(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】アルキド樹脂のための乾燥剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 167/08 20060101AFI20220916BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220916BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220916BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220916BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220916BHJP
【FI】
C09D167/08
C09D7/63
C09D5/02
C09D7/65
C09D7/20
(21)【出願番号】P 2019502567
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2017067994
(87)【国際公開番号】W WO2018015333
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-04-14
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513277278
【氏名又は名称】オールネックス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テメル、アルミン
(72)【発明者】
【氏名】シェーンバッハー、トマス
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/011430(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342163(US,A1)
【文献】国際公開第2015/082553(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0349138(US,A1)
【文献】特表2016-527356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221520(US,A1)
【文献】国際公開第2013/092442(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0274386(US,A1)
【文献】特開2014-148667(JP,A)
【文献】特表2016-507609(JP,A)
【文献】特開平8-217915(JP,A)
【文献】特開昭60-215078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
C09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)のための乾燥剤組成物(DC)であって、
(a)
- 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
- 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む少なくとも1種の金属錯体(MC)、並びに
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)
を含み、
上記少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)が、アルコキシル化
樹脂(B)であ
り、
アルコキシル化樹脂(B)が、アルキド樹脂(Ba)と付加体(Bb)の縮合物であり、
当該付加体(Bb)が、ヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)と脂環式ジカルボン酸の無水物(Bb2)の付加体であり、
当該ヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)が、
・ ポリオキシエチレングリコールのC
1
-~C
4
-モノアルキルエーテル(Bb11)
・ エチレンとプロピレングリコールの混合エーテルのC
1
-~C
4
-モノアルキルエーテル(Bb12)、及び任意のそれらの混合物
からなる群から選択される、
上記乾燥剤組成物(DC)。
【請求項2】
2,2’ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である、共配位子(CL)を更に含む、請求項
1に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項3】
少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)が、式(III)及び(IV):
【化1】
の化合物からなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項4】
少なくとも1種の金属錯体(MC)が、式(V):
【化2】
の鉄錯体である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項5】
少なくとも1種の金属錯体(MC)が、式(VI):
【化3】
(式中、X
3、Y及びZは、同一又は互いに異なり、CH
3-COO
-又はCH
3-(CH
2)
3-CH(CH
3CH
2)COO
-からなる群から選択され、n’は、1~4の間の範囲の整数である)のマンガン錯体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項6】
少なくとも1種のアニオン(AN)が、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、PF
6
-、SbF
6
-、AsF
6
-、BF
4
-、B(C
6F
5)
4
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、及びRCOO
-(式中、Rは、C
1~C
20アルキルである)からなる群から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項7】
少なくとも1種の金属カチオン(M)が、マンガンであり、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)が、式(IV)
【化4】
のものであり、
少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)が、6~8個のエチレンオキシド単位を有するオレイン酸エトキシラート及び/又は
- 少なくとも1種のポリオール(Ba1)、
- 少なくとも1種の多塩基酸(Ba2)、
- 少なくとも1種の脂肪酸(Ba3)、
- 少なくとも1種の一塩基酸(Ba5)、
- 少なくとも1種のヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)及び
- 脂環式ジカルボン酸の少なくとも1種の無水物(Bb2)
の反応生成物であるアルコキシル化樹脂(B)である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項8】
2,2’ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である共配位子(CL)を更に含む、請求項
7に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項9】
アニオン(AN)が、ネオデカン酸イオンである、請求項1~
8のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項10】
少なくとも1種の溶媒(S)を更に含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項11】
溶媒(S)が、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
10に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項12】
少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比が、0.05~20の範囲内に含まれる、請求項1~
11のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)。
【請求項13】
- 1)請求項1~
12のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)、及び
- 2)少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)
を含む、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)。
【請求項14】
ワニス、ラッカー、塗料、ステイン、エナメル、印刷インク又は床仕上げ材における、請求項
13に記載の自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の使用。
【請求項15】
請求項
13に記載の自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)でコーティングされた、基材。
【請求項16】
少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を乾燥するための、請求項1~
12のいずれか一項に記載の乾燥剤組成物(DC)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コーティング組成物における、好ましくは、自動酸化可能な(autoxidizable)アルキド系コーティング組成物における使用のための乾燥剤組成物(drier composition)に関する。本発明は、かかる乾燥剤組成物を含む自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物、前記自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物の使用、また、前記自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物でコーティングされた基材を更に対象とする。
【背景技術】
【0002】
自動酸化可能な硬化する又は「乾燥する」コーティング組成物、例えば、塗料及びワニス等は、空気中に存在する酸素又は他の酸化剤の影響下で硬化し、すなわち架橋され、それによって固化する樹脂結合剤を通常含む。この架橋プロセスは、非常に遅く、硬化時間が長くなり得る。したがって、この架橋及び硬化プロセスを加速させる「乾燥剤(driers)」又は「siccatives」と称される化合物を加えることが通例になっている。DIN EN 971-1(1996)において示された定義によれば、これらはほとんどの場合、通常用いられる溶媒及び結合剤に可溶な有機酸の金属塩である。
【0003】
最も一般的な乾燥剤は、ゼロと異なる、少なくとも2つの異なる酸化状態において生じる遷移金属の塩であり、これらの塩は、「1次乾燥剤(primary driers)」又は「primary siccatives」とも称される。これらは、他の金属塩と組み合わせて用いることもでき、その金属塩は、それ自体は乾燥剤ではないが、本明細書で先に言及した乾燥剤の架橋効果を増強することができ、又は1次乾燥剤の有害作用を減弱若しくは低減させることができ、「2次乾燥剤(secondary driers)」又は「secondary siccatives」と一般に称される。
【0004】
公知の乾燥剤塩の例には、カチオンとして、コバルト、カルシウム、銅、亜鉛、鉄、ジルコニウム、マンガン、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、リチウム及びカリウム;並びにアニオンとして、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、例えば、酢酸イオン、エチルヘキサン酸イオン、オクタン酸イオン及びナフテン酸イオン、又はアセトアセトナートを含有する多価塩が含まれる。(ヒドロ)ペルオキシドの分解中の金属の触媒活性は、金属イオンのより低い酸化状態からより高い酸化状態への遷移及び元に戻ることの繰り返しに依存し、ヒドロペルオキシドの還元及び酸化をもたらして、組成物の不飽和油コンポーネントの酸化を触媒して加速させる。こうした理由から、アルキド組成物中に存在する脂肪酸ペルオキシドとの酸化還元反応において遷移金属はより低い原子価状態からより高い原子価状態に切り換わることが可能であるため、遷移金属は、かかる乾燥剤においてより多く用いられている。
【0005】
現在まで、コバルトに基づいた乾燥剤は、周囲温度でのこれらの優れた性能のため、最も広く用いられている。しかしながら、コバルト塩が、規制問題のため、近い将来制限される可能性が最も高いため、コバルト乾燥剤のものと少なくとも同様の乾燥性能を示し、これによって、酸化的自然乾燥コーティングにおいて完全にコバルト系乾燥剤を置き換えることができる、代替の乾燥剤化合物を見出すことが現在望まれている。
【0006】
非コバルト(又は無コバルト)金属塩、特に、マンガン(Mn)及び鉄(Fe)に基づいた乾燥剤は、すでに従来技術において開示されている。
【0007】
WO2013092442及びWO2013092441には、配位子として、1,4,7-トリアルキル-1,4,7-トリアザシクロノナンを含有するマンガン塩錯体を含む、自動酸化可能なコーティング組成物のための乾燥剤が記載されている。WO2013092442及びWO2013092441は、乾燥剤におけるマンガン塩と配位子との間のあり得る異なるモル比を開示している。
【0008】
WO2014202954は、単核の又は二核のマンガン錯体を含む乾燥剤を開示しており、これは、アルカリ土類金属シリケートとの接触ステップを含む方法を通して調製される。
【0009】
WO2011098584には、コーティング組成物のためのマンガン塩錯体が記載されており、マンガン触媒のアニオンは、Cl-、NO3
-、R2COO-又はSO4
2-からなる群から選択される。
【0010】
WO2003093384は、遷移金属塩及び還元生体分子を含む、アルキド樹脂のための乾燥剤を開示している。特に、金属塩は、とりわけ、鉄又はマンガンとし得る。
【0011】
WO2012079624には、金属が鉄又はマンガンのいずれかである金属錯体と、少なくとも1種の有機酸のK塩とを含む、乾燥剤組成物が記載されている。
【0012】
これらの多数の試みにも関わらず、塗料保存時の皮膜形成の強い傾向がなく乾燥速度の改善を示し、得られるコーティングの黄変を増加させず、得られるコーティングの硬度を改善する、非コバルト乾燥剤を開発する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、コバルトを含まず、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物において用いる場合、得られる組成物の乾燥を加速させることを可能にし、得られるコーティングの黄変及び変色に対する有意な影響がなく又はごくわずかな限られた影響しかなく、例えば、皮膜形成又は耐食性等のような前記自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物の他の特性に影響を及ぼさずに、得られるコーティングの硬度を改善する、乾燥剤組成物(drier composition)を提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、並びに
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含み、
場合によっては、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比が、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ、最も好ましくは1である、本発明による乾燥剤組成物(DC)を提供することにより達成されている。
【0015】
実際、少なくとも1種の金属錯体(MC)、特に、鉄又はマンガン錯体と組み合わせた、非イオン性乳化剤(E)の使用によって、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)のための有効な乾燥を達成することが可能になることが驚くべきことに見出されている。この効果は、溶媒性の及び水性のコーティング組成物の両方について達成される。好ましくは、本発明による乾燥剤組成物(DC)は、無コバルトである。
【0016】
更に、少なくとも1種の金属錯体(MC)と組み合わせた非イオン性乳化剤(E)を加えることにより、驚くべきことに、前記乾燥剤組成物(DC)を含有する自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の硬度の改善がもたらされる。更に、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の限定される黄変がもたらされる。
【0017】
更に、非イオン性乳化剤(E)の使用によって、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を保存する場合、特に、溶媒性タイプの組成物について生じ得る、皮膜形成を低減させることが可能になる。
【0018】
他方では、非イオン性乳化剤(E)を加えることにより、親水性にもかかわらず、特に水性タイプの組成物について、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の耐食性に影響を与えない。特に、水性のコーティング組成物において、非イオン性乳化剤(E)を用いる場合、より良い光沢が得られることが観察されている。更に、非イオン性乳化剤(E)を含む場合、乾燥剤組成物(DC)の組み込みは、水性のコーティング組成物において、より容易である。
【0019】
一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の溶媒(S)を場合によっては、含むことができ、溶媒(S)は、好ましくは、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0020】
本発明の別の態様は、
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(co-ligand)(CL)を含み、
場合によっては、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比が、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ、最も好ましくは1である、乾燥剤組成物(DC)を提供することである。
【0021】
実際、2,2-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物のような、少なくとも1つの共配位子(CL)を加えることにより、特に、黄変、得られた硬度及び自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の低皮張り傾向に関して、乾燥剤組成物(DC)の性能を更に改善することが見出されている。
【0022】
本発明の別の態様は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を乾燥するための前記乾燥剤組成物(DC)の使用に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、
- (1)
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)場合により、好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である、少なくとも1つの共配位子(CL)
を含む、少なくとも1種の乾燥剤組成物(DC)、
並びに
- (2)少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)
を含む、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)である。
【0024】
本発明の別の態様は、ワニス、ラッカー、塗料、ステイン、エナメル、印刷インク、床仕上げ材又は任意の類似の製品における前記自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の使用に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、前記自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)でコーティングされた基材に関する。
【0026】
本発明の別の態様はまた、
-
- (a)
- 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
- 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、
- 並びに(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を、
- 場合によっては、(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である、少なくとも1つの共配位子(CL)と混ぜ合わせるステップを含む、乾燥剤組成物(DC)の調製方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、並びに
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)
を含む、乾燥剤組成物(DC:drier composition)を提案する。
【0028】
用語「乾燥剤(drier)」とは、金属塩(MS)を含み、乾燥において開始される自動酸化反応のための触媒として作用する金属錯体(MC)について、本明細書において用いられ、用語「siccative」、「dessicator」又は「dessicative」は、この分野において、乾燥剤の同義語として用いられることが認識されている。乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の乾燥剤の混合物を意味し、これは、現在特許請求される、少なくとも1種の金属錯体(MC)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)である。本発明による乾燥剤組成物(DC)は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を乾燥するために有用であり、これは、少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含む。
【0029】
用語「自動酸化可能なアルキド結合剤」(AB:autoxidizable alkyd binder)(用語「自動酸化可能なアルキド樹脂」は同義的に用いることができる)には、不飽和脂肪族基、最も典型的には不飽和脂肪酸残基を含む、ポリマーの任意のタイプが含まれる。これらの不飽和脂肪族基又は不飽和脂肪酸残基は、自然乾燥特性を保証するが、結合剤が、飽和脂肪酸残基又は他の官能基を含むことを除外しない。一般に、不飽和脂肪酸残基は、C12~C20炭素原子鎖を有するカルボン酸である。
【0030】
用語「自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物」(AC:autoxidizable alkyd based coating composition)とは、現在特許請求される乾燥剤組成物(DC)及び少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含む、組成物を意味する。
【0031】
乾燥剤組成物(DC:Drier composition):
【0032】
金属錯体(MC:Metal complex):
【0033】
本発明を開発するとき、金属錯体(MC)の非イオン性乳化剤(E)との組合せによって、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の乾燥速度を加速し、低黄色度を得、得られたコーティングの硬度を改善することが可能になるということが見出されている。
【0034】
少なくとも1種の金属錯体(MC)は、少なくとも1種の金属カチオン(M)及び少なくとも1種のアニオン(AN)並びに少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)を含み、金属カチオン(M)は、Fe及びMnからなる群から選択され、前記少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)は、単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される。
【0035】
一実施形態によれば、少なくとも1種の金属錯体(MC)は、多座窒素ドナー配位子(L)、より好ましくは、二座、三座、四座、五座又は六座窒素ドナー配位子(L)のFe又はMn錯体である。多座とは、配位子(L)が、Mn又はFeとの配位に利用可能な複数のドナー原子を含有することを意味する。
【0036】
金属塩(MS)は、Fe及びMnからなる群から選択され、好ましくは0とは異なる、異なる酸化状態にあり得る、金属カチオン(M)を含む。
【0037】
一実施形態によれば、金属カチオン(M)は、好ましくは、Fe(II)及びFe(III)から選択することができる、鉄カチオン、又は好ましくは、Mn(II)、Mn(III)及びMn(IV)から選択することができる、マンガンカチオンである。
【0038】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のアニオン(AN)は、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3
-)、硫酸イオン(SO4
2-)、カルボン酸イオン(COO-)、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、BF4
-、B(C6F5)4
-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、又はRCOO-(式中、Rは、C1~C20アルキルである)からなる群から選択することができる。カルボン酸イオンの例は、酢酸イオン、エチルヘキサン酸イオン、オクタン酸イオン、ネオデカン酸イオン、ナフテン酸イオン、及びアセトアセトナートとなり得る。
【0039】
好ましくは、アニオン(AN)は、ネオデカン酸イオンである。
【0040】
少なくとも1種のアニオン(AN)のモル量は、金属塩(MS)中の金属(M)の酸化状態を補償するために選ばれる。
【0041】
金属塩(MS)はまた、少なくとも1種の溶媒(S)を、場合によっては含むことができ、好ましくは、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。少なくとも1種の溶媒(S)は、金属塩(MS)に及び/又は乾燥剤組成物(DC)に直接加えてもよい。少なくとも1種の溶媒(S)を、金属塩(MS)に及び乾燥剤組成物(DC)に加える場合には、少なくとも1種の溶媒(S)は、同じでも又は異なっていてもよい。
【0042】
一実施形態によれば、金属塩(MS)は、Mn2+(ネオデカン酸塩)2である。
【0043】
窒素ドナー配位子(L)は、窒素原子を配位するのを補助する有機構造又は分子である。
【0044】
金属錯体(MC)は、好ましくは、[MnLCl2]、[FeLCl2]、[FeLCl]Cl;[FeL(H2O)](PF6)2:[FeL]Cl2、[FeLCl]PF6、[FeL(H2O)(BF4)2及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0045】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、三座、四座又は五座窒素配位子(L)を含む、鉄又はマンガン錯体である。鉄錯体は、好ましくは、五座窒素ドナー配位子(L)を含むことができ、マンガン錯体は、好ましくは、三座又は四座窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0046】
金属錯体(MC)は、好ましくは、三座、四座、五座又は六座窒素ドナー配位子、N-複素環式化合物及びN-ヘテロ-芳香族化合物のマンガン又は鉄錯体となり得る。
【0047】
一実施形態によれば、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ、最も好ましくは1である。好ましくは、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、1:1となり得る。一実施形態によれば、少なくとも1種の金属カチオン(M)と比較して、モル過量の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を有することが好ましい。
【0048】
一実施形態によれば、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)は、式(I)、(II)の配位子、より詳細には、式(III)及び(IV)の配位子からなる群から選択される。
【0049】
窒素ドナー配位子(L):
【0050】
【0051】
(式中、R1及びR2は、独立に、C1~24アルキル、C6~10アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールC1~6アルキル、及び-CH2-CH2-N(CH3)2からなる群から選択され、ヘテロアリールは、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル及びチアゾリルからなる群から選択され;
【0052】
R3及びR4は、独立に、-H、C1~8アルキル、C1~8アルキル-O-C1~8アルキル、C1~8アルキル-O-C6~10アリール、C6~10アリール、C1~8-ヒドロキシアルキル、及び-(CH2)mC(O)OR5からなる群から選択され;
【0053】
R5は、-H又はC1~4アルキルから選択され、mは、0~4から選択される整数であり;
【0054】
各R6及びR7は、独立に、-H、-F、-Cl、-Br、-OH、C1~4アルコキシ、-NH-C(O)-H、-NH-C(O)-C1~4アルキル、-NH2、-NH-C1~4アルキル、及びC1~4アルキルからなる群から選択され;
【0055】
X1は、-C(O)-又は-[C(R8)2]n-(ここで、nは、0~3から選択される整数であり、R8は、独立に、-H、-OH、C1~4アルコキシ及びC1~4アルキルからなる群から選択される)から選択され;
【0056】
好ましくは、R3及びR4は、-C(O)-O-CH3、-C(O)-O-CH2-CH3、-C(O)-O-CH2-C6H5及びCH2OHから選択される)。
【0057】
好ましくは、遷移金属に配位されることが可能であるヘテロ原子は、場合によっては、C1~4アルキルにより置換されるピリジン-2-イルメチルである。
【0058】
好ましくは、X1は、C=0である。
【0059】
R1及びR2についての好ましい基は、CH3、-C2H5、-C3H7、ベンジル、-C4H9、-C6H13、-C8H17、-C12H25、及び-C18H37、-CH2-ピリジル、及びピリジン-2-イルである。ビスピドン(bispidon)の好ましいクラスは、R1又はR2の少なくとも1つが、ピリジン-2-イルメチル又はベンジルであり、好ましくは、ピリジン-2-イルメチルであるものである。より好ましくは、R1は、ピリジン-2-イルメチルであり、R2は、メチルである。
【0060】
一実施形態によれば、ビスピドンは、ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-Cl)及びその鉄錯体FeN2py3o-CIとなり得る。他の好ましいビスピドンは、3位でメチル基を有する代わりに、より長いアルキル鎖を有するもの、すなわち、イソブチル、(n-ヘキシル)C6、(n-オクチル)C8、(n-ドデシル)C12、(n-テトラデシル)C14、(n-オクタデシル)C18であり、これらは、類似の方式で調製された。
【0061】
式(II):
【0062】
式(II)の配位子(L)はまた、TACN又はTACN-Nx化合物とも称され得る。TACN-Nx化合物は、塩基性の1,4,7-トリアザシクロノナン構造を含むが、金属と複合して四座、五座、又は六座配位子を生成する、1つ又は複数のペンデント窒素基を有する。好ましくは、式(II)の配位子(L)は、TACN化合物である。
【化2】
【0063】
(式中、各R9は、独立に、-OH、C1~6アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、C1~6アルキルアミン、1個又は複数のヘテロ原子及び-N+(R10)3からなる群から選択される置換基で、場合によっては置換される、C1~20アルキル、C3~8シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、C6~20アリール及びC6~10アリール-C1~6アルキルからなる群から選択され、;
【0064】
各R10は、-H、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C6~10アリール-C1~6アルキル、C6~10アリール-C2~6アルケニル、C1~6アルキルオキシ、C2~6アルケニルオキシ、アミノC1~6アルキル、アミノC2~6アルケニル、C1~6アルキルエーテル、C2~6アルケニルエーテル、及び-CX2
2-R11から選択され;
【0065】
各X2は、独立に、-H又はC1~3アルキルから選択され、各R10は、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル及びチアゾリルからなる群から選択される、場合によっては置換されるヘテロアリール基から独立に選択され;
【0066】
R10の少なくとも1つは、-CX2
2-R11である)。
【0067】
好ましくは、R11は、場合によって置換されるピリジン-2-イル、イミダゾル-4-イル、ピラゾル-1-イル、キノリン-2-イル基から選択される。最も好ましくは、R11は、ピリジン-2-イル又はキノリン-2-イルである。
【0068】
一実施形態によれば、配位子(L)は、式(II)のものであり、R9は、1個若しくは複数のヘテロ原子で場合によっては置換されるC1~6アルキル、又は1個若しくは複数のヘテロ原子で場合によっては置換されるC6~C10アリールである。
【0069】
好ましくは、式(II)の配位子(L)は、詳細には、配位子(L)が、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(TMTACN)であるような、R9がメチルであるものである。
【0070】
別の特定の実施形態によれば、R9基の1つは、橋によって、式(II)の別の配位子の別の環の窒素原子に連結される。橋が、式(II)の配位子(L)中に存在する場合、これは、C2~C8アルキレン橋となり得る。C2~C8アルキレン橋は、C2~C8アルキレン直鎖、C2~C8アルキレン分枝鎖又は環式C2~C8アルキレン基となり得る。
【0071】
橋が、C6~C10アリーレン橋である場合、これは、例えば、ナフタレンからの2個の水素原子の引抜きによって形成された、フェニレン又は対応するアリーレンとなり得る。橋が、1つ又は2つのC1~C3アルキレン単位及び1つのC6~C10アリーレン単位を含む場合、かかる橋は、例えば、-CH2C6H4CH2-でも、又は-CH2C6H4-でもよい。これらの橋の各々は、独立に選択されるC1~C24アルキル(例えば、C1~C18アルキル)基で、1回又は複数回、例えば、1回、場合によっては、置換することができるということが理解される。
【0072】
式(II)の配位子において、橋は、通常、C2~C6アルキレン橋である。これがそうである場合、橋は、通常、直鎖アルキレンであり、例えば、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン又はn-ヘキシレンである。特定の実施形態によれば、C2~C6アルキレン橋は、エチレン又はn-プロピレンである。更により特定の実施形態によれば、C2~C6アルキレン橋は、エチレンである。本明細書中、プロピレンへの参照は、文脈上別段に明示的に示されない限り、n-プロピレン(すなわち、-CH(CH3)CH2-ではなく-CH2CH2CH2-)を指すことを意図している。
【0073】
一実施形態によれば、配位子(L)は、式(I)のもの又は式(II)のものである。
【0074】
他のあり得る配位子:
【0075】
一実施形態によれば、配位子(L)は、好ましくは、鉄金属錯体の形態で、「N4py型配位子」となり得る。この場合では、配位子(L)は、好ましくは、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル)-ビス(ピリジン-2-イル)メチルアミン及びN,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノエタンからなる群から選択される。
【0076】
別の実施形態によれば、配位子(L)は、サイクラム型配位子となり得、好ましくは、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(サイクラム)、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Me4サイクラム)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(サイクレン)、1,4,7,10-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Me4サイクレン)、及び1,4,7,10-テトラキス(ピリジン-2イルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Py4サイクレン)からなる群から選択することができる。
【0077】
特定の実施形態によれば、配位子(L)は、5,12-ジメチル-1,5,8,12-テトラアザ-ビシクロ[6.6.2]ヘキサデカンとなり得る。
【0078】
あるいは、窒素ドナー配位子(L)は、「トリスピセン(trispicen)型」配位子となり得、好ましくは、N-メチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N’,N’-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N’,N’-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N’,N’-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-Ν,Ν’,Ν’-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N’,N’-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N’,N’-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ブチル-N,N’,N’-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-N,N’,N’-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ドデシル-N,N’,N’-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-N,N’,N’-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N’,N’-トリス(イミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-エチル-N,N’,N’-トリス(イミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N’-ジメチル-N,N’-ビス(イミダゾル-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N’,N’-トリス(イミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N’,N’-トリス(1-メチル-イミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N-ジエチル-N’,N”,N”-トリス(5-メチル-イミダゾル-4イルメチル)-ジエチレントリアミン;N-(3-プロパン-1-オール)-N,N’,N’-トリス(1-メチル-イミダゾル-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-ヘキシル-N,N’,N’-トリス(イミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-メチル-Ν,Ν’,Ν’-トリス(ベンズイミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミン;及び、N-(3-プロパン-l-オール)メチル-N,N’,N’-トリス(ベンズイミダゾル-2イルメチル)-エチレンジアミンからなる群から選択することができる。トリスピセンは、好ましくは、鉄金属錯体の形態である。
【0079】
式(III)及び式(IV):
【0080】
一実施形態によれば、窒素ドナー配位子(L)は、式(III)又は(IV):
【化3】
の化合物からなる群から選択される。
【0081】
式(IV)は、TMTACNに対応する。
【0082】
金属錯体(MC:Metal complex)の例:
【0083】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としてのマンガン及び式(I)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0084】
あるいは、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としてのマンガン及び式(II)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0085】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としての鉄及び式(I)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0086】
あるいは、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としての鉄及び式(II)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0087】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としてのマンガン及び式(III)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0088】
特定の一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属塩(MS)を含むことができ、これは、マンガン及び式(IV)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)である、少なくとも1種の金属カチオン(M)を含む。好ましい一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属塩(MS)を含むことができ、これは、マンガン、式(IV)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)である少なくとも1種の金属カチオン(M)を含み、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得ることが好ましく、最も好ましくは1である。より詳細には、金属錯体(MC)は、金属塩(MS)を含むことができ、これは、マンガンである少なくとも1種の金属カチオン(M)、カルボン酸イオン、好ましくは、ネオデカン酸イオンである少なくとも1種のアニオン(AN)、式(IV)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含み、場合によっては、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得ることが好ましく、最も好ましくは1である。
【0089】
金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としての鉄及び式(III)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0090】
あるいは、金属錯体(MC)は、金属カチオン(M)としての鉄及び式(IV)の少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含むことができる。
【0091】
本発明によれば、前述した金属錯体(MC)のうち少なくとも2種以上の混合物を用いてもよい。
【0092】
一実施形態によれば、上述した金属錯体(MC)の例には、アニオン(AN)として、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3
-)、硫酸イオン(SO4
2-)、カルボン酸イオン、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、BF4
-、B(C6F5)4
-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、又はRCOO-(ここで、Rは、C1~C20アルキルである)を含むことができる。カルボン酸イオンの例は、酢酸イオン、エチルヘキサン酸イオン、オクタン酸イオン、ネオデカン酸イオン、ナフテン酸イオン、及びアセトアセトナートとなり得る。好ましくは、アニオン(AN)は、カルボン酸イオンであり、より好ましくは、アニオン(AN)は、ネオデカン酸イオンである。
【0093】
式(V):
【0094】
特定の実施形態によれば、金属錯体(MC)は、式(V)
【0095】
【0096】
【0097】
式(V)の鉄錯体は、CAS番号478945-46-9であるOMG Borchers製のBorchi(登録商標)Oxy Coatの有効成分としても参照される。
【0098】
式(VI):
【0099】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、式(VI)
【0100】
【0101】
X3、Y及びZは、同一又は互いに異なり、CH3-COO-又はCH3-(CH2)3-CH(CH3CH2)COO-からなる群から選択され、n’は、1~4の間、好ましくは2~4の間、より好ましくは2~3の間の範囲の整数である。
【0102】
式(VI)のマンガン錯体は、Huntsman Pigments & Additivesから市販されているNuodex Drycoat(登録商標)(CAS番号[1381939-25-8])の有効成分としても参照される。
【0103】
一実施形態によれば、金属錯体(MC)は、金属塩(MS)を含み、これは、少なくとも1種の金属カチオン(M)としてのマンガン(Mn)及び少なくとも1種のアニオン(AN)としてのネオデカン酸イオン及び少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)としてのTACN配位子、好ましくは、TMTACN配位子を含み、場合によっては、MnとTACN配位子、好ましくはTMTACN配位子との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ、最も好ましくは1である。
【0104】
非イオン性乳化剤(E):
【0105】
本発明による乾燥剤組成物(DC)はまた、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含む。少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、好ましくは、アルコキシル化化合物である。
【0106】
実際、乾燥剤組成物(DC)中に、少なくとも1種の金属錯体(MC)と組み合わせた、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を加えると、乾燥剤組成物(DC)の特性が改善するということが、本発明者らにより見出されている。
【0107】
非イオン性乳化剤(E)の使用によって、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の乾燥速度を加速させ、得られたコーティングの硬度を増大することが可能になる。
【0108】
更に、非イオン性乳化剤(E)の使用によって、皮膜形成を低減させることが可能になり、この皮膜形成は、特に、溶媒性タイプの組成物のための、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を保存する場合に生じ得る。
【0109】
水性のコーティング組成物に関して、非イオン性乳化剤(E)を加えても、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の耐食性に影響を与えないということが、驚くべきことに判明している。更に、水性のコーティング組成物において非イオン性乳化剤(E)を用いる場合、より良い光沢が得られる。更に、非イオン性乳化剤(E)を含む場合、乾燥剤の組み込みは、水性のコーティング組成物においてより容易である。
【0110】
一実施形態によれば、非イオン性乳化剤(E)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドと、C6~C14アルキルフェノール、分枝状第一級アルコール、C8~C25脂肪アルコール、C8~C25脂肪酸、C8~C25脂肪アミン及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の化合物(C)との反応生成物である。少なくとも1種のアルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシド、酸化プロピレン及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される。
【0111】
好ましくは、少なくとも1種の化合物(C)は、C8~C12アルキルフェノール、C12~C18脂肪アルコール、C12~C18脂肪酸、分枝状第一級アルコール及びC12~C18脂肪アミンからなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1種の化合物(C)は、オレイン酸、モノオレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、ニノール酸(ninoleic acid)、リノレライド酸、及びα-リノレン酸からなる群から選択される、C12~C18脂肪酸である。
【0112】
少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、3~50個のアルキレンオキシド単位を含む。少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、好ましくは、4~15個のアルキレンオキシド単位、より好ましくは、5~12個のアルキレンオキシド単位及び最も好ましくは、5~8個のアルキレンオキシド単位を含む。
【0113】
好ましくは、アルキレンオキシド単位は、2~5個の炭素原子を含むことができ、より好ましくは、エチレンオキシド、酸化プロピレン及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される。
【0114】
一実施形態によれば、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、C12~C18脂肪酸アルコキシラート、C12~C18脂肪アルコールアルコキシラート、分枝状第一級アルコールアルコキシラート及びC8~C12アルキルフェノールアルコキシラートからなる群から選択される。
【0115】
好ましくは、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、C12~C18脂肪酸エトキシラート、C12~C18脂肪アルコールエトキシラート、分枝状第一級アルコールエトキシラート及びC8~C12アルキルフェノールエトキシラートからなる群から選択され、これらは、好ましくは、室温で液体であり、最も好ましくは、6~8個のエチレンオキシド単位を有するオレイン酸エトキシラートである。
【0116】
特定の一実施形態によれば、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、
式(VII):
【0117】
【0118】
(式中、n及びmは、それぞれ独立に、1~13であり;pは、1又は2であり;n+m+pは、好ましくは、5~15であるように;AOは、2~4個の炭素原子を有するアルキレンオキシド単位であり;qは、3~50である)の分枝状第一級アルコールアルコキシラートとなり得る。
【0119】
式(VII)中のアルキレンオキシド単位AOは、好ましくは、エチレンオキシド及び/又は酸化プロピレン単位である。特に好ましくは、エチレンオキシド対酸化プロピレン単位のモル比が1:5~10:1である、エチレンオキシド及び酸化プロピレン単位の混合物を用いることができるが、好ましくは、式(VII)中のすべてのアルキレンオキシド単位AOは、エチレンオキシド単位である。式(VII)中の混合されたアルキレンオキシド単位AOが用いられる場合、ポリオキシアルキレン鎖は、ランダム又はブロックコポリマー鎖となり得る。5~50の範囲内で、qは、好ましくは10~30である。ポリオキシアルキレン鎖中のオキシアルキレン単位の数、qは、平均値であり、非整数となり得る。式(VII)のアルコキシラートは、単独で又は直鎖状の第一級アルコールのアルコキシラートと組み合わせて、用いることができる。
【0120】
特定の実施形態によれば、非イオン性乳化剤(E)は、アルコキシル化樹脂(B)となり得、これは、酸価が0,2mg/g~5mg/gである。
【0121】
アルコキシル化樹脂(B)は、好ましくは、アルキド樹脂(Ba)と付加体(Bb)の縮合物であってもよく、当該付加体(Bb)は、ヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)と脂環式ジカルボン酸の無水物(Bb2)の付加体であり、
当該ヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)は、
・ ポリオキシエチレングリコールのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb11)
・ エチレンとプロピレングリコールの混合エーテルのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb12)、及び任意のそれらの混合物
からなる群から選択され得る。
【0122】
特に、アルキド樹脂(Ba)は、好ましくは、分子当たり2つ以上のヒドロキシル基を有する1種又は複数のポリオール(Ba1)、1種又は複数の多塩基酸(Ba2)及び1種又は複数の脂肪酸(Ba3)の共縮合によって作製することができ、これは、1種若しくは複数のトリグリセリド油(Ba4)と置き換えてもよく、又は混合してもよい。
【0123】
場合によっては、アルキド樹脂(Ba)はまた、1種又は複数の一塩基酸(Ba5)を含有することもできる。好ましくは、脂肪酸(Ba3)のうちの少なくとも1種は、分子当たり少なくとも1つのオレフィン不飽和を有する。好ましくは、トリグリセリド油(Ba4)のうちの少なくとも1つは、その分子中に少なくとも1つのオレフィン不飽和を有する、脂肪酸に由来する少なくとも1つの残基を含む。
【0124】
一実施形態によれば、アルコキシル化樹脂(B)は、以下の反応生成物となり得る。
【0125】
分子当たり2~6つのヒドロキシル基、好ましくは、分子当たり4つまでのヒドロキシル基、例えば、エチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、1,2-及び1,4-ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ソルビトール及びマンニトール等を有する、脂肪族直鎖又は分枝鎖ヒドロキシル化合物となり得るポリオール(Ba1)。
【0126】
2~4つの酸性基、好ましくは、3~20個の炭素原子を有する脂肪族直鎖状の、分枝状若しくは環式、又は芳香族となり得る、並びに好ましくは、フタル酸、トリメリット酸(trimellithic acid)、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、マロン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸又はテレフタル酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸からなる群から選択することができる、多塩基酸(Ba2)。あるいは、多塩基酸の対応する無水物を用いることができる。
【0127】
好ましくは、4~24個の炭素原子を有する、好ましくは、少なくともモノオレフィン性の不飽和脂肪族モノカルボン酸となり得る、脂肪酸(Ba3)。ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸(gadolic)、エルカ酸、リシノール酸、リノール酸、及びリノレン酸並びにこれらの混合物、特に、天然に存在する混合物、例えば、ダイズ油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、ゴム種子油肪酸、及びトール油脂肪酸及びジュバンドール(juvandol)脂肪酸が好ましい。
【0128】
好ましくは、ヨウ素数が、120cg/g~200cg/gである油、特に好ましくは、ダイズ油、亜麻仁油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴム種子油、及びトール油となり得る、トリグリセリド油(Ba4)。
【0129】
好ましくは、芳香族モノカルボン酸、例えば、安息香酸又はアルキル置換安息香酸等、脂環式モノカルボン酸、特に、いわゆる樹脂酸、脂肪族分枝カルボン酸、例えば、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、又は(登録商標)Versatic酸、アルファ-分枝デカン酸の混合物となり得る、一塩基酸(Ba5)。
【0130】
好ましくは、アルキド樹脂(Ba)は、酸価が5mg/g未満であり、0.1mg/g~4mg/gが特に好ましく、0.2mg/g~3.5mg/gが特に好ましい。これらのヒドロキシル数は、好ましくは、30mg/g~100mg/gであり、40mg/g~90mg/gが特に好ましく、60mg/g~85mg/gが特に好ましい。
【0131】
付加体(Bb)は、
・
○ ポリオキシエチレングリコールのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb11)、
○ エチレンとプロピレングリコールの混合エーテルのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb12)、及び任意のそれらの混合物
からなる群から選択される、ヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)、
・及び脂環式ジカルボン酸の無水物(Bb2)
の反応生成物である。
【0132】
付加体(Bb)は、好ましくは、酸価が5mg/g~60mg/gであり、10mg/g~45mg/gが特に好ましく、15mg/g~40mg/gが特に好ましい。
【0133】
ポリオキシエチレングリコールのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb11)は、好ましくは、ポリエチレングリコールのメチル、エチル、n-プロピル及びn-ブチルモノエーテルであり、ポリエチレングリコールは、重量平均モル質量が、好ましくは、500g/mol~4000g/molであり、750g/mol~3000g/molが特に好ましい。分子当たりのヒドロキシル基の平均数は、好ましくは、0.8~1.2であり、0.9~1.1が特に好ましい。特に好ましいのは、メタノールで部分的にエーテル化され、モル質量が1000g/mol~2000g/molである、ポリエチレングリコールである。
【0134】
エチレンとプロピレングリコールの混合エーテルのC1-~C4-モノアルキルエーテル(Bb12)は、好ましくは、エチレンと1,2-プロピレングリコールの混合エーテルのメチル、エチル、n-プロピル及びn-ブチルモノエーテルであり、2又は3個の炭素原子をそれぞれ有するオキシアルキレン基の質量と混合エーテル(Bb12)中のすべてのオキシアルキレン基の質量の合計の比として算出された、オキシエチレン基の質量画分は、10%~85%であり、オキシプロピレン基の質量画分は、90%~15%であり、質量平均モル質量は、好ましくは、500g/mol~10 000g/molであり、1000g/mol~8000g/molが特に好ましい。分子当たりのヒドロキシル基の平均数は、好ましくは、0.8~1.2であり、0.9~1.1が特に好ましい。
【0135】
脂環式ジカルボン酸の無水物(Bb2)は、好ましくは、8~12個の炭素原子を有し得、好ましくは、テトラヒドロフタル無水物、ヘキサヒドロフタル無水物、及びこれらの同族体、例えば、メチル-テトラ-ヒドロ-フタル無水物又はブチルテトラヒドロフタル無水物等からなる群から選択される。
【0136】
適当なアルコキシル化樹脂(B)の例は、
- 好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール及び/又はソルビトールである、少なくとも1種のポリオール(Ba1)、
- 好ましくは、フタル酸無水物である、少なくとも1種の多塩基酸(Ba2)、
- 好ましくは、ジュバンドール脂肪酸である、少なくとも1種の脂肪酸(Ba3)、
- 好ましくは、安息香酸である、少なくとも1種の一塩基酸(Ba5)、
- 好ましくは、平均モル質量が500~4000の間であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルである、少なくとも1種のヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)及び
- 好ましくは、テトラヒドロフタル酸無水物である、脂環式ジカルボン酸の少なくとも1種の無水物(Bb2)
の反応生成物である。
【0137】
最も好ましくは、非イオン性乳化剤(E)は、5℃よりも高い温度で液体及び非結晶である。
【0138】
乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)を、好ましくは1重量%~99重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~15重量%含むことができる。この場合では、金属錯体(MC)は、いかなる溶媒をも含まない。
【0139】
乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を、好ましくは99重量%~1重量%、より好ましくは95重量%~50重量%、最も好ましくは90重量%~60重量%含むことができる。
【0140】
一実施形態によれば、非イオン性乳化剤(E)が、アルコキシル化樹脂(B)である場合、乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)を、好ましくは99重量%~1重量%、最も好ましくは90重量%~60重量%含むことができる。
【0141】
非イオン性乳化剤(E)の任意の混合物もやはり用いることができる。非イオン性乳化剤(E)の混合物は、アルコキシル化樹脂(B)でない少なくとも1種のアルコキシル化化合物に加えて、少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)を好ましくは含むことができる。一実施形態によれば、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドと、C6~C14アルキルフェノール、C8~C25脂肪アルコール、分枝状第一級アルコール、C8~C25脂肪酸、C8~C25脂肪アミン及び少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)からなる群から選択される、少なくとも1種の化合物(C)との少なくとも1種の反応生成物の混合物となり得る。
【0142】
場合によっては、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる、少なくとも1種の溶媒(S)をも含むことができる。溶媒(S)含有量は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、0,1~30重量%の範囲内となり得る。
【0143】
一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a):
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)及び
・ 式(IV)のものである、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)並びに
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含むことができ、
場合によっては、Mn及び式(IV)の窒素ドナー配位子(L)の間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0144】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、及び
・ 式(IV)のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)並びに
(b)6~8個のエチレンオキシド単位を有するオレイン酸エトキシラートである、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含むことができ、
場合によっては、Mnと式(IV)の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比が、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0145】
乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)式(V)の少なくとも1種の鉄錯体又は式(VI)の少なくとも1種のマンガン錯体、及び
(b)6~8個のエチレンオキシド単位を有する少なくとも1種のオレイン酸エトキシラートを含むことができる。
【0146】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)及び
・ 式(IV)のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)並びに
(b)アルコキシル化樹脂(B)である、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含むことができ、
場合によっては、Mnと式(IV)の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比が、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0147】
乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)式(V)の少なくとも1種の鉄錯体又は式(VI)の少なくとも1種のマンガン錯体、並びに
(b)
- 好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール及び/又はソルビトールである、少なくとも1種のポリオール(Ba1)、
- 好ましくは、フタル酸無水物である、少なくとも1種の多塩基酸(Ba2)、
- 好ましくは、ジュバンドール脂肪酸である、少なくとも1種の脂肪酸(Ba3)、
- 好ましくは、安息香酸である、少なくとも1種の一塩基酸(Ba5)、
- 好ましくは、平均モル質量が500~4000の間である、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテルである、少なくとも1種のヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)及び
- 好ましくは、テトラヒドロフタル酸無水物である、脂環式ジカルボン酸の少なくとも1種の無水物(Bb2)
の反応生成物である、少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)を含むことができる。
【0148】
特定の一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)を1重量%~99重量%、並びに少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を99重量%~1重量%含み、少なくとも1種の金属錯体(MC)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)の重量%の合計は、100重量%である。
【0149】
特定の一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)を5重量%~40重量%、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を60重量%~95重量%、あるいは、少なくとも1種の金属錯体(MC)を5重量%~35重量%、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を65重量%~95重量%含むことができ、少なくとも1種の金属錯体(MC)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)の重量%の合計は、100重量%である。
【0150】
特定の一実施形態によれば、非イオン性乳化剤(E)が、アルコキシル化樹脂(B)である場合、乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)を5重量%~40重量%及び少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)を60重量%~95重量%含むことができ、少なくとも1種の金属錯体(MC)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)の重量%の合計は、100重量%である。
【0151】
非イオン性乳化剤(E)の任意の混合物もやはりあり得る。非イオン性乳化剤(E)の混合物は、1種又は複数のアルコキシル化樹脂(B)を含むことができる。非イオン性乳化剤(E)の混合物は、アルコキシル化樹脂(B)でない少なくとも1種のアルコキシル化化合物に加えて、少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)を好ましくは含むことができる。
【0152】
場合によっては、乾燥剤組成物(DC)はまた、少なくとも1種の溶媒(S)を含むこともでき、溶媒(S)は、好ましくは、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。総溶媒含有量は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、0,1~30重量%の範囲となり得る。
【0153】
別の実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)及び少なくとも1種の溶媒(S)を含み、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)及び少なくとも1種の溶媒(S)の重量%の合計は、100%である。
【0154】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の金属錯体(MC)を5重量%~15重量%、少なくとも1種の溶媒(S)を0重量%~20重量%及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を95重量%~65重量%含み、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の溶媒(S)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)の重量%の合計は、100%である。
【0155】
共配位子(CL:Co-ligand)
【0156】
一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、
- (c)共配位子(CL)を更に含むことができる。
【0157】
好ましくは、この共配位子(CL)は、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である。
【0158】
2,2-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物のような少なくとも1つの共配位子(CL)を加えることにより、いくつかの利点が示されることが判明している。実際、これにより、特に、黄変、得られた硬度及び得られた自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の低皮張り傾向に関して、乾燥剤組成物(DC)の性能が改善される。したがって、特性が有意に改善したコーティングは、少なくとも1つの共配位子(CL)、好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物を、少なくとも1種の金属錯体(MC)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)と合わせることにより得られる。
【0159】
好ましくは、トリカルバモイルトリアジン化合物は、式(VIII)
【化7】
(式中、R
12は、C
1~C
8アルキル又はフェニルであり、X4は、酸素である)のものであり得る。あるいは、トリカルバモイルトリアジン化合物は、式(VIII)(式中、R
12は、C
1~C
8低級アルキル又はフェニルであり、X
4は、酸素である)のカルバモイルトリアジンのオリゴマーとなり得る。好ましくは、トリカルバモイルトリアジン化合物は、トリス-アルコキシカルバモイルトリアジン(TACT)である。TACTは、商品名Cymel(登録商標)NF 2000でAllnexから入手可能である。
【0160】
一実施形態によれば、R12は、メチル、エチル、n-プロピル、ブチル、i-プロピル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、フェニル又は前述のうちのいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0161】
乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができ、
場合によっては、少なくとも1種の金属カチオン(M)と少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に好ましくは含まれ得、最も好ましくは1である。場合によっては、乾燥剤組成物(DC)はまた、少なくとも1種の溶媒(S)を含むこともでき、溶媒(S)は、好ましくは、ホワイトスピリット、グリコール又はグリコールエーテル、アルコール、水及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0162】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)及び
・ 式(IV)のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む少なくとも1種の金属錯体(MC)
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができ、
場合によっては、Mnと式(IV)の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0163】
一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)及び
・ 式(IV)のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)
(b)6~8個のエチレンオキシド単位を有するオレイン酸エトキシラートである少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができ、
場合によっては、Mnと式(IV)の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0164】
本発明の一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)式(V)の少なくとも1種の鉄錯体又は式(VI)の少なくとも1種のマンガン錯体、
(b)6~8個のエチレンオキシド単位を有する少なくとも1種のオレイン酸エトキシラート、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができる。
【0165】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a):
・ マンガン(Mn)である少なくとも1種の金属カチオン(M)及び好ましくは、ネオデカン酸イオンとなり得る少なくとも1種のアニオン(AN)を含む、少なくとも1種の金属塩(MS)及び
・ 式(IV)のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)
(b)アルコキシル化樹脂(B)である少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができ、
場合によっては、Mnと式(IV)の窒素ドナー配位子(L)との間のモル比は、0.05~20、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~2の範囲内に含まれ得、最も好ましくは1である。
【0166】
本発明の特定の一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、好ましくは、
(a)式(V)の少なくとも1種の鉄錯体又は式(VI)の少なくとも1種のマンガン錯体、
(b)
- 好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール及び/又はソルビトールである、少なくとも1種のポリオール(Ba1)、
- 好ましくは、フタル酸無水物である、少なくとも1種の多塩基酸(Ba2)、
- 好ましくは、ジュバンドール脂肪酸である、少なくとも1種の脂肪酸(Ba3)、
- 好ましくは、安息香酸である、少なくとも1種の一塩基酸(Ba5)、
- 好ましくは、平均モル質量が500~4000の間である、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテルである、少なくとも1種のヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)及び
- 好ましくは、テトラヒドロフタル酸無水物である、脂環式ジカルボン酸の少なくとも1種の無水物(Bb2)
の反応生成物である、少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)、並びに
(c)好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である、少なくとも1つの共配位子(CL)を含むことができる。
【0167】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、マンガンである少なくとも1種の金属カチオン(M)、式(IV)
【化8】
のものである少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)を含み、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、6~8個のエチレンオキシド単位を有するオレイン酸エトキシラート、及び/又は
- 好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール及び/又はソルビトールである、少なくとも1種のポリオール(Ba1)、
- 好ましくは、フタル酸無水物である、少なくとも1種の多塩基酸(Ba2)、
- 好ましくは、ジュバンドール脂肪酸である、少なくとも1種の脂肪酸(Ba3)、
- 好ましくは、安息香酸である、少なくとも1種の一塩基酸(Ba5)、
- 好ましくは、平均モル質量が500~4000の間である、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテルである、少なくとも1種のヒドロキシル基含有モノアルキルエーテル(Bb1)及び
- 好ましくは、テトラヒドロフタル酸無水物である、脂環式ジカルボン酸の少なくとも1種の無水物(Bb2)
の反応生成物である、アルコキシル化樹脂(B)であり、
場合によっては、好ましくは、2,2’ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である共配位子(CL)を更に含むことができる。
【0168】
乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、好ましくは、2,2’-ビピリジルである少なくとも1つの共配位子(CL)を0,05重量%~20重量%、より好ましくは0,1重量%~10重量%、最も好ましくは1重量%~5重量%含むことができる。
【0169】
乾燥剤組成物(DC)は、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、好ましくは、トリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)を0,5重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは5重量%~10重量%含むことができる。
【0170】
特定の一実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)並びに2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である、少なくとも1つの共配位子(CL)を含み、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)及び少なくとも1つの共配位子(CL)の重量%の合計は、100%である。
【0171】
別の実施形態によれば、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)並びに少なくとも1種の溶媒(S)を含み、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)、少なくとも1つの共配位子(CL)及び少なくとも1種の溶媒(S)の重量%の合計は、100%である。
【0172】
あるいは、乾燥剤組成物(DC)は、少なくとも1種の金属錯体(MC)を5重量%~15重量%、少なくとも1種の溶媒(S)を0重量%~20重量%、少なくとも1つの共配位子(CL)を5重量%~15重量%及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を90重量%~50重量%含み、乾燥剤組成物(DC)の総重量と比較して、少なくとも1種の金属錯体(MC)、少なくとも1種の溶媒(S)、少なくとも1つの共配位子(CL)及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)の重量%の合計は、100%である。
【0173】
乾燥剤組成物(DC)の調製方法:
【0174】
本発明はまた、
【0175】
-
(a)
・ 鉄(Fe)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される、少なくとも1種の金属カチオン(M)並びに少なくとも1種のアニオン(AN)を含む少なくとも1種の金属塩(MS)、並びに
・ 単座、二座、三座、五座、及び六座窒素ドナー配位子を含む群から選択される、少なくとも1種の窒素ドナー配位子(L)
を含む、少なくとも1種の金属錯体(MC)、並びに
(b)少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を、場合によっては、好ましくは、2,2’-ビピリジル及び/又はトリカルバモイルトリアジン化合物である少なくとも1つの共配位子(CL)と混ぜ合わせるステップを含む、乾燥剤組成物(DC)の調製方法を意味する。少なくとも1種の溶媒(S)は、場合によっては、同様に混ぜ合わせることができる。
【0176】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)
【0177】
本発明はまた、乾燥剤組成物(DC)及び少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含む、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を意味する。
【0178】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、乾燥剤組成物(DC)及び少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含み、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、乾燥剤組成物(DC)と混合される前に、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含まない。
【0179】
自動酸化可能なアルキドコーティング組成物(AC)は、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)と異なる、追加の乳化剤を場合によっては含むことができる。
【0180】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキドコーティング組成物(AC)は、更に、いかなる乳化剤をも含まない。
【0181】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の総重量と比較して、乾燥剤組成物(DC)の量を0,01重量%~5重量%、より好ましくは0,1重量%~3重量%含む。
【0182】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の総重量と比較して、固体の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)の量を、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは25重量%~75重量%含むことができる。
【0183】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の総重量と比較して、好ましくは、金属カチオン(M)を1ppm~500ppm、より好ましくは、前記金属錯体(MC)の金属カチオン(M)を10ppm~300ppm含むことができる。
【0184】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)中の金属カチオン(M)の質量画分は、自動酸化可能なアルキド結合剤(単数又は複数)(AB)の固体の質量に対して、好ましくは1ppm~500ppm、より好ましくは10ppm~300ppmとなり得る。
【0185】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、低粘度の溶媒である液体媒体、例えば、水、有機(共-)溶媒及びそれらの混合物を、好ましくは含むことができる。自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、水性のコーティング組成物でも、又は溶媒性のコーティング組成物でもよい。
【0186】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)が、溶媒性のコーティング組成物である場合、次の適当な溶媒を用いることができる:例えば、芳香族溶媒、例えば、トルエン又はキシレン等、並びに脂肪族溶媒、例えば、エチルジグリコール、エチルグリコールアセタート、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセタート、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアセタート及びメトキシプロピレングリコールアセタート。市販の溶媒は、例えば、Shellsoll(登録商標)D40(Shell製)、Shellsoll(登録商標)D60(Shell製)、Dow製のDowanol(登録商標)PMA、及びExxonmobilから入手可能なSolvesso(登録商標)150である。
【0187】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含む。用語「自動酸化可能なアルキド結合剤」及び「自動酸化可能なアルキド樹脂」は、同義的に用いることができる。
【0188】
本発明のために有用な自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、通常、多塩基酸(又はそれらの無水物)及び、例えば、亜麻仁油、キリ油、トール油並びに、例えば、他の乾燥又は半乾性油に由来する不飽和脂肪酸(又はそれらのグリセロールエステル)との多価アルコールのエステル化の反応生成物である。
【0189】
樹脂において脂肪酸基をもたらす本明細書において有用な、適当な乾性不飽和脂肪酸、半乾性脂肪酸又はその混合物には、エチレン性不飽和共役の又は非共役のカルボン酸、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、クルパナドン(clupanadonic)酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、リカン酸、ニシン酸及びエレオステアリン酸又はそれらの混合物が含まれ、通常、天然又は合成油に由来する脂肪酸の混合物の形態で用いられる。樹脂において脂肪酸基をもたらすための適当な不飽和脂肪酸はまた、ダイズ油、共役ダイズ油、パーム油、亜麻仁油、キリ油、ナタネ油、ヒマワリ油、共役ヒマワリ油、カレンジュラ油、桐油、獣脂油(tallow oil)、(無水)ヒマシ油、ベニバナ油、マグロ油(tuna fish oil)、ヤシ油及び無水ヤシ油、及びそれらの組合せに由来する脂肪酸が含まれる。
【0190】
自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)の数平均分子量(Mn)は、一般に、150を超え、より通常では、1,000より高く、最も典型的には、5,000を超える。粘性であることから、数平均分子量(Mn)は、一般に、120,000未満、より通常では、80,000未満であるべきである。
【0191】
用語「自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)」はまた、特定の用途のための、修飾されたアルキド、例えば、ケイ素系アルキド、揺変性アルキド、最も重要なことに、ウレタン修飾されたアルキドを含むことを意味する。そのようなものとして、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、(ウレタン及び/又はアミド基を有さない)純粋なポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ウレタン化(urethanised)ポリエステル樹脂、ウレタン化ポリエステルアミド樹脂及びそれらの混合物に基づくことができる。
【0192】
適当な二価ポリオール化合物の例は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、及び2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-プロパンジオールである。適当なトリオールの例は、グリセロール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンである。3つを超えるヒドロキシル基を有する適当なポリオールは、ペンタエリスリトール、ソルビトール、及び問題となる本化合物のエーテル化生成物、例えば、ジトリメチロールプロパン及びジ-、トリ-、及びテトラペンタエリスリトールである。場合によっては、3~12個の炭素原子を有する化合物、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールが使用される。
【0193】
あるいは又は更に、ポリカルボン酸は、自動酸化可能なアルキド結合剤のためのビルディングブロックとして用いることができる。適当なポリカルボン酸の例には、フタル酸、クエン酸、フマル酸、メサコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert.ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリト酸、コハク酸、アジピン酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、二量体化脂肪酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラ-カルボン酸、エンドイソプロピリデン-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロ-ヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、及びブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸が含まれる。望まれれば、問題となるカルボン酸は、無水物として用いても、又はエステル、例えば、1~4個の炭素原子を有するアルコールのエステルの形態で用いてもよい。
【0194】
自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)の少なくとも一部は、前述した不飽和の、脂肪族化合物の組み込みの結果として、酸化的に架橋可能である。共役二重結合を含有する脂肪酸、例えば、無水ヒマシ油脂肪酸、桐油脂肪酸及び/又はカレンジュラ油脂肪酸は、特に挙げることができる。ダイズ油に由来する脂肪酸は、特に適している。
【0195】
自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)中の不飽和基は、脂肪酸によって導入することができるが、あるいは又は更に、ポリオール、カルボン酸又は無水物のうちの1種若しくは複数又は用いられる他のビルディングブロック、例えば、脂肪モノ-アルコールによって導入されてもよい。自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、例えば、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)が20重量%を超える、例えば、50重量%を超える、又は65重量%を超える量で、ペンダント基を有することができる。
【0196】
場合によっては、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、他のビルディングブロックを含んでもよく、これは、例えば、モノカルボン酸、例えば、ピバル酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、4-tert.ブチル-安息香酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2,4-ジメチル安息香酸、2-メチル安息香酸、安息香酸、2,2-ジメチルオールプロピオン酸、テトラヒドロ安息香酸、及び水素化若しくは非水素化アビエチン酸又はその異性体等に由来し得る。望まれれば、問題となるモノカルボン酸は、アルキド樹脂の調製において、トリグリセリドとして、例えば、植物油として、全体で又は一部で用いることができる。望まれれば、かかるモノカルボン酸又はトリグリセリドのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0197】
場合によっては、イソシアナートはまた、自動酸化可能なアルキド結合剤についてのビルディングブロックとして用いることもできる。適当なイソシアナートには、ジイソシアナート、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、ジフェニルジイソシアナート、及びジシクロ-ヘキシルメタンジイソシアナート、並びにトリイソシアナート等が含まれる。
【0198】
自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、構成コンポーネントの直接エステル化により得ることができ、任意にこれらのコンポーネントの一部は、エステルジオール又はポリエステルジオールにすでに変換されている。あるいは、不飽和脂肪酸は、乾性油、例えば、ヒマワリ油、亜麻仁油、マグロ油、無水ヒマシ油、ヤシ油、及び無水ヤシ油等の形態で加えることができる。次いで、ポリオール、及び場合によっては、他のビルディングブロックとのエステル交換は、最終アルキド樹脂を生成する。このエステル交換は、一般に、115~250℃の温度で起こり、場合によっては、トルエン及び/又はキシレン等の溶媒もやはり存在する。反応は、一般に、エステル交換触媒の触媒量の存在下で行われる。適当なエステル交換触媒の例には、酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、塩基性化合物、例えば、アミン、又は化合物、例えば、酸化カルシウム、酸化亜鉛、オルソチタン酸テトライソプロピル、ジブチルスズオキシド、及びトリフェニルベンジルホスホニウムクロリドが含まれる。
【0199】
自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、これらの油長を特徴とすることが多い。油長は、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)中の(これらのトリグリセリドとして算出される)脂肪酸ビルディングブロックの重量パーセントとして定義される。本発明による乾燥剤組成物(DC)は、任意の油長の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)、すなわち、
・ トリグリセリドの百分率55%以上を示す長油性、
・ トリグリセリドの百分率40~55%の間を示す中油性アルキド、
・ トリグリセリドの百分率40%未満を示す短油性アルキドで用いることができる。
【0200】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、中油又は長油改質アルキド、シリコーン改質アルキド、ポリウレタン改質アルキド、アクリル改質アルキド又は任意のそれらの混合物である。
【0201】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、溶媒性アルキド又は水性アルキド樹脂である。自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)の例は、Vialkyd(登録商標)AS673/60SD60(Allnex(登録商標)から市販されている)、又はResydrol(登録商標)AY6150w/45WA(Allnex(登録商標)から市販されている)となり得る。
【0202】
水性アルキド樹脂は、外部的に又は内部的に乳化させることができ、外部的にとは、アルキド樹脂が、乳化剤又は界面活性剤によって水に分散されることを意味し、内部的にとは、アルキド樹脂自体が、水と適合させる親水基を有することを意味する。特に、特許出願WO2015101585、WO2004094546、WO2005012376に記載されている水系アルキド樹脂は、本発明の範囲内に含まれる。
【0203】
本発明による乾燥剤組成物(DC)を含む、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)はまた、通常の添加剤、例えば、皮張り防止剤、沈降防止剤、酸化防止剤、均染剤、粘度調整剤、光安定剤又はUV安定剤、共溶媒、分散剤、界面活性剤、阻害剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、滑沢剤、消泡剤、増量剤、可塑剤、凍結防止剤、ワックス、増粘剤、チキソトロープ剤 顔料、湿潤剤、乳化剤、流れ調整剤、さび止め添加剤(corrosion protection additives)、相溶化溶媒、及び融合助剤等のうち1種又は複数を含有することができる。
【0204】
本発明による自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、クリヤワニスとして用いることができる、又は顔料を含有してもよい。顔料は、通常、不透明顔料、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、加鉛酸化亜鉛、又は色味顔料、例えば、カーボンブラック、黄色酸化鉄、ブラウンオキシド、淡褐色酸化鉄(tan oxides)、未加工及び焼成したシエナ土又はアンバー、緑色酸化クロム、フタロシアニングリーン、フタロニトリルブルー、群青、カドミウム顔料又はクロム顔料を含むことができる。
【0205】
乾燥剤組成物(DC)の使用によって、黄変又は変色に対する有意な影響がないため、本発明による自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、任意の種類の顔料、更に(白色又はベージュ色のような)非常に明るい色相を生じるものを含み得ることが強調され得る。
【0206】
存在する場合、充填剤は、好ましくは、例えば、粘土、シリカ、タルク、又は雲母等からなる群から選択される。
【0207】
用いられる場合、抗酸化剤及び皮張り防止剤は、好ましくは、メチルエチルケトキシム、アセトノキシム、ブチルアルドキシム(butyraldoxime)、ジアルキルヒドロキシルアミン、シクロヘキサノンオキシム又はそれらの混合物からなる群から選択される。この場合では、適用される酸化防止剤又は皮張り防止化合物の濃度は、好ましくは、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の重量による0.001~2重量%の範囲となる。
【0208】
特定の一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、場合によっては、乾燥剤組成物(DC)の他に、少なくとも1種の追加の乾燥剤(AD)を含むことができ、これは、1次乾燥剤及び/又は2次乾燥剤となり得る。
【0209】
少なくとも1種の追加の乾燥剤(AD)は、カルボン酸コバルト(Co)、カルボン酸セリウム(Ce)、カルボン酸鉛(Pb)、カルボン酸鉄(Fe)、カルボン酸マンガン(Mn)、カルボン酸バナジウム(V)、カルボン酸銅(Cu)及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される1次乾燥剤となり得る。
【0210】
少なくとも1種の追加の乾燥剤(AD)は、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、カリウム(K)、リチウム(Li)金属石けん、ジルコニウム(Zr)、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、及び任意のそれらの混合物からなる群から選択される2次乾燥剤となり得る。特に、これらの金属のカルボン酸塩化合物を用いることができる。
【0211】
一実施形態によれば、追加の乾燥剤(AD)は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、亜鉛(Zn)及び任意のそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0212】
好ましくは、追加の乾燥剤(AD)は、2次乾燥剤である。
【0213】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の総重量と比較して、少なくとも1種の追加の乾燥剤(AD)を、好ましくは0.005重量%~10重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%含むことができる。
【0214】
一実施形態によれば、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、乾燥剤として、本発明による乾燥剤組成物(DC)のみを含み、任意の他の乾燥剤(driers)又はsiccatives(乾燥剤の意味)を含まない。
【0215】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、ワニス、ラッカー、塗料、ステイン、エナメル、印刷インク又は床仕上げ材及び類似の組成物として用いることも、又は配合することもでき、これは、自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)を含有する。
【0216】
自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)は、木材、厚紙、生地、紙、フォーム、合成物質、なめし革、生地、ガラス、石こう、セラミック、金属、鉱物の基材、コンクリート、セメント、れんが等を含めた、様々な基材に適用することができる。
【0217】
本発明はまた、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)の調製方法を意味し、これは、
- 乾燥剤組成物(DC)を、少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)と混ぜ合わせるステップを含み、少なくとも1種の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)は、乾燥剤組成物(DC)と混ぜ合わせる前に、少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)を含まない。少なくとも1種の非イオン性乳化剤(E)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドと、C6~C14アルキルフェノール、C8~C25脂肪アルコール、分枝状第一級アルコール、C8~C25脂肪酸、C8~C25脂肪アミン及び任意のそれらの混合物及び/又は少なくとも1種のアルコキシル化樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(C)との少なくとも1種の反応生成物となり得る。
【0218】
本発明はまた、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)でコーティングされた基材を意味する。
【0219】
本発明はまた、自動酸化可能なアルキド系コーティング組成物(AC)を乾燥するために、本発明による乾燥剤組成物(DC)の使用を意味する。
【0220】
有用である又は望まれる場合、前述したすべての実施形態を合わせることができるということを留意するべきである。
【0221】
以下の例は、例示の目的のために示されており、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0222】
【0223】
実験方法:
【0224】
次の試験は、試験されたコーティングの特性をアセスメントするために行っている。
【0225】
- 硬度測定:
【0226】
硬度を、DIN EN ISO 1522によって定められた通り、Konigの振り子法に従って決定した。制振を、通常、秒(単数又は複数)で測定する。硬度を、ガラスプレート上で湿潤厚さ150μmを有するフィルムにおいて決定した。
【0227】
- 色彩アセスメント:
【0228】
硬化した透明コートフィルムの色彩を、色彩計「Spectro-guide」(Byk Gardner GmbH)を用いて決定した。湿潤フィルム厚さ150μmであるコーティングフィルムを、ガラスプレートに適用し、色彩を7日後に測定した。CIE L*a*b*系による「b」の高値は、コーティングフィルム上の強力な黄変(変色)を示す。
【0229】
- 光沢測定:
【0230】
湿潤フィルム厚さ150μmであるコーティングフィルムを、ガラスプレートに適用し、光沢を7日後に測定した。光沢を、反射計タイプのmicro-TRI-gloss(BYK-Gardner)によりDIN 67530に従って測定した。
【0231】
- 皮張り測定:
【0232】
配合物は、表10に従って調製されており、25mlを、容積50mLの密閉可能なガラスビンに充填し、23℃で保存した。これらの配合物に加えたキリ油は、その大量の共役二重結合及び得られた酸化的乾燥能力により皮膜形成を加速している。この試験では、より短い期間の後、いくつかの配合物の皮膜形成の傾向が示される。1、2、4、7及び10日後の皮膜形成を、次のスキームによりレーティングした。
【表1】
【0233】
- 腐食試験(塩水噴霧試験):
【0234】
表2の配合物を、湿潤フィルム厚さ250μmで未処理の鋼(「Gardobond OC」)に流し込み、23℃及び相対湿度50%で7日間硬化した。腐食試験を、EN ISO 9227(NSS試験)に従って行い、各サンプルは、中心の引っかきにより試験している。引っかき及びブリスタリングからのクリープ距離を評価している。
【0235】
- 乾燥時間測定:
【0236】
乾燥時間を、TQC GmbHによって販売されるBK 3 speed Drying Recorderを用いて、23℃及び相対湿度50%で決定した。コーティング組成物のフィルム(水性の配合物の場合、湿潤フィルム厚さ150μm及び溶媒系配合物の場合、75μmである)を、長方形ガラスプレートに適用し、次いで、これを、測定台に水平に置き、その後、負荷量5gを含む、垂直方向に方向づけられた平滑な針を、ガラスプレートの片端に位置付け、乾燥プロセス中、長方形ガラスプレートの長い軸と平行な、新たに適用されるコーティングフィルムを通して引き出す。3相が識別され、a)相では、針が通過した後のコーティング組成物レベルは、均一な表面中にわずかなくぼみを残し、b)相では、溝が、針の路において可視化され、コーティング組成物は硬化し始め、c)相では、フィルムは、通過する針により、もはやかき分けられず、これによって、表面の乾燥が示される。記録された最大乾燥時間は、12又は24時間で、コーティング系に依存していた。
【0237】
用いた生成物のリスト:
【0238】
- Mn-ネオデカン酸塩:マンガンネオデカン酸塩のホワイトスピリット中溶液(金属マンガン含有量8%)。
【0239】
- ポリエチレングリコールモノオレアート(8EO):次の例においてEMU1として識別される、8個のエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコールモノオレアート(HLB appr.11)。
【0240】
- Resydrol(登録商標)AY 6150w/45WA(Allnexから市販されている):自然乾燥、水中のアクリル改質アルキド樹脂エマルション45%(<1%のn-ブトキシプロパノールをも含有している)。
【0241】
- Additol(登録商標)VXW 4940N(Allnexから市販されている):エマルション形態(乳化剤を含有している)でのコバルト3%、ジルコニウム5%及びバリウム3%を含む混合金属乾燥剤。
【0242】
- Additol(登録商標)VXL 4930(Allnexから市販されている):シリコーン系レベリング添加剤(2-エチルヘキサノール中の活性含有量40%)。
【0243】
- Kronos(登録商標)2190(Kronos Internationalから市販されている):TiO2系顔料。
【0244】
- Kronos(登録商標)2065(Kronos Internationalから市販されている):TiO2系顔料。
【0245】
- Nubirox 102(Nubiolaから市販されている):有機物親和性のある(Organophilized)リン酸亜鉛-モリブデン酸塩系防錆顔料。
【0246】
- Blanc Fixe micro:硫酸バリウム系充填剤。
【0247】
- Octa-Soligen(登録商標)カルシウム4:金属含有量4重量%。
【0248】
- Octa-Soligen(登録商標)ジルコニウム24:金属含有量24重量%。
【0249】
- Additol(登録商標)VXW 6387(Allnexから市販されている):沈降防止剤(メトキシプロパノール中の活性含有量60%)。
【0250】
- Additol(登録商標)VXW 6208(Allnexから市販されている):非イオン性ポリマー分散化添加剤。
【0251】
- Additol(登録商標)XW 376(Allnexから市販されている):鉱油系脱泡剤エマルション。
【0252】
- Shellsoll(商標)D60:C10~C12パラフィン及びナフテンからなる。
【0253】
- Acrysol(商標)RM 6000(Dow Coating materialsから市販されている):非イオン性ウレタンレオロジー調整剤。
【0254】
- Vialkyd(登録商標)AS 673/60SD60(Allnexから市販されている):長油、乾燥アルキド樹脂、中間の粘度、油長64%(ダイズ油タイプ)、ホワイトスピリット中の固体樹脂60%。
【0255】
- WS中のコバルト10%:ホワイトスピリット中のコバルト-オクトアート(コバルト金属含有量10%)。
【0256】
- キリ油:ヨウ素数170(油100g当たりのg)。
【0257】
- Borchi(登録商標)Oxy Coat:鉄錯体乾燥剤(OMG Borchersから市販されている)。
【0258】
- TMTACN:Sigma Aldrichから市販されている1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン。
【0259】
- 2,2’ビピリジル:Sigma Aldrichから市販され、次の例において共配位子1(CL-1)として識別される。
【0260】
- Sigma Aldrichから市販されているメチルエチルケトキシム。
【0261】
- AMP90:Angus Chemical Companyから市販されている90% 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール。
【0262】
- TACT:次の例において共配位子2(CL-2)として識別される、トリス-アルコキシカルバモイルトリアジン。
【0263】
次の例においてEMU2として識別されるアルコキシル化樹脂(B)の調製:
【0264】
150℃まで触媒としてのトリエチルアミン1gの存在下で、一定の酸価26,5mg/gになるまで、モル質量2000g/molを有するモノメトキシポリエチレングリコール929gを、テトラヒドロフタル無水物71gと反応させることにより、付加体を調製した。冷却後、この付加体644gを、ヒマワリ油160gから作製された、ヒドロキシル数70mg/g及び酸価3mg/g未満を有するアルキド樹脂409g、連鎖停止剤として安息香酸72g、無水フタル酸100g及びペンタエリスリトール100gと混合した。キシレンを、樹脂混合物の質量の10%の量でそこに加え、得られた混合物を、220℃まで加熱し、水を完全に分離し、その後、キシレンを蒸留して除いた。残りの生成物は、酸価が2,5mg/g未満であった。
【0265】
次の例において、共配位子2(CL-2)として識別される、トリス-アルコキシカルバモイルトリアジン(TACT)である、共配位子(CL)の調製:
【0266】
ジオキサン中のメラミンの塩化オキサリルとの反応から得られた、真空で剥離された生成物10gは、少量のポリマー化ジオキサンを除去する、高真空で蒸留した短経路であった。淡黄色の澄んだ油7,67gを得、これを、ゆっくりと固化させた。室温で、この生成物30グラムを、n-ブタノール30gに加え、その後、発熱を認めた。得られた濁った溶液をろ過し、n-ブタノールを更に用いて固体含有量50%に調整した。IRによって、1750cm-1で強力なウレタンバンドの完全な消失を示した。
【0267】
乾燥剤組成物(DC)の調製:
【0268】
表1のコンポーネントを、所与の順序で密閉可能なガラスビンに投与し、40℃で1時間撹拌した。例10及び11を除く、すべての乾燥剤組成物(DC)は、マンガン1重量%に相当するとしてで選ばれている。例10の乾燥剤組成物(DC)は、マンガン6,4重量%を表し、例11は、マンガン3,2重量%を表す。
【0269】
表1
【0270】
【0271】
実験生成物4、5、6、7、8、及び9は、本発明による例である。
【0272】
実験生成物6は、TMTACN及びMn塩に加えて、2,2ビピリジルを更に含む。
【0273】
実験生成物1、2、3、10及び11は、比較例である。
【0274】
例10及び11は、溶媒及び非イオン性乳化剤(F)を含まない。
【0275】
水性の金属直接コーティング(direct-to-metal coating)配合物
【0276】
(脱イオン水及びAcrysol(登録商標)RM6000を除く)表2のコンポーネントを、スチール製ポット中で所与の順序でプレブレンドし、次いで、微粉度10μmに達するまで(グラインドメーターにより決定される)、2mmのガラスビーズを備えたビーズミルに分散した。次いで、ミルベース(mill base)は、脱イオン水及びレオロジー調整剤(Acrysol(登録商標)RM6000)を加えて、粘度を、1000mPasに調整することにより完了している。
【0277】
コバルト系混合金属乾燥剤は、(固体の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)に基づいた)コバルトレベル500ppmで適用されている。鉄乾燥剤(OMG Borchers製のBorchi(登録商標)Oxycoat)は、供給業者から推奨される通り(10%コバルト系乾燥剤のような等量)、適用されている。マンガン系乾燥剤は、固体の自動酸化可能なアルキド結合剤(AB)において、金属マンガン50ppmのレベルで適用されている。
【0278】
表2
【0279】
配合物14及び15は、本発明による配合物である。
【0280】
配合物12、13及び16は、比較配合物である。
【0281】
【0282】
水性の、金属直接コーティング適用試験
【0283】
表2から得られた配合物は、(加速保存試験として)23℃で保存の4日後又は60℃で保存の4日後、湿潤フィルム厚さ150μmで、ガラス又は鋼パネルに適用されている。表3~7は、得られたコーティングの適用データを示している。
【0284】
【0285】
配合物14及び15は、非常に良好な乾燥性能を示す。23℃での両方の配合物の乾燥時間は、配合物12、13及び16のものより有意に短かった。60℃で、配合物14及び15の乾燥時間は、配合物12及び13で得たものより更に良く、乾燥剤としてBorchi(登録商標)Oxy Coatを含有する配合物16で得たものに匹敵する。
【0286】
【0287】
配合物14及び15は、配合物12及び16よりも良好な光沢保持、及び配合物13に匹敵する光沢保持を示す。
【0288】
【0289】
配合物14及び15は、黄変に関して最良の性能を示す。特に、共配位子(CL)として2,2’ビピリジル(bipyridil)を、及び非イオン性乳化剤(E)としてポリエチレングリコールモノオレアートを含有する、配合物15は、黄変が最も低い。
【0290】
【0291】
配合物14及び15は、非常に良好な硬度を示す。更に、より良好な硬度は、配合物13及び16と比較して、配合物14及び15で得られることが明らかにされなければならず、非イオン性乳化剤(E)の存在によって、得られたコーティングがより柔らかくなることが予想されるはずである。コバルト系配合物12は、硬度の開発において依然として最高の力を発揮しているが、選択外の(本発明による)無コバルト乾燥剤配合物14及び15は、最高の力を発揮している。
【0292】
表7
【0293】
塩水噴霧試験を、23℃及び相対湿度50%で硬化の7日後に開始している。
【表8】
【0294】
配合物14及び15は、どちらも耐食性の優れた特性を示す。特に、配合物14及び15で得られた結果は、配合物16で調製されたコーティングで得られたものより優れている。これによって、非イオン性乳化剤(E)の存在が、得られたコーティングの腐食に対して悪い影響を与えないことが示される。
【0295】
溶媒性の透明コートの配合物
【0296】
表8の成分を、ラボブレンダーを用いて所与の順序でブレンドし、(加速保存試験として)23℃で4日又は60℃で4日保存した。
【0297】
表8
【0298】
【0299】
配合物21~23は、本発明による配合物である。
【0300】
配合物17~20は、比較配合物である。
【0301】
【0302】
配合物21~23は、優れた乾燥性能を示す。
【0303】
溶媒性の透明コートによる皮張り試験
【0304】
配合物は、表10に従って調製されており、25mLを、容積50mLの密閉可能なガラスビンに充填し、23℃で保存した。これらの配合物に加えたキリ油は、その大量の共役二重結合により、皮膜形成を加速し、酸化的乾燥能力を得ている。この試験では、より短い時間の後、ある特定の配合物の皮膜形成の傾向を示す。
【0305】
表10
【0306】
【0307】
配合物24~27は、比較配合物である。
【0308】
配合物28~30は、本発明による配合物である。
【0309】
1、2、4、7及び10日後の皮膜形成を、次のスキームによってレーティングし、表11に例示する。
【表12】
【0310】
【0311】
これらの結果によって、本発明による配合物が、皮張り傾向が低いことを表示すということが示されている。非イオン性乳化剤(E)を加えることにより、乾燥速度を加速させることが可能になり、皮張り傾向の低さを維持する。更に、2,2’ビピリジルを含有する配合物30は、皮張り傾向が更により低くなることを示す。コバルト系配合物24は、皮膜を形成する傾向を示さない。配合物24は、コバルトを含む。配合物25~27は、非イオン性乳化剤(E)を含有せず、配合物28~30は、非イオン性乳化剤(E)を含有する、対応する配合物である。非イオン性乳化剤(E)を含有する場合、皮張り傾向は、より低く、配合物30は、高い硬化速度(配合物23、表9)と低い皮膜形成傾向の折衷が達成され得ることを見事に示している。配合物27はまた、皮膜を形成する傾向が低いが、硬化速度(表9中の配合物20)も低い。配合物25及び28は、皮膜形成に関して類似の挙動を示すが、乳化剤が含まれない場合、硬化速度はより低い(表9から配合物18及び21を比較する)。
【0312】
水系の、金属直接コーティングにおける乳化剤の影響
【0313】
【0314】
表12の第I部のコンポーネント(脱イオン水及びAcrysol(登録商標)RM 6000を除く)は、スチール製ポット中で所与の順序で、プレブレンドされ、次いで、微粉度が10μmに達するまで(グラインドメーターにより決定される)、2mmのガラスビーズを備えるビーズミルで分散させた。次いで、ミルベースは、脱イオン水及びレオロジー調整剤(Acrysol RM 6000)を加えて、粘度を1000mPasに調整することにより、完了している。
【0315】
第II部のコンポーネントを、ラボブレンダーにより、(所与の順序で)ブレンドした。EMU1:ポリエチレングリコールモノオレアート(8EO)を加えた後、更なるコンポーネントをブレンドする前に、配合物を24時間保存した。
【0316】
配合物33及び34において用いられる実験生成物10及び11は、いかなる非イオン性乳化剤EMU1をも含まない。配合物33及び34において、マンガン錯体を加える前に、乳化剤を導入する。実験生成物4及び7の両方は、非イオン性乳化剤EMU1を含む。
【0317】
配合物33及び34を調製する場合、第I部は、最初に、非イオン性乳化剤EMU1で混合し、次いで、得られた混合物を、24時間保存し、その後のステップにおいて、マンガン錯体及び共配位子(実験生成物11の場合)を含む実験生成物10及び11を、第I部でブレンドする。
【0318】
より良好な乾燥性能を、配合物33及び34の場合と比べて、配合物31及び32の場合を測定する。
【0319】
これにより、結果の改善は、非イオン性乳化剤(E)がマンガン錯体(MC)の導入前に配合物中に存在する配合物28及び29と比較して、マンガン錯体(MC)が非イオン性乳化剤(E)と一緒に導入される配合物31及び32の場合で得られる。
【0320】
溶媒系白色仕上塗りの配合物
【0321】
【0322】
表13の第I部のコンポーネントを、スチール製ポット中で所与の順序でプレブレンドし、次いで、微粉度が10μmに達するまで(グラインドメーターにより決定される)、2mmのガラスビーズを備えるビーズミルで分散した。次いで、ミルベースは、表13から得られた残りのコンポーネントを加えることにより完了している。その配合物に、異なる乾燥剤の(表14により示される)対応する量を、ラボブレンダーを用いることにより、ブレンドした。
【0323】
溶媒系白色仕上塗りの配合物中の乾燥剤組成物の乾燥性能。
【0324】
【0325】
配合物35及び36は、本発明によらない。
【0326】
配合物37~40は、本発明による。
【0327】
配合物37~40では、60℃で4日間配合物を保存した後、配合物35及び36より乾燥性能がより良好なことが示される。これによって、アルキド配合物の保存における本発明の乾燥剤組成物の良好な乾燥性能が実証される。これは、アルキド配合物が、数ヵ月保存したとしても、乾燥性能が安定していることを示すため、重要な態様である。(表11において実証された)皮膜を形成する傾向が低いものと組み合わせた、本発明による乾燥剤組成物(DC)のこの利点は、市販のアルキド塗料配合物についての大きな利益である。