(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20220916BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220916BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220916BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20220916BHJP
H01B 3/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
H05K1/03 610R
C08L101/00
C08K3/34
C09K5/10 E
H01B3/00 A
(21)【出願番号】P 2018070150
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】大胡 義和
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111807(JP,A)
【文献】特開2007-191519(JP,A)
【文献】特開2016-37538(JP,A)
【文献】特開2017-219862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/34
C08L101/00
C09K5/10
H01B3/00,3/18―3/47
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)放熱性無機粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなる放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)放熱性無機粒子が少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素
と球状の酸化アルミニウムを含有し、かつ、前記(A)放熱性無機粒子の体積占有率が、前記放熱絶縁性樹脂組成物の硬化物全容量に対して60容量%以上であ
り、
前記(A-1)β-炭化ケイ素粒子の前記(A)放熱性無機粒子中の含有比率が20容量%以上であり、
前記(B)硬化性樹脂組成物が、(B-1)熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)放熱性無機粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなる放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)放熱性無機粒子が少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素と球状の酸化アルミニウムを含有し、かつ、前記(A)放熱性無機粒子の体積占有率が、前記放熱絶縁性樹脂組成物の硬化物全容量に対して60容量%以上であり、
前記(A-1)β-炭化ケイ素粒子の前記(A)放熱性無機粒子中の含有比率が20容量%以上60容量%未満であり、
前記(B)硬化性樹脂組成物が、(B-2)光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)放熱性無機粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなる放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)放熱性無機粒子が少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素と球状の酸化アルミニウムを含有し、かつ、前記(A)放熱性無機粒子の体積占有率が、前記放熱絶縁性樹脂組成物の硬化物全容量に対して60容量%以上であり、
前記(A-1)β-炭化ケイ素粒子の前記(A)放熱性無機粒子中の含有比率が20容量%以上60容量%未満であり、
前記(B)硬化性樹脂組成物が、(B-1)熱硬化性樹脂組成物と(B-2)光硬化性樹脂組成物の混合物であることを特徴とする放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B-1)熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、硬化剤および/または硬化触媒を含有することを特徴とする請求項
1または3に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B-2)光硬化性樹脂組成物が、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項
2または3に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1~5のいずれか一項に記載の放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物により、絶縁層および/またはソルダーレジスト層が形成されてなることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板に関し、さらに詳しくは、パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードなどに用いられる樹脂絶縁層に有用な放熱性を持ち、保存安定性にも優れた放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は小型化、高性能化の要求に伴い、搭載される半導体チップの高密度化、高機能化が進み、半導体チップを実装するプリント配線板も小型高密度化が要求されている。その結果、最近では、半導体チップ、プリント配線板における発熱対策が重視され、放熱特性(放熱性)が大きな課題となっている。
【0003】
これに対して、放熱性の良いプリント配線板として、銅やアルミニウムなどの金属板を使用し、この金属板の片面又は両面に、プリプレグや熱硬化性樹脂組成物などの電気絶縁層を介して回路パターンを形成する金属ベース基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、かかる金属ベース基板では、電気絶縁層の熱伝導性が低いために絶縁層を薄くする必要があり、その結果として、電気絶縁層の絶縁耐力が低下するといった問題が生じることがあった。
【0004】
一方、高密度な半導体パッケージにおいては、表面実装が主流となり、最近では、パッケージ基板を用いたBGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)等が登場してきた。このようなパッケージ基板に用いられるソルダーレジスト組成物(例えば、特許文献2参照。)や層間絶縁材料では、低分子量のエポキシ化合物をベースとし、充填材に電気絶縁性や耐薬品性に優れるシリカや沈降性硫酸バリウムを用いることから、充分な放熱性は得られていなかった。また、放熱性、電気絶縁性、耐薬品性が期待されるアルミナを充填材として使用することも検討されたが、アルミナの沈降が激しく、沈降したアルミナが固く凝集するため、保存安定性の面で実用性に乏しいものであった。
【0005】
これに対して、半導体パッケージの上部にヒートシンクを付帯させるという方法も考えられたが、放出される熱の約50%はパッケージ基板に蓄積されるため、依然として、パッケージ基板の放熱性が問題となっていた。
【0006】
また、多数の表面実装型発光ダイオードがパネルのバックライトに用いられている最近のスマートフォンやディスプレイなどでは、発光ダイオードチップから発散される熱の大部分が、実装基材に蓄積するという問題があった。具体的には、例えば、端子部が形成された樹脂絶縁層上に発光ダイオードチップが配置され、その上部にレンズ層を兼ねた封止樹脂で被覆されている表面実装型発光ダイオードでは、前記樹脂絶縁層の放熱性が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-224561号公報
【文献】特開平11-288091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、沈降や凝集を招くことなく放熱性微粒子の高充填や最密充填が可能であり、かつ、保存安定性や印刷性に優れる、硬化物の熱伝導性(放熱性)に優れた放熱絶縁性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
さらに、上記放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物により、絶縁層および/またはソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、前記目的の実現に向け、高硬度であるのみならず、高熱伝導性を有し、高温耐熱性にも優れている炭化ケイ素粒子に着目し、鋭意研究を行った。その結果、α型とβ型という結晶型の炭化ケイ素粒子のなかでもβ型の炭化ケイ素粒子は、比較的微粒子で沈降することなく高充填化や最密充填が可能であり、これを用いた放熱絶縁性樹脂組成物によれば、保存安定性や印刷性に優れ、熱伝導性に優れた硬化物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、(A)放熱性無機粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなる放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)放熱性無機粒子として、少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素粒子を含有し、かつ、前記(A)放熱性無機粒子の体積占有率が、前記放熱絶縁性樹脂組成物の硬化物全容量に対して60容量%以上であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B)硬化性樹脂組成物が、(B-1)熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B-1)熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、硬化剤および/または硬化触媒を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B)硬化性樹脂組成物が、(B-2)光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0015】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B-2)光硬化性樹脂組成物が、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0016】
本発明のプリント配線板は、前記放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物により、絶縁層および/またはソルダーレジスト層が形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
放熱性無機粒子として少なくともβ-炭化ケイ素粒子を配合した本発明の放熱絶縁性樹脂組成物によれば、沈降や凝集を招くことなく放熱性無機粒子の高充填や最密充填が可能であり、かつ、保存安定性や印刷性に優れる、硬化物の熱伝導性(放熱性)に優れた放熱絶縁性樹脂組成物を提供することができる。このような硬化物の熱伝導性(放熱性)に優れ、かつ保存安定性に優れた放熱絶縁性樹脂組成物は、発熱量の多い半導体チップや発光ダイオードを搭載したパッケージ基板や樹脂絶縁層に好適に使用することができ、さらに熱伝導性に優れていることから、パッケージの小型化も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、(A)放熱性無機粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなる放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)放熱性無機粒子として、少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素粒子を含有し、かつ、前記(A)放熱性無機粒子の体積占有率が、前記放熱熱絶縁性樹脂組成物の硬化物全容量に対して60容量%以上であることを特徴とするものである。
【0019】
以下、本発明の放熱絶縁性樹脂組成物の各構成成分について、詳しく説明する。
【0020】
本発明の(A)放熱性無機粒子は、少なくとも(A-1)β-炭化ケイ素粒子を含有する。ただし、(A-1)β-炭化ケイ素中には、影響を及ぼさない範囲で、α-炭化ケイ素が不純物として混ざっていても構わない。
【0021】
炭化ケイ素には、閃亜鉛鉱型構造(3Cと表示される)を持つ(A-1)β-炭化ケイ素と、閃亜鉛鉱型と同形質であるウルツ鉱型の構造の組み合わせで示されるα-炭化ケイ素がある。α-炭化ケイ素は、アチソン法で工業的に製造され、通常、粒子径が粗く、細かいものでも平均粒子径が約5μmであり、粉砕して販売される。一方、同じアチソン法によるものの低温域で合成される(A-1)β-炭化ケイ素は、比較的微粒で製造される。
【0022】
このように、粉砕粉として販売されるα-炭化ケイ素は、破砕形状が鋭利なエッジを保有した不定形であることから、組成物中への高充填や最密充填が困難であり、そのままの状態では、放熱絶縁性樹脂組成物用の放熱性無機粒子としては使用できなかった。
この点、比較的微粒で製造されるβ-炭化ケイ素は、丸みを帯びた形状であり、組成物中への高充填や最密充填が可能であり、これを放熱性無機粒子として用いた本発明の放熱絶縁性樹脂組成物では、この放熱無機粒子の沈降が生じにくく、印刷性を悪化させることなく、熱伝導率の向上を図ることができる。
【0023】
(A-1)β-炭化ケイ素粒子の市販品としては、β-SiC 800(スーペリアグラファイト社製、平均粒子径7.8μm)、β-SiC 1200(スーペリアグラファイト社製、平均粒子径6.0μm)、β-SiC 1500(スーペリアグラファイト社製、平均粒子径1.3μm)、β-SiC 2500(スーペリアグラファイト社製、平均粒子径0.6μm)等が挙げられる。
【0024】
(A-1)β-炭化ケイ素粒子は略球状が好ましく、未粉砕の状態で略球状を有することから、粉砕することなく使用することが好ましい。
【0025】
本発明において、(A-1)β-炭化ケイ素粒子と併用して用いることができる放熱性無機粒子として、遠赤外線を放射するセラミックス粒子(遠赤外セラミックス粒子ともいう)が挙げられる。例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ジルコン(とはのうち特にZrO2・SiO2)、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化珪素(Si3N4)、酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)などがある。
なお、本明細書において、遠赤外線とは、一般的な概念である波長4~1000μmの電磁波を示す。また、遠赤外線を放射するセラミックス粒子とは、例えば、特開2003-136618号公報に記載してあるような、理想黒体に対して、好ましくは80%以上の高い遠赤外線放射率を持つセラミック粒子である。
【0026】
これらの中でも酸化アルミニウムは、化学的にも安定で、絶縁性にも優れており好ましい。特に、球状の酸化アルミニウムを用いることで高充填した際の粘度上昇を和らげることができる。酸化アルミニウム粒子の市販品としては、DAW-05(電気化学工業(株)製、平均粒子径5μm)、DAW-07(電気化学工業(株)製、平均粒子径8μm)、DAW-10(電気化学工業(株)製、平均粒子径10μm)、AS-40(昭和電工(株)製、平均粒子径12μm)、AS-50(昭和電工(株)製、平均粒子径9μm)、ASFP-20(昭和電工(株)製、平均粒子径0.3μm)等が挙げられる。
【0027】
(A-1)β-炭化ケイ素粒子の(A)放熱性無機粒子中の含有比率は10容量%以上で効果が明確になり、20容量%以上が望ましい。また、(A-1)β-炭化ケイ素粒子を含む放熱無機粒子は紫外線を通さないため、(B-2)光硬化性樹脂組成物または(B-3)光硬化性熱硬化性樹脂組成物と共に用いる場合には60容量%未満が望ましい。
【0028】
(A-1)β-炭化ケイ素粒子を少なくとも含む本発明の(A)放熱性無機粒子は、その平均粒子径が0.01~30μmであることが好ましく、より好ましくは0.01~20μmである。平均粒子径が0.01μm以上であれば、組成物の粘度が高くなりすぎることはなく、分散が容易であり、被塗布物への塗布も容易となる。一方、平均粒子径が30μm以下であれば、塗膜からの頭出しが発生しにくくなることと、沈降速度が十分遅くなることから保存安定性が改善する。
また、本発明の(A)放熱性無機粒子は、最密充填となるような粒度分布を持つ2種類以上の平均粒子径のものを配合することにより、更に高充填にすることができ、保存安定性、熱伝導率の両側面から好ましい。
【0029】
ここで、本明細書において、(A)放熱性無機粒子の平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。
【0030】
なお、本発明の(A)放熱性無機粒子は、シランカップリング剤などのカップリング剤で表面処理することが硬化物の低吸水性、耐熱衝撃性および耐クラック性を向上させる点で好ましい。このカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。なかでもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。
これらのカップリング剤は、表面未処理の(A)放熱性無機粒子とカップリング剤とを別々に配合して、組成物中で(A)放熱性無機粒子が表面処理されてもよいが、予め(A)放熱性無機粒子の表面にカップリング剤を吸着あるいは反応により固定化することが好ましい。この場合、表面処理に用いるカップリング剤量および表面処理方法については特に制限されない。
【0031】
(A-1)β-炭化ケイ素粒子を含む本発明の(A)放熱性無機粒子の配合量は、放熱絶縁性樹脂組成物の硬化物の全容量に対して60容量%以上である。(A)放熱性無機粒子の配合量が、硬化物の全容量に対して60容量%以上であれば、放熱材料としての十分な熱伝導率を得ることができる。
【0032】
本発明に用いられる(B)硬化性樹脂組成物は、(B-1)熱硬化性樹脂組成物、または(B-2)光硬化性樹脂組成物であり、これらの混合物であってもよい。
【0033】
(B-1)熱硬化性樹脂組成物としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す組成物、例えばエポキシ樹脂系組成物、オキセタン樹脂系組成物、メラミン樹脂系組成物、シリコーン樹脂系組成物などが挙げられ、特に、本発明においては、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、硬化剤および/または硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物を、好ましく用いることができる。
【0034】
上記エポキシ化合物としては、一分子中に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。さらに、硬化塗膜特性を低下させない範囲で、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物を添加しても良い。また、これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
また、前記オキセタン化合物は、下記一般式(I)のように、
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
オキセタン環を含有する化合物であり、具体的な化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製の商品名 OXT-101)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成(株)製の商品名 OXT-211)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT-212)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT-121)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT-221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。
【0036】
上記オキセタン化合物は、前記エポキシ化合物と併用または単独で使用することができるが、エポキシ化合物に比べて反応性が悪い為、硬化の温度を高くする等の注意が必要である。
【0037】
次に、硬化剤として使用されるものとしては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、およびポリカルボン酸およびその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
【0038】
多官能フェノール化合物としては、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物とも付加反応する。
【0039】
ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル(商品群名)、アーコケミカル社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理科社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0040】
前記硬化触媒としては、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、多官能フェノール化合物および/またはポリカルボン酸及びその酸無水物の反応の硬化触媒となる化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、およびホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ-A、2E4MZ-A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ-OK、2PZ-OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業(株)製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミンジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(商品名DBU、サンアプロ(株)製)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素(株)製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
【0042】
これら硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物の合計100質量部当り0.1質量部以上、10質量部以下が適当である。
【0043】
(B-2)光硬化性樹脂組成物としては、活性エネルギー線照射により硬化する電気絶縁性の組成物であればよいが、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤を含む組成物が耐熱性、電気絶縁性に優れており好ましい。この一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーや光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
【0044】
前記光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0045】
前記光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは、塗膜の特性上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエ-テル、ベンゾインエチルエ-テル、ベンゾインイソプロピルエ-テル、ベンゾインイソブチルエ-テル、ベンジルメチルケタ-ルなどのベンゾイン化合物とそのアルキルエ-テル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;メチルアンソラキノン、2-エチルアンソラキノン、2-タ-シャリ-ブチルアンソラキノン、1-クロロアンソラキノン、2-アミルアンソラキノンなどのアンソラキノン類;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタ-ル、ベンジルジメチルケタ-ルなどのケタ-ル類;ベンゾフェノン、4,4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、さらにトリエタノ-ルアミン、メチルジエタノ-ルアミン等の第3級アミン;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光開始助剤等と組み合わせて使用することができる。
【0047】
(B)硬化性樹脂組成物として、アルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物を用いる場合は、上記(B-2)光硬化性樹脂組成物の成分として、上記エチレン性不飽和結合を有する化合物にカルボキシル基を導入するか、もしくは上記エチレン性不飽和結合を有する化合物に加えてさらに、エチレン性不飽和結合を有しないカルボキシル基含有樹脂を用いることができる。
【0048】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、必要に応じて高充填化を容易にするために、湿潤・分散剤を添加することができる。このような湿潤・分散剤としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。
【0049】
市販されている湿潤・分散剤で特に好適に用いることができるものとしては、Disperbyk(登録商標)-101、-103、-110、-111、-160、-171、-174、-190、-300、Bykumen(登録商標)、BYK-P105、-P104、-P104S、-240(いずれもビック・ケミー・ジャパン社製)、EFKA-ポリマー150、EFKA-44、-63、-64、-65、-66、-71、-764、-766、N(いずれもエフカ社製)が挙げられる。
【0050】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、組成物の調整や粘度調整のために、有機溶剤を配合してもよい。前記有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、ハイドロタルサイトなどの公知慣例の体質顔料、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0052】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。
【0053】
前記放熱絶縁性樹脂組成物が、(B-1)熱硬化性樹脂組成物の場合、塗布後、約140℃~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【0054】
また、前記絶縁性硬化性樹脂組成物が、(B-2)光硬化性樹脂組成物の場合、塗布後、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等で紫外線照射し、硬化塗膜を得ることができる。
【0055】
また、前記絶縁性硬化性樹脂組成物が、(B-1)熱硬化性樹脂組成物と(B-2)光硬化性樹脂組成物の混合物であるアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物の場合、塗布後、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線でパターン露光し、現像し、約140℃~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、パターン状の硬化塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0056】
本発明の実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」および「質量%」を表わす。
【0057】
(光重合性オリゴマー(b-2)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットル容セパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル900g、およびt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製パーブチルO)21.4gを仕込み、90℃に昇温後、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、及び一般式(I)で示されるラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)109.8gをビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製パーロイルTCP)21.4gと共にジエチレングリコールジメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに6時間熟成することによってカルボキシル基含有共重合樹脂溶液を得た。反応は、窒素雰囲気下で行った。
次に上記カルボキシル基含有共重合樹脂溶液に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学(株)製サイクロマーA200)363.9g、ジメチルベンジルアミン3.6g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分酸価=108.9mgKOH/g、重量平均分子量=25,000(スチレン換算)のカルボキシル基含有共重合樹脂を、53.8%(不揮発分)含む溶液を得た。
【0058】
(実施例1~4および比較例1~5)
下記表1に示す実施例1~4及び比較例1~5の配合成分を、3本ロールミルで混練し、放熱絶縁性樹脂組成物を得た。
【0059】
【表1】
注1.「炭化ケイ素の体積占有率(%)」は、炭化ケイ素と溶剤以外の体積V
0と、溶剤以外の成分の体積V
1から、以下のように求めた。
「炭化ケイ素の体積占有率(%)」=(V
1-V
0)/V
1×100
注2.同様に、「酸化アルミニウムの体積占有率(%)」も、酸化アルミニウムと溶剤以外の体積V
0と、溶剤以外の成分の体積V
1から、以下のように求めた。
「酸化アルミニウムの体積占有率(%)」=(V
1-V
0)/V
1×100
*1:信濃電気製錬(株)製平均粒子径約9.5μmのα-炭化ケイ素
*2:信濃電気製錬(株)製平均粒子径約1.2μmのα-炭化ケイ素
*3:スーペリアグラファイト社製平均粒径約7.8μmのβ-炭化ケイ素
*4:スーペリアグラファイト社製平均粒径約1.3μmのβ-炭化ケイ素
*5:電気化学工業(株)製の平均粒子径約8μmの球状酸化アルミニウム
*6:電気化学工業(株)製の平均粒子径約0.3μmの球状酸化アルミニウム
*7:DIC(株)製フェノールノボラック型エポキシ樹脂
*8:三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂
*9:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン
*10:上記で合成した光重合性オリゴマー(b-2)
*11:トリメチロールプロパントリアクリレート
*12:BASF社製の光重合開始剤
*13:ビック・ケミー・ジャパン(株)製の湿潤剤
*14:信越化学工業(株)製シリコーン系消泡剤
*15:ウイルバー・エリス(株)製有機ベントナイト
【0060】
得られた硬化性樹脂組成物について、以下の評価方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0061】
(保存安定性)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を、ポリエチレン製の密封黒色容器に入れて5℃にて保存した。1日後、2日後、7日後、30日後、90日後の沈降状態を評価した。
また、実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を、ポリエチレン製の密封黒色容器に入れて20℃の暗所にて保存した。1日後、2日後、7日後、30日後、90日後の沈降状態を評価した。
◎:沈降なし。
○:若干沈降しているが凝集はなく、攪拌することにより使用に問題なし。
×:沈降し凝集している。攪拌してもダマとなり、使用不能である。
【0062】
(耐溶剤性)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を、回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射した後、150℃60分間熱硬化させた。得られた基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について評価した。
○:剥がれや変色がない。
×:剥がれや変色がある。
【0063】
(耐熱性)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物と実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を用いて、耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板にロジン系フラックスを塗布して、260℃のはんだ槽で10秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。
○:剥がれがない。
×:剥がれがある。
【0064】
(鉛筆硬度)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物と実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を用いて、耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板に、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押しつけて塗膜が剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
【0065】
(密着性(碁盤目付着性))
実施例1、2及び比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃60分間硬化させた。
また、実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射した後、150℃60分間熱硬化させた。
得られた基板をJISK5400に準拠して、各サンプルの皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、碁盤目に剥がれが生じたかを調べた。評価基準は以下のとおりである。
○:碁盤目に剥がれが生じなかった。
×:碁盤目に剥がれが生じた。
【0066】
(絶縁抵抗値)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物をIPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。また、実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物をIPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射して硬化させた。得られた基板の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定した。
【0067】
(熱伝導率)
実施例1、2および比較例1、2の、熱硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を圧延銅箔上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約50μmとなるように印刷し、150℃60分間硬化させた。また、実施例3、4および比較例3、4、5の、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を含有する放熱絶縁性樹脂組成物を圧延銅箔上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約50μmとなるように印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射した後、150℃60分間熱硬化させた。
その後、圧延銅箔を剥がして得られたフィルム状硬化物を、京都電子工業株式会社製QTM500を用いて熱伝導率の測定を行い、n=3の平均値を求めた。
【0068】
【0069】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の放熱絶縁性樹脂組成物によれば、熱硬化性、光硬化性のいずれの樹脂組成物を含有する場合においても、保存安定性、熱伝導性に優れ、かつ、プリント配線板用の耐熱絶縁材料として十分な特性を有する放熱絶縁性樹脂組成物を得ることができた。