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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】汎用コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20220916BHJP
   A01D 69/06 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A01D69/00 303A
A01D69/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018230982
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020092610
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】板持 透
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164410(JP,A)
【文献】特開2017-079630(JP,A)
【文献】特開2017-209074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 69/00
A01D 69/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
該走行機体の前部に昇降可能に連結され且つ正転駆動時に圃場の作物を刈取って後方に搬送する刈取部と
刈取った作物を脱穀装置に向けて後方搬送するフィーダとを備え、
前記走行機体の前部には、エンジンからの動力が伝動される左右方向の刈取伝動軸が設けられ、
記刈取伝動軸に対して上下に並列され且つ該刈取部に動力を入力する刈取入力軸と、前記刈取伝動軸から前記刈取入力軸に動力を伝動する正逆転切換装置とを有し、
前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸から刈取入力軸への伝動経路において前記刈取入力軸に正転動力を伝動する正転状態と、逆転動力を伝動する逆転状態との切換を行うように構成され、
前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸の端部側における前記走行機体の側部側に配置され
前記刈取部は、前記刈取入力軸を軸として上下揺動可能に支持され、
前記刈取入力軸は、フィーダ取付ブラケットを介して前記脱穀装置の前側に設けた脱穀フレーム側に取付けられ、
前記刈取伝動軸は、前記フィーダの下方を通過するように配置され、
前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸の端部側で一体回転するように連結された入力軸と、前記刈取入力軸に動力を出力する出力軸と、前記出力軸に伝動される動力の正転・逆転を切換えるクラッチ切換機構と、該クラッチ切換機構をカバーするケース体60とを有し、
前記正逆転切換装置は、前記脱穀フレーム側に取付けられることにより、前記フィーダ取付ブラケットの下方に配置された前記刈取伝動軸の端部側に配置され、前記入力軸と前記出力軸とは、前後に並べて配置され、前記ケース体は、前後方向に延設され て前記フィーダ側方の空きスペースに配置され、
前記刈取入力軸は、側面視で前後方向前側に配置される前記出力軸からベルト又はチェーンを介してエンジン動力が伝動されるように構成された
汎用コンバイン。
【請求項2】
前記刈取部は、刈取った作物を後方搬送するフィーダを有し、
前記正逆転切換装置は、前記刈取入力軸に伝動する動力の正逆転方向を切換える操作レバーを有し、
該操作レバーと前記正逆転切換装置とを、前記フィーダの左右反対側に振分けて配置した
請求項1に記載の汎用コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部が逆転駆動可能に構成された汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、該走行機体の前部に昇降可能に連結され且つ正転駆動時に圃場の作物を刈取って後方に搬送する刈取部と、該刈取部から後方搬送された作物を脱穀作業する脱穀装置とを備え、該脱穀装置内の扱胴を手動によって逆転駆動させることができるように構成することによって、脱穀装置内における作物等の詰まりをスムーズに解消できる特許文献1に記載の汎用コンバインが従来公知である。
【0003】
該構成によれば、前記脱穀装置内が大量に投入された作物によって詰まった場合であっても、脱穀装置内の扱胴を手動で逆転駆動させることによって、該脱穀装置内の詰りを解消するための清掃やメンテナンスを効率的に行うことができるものである。
【0004】
しかし、該構成の汎用コンバインは脱穀装置内で作物等が詰まることによる作動不良をスムーズ且つ容易に解消することができるものであるが、圃場の作物等の刈取作業を行うとともに該作物等を走行機体側に向けて後方搬送する前記刈取部のメンテナンス作業に手間が掛かる場合があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-250741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、圃場の作物等の刈取作業と脱穀作業とを行うことができる汎用コンバインにおいて、前記刈取部側を逆転駆動させることによって、該刈取部内の作物等の詰りを解消することができる汎用コンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1に、走行機体と、該走行機体の前部に昇降可能に連結され且つ正転駆動時に圃場の作物を刈取って後方に搬送する刈取部と、刈取った作物を脱穀装置に向けて後方搬送するフィーダとを備え、前記走行機体の前部には、エンジンからの動力が伝動される左右方向の刈取伝動軸が設けられ、前記刈取伝動軸に対して上下に並列され且つ該刈取部に動力を入力する刈取入力軸と、前記刈取伝動軸から前記刈取入力軸に動力を伝動する正逆転切換装置とを有し、前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸から刈取入力軸への伝動経路において前記刈取入力軸に正転動力を伝動する正転状態と、逆転動力を伝動する逆転状態との切換を行うように構成され、前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸の端部側における前記走行機体の側部側に配置され、前記刈取部は、前記刈取入力軸を軸として上下揺動可能に支持され、前記刈取入力軸は、フィーダ取付ブラケットを介して前記脱穀装置の前側に設けた脱穀フレーム側に取付けられ、前記刈取伝動軸は、前記フィーダの下方を通過するように配置され、前記正逆転切換装置は、前記刈取伝動軸の端部側で一体回転するように連結された入力軸と、前記刈取入力軸に動力を出力する出力軸と、前記出力軸に伝動される動力の正転・逆転を切換えるクラッチ切換機構と、該クラッチ切換機構をカバーするケース体60とを有し、前記正逆転切換装置は、前記脱穀フレーム側に取付けられることにより、前記フィーダ取付ブラケットの下方に配置された前記刈取伝動軸の端部側に配置され、前記入力軸と前記出力軸とは、前後に並べて配置され、前記ケース体は、前後方向に延設されて前記フィーダ側方の空きスペースに配置され、前記刈取入力軸は、側面視で前後方向前側に配置される前記出力軸からベルト又はチェーンを介してエンジン動力が伝動されるように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第2に、前記刈取部は、刈取った作物を後方搬送するフィーダを有し、前記正逆転切換装置は、前記刈取入力軸に伝動する動力の正逆転方向を切換える操作レバーを有し、該操作レバーと前記正逆転切換装置とを、前記フィーダの左右反対側に振分けて配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前記正逆転切換装置によれば、前記刈取部を逆転駆動可能に構成することによって、該刈取部内の清掃やメンテナンス作業をスムーズに行うことができるとともに、該正逆転切換装置を、より簡易且つ組立容易な構成で、走行機体の側方側にコンパクトに設けることができる。
【0010】
また、前記正逆転切換装置は、前記刈取入力軸に逆転動力を出力する出力軸と、該出力軸から前記刈取入力軸に動力を伝動するベルト又はチェーンとを有し、前記刈取伝動軸と、前記出力軸とを前後方向に並べて配置したものによれば、前記正逆転切換装置を前記刈取伝動軸の側方側でよりコンパクトに構成することができる。
【0011】
なお、前記正逆転切換装置は、前記刈取入力軸に伝動する動力の正逆転方向を切換える操作レバーを有し、該操作レバーと前記正逆転切換装置とを、前記フィーダを挟むようにして左右反対側に振分けて配置したものによれば、前記操作レバーによる前記刈取部の逆転駆動させる切換操作をスムーズに行うことができるとともに、前記正逆転切換装置回りのメンテナンス性も良好に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した汎用コンバインの側面図である。
図2】本発明を適用した汎用コンバインの平面図である。
図3】本汎用コンバインの動力系統図である。
図4】脱穀装置の要部正面図である。
図5】脱穀装置の要部側面図である。
図6】正逆転切換装置を示した斜視図である。
図7】(A)及び(B)は、正逆転切換装置を示した左側面図及び、正逆転切換装置を示したA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2は、本発明を適用した汎用コンバインの側面図及び平面図である。図より、本汎用コンバインは、走行部である左右一対のクローラ式走行装置1,1に支持される走行機体2と、該走行機体2の前方に昇降可能に連結されて圃場の穀稈の刈取作業を行う刈取部3とを備えている。
【0014】
前記走行機体2は、前記刈取部3の真後ろ側近傍における右寄り位置にオペレータが乗込んで操向操作を行う操縦部が形成されたキャビン4が設けられ、該キャビン4の後方斜め左側に前記刈取部3で刈取られた穀稈の脱穀作業等を行う脱穀装置6が設置され、該キャビン4の後方且つ脱穀装置6の右側に前記脱穀装置6で脱穀された処理物である穀粒を収容するグレンタンク7が配置され、該脱穀装置6の後方に脱穀後の藁屑等を排出する排出部5が設けられている。
【0015】
前記刈取部3は、刈取った穀稈を脱穀装置6側に搬送するフィーダ8と、該フィーダ8の前端側に連結されて前方側に延設される刈取フレーム9と、該刈取フレーム9の前端側に設けた左右一対のデバイダ11と、該刈取フレーム9の後端部の上方側から前方に向かって延出された左右一対の支持アーム12,12と、該左右の支持アーム12の延出端の間に回転自在に架設支持された掻込リール13とを備えている。
【0016】
左右一方側の支持アーム12と、刈取フレーム9との間には、伸縮によって前記掻込リール13を刈取部3の本体に対して昇降させるリールシリンダ14が設置され、左右他方側の支持アーム12には、掻込リール13側に動力を伝動する伝動ケース16が設けられている。すなわち、前記掻込リール13は、前記刈取部3の本体に対して昇降作動されるとともに、前記伝動ケース16から伝動される動力によって自身の軸回りに回転駆動されるように構成されている。
【0017】
該構成によれば、前記刈取部3は、圃場の穀稈を前記左右のデバイダ11,11によって内側の刈取側と、外側の非刈取側とに分草し、該刈取側の植立穀稈は、前記掻込リール13によって刈取部側に掻込みながらデバイダ11の後方に備えたレシプロ式の刈刃17によって穀稈の根元側が刈取られる。これにより刈取られた穀稈は、前記刈取フレーム9側の搬送オーガ18により前記フィーダ8の前端側へ送られ、該フィーダ8に搬送された穀稈がフィーダ8の内部に備えた搬送コンベヤ19によって後方側に搬送される。フィーダ8の後端側へ搬送された刈取穀稈は前記脱穀装置6の上部前端側へと送られる。
【0018】
また、前記刈取部3は、前記フィーダ8の後端側に設けられた正逆転切換装置20によって、上述の刈取作業を行う正転駆動と、前記刈取部3に穀稈等が詰まった状態を解消するために正転駆動と反対方向に駆動させる逆転駆動とを切換えることができるように構成されている。該正逆転切換装置20の具体的な構成については後述する。
【0019】
前記脱穀装置6は、該脱穀装置6の上部側であって前記フィーダ8から搬送される刈取穀稈の脱穀作業を行う脱穀部と、該脱穀装置6の下部側であって前記脱穀部により脱穀された脱穀物(処理物)を穀粒と藁屑等の排塵物とに選別する選別部とから構成されている。
【0020】
上記脱穀部は、前記フィーダ8の後端側から刈取穀稈が投入される扱室と、該扱室の前後方向全体に亘って形成された前後方向の扱胴回転軸回りに回転駆動自在に設けられて、前端側が漏斗型となる円筒状の扱胴15と、該扱胴の下方に配置された受網25とを備えている。
【0021】
上記選別部は、前記受網25を通過した脱穀物を揺動選別する揺動選別体と、選別風を送風する唐箕ファン21と、選別後の排塵物を機外へ排出する二番選別ファン等を備えている。
【0022】
該構成によれば、揺動選別体から漏下した前記処理物は、唐箕ファン21による選別風によって、選別された1番物である穀粒と、2番物とに選別され、選別された穀粒は、揚穀ラセン(図示しない)によって穀粒を貯蔵するグレンタンク7内に搬送される。該グレンタンク7内に貯蔵された穀粒は、走行機体の上面後方側に支持されたオーガ22を介して、機外に排出することができる。
【0023】
次に、図3に基づき、本汎用コンバインの伝動構成について説明する。図3は、本汎用コンバインの動力系統図である。図示されるように、エンジン10で発生させた回転動力は、出力軸に出力され、該出力軸26には、作業プーリ27が一体回転するように設けられている。
【0024】
前記作業プーリ27に伝動された動力は、作業伝動軸28にベルト伝動され、該作業伝動軸28に伝動された動力によって、前記刈取部3及び前記脱穀装置6が駆動される。以下、具体的に説明する。前記作業プーリ27と、前記作業伝動軸28と一体回転する作業伝動プーリ29とに掛け回される作業伝動ベルト31には、該作業伝動ベルト31のテンションを調整するテンションクラッチ32が設けられており、エンジン10から出力された動力は、前記26出力軸から作業伝動軸28側へと断続可能な構成で伝動される。
【0025】
前記作業伝動軸28は、前記脱穀装置6内の枠体の左右幅に亘って延設されており、該枠体側に軸回転可能に支持されている。また、該作業伝動軸28には、第2作業プーリ33と、選別プーリ34とが一体回転するように設けられている。これにより、前記作業伝動軸28に伝動された動力は、第2作業プーリ33と、第2作業伝動プーリ36とで掛け回される第2作業伝動ベルト37を介して、該第2作業伝動プーリ36と一体回転する刈取伝動軸38へ伝動される。
【0026】
なお、該第2作業伝動ベルト37には、作業伝動ベルト31と同様のテンションクラッチ30が設けられている。これにより、前記作業伝動軸28に伝動された動力によって、前記刈取部3及び前記脱穀装置6を駆動させる他、前記脱穀装置6のみを駆動させることもできる。
【0027】
前記刈取伝動軸38は、前記脱穀装置6の枠体の前端側で、該枠体の左右幅に亘って延設されており、該刈取伝動軸38は、側面視で前記フィーダ8の下方側に配置されている(図5等参照)。
【0028】
該刈取伝動軸38に伝動された動力は、前記正逆転切換装置20を介して、前記刈取部3側に動力を伝動する刈取入力軸41に伝動される。これにより、前記刈取部3は、前記刈取伝動軸38に設けた前記正逆転切換装置20によって、圃場の作物の刈取作業を行う正転駆動とは反対方向に駆動する逆転駆動状態に切換えることができるように構成されている。該正逆転切換装置20の具体的な構成については後述する。
【0029】
以上より、前記エンジンから脱穀装置6側の前記作業伝動軸28に伝動された動力は、脱穀装置6内側から前記刈取伝動軸38に伝動され、該刈取伝動軸38を介して機体内側から前記フィーダ8の下方を通って機体外側の前記正逆転切換装置20側に伝動され、該正逆転切換装置20を介して前記刈取部3側に動力を入力する前記刈取刈取入力軸41に伝動される。
【0030】
前記刈取入力軸41に伝動された動力により、前記刈取部3、具体的には、前記フィーダ8内の搬送コンベア19や、前記掻込オーガ18や、前記刈刃17や、掻込リール13を正逆転駆動させることができる(図3参照)。このとき、該刈取部3は、ワンウェイクラッチを介すことによって刈取部3の一部、具体的には、前記搬送コンベア19と掻込オーガ18のみを逆転駆動させることもできる。
【0031】
これにより、前記掻込オーガ18や、前記フィーダ8内に刈取った作物や雑草類等が詰まった場合であっても、前記刈取部3の全体やその一部を逆転駆動させることによって、刈取部3の清掃やメンテナンス作業をよりスムーズに行うことができる。
【0032】
次に、図3乃至7に基づいて、正逆転切換装置の具体的な構成について説明する。図4及び図5は、脱穀装置の要部正面図及び要部側面図であり、図6は、正逆転切換装置を示した斜視図であり、図7(A)及び(B)は、正逆転切換装置を示した左側面図及び、正逆転切換装置を示したA-A断面図である。
【0033】
前記正逆転切換装置20は、前記刈取伝動軸38の端部側にボス部材40を介して同一軸芯上で一体回転するように連結される入力軸42と、該入力軸42の前方側に配置された出力軸43と、該出力軸43に伝動された動力を上方の前記刈取入力軸41に伝動する上下方向の伝動チェーン44と、前記入力軸42及び出力軸43を覆うとともに走行機体(脱穀装置)側に支持するための取付ブラケット48と、前記出力軸43に伝動される動力の正転・逆転を切換えるクラッチ切換機構46と、該クラッチ切換機構46による動力の正逆転切換を操作可能に構成するクラッチ操作機構47と、該クラッチ切換機構46をカバーするケース体60とを備え、該正逆転切換装置20全体の左右外側が着脱可能なカバー体49によって覆われている(図7等参照)。なお、該正逆転切換装置20は、前記入力軸42に代えて刈取伝動軸38に直接装着されるボス部材を設けた構成にしても良い。
【0034】
前記クラッチ切換機構46は、前記入力軸42と一体回転する逆転入力ギヤ51と、該逆転入力ギヤ51と噛合うように前記出力軸43に設けられた逆転出力ギヤ52と、前記入力軸42側の入力側スプロケット53と前記出力軸43側の出力側スプロケット54によって掛け回される正転伝動チェーン56と、前記逆転出力ギヤ52及び前記出力側スプロケット54間をスライド可能となるように前記出力軸43に軸装されたスリーブ状の伝動切換部材50と、該伝動切換部材50を操作するクラッチ操作部57とを有している。
【0035】
上記逆転出力ギヤ52と、上記出力側スプロケット54とは、それぞれ前記出力軸43に遊転可能に軸支されている。また、該逆転出力ギヤ52には、前記伝動切換部材50側に形成された係止部と係合可能な逆転側係止爪61が形成され、該出力側スプロケット54には、前記伝動切換部材50側に形成された係止部と係合可能な正転側係止爪62が形成されている(図3参照)。
【0036】
上記伝動切換部材50は、前記出力軸43上をスライド自在に構成されるとともに、該出力軸43とスプライン結合されることにより、該出力軸43と一体回転するように構成されている。また、該伝動切換部材50は、スライド方向にそれぞれ係止爪が形成されており、前記出力側スプロケット54(正転伝動チェーン56)側と、逆転入力ギヤ52側の何れか一方に択一的に係合されるように構成されている。
【0037】
上記クラッチ操作部57は、前記クラッチ操作機構47を介して、前記出力軸43に沿ってスライド操作可能に設けられており、該クラッチ操作部57のスライド操作に応じて、前記伝動切換部材50の位置を操作できるように構成されている。すなわち、該クラッチ操作部57によって、前記伝動切換部材50が係合される部材(出力側スプロケット54又は前記逆転入力ギヤ52)を切換えることができる。
【0038】
該構成によれば、前記出力軸43(正逆転切換装置20)は、前記伝動切換部材50(クラッチ操作部57)が前記出力側スプロケット54側にスライドし、該出力側スプロケット54と一体回転する状態に切換えられると、該出力軸43は、前記入力軸42に伝動された動力と同じ方向に駆動する正転駆動状態となる。その一方で、前記出力軸43は、前記伝動切換部材50(クラッチ操作部57)が前記逆転出力ギヤ52側にスライドし、該逆転出力ギヤ52と一体回転する状態に切換えられると、該出力軸は43、前記入力軸42に伝動された動力と反対方向に駆動する逆転駆動状態となる。
【0039】
前記クラッチ操作機構47は、前記取付ブラケット48の前部側に軸支された前後方向の揺動軸66と、該揺動軸66を軸として揺動可能に支持された揺動アーム67と、該揺動アーム67の一方側に取付けられた引張スプリング(弾性部材)68と、該揺動アーム67の他方側に取付けられたワイヤ69と、該ワイヤ69と連係可能に設けられた切換レバー71とを備えている(図6(A)及び(B)参照)。
【0040】
上記揺動軸66は、前記取付ブラケット48の前方側から該取付ブラケット48内の前記出力軸43下側まで延設され、該揺動軸66の軸回転に応じて前記クラッチ操作部57と当接する当接部(図示しない)等が設けられている。これにより、該揺動軸66は、前記揺動アーム67を介して、該揺動軸66を軸回転させることによって、前記クラッチ操作部57を前記出力軸43に沿って左右方向にスライド移動させることができるように構成されている。
【0041】
上記揺動アーム67は、前記揺動軸66の左右一方(図示する例では左)側に前記引張スプリング68が係止されることによって、正面視で反時計回りに回動するように付勢されている。これにより、該揺動アーム67は、前記クラッチ操作部57を前記出力側スプロケット54(左右内)側にスライドさせて、該クラッチ操作部57が出力側スプロケット54と一体回転するように係合した状態(正転駆動状態)を保持するように構成されている。
【0042】
また、該揺動アーム67は、前記切換レバー71の前後揺動操作によって前記ワイヤ69を前記引張スプリング68の付勢力に抗して引っ張ることにより、正面視で時計回り側に回動作動させることができるように構成されている。これにより、該揺動アーム67は、前記クラッチ操作部57を前記逆転出力ギヤ52(左右外)側にスライドさせることにより、該クラッチ操作部57が逆転出力ギヤ52側と一体回転するように係合した状態(逆転駆動状態)に切換えることができる。
【0043】
上記切換レバー71は、前記フィーダ8の下側を通した前記ワイヤ69を介して前記クラッチ切換機構46側に連結されることにより、前記フィーダ8の左右内側に取付けられている。言い換えると、該切換レバー71は、前記クラッチ切換機構46で前記フィーダ8を左右で挟む位置に設けられている。
【0044】
該構成により、前記クラッチ操作機構47(切換レバー71等)は、走行機体(脱穀装置6)側に支持されているため、該クラッチ操作機構47を取外すことなく、前記フィーダ8を脱穀装置6側から着脱してメンテナンス作業を行うことができる。
【0045】
前記取付ブラケット48は、前記正逆転切換装置20を、前記脱穀装置6の前端側で上下方向に延設された脱穀フレーム6aの前面側にボルト固定可能に構成され、前記入力軸42と出力軸43を軸支するとともに、該入力軸42及び出力軸43の全体を収容する箱状に形成されたケース体60がボルト固定されている。
【0046】
該構成によれば、該取付ブラケット48は、強固に形成された前記脱穀フレーム6a側に固定されており、該取付ブラケット48により支持される正逆転切換装置20をより強固且つ安定的に取付けることができる。
【0047】
ちなみに、前記刈取部3(フィーダ8)は、前記刈取入力軸41を軸に前記脱穀フレーム6a側に上下揺動可能に支持されており、該刈取部3は、前記フィーダ取付ブラケット9aを取外すことによって前記脱穀装置6側から取外すことができるように構成されている。
【0048】
また、該取付ブラケット48によれば、図2に示されるように、前記正逆転切換装置20(前記ケース体60)を、前記脱穀装置6の前端側で且つ前記フィーダ8の左右側方側に形成された空きスペース上に配置することができるため、該正逆転切換装置20が平面視で走行機体全体の左右外側に突出させずにスペース効率良く設けることができる。
【0049】
前記カバー体49は、前記フィーダ8の揺動軸(刈取伝動軸38)の左右外側に取付けられる前記正逆転切換装置20(ケース体60)の左右外側全体をカバーすることができるように取付けられる(図1参照)。これにより、前記フィーダ8の左右側方側に後付けされた前記正逆転切換装置20が目立たたなくなるとともに、前記出力軸43と、前記刈取入力軸41に設けたスプロケットによって掛け回される前記伝動チェーン44が走行機体2の側方に露出しなくなるため、安全性が向上する。
【0050】
上述の構成によれば、前記正逆転切換装置20は、前記フィーダ8の側方側に表れる前記刈取伝動軸38の左右外側端部に設けられることにより、該正逆転切換装置20の組付作業やメンテナンス作業を容易に行うことができる。具体的には、該正逆転切換装置20は、前記脱穀装置6の前方且つ前記フィーダ8の外方側に形成される平面視切欠き状に形成されるスペースに配置されている。言い換えると、該正逆転切換装置20は、下降状態の前記フィーダ8と側面視でラップするように設けられている。
【0051】
また、該正逆転切換装置20は、走行機体側に軸支される前記刈取伝動軸38側に装着されるため、該走行機体前部の前記刈取部3の着脱作業を、該正逆転切換装置20を取付けた状態で行うことができる。このため、刈取部3等のメンテナンス作業もスムーズに行うことができる。
【0052】
また、前記正逆転切換装置20は、前記出力軸43側の逆転出力ギヤ52に、前記入力軸42側の前記逆転入力ギヤ51よりも径が大きい減速ギヤを用いている。すなわち、該正逆転切換装置20は、前記刈取入力軸41に逆転動力を伝動する場合には、前記逆転出力ギヤ52(減速ギヤ)を介して、減速された逆転動力が前記刈取入力軸41側にギヤ伝動されるように構成されている。
【0053】
これにより、前記刈取部3は、前記正逆転切換装置20によって前記逆転駆動状態に切換えることにより、該刈取部3を正転駆動状態の場合と比較して低速且つ高トルクな状態で逆転駆動させることができる。すなわち、前記刈取部3内に詰まった作物等を刈取部3内側から効率良く取出すことができる。
【0054】
また、前記正逆転切換装置20は、前記刈取伝動軸38の左右外側に連結される入力軸42の前側近傍に前記出力軸43が配置されるとともに、該出力軸43は、前記刈取入力軸41の下方前側に配置されている。これにより、該正逆転切換装置20は、前記入力軸42(刈取伝動軸38)側から前記出力軸43を介して前記刈取入力軸41へ動力が伝動する伝動経路が側面視で三角形状に形成されている。
【0055】
該構成により、上下方向の前記伝動チェーン44を掛け回す前記出力軸43と、前記刈取入力軸41との間に、該伝動チェーン44の張力を保持するテンション付与部材55(図示する例では板バネ)を設けるスペースを十分に確保しつつ、前記正逆転切換装置20全体の構成はコンパクトに構成することができるものである(図5及び図7(A)参照)。
【符号の説明】
【0056】
2 走行機体
3 刈取部
10 エンジン
20 正逆転切換装置
38 刈取伝動軸
41 刈取入力軸
43 出力軸
71 切換レバー(操作レバー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7