(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】仮設シート取付け部品用補助具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20220916BHJP
E04G 21/28 20060101ALI20220916BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G21/28 B
E04G21/32 A
(21)【出願番号】P 2018180629
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-238688(JP,A)
【文献】特開2004-324258(JP,A)
【文献】特開平10-266582(JP,A)
【文献】特開平11-190131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設シートを高所に取付けるための仮設シート取付け部品を、高所にある被係止部に係止する際に用いられる、仮設シート取付け部品用補助具であって、
前記仮設シート取付け部品は、前記被係止部に係止される第一フックと、前記仮設シートが取付けられる第二フックと、を少なくとも有し、
前記仮設シート取付け部品用補助具は、
第一軸材と、
前記第一軸材に対して所定角度で固定され、先端に前記仮設シート取付け部品を載置する載置部を備えている第二軸材と、を有
し、
前記第一軸材が伸縮自在であり、
前記第一軸材に対して前記第二軸材が回動自在であることを特徴とする、仮設シート取付け部品用補助具。
【請求項2】
前記載置部が、前記第二軸材の軸方向に沿って正面から見た形状がV字状の先端領域を有することを特徴とする、請求項1に記載の仮設シート取付け部品用補助具。
【請求項3】
前記載置部が、前記先端領域の反対側に根元領域を有し、該根元領域において、前記仮設シート取付け部品の一部を係合させる鍵状係合片を有することを特徴とする、請求項2に記載の仮設シート取付け部品用補助具。
【請求項4】
前記仮設シートが安全ネットであり、
前記仮設シート取付け部品は、前記第一フックと前記第二フックを両端に備えた軸部材により形成され、
前記第二フックを前記鍵状係合片に係合させながら前記軸部材が前記載置部に載置されることを特徴とする、請求項
3に記載の仮設シート取付け部品用補助具。
【請求項5】
仮設シートを高所に取付けるための仮設シート取付け部品を、高所にある被係止部に係止する際に用いられる、仮設シート取付け部品用補助具であって、
前記仮設シート取付け部品は、前記被係止部に係止される第一フックと、前記仮設シートが取付けられる第二フックと、を少なくとも有し、
前記仮設シート取付け部品用補助具は、
第一軸材と、
前記第一軸材に対して所定角度で固定され、先端に前記仮設シート取付け部品を載置する載置部を備えている第二軸材と、を有
し、
前記仮設シートが養生シートであり、
前記仮設シート取付け部品は、前記第一フックが前記被係止部となる建物躯体に係止され、前記第二フックはその一端が前記第一フックに回動自在に係合し、他端に前記養生シートが取付けられるようになっており、
前記第二フックに対して前記第一フックが所定角度を保持した状態で、前記仮設シート取付け部品が前記載置部に載置されることを特徴とする、仮設シート取付け部品用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設シート取付け部品用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の施工現場では様々な仮設シートによる養生が行われている。まず、雨養生に関して言及すると、雨養生は一般に、例えば市販の養生シート(仮設シートの一例)を被養生箇所の上から覆い、紐やゴムバンド等を介して建物躯体や建物躯体側方の仮設足場等に仮固定する方法により、行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の途中階に配置され、主棟の構面から持出されているバルコニー等の持出し部には、防水工事前の雨養生が要求される。この持出し部は、主棟に対する出幅の大小や屋根形状(寄棟、切妻、陸屋根、片流れ等)、さらには軒側とケラバ側のいずれに位置しているか等により、養生の難易度が異なってくる。例えば陸屋根や片流れ屋根の建物の側方にある持出し部やケラバ側にある持出し部に養生シートを張設する場合は、主棟における養生シートの固定位置が定まり難く、一般に養生が困難になり易い。そのため、例えば持出し部の施工途中に養生シートを張設する場合でも、この養生シートに対して適切な水勾配を取ることが難しい場合があり、また、養生シートを弛み易い態様で張設せざるを得ない場合が生じ得る。
【0005】
このように養生シートが弛んでしまうと、養生シート上への雨水の滞留や、滞留した雨水の重量等に起因する養生シートの破れの恐れがあり、さらには、養生シート上に雨水が滞留することに起因して、屋外への雨水の排水不良が生じ易くなる。そして、これらの要因が重なると、養生シート直下にあって未だ防水施工が施されていない持出し部の床や、持出し部の下階の室内に対して雨漏れが発生し得る。尚、上記する特許文献1に記載の雨天養生システムは、例えば屋根全体を覆うシステムであり、バルコニー等の持出し部を確実かつ排水性良好に養生できるシステムとは言い難い。
【0006】
一方、仮設シートを用いた他の養生として、安全ネット(仮設シートの一例)を用いた養生がある。安全ネットは、例えば床が敷設される前の梁組の直下に配設され、梁組の下方に資材が落下したり作業員が転落するのを防止するための養生である。この安全ネットは、例えばH形鋼により形成される複数の梁の下方フランジに開設されているそれぞれのボルト孔等に対し、安全ネットの端部に取り付けられている複数の専用のフックを順次引っ掛けていくことにより、複数の梁に対して安全ネットが張設されてその取り付けが行われる。
【0007】
上記する養生シートを、建物の主棟を構成する例えばH形鋼や溝形鋼等からなる軒桁や母屋等に取り付ける場合、バルコニー床梁等に脚立を設置し、作業員が脚立の上から養生シートを係止するフックを軒桁や母屋等に取り付け、取り付けられたフックに養生シートを引っ掛ける方法により、養生シートの敷設が行われている。一方、上記する安全ネットを梁組の下方に取り付ける場合も養生シートの設置の際と同様に、梁組下方の足場等の上に脚立を設置し、安全ネットに既に取り付けられているフックを作業員が脚立の上から梁の下方フランジのボルト孔等に引っ掛ける方法により、安全ネットの敷設が行われている。尚、安全ネットを敷設する場合、既に安全ネットに取り付けられている複数のフックを順次ボルト孔等に引っ掛けていくことから、フックを引っ掛ける過程で徐々に安全ネットに張力が付与されることとなり、この張力に抗するようにしてフックを引っ掛ける作業は容易でない。
【0008】
このように、養生シートや安全ネット等の仮設シートを施工現場の高所に敷設する際には、脚立等に載った状態での取り付け作業を要することから、施工安全性に関する課題を内包している。
【0009】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、施工現場において仮設シートを高所に取り付けるための仮設シート取付け部品を、脚立等を使用することなく、高い施工安全性の下で高所の被係止部に係止することのできる仮設シート取付け部品用補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の一態様は、
仮設シートを高所に取付けるための仮設シート取付け部品を、高所にある被係止部に係止する際に用いられる、仮設シート取付け部品用補助具であって、
前記仮設シート取付け部品は、前記被係止部に係止される第一フックと、前記仮設シートが取付けられる第二フックと、を少なくとも有し、
前記仮設シート取付け部品用補助具は、
第一軸材と、
前記第一軸材に対して所定角度で固定され、先端に前記仮設シート取付け部品を載置する載置部を備えている第二軸材と、を有することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第一軸材と、第一軸材に対して所定角度で固定され、先端に仮設シート取付け部品を載置する載置部を備えている第二軸材と、を有する仮設シート取付け部品用補助具(以下、単に「補助具」という場合もある)を使用することにより、脚立等を用いることなく、従って高い施工安全性の下で高所に仮設シート取付け部品を取り付けることができる。ここで、「高所」とは、軒桁やその周辺等の主棟の屋根に近い場所や、梁組が施工されている2階以上の床レベルを含んでおり、一般に脚立等を用いることによりその場所まで人手が届くことを可能にした場所のことである。本態様の補助具の補助対象である仮設シート取付け部品は、被係止部に係止される第一フックと、仮設シートが取付けられる第二フックとを有している。例えば、第一フックと第二フックが別部材であり、双方の端部同士が回動自在に係合している形態や、一つの部材の一端が第一フックであり、他端が第二フックである形態などがある。従って、前者の場合は、第一フックと第二フックの二部材から構成され、第一フックと第二フックがいずれも、それらの一端には他方のフックと係合する係合部を有し、それらの他端には被係止部に係止される係止部や仮設シートが係止される係止部を有する。また、第一フックと第二フックはいずれも、金属部品であってもよいし、ある程度の硬度を有する樹脂部品であってもよい。また、仮設シートには、既述するように養生シートと安全ネットが含まれる。
【0012】
第一軸材に対して第二軸材は所定角度で固定されているが、この所定角度は、第一軸材と第二軸材の中心角が例えば90度以上で180度未満の傾斜した角度の他、第一軸材と第二軸材が直線状にある180度の角度を含んでいる。ただし、好ましくは、第一軸材と第二軸材の中心角度が120度程度の傾斜した角度で双方が固定されていることにより、高所にある被係止部に対して、可及的に少ない把持力にて補助具を把持してアクセスさせながら、第二軸材の先端の載置部に載置されている仮設シート取付け部品を被係止部に係止させることが可能になる。
【0013】
また、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の他の態様において、前記載置部が、前記第二軸材の軸方向に沿って正面から見た形状がV字状の先端領域を有することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、載置部がV字状の先端領域を有することにより、仮設シート取付け部品を載置部の上方から落とし込むことで仮設シート取付け部品を容易に載置することができる。さらに、仮設シート取付け部品を被係止部に係止させた後、載置部が仮設シート取付け部品から離れるように補助具を下方に移動させることにより、仮設シート取付け部品から補助具を容易に取り外すことができる。
【0015】
また、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の他の態様において、前記載置部が、前記先端領域の反対側に根元領域を有し、該根元領域において、前記仮設シート取付け部品の一部を係合させる鍵状係合片を有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、例えば仮設シートが安全ネットの場合に、安全ネットに張力が作用した状態で、仮設シート取付け部品を梁の下方フランジのボルト孔等に係止させる必要があるが、載置部の根元領域にある鍵状係合片に仮設シート取付け部品の一部を係合させることにより、作用する張力によって仮設シート取付け部品が補助具から係脱することを防止することができる。
【0017】
また、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の他の態様において、前記第一軸材が伸縮自在であり、
前記第一軸材に対して前記第二軸材が回動自在であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、伸縮自在である第一軸材により、補助具の長さを被係止部までの高さに応じて所望に調整することができる。また、第一軸材に対して第二軸材が回動自在であることにより、作業員が補助具を把持した際に可及的に少ない力で把持できる角度にて、双方の軸部材を調整することができる。
【0019】
また、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の他の態様において、前記仮設シートが養生シートであり、
前記仮設シート取付け部品は、前記第一フックが前記被係止部となる建物躯体に係止され、前記第二フックはその一端が前記第一フックに回動自在に係合し、他端に前記養生シートが取付けられるようになっており、
前記第二フックに対して前記第一フックが所定角度を保持した状態で、前記仮設シート取付け部品が前記載置部に載置されることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、第二フックに対して第一フックが所定角度を保持した状態で、仮設シート取付け部品が載置部に載置されることにより、第二フックに対して第一フックが完全に首折れすることを抑止しながら、建物躯体の一部に第一フックを係止させることができ、第二フックに対して養生シートを取付けることができる。そして、このように第二フックに取付けられた養生シートを張設した状態にて、建物躯体の他の箇所や建物躯体の側方に建て付けられている仮設足場の一部等に固定することができる。
【0021】
ここで、第一フックが係止される「建物躯体」とは、建物躯体を形成する軒桁や柱、横下地材のほか、屋根の垂木や束材などが含まれる。例えば、主棟の外壁パネルが取付けられ、バルコニーの骨格が形成されるものの、その防水施工が未だ行われていない段階では、一時的にバルコニーを養生シートにて養生することが必要になる。この際、養生シート取付け部品を形成する第二フックに対して第一フックが所定角度を保持した状態で、載置部に載置することができる。ここで、「所定角度」とは、第一フックの軸線と第二フックの軸線の中心角が90度程度から180度程度(180度の場合は双方のフックが直線状にある)の範囲にあることを意味しており、例えば150度程度の若干傾斜した角度が好適である。このように第二フックに対して第一フックが所定角度を保持しながら、養生シート取付け部品を例えば外壁パネルの上方から主棟の内側へ挿入することが可能になる。第二フックに対して第一フックが所定角度を保持した状態で主棟の内側へ養生シート取付け部品が挿入されることにより、軒桁等に対して第一フックを引っ掛け易くできる。軒桁等に第一フックを引っ掛け、第二フックに養生シートを取付けて張設することにより、養生シートの一端を建物躯体へ容易に取付けることができる。尚、第二フックに養生シートを取付けた状態で養生シート取付け部品を主棟の内部に挿入し、第一フックを軒桁等に係止させてもよい。
【0022】
また、本発明による仮設シート取付け部品用補助具の他の態様において、前記仮設シートが安全ネットであり、
前記仮設シート取付け部品は、前記第一フックと前記第二フックを両端に備えた軸部材により形成され、
前記第二フックを前記鍵状係合片に係合させながら前記軸部材が前記載置部に載置されることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、安全ネットに張力が作用した状態下においても、鍵状係合片に仮設シート取付け部品の第二フックを係合させることにより、作用する張力によって仮設シート取付け部品を補助具から係脱することなく、仮設シート取付け部品の第一フックを被係止部に係止させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の仮設シート取付け部品用補助具によれば、施工現場において仮設シートを高所に取り付けるための仮設シート取付け部品を、脚立等を使用することなく、高い施工安全性の下で高所の被係止部に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る仮設シート取付け部品用補助具の一例の斜視図である。
【
図3】実施形態に係る補助具に対して、仮設シート取付け部品の一例である養生シート取付け部品が載置された状態の斜視図である。
【
図4】実施形態に係る補助具に対して、仮設シート取付け部品の他例である安全ネット取付け部品が載置された状態の斜視図である。
【
図5】養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図6】
図5に続いて、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図7】
図6に続いて、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図8】
図7に続いて、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図9】
図8に続いて、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図10】安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図11】
図10に続いて、安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図12】
図11に続いて、安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法を説明する工程図である。
【
図13】
図12に続いて、安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る仮設シート取付け部品用補助具と、この仮設シート取付け部品用補助具を使用して仮設シート取付け部品を被係止部に係止させる方法について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係る仮設シート取付け部品用補助具]
はじめに、
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係る仮設シート取付け部品用補助具について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る仮設シート取付け部品用補助具の一例の斜視図であり、
図2は、
図1のII方向矢視図である。
【0028】
仮設シート取付け部品用補助具40は、第一軸材10と、第一軸材10(の軸心L1)に対して軸心L2が所定角度θ1で固定されている第二軸材20とを有する。
【0029】
第一軸材10は柱状本体11を有し、柱状本体11の端部にはグリップ15があり、その途中位置には伸縮部12を備えており、伸縮部12を調整することによりその全長をX1方向に伸縮自在となっている。例えば、第一軸材10の全長は、800mm乃至2000mm程度の範囲で調整自在である。第一軸材10の上端近傍には、第一軸材10の側面を挟み込んで第二軸材20に固定するジョイント14が取り付けられている。第一軸材10は可及的に軽量であって、ある程度の剛性を有しており、アルミニウム等の金属製であってもよいし、比較的硬質な樹脂製であってもよい。
【0030】
第二軸材20は、断面コの字状の溝状本体21を有し、溝状本体21の開口を上方に向けた姿勢で第一軸材10に所定角度θ1で固定されている。図示例では、第二軸材20の側面にジョイント14が固定され、当該側面の側方に第一軸材10が配設されている。ジョイント14を介して第一軸材10に対して第二軸材20をX2方向に回動させ、所望する角度θ1を有する状態でジョイント14を締め付けることにより補助具40の姿勢が保持される。このように、補助具40は、第一軸材10が伸縮自在であるとともに、第一軸材10に対して第二軸材20が回動自在に構成されている。ここで、所定角度θ1は、例えば90度以上で180度未満の傾斜した角度の他、第一軸材10と第二軸材20が直線状にある180度の角度を含んでいるが、好ましくは、120度程度の傾斜した角度に設定されることにより、高所にある被係止部に対して、可及的に少ない把持力にて補助具40を把持してアクセスさせることができる。
【0031】
第二軸材20も第一軸材10と同様に、アルミニウム等の金属製や比較的硬質な樹脂製の部材である。第二軸材20において、第一軸材10に固定される側と反対側に位置する先端には、溝内に載置部30の一部が嵌め込まれている。
【0032】
載置部30は、アルミニウム等の金属素材の金属棒31を折り曲げ加工することにより、折り曲げ部31aを介して二列に加工されており、各列はその途中位置でさらに折り曲げ加工されて山部31cを形成し、各列の先端31bの側面同士が接触するようにして形成されている。また、二列の間には、以下で詳説する安全ネット取付け部品(
図4参照)の一部が嵌まり込む隙間31dが設けられている。
【0033】
図2に示すように、載置部30は、第二軸材20の軸心L2に沿って正面から見た形状がV字状の先端領域32を有している。また、載置部30は、先端領域32と反対側に根元領域33を有し、根元領域33に鍵状係合片35を有している。より具体的には、第二軸材20のうち、根元領域33に対応する位置には溝状本体21の側方に張り出すフランジ22があり、このフランジ22に鍵状係合片35の一部が載置され、ボルト等の固定手段38で固定されている。
図1に示すように、鍵状係合片35は側面視略Z形を呈し、2列の金属棒31との間に隙間36を有している。
【0034】
次に、
図3及び
図4を参照して、二種類の仮設シート取付け部品が載置部30に載置された状態、すなわち、補助具40の使用態様について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る補助具に対して、仮設シート取付け部品の一例である養生シート取付け部品が載置された状態の斜視図であり、
図4は、実施形態に係る補助具に対して、仮設シート取付け部品の他例である安全ネット取付け部品が載置された状態の斜視図である。
【0035】
図3に示す養生シート取付け部品50は、建物躯体に係止される第一フック51と、一端が第一フック51に回動自在に係合し、他端に養生シート(図示せず)が取付け自在である第二フック52とを有する。第一フック51と第二フック52はいずれも、金属部材であってもよいし、ある程度の硬度のある樹脂部材であってもよい。
【0036】
第一フック51は、二本の直線状の軸部51aが折り曲げ回動部51bを介して連続したV字状を呈しており、各軸部51aの先端において、建物躯体の構成部材に直接係止される係止爪51cを有している。
【0037】
一方、第二フック52は、直線状の軸部52aと、軸部52aの一端において第一フック51の折り曲げ回動部51bに係合する回動フック部52bと、軸部52aの他端において養生シート(図示せず)が取付けられる係止爪52cとを有する。折り曲げ回動部51bと回動フック部52bとが回動自在に係合することにより、回動部53が形成される。
【0038】
図3に示すように、第二フック52の有する係止爪52cが溝状本体21に収容され、第二フック52の有する軸部52aの途中位置が鍵状係合片35に係止され、回動部53が載置部30の先端領域32に位置決めされるようにして、養生シート取付け部品50が補助具40に載置される。この際、第二フック52の軸心L3に対して、第一フック51の二本の軸部51aの中心を通る軸心L4が完全に首折れすることなく、双方の軸心L3、L4の間の中心角が所定角度θ2を保持した状態で載置部30に載置される。ここで、所定角度θ2は、例えば90度程度から180度程度の範囲であるが、例えば150度程度の若干傾斜した角度であると、養生シート取付け部品50を主棟の内部に挿入して第一フック51を軒桁等に係止させ易くなる。
【0039】
載置部30が正面視V字状の先端領域32を有することにより、養生シート取付け部品50を上方から落とし込むようにして第二フック52をV字状の先端領域32に容易に収容することができる。
【0040】
一方、
図4に示す安全ネット取付け部品60は、一本の軸部材の両端が曲げ加工された部品であり、中央の直線部61と、直線部61の一端にある第一フック62と、直線部61の他端にある第二フック63とを有する。安全ネット取付け部品60も養生シート取付け部品50と同様に、金属部材であってもよいし、ある程度の硬度のある樹脂部材であってもよい。
【0041】
図4に示すように、直線部61が載置部30の先端領域32に収容され、直線部61の第二フック63側の領域が隙間36を介して金属棒31の二列の隙間31dに嵌め込まれ、さらに第二フック63が鍵状係合片35に係合して、安全ネット取付け部品60が補助具40に載置される。以下で詳説するように、安全ネットに張力が作用した状態下においても、鍵状係合片35に安全ネット取付け部品60の第二フック63が係合していることにより、作用する張力によって安全ネット取付け部品60を補助具40から係脱させることなく、安全ネット取付け部品60の第一フック62を被係止部に係止させることが可能になる。
【0042】
図3に示す養生シート取付け部品50、
図4に示す安全ネット取付け部品60のいずれの仮設シート取付け部品であっても、補助具40の有する載置部30に仮設シート取付け部品を載置し、第一軸材10の長さを所望に調整して建物躯体の一部や上階の床梁の一部などの高所にある被係止部に仮設シート取付け部品をアクセスさせることにより、脚立を使用することなく仮設シート取付け部品を被係止部に係止させることが可能になる。
【0043】
[養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法]
次に、
図5乃至
図9を参照して、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法の一例について説明する。ここで、
図5乃至
図9はその順に、養生シート取付け部品を母屋に係止させる方法を説明する工程図である。
【0044】
図5に示すように、所望する長さに調整された第一軸材10と、第一軸材10に対して中心角度が120度等の所定角度θ1に調整された第二軸材20と、を有する補助具40の載置部30の上方から、養生シート取付け部品50を落とし込むようにしてY1方向に載置する。図示するように、載置される前の養生シート取付け部品50は、第二フック52に対して第一フック51が完全に首折れしている。
【0045】
図6に示すように、載置部30に対して養生シート取付け部品50を載置することにより、第二フック52に対して第一フック51が150度等の所定角度θ2に保持された状態となる。
【0046】
図示例の被係止部は、軒桁の上方にある屋根の母屋である。
図6に示すように、外壁80の室内側にあるH形鋼により形成される軒桁71に対して、溝形鋼により形成される母屋72が接続されている。母屋72は、屋根の葺き材74を支持する垂木73を下方から支持している。外壁80は、各種のサイディングボードにより形成される外壁パネル81、外張り断熱材82、充填断熱材83等を有する。
【0047】
作業員(図示せず)は、バルコニー等の持出し部において、脚立を用いることなく、補助具40を把持して外壁80の上方から室内側にある母屋72に養生シート取付け部品50をアクセスさせる。
【0048】
図7に示すように、第二フック52に対して第一フック51が所定角度θ2に保持されていることから、養生シート取付け部品50を水平方向に室内側に挿入していくことにより、開口を室内側に向けた母屋72の上フランジに対して、第一フック51を開口を介して容易に入り込ませることできる。そして、第一フック51の先端にある係止爪51cを、母屋72の上フランジ(被係止部)に対して容易に係止させることができる。
【0049】
係止爪51cが母屋72の上フランジに係止された後、
図8に示すように補助具40を下方のY2方向に移動させることにより、載置部30に載置されていただけの養生シート取付け部品50から補助具40を取り外すことができる。
【0050】
養生シート取付け部品50から補助具40が取り外されると、
図9に示すように、係止爪51cが母屋72の上フランジに係止されるとともに軸部51aの途中位置が母屋72の上フランジとリップの隅角部に係止され、第二フック52の係止爪52cが外壁80の表面に係止され、養生シートの敷設準備が完了する。すなわち、
図9に続いて、係止爪52cに対して養生シートに設けられている鳩目等が差し込まれることになる。
【0051】
このように、補助具40を適用することにより、脚立を使用することなく、仮設シート取付け部品の一例である養生シート取付け部品50を高所にある母屋72(被係止部)に係止させることができるため、高い施工安全性の下で仮設シート取付け部品を高所にある被係止部に取付けることが可能になる。
【0052】
[安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法]
次に、
図10乃至
図13を参照して、安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法の一例について説明する。ここで、
図10乃至
図13はその順に、安全ネット取付け部品を上階の床梁に係止させる方法を説明する工程図である。
【0053】
図10に示すように、仮設シートが安全ネット90の場合は、養生シートと異なり、予め安全ネット90が取り付けられている安全ネット取付け部品60を補助具40に載置する。第二フック63に安全ネット90の端部が引っ掛けられた状態の安全ネット取付け部品60を、補助具40の載置部30の上方からY3方向に落とし込むようにして載置する。
【0054】
図11に示すように、補助具40の載置部30に安全ネット取付け部品60が載置された状態において、第二フック63は鍵状係合片35に係合されている。
【0055】
第二フック63が鍵状係合片35に係合された状態で載置部30に安全ネット取付け部品60が載置されている補助具40を、
図12に示すように、上階(2階、3階等)の梁組を形成するH形鋼からなる床梁75の下方フランジにアクセスさせる。この際、作業員(図示せず)は、床梁75の下方位置において、脚立を用いることなく、補助具40を把持して安全ネット取付け部品60をアクセスさせる。ここで、床梁75の下方フランジに開設されているボルト孔(図示せず)が被係止部となる。
【0056】
安全ネット90を敷設する場合、既に安全ネット90に取り付けられている複数の第一フック62を順次ボルト孔等に引っ掛けていくことから、梁組を形成する各梁のボルト孔に第一フック62を引っ掛けていく過程で徐々に安全ネット90に張力Tが付与されることになる。
図12においても、この張力Tに抗するようにして補助具40を床梁75にアクセスさせ、第一フック62を下方フランジのボルト孔に係止させる。この際、鍵状係合片35に第二フック63が係合していることにより、作用する張力Tによって安全ネット取付け部品60を補助具40から係脱させることなく、第一フック62を被係止部に係止させることができる。
【0057】
第一フック62を被係止部に係止させた後、
図13に示すように、補助具40を下方のY4方向に移動させることにより、載置部30に載置されるとともに鍵状係合片35に第二フック63が係合していた安全ネット取付け部品60から補助具40を取り外すことができる。
【0058】
このように、補助具40を適用することにより、脚立を使用することなく、仮設シート取付け部品の一例である安全ネット取付け部品60を高所にある床梁75(被係止部)に係止させることができるため、高い施工安全性の下で仮設シート取付け部品を高所にある被係止部に取付けることが可能になる。
【0059】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0060】
10:第一軸材、11:柱状本体、12:伸縮部、13:取り付け片、14:ジョイント、15:グリップ、20:第二軸材、21:溝状本体、22:フランジ、30:載置部、31:金属棒、32:先端領域、33:根元領域、35:鍵状係合片、38:固定手段、40:仮設シート取付け部品用補助具(補助具)、50:仮設シート取付け部品(養生シート取付け部品)、51:第一フック、51a:軸部、51b:折り曲げ回動部、51c:係止爪、52:第二フック、52a:軸部、52b:回動フック部、52c:係止爪、53:回動部、60:仮設シート取付け部品(安全ネット取付け部品)、61:直線部、62:第一フック、63:第二フック、71:軒桁、72:母屋、73:垂木、740:葺き材、75:床梁、80:外壁、81:外壁パネル、82:外張り断熱材、83:充填断熱材、90:安全ネット