(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】等速自在継手用外側継手部材
(51)【国際特許分類】
F16D 3/20 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
F16D3/20 Z
F16D3/20 H
(21)【出願番号】P 2019047210
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌矢
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 輝明
(72)【発明者】
【氏名】船橋 雅司
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-272322(JP,A)
【文献】特開2009-293728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径面にトルク伝達部材が転動する複数の案内溝が設けられたカップ部と、該カップ部の底部から軸方向外向きに延びた軸部とを備え、該軸部に、他部材をトルク伝達可能に連結するための連結要素が設けられた等速自在継手用外側継手部材において、
前記複数の案内溝を有する金属製の第1部材と、前記連結要素を有する金属製の第2部材との間に絶縁材料で形成された絶縁部材が介在しており、
前記絶縁部材は、前記第1部材と前記第2部材とを非接触に保持した状態で、前記第1部材および前記第2部材と一体回転可能であ
り、
前記第1部材、前記第2部材および前記絶縁部材は、何れも、前記カップ部を構成する筒状部を有し、前記絶縁部材の筒状部の内径面が、内径面に前記複数の案内溝が設けられた前記第1部材の筒状部の外径面に嵌合されると共に、前記第2部材の筒状部の内径面が、前記絶縁部材の筒状部の外径面に嵌合されており、
前記第1部材の筒状部と前記絶縁部材の筒状部との間に両者と軸方向で係合した第1係合部材が設けられると共に、前記絶縁部材の筒状部と前記第2部材の筒状部との間に両者と軸方向で係合した第2係合部材が設けられていることを特徴とする等速自在継手用外側継手部材。
【請求項2】
前記絶縁部材の筒状部の内径面およびこれに嵌合される前記第1部材の筒状部の外径面、並びに前記絶縁部材の筒状部の外径面およびこれに嵌合される前記第2部材の筒状部の内径面が断面非真円状に形成されている請求項
1に記載の等速自在継手用外側継手部材。
【請求項3】
前記絶縁部材の筒状部および前記第2部材の筒状部の軸方向寸法が、前記第1部材の筒状部の軸方向寸法よりも小さい請求項
1又は2に記載の等速自在継手用外側継手部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車や各種産業機械などの動力伝達系に組み込んで使用され、駆動側と従動側の二軸間で回転動力を等速で伝達する等速自在継手の外側継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、等速自在継手は、角度変位のみを許容する固定式等速自在継手と、角度変位および軸方向変位を許容する摺動式等速自在継手とに大別される。等速自在継手は、固定式であるか摺動式であるかに関わらず、カップ部および軸部を有し、カップ部の内径面に複数の案内溝が設けられた外側継手部材と、上記カップ部の内周に収容される内側継手部材やトルク伝達部材などの継手内部部品とを主要な構成部材として備える。
【0003】
ところで、自動車や各種産業機械には多くの電気機器が装着されており、電源(バッテリー)や電気系統などから漏洩した電流が等速自在継手に流れ込んでくる可能性がある。例えば
図7に模式的に示すような電気自動車100、すなわち、バッテリー101から供給される電流Eによってモータ102が駆動され、その回転動力を受けて動力伝達装置としてのドライブシャフト103、さらには駆動輪(前輪)104が回転駆動される電気自動車100において、バッテリー101から供給される電流Eの一部がモータ102から漏洩すると、その漏洩電流E’は、
図8に示すように、図示外の他部材(例えば、差動装置のサイドギヤ)を介してドライブシャフト103を構成する摺動式等速自在継手(図示例はトリポード型等速自在継手)110の外側継手部材111に流れ込み、以降、トルク伝達部材(ローラ)112→内側継手部材(トリポード部材)113→中間シャフト115→固定式等速自在継手120の内側継手部材123→トルク伝達部材(ボール)122→外側継手部材121の順に流れていく。
【0004】
また、図示は省略するが、例えば駆動輪に制動力を付与するためのブレーキに電動ブレーキが装着された自動車において、電動ブレーキに供給される電流の一部が漏洩すると、その漏洩電流が上記とは逆の経路を辿ってドライブシャフト内を流れるおそれがある。
【0005】
上記のようにしてドライブシャフト内を漏洩電流(以下、単に「電流」という)が流れた場合には、例えば、外側継手部材と他部材との接触部や、外側継手部材(および内側継手部材)とトルク伝達部材との接触部等で発生するスパークによって電食が生じ、等速自在継手の耐久寿命が著しく低下するおそれがある。そして、近年、自動車の電動化が急速に進展し、等速自在継手に電流が流れ込む可能性が増している関係上、等速自在継手に適切な電食防止対策を講じることが急務となっている。
【0006】
そこで、本発明者らは、等速自在継手のうち、継手外部からの電流の入力対象である外側継手部材で電流の流通を阻止するようにすれば、等速自在継手の電食を防止する上で有効であると考えた。なお、電流が外側継手部材を流通するのを阻止するための技術手段としては、例えば下記の特許文献1に開示されたものが公知である。すなわち、特許文献1には、外側継手部材に設けられる案内溝の表面を絶縁材料としてのセラミックス材料で形成(案内溝をセラミックス被膜で被覆)することや、外側継手部材全体をセラミックス材料で形成することなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、等速自在継手の運転時(外側継手部材と内側継手部材の間でのトルク伝達時)、案内溝の表面には高い面圧が繰り返し作用する。そのため、案内溝を被覆するセラミックス被膜は損傷・剥離等し易く、等速自在継手の電食を適切に防止することができない可能性がある。また、外側継手部材全体をセラミックス材料で形成した場合、外側継手部材が著しく高コスト化する他、外側継手部材に必要とされる機械的強度が不足し、等速自在継手のトルク伝達性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
上記の実情に鑑み、本発明の目的は、必要とされるトルク伝達性能を具備するものでありながら、等速自在継手の電食を効果的に防止し得る外側継手部材を実現し、もって等速自在継手の耐久性および信頼性向上に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、内径面にトルク伝達部材が転動する複数の案内溝が設けられたカップ部と、カップ部の底部から軸方向外向きに延びた軸部とを備え、軸部に、他部材をトルク伝達可能に連結するための連結要素が設けられた等速自在継手用外側継手部材において、上記複数の案内溝を有する金属製の第1部材と、上記連結要素を有する金属製の第2部材との間に絶縁材料で形成された絶縁部材が介在しており、絶縁部材は、第1部材と第2部材とを非接触に保持した状態で、第1部材および第2部材と一体回転可能であることを特徴とする。なお、本発明でいう「連結要素」としては、軸方向に延びる凸部(歯)と凹部(歯底)が周方向に交互に形成されたスプラインやセレーションを挙げることができる。
【0011】
上記構成によれば、連結要素(を有する第2部材)を介して外側継手部材に電流が入力されても、第1部材と第2部材の間に介在し、両者を非接触に保持した絶縁部材によって、第2部材から第1部材への電流伝達が阻止される。これにより、案内溝を有する第1部材からトルク伝達部材への電流伝達、さらにはトルク伝達部材から内側継手部材への電流伝達等も当然に阻止することができるので、等速自在継手の電食を効果的に防止することができる。その一方、トルク伝達部材が転動する複数の案内溝およびトルク伝達用の連結要素は金属製の第1部材および第2部材にそれぞれ設けられ、また、絶縁部材は第1部材および第2部材と一体回転可能であることから、外側継手部材に必要とされる機械的強度やトルク伝達性能は問題なく確保することができる。
【0012】
上記構成において、第1部材、第2部材および絶縁部材は、何れも、カップ部を構成する筒状部を有するものとすることができる。この場合には、絶縁部材の筒状部の内径面を、内径面に複数の案内溝が設けられた第1部材の筒状部の外径面に嵌合し、第2部材の筒状部の内径面を、絶縁部材の筒状部の外径面に嵌合することができる。このとき、絶縁部材の筒状部の内径面およびこれに嵌合される第1部材の筒状部の外径面、並びに絶縁部材の筒状部の外径面およびこれに嵌合される第2部材の筒状部の内径面を(何れも)断面非真円形状に形成しておけば、第1部材と絶縁部材の相対回転、および絶縁部材と第2部材の相対回転を規制することができるので、安定したトルク伝達が可能となる。
【0013】
本発明に係る外側継手部材には、第1部材の筒状部および絶縁部材の筒状部と軸方向で係合した第1係合部材と、絶縁部材の筒状部および第2部材の筒状部と軸方向で係合した第2係合部材とをさらに設けることができる。このようにすれば、第1部材と絶縁部材の軸方向の相対移動や、絶縁部材と第2部材の軸方向の相対移動を規制することができるので、等速自在継手の運転時に外側継手部材に作用する軸方向荷重により外側継手部材が分解等するのを防止することができる。
【0014】
絶縁部材の筒状部および第2部材の筒状部の軸方向寸法は、第1部材の筒状部の軸方向寸法よりも小さくすることができる。このようにすれば、絶縁部材を設けたこと(外側継手部材を複数の部材で構成したこと)による外側継手部材の重量化を防止する上で有利となる。
【発明の効果】
【0015】
以上から、本発明によれば、必要とされるトルク伝達性能を具備するものでありながら、等速自在継手の電食を効果的に防止し得る外側継手部材を実現することができる。これにより、等速自在継手の耐久性および信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ドライブシャフトの一例を示す断面図である。
【
図2】(a)図は、本発明の一実施形態に係る外側継手部材の横断面図[(b)図のA-A線断面図]、(b)図は、同外側継手部材の縦断面図である。
【
図3】
図2に示す外側継手部材の分解斜視図である。
【
図4】(a)図は、
図2に示す外側継手部材を構成する第1部材と絶縁部材のアセンブリの縦断面図、(b)図は、第2部材の縦断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る外側継手部材を構成する第1部材と絶縁部材のアセンブリの縦断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る外側継手部材を構成する第2部材の縦断面図である。
【
図8】従来のドライブシャフトに電流(漏洩電流)が流れる様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面(
図1~
図6)に基づいて説明する。
【0018】
図1に、動力伝達装置の一種であるドライブシャフト1の一例を示す。このドライブシャフト1は、エンジンや電動モータ等の回転駆動源から出力される回転動力(トルク)を駆動輪に伝達するものであり、インボード側(
図1の紙面右側)に配置される摺動式等速自在継手3と、アウトボード側(
図1の紙面左側)に配置される固定式等速自在継手10と、両等速自在継手3,10をトルク伝達可能に連結する中間シャフト2とを備える。
【0019】
図1に示す摺動式等速自在継手3はいわゆるトリポード型であり、カップ部5および軸部6を有する外側継手部材4と、カップ部5の内周に収容された内側継手部材としてのトリポード部材8と、トルク伝達部材としてのローラ7とを備える。トリポード部材8には径方向に延びる脚軸が周方向等間隔で3本設けられており、各脚軸の外周にローラ7が1個ずつ回転自在に嵌合されている。
【0020】
図1に示す固定式等速自在継手10はいわゆるバーフィールド型であり、カップ部12および軸部13を有する外側継手部材11と、カップ部12の内周に収容された内側継手部材14と、カップ部12と内側継手部材14の間に複数個配置されたトルク伝達部材としてのボール15と、カップ部12の内径面と内側継手部材14の外径面の間に配置され、ボール15を保持する保持器16とを備える。この固定式等速自在継手10には、アンダーカットフリー型等、他の形式の固定式等速自在継手が用いられる場合もある。
【0021】
中間シャフト2のインボード側およびアウトボード側の端部外周面には雄スプラインがそれぞれ設けられている。インボード側の雄スプライン(図示せず)は、摺動式等速自在継手3のトリポード部材8の孔部に設けられた雌スプライン(図示せず)に嵌合され、また、アウトボード側の雄スプラインは、固定式等速自在継手10の内側継手部材14の孔部に設けられた雌スプラインに嵌合されている。係る構成により、トリポード部材8と中間シャフト2の間、および中間シャフト2と内側継手部材14の間でトルクが伝達される。
【0022】
両等速自在継手3,10の内部にはグリース等の潤滑剤が封入されている。潤滑剤の外部漏洩や継手外部からの異物侵入を防止するため、摺動式等速自在継手3の外側継手部材4と中間シャフト2の間、および固定式等速自在継手10の外側継手部材11と中間シャフト2の間には、筒状のブーツ9,17がそれぞれ装着されている。
【0023】
以下、本発明が適用された外側継手部材、ここでは、摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)3の外側継手部材4について詳細に説明する。
【0024】
図2(b)に示すように、外側継手部材4は、有底筒状のカップ部5と、カップ部5の底部から軸方向外向きに延びた軸部6とを備える。軸部6の自由端側の外径面には、図示しない他部材(例えば、差動装置のサイドギヤ)と外側継手部材4とをトルク伝達可能に連結するための連結要素(ここでは雄スプライン)23が形成されている。
図2(a)に示すように、カップ部5の内径面には、ローラ7の転動を案内するための案内溝21が周方向に離間した三箇所に形成されている。各案内溝21は、互いに対向する一対のローラ案内面22,22を有し、ローラ案内面22,22も含めて軸方向に延びた直線状に形成されている。本実施形態のカップ部5は、断面非真円形状、より具体的には、大径部と小径部とを周方向で交互に三つずつ配して構成される花冠状とされ、各大径部の内径面で案内溝21の溝底面が構成されている。
【0025】
図3にも示すように、本実施形態の外側継手部材4は、第1部材31、第2部材32および絶縁部材33のアセンブリからなり、絶縁材料で形成された絶縁部材33を介して金属製の第1部材31と第2部材32との間でトルクを伝達可能とした点に主たる特徴がある。上記の絶縁材料としては、高硬度で耐熱性や耐食性に優れたセラミックスが好ましく使用され、また、第1部材31および第2部材32を形成するための金属材料としては、例えば、加工性や焼入性が良好な炭素含有量0.20~0.60 質量%の鋼材(浸炭鋼、中炭素鋼、合金鋼など)が好ましく使用される。
【0026】
図2(b)および
図4(a)に示すように、第1部材31は、内径面に案内溝21が設けられた筒状部31aと、底部31bとを一体に有する有底筒状に形成され、また、絶縁部材33は、筒状部33aおよび底部33bを一体に有する有底筒状に形成されている。
図2(a)に示すように、第1部材31の筒状部31aおよび絶縁部材33の筒状部33aは、何れも、カップ部5の断面形状に倣った断面非真円形状(花冠状)に形成されており、同種の非真円形状に形成された筒状部31aの外径面に筒状部33aの内径面が嵌合されている。これにより、第1部材31と絶縁部材33が周方向(外側継手部材4の回転方向)で係合するので、両部材31,33が一体回転可能となる。なお、等速自在継手3の運転時における第1部材31と絶縁部材33の相対回転や軸方向の相対移動によるトルク伝達性能の低下を防止するため、絶縁部材33の筒状部33aの内径面を、第1部材31の筒状部31aの外径面に対して適宜の手段(例えば、圧入、接着、圧入接着等)で固定するようにしても良い。
【0027】
図2(b)および
図4(b)に示すように、第2部材32は、筒状部32aおよび底部32bを一体に有するカップ状部32cと、軸部6とを一体に有する。
図2(a)に示すように、筒状部32aは、カップ部5の断面形状に倣った断面非真円形状(花冠状)に形成されており、同種の非真円形状に形成された絶縁部材33の筒状部33aの外径面に第2部材32の筒状部32aの内径面が嵌合されている。これにより、絶縁部材33と第2部材32が周方向で係合するので、第2部材32と絶縁部材33、さらには第1部材31、第2部材32および絶縁部材33が一体回転可能となる。なお、等速自在継手3の運転時における第2部材32と絶縁部材33の相対回転や軸方向の相対移動によるトルク伝達性能の低下を防止するため、第2部材32の筒状部32aの内径面を、絶縁部材33の筒状部33aの外径面に対して適宜の手段(例えば、圧入、接着、圧入接着等)で固定するようにしても良い。
【0028】
上記構成により、第1部材31の筒状部31aと第2部材32の筒状部32aとの間には絶縁部材33の筒状部33aが介在し、第1部材31の底部31bと第2部材32の底部32bとの間には絶縁部材33の底部33bが介在するので、第1部材31と第2部材32は非接触の状態に保持される。
【0029】
以上を小括すると、外側継手部材4においては、案内溝21を有する金属製の第1部材31と、他部材と外側継手部材4とをトルク伝達可能に連結するための連結要素(雄スプライン)23を有する金属製の第2部材32との間に絶縁材料で形成された絶縁部材33が介在し、絶縁部材33は、第1部材31と第2部材32とを非接触に保持した状態で第1部材31および第2部材32と一体回転可能とされている。
【0030】
このような構成によれば、他部材を介して外側継手部材4(を構成する第2部材32)に電流が入力されても、第1部材31と第2部材32の間に介在する絶縁部材33によって、第2部材32から第1部材31への電流伝達が阻止される。これにより、案内溝21を有する第1部材31からローラ7への電流伝達、さらにはローラ7からトリポード部材へ8の電流伝達等も阻止することができるので、等速自在継手4の電食を効果的に防止することができる。その一方、ローラ7が転動する案内溝21および連結要素23は金属製の第1部材31および第2部材32にそれぞれ設けられ、また、絶縁部材33は第1部材31および第2部材32と一体回転可能であることから、外側継手部材4に必要とされる機械的強度やトルク伝達性能は問題なく確保することができる。
【0031】
従って、本発明によれば、必要とされるトルク伝達性能を具備するものでありながら、等速自在継手3の電食を効果的に防止し得る外側継手部材4を実現することができる。これにより、等速自在継手3の耐久性および信頼性を向上することができる。
【0032】
図2(b)、
図3および
図4(a)に示すように、本実施形態の外側継手部材4は、第1部材31の筒状部31aおよび絶縁部材33の筒状部33aと軸方向で係合した第1係合部材34と、絶縁部材33の筒状部33aおよび第2部材32の筒状部32aと軸方向で係合した第2係合部材35とをさらに有する。
【0033】
第1係合部材34は、周方向で有端のクリップ(いわゆるC型クリップ)で構成され、第1部材31の筒状部31aの外径面に設けられた環状溝31cと、環状溝31cと対向するように絶縁部材33の筒状部33aの内径面に設けられた環状溝33cとで画成される環状の空隙に嵌合固定されている。また、第2係合部材35は、第1係合部材34と同様のC型クリップで構成され、絶縁部材33の筒状部33aの外径面に設けられた環状溝33dと、環状溝33dと対向するように第2部材32の筒状部32aの内径面に設けられた環状溝32dとで画成される環状の空隙に嵌合固定されている。
【0034】
外側継手部材4が上記の第1および第2係合部材34,35をさらに備えていることにより、外側継手部材4の組立時に必要となる第1部材31と絶縁部材33の軸方向の位置決め、および絶縁部材33と第2部材32の軸方向の位置決めを容易にかつ正確に行うことができ、また、外側継手部材4の組立完了後には、第1部材31と絶縁部材33、および絶縁部材33と第2部材32が軸方向に相対移動するのを効果的に防止することができる。これにより、複数部材からなる外側継手部材4のトルク伝達性能を向上することができるので、等速自在継手3の信頼性を一層高めることができる。
【0035】
なお、本発明に係る外側継手部材4は、金属製の第1部材31と第2部材32の間に絶縁部材33を介在させている関係上、絶縁部材33を有さない金属製の外側継手部材に比べて重量化する可能性がある。外側継手部材が重量化すると、等速自在継手、さらにはドライブシャフトの重量化を招き、自動車の燃費(電費)を悪化させる懸念がある。そこで、本実施形態の外側継手部材4では、第2部材32の筒状部32aおよび絶縁部材33の筒状部33aの軸方向寸法を、第1部材31の筒状部31aの軸方向寸法よりも小さくすることによって重量化を抑えている。
【0036】
以上、本発明の一実施形態に係る外側継手部材4について説明を行ったが、本発明の実施の形態はこれに限られない。
【0037】
例えば、第1部材31および絶縁部材33は、
図5に示すように、底部31b,33bにその両端面に開口した孔部(貫通孔)を有するものに置き換えることが可能である。また、第2部材32は、
図6に示すように、底部32bの内底面および軸部6の端面(自由端側の端面)に開口した孔部(貫通孔)を有し、等速自在継手3(外側継手部材4)と他部材とをトルク伝達可能に連結する連結要素23が軸部6の内径面(孔部の内壁面)に設けられたものに置き換えることが可能である。
【0038】
また、以上では、有底筒状に形成した絶縁部材33を用いるようにしたが、絶縁部材33は、第1部材31と第2部材32とを非接触の状態に保持しつつ、第1部材31および第2部材32と一体回転可能である限り、任意形状をとることが可能である。従って、図示は省略するが、絶縁部材33は例えば円盤状に形成することも可能である。
【0039】
以上では、摺動式等速自在継手3のうち、トリポード型等速自在継手の外側継手部材4に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、他の形式の摺動式等速自在継手、例えばダブルオフセット型等速自在継手やクロスグルーブ型等速自在継手の外側継手部材に適用することも可能である。さらに、本発明は、摺動式等速自在継手の外側継手部材のみならず、固定式等速自在継手(例えば、
図1に示すバーフィールド型やアンダーカットフリー型)の外側継手部材に適用することも可能である。
【0040】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0041】
1 ドライブシャフト
3 摺動式等速自在継手
4 外側継手部材
5 カップ部
6 軸部
7 ローラ(トルク伝達部材)
31 第1部材
31a 筒状部
32 第2部材
32a 筒状部
33 絶縁部材
33a 筒状部
34 第1係合部材
35 第2係合部材