合性単量体は、母材用不飽和ポリエステルを溶解するための溶剤であり、かつ、母材用不飽和ポリエステル樹脂(後述)の硬化時には、母材用不飽和ポリエステルと架橋可能な架橋性単量体(反応性希釈剤)であって、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸アリルなどの(メタ)アクリル酸アリルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルなどの環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルおよびこれらのクロライド塩、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシルなどの(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、例えば、グリセリンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルなどのアリル系モノマーなどが挙げられ、好ましくは、スチレン系モノマー、より好ましくは、スチレンが挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよび/またはアクリルと同義である。
【0053】
母材用重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0054】
母材用重合性単量体の配合割合は、母材樹脂成分に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量部%以上であり、また、例えば、60質量部%以下である。
【0055】
また、母材用重合性単量体の配合割合は、母材用不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下である。
【0056】
母材用充填材としては、例えば、アルミナ、チタニアなどの酸化物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、例えば、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ、乾式シリカ(アエロジル)など)、ガラスパウダー、ガラスバルーン、珪砂、珪藻土、マイカ、クレー、カオリン、タルクなどのケイ酸塩、例えば、ホタル石などのフッ化物、例えば、リン酸カルシウムなどのリン酸塩、例えば、スメクタイトなどの粘土鉱物などの無機充填材などが挙げられ、好ましくは、水酸化物、より好ましくは、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0057】
母材用充填材の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、140質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0058】
低収縮化剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)を得る場合に、成形品(後述)の硬化収縮および熱収縮を抑制するために配合される。
【0059】
低収縮化剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、SBS(ゴム)などが挙げられる。
【0060】
架橋ポリスチレンは、スチレン単量体を単独で、または、スチレン単量体と、スチレン単量体と共重合可能な重合性単量体(以下、共重合性単量体とする。)とを、架橋剤の存在下で重合させることにより得られる3次元の網目構造を有する架橋重合体である。
【0061】
共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリドアミドなどが挙げられる。
【0062】
共重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0063】
架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエンなどのジビニルベンゼン誘導体、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどアルキレンジメタクリレート、例えば、ジアリルフタレートなどが挙げられる。
【0064】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0065】
架橋ポリスチレンが、スチレン単量体と共重合性単量体とを重合させることにより得られる場合には、スチレン単量体の含有割合は、スチレン単量体と共重合性単量体との総量100質量%に対して、好ましくは、50質量%以上である。
【0066】
架橋ポリスチレンの平均粒子径は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、60μm以下、好ましくは、40μm以下である。
【0067】
また、架橋ポリスチレンは、市販品を用いることができ、具体的には、SGP-70C(平均粒子径:20μm)(綜研化学社製)などが挙げられる。
【0068】
また、低収縮化剤は、上記した重合性単量体に溶解して用いることができ、このような低収縮化剤として、具体的には、ポリホープ9965(ポリスチレンのスチレンモノマー溶液)(ジャパンコンポジット社製)などが挙げられる。
【0069】
低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0070】
低収縮化剤の配合割合は、母材樹脂成分に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0071】
柄材は、柄材用不飽和ポリエステル樹脂の硬化物と柄材用充填材とを含有する。
【0072】
柄材用不飽和ポリエステル樹脂は、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体とを含む。
【0073】
柄材用不飽和ポリエステルは、柄材用多塩基酸と、柄材用多価アルコールとの重合生成物である。
【0074】
柄材用多塩基酸は、例えば、上記の母材用多塩基酸と同じ多塩基酸が挙げられ、必須成分としての上記の不飽和多塩基酸と、任意成分としての上記の飽和多塩基酸とを含む。
【0075】
不飽和多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸、フマル酸が挙げられ、より好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0076】
飽和多塩基酸としては、好ましくは、芳香族飽和多塩基酸が挙げられ、より好ましくは、芳香族飽和二塩基酸、さらに好ましくは、フタル酸、とりわけ好ましくは、イソフタル酸が挙げられる。
【0077】
柄材用多塩基酸は、単独使用または2種以上併用でき、好ましくは、不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸を併用し、より好ましくは、無水マレイン酸およびイソフタル酸を併用する。
【0078】
不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸を併用した場合において、柄材用多塩基酸100モル部に対して、不飽和多塩基酸の配合割合は、例えば、70モル部以上であり、また、例えば、95モル部以下、好ましくは、85モル部以下であり、飽和多塩基酸の配合割合は、例えば、5モル部以上、好ましくは、15モル部以上であり、また、例えば、30モル部以下である。
【0079】
柄材用多価アルコールとしては、例えば、上記の母材用多価アルコールと同じ多価アルコールが挙げられ、好ましくは、2価アルコール、より好ましくは、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、さらに好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、とりわけ好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0080】
柄材用多価アルコールの水酸基価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、100mgKOH/g以上、好ましくは、150mgKOH/g以上、より好ましくは、200mgKOH/g以上であり、例えば、2000mgKOH/g以下、好ましくは、1800mgKOH/g以下、より好ましくは、1600mgKOH/g以下である。
【0081】
柄材用多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0082】
柄材用不飽和ポリエステルは、柄材用多塩基酸と、柄材用多価アルコールとを重縮合(縮合重合)することにより得られる。
【0083】
柄材用多塩基酸と、柄材用多価アルコールとを重縮合(縮合重合)させるには、柄材用多塩基酸と柄材用多価アルコールと配合し、常圧、窒素雰囲気下で撹拌する。
【0084】
配合条件、反応条件は、上記した母材用多塩基酸と、母材用多価アルコールとを重縮合(縮合重合)させる条件と同じである。
【0085】
これにより、柄材用不飽和ポリエステルが得られる。
【0086】
柄材用不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、20mgKOH/g以上、好ましくは、25mgKOH/g以上、より好ましくは、30mgKOH/g以上であり、また、例えば、40mgKOH/g未満である。
【0087】
柄材用不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、6000以上、好ましくは、8000以上であり、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0088】
なお、重量平均分子量は、上記の母材用不飽和ポリエステルの重量平均分子量の測定方法と同じ方法により求めることができる。
【0089】
柄材用不飽和ポリエステルの配合割合は、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体との総量(以下、柄材樹脂成分)に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下である。
【0090】
柄材用重合性単量体は、例えば、上記の母材用重合性単量体と同じ重合性単量体が挙げられ、好ましくは、スチレン系モノマー、より好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0091】
柄材用重合性単量体の配合割合は、柄材樹脂成分に対して、例えば、40質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0092】
柄材用充填材は、上記した母材用充填材と同じ充填材が挙げられ、好ましくは、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0093】
柄材用充填材の配合割合は、柄材樹脂成分100質量部に対して、例えば、80質量部以上、好ましくは、105質量部以上、より好ましくは、115質量部以上、さらに好ましくは、125質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下、より好ましくは、210質量部以下、さらに好ましくは、180質量部以下である。
【0094】
そして、柄材を得るには、まず、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体と柄材用充填材とを上記した割合で配合し、混合物を得る。
【0095】
混合物には、硬化剤を配合する。
【0096】
硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシアセテートなどのパーオキサイドが挙げられ、好ましくは、パーオキシイソプロピルモノカーボネートであるt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートなどが挙げられ、好ましくは、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0097】
硬化剤の配合割合は、柄材樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0098】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0099】
また、混合物には、必要により、着色剤などの添加剤を配合することができる。これら添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0100】
着色剤としては、特に制限されず、例えば、酸化チタン、ポリエステルトナー(酸化チタン含有ポリエステル着色剤)、カーボンブラックなどが挙げられ、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0101】
着色剤の配合割合は、柄材樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0102】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0103】
なお、上記した説明では、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体と柄材用充填材と、硬化剤と、必要により配合される添加剤とを配合し、混合物を得たが、まず、柄材用不飽和ポリエステルを柄材用重合性単量体に溶解させることにより、柄材用不飽和ポリエステル樹脂を調製し、その後、得られた柄材用不飽和ポリエステル樹脂と、柄材用充填材と、硬化剤と、必要により配合される添加剤とを配合することもできる。
【0104】
柄材用不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、柄材用重合性単量体の配合割合は、柄材用不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下である。
【0105】
柄材用不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、柄材用不飽和ポリエステルおよび柄材用重合性単量体を配合するとともに、必要により、適宜、重合禁止剤を配合することもできる。
【0106】
重合禁止剤は、可使時間、硬化反応を調整するために配合され、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン化合物、例えば、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン化合物、例えば、t-ブチルカテコールなどのカテコール化合物、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4-メトキシフェノールなどのフェノール化合物、例えば、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-アセテート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-2-エチルヘキサノエート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-ステアレート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-4-t-ブチルベンゾエート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)コハク酸エステル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジピン酸エステル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルマロン酸エステル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)フタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)イソフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)テレフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジパミド、N-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カプロラクタム、N-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ドデシルサクシンイミド、2,4,6-トリス-[N-ブチル-N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)]-s-トリアジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンなどのN-オキシル化合物が挙げられ、好ましくは、ハイドロキノン化合物、より好ましくは、ハイドロキノンが挙げられる。
【0107】
重合禁止剤の配合割合は、柄材用不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上であり、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0108】
次いで、得られた混合物を硬化させる。
【0109】
混合物を硬化させる方法として、例えば、この混合物を基材に塗布し、その後、これを加熱し硬化させる方法(塗布硬化方法)、例えば、この混合物を加熱圧縮成形することによって、硬化させる方法(加熱圧縮成形方法)などが挙げられる。
【0110】
塗布硬化方法では、まず、混合物を基材に塗布し、次いで、これを加熱し硬化させる。
【0111】
基材としては、特に限定されず、例えば、PETフィルムなどが挙げられる。
【0112】
塗布方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用され、具体的には、1.0mm以下、好ましくは、0.5mm以下、より好ましくは、0.3mm以下、さらに好ましくは、0.25mm以下であり、また、例えば、0.1mm以上の厚みとなるように塗布する。
【0113】
硬化条件として、硬化温度は、目的および用途に応じて、適宜設定され、具体的には、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下であり、硬化時間は、例えば、3分以上であり、また、例えば、120分以下である。
【0114】
これにより、混合物が硬化する。
【0115】
また、加熱圧縮成形方法は、特に限定されず、公知の方法が採用され、具体的には、1.0mm以下、好ましくは、0.5mm以下、より好ましくは、0.3mm以下、さらに好ましくは、0.25mm以下であり、また、例えば、0.1mm以上の厚みとなるように混合物を成形する。
【0116】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定され、具体的には、成形温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下であり、また、成形圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上であり、また、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0117】
これにより、混合物が硬化して、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体と柄材用充填材との混合物の硬化物が得られる。
【0118】
次いで、硬化物を、公知の方法で粉砕し、次いで、粉砕した硬化物を、例えば、ふるいによって分級する。
【0119】
ふるいの開口径は、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上であり、また、例えば、15.0mm以下、好ましくは、10.0mm以下、さらに好ましくは、5.0mm以下である。
【0120】
これにより、柄材が得られる。
【0121】
柄材の厚みは、1.0mm以下、好ましくは、0.5mm以下、より好ましくは、0.3mm以下、さらに好ましくは、0.25mm以下であり、また、例えば、0.1mm以上である。
【0122】
柄材の厚みが、上記上限以下であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)は、強度および耐熱性に優れつつ、柄材均一性および平滑性に優れる。
【0123】
一方、柄材の厚みが、上記上限を超過すれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)の強度、耐熱性、柄材均一性および平滑性が低下する。
【0124】
また、柄材の密度は、例えば、1.50g/ml以上、好ましくは、1.60g/ml以上、より好ましくは、1.65g/ml以上であり、また、例えば、1.80g/ml以下、好ましくは、1.75g/ml以下、より好ましくは、1.70g/ml以下である。
【0125】
柄材の密度が、上記上限以下および上記下限以上であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)は、平滑性に優れる。
【0126】
なお、柄材の密度は、柄材用不飽和ポリエステルと柄材用重合性単量体と柄材用充填材との仕込み量から算出することができる。
【0127】
そして、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、母材と柄材とを配合することにより得ることができる。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、母材用不飽和ポリエステル、母材用重合性単量体、母材用充填材および低収縮化剤(母材)と、柄材とを配合することにより得ることができる。
【0128】
柄材の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下である。
【0129】
また、柄材の配合割合は、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体と低収縮化剤と母材用充填材との総量100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0130】
また、母材用不飽和ポリエステル樹脂の配合割合(すなわち、母材用不飽和ポリエステルおよび母材用重合性単量体の総量)と、母材用充填材の配合割合と、低収縮化剤の配合割合と、柄材用不飽和ポリエステル樹脂(すなわち、柄材用不飽和ポリエステルおよび柄材用重合性単量体の総量)の配合割合と柄材用充填材の配合割合との関係(以下、母材と柄材との比率とする。)は、下記式(1)を満足する。
【0131】
上記式(1)における分母(母材用充填材/(母材用不飽和ポリエステル樹脂+低収縮化剤))は、加熱圧縮成形(後述)における母材の収縮率を見積もる値である。
【0132】
一方、上記式(1)における分子(柄材用充填材/柄材用不飽和ポリエステル樹脂)は、加熱圧縮成形(後述)における柄材の収縮率を見積もる値である。
【0133】
つまり、上記式(1)は、母材の収縮率と柄材の収縮率との比率を示した式であり、この比率が1から離れるほど、母材の収縮率と柄材の収縮率との差が大きくなる。
【0134】
この比率(母材と柄材との比率)は、具体的には、0.7以上、好ましくは、0.75以上、より好ましくは、0.85以上、さらに好ましくは、0.90以上であり、また、1.4以下、好ましくは、1.35以下、より好ましくは、1.32以下、さらに好ましくは、1.25以下、とりわけ好ましくは、1.1以下である。
【0135】
母材と柄材との比率が、上記式(1)を満足すれば、母材の収縮率と柄材の収縮率との差が小さく、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)は、平滑性に優れる。
【0136】
一方、母材と柄材との比率が、上記式(1)を満足しなければ、母材の収縮率と柄材の収縮率との差が大きくなり、この収縮率の差に起因して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)の表面に凹凸が発生する。その結果、平滑性が低下する。
【0137】
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、必要により、重合禁止剤、硬化剤、離型剤、着色剤、増粘剤などの添加剤を配合することができる。これら添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0138】
重合禁止剤は、上記した重合禁止剤が挙げられ、好ましくは、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラピペリジン-1-オキシルが挙げられる。
【0139】
重合禁止剤の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0140】
重合禁止剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0141】
硬化剤としては、上記した硬化剤が挙げられ、好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられる。
【0142】
硬化剤の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、0.8質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0143】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0144】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、例えば、パラフィン、液体ワックス、フッ素ポリマー、シリコン系ポリマーなどが挙げられ、好ましくは、脂肪酸金属塩、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0145】
離型剤の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下である。
【0146】
離型剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0147】
着色剤としては、特に制限されず、上記した着色剤が挙げられ、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0148】
着色剤の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0149】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0150】
増粘剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱圧縮成形に適した粘度まで増粘させるために配合され、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を強化繊維(後述)に含浸させる前(好ましくは、直前)に配合され、例えば、酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられ、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0151】
増粘剤の配合割合は、母材樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、0.8質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0152】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0153】
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、必要により、例えば、難燃剤、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘度低下剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、潤滑分散剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、重合促進剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。これら添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0154】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物が得られる。
【0155】
なお、上記した説明では、母材用不飽和ポリエステルと母材用重合性単量体と母材用充填材と低収縮化剤と柄材と、必要により配合される添加剤とを配合し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得たが、まず、母材用不飽和ポリエステルを母材用重合性単量体に溶解させることにより、母材用不飽和ポリエステル樹脂を調製し、その後、得られた母材用不飽和ポリエステル樹脂と、母材用充填材と低収縮化剤と、柄材と、必要により配合される添加剤とを配合することもできる。
【0156】
母材用不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、母材用不飽和ポリエステルおよび母材用重合性単量体を配合するとともに、必要により、適宜、上記の添加剤(例えば、重合禁止剤)を配合することもできる。
【0157】
不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の配合割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下であり、重合禁止剤の配合割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上であり、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0158】
そして、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物に、強化繊維を配合することにより、成形材料を調製できる。そして、このような成形材料から、公知の方法により、成形品(例えば、人造大理石)を得ることができる。
【0159】
強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機繊維、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、フェノール系繊維などの有機繊維、例えば、麻、ケナフなどの天然繊維などが挙げられ、好ましくは、無機繊維、より好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
【0160】
これらの強化繊維の形状は、例えば、ロービングクロスなどのクロス状、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、サーフェーシングマットなどのマット状、ストランド状、ロービング状、不織布状、ペーパー状などが挙げられ、好ましくは、ロービング状が挙げられる。
【0161】
これらの強化繊維のうち、好ましくは、ガラス繊維が挙げられ、より具体的には、ガラスロービングが好ましく、さらに具体的には、ガラスロービングを所定の長さに切断したチョップドガラスが好ましい。
【0162】
強化繊維の長さは、例えば、1.5mm以上、好ましくは、5mm以上、より好ましくは、10mm以上であり、また、例えば、50mm以下、好ましくは、30mm以下である。
【0163】
強化繊維の長さが、上記上限以下および上記下限以上であれば、成形材料を用いて得られる成形品は、強度(具体的には、曲げ強さ)に優れる。
【0164】
そして、成形材料は、強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させることより例えば、シート状の成形材料として得られる。
【0165】
成形材料がシート状である場合において、成形材料の厚みは、例えば、1.0mm以上であり、また、例えば、15.0mm以下である。
【0166】
強化繊維の配合割合(例えば、強化繊維がガラス繊維である場合には、以下、ガラス含有率とする。)は、不飽和ポリエステル樹脂組成物および強化繊維の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0167】
成形材料を調製する方法としては、成形材料をシート状に成形する方法が挙げられ、例えば、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)などが挙げられる。
【0168】
これにより、上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを含む成形材料が得られる。
【0169】
この成形材料は、上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むので、この成形材料を用いて得られる成形品は、平滑性に優れる。
【0170】
次いで、このような成形材料を、加熱圧縮成形(後述)できるように、増粘させるため、好ましくは、例えば、20℃以上60℃以下、8時間以上120時間以下で熟成する。
【0171】
これにより、成形材料が、例えば、シート状に保形される。
【0172】
そして、成形品は、成形材料を、公知の方法により、加熱圧縮成形することにより得られる。
【0173】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定され、具体的には、成形温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下であり、また、成形圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上であり、また、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0174】
これにより、成形材料を金型内で流動させ、硬化させることで、上記の成形材料の成形品が得られる。
【0175】
また、この成形品表面には、柄材が分散されている。
【0176】
そして、この成形品は、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料の硬化物を含んでおり、不飽和ポリエステル樹脂組成物において、上記した母材と柄材との比率が、上記式(1)を満足する。
【0177】
そのため、上記した加熱圧縮成形において、成形品の表面に分散された柄材の収縮率と、成形品の表面における母材の収縮率との差が小さくなり、収縮率の差に起因する成形品表面の凹凸の発生を抑制することができる。その結果、この成形品は、所望の物性(強度、耐熱水性など)を確保しつつ、とりわけ、平滑性に優れる。
【0178】
成形品としては、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料から成形された人造大理石が挙げられる。
【0179】
このような成形品(好ましくは、人造大理石)は、浴槽、キッチンカウンターの天板、キッチンカウンターのシンク、洗面台のカウンターなどの住宅設備用途において、幅広く用いられる。
【実施例】
【0180】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.不飽和ポリエステル樹脂の調製
合成例1(不飽和ポリエステル樹脂Aの調製)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、イソフタル酸1.0モル、プロピレングリコール8.0モル、水素化ビスフェノールA2.5モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200℃~210℃で重縮合反応させるとともに、反応生成物の酸価を測定した。なお、酸価の測定方法は、JIS K6901(2008年)に準拠した。その後、反応生成物の酸価が20mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸9.0モルを仕込み、再び210℃~220℃で反応させ、酸価23.5mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。得られた不飽和ポリエステル100質量部に対し、重合禁止剤としてハイドロキノンを0.01質量部、スチレンを81.8質量部添加し、これらを均一に混合して、不飽和ポリエステル樹脂Aを得た。
【0181】
合成例2(不飽和ポリエステル樹脂Bの調製)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、イソフタル酸2.0モル、プロピレングリコール5.5モル、ネオペンチルグリコール4.5モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200℃~210℃で重縮合反応させた。その後、反応生成物の酸価が15mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸8.0モルを仕込み、再び210℃~220℃で反応させ、酸価24.5mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。得られた不飽和ポリエステル100質量部に対し、重合禁止剤としてハイドロキノンを0.01質量部、スチレンを81.8質量部添加し、これらを均一に混合して、不飽和ポリエステル樹脂Bを得た。
2.柄材の調製
調製例1(柄材Aの調製)
柄材用不飽和ポリエステル樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂B 100質量部、柄材用充填材として、水酸化アルミニウム150質量部、着色料として、ホワイトトナー5質量部、硬化剤として、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2質量部を撹拌混合して混合物を得た。その後、この混合物を、厚みが250μmになるようにPETフィルム上に塗布して、100℃で硬化させ、硬化物を得た。その後、硬化物を粉砕し、4.0mm(4.7メッシュ)から0.1mm(140メッシュ)の篩にかけた。これにより、柄材A(密度1.67g/ml、厚み250μm)を得た。
【0182】
調製例1~調製例8(柄材B~柄材Hの調製)
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、調製例1と同様に処理して、柄材B~柄材Hを得た。
【0183】
なお、調製例8では、混合物を厚みが1200μmになるようにPETフィルム上に塗布した以外は、調製例1と同様に処理して、柄材Hを得た。
3.不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料の調製
実施例1
母材用不飽和ポリエステル樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂Aを88質量部(すなわち、不飽和ポリエステル48.4質量部、スチレン39.6質量部)、低収縮化剤として、架橋ポリスチレン(綜研化学社製、SGP-70C)12質量部、重合禁止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラピペリジン-1-オキシル0.05質量部、硬化剤として、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート1.0質量部、離型剤として、ステアリン酸亜鉛5質量部、母材用充填材として、水酸化アルミニウムを150質量部、着色剤として、ピンクトナー5質量部、柄材として、柄材A20質量部を混合して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0184】
この不飽和ポリエステル樹脂組成物に、増粘剤として、酸化マグネシウム1.0質量部を添加後、強化繊維として、ガラスロービングを連続的に25mmに切断したガラスチョップをガラス含有率が25質量%となるように添加して、公知のSMC含浸機で成形材料(SMC)を得た後、40℃で48時間熟成させ、成形材料が加熱圧縮成形可能な状態になるまで増粘させた。
【0185】
なお、上記式(1)の母材と柄材との比率は、1.0であった。
【0186】
実施例2~8、比較例1~4
配合処方を、表2の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理し、成形材料、および成形品を得た。
【0187】
なお、実施例1~6、および、比較例1~3は、公知のSMC含浸機で成形材料(SMC)を得た。また、実施例7、実施例8および比較例4は、公知のTMC含浸機で成形材料(TMC)を得た。
4.評価
(SMCまたはTMCでの含浸性)
実施例1~実施例8、比較例1および比較例2、比較例4では、母材用不飽和ポリエステル樹脂組成物とガラスチョップとが、十分に含浸したため、その評価を「○」とした。
【0188】
また、比較例3では、柄材Hの厚みが1200μmと厚いため、不飽和ポリエステル樹脂組成物とガラスチョップとが、十分に含浸なかったため、その評価を「×」とした。その結果を表2に示す。
【0189】
(平滑性(柄材部分の平滑性))
各実施例および各比較例の成形材料を、300×300mm平板金型を用いて加熱圧縮成形して、厚み4mmの平板状の成形品を成形した。成形は、金型温度が、製品面145℃、裏面130℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間420秒の条件で実施した。得られた平板状の成形品の表面に、その表面の上方1.5mから直管蛍光灯2本を投影し、投影像の目視観察により、成形品の表面平滑性を評価した。
【0190】
平滑性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す。
評価基準:
◎:投影像に柄材の「凹み」がほとんどなく、直線性、平行性が高い。
○:投影像に柄材の「凹み」がわずかに認められる。
△:投影像に柄材の「凹み」が認められる。
×:投影像に柄材の大きな「凹み」が認められる。
【0191】
(柄材均一性)
各実施例および各比較例の成形材料を長さ900mm×幅400mm×高さ330mmのミニバスタブ金型を用いて加熱圧縮成形して、厚み4mmのミニバスタブ成形品を成形した。成形は、金型温度が、製品面145℃、裏面130℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間420秒の条件で実施した。得られた成形品の表面に、柄材が均一に流動しているかについて、目視観察で評価した。
【0192】
柄材均一性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す。
評価基準:
◎:ミニバスタブの全面に柄材の流れムラが無く、柄材が均一に流動している。
○:ミニバスタブの上縁部、立ち面にわずかに柄材の流れムラが認められる。
△:ミニバスタブの上縁部、立ち面に柄材の流れムラが認められる。
×:ミニバスタブの上縁部、立ち面に柄材の大きな流れムラが認められる。
【0193】
(光沢(鏡面光沢度))
平滑性測定用に成形した成形品の製品面の鏡面光沢度をJIS Z8741(1997年)に準拠し、入射角60度、受光角60度の条件で測定した。その結果を表2に示す。
【0194】
(曲げ強さ、曲げ弾性率)
平滑性測定用に成形した成形品から、試験片(長さ80mm、幅10mm)を切り出し、JIS K6911(1995年)に準拠し、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。その結果を表2に示す。
【0195】
(アイゾット衝撃試験)
平滑性測定用に成形した成形品から、試験片(長さ65mm、幅10mm)を切り出し、アイゾット衝撃試験をJIS K7062(1992年)に準拠して実施した。試験はフラットワイズ、ノッチなしの条件で実施した。その結果を表2に示す。
【0196】
(耐熱水性)
平滑性測定用に成形した成形品より切り出した150mm角の試験片を、90℃に保った湯浴中に浸漬し、100時間毎に製品面のブリスター(膨れ)を目視観察することにより、ブリスター発生までの時間を測定した。そして、500時間浸漬後、製品面の色調を測定し、浸漬前の色調と比較により色差(ΔE)を算出した。色調の測定には、日本電色株式会社製分光色差計SE 6000を使用した。その結果を表2に示す。
【0197】
(硬化収縮率)
各実施例および各比較例の成形材料を、300mm×300mm平板金板を用いて、加熱圧縮成型して、厚み4mmの平板状の成形品を得た。
【0198】
成形は、金型温度が製品面、裏面とも140℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間420秒の条件で実施した。その後、成形品を金型から脱型し、直ちに鉄板の間に挟んで冷却した。その後、成形品を25℃で24時間放置し、25℃における成形品の4辺の寸法を測定し、上記の平板金型の寸法との比率により収縮率を測定した。その結果を表2に示す。
【0199】
【0200】