IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7142616過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法
<>
  • 特許-過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法 図1
  • 特許-過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法 図2
  • 特許-過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法 図3
  • 特許-過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】過酸化物架橋性組成物及びそれらの製造のための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220916BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220916BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20220916BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220916BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20220916BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20220916BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20220916BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20220916BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20220916BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20220916BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CES
C08L101/00
C08K5/16
C08K5/14
C08K5/3435
C08K5/41
C08K5/134
B29B9/06
B29C48/40
B29C48/69
H01B7/02 F
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019173927
(22)【出願日】2019-09-25
(62)【分割の表示】P 2018160478の分割
【原出願日】2014-09-08
(65)【公開番号】P2020033562
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-10-23
(31)【優先権主張番号】61/877,405
(32)【優先日】2013-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マニシュ・タルレジャ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エム・コーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット・グルート-エンゼリンク
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェイ・パーソン
(72)【発明者】
【氏名】ネイル・ダブリュ・ダンチュス
(72)【発明者】
【氏名】ゲリー・ダブリュ・バックラー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・ゲーテル
(72)【発明者】
【氏名】サウレイ・エス・セングプタ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・アダムカジック
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-167634(JP,A)
【文献】特表2004-530741(JP,A)
【文献】特開2013-112787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101068859(CN,A)
【文献】特開2012-057065(JP,A)
【文献】特開2001-131351(JP,A)
【文献】特開2002-083516(JP,A)
【文献】特開昭50-032239(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102140193(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08L 101/00
C08K 5/00-5/59
H01B 3/16-3/56
H01B 7/17-7/288
B29B 7/58
B29B 9/06
B29C 48/40
B29C 48/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であって、
(1)
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B)0.0005重量%~0.01重量%の、(i)シアヌル酸トリアリル(TAC)、および(ii)N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミドからなる群より選ばれる窒素塩基と、
(C)任意に、抗酸化剤(AO)と
の均質な溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の均質な溶融物を通過させるステップと、
(3)前記(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ペレットに過酸化物を含浸させるさらなるステップを含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であって、
(1)過酸化物架橋性ポリマーと、抗酸化剤(AO)との溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の溶融物を通過させるステップと、
(3)前記(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、
(4)前記(3)のペレットに、前記過酸化物架橋性ペレットに基づいて0.0005重量%以上0.01重量%以下の(i)シアヌル酸トリアリル(TAC)、および(ii)N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミドからなる群より選ばれる窒素塩基を含浸させるステップと
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記ペレットがさらに過酸化物を含浸されてなる、請求項3に記載の前記方法。
【請求項5】
過酸化物架橋性組成物であって、
(A)過酸化物架橋性ポリエチレンと、
(B)0.0005重量%以上0.005重量%以下の(i)シアヌル酸トリアリル(TAC)、および(ii)N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミドからなる群より選ばれる窒素塩基と、
(C)1つ以上の抗酸化剤(AO)と、
(D)任意に、有機過酸化物と
を含む、前記組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤が、チオエステルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗酸化剤が、ヒンダードフェノールを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗酸化剤が、ヒンダードフェノールおよびチオエステルを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗酸化剤が、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シナメート)]メタン、4,4’-チオビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール;およびジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗酸化剤が、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;およびジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)を含む、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項11】
0.5重量%~2.5重量%の有機過酸化物を含む、請求項5から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であって、
(1)
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B),N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミドと
(C)任意に、抗酸化剤(AO)と
の均質な溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の均質な溶融物を通過させるステップと、
(3)前記(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記ペレットに過酸化物を含浸させるさらなるステップを含む、請求項12に記載の前記方法。
【請求項14】
前記抗酸化剤が、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シナメート)]メタン、4,4’-チオビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール;およびジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)を含む、請求項1から4、12および13のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項15】
前記抗酸化剤が、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;およびジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)を含む、請求項1から4、12および13のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項16】
請求項1から4、および12から15のいずれか一項に記載の前記方法で作製されたシースを備える、ワイヤまたはケーブル。
【請求項17】
請求項5から11のいずれか一項に記載の前記組成物を含むシースを備える、ワイヤまたはケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化物架橋性組成物に関する。一態様において、本発明は、過酸化物架橋
性組成物を調製する方法に関し、一方、別の態様において、本発明は、高電圧(HV)ま
たは超高電圧(EHV)電力ケーブルの製造に有用な組成物から作製された絶縁体に関す
る。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,656,986号は、電力ケーブル絶縁体の製造に有用な様々なポリエ
チレン、過酸化物架橋性組成物を教示する。これらの組成物のいくつかは、中電圧電力ケ
ーブル市場において商業的な成功を収め、関心は、高電圧及び超高電圧電力ケーブル市場
へのこれらの商業的に成功した組成物を拡大することに向けられている。
【0003】
電力ケーブル絶縁体の製造は、2つの主要な部分、すなわち、ケーブル絶縁体を作製す
る組成物を作製する第1の部分と、この組成物を絶縁体として単線または撚り導体上に押
し出す第2の部分とに分けることができる多段階プロセスである。
【0004】
このプロセスの第1の部分、すなわち、この組成物を作製する部分の一実施形態におい
て、基材ポリマー、例えば、ポリエチレンを1つ以上の添加剤と混合してペレットに形成
し、これを過酸化物に浸漬させ、続いて、貯蔵する、及び/またはこのプロセスの第2の
部分、すなわち、ペレットをワイヤまたはケーブルコーティング剤に変換する部分を行う
製造業者に出荷する。貯蔵及び出荷時に、過酸化物の酸性触媒による分解を回避するため
に、米国特許第6,656,986号は、オリゴマー及び/または高分子量のヒンダード
アミン安定剤(HAS)の混入を教示する。
【0005】
ペレットの作製において、ワイヤまたはケーブルシースに形成された時点で、組成物の
有用性に悪影響を及ぼし得る不純物を導入またはもたらさないように注意が払われる。し
かしながら、いくつかの不純物は、例えば、このプロセスにおいて供給材料に付随する混
入物質として、必然的に組成物に導入されるか、または例えば、基材ポリマーの分解に起
因するゲルとしてこのプロセス中に形成される。当然のことながら、組成物が電力ケーブ
ルシースとして押し出される前にこれらの不純物を最低限に抑え、取り除くための試みが
なされている。一部の不純物は、例えば、100ミクロン(μm)未満の微粒子の形態で
あり、濾過によって組成物から取り除きやすい。組成物が押出機内で調合される実施形態
において、押出機内の溶融物が押出機から出る前に、スクリーンを通過しなければならな
いため、微細メッシュスクリーンは、典型的には、押出機のダイヘッドにまたはその付近
に配置される。フィルターが粒子で詰まるため、フィルターが浄化または交換されるまで
、圧力が、押出機内で増加し、押出機の作業効率を低下させる。オリゴマーまたは高分子
量の塩基、例えば、オリゴマーまたは高分子量のHASが、溶融濾過前に組成物中に存在
する実施形態において、スクリーンの詰まりならびに押出機の作業効率及びプロセス全体
の実行効率を減少させる一因になる傾向がある。
【0006】
中電圧電力ケーブル用途で用いる絶縁体は、典型的には、高電圧または超高電圧電力ケ
ーブル用途で用いるものよりもさらに不純物に耐容性があり得る。したがって、ペレット
に押し出す前に、組成物を濾過するために使用されるスクリーンは、さらに粗い、すなわ
ち、高電圧または超高電圧電力ケーブル用途で用いる組成物を濾過するために使用される
ものよりも大きな開口を有し得る。結果及び他のすべての条件が同じであったとしたら、
溶融物が通過しなければならないスクリーンメッシュがより微細である(小さい)ほど、
より粒子を捕捉し、より速く詰まり、フィルター浄化及び/または交換の時間間隔が短く
なるであろう。同時に、これは、調合する方法の作業効率に影響を及ぼす。
【0007】
中電圧電力ケーブル用途で用いるように現在設計されている組成物の高電圧及び超高電
圧電力ケーブル用途への拡張で特に注目されるのは、基材ポリマーと添加剤及び/または
充填剤との調合時、ならびにそのようなゲルが作製される程度まで、粒子状混入物質及び
ゲルの減少及び/または排除、そして、組成物をペレットに製造する前に濾過によるそれ
らの除去である。さらに注目されるのは、出荷及び/または貯蔵時、架橋効率の欠如に対
するペレットの相対的安定性を維持し、かつ硬化時、水分発生を最小限に抑えることであ
る。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態において、本発明は、0.6~66重量パーセントのシアヌル酸トリアリル
(TAC)及び34~99.4重量%の抗酸化剤(AO)を含むか、または本質的にそれ
らからなる、添加予備配合組成物である。一実施形態において、本発明は、1:100~
3:2のTAC:AO重量比でTAC及びAOを含むか、または本質的にそれらからなる
、添加予備配合組成物である。
【0009】
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性組成物であって、
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B)過酸化物と、
(C)シアヌル酸トリアリル(TAC)と、
(D)1つ以上の抗酸化剤(AO)と、を含み、
TAC及びAOは、1:100~3:2のTAC:AO重量比で存在し、TACは、最
終生成物において0.01%未満で存在する。一実施形態において、本組成物は、ペレッ
トの形態である。
【0010】
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であっ
て、
(1)
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B)シアヌル酸トリアリル(TAC)及びAOの予備配合物であって、0.6~6
6重量%のTAC及び34~99.4重量%のAOを含むか、または本質的にそれらから
なる、予備配合物と、の均質な溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の均質な溶融物
を通過させるステップと、
(3)(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、を含む。
【0011】
さらなるステップにおいて、典型的には、噴霧することによって、またはそうでなけれ
ば、液体過酸化物をペレットに塗布して、ペレットが過酸化物を吸収するのを可能にする
ことによって、ペレットに、過酸化物を含浸させる。一実施形態において、過酸化物をペ
レットに塗布する前に、過酸化物を有機窒素の塩基、例えばTACと混合する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性組成物であって、
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B)0.0005%~0.01%の低分子量、または低融点、または液体の窒素塩基
と、
(C)1つ以上の抗酸化剤(AO)と、
(D)任意に、過酸化物と、を含む。
【0013】
一実施形態において、塩基は、TACを含む。一実施形態において、塩基は、N,N’
-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニ
ル)-ホルムアミド(BASFからのUVINUL(商標)4050)及び/またはTI
NUVIN(商標)765(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル
)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの
混合物)を含む。一実施形態において、抗酸化剤は、硫黄、例えば、ジステアリルチオジ
プロピオネート(DSTDP)を含有する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であっ
て、
(1)
(A)過酸化物架橋性ポリマーと、
(B)0.0005%~0.01%の低分子量、または低融点、または液体の窒素塩
基と、
(C)任意に、抗酸化剤(AO)と、の均質な溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の均質な溶融物
を通過させるステップと、
(3)(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、を含む。
【0015】
さらなるステップにおいて、典型的には、噴霧することによって、またはそうでなけれ
ば、液体過酸化物をペレットに塗布して、ペレットが過酸化物を吸収するのを可能にする
ことによって、ペレットに、過酸化物を含浸させる。一実施形態において、過酸化物をペ
レットに塗布する前に、過酸化物を有機窒素の塩基、例えばTACと混合する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であっ
て、
(1)AOを用いて過酸化物架橋性ポリマーの溶融物を形成するステップと、
(2)100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、(1)の溶融物を通過
させるステップと、
(3)(2)の濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、
(4)ペレットに低分子量または液体の窒素塩基を含浸させるステップと、を含む。
【0017】
一実施形態において、ペレットは、過酸化物もまた含浸している。
【0018】
一実施形態において、本発明は、上述の実施形態のいずれかのペレットから作製された
シースを備える、ワイヤまたはケーブルである。一実施形態において、ワイヤまたはケー
ブルは、高電圧または超高電圧ワイヤまたはケーブルである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1のTAC、AO混合物、ならびに1:1の重量比でのTAC及びAO混合物の予備配合におけるサーモグラムを報告するグラフである。
図2】本発明の実施例1のTAC、AO混合物、ならびに2:98の重量比でのTAC及びAO混合物の予備配合におけるサーモグラムを報告するグラフである。
図3】比較実施例のTAC、テトラデカン、ならびに1:1の重量比でのTAC及びテトラデカンの予備配合におけるサーモグラムを報告するグラフである。
図4】TINUVIN(商標)622を調合した試料とTINUVIN(商標)622で含浸(浸漬)された試料との間のLDPEにおける過酸化物の安定性の比較を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
米国特許の実施のために、すべての特許、特許出願、及び本出願内の他の言及された文
献は、本出願の開示と矛盾しない程度まで、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込
まれる。
【0021】
本開示における数値範囲は、概算であり、それ故に、別途示されない限り、範囲外の値
を含んでもよい。数値範囲には、任意の下値と任意の上値との間に少なくとも2単位の間
隔があるという条件で、下値及び上値からのあらゆる値ならびに両値を1単位きざみで含
む。一例として、組成特性、物理特性、または他の特性、例えば分子量、粘度、メルトイ
ンデックス等が100から1,000までである場合、すべての個々の値、例えば100
、101、102等、及び部分範囲、例えば100~144、155~170、197~
200等は明確に列挙されることが意図される。1未満の値を含む範囲または1より大き
い小数(例えば、1.1、1.5等)を含む範囲については、1単位は、必要に応じて、
0.0001、0.001、0.01、または0.1であると見なされる。10未満の1
桁の数を含む範囲(例えば、1~5)については、1単位は、典型的には、0.1と見な
される。これらは具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙される最低値と最高値の間
の数値のあらゆる可能な組み合わせが本開示に明確に記載されていると見なすべきである
。とりわけ、組成物中の特定の成分について、数値範囲が本開示内に提供される。
【0022】
「含む(Comprising)」、「含む(including)」及び「有する」
等の用語は、本組成物、方法等が、開示される成分、ステップ等に限定されないが、他の
開示されていない成分、ステップ等も含むことができることを意味する。対照的に、「本
質的に~からなる」という用語は、組成物、方法等の性能、実現可能性等に必須でないも
のを除いて、任意の組成物、方法等の範囲から、任意の他の成分、ステップ等を排除する
。「~からなる」という用語は、組成物、方法等から、具体的に開示されない任意の成分
、ステップ等を排除する。「または」という用語は、別途言及されない限り、個々に及び
任意の組み合わせで開示される構成員を指す。
【0023】
「ワイヤ」等の用語は、一本鎖の導電性金属、例えば、銅もしくはアルミニウム、また
は一本鎖の光ファイバーを意味する。
【0024】
「ケーブル」等の用語は、シース、例えば、絶縁体カバーまたは保護外側ジャケットの
内部の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは
、典型的には、一般的な絶縁体カバー及び/または保護ジャケットに共に束ねられた2つ
以上のワイヤまたは光ファイバーである。シース内側の個別のワイヤまたはファイバーは
、露出されていても、被覆されていても、または絶縁されていてもよい。組み合わせケー
ブルは、電線及び光ファイバーを共に含んでいてもよい。ケーブル等は、低電圧、中電圧
、高電圧及び超高電圧用途に設計することができる。低電圧ケーブルは、3キロボルト(
kV)未満の電力、中電圧ケーブルは、3~69kV、高電圧ケーブルは、70~220
kV、超高電圧ケーブルは、220kV超の電圧を運ぶように設計されている。典型的な
ケーブル設計は、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号、及び同
第6,714,707号に説明されている。
【0025】
「導体」「電導体」等の用語は、1つ以上の方向に電荷の流れを可能にする物体を意味
する。例えば、ワイヤは、その長さに沿って電気を運ぶことができる電導体である。ワイ
ヤ導体は、典型的には、銅またはアルミニウムを含む。
【0026】
「出荷及び貯蔵条件」等の用語は、本発明の組成物が、典型的には、ペレットの形態で
、製造業者からエンドユーザーに出荷され、これらの組成物が出荷前及び/または出荷後
に保持される、温度、圧力、及び湿度を意味する。温度は、氷点下(寒冷気候において)
から、暑い気候の下で冷房の効いていない倉庫中で40℃を上回る範囲に及ぶ。湿度は、
0~100パーセントの範囲であり得、圧力は、典型的には、大気圧である。
【0027】
「溶融物」等の用語は、融解状態での固体組成物を意味する。溶融物は、ゲル及び/ま
たは固体粒子を含んでも、含まなくともよい。
【0028】
「ゲル」等の用語は、典型的には、コロイド状態での架橋ポリマーを意味する。ゲルは
、サイズ、分子量、構造、及び組成により異なり得る。
【0029】
「溶融濾過」等の用語は、フィルターまたはスクリーンに、溶融物を通過させ、溶融物
から1つ以上のゲル及び/または固体粒子を除去することを意味する。
【0030】
「過酸化物架橋性ポリマー」等の用語は、架橋条件下で、例えば、160℃~250℃
の温度で、過酸化物、例えば、ジクミル過酸化物から始まるフリーラジカル機構を通して
架橋することができる、ポリマー、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンを意味する
【0031】
過酸化物架橋性ポリマー
過酸化物から始まる反応によって架橋することができる任意のポリマーは、本発明の実
施に際して過酸化物架橋性ポリマーとして使用することができるが、典型的に及び好まし
くは、ポリマーはポリオレフィンであり、より典型的に及び好ましくは、ポリエチレンで
ある。その用語がここで使用される場合、ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーまた
はエチレンのコポリマー、及び3~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を
有する少ない割合の1つ以上のアルファ-オレフィン、ならびに任意に、ジエン、または
そのようなホモポリマー及びコポリマーの混合物もしくは配合物である。混合物は、機械
的配合物または原位置配合物であり得る。アルファ-オレフィンの例は、プロピレン、1
-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンである。ポリエ
チレンはまた、エチレンと、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニルまたはアクリル酸もし
くはメタクリル酸エステル等の不飽和エステルとのコポリマーであり得る。
【0032】
ポリエチレンは、均質または不均質であり得る。均質ポリエチレンは、通常、約1.5
~約3.5の範囲の多分散性(M/M)、及び本質的に均質なコモノマー分布を有す
るものであり、単一かつ比較的低い示差走査熱量測定(DSC)の融点を特徴とする。一
方、不均質ポリエチレンは、3.5超の多分散性(M/M)を有し、均質なコモノマ
ー分布を有しない。Mは、重量平均分子量と定義され、Mは、数平均分子量と定義さ
れる。ポリエチレンは、1立方センチメートル当たり0.860~0.950グラム(g
/cc)の範囲の密度を有することができ、好ましくは、0.870~約0.930g/
ccの範囲の密度を有する。それらはまた、10分間当たり約0.1~約50グラムの範
囲のメルトインデックスを有することができる。
【0033】
ポリエチレンは、低圧または高圧方法によって生成され得る。それらは、気相、または
溶液もしくはスラリー中の液相で、従来の技術によって生成され得る。低圧方法は、典型
的には、1000psi未満の圧力で行われるが、高圧方法は、典型的には、15,00
0psiを超える圧力で行われる。
【0034】
これらのポリエチレンを調製するために使用することができる典型的な触媒システムと
しては、米国特許第4,302,565号(不均質ポリエチレン)において記載される触
媒システムによって例示され得るマグネシウム/チタン系触媒システム、米国特許第4,
508,842号(不均質ポリエチレン)、ならびに同第5,332,793号、同第5
,342,907号、及び同第5,410,003号(均質ポリエチレン)において記載
されるもの等のバナジウム系触媒システム、米国特許第4,101,445号において記
載されるもの等のクロム系触媒システム、米国特許第4,937,299号、同第5,2
72,236号、同第5,278,272号、及び同第5,317,036号(均質ポリ
エチレン)において記載されるもの等のメタロセン触媒系、または他の遷移金属触媒シス
テムである。これらの触媒システムの多くは、しばしば、チーグラー-ナッタ触媒システ
ムまたはフィリップス触媒システムと称される。シリカ-アルミナ支持体において酸化ク
ロムまたは酸化モリブデンを使用する触媒システムが、ここに含まれ得る。ポリエチレン
を調製するための典型的な方法もまた、前述の特許において記載されている。それを提供
するための典型的な原位置ポリエチレン配合物及び方法及び触媒システムは、米国特許第
5,371,145号及び同第5,405,901号において記載されている。様々なポ
リエチレンは、高圧方法によって作製されたエチレンの低密度ホモポリマー(HP-LD
PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE
)、中密度ポリエチレン(MDPE)、0.940g/cc超の密度を有する高密度ポリ
エチレン(HDPE)、及び0.900g/cc未満の密度を有するメタロセンコポリマ
ーを含むことができる。後者の5つのポリエチレンは、通常、低圧方法によって作製され
る。従来の高圧方法は、Introduction to Polymer Chemi
stry,Stille,Wiley and Sons,New York,1962
、149~151頁において記載されている。高圧方法は、典型的には、フリーラジカル
開始重合であり、管型反応器または撹拌オートクレーブで実施される。撹拌オートクレー
ブの場合、圧力は、約10,000~30,000psiの範囲であり、温度は、約17
5~約250℃の範囲であり、管型反応器の場合、圧力は、約25,000~約45,0
00psiの範囲であり、温度は、約200~約350℃の範囲である。高圧ポリエチレ
ンとメタロセン樹脂の配合は、前者がその卓越したプロセス可能性の成分であり、後者が
その柔軟性の成分であり、この用途で用いるのに特に好適である。
【0035】
エチレンと不飽和エステルとからなるコポリマーは周知であり、上述の従来の高圧技術
によって調製することができる。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸
アルキル、またはカルボン酸ビニルであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子を有
することができ、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する。カルボン酸基は、2~8個
の炭素原子を有することができ、好ましくは、2~5個の炭素原子を有する。エステルコ
モノマーに由来するコポリマーの部分は、コポリマーの重量を基準にして約5~約50重
量パーセントの範囲であり得、好ましくは、約15~約40重量パーセントの範囲である
。アクリル酸塩及びメタアクリル酸塩の例は、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メ
タクリル酸メチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブ
チル、及びアクリル酸2-エチルヘキシルである。カルボン酸ビニルの例は、酢酸ビニル
、プロピオン酸ビニル、及びブタン酸ビニルである。エチレン/不飽和エステルコポリマ
ーのメルトインデックスは、10分間当たり約0.5~約50グラムの範囲であり得、好
ましくは、10分間当たり約2~約25グラムの範囲である。エチレン及び不飽和エステ
ルのコポリマーの調製のためのある方法が、米国特許第3,334,081号において記
載されている。
【0036】
VLDPEは、エチレンと、3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を
有する1つ以上のアルファ-オレフィンとのコポリマーであり得る。VLDPEの密度は
、0.870~0.915g/ccの範囲であり得る。それは、例えば、(i)クロム及
びチタンを含有する触媒、(ii)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体を
含有する触媒、または(iii)バナジウム、電子供与体、アルキルアルミニウムハリド
修飾剤、及びハロカーボンプロモーターを含有する触媒、の存在下で生成され得る。VL
DPEを作製するための触媒及び方法は、それぞれ、米国特許第4,101,445号、
同第4,302,565号、及び同第4,508,842号において記載されている。V
LDPEのメルトインデックスは、10分間当たり約0.1~約20グラム(g/10分
)の範囲であり得、好ましくは、約0.3~約5g/10分の範囲である。エチレン以外
のコモノマー(複数可)に由来するVLDPEの部分は、コポリマーの重量を基準にして
約1~約49重量パーセントであり得、好ましくは、約15~約40重量パーセントの範
囲である。第3のコモノマーは、例えば、別のアルファ-オレフィン、またはエチリデン
ノルボルネン、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、またはジクロロペンタジエン等のジ
エンが含まれ得る。エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/プロピレン/ジエン
ターポリマーは、通常、それぞれ、EPR及びEPDMと称される。第3のコモノマーは
、コポリマーの重量を基準にして約1~15重量パーセントの量で存在し得、好ましくは
、約1~約10重量パーセントの量で存在する。好ましくは、コポリマーは、エチレンを
含む2つまたは3つのコモノマーを含有する。
【0037】
LLDPEは、VLDPE及びMDPEを含むことができ、これらはまた、線状である
が、通常、0.916~0.925g/ccの範囲の密度を有する。それは、エチレンと
、3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する1つ以上のアルファ-
オレフィンとのコポリマーであり得る。メルトインデックスは、約1~約20g/10分
の範囲であり得、好ましくは、約3~約8g/10分の範囲である。アルファ-オレフィ
ンは、上述したものと同じであり得、触媒及び方法はまた、所望の密度及びメルトインデ
ックスを得るために必要な変形に対して同じ主題である。
【0038】
上述のように、ポリエチレンの定義には、従来の高圧方法によって作製されたエチレン
のホモポリマーが含まれる。ホモポリマーは、好ましくは、0.910~0.930g/
ccの範囲内の密度を有する。ホモポリマーはまた、約1~約5g/10分の範囲のメル
トインデックスを有し得、好ましくは、約0.75~約3g/10分の範囲のメルトイン
デックスを有する。メルトインデックスは、ASTM D-1238,Conditio
n Eの下で決定される。それは、190℃で、2160グラムで測定される。
【0039】
過酸化物
有機過酸化物が、本発明の実施において使用される過酸化物に使用することができるが
、典型的に、及び好ましくは、過酸化物は、10分間の半減期に、100~220℃の熱
分解温度を有する有機過酸化物である。例示的な有機過酸化物(続く括弧内にそれらの熱
分解温度を℃で示す)としては、コハク酸過酸化物(110)、ベンゾイル過酸化物(1
10)、t-ブチルペロキシ-2-エチルヘキサン酸塩(113)、p-クロロベンゾイ
ル過酸化物(115)、t-ブチルペロキシイソブチレート(115)、t-ブチルペロ
キシイソプロピルカルボネート(135)、t-ブチルペロキシラウレート(140)、
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン(140)、t-ブチル
ペロキシ酢酸塩(140)、ジ-t-ブチルジペロキシフタル酸塩(140)、t-ブチ
ルペロキシマレイン酸(140)、シクロヘキサノン過酸化物(145)、t-ブチルペ
ロキシ安息香酸塩(145)、ジクミル過酸化物(150)、2,5-ジメチル-2,5
-ジ(t-ブチル-ペロキシ)ヘキサン(155)、t-ブチルクミル過酸化物(155
)、t-ブチルヒドロ過酸化物(158)、ジ-t-ブチル過酸化物(160)、2,5
-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペロキシ)ヘキサン-3(170)、及びアルファ
,アルファ’-ビス-t-ブチルペロキシ-1,4-ジイソプロピルベンゼン(160)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の様々な実施形態の実施に際して、過酸化物は、典型的に及び好ましくは、本組
成物が溶融濾過され、ペレットに形成された後、液体として、過酸化物架橋性ポリマー組
成物に添加される。過酸化物は、典型的には、ペレット上に噴霧されるが、例えば、浸漬
、スプラッシング等の代替の適用形態を使用することができる。溶融濾過した組成物は、
典型的には、ペレットの形態であり、それ故に、典型的には、ペレットが触れて乾くまで
、過酸化物で、任意に1つ以上の添加剤、例えば、硬化共剤、抗酸化剤、スコーチ阻害剤
、窒素塩基等と組み合わせて含浸、例えば、浸漬される。一旦過酸化物及び任意の添加剤
がペレットに吸収されると、ペレットは、包装の準備が整う。塗布し、続いて、ペレット
によって吸収された過酸化物の量は、ペレットが典型的には、0.5~2.5重量%、よ
り典型的には、0.5~2.0重量%、さらにより典型的には、0.85~1.9重量%
の過酸化物濃度を有するものである。他の実施形態において、過酸化物は、溶融濾過前に
ポリマーに調合される。
【0041】
窒素塩基
酸性条件下で、過酸化物の効率は、貯蔵時間に伴って減少し得る。さらに、過酸化物か
ら始まる架橋プロセス時、水が発生し得る。絶縁体中の水の存在は、材料中に空洞を形成
し、高い電気的応力条件下で材料の電気性能に関する他の懸念を生じ得るため、望ましく
ない。貯蔵時間に伴う過酸化物の効率の減少は、化合物の保存期間に限界を与えるため、
望ましくない。国際公開第WO99/21194号は、0.1~0.5重量パーセントの
濃度で2,2,6,6-テトラメチルピペリジンからなる特定のN置換ヒンダードアミン
安定剤を使用して、許容可能な熱老化性能を維持しながら、0.15重量パーセントを下
回るレベルで硫黄含有抗酸化剤による水の形成を最小限に抑えることができることを開示
している。過酸化物から始まる架橋プロセスにおいて生成されたクミルアルコールの酸(
誘導/触媒)分解は、塩基のような役割を果たす少量の材料を添加することによって効果
的に抑制することができる。架橋結合する場合、[1,3,5-トリス(4-tert-
ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,
4,6-(1H,3H,5H)-トリオン]及びジステアリルチオジプロピオネート(D
STDP)と有機過酸化物との組み合わせを用いて、クミルアルコールの酸分解を、非常
に低いレベルのHAS(ヒンダードアミン安定剤)により効果的に最低限に抑えることが
でき、これらのレベルは、国際公開第WO99/21194号に論じられるものよりもは
るかに低い。HAS濃度は、ポリマーの0.002~0.1重量パーセントのレベルから
実施され得る。[1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6
-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-
トリオン]及びDSTDPの組み合わせを含むHASを用いる場合、本組成物は、許容可
能な熱老化安定性を有する2,2,6,6-テトラメチルピペリジンからなるN置換ヒン
ダードアミン安定剤に限定されない。さらに、[1,3,5-トリス(4-tert-ブ
チル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4
,6-(1H,3H,5H)-トリオン]、DSTDP、及び超低濃度のHASの組み合
わせは、長い保存期間を有し、硬化時、低い水分発生である、材料を含有する過酸化物を
提供する。
【0042】
HAS化合物の例としては、(i)1,6-ヘキサンジアミン、2,4,6トリクロロ
-1,3,5トリアジンを有するN,N’-ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4
-ピペリジニル)-ポリマー、N-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6
,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物;(ii)ポリ[[6-[(
1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジ
イル][2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサ
ンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピオエリジニル)イミノ]]);なら
びに(iii)1,6-ヘキサンイダミン、2,4-ジクロロ-6-(4-モルノホリニ
ル)-1,3,5-トリアジンを有するN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル
)-4-ピペリジニル)-ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。HAS(i
ii)の代替的な説明は、ポリ[(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)
[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン[2,2
,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]である。HAS化合物の他の例は
、J.Pospisil及びP.P.KlemchukによるOxidation In
hibition in Organic Materials 第II巻、2~8頁に
見出され得る。本発明の実施に際して使用された窒素塩基は、単独でまたは2つ以上を組
み合わせて使用することができる。
【0043】
溶融物が濾過された後に窒素塩基を添加する実施形態において、好ましくは、塩基が低
分子量及び/もしくは低融点の塩基であるか、またはそれが液体であるが、分子量及び物
理的状態、例えば、固体、液体等は、大きく変動し得る。マイクロスクリーン(100μ
m未満のメッシュサイズ)に溶融物を濾過する前に窒素塩基を添加する実施形態において
、塩基は、低分子量もしくは低融点の塩素であるか、またはそれが周囲条件(すなわち、
23℃であり、大気圧)下で液体である。本発明の実施に際して使用され得る窒素塩基の
文脈で使用される場合、「低分子量」とは、非重合、非オリゴマー、及び/または140
0グラム/モル(g/モル)を超えない、好ましくは1000g/モルを超えない、より
好ましくは750g/モルを超えない分子量からなることを意味する。本発明の実施に際
して使用され得る窒素塩基の文脈で使用される場合、「低融点」とは、DSCを用いてピ
ーク溶融点で測定される場合、95℃を超えない、好ましくは90℃を超えない、より好
ましくは85℃を超えない溶融温度を意味する。本発明の実施に際して使用され得る低分
子量、低融点、及び/または液体の窒素塩基の例としては、シアヌル酸トリアリル(TA
C)、BASFからのTINUVIN(商標)765(ビス(1,2,2,6,6-ペン
タメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4
-ピペリジルセバケートの混合物)、BASFからのTINUVIN(商標)770(ビ
ス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)セバセエート)、BASFから
のUVINUL(商標)4050(N,N’-ビスホルミル-N,N’-ビス-(2,2
,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ヘキサメチレンジアミン)、BASFか
らのTINUVIN(商標)622(ブタン二酸、ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-
2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを有するポリマー)、BAS
FからのTINUVIN(商標)123(ビス-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6
-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート)、Cytec industries
からのCYASORB(商標)3853((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリ
ジン)ステアレート)が挙げられる。
【0044】
TACは、典型的には、硬化ブースターと見なされるが、本発明の実施に際してその使
用は、硬化ブースターとしてではなく、窒素塩基としての使用である。したがって、本発
明の実施に際して使用されるTACの量は、典型的には、硬化ブースターとして使用され
る場合の量をはるかに下回っている。本発明の実施に際して使用される典型的な量は、本
組成物の重量を基準にして0.0005~0.03重量%、好ましくは0.002~0.
01重量%の範囲である。
【0045】
抗酸化剤
本発明の実施の際に使用され得る抗酸化剤としては、ヒンダードフェノール、例えば、
テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シナメ
ート)]メタン、ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベン
ジル)-メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、及びチオジエチレンビス(3,5-
ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシナメート);ホスフィット及びホスホナ
イト、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット及びジ-
tert-ブチルフェニル-ホスホナイト;チオエステル、例えば、ジラウリルチオジプ
ロピオン酸塩、ジミリスチルチオジプロピオン酸塩、ジステアリルチオジプロピオネート
(DSTDP)、及びペンタエリトリールテトラキス(B-ラウリルチオプロピオン酸塩
);様々なシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例は、Plas
tic Additives Handbook,Gachter et al,198
5に見出され得る。抗酸化剤は、組成物の重量を基準にして約0.05~約5重量パーセ
ントの量で使用され得る。好ましくは、本組成物は、硫黄含有抗酸化剤、例えば、チオエ
ステル、特にDSTDPを含む。抗酸化剤は、単独で、または2つ以上の組み合わせで使
用することができ、AOと称される。
【0046】
添加剤
さらなる添加剤を、プロセス前、プロセス中、及び/またはプロセス後にポリマー溶融
物に添加することができる。添加剤の量は、通常、ポリマーの重量を基準にして約0.0
1~約3重量パーセントの範囲である。有用な添加剤には、追加の抗酸化剤、紫外線吸収
剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、加工助剤、滑沢剤、安定剤、流動助剤、滑沢剤
、ポリエチレングリコール等のウォーターツリー抑制剤、硬化ブースター、スコーチ抑制
剤、粘度調整剤が含まれる。
【0047】
予備配合方法
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であり
、本方法は、過酸化物架橋性ポリマーと、シアヌル酸トリアリル(TAC)及び1以上の
抗酸化剤(AO)の予備配合物と、の均質な溶融物を形成するステップと、100μm未
満のメッシュサイズを有するフィルターに、均質な溶融物を通過させるステップと、濾過
した均質な溶融物からペレットを形成するステップと、を含む。予備配合物は、典型的に
は、0.6~66重量%、より典型的には0.6~3重量%、及びさらにより典型的には
0.6~1.5重量%のTAC、及び34~99.4重量%、より典型的には97~99
.4重量%、及びさらにより典型的には98.5~99.4重量%のAOを含むか、また
は本質的にそれらからなる。
【0048】
好ましい抗酸化剤は、フェノール系AO、硫黄系AO、及びフェノール系AOと硫黄系
AOの組み合わせである。本発明のこの実施形態に有用なAOの例示的な例としては、C
YANOX(商標)1790、TBM6(4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6 te
rt-ブチルフェノール)、TBP6(2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-p
-クレゾール))、IRGANOX 1010(ペンタエリトリトールテトラキス(3-
(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩)、IRG
ANOX 1035(チオジエチレンビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-
ヒドロキシフェニル]プロピオン酸塩])、IRGASTAB KV10(4,6-ビス
(オクチルチオメチル)-o-クレゾール)、DSTDP(ジステアリルチオジプロピオ
ネート)、DLTDP(ジラウリルチオジプロピオン酸塩)NAUGARD 412S(
ペンタエリトリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオン酸塩))、及びこれらの
AOのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。CYANO
X生成物は、Cytecから入手可能であり、IRGANOX及びIRGASTAB生成
物は、BASFから入手可能であり、NAUGARD生成物は、Addivantから入
手可能である。最も好ましいAOは、米国特許第6187858号及び同第618784
7号に記載されているTBM-6及び抗酸化剤の配合物である。
【0049】
予備配合物は、化学物質の均質な混合物を生成するために当該技術分野で公知の方法に
よって調製され得、これには、溶融配合及び溶媒配合を含んでもよい。
【0050】
過酸化物架橋性ポリマーは、典型的には、ポリオレフィンであり、より典型的にはポリ
エチレンである。過酸化物架橋性ポリマー及び予備配合物の均質な配合物には、典型的に
は、95~99.9重量%、より典型的には96~98重量%、及びさらにより典型的に
は97~98重量%の架橋性ポリマー、ならびに0.1~0.6重量%、より典型的には
0.2~0.5重量%、及びさらにより典型的には0.2~0.4重量%の予備配合物を
含むか、または本質的にそれらからなる。
【0051】
過酸化物架橋性ポリマー及び予備配合物を、典型的に及び好ましくは、単軸または二軸
押出機において混合し、微細なメッシュスクリーンまたはフィルターに通過させる。調合
の条件は、例えば、140~250℃、または160~235℃、または170~225
℃の温度でポリマー及び予備配合物の均質な溶融物を生成することである。スクリーンの
メッシュサイズは、典型的には、100ミクロン(μm)未満、より典型的には75μm
未満、及びさらにより典型的には50μm未満である。最も好ましい実施形態において、
それは、25μm未満である。スクリーンの組成物は、適宜に変化し得るが、典型的には
、金属、例えば、ステンレス鋼である。
【0052】
一旦ポリマー及び予備配合物の均質な溶融物を、フィルターまたはスクリーンに通過さ
せると、溶融物を混合機から取り出し、例えば、押出機から押し出して、所望のサイズ及
び形状のペレットに形成する。さらに任意のステップにおいて、典型的には、噴霧するこ
とによって、またはそうでなければ、液体過酸化物をペレットに塗布し、ペレットに過酸
化物を吸収させることによって、ペレットに過酸化物を含浸させる。一実施形態において
、過酸化物をペレットに塗布する前に、過酸化物を1つ以上の添加剤と混合する。一実施
形態において、添加剤には、追加のTAC及び/または他の低分子量もしくは低融点もし
くは液体の窒素塩基が含まれる。一旦ペレットを冷却すると、吸収された過酸化物の有無
にかかわらず、使用、出荷、及び/または貯蔵の準備が整う。
【0053】
低分子量または低融点または液体の窒素塩基方法
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であり
、本方法は、まず、(i)過酸化物架橋性ポリマーと、(ii)低分子量、または液体、
または低融点の窒素塩基と、(iii)1つ以上の抗酸化剤(AO)と、の均質な溶融物
を形成するステップと、100μm未満のメッシュサイズを有するフィルターに、均質な
溶融物を通過させるステップと、濾過した均質な溶融物からペレットを形成するステップ
と、を含む。一実施形態において、均質な溶融物は、典型的には、95~99.9重量%
、より典型的には96~98重量%及びさらにより典型的には97~98重量%の過酸化
物架橋性ポリマー、ならびに0.0005~0.09重量%、より典型的には0.001
~0.03重量%及びさらにより典型的には0.002~0.01重量%の窒素塩基を含
むか、または本質的にそれらからなる。一実施形態において、均質な溶融物は、典型的に
は、95~99.9重量%、より典型的には96~98重量%及びさらにより典型的には
97~98重量%の過酸化物架橋性ポリマー;0.0005~0.09重量%、より典型
的には0.001~0.03重量%及びさらにより典型的には0.002~0.01重量
%の窒素塩基;ならびに0.01~0.6重量%、より典型的には0.1~0.5重量%
及びさらにより典型的には0.1~0.4重量%のAOを含むか、または本質的にそれら
からなる。
【0054】
過酸化物架橋性ポリマーは、典型的にはポリオレフィンであり、より典型的にはポリエ
チレンであり、低分子量または低融点または液体の窒素塩基は上記の通りである。一実施
形態において、塩基は、TAC及び/またはBASFからのUVINUL(商標)405
0(N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4
-ピペリジニル)-ホルムアミド)である。任意の抗酸化剤は、上記の通りである。好ま
しいAOとしては、CYANOX(商標)1790、TBM6、TBP6(2,2’-チ
オビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール))、IRGANOX 1010、IR
GANOX 1035、DSTDP、DLTDP、NAUGARD(商標)412S、及
びこれらのAOのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において
、本組成物は、少なくとも1つの硫黄含有AO、例えば、DSTDP、DLTDP、及び
NAUGARD(商標)412Sを含む。
【0055】
(1)(A)過酸化物架橋性ポリマーと、(B)低分子量または液体または低融点の窒
素塩基と、(C)AOと、の均質な溶融物を形成することと、(2)均質な溶融物を濾過
することと、(3)濾過した溶融物からペレットを形成することに使用される作業工程及
び装置は、予備配合方法のために上述されたものと同じである。
【0056】
さらに任意の工程において、典型的には、噴霧することによって、またはそうでなけれ
ば、液体過酸化物をペレットに塗布し、ペレットに過酸化物を吸収させることによって、
ペレットに過酸化物を含浸させる。一実施形態において、過酸化物をペレットに塗布する
前に、過酸化物を1つ以上の添加剤と混合する。一実施形態において、添加剤には、追加
のTAC及び/もしくはTINUVIN(商標)765、ならびに/または0.0005
%~0.01%の他の低分子量もしくが液体もしくは低融点の窒素塩基が含まれる。一旦
ペレットを冷却すると、吸収された過酸化物の有無にかかわらず、使用、出荷、及び/ま
たは貯蔵の準備が整う。
【0057】
浸漬方法
一実施形態において、本発明は、過酸化物架橋性ペレットを作製するための方法であり
、本方法は、まず、過酸化物架橋性ポリマーの溶融物を形成することと、100μm未満
のメッシュサイズを有するフィルターに、溶融物を通過させることと、濾過した均質な溶
融物からペレットを形成することと、ペレットに低分子量または低融点または液体の窒素
塩基を含浸させることと、を含む。過酸化物架橋性ポリマーは、典型的にはポリオレフィ
ンであり、より典型的にはポリエチレンであり、1つ以上の添加剤、例えば、上述される
もの等の抗酸化剤と組み合わせてもよい。(1)添加剤を用いて、または用いることなく
、過酸化物架橋性ポリマーの溶融物を形成することと、(2)溶融物を濾過することと、
(3)濾過した溶融物からペレットを形成することに使用される作業工程及び装置は、予
備配合物及び低分子量または低融点または液体の窒素塩基方法のために上述されたものと
同じである。
【0058】
低分子量または低融点または液体の窒素塩基は、上述された通りである。一実施形態に
おいて、塩基は、TAC及び/もしくはTINUVIN(商標)765、ならびに/また
は0.0005%~0.01%の他の低分子量もしくは液体もしくは低融点の窒素塩基で
ある。任意の抗酸化剤もまた、上述された通りである。好ましいAOとしては、CYAN
OX(商標)1790、TBM6、TBP6(2,2’-チオビス(6-tert-ブチ
ル-p-クレゾール))、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、DS
TDP、DLTDP、NAUGARD(商標)412S、及びこれらのAOのうちの2つ
以上の組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、本組成物は、少なくとも1
つの硫黄含有AO、例えば、DSTDP、DLTDP、及びNAUGARD(商標)41
2Sを含む。最も好ましいAOは、米国特許第6187858号及び同第6187847
号に記載されているTBM-6及び抗酸化剤の配合物である。
【0059】
次いで、噴霧することによって、またはそうでなければ、塩基及び任意の液体過酸化物
をペレットに塗布して、ペレットが塩基及び任意の過酸化物を吸収するのを可能にするこ
とによって、典型的には、及び好ましくは、過酸化物と組み合わせて、ペレットに低分子
量または低融点または液体の窒素塩基を含浸させる。塩基及び過酸化物は、ペレットへの
それらの塗布の時間及び温度で液体である。一実施形態において、塩基は、ペレットに塗
布する前に、過酸化物及び/または1つ以上の添加剤と混合する。一実施形態において、
低分子量または低融点または液体の塩基の塗布後に、ペレットは、典型的には、95~9
9.9重量%、より典型的には96~98重量%及びさらにより典型的には97~98重
量%の過酸化物架橋性ポリマー、ならびに0.001~0.09重量%、より典型的には
0.001~0.03重量%及びさらにより典型的には0.002~0.01重量%の窒
素塩基を含むか、または本質的にそれらからなる。一実施形態において、低分子量または
低融点または液体の塩基の塗布後に、ペレットは、典型的には、95~99.9重量%、
より典型的には96~98重量%及びさらにより典型的には97~98重量%の過酸化物
架橋性ポリマーと、0.0005~0.09重量%、より典型的には0.001~0.0
3重量%及びさらにより典型的には0.002~0.01重量%の窒素塩基と、0.01
~0.6重量%、より典型的には0.1~0.5重量%及びさらにより典型的には0.1
~0.4重量%のAOと、を含むか、または本質的にそれらからなる。一実施形態におい
て、本組成物は、硫黄含有抗酸化剤、例えばDSTDPを含む。
【0060】
一旦ペレットを冷却すると、吸収された過酸化物の有無にかかわらず、使用、出荷、及
び/または貯蔵の準備が整う。
【0061】
ワイヤ及びケーブル
本発明の過酸化物架橋性ポリマー組成物は、絶縁体として、(例えば、米国特許第5,
246,783号及び同第4,144,202号に記載されている装置及び方法を用いて
)周知の量及び周知の方法によってケーブルに塗布することができる。典型的には、シー
ス組成物は、ケーブルコーティングされたダイを装備した反応器押出機において調製され
、本組成物の構成成分が製剤化された後、本組成物は、ケーブルがダイから引き抜かれる
とき、1つ以上の導体上に押し出される。
【実施例
【0062】
安定した予備配合
本発明の実施例は、一次抗酸化剤、CytecからのCYANOX(商標)1790(
1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジ
ル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン)、及び
シアヌル酸トリアリル(TAC)と配合した共力剤ジステアリルチオジプロピオネート(
DSTDP)の混合物を使用する。すべての実施例において、一次AOと共用剤の比率は
、約0.63:1である。
【0063】
実施例1
実施例1は、1:1のTAC及びAO混合物の予備配合物(50重量%のTAC+31
重量%のDSTDP+19重量%のCYANOX(商標)1790)である。すべての試
料の示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラムを図に示す。DSC実験は、10℃/分
のランプ速度で空中で行われる。これらのサーモグラムに対するピーク開始、ピーク最大
、及びエンタルピー値を表1中に照合させる。TACを含まないAO混合物(61重量%
のDSTDP+39重量%のCYANOX(商標)1790)については、2つの主要な
ピーク:約60℃で急激な吸熱(ピーク1)及び245~285℃の広範な発熱(ピーク
2)がある。TAC(AOなし)についてのサーモグラムもまた、~200℃で急激な吸
熱(ピーク3)及び255℃~295℃の広範な発熱(ピーク4)の2つのピークを示す
【0064】
AO混合物及びTACが実施例1において1:1の比で予備配合される場合、驚くこと
には、ピーク3の痕跡が観察されず、一方、他のピーク(1、2、及び4)においては、
有意な効果はない(希釈は別として)。したがって、実施例1のみが、2つのピーク、す
なわち、AO混合物によってもたらされるピーク5(ピーク1と同様)及びピーク2と4
の組み合わせであるピーク6を有する。この結果は、3つのサーモグラムがすべて照合さ
れる図1に明らかに示される。TACサーモグラムのピーク3は、高度に発熱性のある急
激なピークであり、これは、安全上の問題及び爆発の可能性を示す。実施例1の本発明の
混合物は、このピーク(反応)を完全に消滅させ、安全性が著しく改善されている。した
がって、予備配合物としてAO及びTACの取扱い及び導入は、個々の構成成分の取扱い
及び導入よりも安全である。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2
実施例2の組成物は、2重量%のTAC+60重量%のDSTDP+38重量%のCY
ANOX(商標)1790である。この配合は、AO+TAC予備配合物が添加される製
剤の硬化特性を著しく変化させないTACレベルによるものである。これは、好ましい組
成範囲内である。実施例1は、TACにおける発熱反応のうちの1つを排除する際のAO
の効果を明らかに示す。図2もまた、第2の組成物におけるピーク3の消失を示す。これ
らのサーモグラムに対するピーク開始、ピーク最大、及びエンタルピー値を表1中に照合
させる。
【0067】
比較及び対照実施例
本発明の個々の特性は、発熱ピークの消失がすべてのTAC+溶媒配合において普遍的
な効果ではないことである。これを証明するために、AO混合物の代わりにテトラデカン
に置き換える、つまり、50重量%のテトラデカン+50重量%のTACを用いることを
除いては、実施例1において使用されるものと同様の比較製剤においてDSC実験を行う
。対照実験もまた、未使用のテトラデカン試料において行われる。図3は、比較実施例の
サーモグラムとTAC及びテトラデカンのサーモグラムを比較し、発熱TACピーク(ピ
ーク3)が、ピーク9として混合物に明らかに観察されている。これらのサーモグラムに
対するピーク開始、ピーク最大、及びエンタルピー値を表1中に照合させる。
【0068】
低分子量の窒素塩基を含む組成物
この実施形態において、本発明は、硫黄系抗酸化剤と共に、低分子量、液体、または低
融点の有機窒素塩基(その後、低分子量または低融点の塩基と称される)を含む組成物で
ある。そのような塩基の例を表2に示す。そのような塩基の好ましい例には、UVINU
L(商標)4050及びシアヌル酸トリアリル(TAC)が含まれる。CYASORB(
商標)3346及びCHIMASSORB(商標)2020は、高分子量及び高融点の両
方を有する比較実施例である。
【0069】
【表2】
【0070】
BASFからのUVINUL(商標)4050(N,N’-1,6-ヘキサンジイルビ
ス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミド)は、低
分子量の塩基であり、TACは、低分子量及び低融点の両方を有する。一方、Cytec
からのCYASORB(商標)3346(ポリ[[6-(4-モルホリニル)-1,3,
5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニ
ル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペ
リジニル)イミノ]])及びBASFからのCHIMASSORB(商標)2020(1
,6-ヘキサンジアミン、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するN
,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ポリマー、N-ブ
チル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン
アミンとの反応生成物)は両方とも、高分子量及び高融点を有する。BASFからのTI
NUVIN(商標)765(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル
)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの
混合物)は、液体の塩基である。
【0071】
低分子量または低融点の塩基が硫黄系抗酸化剤を含有する製剤中に使用される場合、驚
くべきことには、押出機中のこれらの製剤の生成中、スクリーンビルドアップの著しい減
少がある。実験は、ZSK-30二軸押出機で行い、スクリーンビルドアップを模擬実験
する。これらの実験に使用される添加剤充填量は、1.37重量%のDSTDP+0.8
3重量%のCYANOX(商標)1790+344百万分率(ppm)の塩基である。こ
れらの充填量は、好ましい実施形態において使用されるもののほぼ6倍であり、スクリー
ンビルドアップを促進させるために使用される。つまり、344ppmの塩基を用いたこ
れらの試験は、実際の用途において、およそ50ppmの同じ塩基を使用する場合に期待
される性能を模擬実験する。実験は、245℃で行われる。23μmの開口から200μ
mの開口の範囲のスクリーンの積み重ねをそれぞれの場合に使用する、すなわち、それぞ
れの場合において、最も微細なスクリーンは、23μmの開口を有する。押出し後、スク
リーンパックを剥離し、ポリマーをトルエン洗浄によって除去し、プレートアウトを、水
中に23μmの開口スクリーンを浸漬させ、水溶性抽出物を計量することによって測定す
る。表3(a)は、様々な製剤用の水溶性抽出物のミリグラム(mg)を単位としてスク
リーンにおけるビルドアップを示す。低分子量または低融点の緩衝液の積層はすべて、C
YASORB(商標)3346のものよりも低い。
【0072】
【表3(a)】
【0073】
スクリーンビルドアップが少ないほど、製造サイクルの実行時間が長くなり、それ故に
、超高電圧用途のためには超清浄生成物の収率がより高くなることに相関する。スクリー
ンがビルドアップを開始する場合、圧力は、作用の効果がなくなるレベルに達するまで、
ブレーカープレートで増加する。実際のプラントでの連続稼働からの圧力上昇のデータを
示す表3(b)に示されるように、比較実施例(0.225% DSTDP+0.137
% CYANOX(商標)1790+0.0075% CYASORB(商標)3346
を含有する)及び(0.225% DSTDP+0.137% CYANOX(商標)1
790+0.0075% CHIMASSORB(商標)2020を含有する)の製剤を
行う場合、平均圧力上昇率は、0.7バール/時である。これは、3日未満の連続運転時
間で作用の効果がなくなる時点に達するだろう。添加剤の充填量を減少させることによっ
て、比較実施例にわずかな改善をなすことができる。0.200% DSTDP+0.1
20% CYANOX(商標)1790+0.0022% CYASORB(商標)33
46を含有する製剤により、4日間をわずかに上回る連続運転時間をもたらし得る0.5
バール/時の圧力上昇を得た。しかしながら、この連続運転時間でさえ、非常に低い収率
の超清浄生成物が得られ得る。一方、(0.200% DSTDP+0.120% CY
ANOX(商標)1790+0.0030% UVINUL(商標)4050)及び(0
.200% DSTDP+0.120% CYANOX(商標)1790+0.0050
% TAC)を含有する我々の本発明の(好ましい)実施例は、プラントにおけるいかな
る圧力上昇もなく、それ故に、非常に長い連続運転時間及び非常に良好な収率の超清浄生
成物を得る。
【0074】
【表3(b)】
【0075】
塩基が硫黄系AOを含有する製剤に与える2つの主要な利点がある:(1)過酸化物へ
の貯蔵安定性を提供する、及び(2)硬化時、望ましくない水の発生を抑制する。過酸化
物の安定性を測定するために、試料を70℃のオーブン内に入れ、これらの硬化可能性(
MDR-Mh)を周期的に分析する。塩基は、70℃で熟成させてから2週間後に、90
%超の硬化の保持(初期Mhの保持)がある場合、過酸化物の貯蔵安定性を維持するのに
有効であると見なされる。このことを用いて、室温での保存期間の予測を行う。表4は、
熟成させてから2週間にわたる本発明、好ましい、比較、及び対照試料のMDR-Mh値
を示す。初期からの熟成させた試料のMhの変化率に基づいて、試料に合格または不合格
の評価を割り当てる。表中の試料は、パイロットプラントにおいて、ZSK-30二軸押
出機上で調合され、続いて、過酸化物で含浸(浸漬)される。すべての試料は、0.20
重量%のDSTDP+0.12重量%のCYANOX(商標)1790+1.8重量%の
ジクミル過酸化物(Dicup)、及び0.0050重量%のそれぞれの緩衝液を含有し
た。
【0076】
【表4】
【0077】
スクリーンビルドアップを最小限に抑え、良好な過酸化物の安定性を提供する塩基を含
む本発明の製剤の中で、他の特性の最適な組み合わせを得るものは、TAC及びUVIN
UL(商標)4050であり、それ故に、それらは、本発明において好ましい塩基である
。表5は、我々の好ましい、本発明の、及び比較実施例のために硬化後、水分発生を抑制
する際の塩基の電気特性及び有効性を比較する。電気特性及び緩衝特性の比較は、0.2
重量%のDSTDP、0.12重量%のCYANOX(商標)1790、1.8重量%の
Dicup、及び0.005重量%の緩衝液を含有する製剤中の様々な緩衝液に対して行
われている。TINUVIN(商標)765、TINUVIN(商標)123、CYAS
ORB(商標)3853、及びTINUVIN(商標)770は、望ましくない水分発生
を抑制しない。DSTDP、Cyanox 1790を含み、塩基を含まない試料は、表
5中に登録されたすべてのものよりも高い水分値を得ることが予想される。それ故に、d
f測定は、製剤を含むTINUVIN(商標)123、CYASORB(商標)3853
、及びTINUVIN(商標)770には行われなかった。TINUVIN(商標)62
2及びTINUVIN(商標)765は、高温(130℃)及び高応力(20kV/mm
)で高いdf値を得、高電圧絶縁体用途には望ましくない。df測定をモデルケーブルに
行う。好ましい実施例である、TAC及びUVINUL(商標)4050は、過酸化物の
安定性及び水分発生の抑制の両方に関して有意な有効性を提供し、低レベルのスクリーン
ビルドアップをもたらしつつ、高温及び高応力で低いdf値を有する。
【0078】
【表5】
【0079】
硬化ブースティングのための共剤としてのTACの使用が知られているが、本発明にお
いて使用される充填量は、硬化ブースティングレベルをはるかに下回っている。表6は、
実施例1(0.005重量%のTACを含む)のMDR-Mh値(硬化レベル)と対照(
いかなるTACも含まない)のMDR-Mh値(硬化レベル)の有意な差がないことを示
す。製剤は両方とも、1.8重量%のジクミル過酸化物を有した。したがって、これらの
レベルでのTACの使用は、共剤(すなわち、硬化ブースター)としての使用を教示する
当該技術分野を考慮して明らかではない。
【0080】
【表6】
【0081】
浸漬方法
本発明のこの実施形態の本発明及び比較実施例におけるベースライン組成物は、2つの
主要な抗酸化剤である、CYANOX(商標)1790及びLDPE中に調合されたDS
TDPを含有する。この製剤のある変形例が生産プラントにおいて作製され、0.137
重量%のCYANOX(商標)1790及び0.225重量%のDSTDP(すなわち、
ベースライン製剤1)を含有する。この製剤の別の変形例が生産プラントにおいて作製さ
れ、0.12重量%のCYANOX(商標)1790及び0.20重量%のDSTDP(
すなわち、ベースライン製剤2)を含有する。ベースライン製剤のその他の変形例が、異
なるAO充填量を用いるパイロット規模で、ZSK-30二軸押出機上で作製される。
【0082】
様々な窒素塩基が60℃のジクミル過酸化物(Dicup)中に溶解され、ベースライ
ン製剤1のペレットを得られた液体混合物に浸漬させる実験を行う。Dicup(1.8
重量%)と塩基(0.005重量%)の混合物をベースライン製剤1(98.195重量
%)に浸漬させた後、貯蔵時に過酸化物の安定性を提供し、硬化時に水発生を抑制する塩
基の能力(2つの特性は、以下、緩衝と称される)を評価する。表7は、実施例に使用さ
れた過酸化物系混合物の塩基を要約する。
【0083】
【表7】
【0084】
Cytecからの塩基CYASORB(商標)3346(ポリ[[6-(4-モルホリ
ニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル
-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメ
チル-4-ピペリジニル)イミノ]])及びBASFからのCHIMASSORB(商標
)2020(2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するN,N’-ビス
(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミンポリ
マー N-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4
-ピペリジンアミンとの反応生成物)は、高分子量の固体ヒンンダードアミン光安定剤(
HALS)である。これらが、60℃でジクミル過酸化物(Dicup)中に溶解されな
いため、これらは、浸漬方法によってペレットに導入されない。
【0085】
BASFからのTINUVIN(商標)622(オリゴマーヒンダードアミン;ブタン
二酸、ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリ
ジンエタノールを有するポリマー)、Dicup中に溶解する、高分子量の低融点HAL
Sは、浸漬を介して導入される場合、塩基(緩衝のための)としてあまり有効ではない。
TINUVIN(商標)622(0.005重量%)の同じ充填が200℃の単軸押出機
における調合によって導入される対照実験が行われ、良好な緩衝特性が観察される。良好
な塩基は、過酸化物への安定性を提供し、MDR-Mhによって測定される硬化レベルを
維持する。表8は、調合及び浸漬によって導入されたTINUVIN(商標)622にお
ける70℃で熟成させてから4週間にわたるMDR-Mh値を比較する。図4は、熟成さ
れた試料のMDR-Mh値をそのゼロ日目(初期)のMDR-Mhで正規化することによ
って、硬化保持データを示す。表8及び図4は、TINUVIN(商標)622が浸漬に
よって導入される場合、調合によって導入される場合よりも速い硬化の消失をもたらすこ
とを明らかに示す。それ故驚くべきことに、浸漬が有効になり、かつ先行技術の高分子量
、高融点のHALSで遭遇するスクリーンビルドアップの回避を可能にするには、低分子
量の塩基が必要とされる。
【0086】
【表8】
【0087】
塩基は、70℃で熟成させてから2週間後に、90%超の硬化の保持(初期Mhの保持
)がある場合、過酸化物の貯蔵安定性を維持するのに有効であると見なされる。この基準
に基づく、表9にまとめられた浸漬(不合格)及び調合(合格)されたTINUVIN(
商標)622の性能。
【0088】
【表9】
【0089】
上記の結果は、高分子量の塩基が浸漬によって有効な過酸化物の貯蔵安定性を提供しな
いことを立証する。以下に論じられ、当該技術分野において知られているように、高分子
量の塩基は、スクリーニング前に調合される場合、過酸化物の貯蔵安定性を提供するが、
これは、許容されないスクリーン付着物をもたらす。
【0090】
パイロット規模実験からのデータにおいて以下に示されるように、浸漬による低分子量
の塩基の導入(押出し後)は、驚くべきことに、押出機におけるスクリーンビルドアップ
の著しい減少をもたらし(高分子量及び低分子量の塩基が調合によって導入される場合と
比較して)、有効な過酸化物の貯蔵安定性を提供し、浸漬された高分子量の塩基と比較し
て、硬化後の水分発生を抑制する。さらに、低分子量の塩基の押出し後の浸漬が商業プラ
ントに実装される場合、驚くべきことに、圧力ビルドアップの速度を低減させ、ひいては
良好な収率の超清浄生成物を生成する長期間の実行時間を可能にする。
【0091】
パイロットプラント実験をZSK-30二軸押出機において行い、実際の生産プラント
内のスクリーンビルドアップを模擬実験する。より高濃度の追加の充填剤(ベースライン
製剤1の充填剤の6倍:1.37重量% DSTDP+0.83重量% CYANOX(
商標)1790)をこれらの実験のために使用し、スクリーンビルドアップを促進する。
実験は、245℃で行われる。23μmの開口から200μmの開口の範囲のスクリーン
の積み重ねを使用する。押出し後、スクリーンパックを剥離し、ポリマーをトルエン洗浄
によって除去し、水中に23μmの開口スクリーンを浸漬させ、水溶性抽出物を計量する
ことによってビルドアップを測定する。表10は、本発明(押出し後、浸漬された低分子
量の塩基)及び比較(調合)実施例における水溶性抽出物(mg)を単位としてスクリー
ンにおけるビルドアップを示す。
【0092】
【表10】
【0093】
スクリーンビルドアップが少ないほど、製造サイクルの実行時間が長くなり、それ故に
、超高電圧用途のためには超清浄生成物の収率がより高くなることに相関する。スクリー
ンがビルドアップを開始する場合、圧力は、作用の効果がなくなるレベルに達するまで、
ブレーカープレートで増加する。表11は、ベースライン製剤1及びベースライン製剤2
(DSTDP及びCYANOX(商標)1790のみを含み、塩基を含まない)を、実際
のプラントにおいて押出機に通過させ、圧力の上昇がないことを示す。浸漬によって押出
し後、塩基をこれらの製剤に添加する。一方、高分子量の塩基(0.225重量% DS
TDP+0.137重量% CYANOX(商標)1790+0.0075重量% CY
ASORB(商標)3346)、(0.225重量% DSTDP+0.137重量%
CYANOX(商標)1790+0.0075重量% CHIMASSORB(商標)2
020)、及び(0.225重量% DSTDP+0.137重量% CYANOX(商
標)1790+0.0022重量% CYASORB(商標)3346)を含む同様の製
剤を通過させる場合、平均圧力上昇率は、それぞれ、0.7バール/時、0.7バール/
時、及び0.5バール/時であった。これは、本発明の方法の利点を明らかに示す。
【0094】
【表11】
【0095】
一見したところ、以下のデータに基づいて、調合時の超加熱履歴が、製剤の特性に悪影
響を及ぼす恐れがあるが、浸漬による塩基の導入のさらに驚くべき利点は、塩基の熱履歴
の減少である。表12は、同じ充填剤でのTINUVIN(商標)765(低分子量の塩
基)の電気及び緩衝特性が、調合した場合と比較して、浸漬によって導入された場合に劇
的に改善されたことを示す。高温高応力の消失率及び硬化後の水分発生は、同じ製剤の調
合した変形例と比較して、浸漬したTINUVIN(商標)765系製剤に対して著しく
低かった。貯蔵時の過酸化物の安定性に加えて、塩基は、硬化時の望ましくない水分発生
も抑制する。浸漬したTINUVIN(商標)765試料における水分発生は、浸漬によ
ってより良好な緩衝を示す調合された変形例におけるものよりもはるかに低い。DSTD
P、Cyanox 1790を含み、塩基を含まない試料は、表12中に登録されたすべ
てのものよりも高い水分値を得ることが予想される。
【0096】
【表12】
【0097】
硬化ブースティングのための共剤としてのTACの使用が当該技術分野において知られ
ているが、本発明に特許請求される充填剤は、硬化ブースティングレベルをはるかに下回
っている。表13は、0.005重量%の浸漬したTACを含む実施例1のMDR-Mh
値(硬化レベル)といかなるTACも含まない対照のMDR-Mh値(硬化レベル)の差
がないことを示す。製剤は両方とも、1.8重量%のジクミル過酸化物を有した。それ故
に、これらのレベルでのTACの使用は、当該技術分野では示唆されない。
【0098】
【表13】

図1
図2
図3
図4