IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノダの特許一覧

<>
  • 特許-単板乾燥装置 図1
  • 特許-単板乾燥装置 図2
  • 特許-単板乾燥装置 図3
  • 特許-単板乾燥装置 図4
  • 特許-単板乾燥装置 図5
  • 特許-単板乾燥装置 図6
  • 特許-単板乾燥装置 図7
  • 特許-単板乾燥装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】単板乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/06 20060101AFI20220916BHJP
   F26B 15/00 20060101ALI20220916BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
F26B9/06 H
F26B15/00 B
F26B25/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018056431
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019168167
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】大澤 良典
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007852(JP,A)
【文献】実開昭49-045149(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/06
F26B 15/00
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室の内外を循環する搬送部材を有する搬送手段により単板が乾燥室内を入口から出口に向けて搬送される間に熱風に晒されて乾燥されるように構成された単板乾燥装置において、循環する搬送部材が乾燥室の入口および/または出口から出てくる箇所に搬送部材に水分を付与して、搬送部材に付着した単板由来の異物の発火を防止する水分付与手段が設けられることを特徴とする単板乾燥装置。
【請求項2】
前記水分付与手段が、少なくとも搬送部材が乾燥室の入口から出てくる箇所に設けられることを特徴とする、請求項1記載の単板乾燥装置。
【請求項3】
前記水分付与手段が、搬送部材に向けて水蒸気を噴射することを特徴とする、請求項1または2記載の単板乾燥装置。
【請求項4】
前記水分付与手段が、さらに、水蒸気噴出圧を調節する圧力調節手段を有することを特徴とする、請求項3記載の単板乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原木からロータリーレースなどにより切削された単板を、その後の接着工程や製品品質に適切な含水率に調整するために用いられる単板乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような単板乾燥装置としては、チェーンで駆動されるローラーに挟まれた状態で単板を搬送しながら熱風を当てて乾燥するいわゆるローラードライヤーが広く用いられており、下記特許文献1などに公知である。
【0003】
単板乾燥装置においては、単板の搬送途中で単板の切屑や木粉などの異物が落下し、装置内の各所に残置されるため、これらの異物が熱風に晒されることによって徐々に炭化し、最終的には発火する恐れがある。この問題を解決するため、下記特許文献2には、単板乾燥装置の単板送入口近傍に、これらの異物を除去して貯留室に移送する除塵装置を前置させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5490499号公報
【文献】実用新案登録第2546774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、単板の搬送途中で単板から離脱して装置下方に落下滞留する異物を除去することが提案されているが、切屑や木粉などの異物は単板から落下するだけでなく、ローラーを駆動するチェーンにも付着する。チェーンには潤滑および防錆のために機械油が塗布されるので、単板由来の異物がチェーンの機械油に付着した状態で、チェーンが装置内を循環する。特に針葉樹単板は広葉樹単板に比べてヤニなどの油分を多く含むので、単板由来の異物がより多量にチェーンに付着しやすくなる。
【0006】
単板乾燥装置の内部は低酸素状態であるため、チェーンに異物が付着していても、これが装置内で発火することはないが、チェーンに付着した異物が装置内を搬送される間に熱風に晒されて高温となった状態で装置外に出て空気に露出したときに、この異物が発火することがあり、火災事故につながる危険があった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、単板乾燥装置において単板を搬送するチェーンなどの搬送部材に付着した切屑や木粉などの異物が発火することを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、乾燥室の内外を循環する搬送部材を有する搬送手段により単板が乾燥室内を入口から出口に向けて搬送される間に熱風に晒されて乾燥されるように構成された単板乾燥装置において、循環する搬送部材が乾燥室の入口および/または出口から出てくる箇所に搬送部材に水分を付与して、搬送部材に付着した単板由来の異物の発火を防止する水分付与手段が設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の単板乾燥装置において、水分付与手段が、少なくとも搬送部材が乾燥室の入口から出てくる箇所に設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の単板乾燥装置において、水分付与手段が、搬送部材に向けて水蒸気を噴射することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る本発明は、請求項3記載の単板乾燥装置において、水分付与手段が、さらに、水蒸気噴出圧を調節する圧力調節手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、特に針葉樹単板に多く含まれるヤニなどの油分によって切屑や木粉などの単板由来の異物がチェーンなどの搬送部材に付着しても、水分付与手段によりその発火を防止する。すなわち、乾燥室内で熱風に晒されて高温となった状態の異物が搬送部材と共に乾燥室から出て外気に触れたときに、水分付与手段が搬送部材に水分を付与するので、異物が発火することを防止する。
【0013】
請求項2に係る本発明によれば、乾燥室の入口側に設けた水分付与手段により、乾燥室の入口側で乾燥室から出てくる搬送部材に付着する水分量が大きくなるので、搬送部材に付着した異物が発火することをより効果的に防止することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によれば、水分付与手段が、乾燥室内の温度に近い高温(約100℃)を有する水蒸気を噴射するものとして構成されるので、乾燥室内が温度低下して単板の加熱乾燥に悪影響を及ぼすことなしに、異物の発火を効果的に防止することができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によれば、搬送部材に向けて噴射する水蒸気の圧力が圧力調節手段により最適に調節されるので、搬送部材に付着した異物が発火することを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による単板乾燥装置の全体構成を概略的に示す側面図である。
図2図1中のA部拡大図である。
図3図2の上面図である。
図4図2に示される一段の単板搬送手段および搬送経路を拡大して示す側面図である。
図5図3中のC部拡大図である。
図6図3中のD部拡大図である。
図7図1中のB部拡大図である。
図8図7の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図8を参照して、本発明の一実施形態による単板乾燥装置10の構成について説明する。この単板乾燥装置10は、原木からロータリーレースなどで切削した単板を、乾燥室11の入口12(A部,図2)から乾燥室11内に送入し、乾燥室11内で熱風乾燥した後、出口13(B部,図3)から送出するものである。単板1(図2図4図7)は装置本体11の入口12から出口13に向けて搬送装置14で略水平方向に搬送される。乾燥室11内の湿度は30~40%に維持される。
【0018】
特に図4に示されるように、搬送装置14は、モーターなどの駆動手段(図示せず)により駆動されて乾燥室11の内外を循環するチェーン15と、チェーン15上に所定間隔で配置される下ローラー16と、単板1を挟んで下ローラー16に対向して上方に配置される上ローラー17とを有する。下ローラー16および上ローラー17の両端にはカム(図示せず)が固定されており、下ローラー16のカムが乾燥室11内から出てきたチェーン15図4において上側に示されるチェーン)に噛み合うことにより下ローラー16が同図において時計方向に回転しながら該チェーンを同図左方向に移動させ、さらに、下ローラー16と上ローラー17のカム同士が噛み合うことにより上ローラー17が下ローラー16と同じ速度で反対方向に回転する。単板1は下ローラー16と上ローラー17との間に挟まれて矢印X方向に所定速度で搬送される。
【0019】
下ローラー16は乾燥室11の入口12に至る比較的長い領域に亘って設けられるのに対し、上ローラー17は乾燥室11の入口12に近接した領域(下ローラー16より短い領域)のみに設けられている。このような構成により、単板1は、下ローラー16上に載置されて搬送された後、乾燥室11の入口12の手前から上ローラー17との間に挟まれた状態でさらに搬送されて乾燥室11内に送入され、乾燥室11内を通って出口13から送出される。単板1はローラー16,17で上下から挟まれた状態で乾燥室11内を搬送されるので、乾燥室11内で熱風に晒されても、反りや皺の発生が防止ないし抑制される。
【0020】
なお、乾燥室11内には多段(図示実施形態では6段)の単板搬送経路が設けられて同時に複数枚の単板1を乾燥処理することができるように構成されており、各段の搬送経路について、図4に示すような搬送装置14が設けられている。図2および図7において、各段の搬送装置14において上側に示されるチェーン15は出口13から入口12に向けて移動し、下側に示されるチェーン15は入口12から出口13に向けて移動する。また、各段の搬送装置14による単板1の搬送面が符号Tとして点線で示されている。
【0021】
乾燥室11内において、搬送装置14による多段搬送経路の上方に、蒸気配管(図示せず)を備えたヒーターゾーン19が設けられる。さらに、ヒーターゾーン19には吸気ダクト20、吸気ファン21、熱風ファン22および排気ダクト23が設けられる。乾燥室11内の空気は、ボイラー(図示せず)で生成した高温蒸気が乾燥室11内のエロフィンヒーター(図示せず)を通ることによって加熱され、熱風ファン22で下方に送り込まれて、搬送装置14により搬送される単板1を加熱乾燥する。単板1を乾燥させた湿気を帯びた熱風は、一部は排気ダクト23から外部に排出され、乾燥室11内に残存した熱風は再度加熱されてヒーターゾーン19内を循環する。
【0022】
このようにして、搬送装置14により乾燥室11内を入口12から出口13に向けて搬送される間に単板1が熱風により乾燥され、その後の接着工程や製品品質に適した含水率に調整される。図示しないが、乾燥室11の出口13に近接してクーリングゾーンを設けても良い。
【0023】
以上に説明した基本構成を有する単板乾燥装置10において、チェーン15にあらかじめ塗布された機械油や、特に針葉樹単板の場合に多量に含まれるヤニなどの油分に付着した状態でチェーン15と共に移動する単板由来の異物(切屑や木粉など)が高温に熱せられて発火することを防止するために、乾燥室11を循環するチェーン15が乾燥室11から出てくる箇所(入口12および/または出口13,本実施例では入口12および出口13)に、チェーン15に向けて水分を噴射する水分噴射手段28を設けている(図3および図8参照)。入口12側に設けられる水分噴射手段28と出口13側に設けられる水分噴射手段28は略同様の構成であるので、以下、入口12側に設けられる水分噴射手段28について、特に図6を参照して説明する。
【0024】
この水分噴射手段28は、多段に設けられる単板搬送経路に亘って高さ方向に延長する蒸気パイプ29と、単板搬送経路の各段においてこの蒸気パイプ29に接続して設けられる蒸気噴出ノズル30および調節ハンドル31を有し、蒸気パイプ29から送り込まれる蒸気を、調節ハンドル31によって調節した所望の噴出圧(たとえば0.2MPa)で、蒸気噴出ノズル30からチェーン15の側面に向けて噴出するように構成されている。これにより、チェーン15に異物が付着していてもその水分量を増大させることができるので、発火の危険を未然に防止する。チェーン15に付着した異物の発火を防ぐ目的だけであれば水や霧を噴射することも考えられるが、そうすると乾燥室11から熱が奪われてしまい、温度低下により単板1の加熱乾燥に悪影響を及ぼすので、乾燥室11内の温度に近い高温(約100℃)を有する水蒸気を噴射することが好ましい。
【0025】
図示実施形態の単板乾燥装置10には、チェーン15に付着した単板由来の異物が発火することを防止するために、チェーン15に向けて水分を噴射する上述の水分噴射手段28を設けたことに加えて、乾燥室11を循環するチェーン15が乾燥室11から出てくる箇所(入口12および/または出口13,本実施例では入口12)に、チェーン15に付着した異物を除去する異物除去手段24を備えている。この異物除去手段24によれば、乾燥室11の入口12において乾燥室11から出てきた上側のチェーン15(出口13から入口12へと移動)から異物が除去され、入口12で機械油が塗布された後、下側チェーン15として入口12から再び乾燥室11に入り、出口13に向けて移動する。機械油が塗布される前に異物が除去されるので、機械油を無駄にすることがなく効率的に異物を除去することができる。
【0026】
この実施形態による異物除去手段24は、図4および図5に詳細が示されるように、多段に設けられる単板搬送経路に亘る十分な高さを有するフレーム25に各々エアーシリンダー26を介して固定された複数個のワイヤーブラシ27を有するものとして構成されている。ワイヤーブラシ27は、各段の単板搬送経路に設けられるチェーン15の側面に当接する高さ位置に設けられ、エアーシリンダー26により所定の圧力(0.1~0.3MPa、好ましくは0.2MPa)でチェーン15の側面に当接するので、チェーン15に付着した異物を効率的に除去する。ワイヤーブラシ27によりチェーン15から除去された異物は落下して、ワイヤーブラシ27がチェーン15に当接する位置の下方に配置されたトレー18に捕捉収容され、適宜に自動または手動により排出される。ワイヤーブラシ27がチェーン15に当接する位置が搬送方向において異なる場合は、その位置に応じて複数個のトレー18が設けられる。
【0027】
チェーン15の側面に当接して付着した異物を除去する部材はワイヤーブラシ27に限らず、スクレーパなども使用可能であるが、チェーン15の凹凸表面に付着した異物を効果的に除去することができる点において、ワイヤーブラシ27の使用が好ましい。
【0028】
また、図示実施形態ではワイヤーブラシ27をチェーン15の外側面に当接させて付着した異物を除去するようにしているが、これに代えて、またはこれに加えて、チェーン15の内側面に当接するようにワイヤーブラシ27を設けても良い。
【0029】
図示実施形態の単板乾燥装置10には、チェーン15が乾燥室11の入口12から出てくる箇所に異物除去手段24を設けているが、チェーン15が入口12から出てくる箇所と出口13から出てくる箇所の両方に同様の異物除去手段24を設けても良い。乾燥室11内で熱風に晒された後に余分な異物を付着した状態のチェーン15がそのまま乾燥室11の入口12から出ていくと、外気に触れて発火する危険性が大きいので、これを効果的に防止するために、異物除去手段24を乾燥室11の入口12と出口13の一方のみに設ける場合は、入口12側に設けることが好ましい。
【0030】
以上に実施例を挙げて本発明について詳述したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の記載によって画定される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。図示実施例では、乾燥室の内外を循環するチェーンと共に移動および回転するローラーを設けた搬送装置が用いられているが、必ずしもこれに限定されることなく、乾燥室の内外を循環する搬送部材を有する搬送装置であれば、本発明を適用可能である。たとえば、乾燥室の入口側および出口側の外部に設けたプーリー間を循環する網状の搬送部材に単板を載置して搬送するバンドドライヤー(またはベルトドライヤー)と呼ばれる単板乾燥装置では、この網状の搬送部材に単板由来の異物が付着するので、これに水分を付与して異物の発火を防止するように、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 単板 10 単板乾燥装置 11 乾燥室 12 乾燥室の入口 13 乾燥室の出口 14 搬送装置(搬送手段) 15 チェーン(搬送部材) 16 下ローラー 17 上ローラー 18 トレー 19 ヒーターゾーン 20 吸気ダクト 21 吸気ファン 22 熱風ファン 23 排気ダクト 24 異物除去手段 25 フレーム 26 エアーシリンダー 27 ワイヤーブラシ 28 水分噴射手段(水分付与手段) 29 蒸気パイプ 30 蒸気噴出ノズル 31 調節ハンドル(圧力調節手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8