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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20220916BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220916BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P29/00
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/32
A61K47/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019131205
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014441
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】義永 隆明
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-208907(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170935(WO,A1)
【文献】特開2007-269753(JP,A)
【文献】特開2014-076960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/165
A61K 9/70
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、
前記粘着剤層の厚さが250~600μmであり、
前記粘着剤層が、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、粘着付与樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び流動パラフィンを含有しており、
前記粘着付与樹脂が、ロジン系樹脂であるか、又は、ロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせであり、
前記粘着付与樹脂が前記ロジン系樹脂と前記テルペン系樹脂との組み合わせであるとき、前記粘着剤層における前記テルペン系樹脂の含有量と前記ロジン系樹脂の含有量との質量比(テルペン系樹脂の含有量/ロジン系樹脂の含有量)が1.0以下であり、
前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と前記粘着付与樹脂の含有量との質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量/粘着付与樹脂の含有量)が0.8以上であり
前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20~28質量%であり、かつ、
前記粘着剤層における前記流動パラフィンの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して30~41質量%である、
ことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記粘着剤層が実質的に水を含有していないことを特徴とする、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記粘着剤層における前記ノニル酸ワニリルアミドの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.005~0.1質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層における前記l-メントールの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して1~10質量%であることを特徴とする、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して2~50質量%であることを特徴とする、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関するものであり、より詳しくは、ノニル酸ワニリルアミドを含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛、肩こりなどの慢性疾患の症状を緩和させることを目的とした製剤として、従来から、局所に温感刺激を与える温感タイプの外用剤が開発されている。温感タイプの外用剤は、温感刺激成分によって局所に温熱感を生じさせて毛細血管を拡張・血行を促進させ、組織の新陳代謝を高めることで、前記慢性疾患に対する消炎・鎮痛効果を発揮すると考えられている。
【0003】
前記温感刺激成分としては、トウガラシエキス、合成トウガラシのノニル酸ワニリルアミド、及びニコチン酸エステルなどが知られている。例えば、特開2008-179564号公報(特許文献1)には、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、テルペン系樹脂、可塑剤、酸化防止剤、フェルビナク、並びに、ノニル酸ワニリルアミド及びカプサイシンからなる群から選択される少なくとも1種の温感刺激成分を含有する消炎鎮痛貼付剤が記載されており、特開2018-168125号公報(特許文献2)には、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ロジン系粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、フェルビナク、並びに、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン及びトウガラシエキスからなる群から選択される少なくとも1種の温感刺激成分を含有する消炎鎮痛貼付剤が記載されている。
【0004】
また、上記温感タイプの外用剤では、局所に与える温熱感をより適度なものにすることを主な目的として、前記温感刺激成分に、冷感刺激を与える清涼化剤を組み合わせることが知られている。
【0005】
前記清涼化剤としては、l-メントール、dl-カンフル、ハッカ油、及びチモールなどが知られている。例えば、特開2014-76960号公報(特許文献3)には、熱可塑性エラストマー、粘着付与樹脂、軟化剤、合成ケイ酸アルミニウム、及び薬物を含有するホットメルト型粘着剤組成物が記載されており、前記薬物として、サリチル酸メチル、l-メントール、dl-カンフル、及びノニル酸ワニリルアミドの組み合わせが記載されている。また、国際公開第2017/146096号(特許文献4)には、粘着剤層が特定量のノニル酸ワニリルアミド及びオウバク末を含有し、さらにl-メントールも含有する貼付剤が記載されている。しかしながら、貼付剤の粘着剤層において、例えば、l-メントールをスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と組み合わせると、l-メントール自体が可塑剤として働き、粘着剤層の凝集力を低下させることが知られている(特開平7-48250号公報(特許文献5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-179564号公報
【文献】特開2018-168125号公報
【文献】特開2014-76960号公報
【文献】国際公開第2017/146096号
【文献】特開平7-48250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが、温感刺激成分としてノニル酸ワニリルアミド、及び清涼化剤としてl-メントールを含有する貼付剤、特に、非水系のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有する貼付剤について検討をおこなったところ、次の課題を新たに見い出した。すなわち、先ず、貼付部位に温感刺激を持続的に与えるためには、貼付剤の粘着剤層の厚さを厚くする(例えば、250μm以上とする)必要があるが、このように厚みのある粘着剤層の形状を維持するには、例えば、前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量を増量して粘着剤層をある程度硬くする必要がある。しかしながら、前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量を多くすると、他の粘着剤層成分との相溶性が低下して均一な製剤を製造することが困難になるため、上記のl-メントールに加えて、多量の可塑剤を含有させる必要が生じる。そこで、本発明者らが、前記可塑剤として流動パラフィンを用いたところ、かかる組成の粘着剤層において前記流動パラフィンの含有量を多くすると、今度は粘着剤層の凝集力が低下し、貼付剤剥離時に皮膚に粘着剤層が残ってしまうという問題が新たに生じることを見い出した。また、このように通常の貼付剤の粘着剤層よりも厚みや形状維持を要する粘着剤層においては、その凝集力が、当該通常の貼付剤よりも特に高水準である必要があることを本発明者らは見い出した。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及び流動パラフィンを含有する粘着剤層において、前記流動パラフィンの含有量が比較的多くとも粘着剤層の凝集力に特に優れた貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤において、前記粘着剤層に、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、粘着付与樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び流動パラフィンを組み合わせて含有させ、かつ、前記粘着付与樹脂を、ロジン系樹脂、若しくは特定量のロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせとすることにより、前記粘着剤層の厚さを厚く(好ましくは、250μm以上)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量を多く(好ましくは、前記粘着付与樹脂の含有量の0.8倍以上)、かつ、流動パラフィンの含有量を多く(好ましくは、20質量%以上)しても、該粘着剤層の凝集力に特に優れ、貼付剤剥離時の皮膚に対する粘着剤層残りを十分に抑制することが可能となることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、
前記粘着剤層の厚さが250~600μmであり、
前記粘着剤層が、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、粘着付与樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び流動パラフィンを含有しており、
前記粘着付与樹脂が、ロジン系樹脂であるか、又は、ロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせであり、
前記粘着付与樹脂が前記ロジン系樹脂と前記テルペン系樹脂との組み合わせであるとき、前記粘着剤層における前記テルペン系樹脂の含有量と前記ロジン系樹脂の含有量との質量比(テルペン系樹脂の含有量/ロジン系樹脂の含有量)が1.0以下であり、
前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と前記粘着付与樹脂の含有量との質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量/粘着付与樹脂の含有量)が0.8以上であり
前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20~28質量%であり、かつ、
前記粘着剤層における前記流動パラフィンの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して30~41質量%である、
ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が実質的に水を含有していないことが好ましく、また、前記粘着剤層における前記ノニル酸ワニリルアミドの含有量が前記粘着剤層の全質量に対して0.005~0.1質量%であることも好ましい。
【0012】
さらに、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層における前記l-メントールの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して1~10質量%であることが好ましく、また、前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して2~50質量%であることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及び流動パラフィンを含有する粘着剤層において、前記流動パラフィンの含有量が比較的多くとも粘着剤層の凝集力に特に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、
前記粘着剤層の厚さが250~600μmであり、
前記粘着剤層が、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、粘着付与樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び流動パラフィンを含有しており、
前記粘着付与樹脂が、ロジン系樹脂であるか、又は、ロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせであり、
前記粘着付与樹脂が前記ロジン系樹脂と前記テルペン系樹脂との組み合わせであるとき、前記粘着剤層における前記テルペン系樹脂の含有量と前記ロジン系樹脂の含有量との質量比(テルペン系樹脂の含有量/ロジン系樹脂の含有量)が1.0以下であり、
前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と前記粘着付与樹脂の含有量との質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量/粘着付与樹脂の含有量)が0.8以上であり、かつ、
前記粘着剤層における前記流動パラフィンの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20~45質量%である。
【0015】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える。前記支持体層としては、後述の粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。本発明に係る支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミニウムなどの金属が挙げられる。これらの中でも、薬物非吸着性や薬物非透過性の観点からは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記支持体層の形態としては、例えば、フィルム;シート、シート状多孔質体、シート状発泡体等のシート類;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。また、前記支持体層の厚みとしては、特に制限されないが、貼付剤を貼付する際の作業容易性及び製造容易性の観点からは、5~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
本発明の貼付剤は、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に剥離ライナーをさらに備えるものであってもよい。かかる剥離ライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミ、紙などの材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。これらの剥離ライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように該粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0017】
本発明の貼付剤としては、非水系貼付剤であることが好ましく、本発明に係る粘着剤層としては、非水系の粘着剤層であることが好ましい。本発明において「非水系の粘着剤層」とは、粘着剤層が実質的に水を含有していないことをいい、前記水としては、精製水、滅菌水、天然水、及びこれらの混合物等が挙げられる。本発明において、実質的に水を含有していないとは、製造工程中に前記粘着剤層に意図的に水を配合する工程がないことをいい、製造工程中に含有された空気中等の水分や貼付剤の皮膚への適用中に汗等を吸収した水分までを除くものではない。このような粘着剤層における水の含有量としては、より具体的には、前記粘着剤層の全質量に対して1質量%未満であることが好ましく、0.99質量%以下であることがより好ましく、0~0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係る粘着剤層は、温感刺激成分としてノニル酸ワニリルアミド(「ノニル酸ワニルアミド」ともいう)を含有する。本発明において、前記粘着剤層中に含有されるノニル酸ワニリルアミドの含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.005~0.1質量%であることが好ましく、0.01~0.05質量%であることがより好ましく、0.01~0.03質量%であることがさらに好ましく、0.01~0.02質量%であることがさらにより好ましい。ノニル酸ワニリルアミドの含有量が前記下限未満であると、貼付部位に与える温感刺激が不十分となって温熱感が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付部位に与える温感刺激が強くなり過ぎたり、粘着剤層の凝集力が低下したり、不快臭が発生したりする傾向にある。
【0019】
本発明に係る粘着剤層は、温感刺激をより高めるため、又は粘着基剤と他の粘着剤層成分との相溶性を高めるための清涼化剤としてl-メントール((1R,2S,5R)-5-Methyl-2-(1-methylethyl)cyclohexanol)を含有する。本発明において、前記粘着剤層中に含有されるl-メントールの含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~10質量%であることが好ましく、1.5~9質量%であることがより好ましく、2.55~7.66質量%であることがさらに好ましい。l-メントールの含有量が前記下限未満であると、温感刺激が不十分となったり粘着基剤の他の粘着剤層成分との相溶性が不十分となったりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層中に均一に含有させることが困難となったり、粘着剤層が可塑化しすぎて凝集力が低下する傾向にある。
【0020】
本発明に係る粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有する。本発明に係る粘着付与樹脂は、ロジン系樹脂であるか、又は、ロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせである。
【0021】
本発明において、ロジン系樹脂とは、ロジン酸を主成分とする樹脂であり、本発明に係るロジン系樹脂としては、例えば、水素添加ロジングリセリンエステル、超淡色ロジン、超淡色ロジンエステル、酸変性超淡色ロジンが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。前記ロジン系樹脂としては、パインクリスタル(KE-311、PE-590、KE-359、KE-100等)(商品名、荒川化学工業株式会社製)等の市販のものを適宜用いてもよく、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るロジン系樹脂としては、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性がより良好になる傾向にあるという観点から、水素添加ロジングリセリンエステルであることがより好ましい。
【0022】
また、本発明において、テルペン系樹脂とは、イソプレンを構成単位とする樹脂であり、本発明に係るテルペン系樹脂としては、例えば、ピネン重合体(α-ピネン重合体、β-ピネン重合体等)、テルペン重合体、ジペンテン重合体、テルペン-フェノール重合体、芳香族変性テルペン重合体、ピネン-フェノール共重合体が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。前記テルペン系樹脂としては、YSレジン(YSレジンPXN、YSレジンPX1150N、YSレジンPX1000、YSレジンTO125、YSレジンTO105等)、クリアロンP105、クリアロンM115、クリアロンK100(以上、商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)、タマノル901(商品名、荒川化学工業株式会社製)等の市販のものを適宜用いてもよく、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るテルペン系樹脂としては、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性がより良好になる傾向にあるという観点から、ピネン重合体であることがより好ましい。
【0023】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着付与樹脂の含有量(ロジン系樹脂の含有量、又は、ロジン系樹脂の含有量とテルペン系樹脂の含有量との合計、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して2~50質量%であることが好ましく、より好ましくは、5~43質量%、8~43質量、10~34質量%、10~30質量%である。前記粘着付与樹脂の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下したり、粘度が高くなり過ぎたりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残ったり剥離時の痛みが増大したりする傾向にある。
【0024】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着付与樹脂がロジン系樹脂である場合(前記粘着剤層中にテルペン系樹脂を含有しない場合)、当該ロジン系樹脂の含有量(2種以上の混合物である場合にはそれらの合計含有量、本明細書中において同じ)としては、前記粘着付与樹脂の含有量と同様である。
【0025】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着付与樹脂がロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせである場合、前記粘着剤層中に含有されるロジン系樹脂の含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~49質量%であることが好ましく、4~39質量%であることがより好ましく、9~29質量%であることがさらに好ましい。前記ロジン系樹脂の含有量が前記下限未満であると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなったり、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下したり、粘度が高くなり過ぎたりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、剥離時の痛みが増大したりする傾向にある。
【0026】
また、本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着付与樹脂がロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせである場合、前記粘着剤層中に含有されるテルペン系樹脂の含有量(2種以上の混合物である場合にはそれらの合計含有量、本明細書中において同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~25質量%であることが好ましく、4~22質量%であることがより好ましく、5~11質量%であることがさらに好ましい。前記テルペン系樹脂の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残ったり剥離時の痛みが増大したりする傾向にある。
【0027】
さらに、本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着付与樹脂がロジン系樹脂とテルペン系樹脂との組み合わせである場合、前記粘着剤層における前記テルペン系樹脂の含有量と前記ロジン系樹脂の含有量との質量比(テルペン系樹脂の含有量/ロジン系樹脂の含有量)は、1.0以下であることが必要である。また、前記質量比としては、0.1~1.0であることが好ましく、0.2~0.9であることが好ましく、0.45~0.8であることがより好ましく、0.45~0.7であることがさらにより好ましい。前記ロジン系樹脂の含有量に対する前記テルペン系樹脂の含有量が前記上限を超える(前記質量比が前記上限を超える)と、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなる傾向にある。
【0028】
本発明に係る粘着剤層は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)を含有する。本発明に係るスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体としては、貼付剤の製剤物性(特に粘着剤層の凝集力)及び他の成分との相溶性の観点から、粘度平均分子量が30,000~2,500,000であることが好ましく、100,000~1,700,000であることがより好ましい。
【0029】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して15~34質量%であることが好ましく、16~34質量%であることがより好ましく、20~28質量%であることがさらに好ましい。前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満であると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下したり、粘度が高くなり過ぎたりする傾向にある。
【0030】
本発明においては、前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と前記粘着付与樹脂の含有量との質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量/粘着付与樹脂の含有量)が0.8以上であることが必要である。また、前記質量比としては、0.8~3であることが好ましく、0.8~2であることが好ましく、0.8~1.6であることがより好ましい。前記粘着付与樹脂の含有量に対する前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満である(前記質量比が前記下限未満である)と、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明に係る粘着剤層は、流動パラフィンも含有する。流動パラフィンは、リキッドパラフィン、ミネラルオイル、ホワイトミネラルオイルとも呼ばれるパラフィン系プロセスオイルである。本発明に係る流動パラフィンとしては、37.8℃における動粘度が5.8~100mm/sであることが好ましく、68~96mm/sであることがより好ましい。前記動粘度が前記下限値未満であると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなったり粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、粘着剤層の粘度が高くなり過ぎる傾向にある。
【0032】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される流動パラフィンの含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して20~45質量%であることが必要である。また、前記含有量としては、20~43質量%であることが好ましく、25~42質量%であることがより好ましく、30~41質量%であることがさらに好ましい。前記流動パラフィンの含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の粘度が高くなり過ぎる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなったり粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下したりする傾向にある。
【0033】
また、本発明においては、前記粘着剤層における前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と流動パラフィンの含有量との質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量/流動パラフィンの含有量)が0.45~1.2であることが好ましく、0.45~1.0であることがより好ましく、0.5~1.0であることがさらに好ましい。前記流動パラフィンの含有量に対する前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満であると、貼付剤の剥離時に皮膚に粘着剤層が残りやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性が低下する傾向にある。
【0034】
また、本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、及び下記の他の清涼化剤及び消炎鎮痛剤以外の、他の有効成分をさらに含有していてもよい。このような他の有効成分としては、例えば、オウバク粉末、グリチルレチン酸等の植物由来成分;非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アンフェナク等)、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクロジン等)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル等)、抗パーキンソン剤(ぺルゴリド、ロピニロール、ブロモクリプチン、セレギリン等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプレテノロール、サルブタモール等)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン、セチリジン、アシタザノラスト等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン等)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン等)、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、トラマドール、ペンタゾシン)、麻酔系鎮痛剤(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン等)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン等)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン等)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム等)、抗痴呆薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン等)、抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン等)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート等)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート等)、乳がん予防薬(タモキシフェン等)、抗肥満薬(マジンドール、ジブトラミン等)、不眠症改善薬(メラトニン等)、抗リウマチ薬(アクタリット等)等の薬効成分が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明において、前記粘着剤層が前記他の有効成分を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される他の有効成分の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、治療目的に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、前記粘着剤層の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~4質量%であることがさらに好ましく、1~3質量%であることがさらにより好ましい。
【0036】
また、本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、l-メントール以外の他の清涼化剤や消炎鎮痛剤をさらに含有していてもよい。このような清涼化剤及び消炎鎮痛剤としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、dl-カンフル、ハッカ油、及びチモールが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明において、前記粘着剤層が前記他の清涼化剤及び/又は消炎鎮痛剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される他の清涼化剤及び/又は消炎鎮痛剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~10質量%であることが好ましく、1.5~9質量%であることがより好ましく、2.55~7.66質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明に係る粘着剤層の粘着基剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体以外の他の粘着基剤をさらに含有していてもよい。このような他の粘着基剤としては、実質的に水を含有しないものであれば特に制限されず、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体以外の他のゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤が挙げられる。
【0039】
前記他のゴム系粘着基剤としては、ポリイソブチレン(PIB)、イソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリブテン、天然ゴム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせにおいて粘着剤層の粘着性及び皮膚への付着性がより良好となる傾向にある観点から、前記他のゴム系粘着基剤としては、ポリイソブチレンが好ましい。前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンとを組み合わせて用いる場合、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンとの質量比(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の質量:ポリイソブチレンの質量)としては、例えば、1:0.1~1:1(さらに好ましくは1:0.1~1:0.58の範囲)であることがより好ましい。
【0040】
前記アクリル系粘着基剤としては、「医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編集)」に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂、アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸アセトアセトキシエチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記シリコーン系粘着基剤としては、ポリジメチルシロキサン(ASTMD-1418による表示ではMQと表されるポリマー等)、ポリメチルビニルシロキサン(ASTMD-1418による表示ではVMQと表されるポリマー等)、ポリメチルフェニルシロキサン(ASTMD-1418による表示ではPVMQと表されるポリマー等)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、有効成分の経皮吸収促進作用を有する吸収促進剤(経皮吸収促進剤)をさらに含有していてもよい。前記吸収促進剤としては、脂肪族アルコール、炭素数6~20の脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、又は脂肪族アルコールエーテル;芳香族有機酸;芳香族アルコール;芳香族有機酸エステル又はエーテル;POE硬化ヒマシ油類;レシチン類;リン脂質;大豆油誘導体;トリアセチン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明において、前記粘着剤層が前記吸収促進剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される吸収促進剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
また、本発明に係る粘着剤層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、前記テルペン系樹脂及び前記ロジン系樹脂以外の他の粘着付与剤、酸化防止剤、前記流動パラフィン以外の他の可塑剤、充填剤、溶解剤等を適宜、さらに含有していてもよい。
【0045】
前記テルペン系樹脂及び前記ロジン系樹脂以外の他の粘着付与剤としては、例えば、石油系樹脂(脂環族炭化水素モノマーの単独重合体又は共重合体である脂環族飽和炭化水素樹脂等)、フェノール系樹脂、及びキシレン系樹脂が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、前記粘着剤層が前記他の粘着付与剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される他の粘着付与剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
前記酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、前記粘着剤層が前記酸化防止剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される酸化防止剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0.1~1質量%であることがさらにより好ましい。
【0047】
前記流動パラフィン以外の他の可塑剤としては、例えば、シリコーンオイル;前記流動パラフィン以外の他のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン、スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の炭酸塩;ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記充填剤としては、酸化チタン、水酸化アルミニウム、及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。本発明において、前記粘着剤層が前記充填剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される充填剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して7質量%以下であることが好ましく、0.5~7質量%であることがより好ましく、0.5~5.5質量%であることがさらに好ましく、1~5質量%であることがさらにより好ましい。
【0049】
前記溶解剤としては、例えば、ベンジルアルコール;ピロチオデカン;ミリスチン酸イソプロピル;クロタミトン;N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類;高級アルコール類;アジピン酸ジエチル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸エステル類が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、前記粘着剤層が前記溶解剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される溶解剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0050】
このような本発明に係る粘着剤層としては、B型粘度計(ブルックフィールド型回転粘度計)で115℃において測定される粘度が100~2,500dPa・sであることが好ましく、500~2,500dPa・sであることがより好ましく、1,000~2,500dPa・sであることがさらに好ましく、1,100~2,500dPa・sであることがさらにより好ましい。前記粘度がこのような範囲内にあることにより、粘着剤層の塗布等の製造適正をより良好にすることができ、また、粘着剤層の凝集力及び粘着性をより良好にすることができる。
【0051】
本発明に係る粘着剤層の厚さは、局所に温熱感を生じさせる観点から、250μm以上であることが必要である。前記厚さとしては、より具体的には、250~600μmであり、250~500μmであることがより好ましく、280~400μmであることがさらに好ましい。本発明に係る粘着剤層は粘着剤層の厚みをこのように厚くしても優れた粘着剤層の凝集力が発揮される。
【0052】
また、本発明に係る粘着剤層の貼付面の面積としては、治療の目的や適用対象に応じて適宜調整することができ、特に制限されないが、通常、0.5~200cmの範囲である。さらに、本発明に係る粘着剤層の貼付面の形状としては、特に制限されず、丸型、楕円型、正方形型、長方形型等、任意の形状を採用することができる。
【0053】
本発明の貼付剤は、特に制限されず、公知の非水系貼付剤の製造方法を適宜採用することによって製造することができる。例えば、先ず、ノニル酸ワニリルアミド、l-メントール、ロジン系樹脂(及び必要に応じてテルペン系樹脂)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び流動パラフィン、並びに、必要に応じて上記のその他の成分を常法に従って混合し、均一な粘着剤層組成物を得る。次いで、この粘着剤層組成物を前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に所望の単位面積あたり質量となるように塗布した後、必要に応じて所望の形状に裁断することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0054】
また、本発明の貼付剤の製造方法としては、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上に前記剥離ライナーを貼り合わせる工程をさらに含んでいてもよく、前記粘着剤層組成物を先ず前記剥離ライナーの一方の面上に所望の単位面積あたり質量となるように塗布して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に前記支持体層を貼り合わせ、必要に応じて所望の形状に裁断することによって本発明の貼付剤を得てもよい。さらに、得られた貼付剤は、必要に応じて、保存用包装容器(例えば、アルミラミネート袋)に封入して包装体としてもよい。
【実施例
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、粘着剤層残り評価試験は、以下に示す方法により行った。
【0056】
<粘着剤層残り評価試験>
各貼付剤を直径25mmの円形に切断して剥離ライナーを剥離し、それぞれ、6~7名の被験者に粘着剤層の表面(粘着面)を手指で触ってもらい、手指表面への粘着剤層(膏体)の残りを、それぞれ、次の粘着剤層残り評価の基準:
0 :粘着剤層が手指表面に気になる程度残った(手指表面の全面に残った)
25 :粘着剤層が手指表面の一部に残った
50 :粘着剤層の手指表面への残りは少なかったが、粘着剤層の表面から手指を剥離する際にかなり糸引きがみられた
75 :粘着剤層の表面から手指を剥離する際にわずかに糸引きがみられた
100:粘着剤層が手指表面に残らず、糸引きもみられなかった
に従って評価してもらった。ここで「糸引き」とは、粘着剤層の凝集力が低い程多くみられる現象であり、粘着剤層の一部が糸を引くように剥がれて粘着剤層が変形することを意味する。
【0057】
被験者から得られた各粘着剤層残り評価の値について、得られた値の合計を被験者の人数で割って算出した平均値をそれぞれ評価値とした。なお、粘着剤層残り評価の評価値が67~100で、粘着剤層の凝集力が良好であると認められ、70~100で、粘着剤層の凝集力が特に良好であると認められる。
【0058】
(実施例1)
先ず、ノニル酸ワニリルアミド0.012質量部、オウバク粉末1.70質量部、サリチル酸グリコール2.55質量部、l-メントール5.11質量部、テルペン系樹脂(TP)(YSレジンPX1150N、ヤスハラケミカル株式会社製)5.00質量部、ロジン系樹脂(RS)(パインクリスタルKE-311、荒川化学工業株式会社製)10.00質量部、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)21.79質量部、ポリイソブチレン9.40質量部、流動パラフィン(LP)40.828質量部、及びその他成分(酸化防止剤、充填剤)3.61質量部を混合し、粘着剤層組成物を得た。次いで、得られた粘着剤層組成物を剥離ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に塗布して、粘着剤層の厚さが320μmとなるように粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に支持体層(ポリエステル製不織布)を積層し、支持体層/粘着剤層/剥離ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0059】
(実施例2~3、5、7~10、比較例3~5)
粘着剤層組成物の組成をそれぞれ下記の表1~3に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0060】
(実施例4、6、比較例1~2)
粘着剤層組成物の組成をそれぞれ下記の表1、3に示す組成となるようにし、かつ、粘着剤層の厚さを250μm(実施例4)、400μm(実施例6、比較例2)、又は260μm(比較例1)としたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0061】
実施例1~10及び比較例1~5で得られた貼付剤について、それぞれ、粘着剤層残り評価試験を実施した。得られた評価値(粘着剤層残り)を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成と合わせてそれぞれ下記の表1~3に示す。また、表1~3には、粘着剤層におけるテルペン系樹脂の含有量及びロジン系樹脂の含有量の合計量(TP+RS)及びこれらの質量比(TP/RS)、並びに、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量とテルペン系樹脂の含有量及びロジン系樹脂の含有量の合計量との質量比(SIS/(TP+RS))も合わせて示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表1~3に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤においては、粘着剤層残り評価がいずれも良好となり、特に優れた凝集力が達成されることが確認された。さらに、前記凝集力は、粘着剤層の厚さを厚くしても(例えば、実施例4~6)、ノニル酸ワニリルアミドの含有量や、その他成分の含有量等を変更しても(例えば、実施例7~10)、高い水準のまま維持されることが確認された。
【0066】
他方、ロジン系樹脂を含有しない場合(例えば、比較例1~3)や、含有していてもテルペン系樹脂の含有量とロジン系樹脂の含有量との質量比(TP/RS)が本発明の範囲から外れる場合(例えば、比較例4)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量と流動パラフィンの含有量との質量比(SIS/(TP+RS))が本発明の範囲から外れる場合(例えば、比較例5)には、たとえ他の条件を満たしていても、本発明のように優れた凝集力は達成されないことが確認された。さらに、これらの貼付剤では、粘着剤層の厚さが厚くなると(例えば、比較例1~3)、粘着剤層の凝集力はさらに低下してしまうことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明によれば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及び流動パラフィンを含有する粘着剤層において、前記流動パラフィンの含有量が比較的多くとも粘着剤層の凝集力に特に優れた貼付剤を提供することが可能となる。