(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】建具の梱包構造および梱包方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/64 20060101AFI20220916BHJP
B65D 81/05 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B65D85/64 Z
B65D81/05 100
(21)【出願番号】P 2018148926
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】稲木 翔一
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-177788(JP,A)
【文献】特開平07-112726(JP,A)
【文献】特開2007-138587(JP,A)
【文献】特開2002-154581(JP,A)
【文献】特開2002-274561(JP,A)
【文献】特開2006-143287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/64
B65D 81/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の少なくとも一方の木口の一部に形成された切欠に弾性変形可能なクッション材が設けられた建具を、少なくとも垂直木口材からなる木口材で梱包する梱包構造であって、垂直木口材は建具のクッション材が設けられた木口に当接するように設けられると共に、該木口当接面に形成される凹部によって該凹部の底面とクッション材との間に空隙が形成されるように設けられ、建具の幅方向両木口が一対の梱包材で被覆された状態で梱包されることを特徴とする、建具の梱包構造。
【請求項2】
さらに、建具の下端木口に当接するように設けられる水平木口材を有することを特徴とする、請求項1記載の建具の梱包構造。
【請求項3】
垂直木口材の下端は建具の下端からさらに下方に延長する突出部を有しており、水平木口材の幅方向一方の木口が垂直木口材の該突出部の内側面に当接して設けられることを特徴とする、請求項2記載の建具の梱包構造。
【請求項4】
幅方向の少なくとも一方の木口の一部に形成された切欠に弾性変形可能なクッション材が設けられた建具の梱包方法であって、建具のクッション材が設けられた木口に当接するように且つクッション材と接触しない空隙を形成するように垂直木口材を配置する工程と、建具の幅方向両木口を一対の梱包材で被覆する工程と、一対の梱包材で被覆された建具の表裏および幅方向両木口に結束具を周回させて梱包体として一体化させる工程と、を有することを特徴とする、建具の梱包方法。
【請求項5】
垂直木口材を配置する工程の後に、建具の下端木口に当接するように水平木口材を配置する工程を行うことを特徴とする、請求項4記載の建具の梱包方法。
【請求項6】
水平木口材を配置する工程において、水平木口材の幅方向一方の木口を、建具の下端からさらに下方に延長する垂直木口材の突出部の内側面に当接させて水平木口材を配置することを特徴とする、請求項5記載の建具の梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建具の梱包構造および梱包方法に関し、特に、幅方向の少なくとも一方の木口の一部に形成された切欠に弾性変形可能なクッション材が設けられたドアや引戸などの建具を梱包する梱包構造および梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアなどの建具については、主として運搬中の傷付きを防止するために、段ボールなどからなる断面コの字形の梱包材を建具の端縁部や角部に取り付けて被覆することが従来から行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-33092号公報
【文献】特開2007-138587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、指挟み時の怪我を防止ないし軽減するために軟質樹脂からなるクッション材が木口(戸先側木口および/または戸尻側木口)に設けられた建具(特許文献2)の場合、これを上記従来技術による梱包材で梱包した梱包体を、該クッション材が設けられた木口を下にして立てかけると、建具の自重によって梱包材が変形し、同時にクッション材が変形してしまうという問題があった。
【0005】
また、このような建具の運搬中などにおいてクッション材が設けられた木口が構造物などに衝突して衝撃が加わったときや、PPバンドなどの結束具を用いて梱包体(梱包材で梱包された建具)を結束するときも、衝撃や結束による圧力を受けて梱包材と共にクッション材が変形することがあった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、自重や衝撃、圧力などが加わって梱包材が変形したときであっても、建具の木口に設けられたクッション材の変形を防止することができる新規な建具の梱包構造および梱包方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、幅方向の少なくとも一方の木口の一部に形成された切欠に弾性変形可能なクッション材が設けられた建具を、少なくとも垂直木口材からなる木口材で梱包する梱包構造であって、垂直木口材は建具のクッション材が設けられた木口に当接するように設けられると共に、該木口当接面に形成される凹部によって該凹部の底面とクッション材との間に空隙が形成されるように設けられ、建具の幅方向両木口が一対の梱包材で被覆された状態で梱包されることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の建具の梱包構造において、さらに、建具の下端木口に当接するように設けられる水平木口材を有することを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、請求項2記載の建具の梱包構造において、垂直木口材の下端は建具の下端からさらに下方に延長する突出部を有しており、水平木口材の幅方向一方の木口が垂直木口材の該突出部の内側面に当接して設けられることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、幅方向の少なくとも一方の木口の一部に形成された切欠に弾性変形可能なクッション材が設けられた建具の梱包方法であって、建具のクッション材が設けられた木口に当接するように且つクッション材と接触しない空隙を形成するように垂直木口材を配置する工程と、建具の幅方向両木口を一対の梱包材で被覆する工程と、一対の梱包材で被覆された建具の表裏および幅方向両木口に結束具を周回させて梱包体として一体化させる工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、請求項4記載の建具の梱包方法において、垂直木口材を配置する工程の後に、建具の下端木口に当接するように水平木口材を配置する工程を行うことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項6に係る発明は、請求項5記載の建具の梱包方法において、水平木口材を配置する工程において、水平木口材の幅方向一方の木口を、建具の下端からさらに下方に延長する垂直木口材の突出部の内側面に当接させて水平木口材を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明の建具の梱包構造によれば、建具においてクッション材が設けられる戸先側木口が垂直木口材で被覆された上から梱包材で梱包されるので、梱包材に凹みや破れが生じても、垂直木口材で保護される。したがって、建具の戸先側木口の損傷を防ぐことができる。
【0014】
また、垂直木口材の凹部底面とクッション材との間に空隙が形成され、この空隙にクッション材を収容することができるので、クッション材は垂直木口材とは非接触に保持される。したがって、運搬時などに建具に自重や衝撃、圧力などが加わっても、クッション材の弾性変形によるクッション機能を低下させることがなく、所期の指挟み防止効果を長期に亘って維持することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明の建具の梱包構造によれば、建具の下端木口が水平木口材で被覆された上から梱包材で梱包されるので、梱包材に凹みや破れが生じても、水平木口材で保護される。したがって、梱包体を乱暴に立てかけたようなときであっても、建具の下端木口の損傷を防ぐことができる。
【0016】
請求項3に係る本発明の建具の梱包構造によれば、建具の戸先側木口と下端木口との角部において垂直木口材と水平木口材とがいわゆる縦勝ちの配置関係で設けられるので、垂直木口材が内側(空隙を狭める方向)にずれることを防止する。したがって、垂直木口材に内方向への圧力が加わっても、空隙が確保され、クッション材の変形を防止する効果を損なわずに維持することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明の建具の梱包方法によれば、建具においてクッション材が設けられる戸先側木口の損傷を防止すると共に、クッション材による指挟み防止効果を維持することができる。また、PPバンドなどの結束具を用いて結束することにより、建具が垂直木口材および梱包材と共に一体化され、建具が緊密に梱包された梱包体を得ることができる。
【0018】
請求項5に係る本発明の建具の梱包方法によれば、建具の下端木口が水平木口材で被覆された上から梱包材で梱包されるので、梱包材に凹みや破れが生じても、水平木口材で保護される。したがって、梱包体を乱暴に立てかけたようなときであっても、建具の下端木口の損傷を防ぐことができる。
【0019】
請求項6に係る本発明の建具の梱包方法によれば、建具の戸先側木口と下端木口との角部において垂直木口材と水平木口材とがいわゆる縦勝ちの配置関係で設けられるので、垂直木口材が内側(空隙を狭める方向)にずれることを防止する。したがって、垂直木口材に内方向への圧力が加わっても、空隙が確保され、クッション材の変形を防止する効果を損なわずに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による建具の梱包構造を示す正面図である。
【
図2】実施例1の梱包構造から一対の梱包材およびPPバンド(結束具)を除いた状態を示す正面図である。
【
図3】実施例1の梱包構造の四隅部を主に示す一部破断拡大正面図である。この図において、各材の配置および長さなどが容易に理解できるように、戸先側木口板材(内側戸先側木口板材および外側戸先側木口板材)、下端木口板材(内側下端木口板材および外側下端木口板材)および梱包材にはそれぞれハッチングを付して示されている。
【
図4】実施例1の変形例による建具の梱包構造を示す、
図3と同様の一部破断拡大正面図である(梱包材は図示省略)。
【
図5】実施例1の他の変形例による建具の梱包構造を示す、
図3と同様の一部破断拡大正面図である(梱包材は図示省略)。
【
図6】本発明の他の実施形態(実施例2)による建具の梱包構造から一対の梱包材およびPPバンド(結束具)を除いた状態を示す、
図2と同様の正面図である。
【
図7】実施例2の梱包構造の四隅部を主に示す、
図3と同様の一部破断拡大正面図である(梱包材は図示省略)。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態(実施例3)による建具の梱包構造から一対の梱包材およびPPバンド(結束具)を除いた状態を示す、
図2と同様の正面図である。
【
図9】実施例3の梱包構造の四隅部を主に示す、
図3と同様の一部破断拡大正面図である(梱包材は図示省略)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施例および変形例を挙げて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1ないし
図3を参照して、本発明の実施例1による建具の梱包構造について説明する。この梱包構造10は、ドアまたは引戸として構成される建具20を、戸先側木口板材11、下端木口板材12、角当て13、梱包材14およびPPバンド(結束具)15で梱包してなるものである。実施例1における建具20は、戸先側木口23の近くに引手25が設けられた引戸であり、中央上下2箇所にガラスなどが嵌め込まれた採光部26,26を有するものとして示されている。
【0023】
建具20には、戸先側木口23の上下方向略中央から下端木口24にかけて延長する切欠21(
図3)が形成され、この切欠21に軟質樹脂からなるクッション材22が設けられている。クッション材22の取付手法は問わないが、たとえば、切欠21の側面に金属製のレール(図示せず)が固定され、この金属製レールに断面略コ字形のクッション材22を係合させて取り付けることができる。クッション材22は、特許文献2に記載されるように、建具20を閉止する際に、建具20の戸先側木口23と開口縦枠(図示せず)との間に指が挟まって怪我をすることを防止ないし軽減するために設けられる。
【0024】
戸先側木口板材11は、建具20の戸先側木口23を被覆するものであり、内側戸先側木口板材111と外側戸先側木口板材112とからなる。内側戸先側木口板材111と外側戸先側木口板材112はいずれも合板、LVL、MDFなどの繊維板その他の木質材からなる板材であるが、内側戸先側木口板材111は、建具20に取り付けられたクッション材22と干渉しないように、建具20の戸先側木口23の上方部分のみを覆うように設けられる比較的短尺の板材であるのに対し、外側戸先側木口板材112は、内側戸先側木口板材111の外側に、建具20の戸先側木口23の全般を覆うように設けられる長尺の板材である。したがって、内側戸先側木口板材111が設けられない建具20の戸先側木口23の下方部分(クッション材22が存在する部分)において、外側戸先側木口板材112と建具20の戸先側木口23との間には空隙113が形成され、この空隙113によって後述するようにクッション材22の変形を防止する。好ましい一例として、内側戸先側木口板材111および外側戸先側木口板材112の厚さ(建具20の幅方向)はいずれも12mm以上であり、したがって空隙113も12mm以上である。内側戸先側木口板材111および外側戸先側木口板材112の幅(建具20の厚さ方向)はいずれも建具20の厚さと略同一である。
【0025】
下端木口板材12は、建具20の下端木口24を被覆するものであり、内側下端木口板材121と外側下端木口板材122とからなる。内側下端木口板材121と外側下端木口板材122はいずれも合板、LVL、MDFなどの繊維板その他の木質材からなる長尺ないし短冊状の板材であるが、内側下端木口板材121は、建具20の下端木口24の全般を覆うように設けられる長尺の板材であるのに対し、外側下端木口板材122は、建具20の下端木口24のうち戸先側木口23に近い部分のみを覆うように設けられる比較的短尺の板材である。好ましい一例として、内側下端木口板材121および外側下端木口板材122の厚さ(高さ方向)はいずれも12mm以上である。内側下端木口板材121および外側下端木口板材122の幅(建具20の厚さ方向)はいずれも建具20の厚さと略同一である。
【0026】
なお、この実施形態では、内側下端木口板材121が建具20の戸先側木口23から内側戸先側木口板材111の厚さ相当分だけ戸先方向に突出して設けられると共に、外側戸先側木口板材112の下端が建具20の下端木口24から内側下端木口板材121の厚さ相当分だけ下方に突出して設けられており、内側下端木口板材121の戸先側木口が、外側戸先側木口板材112の下端突出部112aの内側面に当接するように設けられている(いわゆる縦勝ちの状態)。
【0027】
また、この実施形態では、外側下端木口板材122は、内側下端木口板材121の戸先側木口から外側戸先側木口板材112の厚さ相当分だけ戸先方向にさらに突出する長さを有しており、この突出部122aに外側戸先側木口板材112の下端が当接するように設けられている(いわゆる横勝ちの状態)。これにより、縦勝ちで当接する内側下端木口板材121と外側戸先側木口板材112との継目が外側下端木口板材122の突出部122aで覆われ、外側戸先側木口板材112のめくれを防止することができる。
【0028】
角当て13は硬質樹脂などからなり、建具20の厚さに相当する幅の中空部を有し、建具20の角部に嵌め込んで取り付けることにより該角部を保護するものである。この実施形態では、3つの角当て13、すなわち、建具20自体の戸尻側上端角部に装着される角当て13aと、内側下端木口板材121越しに建具20の戸尻側下端角部に装着される角当て13bと、戸先側木口板材11(外側戸先側木口板材112)越しに建具20の戸先側上端角部に装着される角当て13cが用いられている。戸尻側において上端角部に装着される角当て13aと下端角部に装着される角当て13bは連結板16(例えば厚さ2mm)で連結され、角当て13aと角当て13bとの間隔を建具20の高さに対応する一定寸法に維持している。なお、この実施形態によれば、建具20の戸先側下端角部は外側戸先側木口板材112、内側下端木口板材121および外側下端木口板材122で被覆されていることによって傷付きから十分に保護されているので、戸先側下端角部の角当ては省略されているが、この角部にも角当てを装着しても良いことは言うまでもない。戸先側下端角部に角当てを設ける場合は、外側下端木口板材122は省略可能である。
【0029】
梱包材14は、建具20の戸先側木口23に戸先側木口板材11(内側戸先側木口板材111および外側戸先側木口板材112)が設けられると共に下端木口24に下端木口板材12(内側下端木口板材121および外側下端木口板材122)が設けられ、さらに角当て13a~13cが設けられた状態で、戸先側木口23から表裏面の一部にかけて連続して被覆する戸先側梱包材141と、戸尻側木口27から表裏面の一部にかけて連続して被覆する戸尻側梱包材142の一対からなる。戸先側梱包材141および戸尻側梱包材142は、いずれも、建具20の高さ(および角当て13a~13cが建具20の上下木口から突出する僅かな寸法)に亘る高さ寸法を有して略コ字形に形成された段ボールからなり、その幅方向中央部で建具20(戸先側木口板材11)の外側木口を被覆し、該中央部から両側に略直角に延長する両側部で建具20の表裏面の一部を被覆する。
【0030】
PPバンド15は、上記のようにして梱包材14(戸先側梱包材141および戸尻側梱包材142)が設けられた状態で、略水平方向に数本(図示実施形態では3本)用いられる。これにより、建具20に戸先側木口板材11(内側戸先側木口板材111および外側戸先側木口板材112)、下端木口板材12(内側下端木口板材121および外側下端木口板材122)および角当て13a~13cが設けられてPPバンド15で一体に結束された梱包体10が得られる。なお、建具20の表裏面の中央部には、梱包材14(戸先側梱包材141および戸尻側梱包材142)で被覆されずに露出する領域が残されるので、この部分がPPバンド15に接して傷付くことを防ぐために、梱包材14(戸先側梱包材141および戸尻側梱包材142)を設けた上から樹脂製フィルムなどの包装材(図示せず)で包装した後に、PPバンド15で結束することが好ましい。あるいは、梱包前(各木口板材や角当てを配置する前)の建具20を包装材で包装しても良い。
【0031】
以上に述べた梱包工程は、建具20を平置きにした状態で行われ、PPバンド15で結束することにより、各木口板材(内側戸先側木口板材111,外側戸先側木口板材112,内側下端木口板材121,外側下端木口板材122)が角当て13a~13cおよび梱包材141,142により建具20の各木口に押し付けられ、各木口板材が所定の位置関係を保持したまま、建具20を緊密に梱包することができる。
【0032】
上記構成の梱包体10によれば、建具20の戸先側木口23は、木質材料からなる戸先側木口板材11(内側戸先側木口板材111および外側戸先側木口板材112)で被覆された上から、段ボールからなる戸先側梱包材141で梱包される。したがって、戸先側梱包材141に凹みや破れが生じても、強度のある戸先側木口板材11(特に全高に亘る長尺の外側戸先側木口板材112)で保護されるので、建具20の戸先側木口23の損傷を防ぐことができる。さらに、内側戸先側木口板材111を短尺にして、外側戸先側木口板材112と建具20の戸先側木口23との間に空隙113を形成することにより、この空隙113にクッション材22を収容することができるので、クッション材22は外側戸先側木口板材112とは非接触に保持される。したがって、運搬時などに建具20に自重や衝撃、圧力などが加わったときも、クッション材22の変形(厚さ方向)が防止され、所期の指挟み防止効果が損なわれない。
【0033】
また、建具20の下端木口24は、木質材料からなる下端木口板材12(内側下端木口板材121および外側下端木口板材122)で被覆された上から、段ボールからなる梱包材14(戸先側梱包材141および戸尻側梱包材142)で梱包されるので、梱包材14に凹みや破れが生じても、強度のある下端木口板材12(特に全幅に亘る長尺の内側下端木口板材121)で保護される。したがって、この梱包体10を乱暴に立てかけたようなときであっても、建具20の下端木口24の損傷を防ぐことができる。また、クッション材22の下端が内側下端木口板材121と外側下端木口板材122とによって二重に被覆されているので、この梱包体10を乱暴に立てかけたようなときであっても、クッション材22の変形(上下方向)を防止することができる効果がより顕著に発揮される。
【0034】
また、外側戸先側木口板材112と内側下端木口板材121とが縦勝ちの状態で配置されているので、外側戸先側木口板材112が内側(空隙113を狭める方向)にずれることを防止する。したがって、外側戸先側木口板材112の下方部分(内側戸先側木口板材111が存在しない部分)に内方向への圧力が加わっても、空隙113が確保され、クッション材22の変形を防止する効果を損なわずに維持することができる。戸尻側下端角部に角当て13bが取り付けられた状態で戸尻側梱包材142がPPバンド15で結束されることにより、内側下端木口板材121の戸尻方向へのずれが防止されていることも、上記した縦勝ち配置による外側戸先側木口板材112の内側へのずれを防止して空隙113を確保する効果を与えることに寄与している。
【0035】
上記した図示実施形態では、戸先側木口板材11が内側戸先側木口板材111と外側戸先側木口板材112とからなり、下端木口板材12が内側下端木口板材121と外側下端木口板材122とからなるものとし、これらをそれぞれ独立した状態(一体化せずに分離された状態)で用いているが、それぞれの内側木口板材111,121と外側木口板材112,122とを接着剤やステープルなどで一体化して用いても良い。
【0036】
また、
図4に示すように、内側戸先側木口板材111に相当する部分11aと外側戸先側木口板材112に相当する部分11bとを有するように形成した単一の戸先側木口板材11を用い、内側下端木口板材121に相当する部分12aと外側下端木口板材122に相当する部分12bとを有するように形成した単一の下端木口板材12を用いても良い。この場合の単一の戸先側木口板材11は、建具20の戸先側木口23に当接する内側面の下方部を切除することにより、クッション材22を非接触に収容するための空隙113を形成する。戸先側木口板材11と下端木口板材12は、それぞれ独立した状態(一体化せずに分離された状態)で用いても良いし、接着剤やステープルなどで一体化して用いても良い。あるいはまた、
図5に示すように、
図4の戸先側木口板材11に相当する部分17aと下端木口板材12に相当する部分17bとを有するように断面略L字形に形成した単一の木口板材17を用いても良い。
【実施例2】
【0037】
図6および
図7を参照して、本発明の実施例2による建具の梱包構造について説明する。この梱包構造は、実施例1の梱包構造10と同様に、建具(引戸)20を、戸先側木口板材11、下端木口板材12、角当て13、梱包材14およびPPバンド(結束具)15で梱包してなるものであるが、建具20の戸先側木口23において切欠21aに戸先側クッション材22aが設けられるだけでなく、戸尻側木口27においても同様に切欠21bにクッション材22bが設けられており、これに伴って、建具20の木口を被覆する板材の構成および配置が異なっている。
【0038】
すなわち、この実施形態によると、建具20の戸先側木口23において、実施例1と同様に、内側戸先側木口板材111と外側戸先側木口板材112とからなる戸先側木口板材11が設けられることに加えて、建具20の戸尻側木口27においても、内側戸尻側木口板材181と外側戸尻側木口板材182とからなる戸尻側木口板材18が設けられる。内側戸尻側木口板材181と外側戸尻側木口板材182とからなる戸尻側木口板材18の材質、寸法、配置関係などは、内側戸先側木口板材111と外側戸先側木口板材112とからなる戸先側木口板材11と同様であって良いので、説明を割愛する。戸尻側に形成される空隙113と同様に、外側戸尻側木口板材182と建具20の戸尻側木口27との間には空隙183が形成され、この空隙183によって既述したと同様にしてクッション材22bの変形を防止することができる。
図7に示されるように、この実施形態による木口板材(戸先側、戸尻側、下端)および角当ての配置は、幅方向中心線について対称である。
【0039】
この実施形態では、建具20の戸先側木口23と戸尻側木口27の両方に下端木口24に至るまでクッション材22a,22bが設けられているので、内側下端木口板材121の戸先側に外側下端木口板材122が設けられることに加えて、戸尻側にも外側下端木口板材122が設けられる。戸尻側の外側下端木口板材122の材質、寸法、配置関係などは、戸先側の外側下端木口板材122と同様であって良いので、説明を割愛する。この実施形態によれば、建具20の戸先側下端角部は外側戸先側木口板材112、内側下端木口板材121および外側下端木口板材122で被覆されていることによって、また、建具20の戸尻側下端角部は外側戸尻側木口板材182、内側下端木口板材121および外側下端木口板材122で被覆されていることによって、それぞれ傷付きから十分に保護されているので、戸先側下端角部および戸尻側下端角部には角当てが装着されていないが、これらの角部にも角当てを装着しても良いことは言うまでもない。これらの下端角部に角当てを設ける場合は、外側下端木口板材122,122は省略可能である。
【0040】
実施例2における上記以外の構成および作用効果は、実施例1による建材の梱包構造10について既述した構成および作用効果と同様またはこれから容易に類推可能であるので、説明を割愛する。
【実施例3】
【0041】
図8および
図9を参照して、本発明の実施例3による建具の梱包構造について説明する。この梱包構造は、実施例1の梱包構造10と同様に、建具(引戸)20を、戸先側木口板材11、下端木口板材12、角当て13、梱包材14およびPPバンド(結束具)15で梱包してなるものであるが、実施例1では建具20の戸先側木口23において高さ方向略中央から下端木口24に至るように形成された切欠21にクッション材22が設けられるのに対し、この実施例3では、建具20の戸先側木口23において下端木口24には達しないように形成された切欠21にクッション材22が設けられており、これに伴って、建具20の木口を被覆する板材の構成および配置が異なっている。
【0042】
すなわち、この実施形態によると、内側戸先側木口板材111が、建具20の切欠21の上端より僅かに上方の位置から上端木口28にかけて戸先側木口23を覆う上方内側戸先側木口板材111aと、建具20の切欠21の下端よりわずかに下方の位置から下端木口24にかけて戸先側木口23を覆う下方内側戸先側木口板材111bとに分割して形成されており、内側戸先側木口板材111(上方内側戸先側木口板材111aおよび下方内側戸先側木口板材111b)および外側戸先側木口板材112を建具20の戸先側木口23に設けたときに、内側戸先側木口板材111が設けられない建具20の戸先側木口23の高さ方向略中央部分(クッション材22が存在する部分)において、外側戸先側木口板材112と建具20の戸先側木口23との間に空隙113が形成され、この空隙113によって既述したようにクッション材22の変形を防止するように構成されている。
【0043】
この実施形態によれば、クッション材22が建具20の下端木口24に露出しないので、建具20の下端木口24を被覆・保護する下端木口板材12(内側下端木口板材121および外側下端木口板材122)は不要となるが、建具20の戸先側下端角部を保護するための角当て13dを装着する必要がある。すなわち、この実施形態では、建具20の四隅を保護するために計4個の角当て13a~13dが取り付けられる。
【0044】
実施例3における上記以外の構成および作用効果は、実施例1による建材の梱包構造10について既述した構成および作用効果と同様またはこれから容易に類推可能であるので、説明を割愛する。
【0045】
以上に本発明について図示実施形態に基いて詳述したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の記載に基いて解釈される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。たとえば、木口板材(戸先側、戸尻側、下端)は、入手容易性およびコストなどの観点から木質材料で形成することが一般に好適であるが、合成樹脂、金属またはこれらを部分的に組み合わせて木口板材を形成しても良い。
【0046】
また、図示実施形態では、外側下端木口板材122(
図3,
図7)を内側下端木口板材121より短尺にして、建具20の戸尻側木口27側の下端(
図3)または建具20の幅方向中央の下端(
図7)に内側下端木口板材121との間に隙間が形成されるようにしているが、外側下端木口板材122を建具20の戸尻側木口27に当接するように延長し、または左右一対の外側下端木口板材122,122を単一の長尺材として形成して、内側下端木口板材21と隙間なく当接するように設けても良い。
図5に示す実施形態においても、下端木口板材12に相当する部分17bを全長に亘って同じ厚さ(
図5において建具20の戸先側木口23側の厚さ)に形成して用いても良い。
【符号の説明】
【0047】
10 建具の梱包構造
11 戸先側木口板材(垂直木口材)
111 内側戸先側木口板材
112 外側戸先側木口板材
113 空隙
12 下端木口板材(水平木口材)
121 内側下端木口板材
122 外側下端木口板材
13(13a~13c) 角当て
14(141,142) 梱包材
15 PPバンド(結束具)
16 連結板
17 単一の木口板材(垂直木口材および水平木口材)
18 戸先側木口板材(垂直木口材)
181 内側戸先側木口板材
182 外側戸先側木口板材
183 空隙
20 建具
21 切欠
22 クッション材
23 戸先側木口
24 下端木口
25 引手
26 採光部
27 戸尻側木口
28 上端木口