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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】生産システム、実装装置、生産方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220916BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20220916BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/04 Z
H05K13/02 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018093535
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019200508
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】井桝 孝彦
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-110297(JP,A)
【文献】特開2016-134521(JP,A)
【文献】特開2017-212347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0221723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/04
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインの先頭に処理装置、後続に複数の実装装置が配置され
先頭の前記処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、
後続の前記実装装置は、ホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施する生産システムであって、
先頭の前記処理装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識部と、前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウンタと、前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データを前記ホストコンピュータに通知する通知部とが設けられ、
前記ホストコンピュータは、前記通知データに基づいて前記生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けてデータベースを更新し
後続の前記実装装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する第2の認識部と、後続の前記実装装置に基板が搬入される度に基板枚数をカウントする第2のカウンタと、前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得する取得部と、前記生産ラインから基板を抜き取る際の複数の前記実装装置への抜き取り報告を受け付ける入力部と、抜き取り報告を受けた後に、前記第2のカウンタのカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるモード変更部とが設けられたこを特徴とする生産システム。
【請求項2】
抜き取り報告を受けたときに基板枚数を設定して、当該基板枚数に対する実装処理が完了した場合に、前記モード変更部によって認識モードから通常モードに戻されることを特徴とする請求項1記載の生産システム。
【請求項3】
基板は、複数の割り基板からなる多面取り基板であり、
マークは、割り基板毎の品質不良を示すバッドマークであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生産システム。
【請求項4】
マークが付された基板が順番に投入される生産ラインの先頭に処理装置が配置されており、後続に複数配置されて、ホストコンピュータの管理下で基板の投入番号に関連付けたマークに基づいて実装処理を実施する実装装置であって、
先頭の前記処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、
後続の前記実装装置は、ホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施し、
先頭の前記処理装置には、
基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識部と、
前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウンタと、
前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データを前記ホストコンピュータに通知する通知部とを備え、
前記ホストコンピュータは、前記通知データに基づいて前記生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けて更新するデータベースを備え、
後続の前記実装装置は、
基板に対してマークの認識動作を実施する第2の認識部と、
基板が搬入される度に基板枚数をカウントする第2のカウンタと、
前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得する取得部と、
前記生産ラインから基板を抜き取る際の他の実装装置への抜き取り報告を受け付ける入力部と、
抜き取り報告を受けた後に、前記第2のカウンタのカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるモード変更部とを備えることを特徴とする実装装置。
【請求項5】
生産ラインの先頭に処理装置、後続に複数の実装装置が配置されホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施する生産方法であって、
先頭の前記処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、
先頭の処理装置が、基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識するステップと、前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウントするステップと、前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データ生成するステップと、前記ホストコンピュータに前記通知データを通知するステップと、を有し
前記ホストコンピュータが前記通知データに基づいて生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けてデータベースを更新するステップを有し、
後続の前記実装装置が、前記実装装置に基板が搬入される度に基板の枚数をウントする第2のカウントするステップと、前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得するステップと、前記生産ラインから基板を抜き取る際の複数の前記実装装置への抜き取り報告を受けた後に、第2のカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるステップとを有することを特徴とする生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産システム、実装装置、生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産システムでは、複数の実装装置によって生産ラインが構築されており、生産ラインで搬送された基板に対して各実装装置で段階的に部品が実装されている。各実装装置では、多面取り基板の割り基板の不良を検出するためにバッドマークの認識動作が実施されている。この種の生産システムとして、生産ラインの先頭装置で認識したバッドマーク等の各種マークのマーク情報を下流の後続装置に伝送することで、各実装装置におけるマークの認識動作を無くして生産ラインの生産タクトを向上させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の生産システムでは、多面取り基板に2次元コードが付されており、2次元コードで示される基板IDとマーク情報を関連付けてホストコンピュータで管理している。各実装装置で多面取り基板の2次元コードから基板IDが認識されると、ホストコンピュータから各実装装置に基板IDに関連付いたマーク情報が送られる。これにより、各実装装置で各種マークの認識動作を実施することなく、例えば、バッドマークが付された割り基板をスキップして他の割り基板に対して部品の実装動作を実施することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-110297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の生産システムでは、2次元コードが付されていなければ各実装装置で基板を識別することができない。このため、各実装装置で基板とマーク情報の対応付けができないため、各実装装置でマークの認識動作を行わなければならない。この場合、生産ラインに順番に投入された基板の投入番号にマーク情報を関連付けてホストコンピュータで管理する方法も考えられるが、生産ラインの途中で基板が抜かれると投入番号と基板にズレが生じる。部品の欠品や無駄な実装が発生して、投入番号と基板のズレを戻す作業が煩わしいものとなっていた。
【0006】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、基板の抜き取り前は生産タクトを向上することができ、基板の抜き取り後は部品の欠品や無駄な実装等の誤動作を抑えることができる生産システム、実装装置、生産方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の生産システムは、生産ラインの先頭に処理装置、後続に複数の実装装置が配置され、先頭の前記処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、後続の前記実装装置は、ホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施する生産システムであって、先頭の前記処理装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識部と、前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウンタと、前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データを前記ホストコンピュータに通知する通知部とが設けられ、前記ホストコンピュータは、前記通知データに基づいて前記生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けてデータベースを更新し後続の前記実装装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する第2の認識部と、後続の前記実装装置に基板が搬入される度に基板枚数をカウントする前記第2のカウンタと、前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得する取得部と、前記生産ラインから基板を抜き取る際の複数の前記実装装置への抜き取り報告を受け付ける入力部と、抜き取り報告を受けた後に、第2のカウンタのカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるモード変更部とが設けられたこを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様の実装装置は、マークが付された基板が順番に投入される生産ラインの先頭に処理装置が配置されており、後続に複数配置されて、ホストコンピュータの管理下で基板の投入番号に関連付けたマークに基づいて実装処理を実施する実装装置であって、先頭の処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、後続の前記実装装置は、ホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施し、先頭の前記処理装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識部と、前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウンタと、前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データを前記ホストコンピュータに通知する通知部とを備え、前記ホストコンピュータは、前記通知データに基づいて前記生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けて更新するデータベースを備え、後続の前記実装装置は、基板に対してマークの認識動作を実施する第2の認識部と、基板が搬入される度に基板枚数をカウントする第2のカウンタと、前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得する取得部と、前記生産ラインから基板を抜き取る際の他の実装装置への抜き取り報告を受け付ける入力部と、抜き取り報告を受けた後に、前記第2のカウンタのカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるモード変更部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の一態様の生産方法は、生産ラインの先頭に処理装置、後続に複数の実装装置が配置されホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて前記実装装置毎に実装処理を実施する生産方法であって、先頭の前記処理装置は、部品を基板に装着する装置、または、画像処理によって基板を検査する装置であり、先頭の処理装置が、基板に対してマークの認識動作を実施する第1の認識するステップと、前記生産ラインに基板が投入される度に基板枚数をカウントする第1のカウントするステップと、前記第1のカウンタのカウント値を基板の投入番号として、前記第1の認識部の認識結果を示すマーク情報に前記投入番号毎に関連付けた通知データ生成するステップと、前記ホストコンピュータに前記通知データを通知するステップと、を有し前記ホストコンピュータが前記通知データに基づいて生産ラインに順番に投入された基板の前記投入番号にマーク情報を関連付けてデータベースを更新するステップを有し、後続の前記実装装置が、前記実装装置に基板が搬入される度に基板の枚数をウントする第2のカウントするステップと、前記処理装置から前記ホストコンピュータに通知され、かつ、前記ホストコンピュータから前記データベースに更新された前記投入番号毎にマーク情報を取得するステップと、前記生産ラインから基板を抜き取る際の複数の前記実装装置への抜き取り報告を受けた後に、第2のカウント値に一致した前記投入番号のマーク情報を使用する通常モードから前記第2の認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるステップとを有する。
【0010】
これらの構成によれば、生産ラインから一部の基板が抜き取られて、オペレータによって抜き取り報告が入力されると、複数の実装装置が通常モードから認識モードに切り替えられる。複数の実装装置で投入番号に関連付けたマーク情報が使用される代わりに、基板に対するマークの認識動作が実施されるため、生産ラインから基板が抜き取られても部品の欠品や無駄な実装が生じることがない。よって、通常モードではマークの認識動作を省略して生産ラインの生産タクトを向上させることができ、認識モードでは基板の抜き取りによって部品の欠品や無駄な実装を抑えて復旧作業を簡略化することができる。
【0012】
本開示の一態様の生産システムにおいて、抜き取り報告を受けたときに基板枚数を設定して、当該基板枚数に対する実装処理が完了した場合に、前記モード変更部によって認識モードから通常モードに戻される。この構成によれば、復旧作業を実施することなく、認識モードから通常モードに自動的に戻すことができる。
【0013】
本開示の一態様の生産システムにおいて、基板は、複数の割り基板からなる多面取り基板であり、マークは、割り基板毎の品質不良を示すバッドマークである。この構成によれば、バッドマークが付された割り基板を無視して実装処理を実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、抜き取り報告の入力によって複数の処理装置が通常モードから認識モードに切り替えられるため、基板の抜き取り前は生産タクトを向上することができ、基板の抜き取り後は部品の欠品や無駄な実装等の誤動作を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の生産システムの模式図である。
図2】比較例の生産システムの動作説明図である。
図3】本実施の形態の生産システムのブロック図である。
図4】本実施の形態の生産システムの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の生産システムについて説明する。図1は、本実施の形態の生産システムの模式図である。なお、本実施の形態では検査装置と複数の実装装置とで生産ラインを構成した例について説明するが、本実施の形態の生産システムは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態の生産システム1は、検査装置10と複数の実装装置20A-20Cが配置された基板Wの生産ラインで、検査装置10で検査された基板Wに対して後続の各実装装置20A-20Cで部品を実装している。検査装置10は、画像処理によって基板Wに印刷された半田の位置ズレや外観等から基板Wの印刷良否を検査している。複数の実装装置20A-20Cは、検査装置10と共に基板Wの搬送路を形成しており、検査装置10から順番に搬送される基板Wに対して段階的に各種部品を実装している。また、検査装置10及び実装装置20A-20Cは、ホストコンピュータ30によって管理されている。
【0018】
基板Wは、複数の割り基板Wa(図2参照)からなる多面取り基板であり、各割り基板Waの対角の角部付近には基板Wの位置基準となるBOCマーク等の基板基準マーク(不図示)が付されている。また、割り基板Wa上には、精密な実装が要求されるIC等の精密部品(不図示)の近辺にエリアマーク等の部品基準マーク(不図示)が付され、割り基板Waが品質不良であることを示すバッドマークM(図2参照)が付されている。なお、本実施の形態では、基板Wとして多面取り基板を例示して説明したが、基板Wは上記した各種マークが付された単一の基板でもよい。
【0019】
各実装装置20A-20Cでは、基板基準マークを認識することで、基板Wの歪み等に起因した位置ズレが補正される。また、各実装装置20A-20Cでは、部品基準マークを認識することで、精密部品の局部的な位置ズレが補正される。さらに、各実装装置20A-20Cでは、バッドマークMを認識することで、バッドマークMが付された品質不良の割り基板Waを無視して実装処理が実施される。検査装置10及び複数の実装装置20A-20Cはホストコンピュータ30と有線又は無線接続されており、ホストコンピュータ30を介して隣接する装置間で基板Wの搬入出の同期が取られている。
【0020】
ところで、通常は基板に2次元コード等の識別情報が付されている。この場合、2次元コードで示される基板IDにバッドマークMの有無等のマーク情報をホストコンピュータ30で関連付けて、各実装装置20A-20Cで基板IDに関連付いたマーク情報を共有することができる。しかしながら、基板が小さかったり、部品の搭載数が多かった場合のように、基板に対して必ずしも識別情報が付されるとは限らない。各実装装置20A-20Cで基板にマーク情報を関連付けることができないため、割り基板Wa毎にマークの認識動作を実施しなければならない。
【0021】
図2の比較例に示すように、生産ラインに投入された順番で基板Wのマーク情報をホストコンピュータ60で管理する構成であれば、各実装装置50A-50Cで基板Wに関連付いたマーク情報を共有することができる。しかしながら、誤実装等の理由でオペレータに生産ラインから一部の基板Wが抜き取られると、基板Wと投入の順番にズレが生じる。よって、各実装装置50A-50Cでは、基板Wの抜き取りが共有されず、投入された順番からマーク情報を識別するので、誤ったマーク情報で実装処理が行われて部品の欠品や無駄な実装が発生するおそれがある。
【0022】
例えば、実装装置50Aで生産ラインに3番目に投入された基板Wが抜き取られると、後続の実装装置50B、50Cでは4枚目の基板Wが3枚目の基板Wと誤認識される。このため、実装装置50B、50Cでは4枚目の基板Wに対して、3枚目の基板Wのマーク情報を用いて実装処理が行われる。バッドマークMが付されていない基板Wにも関わらず、マーク情報からバッドマークMが付された基板Wと誤認識されることで一部の割り基板Waを無視して実装される。このように、基板Wが投入された順番にマーク情報を関連付けた生産システムで部品の欠品等を抑える方法が求められている。
【0023】
そこで、本実施の形態では、オペレータによる基板Wの抜き取り時に、各実装装置20A-20Cに対する基板Wの抜き取り報告を受け付けている。そして、抜き取り報告を受けた後に、基板が投入された順番に関連付いたマーク情報を使用する代わりに、認識部21(図3参照)によって基板W上のマークを直に認識するようにしている。このように、抜き取り報告を受けるまでは、各実装装置20A-20Cで基板Wが投入された順番からマーク情報を取得して生産タクトを向上させている。抜き取り報告を受けた後は、各実装装置20A-20Cで基板Wに対してマークの認識動作を実施して部品の欠品や無駄な実装を抑えて復旧作業を簡略化している。
【0024】
以下、図3を参照して、本実施の形態の生産システムについて詳細に説明する。図3は、本実施の形態の生産システムのブロック図である。なお、図3に示す生産システムのブロック図は、本開示の技術を説明するために簡略化したものであり、検査装置、実装装置、ホストコンピュータは通常備える構成については備えるものとする。
【0025】
図3に示すように、検査装置10は生産ラインの先頭に配置されており、基板W(図4参照)の印刷状態を検査するように構成されている。検査装置10には、検査部(不図示)の他に、生産ラインに投入された基板Wに対してマークの認識動作を実施する認識部11が設けられている。認識部11は、基板W上の各種マークを撮像して、撮像画像に対して画像処理を施してマーク情報を認識している。詳細は後述するが、部品基準マーク及びバッドマークM(図4参照)のマーク情報は、ホストコンピュータ30に通知されて複数の実装装置20A-20Cで共有される。
【0026】
なお、認識部11によって基板基準マークも認識されるが、基板基準マークのマーク情報はホストコンピュータ30に通知されない。基板基準マークは基板Wの位置ズレを認識するためのものであり、実装装置20A-20C毎に基板Wの位置ズレを個別に認識させる必要があるからである。部品基準マークのマーク情報は基板基準マークの位置座標との相対座標を示し、バッドマークMのマーク情報は各割り基板Waと品質不良の有無とを1対1で対応付けしたデータを示している。部品基準マーク及びバッドマークMのマーク情報は、別々のデータに分けられていてもよいし、1つのデータに纏められていてもよい。
【0027】
また、検査装置10には、基板Wの搬入を検出するセンサ12と、基板Wが搬入される度に基板枚数をカウントするカウンタ13とが設けられている。センサ12は搬送路上の基板Wが検査装置10の入口を通過することで基板Wの搬入を検出し、カウンタ13はセンサ12で基板Wの搬入が検出されるとカウント値を1つ増加する。認識部11の認識結果はマーク情報として通知部14に出力され、カウンタ13のカウント値は基板Wの投入番号として通知部14に出力されて、通知部14にてマーク情報に基板Wの投入番号が関連付けられた送信データが生成される。
【0028】
通知部14は、送信データをホストコンピュータ30に通知して基板Wの投入番号とマーク情報を関連付けさせている。ホストコンピュータ30には、生産ラインに順番に投入された基板Wの投入番号にマーク情報を関連付けたデータベース31が設けられている。ホストコンピュータ30に通知部14から送信データが通知されることで、生産ラインに基板Wが投入される度に、ホストコンピュータ30で基板Wの投入番号にマーク情報が関連付けられてデータベース31が更新される。ホストコンピュータ30で基板Wとマーク情報が自動的に対応付けられるため、ホストコンピュータ30への登録作業を省略することができる。
【0029】
各実装装置20A-20Cは、ホストコンピュータ30から取得したマーク情報を使用する通常モード、マークの認識動作で認識したマーク情報を使用する認識モードで動作するように構成されている。各実装装置20A-20Cには、検査装置10と同様に、基板Wに対してマークの認識動作を実施する認識部21と、基板Wの搬入を検出するセンサ22と、基板Wが搬入される度に基板枚数をカウントするカウンタ23とが設けられている。なお、認識部21は認識モードで基板Wの各種マークを認識するが、通常モードであっても基板Wの基板基準マークだけは認識可能になっている。
【0030】
また、各実装装置20A-20Cには、ホストコンピュータ30から投入番号毎にマーク情報を取得する取得部24と、マーク情報に基づいて基板Wに対して部品を実装する実装部25とが設けられている。取得部24は、ホストコンピュータ30のデータベース31が更新される度に、ホストコンピュータ30から投入番号毎にマーク情報を取得してバッファに格納する。実装装置20A-20Cで基板Wに対する実装処理が完了すると、実装済みの基板Wの投入番号とマーク情報がバッファから消去される。このように、各実装装置20A-20Cでは取得部24のバッファで投入番号とマーク情報が管理されている。
【0031】
実装部25は、通常モードではカウンタ23のカウント値に一致した投入番号のマーク情報を使用して実装処理を実施している。例えば、実装部25は、ホストコンピュータ30から取得した部品基準マークのマーク情報に基づいて精密部品を高精度に実装し、バッドマークMのマーク情報に基づいて品質不良の割り基板Waを無視して他の割り基板Waに対して部品の実装動作を実施する。このように、通常モードでは、認識部21による部品基準マーク及びバッドマークMの認識動作が省略された分だけ、マークの認識動作に要する時間を短くして生産タクトが向上されている。なお、通常モードは、認識部21によるバッドマークMの認識動作だけを省略してもよい。
【0032】
さらに、各実装装置20A-20Cには、生産ラインから基板Wを抜き取る際に各実装装置20A-20Cへの抜き取り報告を受け付ける入力部26と、抜き取り報告を受けた後に通常モードから認識モードに切り替えるモード変更部27とが設けられている。入力部26は、各実装装置20A-20Cの操作パネルに表示されたスイッチ画像又は装置筐体に設置された押しボタン式のスイッチで構成されている。生産ラインから基板Wを抜き取る際に、オペレータによって入力部26で抜き取り報告が入力されることで、ホストコンピュータ30を介して他の実装装置に向けて抜き取り報告が通知される。
【0033】
モード変更部27は、抜き取り報告を受けると、投入番号に関連付いたマーク情報を用いた通常モードの実装処理を停止して、認識部21の認識結果を用いた認識モードに切り替えて実装処理を開始する。認識モードでは、基板Wのマークが必ず認識されて部品の実装されるため、生産ラインから基板Wが抜き取られた場合でも、部品の欠品や無駄な実装等の誤動作が発生することがない。また、モード変更部27では、抜き取り報告を受けたときに基板枚数を設定して、当該基板枚数に対する実装処理が完了した場合に、認識モードから通常モードに戻される。
【0034】
このように、基板Wの抜き取り前は通常モードによって認識動作を省略して生産タクトを向上させ、基板Wの抜き取り後は認識モードによって確実なマーク認識によって誤動作を防止している。なお、検査装置10、実装装置20A-20C、ホストコンピュータ30の各制御ブロックは、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等によって構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成されている。メモリには、装置全体の制御プログラムの他、実装処理を実行させるプログラムが記憶されている。
【0035】
続いて、図4を参照して、生産システムの動作について説明する。図4は、本実施の形態の生産システムの動作説明図である。なお、以下の図4では、説明の便宜上、マークとしてバッドマークを例示して説明する。また、説明の便宜上、図3の符号を使用して説明する。
【0036】
図4Aに示すように、生産ラインに基板Wが投入されると、先頭の検査装置10によって投入枚数がカウントされて、認識部11によって基板Wに付されたマークが認識される。マークが認識されると、カウント値が示す投入番号に認識結果を示すマーク情報が関連付けられてホストコンピュータ30に通知される。マーク情報は割り基板Wa毎にバッドマークMの有無が対応付けられたものであり、例えば、割り基板Waの基板番号に対応した4ビットのデータで構成されてもよい。この場合、バッドマークMが有る場合にはフラグ「1」がセットされ、バッドマークMが無い場合にはフラグ「0」がセットされる。
【0037】
ホストコンピュータ30が検査装置10から通知を受けると、ホストコンピュータ30から各実装装置20A-20Cに向けて投入番号とマーク情報が転送される。各実装装置20A-20Cは、通常モードで動作しており、カウンタ23のカウント値に一致した投入番号のマーク情報を使用して実装処理が実施される。例えば、実装装置20Aでは投入番号3のマーク情報を使用して、3枚目(カウント値3)の基板Wに対して実装処理が実施される。マーク情報は「0100」であるため、第2ビットが示す2つ目の割り基板WaにバッドマークMが存在するとして、2つ目の割り基板Waを無視して実装処理が実施される。
【0038】
このとき、図4Bに示すように、実装装置20Aで3枚目の基板Wが抜き取られて、オペレータによって入力部26が入力されると、実装装置20Aから実装装置20B、20Cに向けて抜き取り報告が通知される。各実装装置20A-20Cでは通常モードから認識モードにモード変更されて、認識部21の認識結果で得られたマーク情報を使用して実装処理が実施される。基板Wの抜き取りによって基板Wと投入番号との関係が崩れるが、各実装装置20A-20Cでは投入番号に関連付いたマーク情報を使用せずに、認識部21の認識結果を使用することで部品の欠品や無駄な実装が発生することがない。
【0039】
図4Cに示すように、通常モードから認識モードに変更されると、各実装装置20A-20Cでカウント値(投入番号)がリセットされると共に認識モードの継続期間が基板枚数で設定される。例えば、認識モードの継続期間に基板枚数「10枚」が設定されると、各実装装置20A-20Cで抜き取り報告を受けてから10枚の基板Wに対する実装処理が完了するまで認識モードが継続される。図4Cの例では実装装置20A、20Bについては10枚全ての基板Wの実装が完了したとして認識モードから通常モードに自動的に戻され、実装装置20Cについては10枚の基板Wの実装に1枚足りないとして認識モードが継続されている。
【0040】
以上のように、本実施の形態の生産システム1では、生産ラインから一部の基板Wが抜き取られて、オペレータによって抜き取り報告が入力されると、複数の実装装置20A-20Cが通常モードから認識モードに切り替えられる。複数の実装装置20A-20Cで投入番号に関連付けたマーク情報が使用される代わりに、基板Wに対するマークの認識動作が実施されるため、生産ラインから基板Wが抜き取られても部品の欠品や無駄な実装が生じることがない。よって、通常モードではマークの認識動作を省略して生産ラインの生産タクトを向上させることができ、認識モードでは基板の抜き取りによって部品の欠品や無駄な実装を抑えて復旧作業を簡略化することができる。
【0041】
なお、本実施の形態において、生産ラインの先頭の処理装置から通知された投入番号とマーク情報がホストコンピュータで管理される構成にしたが、この構成に限定されない。ホストコンピュータは、投入番号とマーク情報を関連付けるものであればよく、オペレータによって登録された投入番号とマーク情報を管理する構成にしてもよい。
【0042】
また、本実施の形態において、先頭の処理装置からホストコンピュータに投入番号とマーク情報が通知される構成にしたが、この構成に限定されない。ホストコンピュータが投入番号とマーク情報を関連付ける構成であればよく、例えば、生産開始前にホストコンピュータに投入番号とマーク情報が登録されていてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、ホストコンピュータのデータベースで投入番号とマーク情報が管理する構成にしたが、この構成に限定されない。ホストコンピュータにデータベースが設けられていなくてもよい。
【0044】
また、本実施の形態において、生産ラインの先頭の処理装置として検査装置を例示したが、この構成に限定されない。生産ラインの先頭の処理装置は、実装装置で構成されてもよい。
【0045】
また、本実施の形態において、部品基準マーク及びバッドマークのマーク情報が認識される構成について説明したが、この構成に限定されない。マーク情報は、基板上のマークの認識結果を示すものであればよく、例えば、部品基準マーク及びバッドマークのいずれかのマーク情報であってもよいし、その他のマーク情報であってもよい。
【0046】
また、本実施の形態において、基板に2次元コード等の識別情報が付されていない構成について説明したが、この構成に限定されない。基板には、2次元コード等の識別情報が付されていてもよい。
【0047】
また、本実施の形態において、基板は、プリント基板に限定されず、治具基板上に載せられたフレキシブル基板であってもよい。
【0048】
また、本実施の形態において、カウンタが1つずつ数字を増加させる構成にしたが、この構成に限定されない。カウンタは、基板が搬入される度にカウントするものであればよく、アルファベット等の文字列や漢数字を増加させる構成であってもよい。
【0049】
また、本実施の形態のプログラムは記憶媒体に記憶されてもよい。記憶媒体は、特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0050】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0051】
また、本開示の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0052】
さらに、上記実施の形態では、生産ラインに複数の実装装置が配置され、ホストコンピュータの管理下で基板に付されたマークに基づいて実装装置毎に実装処理を実施する生産システムであって、ホストコンピュータは、生産ラインに順番に投入された基板の投入番号にマーク情報を関連付けており、複数の実装装置には、基板に対してマークの認識動作を実施する認識部と、基板が搬入される度に基板枚数をカウントするカウンタと、ホストコンピュータから投入番号毎にマーク情報を取得する取得部と、生産ラインから基板を抜き取る際の複数の実装装置への抜き取り報告を受け付ける入力部と、抜き取り報告を受けた後に、カウント値に一致した投入番号のマーク情報を使用する通常モードから認識部の認識結果を使用する認識モードに切り替えるモード変更部とが設けられたこを特徴とする。この構成によれば、生産ラインから一部の基板が抜き取られて、オペレータによって抜き取り報告が入力されると、複数の実装装置が通常モードから認識モードに切り替えられる。複数の実装装置で投入番号に関連付けたマーク情報が使用される代わりに、基板に対するマークの認識動作が実施されるため、生産ラインから基板が抜き取られても部品の欠品や無駄な実装が生じることがない。よって、通常モードではマークの認識動作を省略して生産ラインの生産タクトを向上させることができ、認識モードでは基板の抜き取りによって部品の欠品や無駄な実装を抑えて復旧作業を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :生産システム
10:検査装置
11:認識部
13:カウンタ
14:通知部
20:実装装置
21:認識部
23:カウンタ
24:取得部
26:入力部
27:モード変更部
30:ホストコンピュータ
M :バッドマーク
W :基板
Wa:割り基板
図1
図2
図3
図4