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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】磁気共鳴容積イメージング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220916BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 390
A61N5/10 M
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2018567084
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2017038520
(87)【国際公開番号】W WO2017223187
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/353,530
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512129837
【氏名又は名称】ビューレイ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViewRay Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】イワン・カブリコフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギ・ゲルガノフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エフ・デンプシー
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507951(JP,A)
【文献】特開2005-040416(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052002(WO,A1)
【文献】特開2009-160378(JP,A)
【文献】特開2012-029767(JP,A)
【文献】特表2016-516508(JP,A)
【文献】特表2015-511139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245453(US,A1)
【文献】国際公開第2010/008097(WO,A1)
【文献】M von Siebenthal, et al.,4D MR imaging of respiratory organ motion and its variability,PHYSICS IN MEDICINE AND BIOLOGY,2007年,vol.52 no.6,1547-1564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
A61N 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を格納する非一時的機械可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記命令は、コンピュータシステムの少なくとも一部分を構成する少なくとも1つのプロセッサにより実行されることで、
磁気共鳴イメージングシステム(MRI)から、患者動作の間の患者人体の一部分に関する基準データを取得し、患者動作ライブラリを拡充するステップと、
対象期間の間、前記基準データに関係づけられる追跡データを取得するステップと、
前記対象期間の、前記追跡データの取得とほぼ同時に、部分容積データを取得するステップと、
取得された前記部分容積データ及び取得された前記追跡データから、特定の動作状態を示す患者人体の容積画像を構築するステップと
を含む動作を引き起こす、
コンピュータプログラム製品。
【請求項2】
時間分解容積画像シーケンスを生成するために、複数の容積画像が構築されて組み合わせられる、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項3】
前記追跡データ又は前記部分容積データの少なくともいくつかを、前記患者動作ライブラリに追加するステップをさらに含む、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項4】
前記追跡データは、平面k空間データである、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項5】
前記追跡データは、3次元k空間データである、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項6】
前記追跡データ及び前記部分容積データは、直接シーケンスで取得される、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項7】
少なくとも前記追跡データに基づいて、患者に放射線治療を提供するステップをさらに含む、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
前記部分容積データは、k空間領域の予め定められたシーケンスに従って取得され、
前記部分容積データは、前記予め定められたシーケンスのうち、まだ取得されていないあるk空間領域に対応する、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
前記容積画像を構築するステップは、
前記患者動作ライブラリを複数の動作状態に分類する、ただし前記動作状態の各々は前記患者動作の一部分に対応する、ステップと、
前記追跡データ及び前記基準データの間の最近傍マッチングを見つけることで、前記追跡データに対応する前記動作状態を決定するステップと、
前記決定された動作状態に基づいて、前記複数の動作状態の間に取得された前記部分容積データを、前記複数の動作状態の1つに対応する容積データ集合に追加する、ただし構築された前記容積画像は、部分容積画像の完全集合を含む、ステップとを含む、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
前記基準データは、前記患者人体の一部分を通じた統合投影である、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
前記部分容積データは、前記患者人体の一部分における複数の平面に対応する複数の平面データである、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
前記追跡データはラジアルk空間データの部分集合に対応し、当該部分集合は、前記追跡データと前記基準データとの最近傍マッチに対応する前記患者人体の一部分を再構築するために用いられ得る、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
前記追跡データを取得するステップはさらに、以前取得されたラジアルk空間データにおける対応するラジアル線を置き換える、ただし前記追跡データはk空間における単一のラジアル線に沿って取得される、ステップを含む、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
前記追跡データを前記基準データと関係づけるステップは、
基準データをデジタル補間、外挿、又は変換により変形することで前記関係づけるステップの品質を示す適合度メトリックを改善するステップを含む、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
前記変形はさらに、前記追跡データから計測された、患者動作の速度に基づく、
請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記基準データを取得するステップは、放射線治療を前記患者に提供する前に発生する、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記基準データを取得するステップは、放射線治療を前記患者に提供した後に発生する、
請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記基準データはk空間データである、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記基準データは平面画像データである、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
前記部分容積データはk空間データである、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
前記部分容積データは平面画像データである、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
さらに前記部分容積データを、前記追跡データと相関させるステップを含む、 請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
前記対象期間は、患者への放射線治療を提供している間である、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
前記対象期間は、診断のための観測期間の間である、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
前記部分容積データは、前記追跡データが取得された直後に取得される、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
前記追跡データ及び部分容積データの取得は連続であり、前記追跡データ及び部分容積データの取得の間で交互に切り替わる、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
少なくとも1つのプログラマブルプロセッサによる実行のための方法であって、当該方法は、
磁気共鳴イメージングシステム(MRI)から、患者動作の間の患者人体の一部分に関係する基準データを取得し、患者動作ライブラリを拡充するステップと、
対象期間の間、前記基準データに関係づけられる追跡データを取得するステップと、
前記対象期間の、前記追跡データの取得とほぼ同時に、部分容積データを取得するステップと、
取得された前記部分容積データ及び取得された前記追跡データから、特定の動作状態を示す患者人体の容積画像を構築するステップとを含む、
実行のための方法。
【請求項28】
システムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を格納する非一時的機械可読媒体であって、当該命令は、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサにより実行されると、前記少なくとも1つのプログラマブルプロセッサに、
磁気共鳴イメージングシステム(MRI)から、患者動作の間の患者人体の一部分に関係する基準データを取得し、患者動作ライブラリを拡充するステップと、
対象期間の間、前記基準データに関係づけられる追跡データを取得するステップと、
前記対象期間の、前記追跡データの取得とほぼ同時に、部分容積データを取得するステップと、
取得された前記部分容積データ及び取得された前記追跡データから、特定の動作状態を示す患者人体の容積画像を構築するステップと
を含む操作を引き起こす非一時的機械可読媒体とを含む、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月22日に受理され、「磁気共鳴容積イメージング」と題された、米国仮出願第62/353530号に基づく優先権を主張し、当該仮出願の内容は、全体を通して本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で説明される要旨は、磁気共鳴データ取得及び画像再構築のためのシステム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴イメージングシステムによる患者の3Dイメージング、又は立体イメージングは、患者の診断及び治療に有益な情報を提供する。患者の組織の時間経過に伴う動きを描写する容積画像列の恩恵を受けることも有益であり得る。こういったものは技術的に、4DMRI、シネ(cine)MRI、又は時にはリアルタイムMRIと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある態様では、患者動作ライブラリを拡充させるために、患者動作の間の患者人体の一部に関係づけられた基準データが、磁気共鳴イメージングシステム(MRI)から取得される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
対象期間の間、基準データと関係づけられ得る追跡データが取得される。対象期間の間、追跡データの取得と概ね同時に、部分容積データが取得される。取得された部分容積データ及び取得された追跡データから、特定の動作を行う患者の人体の容積画像が構築され得る。
【0006】
いくつかの変形では、以下の特徴のうち1つ以上が、任意の所望の組み合わせで選択的に含まれ得る。
【0007】
基準データは、患者の人体の一部を通した統合投影であり得る。統合投影は、患者の人体とMRIシステムとの間の角度に基づいて平面k空間データに変換され得る。
【0008】
追跡データはラジアルk空間データの部分集合に対応し、当該部分集合は、追跡データと基準データとの最近傍マッチに対応する患者人体の一部分を再構築するために用いられ得る。
【0009】
追跡データ及び部分容積データは、直接シーケンスで取得され得る。追跡データの取得は、以前取得されたラジアルk空間データにおける対応するラジアル線を置き換えることを含み得る。基準データ、追跡データ及び部分容積データは、k空間データ又は平面画像データであり得る。部分容積データは、追跡データと相互に関係づけられてよい。
【0010】
追跡データは、基準データをデジタル補間、外挿、又は変換で変形することで追跡データと基準データとの関係づけの品質を示す適合度メトリックを改善することにより含む、基準データと関係づけられ得る。当該変形はさらに、追跡データから計測された患者動作の速度に基づき得る。
【0011】
部分容積データは、k空間領域の予め定められたシーケンスに従って取得されるか、又は予め定められたシーケンスのうち、まだ取得されていないあるk空間領域に対応し得る。部分容積データは、患者人体の一部分における平面に対応する平面データであり得る。
【0012】
部分容積データは、追跡データの取得の直後に取得され得る。また、追跡データ及び部分容積データの取得は、連続でありかつ追跡データ及び部分容積データの取得の間で交互に切り替わり得る。
【0013】
追跡データ又は部分容積データの少なくともいくつかは、患者動作ライブラリに追加され得る。追跡データは、平面k空間データ又は3次元k空間データであり得る。
【0014】
時間分解容積画像シーケンスを生成するために、容積画像が構築されて組み合わせられ得る。容積画像を構築するステップは、患者動作ライブラリを、各々が患者動作の一部分に対応する動作状態へと分類するステップを含み得る。また、追跡データ及び基準データの間の最近傍マッチを見つけることで、追跡データに対応する動作状態を決定するステップを含む。決定された動作状態に基づいて、複数の動作状態のうちの1つの間に取得された部分容積データは、当該動作状態の1つに対応する容積データ集合に追加され得る。構築された容積画像は、部分容積データの完全集合を含む。
【0015】
放射線治療は、少なくとも追跡データに基づいて患者に提供され得る。また、対象期間は患者への放射線治療の提供が行われている期間であり得る。対象期間は診断のための観察の間であり得る。基準データを取得するステップは、患者に放射線治療を提供する前に起こり得る。基準データを取得するステップは、患者に放射線治療を提供した後に起こり得る。
【0016】
相互に関係する態様において、患者と交差する少なくとも1つの平面からの追跡データ及び患者の対象容積の部分容積データが、患者の治療の間に取得され得る。
【0017】
いくつかの変形では、以下の特徴の1つ以上が、任意の所望の組み合わせで選択的に含まれ得る。追跡データ及び部分容積データは、交互のやり方で取得され得る。追跡データは少なくとも1つの平面に対応する、2Dラジアルk空間データであり得る。追跡データを、複数の動作を行う患者のある領域を説明する基準データと比較した比較結果に基づいて、患者の動作フェーズが識別される。
【0018】
現在の要旨の実施例は、1つ以上の機械(たとえば計算機など)に、説明された特徴の1つ以上を実行する操作を引き起こさせるよう操作可能な、明白に具体化された機械可読媒体に加えて、本明細書で提供された説明に従う方法を含み得るが、それらに限定されない。同様に、1つ以上のプロセッサと、当該1つ以上のプロセッサに結合された1つ以上のメモリを含むコンピュータシステムも説明される。計算機可読な記憶媒体を含み得るメモリは、1つ以上のプロセッサに、本明細書で説明される操作のうち1つ以上を実行させる1つ以上のプログラムを、内包、エンコード又は格納等してよい。現在の要旨の1つ以上の実施例に従う計算機により実行される方法は、単一の計算システム又は複数の計算システムに内在する1つ以上のデータプロセッサにより実行され得る。上記複数の計算システムは互いに接続されていてよく、ネットワーク(例えば、インターネット、無線広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワークなど)上の接続を含むがそれらに限定されない1つ以上の接続を通じて、データ及び/又は命令若しくは他の命令などを交換し得る。
【0019】
本明細書で説明される解決課題の1つ以上の変形の詳細は、添付の図面及び以下の詳細に記載される。説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から、本明細書で説明される解決課題の他の特徴及び利点は明らかである。例示を目的として、現在開示されている解決課題の特定の特徴は、部分的MRI画像データから容積画像を生成するためのシステムに触れながら説明されているが、そのような特徴が限定を意図するものではないことは即座に理解されるべきである。本開示に続く特許請求の範囲は、保護される解決課題の保護範囲を画定することを意図するものである。
【0020】
本明細書の一部分に組み込まれてそれを構成する添付の図面は、説明とともに本明細書に開示される解決課題の特定の態様を示し、開示される実施例と関係づけられた原理のいくつかを説明するのを助ける。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】イメージング平面及び対象容積によって交差された患者を示す図である。
図2】基準データ、部分容積データ、及び追跡データを取得するためのシーケンスの例を示す図である。
図3】平面k空間データ及び平面画像を示す図である。
図4】基準データの動作状態へのクラスタリングの例を示す図である。
図5】追跡データ及び基準データから患者の動作状態を決定するための概念の例を示す図である。
図6】より多くのフル容積データ集合を形成するために、部分容積データ集合同士を組み合わせるやり方の例を示す図である。
図7】時間分解容積画像シーケンスの構築のやり方の例を示す図である。
図8】患者の人体の容積画像の構築のための方法の例を示すフローチャートである。
図9】本開示のある実施例に係る放射線療法と共に用いられる磁気共鳴イメージングシステムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実用的な場合は、類似の符号は、類似の構造、特徴、又は要素を示す。
【0023】
図1は、撮像平面110により交差されかつ、対象容積120を含む患者100を示す図である。磁気共鳴イメージング(MRI)は、患者100のナビゲータ(1次元)、平面(2次元)、又は容積(3次元)画像を提供できる。
【0024】
対象容積120内の患者人体(内臓、腫瘍など)の3次元画像は、対象期間にわたって(例えば、患者の治療の間)、撮影されてよく、患者人体の動作(動作は例えば、鼓動、消化プロセス、呼吸などの結果生じる)を示す時間分解容積画像シーケンスを生成するために組み合わされ得る。理想的には、特定の対象期間の間(例えば、MRI補助の診断の間、又は患者の治療の間)、患者人体のリアルタイム容積画像が生成されて表示される。代替的に、本開示のある実施例によれば、対象期間の間に部分データが取得され、後から容積画像が再構築されてよい。対象期間の間患者100は動作中であることを想定すると、取得される部分容積データは患者100の異なる位置(又は動作状態)と対応し得る。
【0025】
取得された部分容積データを動作状態へとソートするのを補助する目的で、有益な追跡データを提供するために、概ね部分容積データの取得と同時に、患者100の単一平面領域の画像が取得されてよい。平面画像はその後、患者100の平面画像の、患者の動作(例えば、治療台に横たわって、正常に呼吸している)を証明するライブラリと比較され得る。比較の結果から、患者動作の特定の状態が識別され得る。その後、その動作状態の間の対象容積に対する完全な(又は実質的に完全な)容積データ集合を提供するために、同一の動作状態に対応する部分容積データ集合の取得同士が組み合わされてよい。時間分解容積画像のシーケンスは、追跡データにより示されたように、時間経過とともに示される患者の動作状態に係る完全容積データ集合を配列することで生成され得る。
【0026】
本明細書で説明されるシステム、方法、及びソフトウェアにより生成された時間分解容積画像シーケンスは、4DMRI、シネ(cine)MRI、リアルタイムMRI等と呼ばれる。こういったシーケンスは、時間経過にともなう3D動作の図示により恩恵を得られる、患者の診断において用いられ得る。こういったシネMRIは、例えば治療行為の間の手術道具の動きにともなう患者の動作の4D表示を提供する等、介入治療にも応用され得る。
【0027】
別の応用において、時間分解容積画像シーケンスは、放射線療法による治療を改善するために用いられる。例えば、放射線が患者に向けられている間の、患者の組織の位置を知ることにより、治療の間に患者の組織により受けられる放射線量の正確な計算が可能となる。放射線療法による治療についてのさらなる利点は、以下で議論される。本明細書では「治療」、「治療画像」、「治療時間」等の単語が用いられるが、本開示はそのイメージング技術が、治療、診断法、又は本技術が有益にはたらく任意の他の行為であろうと、いかなる対象期間の間にも用いられることを想定している。
【0028】
図2は、基準データ200、部分容積データ210、及び追跡データ220を取得するためのシーケンスを示す図である。
【0029】
図2に示されたタイムラインの例は、患者動作ライブラリに格納された基準データ200を取得することから始まる。本開示は、この基準データ200の取得が、例えば容積データの取得よりも後、又は特定の対象期間の前、途中、若しくは後などの他の時刻に発生することも想定している。基準データ200は、患者人体の動作状態を定義づけるのに用いられ得る。患者100が放射線治療を受けている一例では、治療の間に患者が動き得る広いレンジの動作を提供するため、基準データ200の取得の間、患者は深呼吸するよう指示される。患者が首に治療を受けている場合、基準データ200の取得の間、患者は頭を動かし、発声し、又は飲み込むよう指示される。
【0030】
タイムラインの例に示されるように、基準データ200が取得された後、部分容積データ210を取得する期間及び追跡データ220を取得する期間が交互に発生し得る。患者動作ライブラリは、例えば遠隔のサーバ、患者の治療を制御するコンピュータ、MRIシステム等に位置する不揮発性メモリに格納されたデータであり得る。
【0031】
例えば患者100の放射線治療の間、又は診断のための観測期間の間といった対象期間の間、追跡データ220が取得され、基準データ200と関係づけられる。ある方法の例では、対象期間の間の、追跡データ220の取得とほぼ同時に、部分容積データ210が取得される。ここで、「ほぼ同時」とは、追跡データ220及び部分容積データ210が、直接シーケンスで(すなわち、一方がもう一方の直後に)取得されるか、2種類の取得の間に短いギャップを伴って取得されるか、又は可能であれば重複する時間において取得されることを意味する。いかなる場合でも、部分容積データ210が追跡データ220と相互に関係づけられるよう、部分容積データ210が取得された時と患者人体が概ね同じ位置、方向、及び形にある間に追跡データ220が取得できるに足るほどに、ギャップが短いということが主な制約である。追跡データ220及び部分容積データ230はそれぞれ、主として単一の動作状態の間に取得されるということが別の制約であり得る。
【0032】
ある実施例では、図2に示すように、追跡データ220及び部分容積データ210の取得は連続的でありかつ、追跡データ220の取得及び部分容積データ210の取得を交互に切り替える。図2の例に示すように、追跡データ220は、200ミリ秒おきの部分容積データ210の取得に挟まれて、50ミリ秒おきに取得される。他の実施例では、追跡データ220は5ミリ秒、10ミリ秒、25ミリ秒、又は100ミリ秒おきに取得されてよい。同様に、部分容積データ210は、他の実施例では、10ミリ秒、50ミリ秒、100ミリ秒、300ミリ秒、400ミリ秒、又は500ミリ秒おきに取得されてよい。
【0033】
追跡データ220及び部分容積データ210を交互に取得する交互のパターンにより、部分容積データ210は追跡データ220の隣接部分と関係づけられる。従って、部分容積データ210を基準データ200に関係づけるために、追跡データ220は基準データ200と比較され得る。ある特定の例では、追跡データ220が対応している基準データ200を識別することで、部分容積データ210は、患者動作ライブラリ中に定義された特定の動作状態にビン化され得る。患者人体の3次元画像を作るのに十分な完全な、又は完全に近い容積データ集合が取得されたとき、その動作状態の間の人体の三次元画像が再構築され得る。基準データ200、追跡データ220及び部分容積データ210の取得の詳細については、以下でさらに説明される。
【0034】
図3は、平面画像320を生成するのに用いられる平面k空間データ310を示す図である。MRIシステムは、患者の動作の間に、患者人体の一部分に関係する基準データ200を取得できる。基準データ200はその後、患者100の動作状態を説明する患者動作ライブラリを拡充するのに用いられ得る。基準データ200は、k空間データ(例えば、1D、2D、3D)、投影データ、平面画像データ、容積データ、又はそれらの組み合わせなどの任意の種類であり得る。基準データ200は、患者人体の一部分を通じた1つ以上の統合投影を伴うことができる。投影は、例えば心臓、肺、又は腎臓等の、患者の人体の一部と交差する平面部(図1も参照)を含み得る。統合投影は、患者人体及びMRFシステムの間の角度に基づいて、平面k空間データ310に変換され得る。いくつかの実施例では、基準データ200のために用いられた平面は、部分容積データ210に対応するどの容積からも分けられることができる。
【0035】
図3に示される平面k空間データ310に対するラジアルパターンは、k空間領域のイメージングのためのパターンの一例を示す。ラジアル取得のシーケンスは、例えばサイクル4、サイクル8などサイクル配列図であってよい。他のラジアル取得の選択肢は、あるk空間直線のラジアル分布に対して例えば、角黄金比、ビット反転(0,4,6,1,5,3,7)、無作為、線0-1,5-6,10-11といった角度的に近接または隣接する一定間隔おきにとった複数の線を含み得る。十分なk空間データ集合が取得されていれば、平面画像320は逆フーリエ変換により再構築され得る。平面画像320はその後、患者動作ライブラリに格納され得る。
【0036】
基準データ200、追跡データ220、平面画像320(たとえば、追跡データ220又は基準データ200から再構築されたもの)、及び/又は部分容積データ210は、例えば放射線治療を実行する前、放射線治療中、又は放射線治療を実行した後等、任意のタイミングで患者動作ライブラリに追加されることができる。前の期間からの、又は他の患者からの基準データ200を追加することにより、患者動作ライブラリの質は継続的に改善され得る。基準データ200の追加により、それ以前の複数の計測値を平均することで、画像の解像度を向上させ、ノイズを取り除くことができる。ある実施例では、基準データ200の部分集合に対して単純平均が実行され得る。他の実施例では、平滑化は、基準データ200が取得された時刻に基づく重み付け、イメージングされた患者人体に基づく重み付け、基準データ200の類似度を決定するための前基準データとの相関などに基づく重み付け等といった、より高度な技術を含み得る。追加の基準データ200を含めることにより、上で述べたのと同じやり方で、利用可能な動作状態の数を拡張もされ得る。
【0037】
さらに別の実施例では、部分容積データ、追跡データ、容積画像、平面画像320、又は、患者動作ライブラリに格納された任意の基準データ200は、基準データ200が取得された以外の患者動作のレンジに対する追加の基準データ200を提供するために、操作又は変更され得る。一例として、基準データ取得中に、腫瘍又は患者人体の他の一部分は、ある方向に5cmのレンジ内で移動したとして記録され得る。しかしながら、治療中に、腫瘍は6cmのレンジ内で移動したと観測され得る。患者人体のイメージングされた動作にマッチングしようとするかわりに、システムは基準データ200の境界線を外れたことを識別することができる。腫瘍が現在の腫瘍位置に到達するか、又はほぼそうであるよう変換される追加の(又は合成の)基準データが、生成され得る。追加の基準データは、追加の動作状態として定義され得る。追加の基準データを生成するために、既存の基準データ200は、変形可能な画像登録により補間、外挿又は変換されることで、患者人体の他の形又はコンディションと対応づき得る。
【0038】
図4は、基準データ200の動作状態400(a~j)へのクラスタリングを示す図である。基準データ200は、患者人体の画像を複数の動作状態400においてキャプチャすることができる。例えば呼吸サイクルといった、任意のイメージングされた動作は、任意の数の動作状態400へと分割され得る。例えば、患者の呼吸の1サイクルは、最大吸息及び呼息に対応する10~15呼の動作状態400へと分割され得る。図4に示される例において、10個の動作状態400(a~j)が示されている。また、動作状態400は、異なる種類の患者動作の複素であってもよい。例えば、心臓付近の腫瘍の位置は、患者100の呼吸の動作だけでなく、心臓の収縮及び拡張によっても影響され得る。この例において、動作状態400の1集合は、心臓及び肺の動きによる移動の任意の組み合わせを含み得る。
【0039】
基準データ200は、所定の数の動作状態400へと分割され得る。この分割は、パターンマッチング、ランキング、又はクラスタリングを採用するアルゴリズムにより実行され得る。以下の例は、クラスタリングアルゴリズムの一実施例を説明する。ある実施例において、患者動作ライブラリ中の各平面画像320は、N次元空間中のある1点から成ると定義され得る。ただし、Nは再構築された平面画像320におけるピクセルの数である。2点間の距離は、ユークリッド距離として、又は相互相関係数(CC)の関数として表現され得る。(1-CC)は、このような距離関数の一例である。ここで、CCが1の場合、それは2つの平面画像の間のゼロ距離を示す(すなわち、2つは同じ画像である)。最初に、患者動作ライブラリから、最も離れている(最も異なる)2つの平面画像が検索される。2つの画像が見つかると、それらは2つの異なるクラスタに割り当てられる。その後、残りの各平面画像は、2つのクラスタのうち最も近いものに割り当てられる。この時点では、患者動作ライブラリには2つの動作状態が定義されている。追加の動作状態を生成するために、最も偏差の大きいクラスタが識別され得る。識別は、そのクラスタに属する平面画像320の、そのクラスタの中心からの距離の偏差を決定することにより実行され得る。偏差最大のクラスタが識別されると、そのクラスタに属する平面画像320は、上述されたのと同じやり方で2つの追加のクラスタへと分割され得る。この処理は、クラスタの数が所定の動作状態400の数と等しくなるまで継続される。
【0040】
図5は、追跡データ220及び基準データ200から現在の患者動作状態510を決定するためのやり方の例を示す図である。追跡データ220は、現在の動作状態に対応する平面画像を再構築するために用いられるかわりに、例えば、動作状態400と対応付けられた基準データ200との比較のために用いられてよい。ここで基準データは平面k空間データ310の形式であってよい。比較結果に基づいて、現在の患者動作状態510が、例えば以下で説明するように決定され得る。
【0041】
ある実施例において、平面k空間データ310は、例えば図1に示す平面のいずれか1つに対応する追跡データ220として取得され得る。追跡平面は、患者人体の治療の対象となる一部分と交差するようにも選択され得る。例えば、患者100の肺における腫瘍の治療の間、腫瘍を通る矢状断面が用いられてよい。他の実施例において、追跡データ220は例えば、任意の種類のk空間データ(例えば1D、2D、3D)、投影データ、平面画像データ、容積データ、それらの組み合わせなどを含み得る。3次元k空間追跡データ220は、部分容積データ210と同じ容積のものであっても、異なる容積のものであってもよい。ある実施例において、追跡平面は、患者人体を通り、一般に基準データ200が取得された位置に対応し得る固定された平面であり得る。本開示は、選択された種類の基準データ200に関係づけられる可能性のある任意の種類の追跡データ220を想定する。
【0042】
いくつかの実施例において、基準データ200は、患者人体の一部分の平面画像の再構築を可能にするフル2Dデータ集合(極座標k空間データなど)であり得る。しかしながら、かわりに追跡データ220は、極座標k空間データの部分集合であり得る。例えば、基準データ200及び追跡データ220が2D極座標k空間データであるとき、追跡データ220は、基準データ200におけるフルk空間データ集合よりも少ないラジアル線を含み得る。他の実施例において、追跡データ220は、k空間において基準データ200が及ぶ角度分布の一部のみに及び得る。本明細書ではマッチング線520(図5に太線で示す)と呼ばれるk空間データの部分集合(図解のため疎に示す)は、基準データ200の対応する複数の線とマッチングされ得る。マッチングは、例えば、追跡データ220の線に最も近いマッチである、基準データ200におけるk空間直線の線形結合を探す手順を含み得る。また別の実施例において、追跡データ220を基準データ200に対応づけるか又は関係づける手順は、追跡データ220の基準データ200への関係づけの質を示す適合度メトリックを改善するために、補完、外挿、又は平行移動により変形する手順を含んでよい。基準データ200における平面k空間データ310からの線は、足りない線を補うために、マッチング線520に追加され得る。その後、現在の患者動作状態510に対応する患者人体の平面画像が、組み合わせられた基準データ200及び追跡データ220から再構築され得る。選択的に、最終の画質を改善するために、患者動作ライブラリからの追加の類似画像が、再構築された画像に混合され得る。
【0043】
ある実施例において、平面画像320は以下で詳説される手続により構築され得る。
・ステップ1-患者動作ライブラリから、計測されたマッチング線520と最も高い相互相関係数を持つk空間データ集合を見つける。
・ステップ2-計測されたマッチング線520に最も適合する、k空間データ集合の線形結合を見つける。
・ステップ3-ステップ2で見つかった係数の線形結合を用いて、足りないk空間データを補う。
【0044】
[但し書き]
【0045】
M-マッチング線の数。
【0046】
N-ラジアルサンプリングパターンにおける線の合計数。
【0047】
C-チャネル/コイルの数。
【0048】
P-ラジアル線あたりの点の数。
【0049】
lib-患者動作ライブラリ中で有効なフルk空間データ集合の合計数。
【0050】
,l,…l-用いられる順序付けスキームによる、サンプリングパターンにおける線の線インデックス
【0051】
【数1】
-現在の平面フレームにおいて、j番目のチャネル中のi番目の線に対する計測/復元された複素データ
【0052】
【数2】
-d番目のデータ集合のj番目のチャネルにおけるi番目の線に対する、患者動作ライブラリにおける複素k空間データ
【0053】
【数3】
-ベクトル
【数4】
及び
【数5】
の間の相互相関係数。2つのベクトルは長さと、全要素の合計が同じである。
【0054】
【数6】
及び
【数7】
は、ベクトル要素a及びbの平均である。
【0055】
[ステップ1詳細]
【0056】
このステップを実行するために、計測されたマッチング線520と、患者動作ライブラリにおける各k空間データ集合との間の相互相関係数が計算され得る。その後、最大のCCを持つk空間データ集合が選択され得る。
【0057】
【数8】
【0058】
【数9】
【0059】
【数10】
【0060】
その後、Klib個のCC係数が、以下のように計算される。
【0061】
【数11】
【0062】
いくつかの実施例では、Klibは10である。最大のCC係数を持つk空間データ集合のインデクスは、d,d,…,dで示される。
【0063】
[ステップ2詳細]
【0064】
計測されたデータ
【数12】
に最も適合する線形結合
【数13】
のために検索が実行され得る:
【0065】
【数14】
【0066】
複素係数αは、以下の実数連立一次方程式を解くことで得られる:
【0067】
【数15】
【0068】
ここで、行列R,I及びベクトルA,Bは以下のように定義される:
【0069】
【数16】
【0070】
【数17】
【0071】
【数18】
【0072】
【数19】
【0073】
ここで、R(a)、T(a)、及びa*は、それぞれ複素数aの実部、虚部、及び複素共役である。
【0074】
[ステップ3詳細]
【0075】
ステップ2に現れる線形結合は、以下の線形結合により得られた複数のマッチング線に、患者動作ライブラリからのk空間データを追加するために用いられ得る:
【数20】
【0076】
代替のアプローチは、d,d,…dにおける複数の線と同様の効果を持つ、d-1,d-1,…d-1患者動作ライブラリデータ集合における線を考慮する。マッチング線に対して既知のデータ集合が取得された時間における近さも考慮され得る。例えば、データ集合dにおける線lM+1は、線をマッチングした直後に取得され、結合においてデータ集合d-1におけるlM+1番目の線よりも大きい重みづけをされ得る。このような方法の一実施例は、以下のように表現され得る。
【数21】
【数22】
【0077】
上述された方法により、平面k空間データ310から構築された平面画像320は、追跡データ220がk空間内の単一のラジアル線に沿って取得される既得のラジアルk空間データにおける対応するラジアル線を置き換えることで更新され得る。こうすることで、再構築された平面画像は、複数の「古い」ラジアル線及び、1つの新しいラジアル線を含む。これにより、全てのラジアル線の再取得を待つことなく、部分的に更新された平面画像320は即座に生成可能となる。
【0078】
患者100は、追跡データ220及び基準データ200の間の十分に良好なマッチが見つからないようなやり方で移動できる可能性がある。これにどう対処するかの例は、基準データ200に外挿を行い、追跡データ220及び基準データ200の間のマッチングの改善を試みるものであり得る。例えば、基準データ200が通常の呼吸をキャプチャしたが、対象期間の間患者100が非常に深い呼吸をしていた場合、基準データ200はデジタルで外挿され、追跡データ220とのマッチングが試みられてよい。外挿は、患者人体の変化する形の速度に基づき得る。例えば、追跡データ220により計測された肺の拡張の速度に基づいている。マッチングが改善されるか又は十分となるようであれば、外挿された基準データは、患者動作ライブラリに追加され得る。
【0079】
追跡(又は部分容積)データは、患者100をイメージングする際に取得される追跡又は部分容積データ210のk空間表現に対応するk空間ベクトルで表現される。これらのk空間ベクトルは、実部及び虚部を持つ複素量であり得る。代替的に記述すると、k空間ベクトルは大きさ及び位相角を持ち得る。いくつかの実施例では、追跡220又は部分容積データ210の各座標又はボクセルに含まれる位相角における変化は、異なる時刻に取得された追跡又は部分容積データ210に対応する位相角の計測値の差をとることで決定され得る。
【0080】
この方法は、(シフト又は回転したかもしれない患者人体に対する)取得されたk空間データを、既存のk空間データによりよくマッチングさせるために用いられ得る。例えば、患者人体に対応する基準200、部分容積210、又は追跡220データを含むk空間データがあり得る。患者人体が本質的に同じ物理的形状を保ったままシフト(たとえば線形変換)、回転、又はその両方を行い得ることを知っていれば、取得されたいずれのk空間データにおける変化も、平行移動又は回転が起こったか否かを判断するために適用され得る。特に、人体のシフト又は回転を表現するために、k空間データに拡縮及び回転が適用され得る。k空間拡縮は、デカルト空間における線形シフトに比例し得る。k空間における回転は、デカルト空間における回転に比例し得る。適用されたk空間への変化により、そのk空間データの、既知のk空間データ(たとえば基準200、部分容積210、追跡220データ)とのマッチングが改善されたならば、たとえk空間データが患者人体の移動により変化していても、患者動作フェーズが判断され得る。こうすることで、実際には既に患者動作ライブラリにあるものと同じであり得る患者動作状態を、完全に新しいものとして再構築する必要なく、k空間データにおける回転又はシフトの値を変化させるだけで、いくつかのマッチング又は再構築が起こり得る。これにより、患者人体が移動又は回転するが、それ以外の変形を伴わない場合に、取得及びマッチングを加速させることができる。
【0081】
図6は、容積データ集合620を形成するために組み立てられた部分容積データ610のスライスを示す図である。取得された部分容積データ210及び取得された追跡データ220から、特定の動作状態630を示す患者人体の容積画像が構築され得る。図6において、特定の動作状態630の例が、解剖的画像により示される。部分容積データ210は、例えば、3Dデカルトk空間におけるスライス610又は平面の列として、又は平面画像データの集合として取得される。部分容積データ210は、k空間内の平面を含むのに加えて、患者人体と交差する任意の数の平面と対応し得る。部分容積データ210の取得の期間中、1つ以上の(画像平面又はk空間データの形の)スライス610が取得され得る。
【0082】
デカルトk空間内のスライスは、いくつかのやり方で取得され得る。1つめに、MRIシステムは所望の平面領域のみを活性化させることができる。これにより、その平面領域にのみ関係するという知識とともに、データを取得することができる。第2の方法の例は、患者容積の全体を活性化させ、患者100を通るk空間データ又は平面の特定の一部分のみを取得するものである。
【0083】
部分容積データ210の、追跡データ220の特定の取得への時間的近接により、部分容積データ210は当該追跡データ220に対応する動作状態を表現し得る。矢印により示される通り、部分容積データ210はその後、特定の動作状態630によりビン化され得る。部分容積データ210を適切な動作状態400にグループ分け又はビン化するために、ソートアルゴリズムが実行され得る。図6に示されるように、取得の開始又は終了以外にも、部分容積データ210の取得の各々は、2つの追跡データ220の取得により挟まれていてよい。部分容積データ210はその後、時間的な接近により、いずれか1つの追跡データ220と相関関係にあり得る。2つの取得に関連する2組の追跡データ220の各々は、クラスタリングされた基準データ200と相互相関関係にあり得る。いくつかの実施例において、各クラスタにおける平均相互相関係数が、重み係数として用いられ得る。部分容積データ210はその後、最大の重みを持つ2つのクラスタに対する動作状態と関係づけられた2つのビンへと蓄積され得る。蓄積は、それらの動作状態に対する重み係数(又は相関係数)によっても重み付けされ得る。一例として、ある時刻において取得された追跡データ220は、CCが0.8の動作フェーズ2と、CCが0.3の動作フェーズ5と、CCが0.1の動作フェーズ8を有するとする。従ってこの例では、部分容積データ210は、動作フェーズ2へとビン化され、0.8の重みを与えられる。また、部分容積データ210は、動作フェーズ5にもビン化され、0.3の重みを与えられる。他の実施例において、部分容積データ210は、重み付けによって任意の数のビンにより受け取られ得る。例えば、(最大の重みに対応する)唯一のビンが部分容積データ210を受け取り得る。別の実施例では、状況に応じて重み付けされた全てのビンが、部分容積データ210を受け取り得る。
【0084】
部分容積データ210は、上述された平面k空間データに対するものと同様の、k空間領域のシーケンスにより取得され得る。取得が開始した後、k空間の、既に特定の動作状態400に対して取得された一部分に対するデータを再取得するのを避けるために、まだ取得されていないk空間領域に対して部分容積データ210が取得され得る。どのk空間領域を取得するかの選択は、継続的に更新される取得予定領域のリストに基づき得る。シーケンスからk空間領域が取得された後、当該k空間領域はリストから取り除かれ得る。ある実施例では、k空間スキャンシーケンスが事前に定義され実行されてもよい。部分容積データ210が取得され動作状態にビン化される際、k空間スキャンシーケンスは、まだ十分にイメージングされていないか、若しくはイメージングされた回数が最小の動作状態に対応する部分容積データ210だけを、又はそれを優先的に、取得するようにアップデートされ得る。一例として、3種の動作状態があり、動作状態1及び2は10回イメージングされ、動作状態3は5回のみイメージングされた場合、部分容積データ210の取得は、追跡データ220が患者人体は動作状態3にあると示すときにのみトリガーされ得る。
【0085】
ある実施例において、平面画像を構築するのに十分な量の部分容積データ210が取得された場合、その後追跡データ220は、部分容積データ210の当該部分集合により置き換えられ得る。こうすることで、容積データから追跡データ220が抽出され、上述のように、部分容積データ210をある動作状態と相関させるために用いられ得る。
【0086】
上述の平面データの速い取得と同様、部分(又は完全)容積データがより早い時点から利用可能である場合、当該データは即時に取得された部分容積データ210と組み合わせられることができる。例えば、ある動作フェーズに対する容積データの完全集合がある場合、古い部分容積データ210のある領域は、新しく取得された部分容積データ210で置き換えられ得る。更新された容積データの完全集合は、更新された容積画像を生成するのに用いられ得る。
【0087】
図7は、時間分解容積画像シーケンスの構築を示す図である。患者容積の再構築は、蓄積された部分容積データ210を用いて実行される。上述の通り、これは決定された動作状態に基づいて、動作状態400の1つに対応する容積データ集合620に、動作状態の1つの間に取得された部分容積データ210を追加することで行われ得る。3Dの高速フーリエ変換(FFT)により、部分容積データ210の完全集合又はほぼ完全集合から、容積画像700が構築され得る。FFTが完全なクラスタにおいて実行された場合、再構築された容積画像700はk空間の項により定義された解像度のものになる。3D容積データ集合が不完全であれば、(図7のあるデータ集合に対して示されるように)1つも利用可能な画像がなくなるか、又は理想的な完全容積画像と比べて歪んでしまう。容積画像700はその後、概ね図7の矢印で示される通り、時間分解容積画像シーケンスを生成するために組み合わせられ得る。
【0088】
図8は、患者人体の容積画像700の構築のためのプロセスフローチャートである。ステップ810において、患者の動作の間の患者人体の一部分に関する基準データがMRIシステムにより取得され、患者動作ライブラリが拡充され得る。ステップ820において、基準データと関係し得る追跡データが、対象期間の間に取得され得る。ステップ830において、対象期間の間、追跡データの取得とほぼ同時に、部分容積データが取得される。ステップ840において、取得された武運容積データ及び取得された追跡データから、特定の動作状態を表す患者人体の容積画像が構築され得る。これらのステップには本明細書で説明された変更を行ってよく、他のステップが追加されてよい。例えば、複数の容積画像を構築し、その後それらを組み合わせて時間分解容積画像シーケンスを生成してもよい。
【0089】
図9は、とりわけ、診療椅子940に横たわる患者100を覆うガントリー920を含む磁気共鳴イメージングシステム910を示す図である。この例では、MRI910のメイン磁場は、分割されたメイン磁気コイル950により生成される(が、他の磁石配置も用いられ得る)。MRI910は、MRI主導の放射線療法の治療を提供するための、放射線治療装置960が統合されている。図9に示される特定の例において、治療は線形加速器により提供される。線形加速器は、ガントリー920を囲う3つの個別のシールドコンテナに含まれるサブコンポーネントに分解されている。しかしながら、本開示は、患者100に放射線を届けることのできる任意の種類の放射線治療装置を想定している。これは例えば、アイソトープ治療、陽子の治療法、重イオン療法などである。
【0090】
本明細書で説明されたように構築された画像及び時間分解容積画像シーケンスは、放射線治療の提供を改善するために用いられ得る。例えば、放射線治療は追跡データ220に基づいて患者100に提供され得る。上で議論されたように、追跡データ220は例えば平面画像データであり、患者の治療の間に平面画像320へと再構築され得る。平面画像320は、放射線治療装置960からの放射線に対する患者人体の位置についての情報を提供できる。その後放射線治療の線は、瞬間的な患者人体の状態及び位置を知っていることに基づいて、変化させられてよい。例えば、放射線治療装置960の出力は、受信した追跡データ220及び/又は再構築した患者人体の画像に基づいてゲート制御、又は反転などされ得る。
【0091】
時間分解容積画像シーケンスは、放射線治療の間の患者人体の位置について詳細な情報を提供することができる。したがってこれは、例えば実際の線量分布を算出して、規定の線量分布と比較することにより、治療がどの程度良好に提供されたかを治療の後に確かめるために用いられ得る。
【0092】
加えて、治療の間に受信された追跡データを計測された容積データと比較することにより、患者人体の動作を予見するモデルがより訓練されたものとなり得る。例えば、追跡データの特定の集合が患者動作を良好に予見するものである場合、当該データは放射線治療を提供する際に優先的に用いられ得る。
【0093】
さらに、十分に相関の高い追跡データ及び容積データを用いている場合、治療計画の達成可能性は、基準データ200のみに基づいて予見できる。これにより、容積画像の再構築を実行する必要なしに、現在の患者の状況に基づいて、セッション毎に治療計画を更新することが可能となる。
【0094】
本明細書で述べられる要旨の1つ以上の態様又は特徴は、デジタル電子回路、組み込み回路、特殊設計された特定用途向け組み込み回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組み合わせにより実現され得る。これらの様々な態様又は特徴は、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能及び/又は解釈可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおける実行を含み得る。上記プログラマブルプロセッサは、特殊用途向け又は一般用と向けであってよく、データ及び命令を受信し、及びデータ及び命令を送信するために、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置と接続されている。プログラマブルシステム又は計算システムは、クライアント及びサーバを含んでよい。クライアント及びサーバは一般に互いに遠隔であり、典型的には遠隔通信ネットワークを通じて相互作用する。クライアント及びサーバの関係は、それぞれのコンピュータの上で実行されて互いにクライアント対サーバの関係にさせるコンピュータプログラムにより起こる。
【0095】
これらのコンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポネント、又はコード等と呼ばれ、プログラマブルプロセッサへの機械命令を含み、並びに、高級手続言語、オブジェクト指向プログラミング言語、関数型プログラミング言語、論理プログラミング言語、及び/又はアセンブリ/機械言語で実行され得る。本明細書で用いられる「機械可読媒体」は、機械命令及び/又はデータをプログラマブルプロセッサに提供するのに用いられる、磁気ディスク、光ディスク、メモリ及びプログラマブル論理デバイス(PLD)などの任意のコンピュータプログラム製品、装置及び/又はデバイスを指し、機械可読信号としての機械命令を受信する機械可読媒体を含む。「機械可読信号」とは、プログラマブルプロセッサに機械命令及び/又はデータを提供するために用いられる任意の信号を指す。機械可読媒体は、非一時的ソリッドステートメモリ若しくは磁気ハードドライブ、又は任意の等価な記憶媒体と同様、そのような機械命令を非一時的に格納できる。機械可読媒体は、代替的に又は追加で、プロセッサキャッシュ又は他の、1つ以上のプロセッサ物理コアと関連づけられたランダムアクセスメモリがするように、そのような機械命令を一時的な方式で格納できる。
【0096】
ユーザとのインタラクションを提供するため、本明細書で説明される要旨の1つ以上の態様又は特徴は、ユーザに情報を表示するためのカソードレイチューブ(CRT)若しくは液晶ディスプレイ(LCD)、又は発光ダイオード(LED)モニタと、ユーザがコンピュータへの入力を提供するためのキーボード及びポインティングデバイスとを有するコンピュータ上で実行され得る。ポインティングデバイスは、例えばマウス又はトラックボール等である。同様に、ユーザとのインタラクションを提供するために、他の種類の装置が用いられてもよい。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形の感覚フィードバックであり得る。これは例えば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、又は触覚的フィードバックといったものである。また、ユーザからの入力は、機械的、発話的、又は触覚的な入力など、任意の形で受信され得るが、これらに限定されない。他の可能な入力装置は、タッチスクリーン又は、単一点式又は複数点式の、抵抗トラックパッド又は静電容量式トラックパッドといった他の接触感知デバイス、音声認識ハードウェア及びソフトウェア、光学スキャナ、光ポインタ、並びに、デジタルイメージキャプチャデバイス及び関係づけられた解釈ソフトウェア等であり得るが、これらに限定されない。
【0097】
上記の説明及び特許請求の範囲において、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」に類する表現は、要素又は特徴の接続的なリストにより追随されて現れ得る。「及び/又は」の用語も、2つ以上の要素又は特徴のリストにおいても現れ得る。これらの表現は、前後の文脈で暗に又は明に言及されているのでない限り、記載された要素又は特徴のいずれかを個別に意味するか、又は、列挙された要素又は特徴のいずれか1つを、他の列挙された要素又は特徴のいずれか1つと組み合わせたものを意味することを意図するものである。例えば、「A及びBの少なくとも1つ」、「A及びBのうち1つ以上」及び「A及び/又はB」の表現はいずれも、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」を意味する。同様の解釈は、3つ以上のものを含むリストにおいても同様に意図されている。例えば、「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B及びCのうち1つ以上」及び「A、B及び/又はC」の表現はいずれも、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBの両方、A及びCの両方、B及びCの両方、並びに、A~Cのすべて」を意味することが意図されている。上述及び特許請求の範囲における「~に基づいて」の表現は、「少なくとも部分的に~に基づいて」を意味し、列挙されていない特徴又は要素も許容するものである。
【0098】
本明細書で説明された要旨は、所望される配置によってシステム、装置、方法、コンピュータソフトウェア、又は物品の上で実施され得る。先述の説明で記載された実施例は、本明細書で説明された要旨と一致する全ての実施例を表現するものではなく、それらは説明された要旨に関連する態様と一致するいくつかの例に過ぎない。いくつかの変形は上記で詳細に説明されたが、他の変更又は追加も可能である。特に、本明細書に記載されたものに加え、さらなる特徴及び/又は変形が提供され得る。例えば、上述された実施例は、開示された要素の様々な組み合わせ及び部分的組み合わせ、及び/又は上で開示された、いくつかのさらなる特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせが対象となり得る。加えて、添付の図面で示され、及び/又は本明細書で説明された論理フローは、所望の結果を達成するために、必ずしも示された順序、又は手続順序を必要としない。他の実施例は、以下の特許請求の範囲の保護範囲に含まれ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9