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特許7142480マイクロ波及び高周波エネルギーを伝送する組織切除システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】マイクロ波及び高周波エネルギーを伝送する組織切除システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20220916BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61B18/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018115958
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019000649
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】15/626,867
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ディー. ブラナン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ダブリュー. ラーソン
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0100186(US,A1)
【文献】特開2012-161603(JP,A)
【文献】特開昭60-108062(JP,A)
【文献】特表2010-505573(JP,A)
【文献】特開2012-050758(JP,A)
【文献】特開2009-119218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を切除するための外科用器具であって、
ハンドル部分と、
前記ハンドル部分から遠位に延在するシャフトアセンブリと、を備え、前記シャフトアセンブリが、
遠位部分を有する外側シャフトであって、前記外側シャフトは、長手方向軸(X)を画定し、前記外側シャフトの前記遠位部分は、前記長手方向軸に直交する平面内で三角形の断面プロファイルを有する、外側シャフトと、
前記外側シャフトを通って延在し、前記外側シャフトの前記遠位部分内に配設された遠位部分を有する同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルの前記遠位部分が、径方向外向きに、かつ前記外側シャフトを通ってマイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成している、同軸ケーブルと、
前記外側シャフトの前記遠位部分に連結され、高周波エネルギーを伝送するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記外科用器具の作動が、前記マイクロ波アンテナからの前記マイクロ波エネルギーの前記伝送、又は前記少なくとも1つの電極からの前記高周波エネルギーの前記伝送のうちの少なくとも1つを起動する、少なくとも1つの電極と、を含む、外科用器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電極が、前記マイクロ波アンテナの遠位に配設されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電極が、前記マイクロ波アンテナから径方向外向きに、かつ前記マイクロ波アンテナから伝送される前記マイクロ波エネルギーの進行方向からずれて配設されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電極が、一対の双極電極である、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記シャフトアセンブリが、前記外側シャフトの前記遠位部分内、かつ前記マイクロ波アンテナの周囲に配設されたリフレクタを更に含む、請求項に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記リフレクタが、半円形状を有し、前記マイクロ波エネルギーの前記伝送を前記外側シャフトの縁に向けて方向付けるように構成され、前記外側シャフトの前記縁が、前記シャフトアセンブリによって画定された長手方向軸と平行に延在している、請求項に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記シャフトアセンブリが、前記外側シャフトの前記遠位部分内に配設された誘電体領域を更に含む、請求項に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記リフレクタと、前記外側シャフトの一対の隣接した外側部とが、協働して、内部に空洞を画定し、前記誘電体領域が、前記空洞を充填している、請求項に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記外側シャフトを通って延在し、前記マイクロ波アンテナから径方向外向きに配設された管を更に備え、前記管が、吸引を受けるように構成された近位部分を有する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電極が、前記マイクロ波アンテナの遠位に配設されたかぎ状遠位部分を含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記シャフトアセンブリが、外側シースを更に含み、前記外側シースが、前記外側シャフトの周囲に配設され、かつ前記かぎ状遠位部分が前記外側シース内に配設される第1の位置と、前記かぎ状遠位部分が前記外側シースの遠位に配設される第2の位置との間を、前記外側シャフトに対して軸方向に移動可能である、請求項10に記載の外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織切除システムに関し、具体的には、組織を凝固及び摘除するための組み合わせマイクロ波/高周波切除システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁放射線を利用する電気外科用デバイスが、様々な使用及び用途のために開発されている。典型的には、切除処置で使用するための装置としては、発電源、例えば、エネルギー源として機能するマイクロ波又は高周波(Radio Frequency、RF)電気外科用発生器、及びエネルギーを標的組織に方向付けるための外科用器具(例えば、アンテナアセンブリを有するマイクロ波切除プローブ)が挙げられる。これらの発生器及び外科用器具は、典型的には、発生器から器具にエネルギーを伝送するため、並びに器具と発生器との間で、制御、フィードバック、及び識別信号を通信するための複数の導体を有するケーブルアセンブリによって機能的に連結される。
【0003】
組織切除の用途で使用することができる、使用されている幾つかの種類のマイクロ波プローブ、例えば、モノポール、ダイポール、及び螺旋が存在する。モノポール及びダイポールアンテナアセンブリにおいて、マイクロ波エネルギーは、概して、導体の軸から離れる方向に、垂直に放射される。典型的には、モノポールアンテナアセンブリは、単一の細長い導体を含む。典型的なダイポールアンテナアセンブリは、直線的に整列し、かつ互いに対して端と端が繋がれて位置付けられ、間に電気絶縁体が配置された2つの細長い導体を含む。螺旋アンテナアセンブリには、様々な寸法、例えば、直径及び長さの螺旋状の導体形状が含まれる。螺旋アンテナアセンブリの主な動作モードは、螺旋軸に対して垂直な平面において螺旋による放射界が最大になるノーマルモード(ブロードサイド)、及び螺旋軸に沿ったときに放射が最大になる軸モード(エンドファイア)である。
【0004】
マイクロ波プローブの一用途は、肝臓又は腎臓等の実質臓器を切り裂いて、臓器の病変部分全体を除去することである。これらの処置の間、処置の有効性を損なうことなく、切り裂かれた臓器からの失血を最小化することが重要である。使用する外科用器具の数を低減することにより、処置を単純に保つ一方で、全処置時間も最小限に抑えることも特に重要である。
【0005】
したがって、実質臓器の病変部分を効果的に切り裂くために、組織切除処理中に複数の作業を行う1つの外科用器具を提供することが有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様において、組織を切除するための外科用器具が提供され、本外科用器具は、ハンドル部分と、該ハンドル部分から遠位に延在するシャフトアセンブリと、を含む。シャフトアセンブリは、外側シャフトと、該外側シャフトを通って延在する同軸ケーブルと、該外側シャフトの遠位部分に連結された電極と、を含む。同軸ケーブルは、外側シャフトの遠位部分内に配設された遠位部分を有する。同軸ケーブルの遠位部分は、径方向外向き、かつ外側シャフトを通ってマイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成する。ハンドル部分の作動は、マイクロ波アンテナからのマイクロ波エネルギーの伝送又は少なくとも1つの電極からの高周波エネルギーの伝送を起動する。
【0007】
いくつかの実施形態において、電極は、マイクロ波アンテナの遠位に配設され得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、電極は、マイクロ波アンテナから径方向外向き、かつマイクロ波アンテナから伝送されるマイクロ波エネルギーの進行方向からずれて配設され得る。電極は、一対の双極電極であり得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、外側シャフトの遠位部分は、くさび形形状を有し得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリは、外側シャフトの遠位部分内、かつマイクロ波アンテナの周囲に配設されたリフレクタを更に含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、リフレクタは、半円形状を有し得、外側シャフトの縁に向かってマイクロ波エネルギーの伝送を方向付けるように構成され得る。外側シャフトの縁は、シャフトアセンブリによって画定される長手方向軸と平行に延在し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリは、外側シャフトの遠位部分内に配設された誘電体領域を更に含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、リフレクタと、外側シャフトの一対の隣接した外側部とが協働して、内部に空洞を画定し得る。誘電体領域が、該空洞を充填し得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、外科用器具は、外側シャフトを通って延在し、マイクロ波アンテナから径方向外向きに配設され得る管を更に含み得る。該管は、吸引を受けるように構成された近位部分を有し得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、電極は、マイクロ波アンテナの遠位に配設されたかぎ状遠位部分を含み得る。シャフトアセンブリは、外側シースを更に含み、該外側シースは、外側シャフトの周囲に配設され、かつかぎ状遠位部分が外側シース内に配設される第1の位置と、かぎ状遠位部分が外側シースの遠位に配設される第2の位置との間を、外側シャフトに対して軸方向に移動可能であり得る。
【0016】
本開示の別の態様において、組織切除システムが提供され、該システムは、マイクロ波エネルギーを発生及び伝送するように構成されたマイクロ波発生器と、高周波エネルギーを発生及び伝送するように構成された電気外科用発生器と、外科用器具と、を含む。該外科用器具は、マイクロ波及び電気外科用発生器の両方に連結されるように構成されたハンドル部分と、該ハンドル部分の遠位に延在するシャフトアセンブリと、を含む。シャフトアセンブリは、外側シャフトと、該外側シャフトを通って延在する同軸ケーブルと、該外側シャフトの遠位部分に連結された電極と、を含む。同軸ケーブルは、マイクロ波発生器と電気的に通信するように構成された近位部分と、外側シャフトの遠位部分内に配設された遠位部分と、を有する。同軸ケーブルの遠位部分は、径方向外向き、かつ外側シャフトを通ってマイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成する。電極は、外側シャフトの遠位部分に連結され、電気外科用発生器と電気的に通信して、高周波エネルギーを伝送するように構成されている。ハンドル部分の作動は、マイクロ波アンテナからのマイクロ波エネルギーの伝送又は電極からの高周波エネルギーの伝送を起動する。
【0017】
本開示の更に別の態様において、組織の一部分を摘除する方法が提供され、該方法は、外科用器具のマイクロ波アンテナを組織の一部分に隣接して位置付けることと、マイクロ波エネルギーを組織の一部分内に伝送し、それによって該組織の一部分を前凝固させること、マイクロ波エネルギーの伝送を停止することと、外科用器具の外側シャフトの遠位部分を該組織に沿って移動させながら、外科用器具の電極から該組織内へ高周波エネルギーを伝送し、それによって該組織の一部分を摘除することと、を含む。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
組織を切除するための外科用器具であって、
ハンドル部分と、
上記ハンドル部分から遠位に延在するシャフトアセンブリと、を備え、上記シャフトアセンブリが、
遠位部分を有する外側シャフトと、
上記外側シャフトを通って延在し、上記外側シャフトの上記遠位部分内に配設された遠位部分を有する同軸ケーブルであって、上記同軸ケーブルの上記遠位部分が、径方向外向きに、かつ上記外側シャフトを通ってマイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成している、同軸ケーブルと、
上記外側シャフトの上記遠位部分に連結され、高周波エネルギーを伝送するように構成された少なくとも1つの電極であって、上記外科用器具の作動が、上記マイクロ波アンテナからの上記マイクロ波エネルギーの上記伝送、又は上記少なくとも1つの電極からの上記高周波エネルギーの上記伝送のうちの少なくとも1つを起動する、少なくとも1つの電極と、を含む、外科用器具。
(項目2)
上記少なくとも1つの電極が、上記マイクロ波アンテナの遠位に配設されている、上記項目に記載の外科用器具。
(項目3)
上記少なくとも1つの電極が、上記マイクロ波アンテナから径方向外向きに、かつ上記マイクロ波アンテナから伝送される上記マイクロ波エネルギーの進行方向からずれて配設されている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目4)
上記少なくとも1つの電極が、一対の双極電極である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目5)
上記外側シャフトの上記遠位部分が、くさび形形状を有する、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目6)
上記シャフトアセンブリが、上記外側シャフトの上記遠位部分内、かつ上記マイクロ波アンテナの周囲に配設されたリフレクタを更に含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目7)
上記リフレクタが、半円形状を有し、上記マイクロ波エネルギーの上記伝送を上記外側シャフトの縁に向けて方向付けるように構成され、上記外側シャフトの上記縁が、上記シャフトアセンブリによって画定された長手方向軸と平行に延在している、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目8)
上記シャフトアセンブリが、上記外側シャフトの上記遠位部分内に配設された誘電体領域を更に含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目9)
上記リフレクタと、上記外側シャフトの一対の隣接した外側部とが、協働して、内部に空洞を画定し、上記誘電体領域が、上記空洞を充填している、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目10)
上記外側シャフトを通って延在し、上記マイクロ波アンテナから径方向外向きに配設された管を更に備え、上記管が、吸引を受けるように構成された近位部分を有する、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目11)
上記少なくとも1つの電極が、上記マイクロ波アンテナの遠位に配設されたかぎ状遠位部分を含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目12)
上記シャフトアセンブリが、外側シースを更に含み、上記外側シースが、上記外側シャフトの周囲に配設され、かつ上記かぎ状遠位部分が上記外側シース内に配設される第1の位置と、上記かぎ状遠位部分が上記外側シースの遠位に配設される第2の位置との間を、上記外側シャフトに対して軸方向に移動可能である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用器具。
(項目13)
マイクロ波エネルギーを発生及び伝送するように構成されたマイクロ波発生器と、
高周波エネルギーを発生及び伝送するように構成された電気外科用発生器と、
外科用器具と、を備え、上記外科用器具が、
上記マイクロ波発生器及び電気外科用発生器の両方に連結されるように構成されたハンドル部分と、
上記ハンドル部分から遠位に延在するシャフトアセンブリと、を含み、上記シャフトアセンブリが、
遠位部分を有する外側シャフトと、
上記外側シャフトを通って延在し、上記マイクロ波発生器と電気的に通信するように構成された近位部分、及び上記外側シャフトの上記遠位部分内に配設された遠位部分を有する同軸ケーブルであって、上記同軸ケーブルの上記遠位部分が、径方向外向きに、かつ上記外側シャフトを通って上記マイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成している、同軸ケーブルと、
上記外側シャフトの上記遠位部分に連結され、上記電気外科用発生器と電気的に通信して、上記高周波エネルギーを伝送するように構成された少なくとも1つの電極であって、上記外科用器具の作動が、上記マイクロ波アンテナからの上記マイクロ波エネルギーの上記伝送、又は上記少なくとも1つの電極からの上記高周波エネルギーの上記伝送のうちの少なくとも1つを起動する、少なくとも1つの電極と、を含む、組織切除システム。
(項目14)
上記少なくとも1つの電極が、上記マイクロ波アンテナから径方向外向きに、かつ上記マイクロ波アンテナから伝送される上記マイクロ波エネルギーの進行方向からずれて配設されている、上記項目に記載の組織切除システム。
(項目15)
上記外側シャフトの上記遠位部分が、くさび形形状を有する、上記項目のいずれか一項に記載の組織切除システム。
(項目16)
上記シャフトアセンブリが、上記外側シャフトの上記遠位部分内、かつ上記マイクロ波アンテナの周囲に配設されたリフレクタを更に含む、上記項目のいずれか一項に記載の組織切除システム。
(項目17)
上記リフレクタが、半円形状を有し、上記マイクロ波エネルギーの上記伝送を、上記外側シャフトの縁に向けて方向付けるように構成され、上記外側シャフトの上記縁が、上記シャフトアセンブリによって画定された長手方向軸と平行に延在している、上記項目のいずれか一項に記載の組織切除システム。
(項目18)
上記シャフトアセンブリが、上記リフレクタと、上記外側シャフトの一対の隣接した外側部と、によって協働して画定された空洞を充填している誘電体領域を更に含む、上記項目のいずれか一項に記載の組織切除システム。
(項目19)
上記シャフトアセンブリが、上記外側シャフトの周囲に配設された外側シースを更に含み、上記少なくとも1つの電極が、上記マイクロ波アンテナの遠位、かつ上記外側シース内に配設されたかぎ状遠位部分を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組織切除システム。
(項目20)
組織の一部分を摘除する方法であって、
外科用器具のマイクロ波アンテナを、組織の一部分に隣接して位置付けることと、
マイクロ波エネルギーを、上記組織の上記一部分内に伝送し、それによって、上記組織の上記一部分を前凝固することと、
上記マイクロ波エネルギーの上記伝送を停止することと、
上記外科用器具の外側シャフトの遠位部分を上記組織に沿って移動させながら、上記外科用器具の少なくとも1つの電極から上記組織内へ高周波エネルギーを伝送し、それによって上記組織の上記一部分を摘除することと、を含む、方法。
(摘要)
組織を切除するための外科用器具は、ハンドル部分と、該ハンドル部分から遠位に延在するシャフトアセンブリと、を含む。シャフトアセンブリは、外側シャフトと、該外側シャフトを通って延在する同軸ケーブルと、該外側シャフトの遠位部分に連結された電極と、を含む。同軸ケーブルは、径方向外向きに、かつ外側シャフトを通ってマイクロ波エネルギーを伝送するように構成されたマイクロ波アンテナを形成する遠位部分を有する。電極は、高周波エネルギーを伝送するように構成されている。ハンドル部分の作動は、マイクロ波アンテナからのマイクロ波エネルギーの伝送及び/又は少なくとも1つの電極からの高周波エネルギーの伝送を起動する。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語平行及び垂直は、真の平行及び真の垂直から最大約+又は-10度の実質的に平行及び実質的に垂直である相対的構成を含むことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本出願に組み込まれ、かつ本出願の一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を図示し、上記の本開示の概説及び下記の実施形態(複数可)の詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0020】
図1】本開示の原理に従う、外科用器具、電気外科用発生器、マイクロ波発生器、及び外科用吸引ポンプを含む組織切除システムの斜視図である。
【0021】
図2】シャフトアセンブリの遠位部分に配設されたマイクロ波アンテナを図示する、図1の外科用器具の側面図である。
【0022】
図3A図2の3A-3Aの線に沿ってとった、シャフトアセンブリの近位部分の断面図である。
【0023】
図3B図2の3B-3Bの線に沿ってとった、シャフトアセンブリの遠位部分の断面図である。
【0024】
図4】マイクロ波アンテナの遠位に配設された双極電極を有するシャフトアセンブリの別の実施形態の側面図である。
【0025】
図5】例示的切除処置を図示する、図4の外科用器具の斜視図である。
【0026】
図6】本開示の原理に従う、外科用器具、電気外科用発生器、マイクロ波発生器、及び外科用吸引ポンプを含む組織切除システムの別の実施形態の斜視図である。
【0027】
図7】単極電極を覆う外側シースを図示する、図6の外科用器具の側面図である。
【0028】
図8】外側シースの外側に配設された単極電極を図示する、図6の側面図である。
【0029】
図9】例示的切除処置を図示する、図6の外科用器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
外科用器具の様々な実施形態及び該外科用器具の使用方法を含む、ここに開示される組織切除システムの実施形態が、図面を参照して詳細に説明され、該図面において、類似の参照番号は、複数の図のそれぞれにおいて同一又は対応する要素を示す。本明細書で使用するとき、用語「遠位」は、患者により近い、組織切除システム又は該組織切除システムの構成要素の一部分を指す一方で、用語「近位」は、患者からより遠い、組織切除システム又は該組織切除システムの構成要素の一部分を指す。
【0031】
以下に詳細に説明されるように、マイクロ波エネルギー伝送と高周波エネルギー伝送との間で切り替わる組織切除システムの外科用器具の実施形態が提供される。例えば、開示される外科用器具の一実施形態は、くさび形外側シャフトと、外側シャフトの遠位部分内に配設されたマイクロ波アンテナと、外側シャフトの遠位部分上に配設された単極電極又は双極電極と、を含む。手術中に、マイクロ波アンテナが起動され、外側シャフトの頂き部から組織内へとマイクロ波エネルギーが伝送されて、組織を前凝固する。組織が前凝固された後、マイクロ波アンテナを停止し、電極を起動して高周波エネルギーを組織内へと伝送させながら、外側シャフトの遠位部分を組織の外面に沿って移動させる。高周波エネルギーは、前凝固された組織を切除又は摘除して、最小限の出血を伴って、又は出血の発生を伴わずに組織の一部を取り除く。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「前凝固する」は、組織を摘除する際に、加熱された組織から血液が流れることを防ぐのに必要な程度まで組織を加熱することを意味する。
【0033】
本明細書で使用するとき、「マイクロ波」は概して、300メガヘルツ(MHz)(3×108サイクル/秒)~300ギガヘルツ(GHz)(3×1011サイクル/秒)の周波数範囲の電磁波を指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、「組織切除」は概して、例えば、マイクロ波切除、高周波(RF)切除、又はマイクロ波若しくはRF切除補助摘除等のあらゆる切除処置を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「伝送線」は概して、ある地点から別の地点まで信号を伝搬するのに使用することができるあらゆる伝送媒体を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、「流体」は概して、液体、気体、又はそれらの両方を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「コントローラ」は概して、デジタル及び/又はアナログ構成要素を用いて、デジタル及び/又はアナログ信号を発生させて、別のデバイスを制御又は駆動するあらゆる電気デバイスを指す。用語「コントローラ」は、本明細書に記載される方法のうちのいくつかを実行するための、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、又はプロセッサ、メモリ、及び入出力ポートを有するコンピュータを指す場合がある。
【0038】
ここに開示される外科用器具の様々な実施形態は、組織切除に、かつマイクロ波切除補助の外科的摘除のために、組織を前凝固するために使用するのに好適である。以下に記載される様々な方法は、標的組織のマイクロ波切除及び破壊及び/又は摘除を標的としているが、電磁放射線を方向付ける方法が、標的組織が部分的に破壊、損傷、又は切り裂かれる他の療法と共に使用されてもよい。更に、本開示の教示は、ダイポール、モノポール、螺旋、又は他の好適な種類のマイクロ波アンテナにも当てはまり得る。
【0039】
図1を参照すると、二重マイクロ波/RFエネルギー切除及び切断システム10が例示され、該システムは、一般的に、マイクロ波発生器12と、電気外科用発生器14と、外科用吸引ポンプ16に動作可能に連結された組織切除器具100と、を含む。マイクロ波発生器12は、同軸ケーブル102を介して外科用器具100の放射セクション「R」(図2)に伝送されるマイクロ波エネルギー信号を発生させる。マイクロ波発生器12によって発生されるマイクロ波エネルギーは、約915MHz~約25.0GHzの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、マイクロ波発生器12は、915MHz、2450MHz、及び/又は5800Mhzで動作し得る。電気外科用発生器14は、高周波信号を発生させ、この信号を、伝送線104を介して、外科用器具100の双極電極142a、142b(図3B)に出力する。外科用吸引ポンプ16は、吸引を生成し、吸引管106を介して、外科用器具100の遠位部分に位置するポート140(図2)にこの吸引を加える。いくつかの実施形態において、組織切除システム10は、冷却剤18(例えば、生理食塩水)の源と、手術中にその中の様々な構成要素を冷却するために外科用器具100に該冷却剤を運搬するためのポンプ20と、を更に含み得る。
【0040】
組織切除システム10の外科用器具100は、ハンドル部分112と、該ハンドル部分112から遠位に延在するシャフトアセンブリ120と、を含む。ハンドル部分112は、同軸ケーブル102、伝送線104、及び吸引管106の各々が内部を通って延在する本体部分114を有する。ハンドル部分112は、ハンドル部分112の本体部分114に移動可能に連結されたボタン、スイッチ、又はトリガ等の第1及び第2の制御装置116a、116bを含む。第1の制御装置116aは、マイクロ波発生器12と(例えば、無線若しくは有線接続で)電気的に通信し、外科用器具100のマイクロ波機能を選択的に作動させるように構成されてもよいか、又は第2の制御装置116bは、電気外科用発生器14と(例えば、無線若しくは有線接続で)電気的に通信し、外科用器具100の高周波機能を選択的に作動させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、外科用器具100のマイクロ波機能及び/又は高周波機能の作動は、外科用器具100の外部にあるボタン又はフットスイッチを介して達成され得る。
【0041】
図1、2、3A、及び3Bを参照すると、外科用器具100のシャフトアセンブリ120は、中空の細長い本体又は外側シャフト122と、外側シャフト122の外面を覆う外側コーティング又はシース124と、を含む。外側シャフト122は、ハンドル部分112に連結された近位部分122aと、遠位部分122bと、を有する。外側シャフト122は、長手方向軸「X」を画定し、くさび形又は三角形の断面プロファイルを有する。外側シャフト122は、平面基部126aと、該基部126aから鋭角で下向きに延在する対の側部126b、126cと、を有する。外側シャフト122の側部126b、126cは、これらの側部が繋がる点に先鋭形の頂き部又は縁128を形成する。外側シャフト122の縁128は、外側シャフト122の長手方向軸「X」と平行かつ該軸に沿って延在し、後に説明するように、組織表面に接触し、該表面に沿って移動するように構成されている。いくつかの実施形態において、外側シャフト122は、例えば、円形、V字型、U字型、楕円形、正方形、及び/又は多角形等の任意の好適な断面形状をとり得る。
【0042】
外側シャフト122の遠位部分122bは、外側シャフト122の近位部分122aに対して関節構造を呈するように構成されてもよい。具体的には、外側シャフト122の遠位部分122bは、近位部分122aに対して遠位部分122bが外側シャフト122の長手方向軸「X」と同軸にある図2に示される関節構造を呈さない構造と、遠位部分122bが外側シャフト122の長手方向軸「X」に対して0ではない角度で延在する図5に示す関節構造を呈する状態との間で動き得る。外側シャフト122の遠位部分122bは、付勢部材(図示せず)又は形状記憶合金によって、関節構造を呈していない状態に向かって弾性的に付勢されていてもよく、遠位部分122bに外圧を加えることによって関節構造を呈してもよいことが企図される。あるいは、外科分野で一般的であるように、関節接合ワイヤ及び関節構造を呈する節を、描写される関節接合を達成するために用いてもよい。
【0043】
図3A及び3Bを参照すると、外科用器具100の同軸ケーブル102は、外側シャフト122を通って画定されたチャネル130を通って軸方向に延在し、外側シャフト122の近位部分122aと共に配設された近位部分102aと、外側シャフト122の遠位部分122b内に配設された遠位部分102bと、を有する。同軸ケーブル102の近位部分102aは、内部を通るマイクロ波エネルギーの伝送中に近位部分102aが近位部分102aからの熱を放散するのによく適するように、より大きい直径、例えば、遠位部分102aの直径の1.5倍~3倍の直径を有する。同軸ケーブル102は、外側導体108aと、外側導体108aを通って同軸で延在する内側導体108bと、内側及び外側導体108a、108bの間に配設された誘電体108cと、を有する。内側導体108bは、外側導体108aの遠位端を超えて遠位に延在して、マイクロ波アンテナ132を形成又は画定し、このアンテナから、マイクロ波発生器12から生じるマイクロ波エネルギーが径方向外向きに放出される。
【0044】
外科用器具100のシャフトアセンブリ120は、外側シャフト122の遠位部分122b内に配設された中実コア誘電体領域134と、誘電体領域134の上部134bの周囲、かつマイクロ波アンテナ132の周囲に配設されたリフレクタ136と、を更に含み得る。誘電体領域134は、外側シャフト122の2つの外側部126b、126cの間で受容されている底部134aと、上部134bと、を有する。誘電体領域134の底部134aは、略三角形の形状を有し、上部134bは、略半円形の形状を有する。底部134aには、底先鋭形縁138が含まれ、この底部先鋭形縁138を通って、マイクロ波エネルギーが伝送される。底部134aの底縁138は、外側シャフト122の縁128に隣接して配設され、露出している(すなわち、リフレクタ136によって覆われていない)。誘電体領域134の上部134bは、誘電体領域134内を通って延在する同軸ケーブル102の遠位部分102bを有する。
【0045】
誘電体領域134は、限定されないが、セラミック材料、PTFE、Teflon(登録商標)、又はSABIC Innovative Plastics of Pittsfield(Mass.,USA)によって供給されているUltem(商標)非晶性熱可塑性ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)樹脂を含む、外科的処置関連の条件に耐えるのに十分な機械的かつ生体適合性特性を有する低損失誘電体装荷特性を有する任意の好適な誘電体材料から形成されてもよい。
【0046】
シャフトアセンブリ120のリフレクタ136は、誘電体領域134の上部134bを取り囲み、マイクロ波エネルギーを外側シャフト122の縁128に向けて方向付けるか、又は集めることを促進する半円形状を有する。いくつかの実施形態において、リフレクタ136は、誘電体領域134を通って、かつ外側シャフト122の縁128に向けてマイクロ波エネルギーを集めるのに好適な、例えば、放射線状、半半球形等の任意の形状をとり得る。リフレクタ136と外側シャフト122の一対の外側部126b、126cとが協働して内部に空洞139を画定し、この空洞139が、誘電体領域134によって充填されることが企図される。リフレクタ136は、層又はコーティングであってもよく、限定されないが、銅めっき、銅ホイル、又はPolyflon(商標)を電気めっきしたPTFE等の、マイクロ波エネルギーを反射する能力を有する任意の好適な材料から形成されてもよい。
【0047】
図2、3A、及び3Bを参照すると、外科用器具100の吸引管106は、外側シャフト122を通って軸方向に延在している。管106は、外科用吸引ポンプ16に連結された近位部分106aと、マイクロ波アンテナ132から径方向外向き、かつマイクロ波アンテナ132から伝送されるマイクロ波エネルギーの経路の外に配設された遠位部分106bと、を有する。管106の遠位部分106bは、マイクロ波アンテナ132を超えて遠位に延在し、外側シャフト122の遠位先端に隣接して終了する。外側シャフト122及び外側シース124は、外科用吸引ポンプ16が起動されたらポート140が吸引ポートとして機能するように、管106の遠位部分106bと流体連結するポート140を内部に画定する。
【0048】
図3A及び3Bを参照すると、外科用器具100のシャフトアセンブリ120は、外側シャフト122の遠位部分122b内、かつマイクロ波アンテナ132から径方向外向きに配設された一対の双極電極142a、142bを更に含む。電極142a、142bの位置は、電極142a、142bの位置がマイクロ波アンテナ132から伝送されるマイクロ波エネルギーの経路からずれるように選択されている。電極142a、142bは、伝送線104を介して、電気外科用発生器14に電気的に連結されている。伝送線104は、外側シャフト122内で2つの電極リード104a、104bに分かれている。一対の双極電極の第1の電極142aは、外側シャフト122の基部126a上に配設され得、一対の双極電極の第2の電極142bは、第1及び第2の電極142a、142bが互いに対して角度をなすように、外側シャフト122の第2の外側部126c上に配設され得る。第1及び第2の電極142a、142bは、互いにごく近接しており(例えば、互いから約0.025~0.050インチ以内)、一方でこれらの電極の長さに沿って電気的に絶縁された状態を保っている。
【0049】
図4の実施形態に例示されるように、双極電極142a、142bをマイクロ波アンテナ132から径方向外向きに位置付ける代わりに、双極電極142a、142bは、マイクロ波アンテナ132の遠位に配設され得る。これにより、外側シャフト122の長手方向軸「X」に対して垂直に方向付けられたマイクロ波アンテナ132から伝送されるマイクロ波エネルギーは、遠位に位置する電極142a、142bを通って移動しない。
【0050】
手術中に、図5に示すように、肝臓組織「T」の切片等の組織の一部分は、本開示の組織切除システム10を使用して、切除及び摘除され得る。外側シャフト122の遠位部分122bの縁128は、摘除される肝臓組織「T」の表面「S」と接触して配置され得る。外側シャフト122の縁128の先鋭形の設計に起因して、外側シャフト122の縁128と組織表面「S」との接触は、組織「T」に陥凹又は谷部分を形成する。外側シャフト122の縁128が組織「T」と係合した状態で、ハンドル部分112の第1の制御装置116aが作動されて、外科用器具100のマイクロ波機能を起動し、それによりマイクロ波発生器12が、同軸ケーブル102を介してマイクロ波エネルギーをマイクロ波アンテナ132に伝送する。
【0051】
シャフトアセンブリ120のリフレクタ136は、マイクロ波エネルギーの一部分を誘電体領域134の縁138、外側シャフト122の縁128、及び最終的には組織「T」の谷部分内に向かって方向を変える。マイクロ波エネルギーが組織「T」の谷部分内に伝送されると、外科用器具100は、肝臓組織「T」の摘除平面「P」に沿って外側シャフト122の縁128を移動又は滑動され、それによってマイクロ波エネルギーの周波数及びマイクロ波アンテナ132が起動されている時間の長さに比例した深さで下層組織を前凝固するように操作される。
【0052】
外科用器具100の外側シャフト122の縁128の、摘除平面「P」に沿った移動は、前凝固の所望の深さ及び/又は幅が達成されるまで、継続される。組織の前凝固の所望の深さ及び幅が達成されると、マイクロ波エネルギーの伝送は停止され、双極電極142a、142bが前凝固された組織「T」の組織表面「S」に隣接して配置される。
【0053】
図2と共に図3Aに示されるように、双極電極142a、142bを組織表面「S」に隣接して配向するために(図5)、外科用器具100の外側シャフト122は、長手方向軸「X」を中心として約5°~約180°、いくつかの実施形態において約130°回転されて、外側シャフト122の第2の縁129(図3B)を、組織表面「S」(図5)に係合させる。第2の縁129は、外側シャフト122の第2の外側部126c及び外側シャフト122の基部126aによって画定される。図4に例示される実施形態において、双極電極142a、142bを組織表面「S」に隣接して配向するために、外科用器具100の外側シャフト122は、長手方向軸「X」を中心として回転されるよりもむしろ、外側シャフト122の遠位先端に向かって傾けられる。
【0054】
外側シャフト122の第2の縁129を摘除平面「P」に沿って移動させながら、第2の制御装置116bが作動されて外科用器具の高周波機能を起動し、それにより電気外科用発生器14が電極リード104a、104bを介して双極電極142a、142bに高周波エネルギーを伝送する。高周波エネルギーは、摘除平面「P」に沿って肝臓組織「T」を摘除するように、外側シャフト122の第2の縁129から外れて方向付けられる。
【0055】
上記の工程は、次第により深い深さの組織「T」を前凝固するように反復され得、次いで組織「T」の所望の部分が臓器の残部から分離されるまで、前凝固線に沿って摘除し得る。外科用吸引ポンプ16は、処置中及び/又は処置後の任意の時点で起動されて、外科用器具100のポート140を介して外科的細片及び/又は外科的煙を除去してもよい。双極摘除又は切断のための摘除線は前凝固された組織の境界内にあるため、マイクロ波エネルギーを使用して組織を前凝固することにより、失血が最小化される。更に、この処置は、臓器のあらゆる摘除又は切断の前にこの同じ前凝固により、がん組織が再び蒔かれる機会を低減する。
【0056】
図6図9を参照すると、二重マイクロ波/RFエネルギー切除システムの別の実施形態が、図1図5を参照して上に記載される組織切除システム10と類似したシステム210として例示される。本開示の組織切除システム10、210の類似性のため、2つの切除システム10、210の間の選択された違いの解明において重要であるとみなされる詳細のみを詳述する。
【0057】
二重マイクロ波/RFエネルギー切除システム210は、一般に、マイクロ波発生器12と、高周波発生器14と、外科用吸引ポンプ16に動作可能に連結された組織切除器具200と、を含む。マイクロ波発生器12は、マイクロ波信号を発生させ、同軸ケーブル202を介して外科用器具200のマイクロ波アンテナ232に該信号を出力する。電気外科用発生器14は、高周波信号を発生させ、伝送線204を介して外科用器具200の単極電極242に該信号を出力する。伝送線204から生じた戻り信号は、電気外科用発生器14に連結された接地パッド205によって受信され得る。外科用吸引ポンプ16は、吸引を生成し、吸引管206を介して、外科用器具200の遠位部分に位置するポート240にこの吸引を加える。いくつかの実施形態において、組織切除システム210は、冷却剤18(例えば、生理食塩水)と、手術中にその中の様々な構成要素を冷却するために外科用器具200に該冷却剤を運搬するためのポンプ20と、を更に含み得る。
【0058】
組織切除システム210の外科用器具200は、ハンドル部分212と、該ハンドル部分212から遠位に延在するシャフトアセンブリ220と、を含む。シャフトアセンブリ220は、中空の細長い本体又は外側シャフト222と、外側シャフト222の外面を覆う外側コーティング又はシース224と、を含む。外側シース224は、ハンドル部分212のボタン、スイッチ、又はトリガ等の制御装置216に動作可能に連結されている。外側シース224は、以下に詳述されるように、制御装置216の作動に応答して、ハンドル部分212及び外側シャフト222に対して、近位位置と遠位位置との間を軸方向に移動して、外科用器具200のフック状の単極電極242を選択的に露出させる。
【0059】
シャフトアセンブリ220は、該シャフトアセンブリの末端部にマイクロ波アンテナ232を形成する同軸ケーブル202を更に含む。マイクロ波アンテナ232及び該アンテナに関連する構成要素(例えば、リフレクタ及び誘電体領域)は、上記のマイクロ波アンテナ132に類似しており、したがって、本明細書には更に詳細には記載しない。単極電極242は、外側シャフト222の外面と外側シース224の内面との間に配設され、電気外科用発生器14に電気的に連結されている。単極電極242は、伝送線204と通信する近位部分242aと、マイクロ波アンテナ232を超えて遠位に延在する遠位部分242bと、を有する。いくつかの実施形態において、単極電極242の近位部分242aは、制御装置216の作動が単極電極242を外側シース224に対して近位位置と遠位位置との間で移動させるように、制御装置216に機械的に連結されている場合がある。
【0060】
単極電極242の遠位部分242bは、組織と接触すると、該組織を押し下げるためのかぎ状の形状を有し得る。具体的には、遠位部分242bは、外側シャフト222によって画定された長手方向軸に対して垂直の角度で延在している。いくつかの実施形態において、単極電極242の遠位部分242bは、外側シャフト222の長手方向軸に対して様々な角度、例えば、0°~180°で延在してもよい。他の実施形態において、単極電極242の遠位部分242bはかぎ状の形状をとるよりもむしろ、遠位部分242bは、螺旋形状、湾曲した形状等をとり得る。
【0061】
手術中に、図9に示すように、肝臓組織「T」の切片等の組織の一部分は、本開示の組織切除システム210を使用して、切除及び摘除され得る。外科用器具200の外側シース224が単極電極242bの遠位部分242bを覆っている状態で、外側シャフト222の遠位部分の縁は、摘除される肝臓組織「T」の表面「S」と接触して配置され得る。外側シャフト222の縁と組織表面「S」との接触は、組織「T」に陥凹又は谷部分を形成する。ハンドル部分212は作動されて、外科用器具200のマイクロ波機能を起動し、それによりマイクロ波発生器12は、同軸ケーブル202を介してマイクロ波アンテナ232にマイクロ波エネルギーを伝送する。
【0062】
マイクロ波アンテナ232は、該アンテナから径方向外向きにかつ外側シャフト222の縁に向かって、かつ組織「T」に形成された谷部分内へとマイクロ波エネルギーを方向付ける。マイクロ波エネルギーが組織「T」の谷部分内に伝送されると、外科用器具200は、肝臓組織「T」の摘除平面「P」に沿って外側シャフト222の縁を移動又は滑動され、それによってマイクロ波エネルギーの周波数及びマイクロ波アンテナ232が起動されている時間の長さに比例した深さで下層組織を前凝固するように操作される。
【0063】
外科用器具200の外側シャフト222の縁の、摘除平面「P」に沿った移動は、前凝固の所望の深さ及び/又は幅が達成されるまで、継続される。組織の前凝固の所望の深さ及び幅が達成されると、マイクロ波エネルギーの伝送は停止され、シャフトアセンブリ220の外側シース224は、近位位置に向かって近位に移動され、単極電極242の遠位部分242bを露出させる。いくつかの実施形態において、外側シース242を近位に移動させて単極電極の遠位部分242bを露出させる代わりに、単極電極242は、外側シース224を超えて遠位に移動され得る。単極電極242の遠位部分242bが露出された状態で、単極電極242の遠位部分242bは、摘除平面「P」に沿って前凝固された組織の組織表面「S」に接触する。
【0064】
単極電極242を摘除平面「P」に沿って移動させながら、ハンドル部分212の制御装置216が作動されて外科用器具200の高周波機能を起動し、それにより電気外科用発生器14が単極電極242に高周波エネルギーを伝送し、それにより高周波エネルギーが肝臓組織「T」内へと方向付けられて、摘除平面「P」に沿って肝臓組織「T」を摘除する。
【0065】
上記の工程は、組織「T」の所望の体積が前凝固され、臓器の残部から摘除されるまで、次第により深い深さにある組織「T」を前凝固するように反復され得る。外科用吸引ポンプ16は、処置中及び/又は処置後の任意の時点で起動されて、外科用器具200のポート240を介して外科的細片及び/又は外科的煙を除去してもよい。
【0066】
上記の組織切除システムは、マイクロ波及び高周波エネルギーを組織内へと方向付けることができ、様々な処置及び手術で使用するのに好適であり得る。上記の組織切除システムは、手で補助する内視鏡及びラパロスコープ外科的処置と共に利用するのに好適であり得る。上記の組織切除システムは、開腹手術用途での利用にも好適であり得る。
【0067】
がん性又は病変の標的組織の効果的な同定は、コンピュータ断層撮影(computed tomographic、CT)画像の使用を伴う。診断ツールとしてのCTの使用は、今日では当たり前のこととなっており、CTの結果は、今ではしばしば、病変のサイズ及び位置に関する、施術者に利用可能な主な情報源である。この情報は、生検等の手術手技を計画するのに施術者によって使用されるが、典型的に、手術が始まる前に施術者ができる限り記憶しなければならない「オフライン」情報として単に利用可能である。標的の情報の入力に加えて、CTデータとの統合は、システム機能の改善をもたらし、それによって同定された標的への経路の計画を大幅に容易にし、かつ体を通って標的の位置へと誘導する能力を提供する。
【0068】
例示及び説明のための添付の図面を参照して実施形態が詳細に説明されてきたが、本発明のプロセス及び装置が該説明によって限定されるものと解釈すべきではないことを理解されたい。本開示の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対する様々な修正を行えることは当業者には明白であろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9