(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】すべり抵抗係数測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/02 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
G01N19/02 B
(21)【出願番号】P 2018087968
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591130607
【氏名又は名称】日邦産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 晋二
(72)【発明者】
【氏名】石 川 昇
(72)【発明者】
【氏名】安 部 裕 也
(72)【発明者】
【氏名】安 部 浩 介
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172552(JP,A)
【文献】米国特許第04813266(US,A)
【文献】特開2014-081252(JP,A)
【文献】特開2003-232721(JP,A)
【文献】特開2010-204077(JP,A)
【文献】特開2003-083875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用円板
(17)と、測定用円板
(17)に取り付けられた路面すべり抵抗測定用ゴム付き片
(30、50)と、速度測定装置
(7)と、
タイマー(T)を有する制御装置
(CU)を備え、
前記制御装置
(CU)は、
測定速度(V)が設定速度(V1)に到達した後、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)が路面に接触した場合に、設定速度(V1)から低下速度(V1-ΔV1)に減速した際の減速値(ΔV1)を、測定速度(V)が設定速度(V1)から低下速度(V1-ΔV1)に到達するまで低下(減速)するのに要した時間(ΔT1)で除して、設定速度(V1)における減速度(β1)を演算する(β1=ΔV1/ΔT1)機能と、
すべての設定速度(V1、V2、V3・・・)について減速度(β)を決定して、すべての設定速度(V1、V2、V3・・・)において決定した減速度(β1、β2、β3・・・)を平均して平均減速度(βm)を決定する機能と、
平均減速度(βm)を重力加速度(g)で除算して測定対象路面のすべり抵抗係数(μ)を演算する機能を有していることを特徴とするすべり抵抗係数測定装置。
【請求項2】
路面摩擦測定用ゴム付き片(30)を有しており、当該路面摩擦測定用ゴム付き片(30)を取り付ける取付用ボルト(31)を備え、
路面摩擦測定用ゴム付き片(30)には取付用ボルト挿入用開口(30A)が形成されており、取付用ボルト挿入用開口(30A)は径寸法の異なる円(30AA、30AB)を重ね合わせた形状であり、大径の円(30AA)の直径は取付用ボルト(31)のボルトヘッド直径よりも大きく、小径の円(30AB)の直径は取付用ボルト(31)のボルトヘッド直径よりも小さいがボルト軸部の直径よりは大きく設定されており、
取付用ボルト(31)の緩み止め用のスプリングワッシャ(32)と取付用ボルト(31)のボルトヘッドとの間にゴム付き片落下防止用ワッシャ(33)が介装されており、ゴム付き片落下防止用ワッシャ(33)は円環状に形成されているが切欠き(33A)が形成され且つ半径方向外方に突出した複数の突起(33B)が形成されており、前記切欠き(33)の開口寸法(L1)は取付用ボルト(31)の軸部外径よりも小さく設定され、当該突起先端(33B)間の最大距離(L2)は路面摩擦測定用ゴム付き片(30)の取付用ボルト挿入用開口(30A)の大径よりも大きく設定されている請求項1のすべり抵抗係数測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面のすべり抵抗係数を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面すべり抵抗測定用ゴム付き片が路面から受けるトルクによる相対捻じれ角を測定して、路面のすべり抵抗係数を計測するすべり抵抗係数測定装置が本出願人により提案されている(特許文献1参照)。係るすべり抵抗係数測定装置は、それ以前に用いられていた振子式測定装置とは異なり、高速度から低速度まで広い速度範囲に亘ってすべり抵抗係数を正確に計測することが可能であり、しかも測定現場へ簡便に持ち運ぶことが出来るという優れた計測装置である。
しかし、このすべり抵抗係数測定装置は、2枚の円板、当該2枚の円板を連結するコイルばねおよびポテンショメータ、ポテンショメータへ電圧を供給しポテンショメータの出力を伝達するための複数チャネリングが必須であるため、構造が複雑であり、製造、組み立てや点検に多大な労力が必要となるという問題がある。そして、部品の交換の頻度が多くなってしまうという問題も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、複雑な構造を必要とすることなく、路面のすべり抵抗係数を正確に且つ容易に計測することが出来るすべり抵抗係数測定装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のすべり抵抗係数測定装置(100)は、測定用円板(17)と、測定用円板(17)に取り付けられた路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)と、速度測定装置(7:エンコーダー)と、タイマー(T)を有する制御装置(コントロールユニットCU:制御用回路基板)を備え、
前記制御装置(CU)は、測定速度(V)が設定速度(V1)に到達した後、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)が路面に接触した場合に、設定速度(V1)から低下速度(V1-ΔV1)に減速した際の減速値(ΔV1)を、測定速度(V)が設定速度(V1)から低下速度(V1-ΔV1)に到達するまで低下(減速)するのに要した時間(ΔT1)で除して、設定速度(V1)における減速度(β1)を演算する(β1=ΔV1/ΔT1)機能と、
測定速度(V)の全範囲で(すなわち、すべての設定速度V1、V2、V3・・・について)減速度(β)を決定して、すべての設定速度(V1、V2、V3・・・)において決定した減速度(β1、β2、β3・・・)を平均して平均減速度(βm)を決定する(βm=(β1+β2+β3・・・)/N(N:求めた減速度の数))機能と、
平均減速度(βm)を重力加速度(g)で除算して測定対象路面のすべり抵抗係数(μ)を演算する機能を有していることを特徴としている。
【0006】
本発明において、測定用円板(17)の回転駆動源(8:駆動用モーター)と、測定用円板(17)を下降し上昇する機能を有する昇降装置(9:測定部昇降機構)を備え、
前記制御装置(CU)は、前記速度測定装置(7:エンコーダー)で測定された測定用円板(17)の路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)を取り付けた箇所の周速度(V)から減速度(β)を演算する機能と、演算された減速度(β)を重力加速度(g)で除算してすべり抵抗係数(μ)を演算する機能を有しているのが好ましい。
また、本発明のすべり抵抗係数測定装置(100)は、
路面摩擦測定用ゴム付き片(30)を有しており、当該路面摩擦測定用ゴム付き片(30)を取り付ける取付用ボルト(31)を備え、
路面摩擦測定用ゴム付き片(30)には取付用ボルト挿入用開口(30A)が形成されており、取付用ボルト挿入用開口(30A)は径寸法の異なる円(30AA、30AB)を重ね合わせた形状であり、大径の円(30AA)の直径は取付用ボルト(31)のボルトヘッド直径よりも大きく、小径の円(30AB)の直径は取付用ボルト(31)のボルトヘッド直径よりも小さいがボルト軸部の直径よりは大きく設定されており、
取付用ボルト(31)の緩み止め用のスプリングワッシャ(32)と取付用ボルト(31)のボルトヘッドとの間にゴム付き片落下防止用ワッシャ(33)が介装されており、ゴム付き片落下防止用ワッシャ(33)は円環状に形成されているが切欠き(33A)が形成され且つ半径方向外方に突出した複数の突起(33B)が形成されており、前記切欠き(33)の開口寸法(L1)は取付用ボルト(31)の軸部外径よりも小さく設定され、当該突起先端(33B)間の最大距離(L2)は路面摩擦測定用ゴム付き片(30)の取付用ボルト挿入用開口(30A)の大径よりも大きく設定されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
上述の構成を具備する本発明のすべり抵抗係数測定装置(100)によれば、測定用円板(17)と路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)のみですべり抵抗係数(μ)を測定することが出来るので、従来のすべり抵抗係数測定装置とは異なり、2枚の円板、当該2枚の円板を連結するコイルばねおよびポテンショメータ、ポテンショメータへ電圧を供給しポテンショメータの出力を伝達するための複数チャネリングを必要としない。
そのため、構造が簡略化され、製造、組み立てや点検に必要な労力が大幅に軽減される。そして、部品の交換の頻度も減少するので、メンテナンスに必要な労力が遥かに少なくなる。
【0008】
ここで、測定用円板(17)に取り付けられた路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)が路面に接触した際におけるすべり抵抗(Fs)は、 Fs=W・μ (Wは路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の重量:μはすべり抵抗係数)。
一方、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)が路面に接触したことにより路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の速度(円板の周速度)が減速する力(抵抗力:Ff)は、 Ff=m・β (mは路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の質量:βは減速度)。
すべり抵抗Fsと抵抗力Ffが等しく(Fs=Ff)、 W=m・g (gは重力加速度)であるので、
m・β=W・μ=m・g・μ
∴μ=β/g
そのため、本発明では、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片(30、50)の速度(測定用円板の路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を取り付けた箇所における周速)が減少する割合(減速度β)を計測することにより、すべり抵抗係数(μ)を求めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置の概要を示す説明図である。
【
図2】実施形態におけるコントロールユニットCUの機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置を用いてすべり抵抗係数を測定する手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態で用いられる路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の説明図である。
【
図7】
図6で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を取付用ボルトに係止した状態を示す設明図である。
【
図8】
図7の状態から路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を移動して、取付用ボルトを計測装置本体に螺合した状態を示す説明図である。
【
図9】実施形態で用いられるゴム付き片落下防止用ワッシャの平面図である。
【
図10】
図9のゴム付き片落下防止用ワッシャの取付位置を示す説明図である。
【
図11】実施形態における別の態様で用いられる路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の説明図である。
【
図12】
図11で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を取付用ボルトに係止した状態を示す設明図である。
【
図13】
図12の状態から路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を移動して、取付用ボルトを計測装置本体に螺合した状態を示す説明図である。
【
図14】実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1~
図4を参照して、本発明が適用されるすべり抵抗係数測定装置100について説明する。
図1において、全体を符号100で示す実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置は、すべり抵抗測定部1と、回転駆動源である駆動部2を有している。すべり抵抗測定部1は、駆動部2の駆動用モーター8により軸5、回転体である測定用円板17を回転する。
明確には図示されないが、軸5は本体部15に軸支され、軸5の下端部には測定用円板17が固定されている。
ここで、ロータリーエンコーダー7(速度測定装置)はすべり抵抗係数測定装置100による測定速度V(測定用円板17の周速度)を計測するために設けられている。
【0011】
図1において、ダンパー6が本体15に固定されており、測定用円板17によるねじり振動の制動器として機能する。
抵抗測定部1の測定用円板17の下面には路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50(いわゆる「スライダー」)が同一円周上の例えば3箇所(明示せず)に取り付けられている。
また、昇降装置9(測定部昇降機構)は、路面のすべり抵抗の測定に際して、測定用円板17を下降し上昇する機能を有している。
すべり抵抗係数測定装置100はコントロールユニットCU(制御装置、制御用回路基板)を備えている。
【0012】
図1では、すべり抵抗測定用ゴム30B、50Bが路面26に接していない状態を示しているが、路面のすべり抵抗の測定に際して、測定用円板17を下降して、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50のすべり抵抗測定用ゴム30B、50Bが路面26に接すると、すべり抵抗測定用ゴム30B、50Bと路面26間のすべり抵抗により、すべり抵抗測定用ゴム30B、50Bが一体的に取り付けられた測定用円板17の回転には停止方向の加速度である減速度βが作用する。
図2~
図4を参照して説明する様に、すべり抵抗係数測定装置100による測定速度Vに応じた路面26のすべり抵抗係数μは測定用円板17の減速度βに比例する(比例定数1/g)ので、測定用円板17の減速度βを測定すればすべり抵抗係数μを求めることが出来る。
測定用円板17の減速度βの決定、すべり抵抗係数μの演算については、コントロールユニットCU(制御用回路基板)で行うことが出来る。
【0013】
図2~
図4を参照して、図示の実施形態におけるすべり抵抗係数μの計測について説明する。
図2において、すべり抵抗係数測定装置100のコントロールユニットCU(
図2の破線で囲まれた部分)は、駆動モーター制御ブロックB1、速度決定ブロックB2、比較ブロックB3、測定部昇降機構制御ブロックB4、減速度決定ブロックB5、すべり抵抗係数演算ブロックB6、記憶ブロックB7、タイマーTを有している。
以下に各機能ブロックの機能を説明する。
【0014】
駆動モーター制御ブロックB1は、計測開始スイッチ11(計測者が操作、或いは、コントロールユニットCUであるパソコンからの指令)から信号ラインSL1を介してON/OFF信号を取得して、測定用円板17(
図1参照)を回転駆動するモーター8を駆動、或いは停止する機能を有する。ここで、計測開始スイッチ11からON信号を取得した場合は、駆動モーター8を駆動し、OFF信号を取得した場合は、駆動モーター8を停止する。
駆動モーター8を駆動、停止するに際して、駆動モーター制御ブロックB1は、信号ラインSL2を介して、駆動モーター8に制御信号(駆動信号或いは停止信号)を送信する機能を有する。
また、駆動モーター制御ブロックB1は、比較ブロックB3から、信号ラインSL3を介して、測定速度V(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50を取り付けた箇所の周速度)が測定開始速度V0に達した旨の情報信号を取得した場合に、信号ラインSL2を介して、駆動モーター8を停止する制御信号を駆動モーター8に送信する機能を有している。
【0015】
速度決定ブロックB2は、モーター8が作動し測定用円板17の回転駆動を開始後、信号ラインSL4を介してロータリーエンコーダー7から刻々の回転数の変化に関するデジタル信号を取得し、すべり抵抗係数測定装置100の測定速度V(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50を取り付けた箇所の周速度)を決定する機能を有する。当該測定速度Vの決定に際しては、測定用円板17における路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50の取り付け位置等の諸元が参酌される。
速度決定ブロックB2で決定された測定速度Vは、信号ラインSL5を介して比較ブロックB3に送信される。
【0016】
すべり抵抗係数μの測定に際して、計測開始すると駆動モーター8により測定用円板17が回転する。その後、測定速度Vが上昇し、予め設定した測定開始速度V0(記憶ブロックB7に保存)に到達した時に、駆動モーター8を停止すると共に、昇降装置9を作動し、測定用円板17の路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50を路面26(
図1:測定対象路面)に向けて下降し、路面26に接触させることにより、すべり抵抗係数μの測定が行われる。
すべり抵抗係数μの測定においては、予め設定した複数の設定速度V(V1、V2、V3)における減速度β(β1、β2、β3、・・・)を測定し、当該複数の減速度βの測定結果を平均して平均減速度βmを求める。そして後述する様に、当該平均減速度βmを重力加速度gで除算することにより、対象の測定地点におけるすべり抵抗係数μを求める。
ここで、設定速度V1、V2、V3・・・は記憶ブロックB7に保存されており、例えば等間隔の速度差に基づいて設定されている。なお、設定速度V1、V2、V3・・・及びその設定値については、測定対象現場の路面状態、環境、その他により適宜決定される。
【0017】
比較ブロックB3は、速度決定ブロックB2から信号ラインSL5を介して瞬間毎の測定速度Vを取得すると共に、信号ラインSL6を介して記憶ブロックB7に保存される測定開始速度V0を取得する。そして、比較ブロックB3は、速度決定ブロックB2から取得した測定速度Vを測定開始速度V0と比較して、その結果、測定速度Vが測定開始速度V0に到達した場合には、信号ラインSL3を介して、駆動モーター制御ブロックB1に、測定速度Vが測定開始速度V0に到達した旨の情報信号を送信する機能を有している。
それと共に、比較ブロックB3は、測定速度Vが測定開始速度V0に達した旨の情報信号を、信号ラインSL7を介して、測定部昇降機構制御ブロックB4に送信する機能を有している。
【0018】
また比較ブロックB3は、測定速度Vが測定開始速度V0に達した後、信号ラインSL6を介して速度決定ブロックB2から取得する刻々の測定速度Vを、記憶ブロックB7に記録された複数の設定速度V1、V2、V3・・・と比較する機能を有する。
測定速度Vと設定速度V1、V2、V3・・・を比較した結果、測定速度Vが設定速度V1、V2、V3・・・に到達した場合には、その度毎に、信号ラインSL8を介して、減速度決定ブロックB5に測定速度Vが設定速度V1、V2、V3・・・に到達した旨の情報信号を送信する。
【0019】
さらに比較ブロックB3は、複数の設定速度V1、V2、V3・・・が、予め決定された所定速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3・・・だけ減速した低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・と、測定速度Vを比較する機能を有している。この機能は、設定速度V1、V2、V3・・・のそれぞれにおける減速度βを求めるため、必要とされる。低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・と、測定速度Vを比較する際に、比較ブロックB3は、信号ラインSL6を介して、所定速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3・・・を記憶ブロックB7から取得する。図示はされていないが、比較ブロックB3は、V-ΔV(設定速度V1、V2、V3・・・から所定速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3・・・だけ減速した速度)を演算する機能を備えている。
なお、所定速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3・・・に代えて、低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・があらかじめ設定されていて、比較ブロックB3は記憶ブロックB7から取得する様に構成することも出来る。
低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・と測定速度Vを比較した結果、測定速度Vが低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・に到達(減速)した場合に、その度毎に、信号ラインSL8を介して、減速度決定ブロックB5に測定速度Vが低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・まで減速した旨の情報信号を送信する。
なお、所定速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3・・・、或いは、低下速度V1-ΔV1、V2-ΔV2、V3-ΔV3・・・も、測定対象現場の路面状態、環境、その他により適宜決定される。所定速度差については、ΔV1=ΔV2=ΔV3=・・・と設定することも出来る。
【0020】
測定部昇降機構制御ブロックB4は、比較ブロックB3から信号ラインSL7を介して、測定速度Vが測定開始速度V0に達した旨の情報信号を取得した場合に、測定用円板17を下降させる旨の制御信号を、信号ラインSL9を介して昇降装置9に送信して、昇降装置9を作動する機能を有している。
測定用円板17を下降させる旨の制御信号を受けて昇降装置9が作動し、測定用円板17が下降すると、測定用円板17は路面26(
図1:測定対象路面)に向かって下降し、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50が路面26に接触して、路面すべり抵抗測定が可能になる。
【0021】
減速度決定ブロックB5は、信号ラインSL8を介して、比較ブロックB3から測定速度Vが設定速度V1に到達した旨の情報信号と、低下速度V1-ΔV1に到達した旨の情報信号と、設定速度値V1と、低下速度値V1-ΔV1を取得する。それと共に、タイマーTから信号ラインSL10を介して、測定速度Vが設定速度V1に到達した時刻に関する情報(時刻情報)と、測定速度Vが低下速度V1-ΔV1に到達した時刻に関する情報(時刻情報)を取得する。
また、減速度決定ブロックB5は、設定速度V1から低下速度V1-ΔV1に減速した際の減速値ΔV1(V1-(V1-ΔV1))を、測定速度Vが設定速度V1に到達してから低下速度V1-ΔV1に到達するまで低下(減速)するのに要した時間ΔT1を演算する機能を有している。そして減速度決定ブロックB5は、所定速度差ΔV1を時間ΔTで除して、設定速度V1における減速度β1を β1=ΔV1/ΔT1 として演算する機能を有している。
【0022】
減速度決定ブロックB5は、設定速度V2、V3・・・についても、上述したのと同様に、設定速度V2、V3、・・・における減速度β2、β3・・・を求める機能を有している。ここで、設定速度V2における減速度β2は β2=ΔV2/ΔT2 であり、設定速度V3における減速度β3は β3=ΔV3/ΔT3 である。
さらに、減速度決定ブロックB5は、求めた複数の減速度β1、β2、β3・・・を、下式で示す様に平均して、平均減速度βmを決定する機能を有している。
βm=(β1+β2+β3、・・・)/N(N:求めた減速度の数)
減速度決定ブロックB5で決定した減速度(減速度β1、β2、β3・・・、或いは、平均減速度βm)の情報信号は、信号ラインSL11を介して、すべり抵抗係数演算ブロックB6に送信される。
【0023】
すべり抵抗係数演算ブロックB6は、信号ラインSL11を介して、減速度決定ブロックB5から減速度(β1、β2、β3・・・、或いは、平均減速度βm)の情報を取得すると共に、信号ラインSL12を介して、記憶ブロックB7から測定現場における重力加速度gを取得する。そして、すべり抵抗係数演算ブロックB6は、減速度決定ブロックB5から取得した減速度(β1、β2、β3・・・、或いは、平均減速度βm)を重力加速度gで除算して、測定対象路面のすべり抵抗係数μを演算する機能を有している。
ここで、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50が路面に接触した際におけるすべり抵抗Fsは、 Fs=W・μ (Wは路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の重量:μはすべり抵抗係数)。一方、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50が路面に接触したことにより路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の速度(円板の周速度)が減速する力(抵抗力)Ffは、 Ff=m・β (mは路面すべり抵抗測定用ゴム付き片の質量:βは減速度)。
すべり抵抗Fsと抵抗力Ffが等しいので(Fs=Ff)、
W=m・g (gは重力加速度)
m・β=W・μ=m・g・μ
∴μ=β/g
そのため、上述した様に、減速度β(例えば、平均減速度βm)を重力加速度gで除算すれば、測定対象路面のすべり抵抗係数μが求まる。ここで、減速度β1を重力加速度gで除算すれば、速度V1におけるすべり抵抗係数μが求まり、減速度β2を重力加速度gで除算すれば、速度V2におけるすべり抵抗係数μが求まる。
すべり抵抗係数演算ブロックB6で演算したすべり抵抗係数μは、信号ラインSL13を介して、表示装置12に送信される。それと共に、信号ラインSL14を介して、記憶ブロックB7に送信され、記憶される。
【0024】
記憶ブロックB7には、予め決定された測定開始速度V0、複数の設定速度V(V1、V2、V3、・・・)、所定速度差ΔV(ΔV1、ΔV2、ΔV3、・・・)、各地域における重力加速度g、対象路面のすべり抵抗係数μ、その他が保存される。
記憶ブロックB7に保存されたデータは、上述した様に、必要に応じて比較ブロックB3、すべり抵抗係数演算ブロックB6等に送信される。
【0025】
表示装置12には、信号ラインSL13を介してすべり抵抗係数演算ブロックB6の演算結果が送信され、すなわち、測定対象路面のすべり抵抗係数μが表示される。
すべり抵抗係数測定装置100のコントロールユニットCUは、情報処理機能を有する各種機器(例えばパソコン)で構成することが出来る。そして、各ブロックにおける上述した処理は、例えば所定のソフトウェアをインストールすることで実行可能となり、表示装置12は例えばパソコンであれば、その画面により構成される。この場合、記憶ブロックB7は、パソコン内のメモリにより構成される。パソコン内のメモリに保存された各種データ、比較結果、演算結果は、後日の分析を可能としている。
【0026】
次に、主として
図3を参照して、図示の実施形態におけるすべり抵抗係数μの測定手順を説明する。
図3のフローチャートにおいて、先ずステップS1で、測定開始するか否かを判断する。ステップS1の判断は、
図2で上述した様に、計測開始スイッチ11からのON/OFF信号に基づいて、コントロールユニットCUの駆動モーター制御ブロックB1により実行される。
ステップS1の判断の結果、計測開始スイッチ11がONであり、測定開始する場合は(ステップS1が「Yes」)、ステップS2に進む。
一方、ステップS1の判断の結果、計測開始スイッチ11がOFFであり、測定開始しない場合は(ステップS1が「No」)、ステップS1を繰り返す(ステップS1が「No」のループ)。
【0027】
ステップS2では、モーター8を駆動する。モーター8が駆動すると、測定用円板17(
図1参照)が回転し、すべり抵抗係数測定装置100による測定速度V(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50(
図1参照)を取り付けた箇所の周速度)が測定される。
ステップS2において、モーター8の駆動は、駆動モーター制御ブロックB1がモーター8に制御信号(作動信号)を送信することにより実行される。また、測定速度Vは、ロータリーエンコーダー7からの計測結果(デジタル信号)に基づき、速度決定ブロックB2で決定される。
そしてステップS3に進む。
【0028】
ステップS3では、測定速度Vが測定開始速度V0に達したか否かを判断する。
測定速度Vが測定開始速度V0に達したか否かの判断は、速度決定ブロックB2で決定した測定速度V、記憶ブロックB7から取得した測定開始速度V0に基づいて、比較ブロックB3で実行される。
ステップS3において、測定速度Vが測定開始速度V0に達した場合は(ステップS3が「Yes」)、ステップS4に進む。
一方、ステップS3において、測定速度Vが測定開始速度V0に達していない場合は(ステップS3が「No」)、ステップS3を繰り返す(ステップS3が「No」のループ)。
【0029】
次のステップS4では、モーター8の駆動を停止し、測定用円板17を下降して、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50を路面26(
図1)に接触させる。
モーター8の駆動停止は、駆動モーター制御ブロックB1による停止信号(制御信号)により実行される。そして、測定部(測定用円板17)の下降は、測定部昇降機構制御ブロックB4から昇降装置9へ発信される下降信号(制御信号)により実行される。
【0030】
ステップS5では、減速度β(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50が路面に接触した場合における減速度)を決定する。
減速度βの決定は、
図2を参照して上述した様に、減速度決定ブロックB5で実行される。具体的には、測定速度Vと、例えば測定速度Vが設定速度(例えば設定速度V1)に到達した時刻と、低下速度(例えば低下速度V1-ΔV1)まで減速した時刻との時間差ΔT(設定速度V1から所定速度差ΔV1だけ減速するのに要した時間差)に基づいて、次式により決定される。 減速度β=ΔV1/ΔT1
ここで、減速度の決定は、測定速度Vが設定速度V(V1、V2、V3・・・)に到達(原則)する度毎に実行される。
【0031】
ステップS6では、測定速度Vの全範囲で(すなわち、すべての設定速度V1、V2、V3・・・について)減速度βが決定されたか否かを判断する。
例えば、測定速度Vが、最小の低下速度(例えばV3-ΔV3)より小さくなったことを検出すれば、測定速度Vの全範囲で減速度βが決定されたと判断することが出来る。
ステップS6の判断の結果、測定速度Vの全範囲で減速度βが決定された場合は(ステップS6が「Yes」)、ステップS7に進む。
一方、ステップS6の判断の結果、測定速度Vの全範囲で減速度βが決定されていない場合は(ステップS6が「No」)、ステップS5に戻り、減速度の決定を継続する。
【0032】
ステップS7では、すべての設定速度V1、V2、V3・・・において決定した減速度β1、β2、β3・・・を平均して平均減速度βmを決定する。
平均減速度βmの決定は、減速度決定ブロックB5において、下式に従って実行される。
βm=(β1+β2+β3・・・)/N(N:求めた減速度の数)
次のステップS8では、測定対象路面のすべり抵抗係数μを演算する。
すべり抵抗係数μの演算は、すべり抵抗係数演算ブロックB6で実行され、減速度(例えば、平均減速度βm)を重力加速度gで除算することにより行われる。
μ=βm/g
ここで、必要に応じて、設定速度V1におけるすべり抵抗係数μ(=β1/g)、設定速度V2におけるすべり抵抗係数μ(=β2/g)・・・を求めることも出来る。
【0033】
次のステップS9では、当該測定対象路面以外での測定を含めて、すべり抵抗係数μの測定を終了するか否かを判断し、ステップS9が「Yes」であれば、すべり抵抗係数μ測定の手順を終了する。
ステップS9において、終了しない場合(ステップS9が「No」)、次の測定箇所(測定路面)に移動し(ステップS10)、次の測定路面においてすべり抵抗係数測定装置100を配置して、本フローチャートと同様な測定を行う。
【0034】
次に、減速度βについて、
図4を参照して説明する。
図4は、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50(
図1参照)が路面に接触したことにより、測定用円板17(
図1参照)の周速度が減速する様子を示しており、縦軸は測定速度V、横軸は時間Tである。
設定速度V1における減速度βを求める際には、設定速度V1から所定速度差ΔV1(速度低下分)だけ低下するのに要する所要時間ΔT1を計測すれば、
β1=ΔV1/ΔT1 なる式により、減速度β1を求めることが出来る。
上述の様に、実施形態では複数の設定速度V1、V2、V3・・・の各々について、減速度β1、β2、β3・・・を求めている。
【0035】
図示の実施形態のすべり抵抗係数測定装置100によれば、測定用円板17と路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50のみですべり抵抗係数μを測定することが出来るので、従来のすべり抵抗係数測定装置の様な2枚の円板、当該2枚の円板を連結するコイルばね、ポテンショメータ等を必要としない。
そのため、構造が簡略化され、製造、組み立てや点検に必要な労力が大幅に軽減され、部品交換等のメンテナンスに必要な労力が遥かに少なくなる。
【0036】
また、図示の実施形態のすべり抵抗係数測定装置100によれば、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50の速度(測定用円板の路面すべり抵抗測定用ゴム付き片を取り付けた箇所における周速)の減速度βを計測することにより、すべり抵抗係数μを求めることが出来る。(μ=β/g)(g:重力加速度)
減速度βを求めるに際して、予め決定した複数の測定速度Vにおける減速度を求め、当該複数の減速度を平均して測定対象路面の減速度β(平均減速度βm)を決定してすべり抵抗係数μを求めることも出来るし、個々の設定速度におけるすべり抵抗係数μを求めることも得られる。
【0037】
上述した実施形態では、記憶ブロックB7に計測箇所における重力加速度gが記憶されているが、上述した各種ブロックに加えて、コントロールユニットCUが重力加速度gを演算するブロック(図示せず)を含み、当該ブロックでは、
g=(9.80665-0.001×(45-γ)) (γは、測定地点の緯度)
なる演算を実施する機能を有しており、測定地点の緯度をコントロールユニットCUに入力した場合に、当該測定地点の重力加速度gが、重力加速度gを演算するブロックにより演算される様に構成することも可能である。
【0038】
次に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50をすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17に取り付ける態様について、
図5~
図13を参照して説明する。
路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50のすべり抵抗測定用ゴム30B、50Bは消耗品であり、路面すべり抵抗の測定を繰り返し、路面26とのすべり抵抗でゴムが摩耗すれば交換する必要がある。
図1において、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50をすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17に取り付ける箇所(取付箇所)が符号Aで示されており、取付箇所Aには取付用ボルト31(
図5)が設けられている。
図5において、取付用ボルト31は、測定用円板17(
図1参照:
図5では図示せず)に固定されたホルダ35に螺合して、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50(
図5では図示せず)を(測定用円板17)取り付ける。
図5において、符号36は、ホルダ35を測定用円板17側に固定するビスを示す。
【0039】
ホルダ35の中央(
図5(A)で左右方向中央)には、ゴム付き片取付部35Aが形成されている。ゴム付き片取付部35Aの両側(
図5(A)でゴム付き片取付部35Aの左右両側)の部分35Bは、均一な肉厚の部材として形成されている。それに対して、
図5(B)に示す様に、ゴム付き片取付部35Aの肉厚は均一ではなく、一端部(
図5(B)における下端部)から他端部(
図5(B)における上端部)に向かって肉厚が直線的に漸減している。
ホルダ35のゴム付き片取付部35Aの中心(
図5(A)で左右方向の中心)にはネジ孔35C(
図5(B))が形成され、ネジ孔35Cに取付用ボルト31を螺合するようになっている。ゴム付き片取付部35Aは、
図5(B)に示す様に、ホルダ35の底面35D(測定用円板17側への取付面:
図5(B)では上下方向に延在)に対して傾斜している。
【0040】
図5(A)において、取付用ボルト31の近傍(
図1の取付箇所A、
図5の取付用ボルト31の下方)には、ゴム付き片保持用磁石34が設けられており、ゴム部分を除いて磁性体(例えば鉄)で構成されている路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50を吸引している。取付用ボルト31がネジ孔35Cから外れた(螺合解除した)としても、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50はゴム付き片保持用磁石34により吸引されているので、測定用円板17から分離(落下)することが防止される。
ゴム付き片保持用磁石34は、ホルダ35のゴム付き片取付部35Aに埋め込まれており、その形状は、
図5(A)、(B)で示す様に円筒形状でも良いし、或いは、直方体形状(図示せず)であっても良い。
【0041】
図6~
図10を参照して、本発明の実施形態において、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取付用ボルト31によりすべり抵抗係数測定装置100に取り付ける状況について説明する。
図6で示す様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の一端(
図6(A)、(B)では下端)にはすべり抵抗測定用ゴム30Bが従来公知の態様(例えば接着、溶着等)により取り付けられており、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の他端(
図6(A)、(B)では上端)近傍は測定用円板17側への取付部となっている。
すべり抵抗測定用ゴム30Bが摩耗すると、ゴム30Bが摩耗した路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を新品(すべり抵抗測定用ゴム30Bが摩耗していない路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30)と交換する。
図6(B)に示す様に、すべり抵抗測定用ゴム30Bは、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の先端(ゴム30B側端部:
図6(B)では下端)に向けて肉厚が漸増し、先端近傍は充分な肉厚を有している。
【0042】
図6(A)で示す様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の他端(ゴム30Bが取り付けられている端部と反対側の端部:
図6(A)では上端)近傍における取付部には、取付用ボルト31を挿入する挿入用開口30Aが形成されている。
取付用ボルト挿入用開口30Aは径寸法の異なる円を重ね合わせた形状に構成されており、小径の円30ABが(
図6(A)で)上方に配置され、大径の円30AAが(
図6(A)で)下方に配置されている。
大径の円30AAの直径は取付用ボルト31のボルトヘッド直径よりも僅かに大きく設定されている。そして小径の円30ABの直径は、取付用ボルト31のボルトヘッド直径よりも小さいが、ボルト軸部の直径よりは僅かに大きく設定されている。
【0043】
路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を測定用円板17に取り付ける際には、
図7で示す様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の取付用ボルト挿入用開口30Aの大径の部分30AAから取付用ボルト31のボルトヘッドを挿入して、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取付用ボルト31に引っ掛ける(係止する)。この時、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の取付部側(ゴム30Bとは反対側)の端部近傍は、ホルダ35のゴム付き片取付部35Aに対向している。
図7(A)において、ゴム付き片取付部35Aは路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の裏側に位置しており、
図7(A)では図示はされていないので、符号35(A)では符号「35A」の引き出し線が点線で示されている。
図7(A)で示す状態から、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を
図7(A)の矢印B方向(
図7(A)の下方)に移動し(引っ張り)、取付用ボルト31の軸部を、取付用ボルト挿入用開口30Aの小径の部分30AB(開口30Aの上方部分)に位置せしめる(
図8の状態)。
図8の状態で取付用ボルト31を締め付ければ、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30はホルダ35を介してすべり抵抗係数測定装置100の本体15に取り付けられる。
【0044】
取付用ボルト31及びホルダ35のゴム付き片取付部35Aは、
図5(B)で上述した様に、ホルダ35の測定用円板17側への取付面である底面35Dに対して傾斜して設けられている。したがって、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30がホルダ35に取り付けられた状態を示す
図8(B)において、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の先端のすべり抵抗測定用ゴム30Bは、測定用円板17側の取付面(ホルダ35の底面35D)に対して、図示しない路面に近接して配置される。ここで、
図8(B)の左側が路面側である。
【0045】
すべり抵抗測定用ゴム30Bが摩耗した路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取り外す際には、
図8において、取付用ボルト31をホルダ35から取り外さない範囲で緩める(螺合解除する)。そして、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を
図8(A)の矢印C方向(
図8の上方)に移動して、
図7(A)で示す様に、取付用ボルト31のボルトヘッドを取付用ボルト挿入用開口30Aの大径の部分30AAに位置にせしめる。そして、取付用ボルト31が取付用ボルト挿入用開口30Aの大径の部分30AAを通過する様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を、
図7(A)の図面と垂直な方向で且つ看者側の方向に移動して(引き上げて)、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取り外す。
【0046】
図示の実施形態における路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の測定用円板17への取り付け態様によれば、上述した要領で路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取り付け、取り外すことが出来るので、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の交換作業の際に、取付用ボルト31はホルダ35から取り外さない状態(螺合した状態)に保持されるので、取付用ボルト31の螺合を解除し、取付用ボルト31を取り外し、(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30を取り付け或いは取り外した後に)改めて取付用ボルト31を螺合する作業が不要となる。そのため、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の交換作業の最中に測定用円板17側から取り外された取付用ボルト31を保管するスペースを別途設ける必要も無く、そのための管理工数もかからない。
さらに、取付用ボルト31は測定用円板17側に螺合した状態なので、取付用ボルト31を測定用円板17側から落下することは無く、夜間作業中であっても取付用ボルト31を紛失する恐れは無い。
それに加えて、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30はゴム付き片保持用磁石34により吸引されているので、測定用円板17側から分離してしまうことが防止される。
また、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30はホルダ35を介してすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17に取り付けられているので、ホルダ35のゴム付き片取付部35Aの底面35D(取付面)の傾斜を適宜設定することにより、すべり抵抗測定用ゴム30Bと路面26との距離や、すべり抵抗測定用ゴム30Bの路面26に対する接触角度を選択することが出来る。
【0047】
ここで、何らかの理由により路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30が取付用ボルト31に対して相対移動し、取付用ボルト31が取付用ボルト挿入用開口30Aの大径の部分30AAに位置してしまうと、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30が測定用円板17から落下してしまう恐れがある。
図7、
図8では明示されていないが、図示の実施形態では、取付用ボル31の緩み止め用のスプリングワッシャ32(既設スプリングワッシャ)が設けられている(
図10参照)。
それに加えて図示の実施形態では、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30がすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17側から脱落することを防止するため、
図9、
図10で示す様に、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33が設けられている。
【0048】
図9において、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33は全体が円環状の本体部を有し、当該本体部は、その円周方向で1箇所に切欠き33Aが形成されている。そして、半径方向外方に突出した複数個(4個)の突起33Bが、円周方向に等間隔の位置に形成されている。
切欠き33Aの開口寸法L1は、取付用ボルト31の軸部外径よりも(僅かに)小さく設定され、対向する位置に設けられた2個の突起33Bの先端間の距離L2は、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の取付用ボルト挿入用開口30Aの大径部分30AA(
図6(A)参照)の直径よりも大きく設定されている。
ゴム付き片落下防止用ワッシャ33の内周面の径は、既設スプリングワッシャ32の内周面の径と同一に設定されている。
【0049】
図10で示す様に、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33は、既設のスプリングワッシャ32と取付用ボルト31のボルトヘッドとの間に介装される。そしてゴム付き片落下防止用ワッシャ33は、既設のスプリングワッシャ32と取付用ボルト31のボルトヘッドによって挟み込んで保持できる寸法に設定されている。
図10において、取付用ボルト31のボルトヘッドと路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30との間に、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33及び既設のスプリングワッシャ32が介装され、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33は、既設のスプリングワッシャ32と取付用ボルト31のボルトヘッドの間に介装される。
【0050】
ゴム付き片落下防止用ワッシャ33を既設のスプリングワッシャ32と取付用ボルト31のボルトヘッドとの間に設置する際には、切欠き33A(
図9)を拡径する方向に押圧して、切欠きの開口寸法L1が取付用ボルト31の軸部(ボルト軸)の径寸法よりも大きくなる程度まで弾性変形させて、切欠き33Aから取付用ボルト31の軸部を挿入する。
取付用ボルト31の軸部(ボルト軸)を切欠き33Aから挿入した後、切欠き33A(
図9)を拡径する方向に押圧することを止めれば、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33の弾性反撥力により、切欠き33Aの開口は取付用ボルト31の軸部(ボルト軸)の径寸法よりも僅かに小さい状態に復帰する。その結果、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33の内周面は弾性反撥力により取付用ボルト31を締め付ける状態を保持するので、取付用ボルト31から分離しない。
【0051】
上述した様に、ゴム付き片落下防止用ワッシャ33の対向する2つの突起33B先端間の最大距離L2は、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の取付用ボルト挿入用開口30Aの大径の部分30AAの直径よりも大きく設定されている。そのため、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30が落下しようとしても(
図10の上方が落下)、突起33Bが路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30の取付用ボルト挿入用開口30Aに引っ掛かる。
そのため、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30は、取付用ボルト31から脱落或いは落下することは無い。
【0052】
次に、
図11~
図13を参照して、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50をすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17に取り付けるに際して、
図5~
図10で示すのとは別の態様について説明する。
図11~
図13の態様では、
図5~
図10で示す態様に対して路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50が異なっており、また
図5~
図10で示すゴム付き片落下防止用ワッシャ33を有していない。
ここで、
図11~
図13で示す取付態様のすべり抵抗係数測定装置についても、
図5~
図10で示す取付態様のすべり抵抗係数測定装置と同様の符号100で表す。
【0053】
図11において、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の一端(
図11(A)、(B)では下端)にはすべり抵抗測定用ゴム50Bが従来公知の態様(例えば接着、溶着等)により取り付けられている。路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の他端(
図11(A)、(B)では上端)近傍は、測定用円板17側への取付部となっている。すべり抵抗測定用ゴム50Bは、
図5~
図10で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30におけるすべり抵抗測定用ゴム30Bと様な構成、特性を有している。
図5~
図10で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30と同様に、すべり抵抗測定用ゴム50Bが摩耗すると、ゴム50Bが摩耗した路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50を新品(すべり抵抗測定用ゴム50Bが摩耗していない路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50)と交換する。
【0054】
図11(A)で示す様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の他端(ゴム50Bが取り付けられている端部と反対側の端部:
図11(A)では上端)近傍における取付部には、取付用ボルト31を挿入する取付用ボルト挿入用スリット50Aが形成されている。
取付用ボルト挿入用スリット50Aは、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の一側面(
図11(A)では右側側面)から左方向の中心側には向かって形成されており、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の長手方向に対して垂直方向に形成されている。
【0055】
取付用ボルト挿入用スリット50Aは、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の一側面(
図11(A)では右側側面)から中心側(
図11(A)で左方向)に向かって(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の)幅方向中心まで所定の幅寸法を有して形成される挿入部50AAと、挿入部50AAに連続して形成され、(路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の)幅方向中心において所定の径寸法を有する半円形の中央部50ABを有している。
ここで、取付用ボルト挿入用スリット50Aにおける挿入部50AAの幅寸法及び中央部50ABの径寸法は、共に取付用ボルト31のボルトヘッド直径よりも小さいがボルト軸部の直径よりは僅かに大きい寸法に設定されている。
【0056】
路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50をすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17(
図1)に取り付ける際には、
図5~
図10の実施形態と同様に、ホルダ35を介して行うが、ホルダ35については
図5等を参照して上述したのと同様である。
路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50を取り付ける際には、
図12で示す様に、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の取付用ボルト挿入用スリット50Aの挿入部50AA(の端部開口)から、取付用ボルト31の軸部を挿入する。この時、取付用ボルト31は、(測定用円板17に固定された)ホルダ35から外れない程度に緩められた状態となっている。
図12の状態では、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の取付部側(ゴム50Bとは反対側)の端部近傍は、ホルダ35のゴム付き片取付部35Aに密着してはいない。
【0057】
その後、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50を取付用ボルト31に対して、
図12(A)の矢印D方向(
図12(A)で右方向)に移動して、取付用ボルト31の軸部を取付用ボルト挿入用スリット50Aの挿入部50AAに沿って左方向に相対移動させることにより、取付用ボルト31の軸部を路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の幅方向中心に位置する。その際に、取付用ボルト31(の軸部)は取付用ボルト挿入用スリット50Aの中心側端部(すなわち中央部50ABの端部)に突き当って位置決めされる。
この状態で、取付用ボルト31(の軸部)は取付用ボルト挿入用スリット50Aにおける中央部50ABに位置決めされており、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の取付部側(ゴム50Bとは反対側)の端部近傍は、ホルダ35のゴム付き片取付部35Aに密着する(
図13の状態)。
【0058】
図13の状態で取付用ボルト31を締め付ければ、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50はホルダ35を介してすべり抵抗係数測定装置100の測定用円板17に取り付けられる。
なお、
図12、
図13においても、
図5~
図10で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30と同様に、ゴム付き片保持用磁石34をホルダ35のゴム付き片取付部35Aに埋め込み、ゴム50B以外の部分が磁性体で構成された路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50がゴム付き片保持用磁石34により吸引されるので、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50が測定用円板17側から分離してしまうことが防止される。
【0059】
すべり抵抗測定用ゴム50Bが摩耗した路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50を取り外す際には、
図13において、取付用ボルト31をホルダ35から取り外さない範囲で緩める(螺合解除する)。そして、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50を
図13(A)の矢印E方向(
図13(A)で左方向)に移動して、取付用ボルト31の軸部を路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の取付用ボルト挿入用スリット50Aから外す。その際、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50の左側端部を、図面と垂直な方向で且つ看者側の方向に引き上げ、ゴム付き片取付部35Aに対して厚みの大きな部分35Bとの干渉を回避しながら行う。
こうして、すべり抵抗測定用ゴム50Bが摩耗した路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50をすべり抵抗係数測定装置本体100から取り外すことが出来る。
図11~
図13に示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片50のその他の構成、作用効果は、
図5~
図10で示す路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30と同様である。
【0060】
次に、
図14を参照して、図示の実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置100について、従来のすべり抵抗係数測定装置(特許文献1等)とは異なる点を主に説明する。
図14においてすべり抵抗係数測定装置100には傾斜計41が設けられている。傾斜計41としては市販品(例えばNKKスイッチ株式会社製の商品名「DSシリーズ」)を使用することが出来る。
傾斜計41はすべり抵抗係数測定装置100全体の傾斜を計測する機能を有している。傾斜計41の計測結果は、図示しない信号伝達ラインを介して電磁ブレーキ42に送出される。
図14において、符号8は測定用円板17を歯車13、14、軸5を介して回転させる駆動用モーターである。そして、測定用円板17の下面には、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50が例えば3箇所に取り付けられている。
【0061】
図14では明示されていないが、電磁ブレーキ42は、すべり抵抗係数測定装置100が作動した状態で、傾斜計41により所定角度以上の傾斜が計測された場合に(電磁ブレーキ42が)作動して、すべり抵抗係数測定装置100を停止する機能を有している。
また電磁ブレーキ42は、作動中のすべり抵抗係数測定装置100が人手により持ち上げられた場合も作動して、すべり抵抗係数測定装置100を停止する機能を有している。
【0062】
また、図示の実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置100にはカウンター43が設けられており、カウンター43はすべり抵抗係数測定装置100の作動回数或いは計測回数を計測して表示する機能を有している。
カウンター43に表示される回数は、すべり抵抗係数測定装置100における路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50のすべり抵抗測定用ゴム30B、50Bがどの程度摩耗しているかの指標となり、すべり抵抗係数測定装置100の使用者が、路面すべり抵抗測定用ゴム付き片30、50の交換のタイミングを把握することが出来る。
【0063】
さらに図示の実施形態では、すべり抵抗係数測定装置100は衛星測位システム44(例えば、全地球測位システム:GPS)を有している。図示は省略するが、衛星測位システムによって決定されたすべり抵抗係数測定装置100の位置情報を、すべり抵抗係数測定装置内部の処理装置或いは外部の処理システムに送ることにより、すべり抵抗係数測定装置100によってすべり抵抗係数を計測した位置を正確に決定することが可能である。
【0064】
図示の実施形態に係るすべり抵抗係数測定装置100において、路面温度計測装置45が設けられており、路面温度計測装置45は、路面のすべり抵抗係数を計測する際に路面温度を計測する機能を有している。そのため、路面温度が路面のすべり抵抗係数に及ぼす影響を解析し、路面温度を考慮した上で正確なすべり抵抗係数を決定することが出来る。
【0065】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えばすべり抵抗係数測定装置は、
図1で示す以外のタイプであっても適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
7・・・ロータリーエンコーダー(速度測定装置)
8・・・駆動用モーター(回転駆動源)
9・・・昇降装置(測定部昇降機構)
17・・・測定用円板
30、50・・・路面すべり抵抗測定用ゴム付き片
100・・・すべり抵抗係数測定装置
CU・・・コントロールユニット(制御装置)