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特許7142506ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/225 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
C03B5/225
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018133489
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011855
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508271425
【氏名又は名称】安瀚視特股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AvanStrate Taiwan Inc.
【住所又は居所原語表記】NO.8,Industry III Road,Annan,Tainan,709 Taiwan,Province of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新 彰夫
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178713(JP,A)
【文献】国際公開第2010/147188(WO,A1)
【文献】特開2016-190753(JP,A)
【文献】特開2016-034894(JP,A)
【文献】特開2014-047124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/225
C03B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の製造方法であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解工程と、
清澄槽内で前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間を形成し、前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を備え、
前記清澄槽は、前記気相空間と接し、白金族金属を含む材料から構成された内壁を有し、
前記清澄槽には、
前記気相空間と前記清澄槽の外部とを連通する通気管と、
前記通気管内を流れる気体の一部を取り込む取込口を有する先端部を前記通気管内に備え、取り込んだ気体の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、が設けられ、
前記清澄工程では、前記清澄槽に電流を流して前記清澄槽内の前記熔融ガラスを加熱し、
前記内壁から揮発して前記通気管内で凝集した白金族金属を介して前記通気管と前記先端部とが電気的に接続した状態で、前記清澄槽に供給された電流のうち前記通気管から前記酸素濃度計に流れた電流を前記清澄槽に流す、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記清澄槽の周りに、前記清澄槽を囲むように断熱部材が配置され、
前記断熱部材は、金属製の枠部材により前記断熱部材の外側から支持され、
前記酸素濃度計は、前記枠部材に対して絶縁されている、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記酸素濃度計は、
前記取込口から取り込んだ気体の酸素濃度を測定する測定部と、
前記取込口から前記測定部に向かって延び、前記先端部を有する管状の取込部と、を有し、
前記酸素濃度計に流れた電流は、前記取込部から前記清澄槽に戻される、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
ガラス基板製造装置であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解装置と、
清澄槽を有し、前記清澄槽内で前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間を形成し、前記熔融ガラスの清澄を行う清澄装置と、を備え、
前記清澄槽は、前記気相空間と接し、白金族金属を含む材料から構成された内壁を有し、電流が供給されることにより前記清澄槽内の前記熔融ガラスを加熱し、
前記清澄装置は、さらに、
前記気相空間と前記清澄槽の外部とを連通する通気管と、
前記通気管内を流れる気体の一部を取り込む取込口を有する先端部を前記通気管内に備え、取り込んだ気体の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
前記酸素濃度計と前記清澄槽とを接続する導電部材と、を有し、
前記清澄装置は、前記内壁から揮発して前記通気管内で凝集した白金族金属を介して前記通気管と前記先端部とが電気的に接続した状態で、前記導電部材を用いて、前記清澄槽に供給された電流のうち前記通気管から前記酸素濃度計に流れた電流を前記清澄槽に流す、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
清澄剤を用いて熔融ガラスを清澄するために、清澄槽の清澄管内の熔融ガラスを加熱し、熔融ガラスに含まれる清澄剤の脱泡作用を促進させることにより、熔融ガラス内で気泡を浮上させ、清澄管内の気相空間に気泡内のガスを放出させることが行われている。熔融ガラスの加熱は、例えば、清澄管に電流を供給し、清澄管を加熱することで行われる。気相空間は、清澄管の内壁と清澄管内の熔融ガラスの液面とで囲まれた空間である。清澄管の構成材料として、例えば、耐熱性に優れた白金族金属からなる材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
清澄管の内壁のうち気相空間に接する部分は、熔融ガラスに接する部分と比べ、温度が高くなりやすい。さらに、気相空間は酸素を含んでいるため、気相空間に接する清澄管の部分に含まれる白金族金属は、酸化されて、清澄管の内壁から揮発し、蒸気として気相空間内に分散しやすい。気相空間に接する清澄管の部分には、気相空間内の気体を清澄管の外に排出するために、通気管が設けられている場合がある。しかし、通気管は、清澄管の外に突出するように設けられているため、清澄管と比べ温度が低くなりやすく、通気管内を流れる白金族金属の揮発成分は、通気管内で過飽和状態となって凝集する場合がある。
【0004】
ところで、気相空間内の酸素濃度が高くなると、清澄管の構成材料である白金族金属から発生する白金族金属の揮発成分が多くなり、白金異物が発生しやすい。このため、酸素濃度計を用いて酸素濃度を測定し、酸素濃度が高くなった場合に、アルゴン、窒素等の不活性ガスを気相空間内に導入して気相空間内の酸素濃度を下げることが行われる場合がある。酸素濃度計は、例えば、通気管内を流れる気体を取り込む取込口を備える管状の部分(取込部)を有し、取り込み部の先端部は通気管内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-522001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、通気管内で白金族金属の揮発成分が凝集し、時間の経過とともに成長すると、通気管と酸素濃度計とが白金族金属の凝集物により電気的に接続し、導通してしまう場合があることがわかった。通気管と酸素濃度計とが導通すると、清澄管を流れる電流の一部が酸素濃度計に流れるため、清澄管を流れる電流量が突発的に変化してしまう。そして、このような清澄管を流れる電流量の突発的な変化に起因して、清澄管内の熔融ガラス中に気泡が発生する場合があることが明らかにされた。熔融ガラス中にこのような気泡が発生すると、清澄管内で熔融ガラスから放出されずに残存し、ガラス基板内に残って品質欠陥を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、清澄槽に電流を供給して熔融ガラスの清澄を行う際に、清澄槽を流れる電流量の突発的な変化を抑制し、これに起因して熔融ガラスに気泡が発生することを抑制できるガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ガラス基板の製造方法であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解工程と、
清澄槽内で前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間を形成し、前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を備え、
前記清澄槽は、前記気相空間と接し、白金族金属を含む材料から構成された内壁を有し、
前記清澄槽には、
前記気相空間と前記清澄槽の外部とを連通する通気管と、
前記通気管内を流れる気体の一部を取り込む取込口を有する先端部を前記通気管内に備え、取り込んだ気体の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、が設けられ、
前記清澄工程では、前記清澄槽に電流を流して前記清澄槽内の前記熔融ガラスを加熱し、前記内壁から揮発して前記通気管内で凝集した白金族金属を介して前記通気管と前記先端部とが電気的に接続した状態で、前記清澄槽に供給された電流のうち前記通気管から前記酸素濃度計に流れた電流を前記清澄槽に流す、ことを特徴とする。
【0009】
前記清澄槽の周りに、前記清澄槽を囲むように断熱部材が配置され、
前記断熱部材は、金属製の枠部材により前記断熱部材の外側から支持され、
前記酸素濃度計は、前記枠部材に対して絶縁されていることが好ましい。
【0010】
前記酸素濃度計は、
前記取込口から取り込んだ気体の酸素濃度を測定する測定部と、
前記取込口から前記測定部に向かって延び、前記先端部を有する管状の取込部と、を有し、
前記酸素濃度計に流れた電流は、前記取込部から前記清澄槽に戻されることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに別の一態様は、ガラス基板製造装置であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解装置と、
清澄槽を有し、前記清澄槽内で前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間を形成し、前記熔融ガラスの清澄を行う清澄装置と、を備え、
前記清澄槽は、前記気相空間と接し、白金族金属を含む材料から構成された内壁を有し、電流が供給されることにより前記清澄槽内の前記熔融ガラスを加熱し、
前記清澄装置は、さらに、
前記気相空間と前記清澄槽の外部とを連通する通気管と、
前記通気管内を流れる気体の一部を取り込む取込口を有する先端部を前記通気管内に備え、取り込んだ気体の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
前記酸素濃度計と前記清澄槽とを接続する導電部材と、を有し、
前記清澄装置は、前記内壁から揮発して前記通気管内で凝集した白金族金属を介して前記通気管と前記先端部とが電気的に接続した状態で、前記導電部材を用いて、前記清澄槽に供給された電流のうち前記通気管から前記酸素濃度計に流れた電流を前記清澄槽に流す、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、清澄槽に電流を供給して熔融ガラスの清澄を行う際に、清澄槽を流れる電流量の突発的な変化を抑制し、これに起因して熔融ガラスに気泡が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の製造方法のフローを示す図である。
図2】ガラス基板製造装置の概略図である。
図3】清澄装置の概略図である。
図4】清澄管の長手方向と直交する方向に沿った清澄装置の断面図である。
図5】断熱部材及び枠部材を示す外観斜視図である。
図6】通気管と酸素濃度計との導通を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のガラス基板の製造方法およびガラス基板製造装置について説明する。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。本実施形態には、後述する種々の実施形態が含まれる。ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)、清澄工程(ST2)、均質化工程(ST3)、供給工程(ST4)、成形工程(ST5)、徐冷工程(ST6)、および、切断工程(ST7)を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有してもよい。製造されたガラス基板は、必要に応じて梱包工程で積層され、納入先の業者に搬送される。
【0018】
熔解工程(ST1)では、ガラス原料を加熱することにより熔融ガラスを作る。
清澄工程(ST2)では、熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が発生する。この泡が熔融ガラス中に含まれる清澄剤(酸化スズ等)の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して放出される。その後、清澄工程(ST2)では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。清澄工程(ST2)は、熔融ガラスを清澄槽内に流しながら行われる。
なお、清澄工程(ST2)では、熔融ガラスに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。減圧脱泡方式は、清澄剤を用いない点で有効である。しかし、減圧脱泡方式は装置が複雑化及び大型化する。このため、清澄剤を用い、熔融ガラス温度を上昇させる清澄方法を採用することが好ましい。
【0019】
均質化工程(ST3)では、スターラを用いて熔融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。均質化工程は、後述する撹拌槽において行われる。
供給工程(ST4)では、撹拌された熔融ガラスが成形装置に供給される。
【0020】
成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)は、成形装置で行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形には、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、徐冷後のシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス基板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
【0021】
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)から切断工程(ST7)の各工程を行うガラス基板製造装置の概略図である。ガラス基板製造装置は、図2に示すように、主に熔融ガラス製造装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔融ガラス製造装置100は、熔解槽101と、清澄槽の本体である清澄管120を有する清澄装置102と、撹拌槽103と、移送管104、105と、ガラス供給管106と、を有する。
熔解槽101は、熔解装置の本体である。熔解装置は、熔解槽101のほか、図示されないバーナー等の加熱手段を有している。熔解槽101には清澄剤が添加されたガラス原料が投入され、熔解工程(ST1)が行われる。熔解槽101で熔融した熔融ガラスは、高温(例えば1300℃以上)に維持された状態で、移送管104を介して清澄管120に供給される。
清澄管120では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスの清澄工程(ST2)が行われる。具体的には、清澄管120内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して気相空間に放出される。気相空間は、熔融ガラスの液面と、清澄管120の内壁との間に形成されるように熔融ガラスを清澄管120内に流すことで形成される。その後、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄後の熔融ガラスは、移送管105を介して撹拌槽103に供給される。
撹拌槽103では、撹拌子103aによって熔融ガラスが撹拌されて均質化工程(ST3)が行われる。撹拌槽103で均質化された熔融ガラスは、ガラス供給管106を介して成形装置200に供給される(供給工程ST4)。
成形装置200では、オーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスからシートガラスSGが成形され(成形工程ST5)、徐冷される(徐冷工程ST6)。
切断装置300では、シートガラスSGから切り出された板状のガラス基板が形成される(切断工程ST7)。
【0022】
(清澄装置及び清澄工程)
次に、図3及び図4を参照して、清澄装置102について説明する。図3は、清澄装置102の概略斜視図であり、図4は、清澄管120の長手方向と直交する方向に沿った清澄装置102の断面図である。
清澄装置102は、清澄槽と、電源装置122と、制御装置123と、通気管127と、酸素濃度計140と、を有している。
【0023】
清澄槽は、清澄槽の本体である清澄管120と、電極121a,121b,121c(図2参照)と、温度計測装置130と、を有している。
清澄管120、電極121a,121b,121c、及び通気管127は、白金族金属から構成されている。なお、本明細書において、「白金族金属」は、白金族元素からなる金属を意味し、単一の白金族元素からなる金属のみならず白金族元素の合金を含む用語として使用する。ここで、白金族元素とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の6元素を指す。白金族金属は高価ではあるが、融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
なお、本実施形態では、清澄管120が白金族金属から構成されている場合を具体例として説明するが、清澄管120の一部が、耐火物や他の金属などから構成されていてもよい。
【0024】
電極121a,121b,121cは、図2に示す例において、清澄管120の長手方向(図3の左右方向)の両端、及びその間の位置、の清澄管120の外周側面に設けられている。なお、図3において、電極121bの図示は省略されている。
電極121a,121b,121cは、電源装置122に接続されている。電極121a,121bの間、及び電極121b,121cの間のそれぞれに電圧が印加されることにより、電極121a,121bの間、及び電極121b,121cの間の清澄管120の各部分に電流が流れて、清澄管120が通電加熱される。これにより、清澄管120内の熔融ガラスが加熱される。
例えば電極121a,121bの間では、脱泡処理が促進される温度に加熱される。具体的には、清澄管120の最高温度が例えば、1600℃~1750℃、より好ましくは1630℃~1750℃となるように加熱され、移送管104から供給された熔融ガラスの最高温度は、脱泡に適した温度、例えば、1600℃~1720℃、より好ましくは1620℃~1720℃に加熱される。
例えば電極121b,121cの間では、吸収処理が促進される温度に加熱される。具体的には、清澄管120の最高温度が例えば、1590℃~1670℃、より好ましくは1620℃~1670℃となるよう加熱され、清澄管120内を流れる熔融ガラスの最高温度は、吸収に適した温度1590℃~1640℃、より好ましくは1610℃~1640℃に加熱される。
【0025】
温度計測装置(熱電対等)130は、例えば、電極121a,121b,121cと清澄管120との接続部分に設けられている。なお、電極121a,121b,121cと清澄管120とは、例えば溶接により接続されている。温度計測装置130は、計測結果を、制御装置123に出力する。
制御装置123は、電源装置122と接続されている。制御装置123は、電源装置122が清澄管120に供給する電流量を制御し、清澄管120を通過する熔融ガラスの温度を制御する。制御装置123は、CPU、メモリ等を含むコンピュータである。また、制御装置123は、温度計測装置130、及び酸素濃度計140のそれぞれとも接続されている。
【0026】
通気管127は、清澄管120内の気相空間120a(図4参照)と清澄管120の外部(大気)とを連通する。気相空間120aと接する清澄管120の壁部の頂部には、壁部を貫通する図示されない孔が設けられている。通気管127は、壁部の孔の上方に配置され、例えば、鉛直方向上方に向かって直線状に延びる形状を有している。図3及び図4に示す例において、清澄管120と通気管127とは隙間をあけて配置されている。図3及び図4に示す例では、後述する断熱部材150が、清澄管120との間に隙間をあけて配置されることで囲み空間128が形成されている。通気管127の下端と、清澄管120の壁部の孔は、囲み空間128を介して接続されている。なお、通気管127の下端は、清澄管120の頂部に接続され、壁部の孔を介して清澄管120に対して開口していてもよい。通気管127は、清澄管120の長手方向に沿った、電極121aと電極121bの間、あるいは、電極121bと電極121cの間の位置に設けられていることが好ましい。
【0027】
酸素濃度計140は、図4に示すように、取込部141と、測定部145と、を有している。
取込部141は、通気管127から測定部145に向かって延びる管状の部分である。通気管127側に位置する取込部141の端部(先端部)142は、取込口142a(図6参照)を有し、通気管127の大気側の端(上端)から通気管127内を下方に延びるよう配置されている。先端部142は、通気管127の内壁から離間して、通気管127が延びる方向と略平行な方向に延びている。取込部141は、導電性を有する金属製の管から構成される。
測定部145は、取込口142aから取り込まれた気体の酸素濃度を測定する。測定部145は、ジルコニア式のセンサを備え、気体中の酸素を検出する。測定部145は、酸素濃度の計測結果を、制御装置123に出力する。
【0028】
(第1の実施形態)
次に、本実施形態の第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態において、清澄装置102は、さらに、図4に示すように、導電部材170を有している。導電部材170は、酸素濃度計140と清澄管120とを電気的に接続する部材であり、導電性材料からなる部材(例えば導線)である。導電性材料とは、20℃での導電率が1×106S/m以上である材質からなる材料をいう。導電部材170は、具体的に、酸素濃度計140の先端部142、及び清澄管120の外周側面のそれぞれと接続されている。
【0029】
第1の実施形態の清澄工程(ST2)では、清澄管120の内壁から揮発して通気管127内で凝集した白金族金属を介して通気管127と酸素濃度計140とが電気的に接続した状態で、清澄管120に供給された電流のうち通気管127から酸素濃度計140に流れた電流を清澄管120に流す。清澄装置102は、具体的に、白金族金属の凝集物を介して通気管127と酸素濃度計140とが導通したとき、導電部材170を用いて、酸素濃度計140に流れた電流を清澄管120に流す。
上述したように、通気管127は、清澄管120と比べ温度が低くなりやすく、気相空間120aから通気管127内に流れた白金族金属の揮発成分は、通気管127内で過飽和状態となって凝集する場合がある。本発明者の検討によれば、図6に示すように、通気管127の内壁に析出した白金族金属の凝集物Pが、時間の経過とともに成長し、酸素濃度計140の先端部142に達することで、通気管127と酸素濃度計140とが導通する場合があることがわかった。図6は、通気管127と酸素濃度計140との導通を説明する図である。通気管127と酸素濃度計140とが導通すると、清澄管120を流れる電流の一部が、通気管127に流れ、図6に矢印で示した経路に沿って、さらに凝集物Pを通って酸素濃度計140に流れるため、清澄管120を流れる電流量が突発的に変化してしまう。清澄管120から通気管127には、例えば断熱部材150を通って電流が流れる。このような電流量の突発的な変化が起きると、制御装置123による電流量の制御が困難となり、清澄管120内の熔融ガラスの温度が大きく変動する。このことに起因して、清澄管内の熔融ガラス中に気泡が発生する場合があることが明らかにされた。熔融ガラス中にこのような気泡が発生すると、清澄管120内で熔融ガラスから放出されずに残存し、ガラス基板内に残って品質欠陥を招くおそれがある。
第1の実施形態によれば、通気管127と酸素濃度計140の先端部142とが導通すると、先端部142に流れた電流は導電部材170を通って清澄管120に戻るので、清澄管120を流れる電流が外部に漏れるのを抑えられる。このため、電流量の突発的な変化を抑えることができ、熔融ガラス中に気泡が発生することを抑制できる。
【0030】
一実施形態によれば、清澄装置102は、図4及び図5に示す例のように、さらに、断熱部材150と、枠部材(フレーム)160と、を有している。図5は、断熱部材150及び枠部材160を示す外観斜視図である。
断熱部材150は、清澄管120の周りに、清澄管120を囲むように配置された部材である。断熱部材150は、複数の図示されない耐火レンガを有し、耐火レンガは、清澄管120を囲むよう積み上げられている。
枠部材160は、金属製の部材であり、導電性を有する。枠部材160は、断熱部材150を外側から支持し、清澄管120の周りに配置された耐火レンガが崩れないよう拘束する。図5に示す例の枠部材160は、耐火レンガを、清澄管120に向けて上下方向、及び左右方向(清澄管120の長手方向と直交する方向)に押し付けるように設けられている。枠部材160は、アースされている。
この実施形態において、酸素濃度計140の測定部145は、図4に示すように、断熱部材150及び枠部材160の外側に配置される。ここで、酸素濃度計140が枠部材160に支持されていると、通気管127と酸素濃度計140と導通して酸素濃度計140に流れた電流が、さらに枠部材160に流れてしまう。このため、酸素濃度計140は、枠部材160に対して絶縁されている。図4において、導電部材170は、枠部材160に対して紙面奥行方向に離間している。
導電部材170は、導電部材170を流れる電流が周辺の断熱部材150に漏れ出ないよう、樹脂等の絶縁性の高い材料で被覆されていることが好ましい。
【0031】
一実施形態によれば、導電部材170は、酸素濃度計140の取込部141と接続されていることが好ましい。これにより、通気管127と導通して酸素濃度計140に流れた電流は、取込部141から清澄管120に戻されるので、酸素濃度計140の測定部145に電流が流れることを抑制できる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態において、清澄装置102は、判断装置と、除去装置と、を有している。判断装置は、例えば、制御装置123が、白金族金属の凝集物Pを除去するタイミングを判断する判断を行うためのプログラムをメモリに読み出して実行することによって実現される。
【0033】
判断装置は、清澄管120の内壁から揮発して通気管127内で凝集した白金族金属を介して通気管127と先端部142とが電気的に接続する前に白金族金属の凝集物Pを除去するタイミングを判断(決定)する判断工程を行う。
上述したように、通気管127と酸素濃度計140とが導通すると、清澄管120を流れる電流の一部が、通気管127に流れ、さらに凝集物Pを通って酸素濃度計140に流れる。このことに起因して、熔融ガラスMGに気泡が発生する場合がある。第2の実施形態では、上述したように、白金族金属の凝集物Pを除去するタイミングが判断されるので、判断されたタイミングに従って凝集物Pの除去を行うことができ、通気管127と酸素濃度計140との導通を防ぐことができる。これにより、電流量の突発的な変化を抑えることができ、熔融ガラス中に気泡が発生することを抑制できる。
【0034】
判断工程では、酸素濃度計140の測定結果に基づいて、凝集物Pを除去するタイミングを判断することが好ましい。気相空間内の気体の酸素濃度が高いと、通気管127内で白金族金属の揮発成分の凝集が起きやすいため、通気管127の内壁に析出した凝集物Pの成長が早く、通気管127と酸素濃度計140との導通が起きやすい。このため、上述したように、酸素濃度計140の測定結果に基づいて上記判断を行うことで、通気管127と酸素濃度計140との導通を防ぐことができる。具体的には、酸素濃度計140が測定した酸素濃度が許容濃度を超えたこと、あるいは、さらに許容濃度を超えた累積時間が許容時間を超えたこと、をもって凝集物Pを除去するタイミングであると判断する。酸素濃度の許容濃度は、例えば、5%以下、好ましくは1%以下である。許容濃度を超えた累積時間は、ガラス基板の製造方法を開始してから、あるいは、直近に行った凝集物Pの除去からの、酸素濃度が許容濃度を超えた時間の合計であり、例えば、8~48時間である。酸素濃度計140の測定結果として、例えば、酸素濃度が1%を超えた時間の合計が、48時間以上となった場合、凝集物Pを除去するタイミングになったと判断して、凝集物Pの除去を行う。
また、判断工程では、凝集物Pを除去するタイミングとして将来のある時点を判断(決定)することを行ってもよい。例えば清澄工程(ST2)の条件が一定である場合は、通常、気相空間内の気体の酸素濃度の変化量は少ない。このため、凝集物Pを除去するタイミングとして将来のある時点を判断することが可能である。この場合、酸素濃度計140の測定時点での酸素濃度、あるいは、直近の所定期間の間の酸素濃度の推移に基づいて、凝集物Pを除去するタイミングを判断することができる。
【0035】
除去装置は、判断工程で判断したタイミングに従って凝集物Pの除去を行う除去工程を行う。除去装置は、例えば、通気管127の大気側の端から凝集物Pの除去を吸い取る吸引装置(図示せず)である。吸引装置は、制御装置123に接続されており、制御装置123は、上述したように判断された凝集物Pを除去するタイミングに従って吸引装置を稼働し、凝集物Pの除去を行う。吸引を行いながら、器具を用いて、通気管127の内壁に析出した凝集物Pを削り取ることを行ってもよい。
【0036】
第2の実施形態は、上記説明した第1の実施形態と組み合わせて、清澄装置102を構成し、あるいは、ガラス基板の製造方法を行うことができる。
【0037】
(ガラス基板)
本実施形態において製造されるガラス基板の大きさは、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが、500mm~3500mm、1500mm~3500mm、1800~3500mm、2000mm~3500mmであり、2000mm~3500mmであることが好ましい。
ガラス基板の厚さは、例えば、0.1~1.1mmであり、より好ましくは0.75mm以下の極めて薄い矩形形状の板であり、例えば、0.55mm以下、さらには0.45mm以下の厚さがより好ましい。ガラス基板の厚さの下限値は、0.15mmが好ましく、0.25mmがより好ましい。
【0038】
<ガラス組成>
このようなガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO2 55~80モル%、
Al23 8~20モル%、
23 0~12モル%、
RO 0~17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0039】
SiO2は60~75モル%、さらには、63~72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0~10モル%、CaOが0~15モル%、SrOが0~10%、BaOが0~10%であることが好ましい。
【0040】
また、SiO2、Al23、B23、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
【0041】
また、モル%表示のB23の含有率の2倍とモル%表示のROの含有率の合計は、30モル%以下、好ましくは10~30モル%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05~1.5モル%含み、As、Sb及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
【0042】
また、本実施形態によって製造されるガラス基板には、無アルカリのボロアルミノシリケートガラスあるいはアルカリ微量含有ガラスが用いられることが好ましい。
本実施形態によって製造されるガラス基板は、例えば以下の組成を含む無アルカリガラスからなることが好ましい。
本実施形態によって製造されるガラス基板のガラス組成として、例えば、次が挙げられる(質量%表示)。
SiO:50~70%(好ましくは、57~64%)、Al:5~25%(好ましくは、12~18%)、B:0~15%(好ましくは、6~13%)を含み、さらに、次に示す組成を任意に含んでもよい。任意で含む成分として、MgO:0~10%(好ましくは、0.5~4%)、CaO:0~20%(好ましくは、3~7%)、SrO:0~20%(好ましくは、0.5~8%、より好ましくは3~7%)、BaO:0~10%(好ましくは、0~3%、より好ましくは0~1%)、ZrO:0~10%(好ましくは、0~4%,より好ましくは0~1%)が挙げられる。さらに、R’O:0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
【0043】
或いは、SiO:50~70%(好ましくは、55~65%)、B:0~10%(好ましくは、0~5%、1.3~5%)、Al:10~25%(好ましくは、16~22%)、MgO:0~10%(好ましくは、0.5~4%)、CaO:0~20%(好ましくは、2~10%、2~6%)、SrO:0~20%(好ましくは、0~4%、0.4~3%)、BaO:0~15%(好ましくは、4~11%)、RO:5~20%(好ましくは、8~20%、14~19%),を含有することが好ましい(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)。さらに、R’Oが0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
【0044】
<ヤング率>
本実施形態によって製造されるガラス基板のヤング率として、例えば、72GPa以上が好ましく、75GPa以上がより好ましく、77GPa以上がより更に好ましい。
【0045】
<歪点>
本実施形態によって製造されるガラス基板の歪率として、例えば、650℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、700℃以上、720℃以上が更により好ましい。
【0046】
<熱収縮率>
本実施形態によって製造されるガラス基板の熱収縮率は、例えば、50ppm以下であり、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更により好ましくは20ppm以下である。熱収縮率を低減する前のガラス基板の熱収縮率の範囲としては、10ppm~40ppmが好ましい。
【0047】
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、カーブドパネルディスプレイ用ガラス基板を含むディスプレイ用ガラス基板として好適であり、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板あるいは、有機ELディスプレイ用のガラス基板として好適である。さらに、本実施形態で製造されるガラス基板は、高精細ディスプレイに用いられる、IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)等の酸化物半導体を使用した酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板、及びLTPS(低温度ポリシリコン)半導体を使用したLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。
また、本実施形態で製造されるガラス基板は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板などにも適用することが可能である。
【0048】
以上、本発明のガラス基板製造装置およびガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
100 熔融ガラス製造装置
101 熔解槽
102 清澄装置
103 撹拌槽
103a 撹拌子
104,105 移送管
106 ガラス供給管
120 清澄管(清澄槽の本体)
120a 気相空間
121a,121b,121c 電極
122 電源装置
123 制御装置
127 通気管
128 囲み空間
130 温度測定装置
140 酸素濃度計
150 断熱部材
160 枠部材
170 導通部材
200 成形装置
300 切断装置
MG 熔融ガラス
SG シートガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6