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特許7142552押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法、および造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法、および造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
B28B1/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018227575
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090004
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌周
(72)【発明者】
【氏名】前堀 伸平
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋二
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024979(JP,A)
【文献】特開2018-122539(JP,A)
【文献】特開2017-185645(JP,A)
【文献】特開2018-140906(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105384416(CN,A)
【文献】国際公開第2018/074373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00-1/54
B28B 3/00-5/12
B33Y 70/00-70/10
B29C 67/00-67/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F/D)が75以下、および、水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80~110であることを選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
【請求項2】
混練時の注水から30分経過した時点の前記F/Dが75以下、および、混練時の注水から30分経過した時点の前記F15/Dが80~110である、請求項1に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
【請求項3】
混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点における前記F/Dが75以下、および、混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点におけるF15/Dが80~110である、請求項1に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
【請求項4】
さらに、硬度補正値(Ha)が0.15以上であることを選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、請求項1~のいずれか1項に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
【請求項5】
内径が4~25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、請求項1~のいずれか1項に記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する、造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練物を押し出して造形する方式の付加製造装置(押出し方式付加製造装置、3Dプリンタ)に適した水硬性組成物を選択するための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル、コンクリート、およびセメントペースト硬化体等のセメント質硬化体に意匠性を付与する方法の一つに、化粧型枠を用いて成形する方法があり、現在、種々の化粧型枠が知られている。例えば、コンクリート表面に目地を含む凹凸の意匠を形成する合成樹脂発泡体製の化粧型枠(特許文献1)、表面側に凹凸状の意匠を有する化粧型枠の意匠板部材の裏面側に係止部を有し、該係止部により化粧型枠本体に化粧型枠の意匠板部材が係止されている化粧型枠(特許文献2)、セメント成形硬化用の型枠の底面上に、合成弾性重合体材料からなり、所望の表面凹凸模様を有する意匠転写材(特許文献3)、コンクリートに接する表面に凹凸模様を有し、裏面を型枠パネルに取り付けるコンクリート打設用の化粧型枠(特許文献4)、および、半水石膏を結合材として用いて、無機粉体、水溶性ポリマー、および石膏硬化促進剤を特定量含む混合粉体であって、鋳造用立体造形物を構成するための混合粉体等が提案されている(特許文献5)。
【0003】
しかし、これらの文献の記載から明らかなように、付与できる形状は凹凸模様などの単調なデザインに止まり、繊細かつ多様なデザインをセメント質硬化体に付与することは難しかった。その理由の一つに、セメント質硬化体の原料である従来の水硬性組成物では、繊細な形状を形成して保持できるレベルの造形性を有していないことが挙げられる。
以上のように、繊細かつ多様なデザインをセメント質硬化体に付与できる、造形性に優れた水硬性組成物は、現在のところ見あたらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-277227号公報
【文献】特開平10-266558号公報
【文献】特開平08-011110号公報
【文献】特開平07-279424号公報
【文献】特開2015-100999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、押出し方式付加製造装置に適した水硬性組成物を選択するための方法と、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造できる水硬性組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の選択基準を満たす水硬性組成物を用いれば、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する押出し方式付加製造装置用水硬性組成物(以下「水硬性組成物」と略す場合もある。)の選択方法等である。
【0007】
[1]水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F/D)が75以下、および、水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80~110であることを選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[2]混練時の注水から30分経過した時点の前記F/Dが75以下、および、混練時の注水から30分経過した時点の前記F15/Dが80~110である、前記[1]に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[3]混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点における前記F/Dが75以下、および、混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点におけるF15/Dが80~110である、前記[1]に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[4]さらに、硬度補正値(Ha)が0.15以上であることを選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、前記前記[1]~[]のいずれかに記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[5]内径が4~25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]~[]のいずれかに記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する、造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法によれば、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造できる水硬性組成物を精度よく選択できる。また、本発明の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物によれば、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】試験例1~6の水硬性組成物の前記F/Dを示す図であり、(a)は混練時の注水から30分経過した時点の値、(b)は混練時の注水から60分経過した時点の値である。
図2】試験例1~6の水硬性組成物の前記F15/Dを示す図であり、(a)は混練時の注水から30分経過した時点の値、(b)は混練時の注水から60分経過した時点の値である。
図3】試験例1~6の水硬性組成物の前記Haを示す図であり、(a)は混練時の注水から30分経過した時点の値、(b)は混練時の注水から60分経過した時点の値である。
図4】(A)試験例1、(B)試験例2、(E)試験例5、および(F)試験例6の水硬性組成物を用いた造形物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水硬性組成物の選択方法は、前記のとおり、水硬性組成物のF/D、および、F15/D等を選択基準として、水硬性組成物を選択する方法である。
また、本発明の造形物の製造方法は、内径が4~25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]~[6]のいずれかに記載の選択基準を満たす水硬性組成物を用いて造形物を製造する方法である。
さらに、本発明の水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を含み、前記F/Dが75以下、および、前記F15/Dが80~110である水硬性組成物である。
以下、本発明を、水硬性組成物の選択方法、造形物の製造方法、および水硬性組成物に分けて、詳細に説明する。
【0011】
1.押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法
前記水硬性組成物のF/Dは、好ましくは75以下である。F/Dが75を超えると、流動性が高くなり過ぎて、ノズルから水硬性組成物を押し出すための圧力をかけなくても、水硬性組成物の自重でダレが生じる場合がある。自重はダレ性に影響するため、Fを水硬性組成物の密度で割ったF/Dは、水硬性組成物のダレ性を評価するための指標である。なお、F/Dは、より好ましくは65以下である。
また、水硬性組成物のF15/Dは、好ましくは80~110である。F15/Dが80未満では水硬性組成物が硬くて押出せない場合があり、110を超えると水硬性組成物は柔らかくて、潰れたり倒れたりして積層できない場合がある。F15/Dは水硬性組成物の押出し性を評価するための指標である。水硬性組成物の上にさらに水硬性組成物を積層して、押しつぶされる状態を模擬できる15打の打撃を行なったフロー値は、水硬性組成物の押出し性をより正確に示す。なお、F15/Dは、より好ましくは、85~100である。
また、水硬性組成物のHaは、好ましくは0.15以上である。Haが0.15未満では、水硬性組成物の積層ができない場合がある。Haは水硬性組成物の積層性を評価するための指標である。
【0012】
前記選択基準(指標)は、水硬性組成物を押出し方式付加製造装置を用いて押し出すときに計測するとよい。水硬性組成物を押し出す前の必須の作業である、水硬性組成物の混練および装置への充填等は、少なくとも10から20分程度要するので、FやF15は混練時の注水から30分経過した時点で、計測するとよい。また、セメントを含む水硬性組成物は流動性が経時変化するため、好ましくは、FやF15は混練時の注水から30分を超え、60分以内に再度計測する。
前記選択基準は、押出し方式付加製造装置のノズルの内径が4~25mmの場合に適している。ノズルの内径が4ミリメートル未満では、水硬性組成物が砂を含む場合、ノズルが閉塞して押し出し速度が不安定になり、造形物の表面が平滑にならない場合があり、25mmを超えると、前記選択基準の信頼性が低下する。なお、ノズルの内径は、好ましくは5~20mmである。
フローの測定方法は、JIS R 5201に準拠して、Fの場合は15回の落下運動を省略して水硬性組成物のフローを測定し、F15の場合は15回の落下運動を行なって水硬性組成物のフローを測定する。
【0013】
また、硬度の測定はゴム硬度計(デュロメータ)を用いて測定する。ただし、水硬性組成物を入れた容器の拘束が影響して、硬度が実際よりも高い値になるため、水硬性組成物のゼロ打フローが100mmを超える場合、硬度に補正係数(=100/ゼロ打フロー)を掛けて硬度の補正を行なう。なお、本願明細書では、硬度を補正して得た「硬度補正値」と「硬度」は同義として扱う。また、ゴム硬度計は特に限定されず市販品でよいが、軟らかい試料を測定対象とする場合でも適正な値が得られるため、好ましくは、ウレタンフォーム、またはスポンジなど各種発泡体用の硬度計であって、大きなインデンタと加圧面を持った硬度計であり、例えば、テクロック社製のGS-744G、高分子計器社製のアスカーゴム硬度計F型、ミツトヨ社製のハードマチックHH-329、エラストロン社製のゴム硬度計ESC型が挙げられる。
【0014】
2.造形物の製造方法
本発明の造形物の製造方法は、内径が4~25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]~[6]のいずれかに記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する方法である。
【0015】
3.押出し方式付加製造装置用水硬性組成物
本発明の水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を含み、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F/D)が75以下、および、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80~110である。F/DおよびF15/Dが該範囲にあれば、水硬性組成物の流動性が高く、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を、容易に製造できる。なお、好ましくは、F/Dは65以下であり、F15/Dは85~105である。
また、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の本発明の水硬性組成物の硬度補正値(Ha)は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上である。
ここで、水硬性組成物の混練および装置への充填、装置内の通過時間等に、少なくとも10分程度要することを勘案すると、前記押し出し時点とは、混練時の注水から10分以上であり、セメントを含む水硬性組成物の流動性は経時変化することも勘案すると、前記押し出し時点の上限は、混練時の注水から60~90分の範囲である。この押し出し時点を、F/DおよびF15/Dの測定時を用いて言い換えるならば、F/DおよびF15/Dの測定時は、好ましくは10~90分、より好ましくは20~75分、さらに好ましくは30~60分の範囲内になる。したがって、前記[3]、[4]、および[9]では、「押出し方式付加製造装置で押し出される時点」に代えて、具体的に、「混練時の注水から30分経過した時点」、および、「混練時の注水から60分経過した時点」と規定した。
そして、該水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を必須成分として含み、さらに砂を任意成分として含む。該セメントは、白色ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、シリカフューム含有セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミセメント、およびエコセメント等やそれらの構成物である珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、アルミノケイ酸塩、およびサルフォカルシウムアルミネート等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、水硬性組成物のフローや、凝結時間、および保形性を調整したり、フローの経時変化を抑制するため、水硬性組成物の任意成分である混和材は、非晶質アルミノケイ酸塩、石膏、水酸化カルシウム、硫酸アルカリ金属塩、および尿素から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、前記砂は、石灰石砂、珪砂、および人工砂から選ばれる1種以上である。砂の粒度は、フローの評価の信頼性、造形物の表面の平滑性、および押出し方式付加製造装置のノズル径を考慮すると、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下である。
また、前記水は、上水道水等が挙げられる。
さらに、水硬性組成物のフローを調整したり、フローの経時変化を抑制するため、減水剤、消泡剤、増粘剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、および粉末セルロース等の混和剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0016】
押出し方式付加製造装置は、コンピュータ上で作製した3Dデータを設計図に用いて、断面形状を積層することにより立体物を作製する産業用ロボットの一種である。付加製造装置を用いた造形方式は、米国材料試験協会(ASTM)により7つの方式に分類されているが、本発明の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物は、これらの中の、Material extrusion(材料押出し)方式の付加製造装置(押出し方式付加製造装置)を用いた造形に適する。
繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造するためは、(i)押出し方式付加製造装置の押出し圧力は、好ましくは50kPa以上であり、水硬性組成物を押し出すためのカートリッジやシリンダーを備えた装置が好ましく、(ii)水硬性組成物を押し出す速度は、ノズルの内径にもよるが、好ましくは3~18mm/秒であり、また、(iii)ノズルの移動速度は、ノズルの内径にもよるが、好ましくは6~12mm/秒である。
【実施例
【0017】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
1.水硬性粉体A
(1-1)セメント含有結合材
(i)セメント
白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類
アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)非晶質アルミノケイ酸塩
メタカオリン(カオリンの焼成物)、商品名 MetaMax HRM、BET比表面積は10m/gである。(BASFジャパン社製)
(iv)石膏
II型無水石膏、ブレーン比表面積は6000cm/gである。(旭硝子社製)
(v)水酸化カルシウム
BET比表面積は約13m/gである。(重安石灰社製)
(vi)硫酸アルカリ金属塩
芒硝、ブレーン比表面積は約800cm/gである。(東ソー社製)
(1-2)混和剤
(i)減水剤
メルメント[登録商標]、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を有効成分とする粉末減水剤である。(BASFジャパン社製)
(ii)増粘剤
商品名 Esacol210H、増粘多糖類(BASFジャパン社製)
(iii)粉末セルロース
商品名 Arbocel PWC500、セルロース微粉末(レッテンマイヤー社製)
(iv)消泡剤
商品名 アデカネートB317F[登録商標]、ポリエーテル系消泡剤(ADEKA社製)
(v)硬化遅延剤
商品名 マスターポゾリスNo.89[登録商標]、変成リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物の複合体である。(BASFジャパン社製)
(1-3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.6mmである。
【0018】
水硬性粉体Aの配合を表1に示す。
【表1】
【0019】
2.水硬性粉体B
(2-1)セメント含有結合材
(i)セメント
白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類A
アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)カルシウムアルミネート類B
カルシウムサルフォアルミネート、試作品(石膏、 生石灰及びアルミナ粉末を、焼成後にカルシウムサルフォアルミネートが得られるような配合で混合し、次いで、得られた混合物をロータリーキルンで1330℃の焼成温度で焼成した後、該焼成物をブレーン比表面積が3,900cm/gになるように粉砕したもの)
(iv)無水石膏(旭硝子社製)
(v)尿素
1級試薬、純度は98質量%以上である。(林純薬工業社製)
(2-2)混和剤
(i)減水剤
粉末状のポリカルボン酸系減水剤、商品名 NF-200(太平洋マテリアル社製)
(ii)凝結促進剤
硫酸ナトリウム、1級試薬
(iii)凝結遅延剤
クエン酸、1級試薬
(1-3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.3mmである。
【0020】
水硬性粉体Bの配合を表2に示す。
【表2】
【0021】
3.水硬性粉体C
(3-1)セメント含有結合材
(i)セメント
早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類
高アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)シリカフューム
(3-2)混和剤
(i)減水剤
メルメント[登録商標]、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を有効成分とする減水剤である。(BASFジャパン社製)
(ii)凝結遅延剤
クエン酸、1級試薬
(vi)硫酸アルカリ金属塩
硫酸カリウム、1級試薬
(iii)ポリプロピレン繊維
長さは3~6mm、直径は20μmである。
(iv)ポリプロピレン繊維
長さは1mm未満、直径は20μmである。
(3-3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.1mmである。
【0022】
水硬性粉体Cの配合を表3に示す。
【表3】
【0023】
2.水硬性組成物の製造と水硬性組成物のフローの測定
表4に示す配合と水量に従い、容量が5リットルのホバートミキサと、1バッチあたり結合材および細骨材の合計2kgを用いて、回転速度が140rpmで3分間混練して水硬性組成物を調製した。なお、混和剤は水(水道水)に添加して用いた。
次に、該水硬性組成物を用いて、20℃、相対湿度80%の室内で、JIS R5201に準拠して、混練時の注水から30分、および60分経過した時点で、15打フロー、およびゼロ打フロー(15回の落下運動を行なわないで測定したフロー)を測定した。ゼロ打フローと15打フローの測定結果を表5に示し、ゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比を図1に示し、15打フロー/水硬性組成物の密度の比を図2に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
3.硬度の測定および硬度の補正
混練時の注水から30分、および60分経過した時点で、ゴム硬度計(商品名:高分子計器社製のアスカーゴム硬度計 F型)を用いて前記水硬性組成物の硬度を測定した。
測定は、内径90mm×高さ25mmの容器にすり切りで投入後、厚さが11μmのポリ塩化ビニリデン製フィルム(サランラップ[登録商標]、AsahiKASEI社製)を空気が入らないように被せた上に、ゴム硬度計を静かに載置して硬度を測定した。次に、容器の側面の拘束により硬度が高い値になるため、水硬性組成物のゼロ打フローが100mmを超える場合は、硬度に補正係数(=100/ゼロ打フロー)を掛けて硬度の補正を行なった。硬度の測定結果を表5に示す。
【0026】
【表5】
【0027】
4.造形物の製造
前記水硬性組成物を、内径が7mmのノズルを装着したシリンジ(カートリッジ)に入れて、ノズル移動速度が6.3mm/秒、押出し速度が6.3mm/秒で、水硬性組成物層を3.5mmのピッチで高さ8cmまで積層して造形した。造形は、混練時の注水から30分および60分経過した時点に対応させて、それぞれ、混練時の注水から25~35分および55~65分に行った。混練時の注水から25~35分に製造した造形物の写真を図4に示す。なお、図4の試験例6は、一部にダレが生じていた。
【0028】
図1~3に示すように、ダレ性、押出し性、および積層性の良否は、F/D、F15/D、およびHaの値により評価できる。また、F/Dが75以下、F15/Dが80~110、および、Haが0.15以上を混練時の注水から30分および60分経過した時点において全て満たす試験例1および2の水硬性組成物は、製造時間が長い場合でも、造形物は、押出し時の水硬性組成物のダレがなく、押出し性および積層性に優れ、繊細で緻密な造形物を製造できる。
【0029】
なお、ノズルの内径を4mmおよび15mmに変え、試験例1および2の水硬性組成物を用いて造形物を製造したところ、いずれも水硬性組成物のダレがなく、押出し性および積層性は高かった。
図1
図2
図3
図4