IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨハン ウォルフガング ゲーテ−ウニベルジテート フランクフルト アム マインの特許一覧

特許7142637より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法
<>
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図1
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図2
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図3
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図4
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図5
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図6
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図7
  • 特許-より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】より高次のゲノム編集ライブラリーを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220916BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20220916BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220916BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C40B40/06
C12N7/01
C12N15/63 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019535386
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084625
(87)【国際公開番号】W WO2018122248
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】102016125894.6
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507038825
【氏名又は名称】ヨハン ウォルフガング ゲーテ-ウニベルジテート フランクフルト アム マイン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】カウリヒ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウェグナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ディール,バレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】デ ブロイン,ラヘル
(72)【発明者】
【氏名】ウィッチマン,スベニャ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】BMC Genomics,2016年11月,vol.17,p.1-13
【文献】Molecular therapy,2016年07月01日,Vol.24,p.1258-1266
【文献】Antiviral research,2015年,Vol.118,p.110-117
【文献】VIROLOGY,2015年,Vol.476,p.196-205
【文献】Science,2013年,Vol.339,p.823-826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
C40B 40/06
C12N 7/01
C12N 15/63
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合閉環状(ccc)DNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを生成する方法であって、
(a)(i)RNA/DNAプロモーターと、空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、及び/又はDNA/RNAヌクレアーゼ標的配列を含む少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットと、(ii)ファージORIの一本鎖DNAの少なくとも1つの複製起点(ORI)若しくはf1起点とを含む一本鎖(ss)ファージミドベクターを準備する工程と、
(b)少なくとも1種の突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーを準備する工程であって、該突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーが、3'→5'方向に以下の構造:第1の相同性領域、発現させる小型RNA/DNAをコードする標的配列領域、及び第2の相同性領域を有し、前記第1の相同性領域が、5'側で前記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは前記小型RNA/DNAコード配列隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能であり、前記第2の相同性領域が、3'側で前記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは前記小型RNA/DNAコード配列隣接する前記ssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能である、工程と、
(c)少なくとも1種の突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーを前記ssファージミドベクター構築物にアニーリングし、そこから共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAを増幅する工程と、
(d)残留野生型ファージミドベクターDNAを除去する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記小型RNAがsiRNA、shRNA、抗miR、ガイドRNA(gRNA)若しくはガイドDNA(gDNA)、又は任意の他のRNA/DNAコード化遺伝子摂動配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小型RNAがgRNAであり、前記ssファージミドベクター構築物がプロモーター(安定又は誘導性)に操作可能に連結した、野生型又は改変形態のRNA/DNA又はゲノム編集ヌクレアーゼ発現配列を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーが少なくとも2種の突然変異誘発性DNAプライマー、少なくとも3種、少なくとも4種、5種、6種、10種、50種、100種、1000種、104種、105種、106種、107種、108種、109種、1010種、1011種又は1012種の突然変異誘発性DNAプライマーであり、cccDNAの各種が選択小型RNAコード配列内に異なる配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
多数の突然変異誘発性DNAプライマー種を、前記選択小型RNAコード配列中に少なくとも1つ以上のIUPACコード化塩基若しくはNを導入することによって準備する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
小型RNAコード配列が少なくとも10ヌクレオチド長~200ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長~50ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長~23ヌクレオチド長、又は20ヌクレオチド長である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記相同性領域が各々、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、5ヌクレオチド~40ヌクレオチド、10ヌクレオチド~30ヌクレオチド又は10ヌクレオチド~20ヌクレオチド、13ヌクレオチド~18ヌクレオチド、又は15ヌクレオチドの長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記突然変異誘発性DNAプライマーが、配列番号1~12のいずれかに従う配列を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つのウラシル塩基を含む一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を準備する工程であって、該ssファージミドベクター構築物が、(i)RNA/DNAプロモーターと、空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、及び/又はDNA/RNAヌクレアーゼ標的配列を含む少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットと、(ii)ファージORIの一本鎖DNAの少なくとも1つの複製起点(ORI)若しくはf1起点とを含む、工程と、
(b)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーを準備する工程であって、該突然変異誘発性DNAプライマーが、3'→5'方向に以下の構造:第1の相同性領域、発現させる小型RNA/DNAをコードする標的配列領域、及び第2の相同性領域を有し、前記第1の相同性領域が、5'側で前記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは前記小型RNA/DNAコード配列隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能であり、前記第2の相同性領域が、3'側で前記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは前記小型RNA/DNAコード配列隣接する前記ssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能である、工程と、
(c)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーを前記ssファージミドベクター構築物にアニーリングし、そこから共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAを増幅する工程と、
(d)前記cccヘテロ二本鎖dsDNA中のウラシル含有鎖を非ウラシル含有相補的DNA鎖で置き換え、cccDNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを得る工程と、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を、
(aa)同じ配列のdsDNAファージミドベクターを、dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログの欠損のない又は欠損した細菌株若しくはCJ236株において増幅し、野生型(チミン含有)又はウラシル含有ヘテロ二本鎖dsDNAファージミドベクターを得ることと、
(bb)野生型又はウラシル含有ssDNAを含むファージ粒子を生成することと、
(cc)前記ファージ粒子から、前記野生型又はウラシル含有ssDNAを精製して、少なくとも1つのウラシル塩基を含むssファージミドベクター構築物を得ることと、
によって準備する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株若しくはCJ236株がヘルパーファージミドを含むか、又は工程(bb)において、前記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株若しくはCJ236株にヘルパーファージを感染させ、前記ヘルパーファージミド又はヘルパーファージがM13KO7である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)を、前記cccヘテロ二本鎖dsDNAを、XL1又はSS320の機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌において形質転換及び増幅することによって行い、前記cccDNAを得る、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)における共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAの増幅を、RNA又はDNAポリメラーゼ活性を有する酵素若しくはT7 DNAポリメラーゼをT4 DNAリガーゼのRNA又はDNAリガーゼと併せて用いることによって行う、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を行うためのキットであって、
(a)
(i)gRNA/gDNAプロモーター、空のgRNA/gDNA標的化配列導入部位又はgRNA/gDNA標的化配列を含む少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)/ガイドDNA(gDNA)発現カセットと、
(ii)少なくとも1つのファージ複製起点と、
(iii)プロモーター配列の制御下のゲノム編集ヌクレアーゼをコードする配列を含む少なくとも1つの発現カセットと、
を含むファージミドベクター構築物と、
(b)DNAポリメラーゼDNAリガーゼと、
(c)機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌細胞の調製物と、
(d)使用説明書と、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的遺伝子ノックアウト、ノックダウン及びゲノム修飾アプローチに使用される極めて多様なRNA発現ベクター及びベクターライブラリーを生成する新規の方法に関する。本発明は、このようなより高次のライブラリーを、古典的クローニング技術を必要とせずに生成する方法に関する。このことは、古典的突然変異誘発法では配列を容易に突然変異させることができない大きなベクターに基づくライブラリーにとって特に有用である。本発明の方法に従って生成したベクター及びライブラリーは特に、RNA干渉等のRNA利用サイレンシング技術、またクラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeat;CRISPR)/Casシステム、又はCRISPR複合体を特定のゲノム配列に標的化するために小型ガイドRNAを用いる同様のRNA/DNAコード化遺伝子摂動(gene perturbation)システムを用いた標的ゲノム編集に向いている。本発明は、本発明の方法を行うための材料を含むキットも提供する。
【背景技術】
【0002】
クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)/Casシステムは当初、細菌種及び古細菌種において外来遺伝物質(例えば、プラスミド及びバクテリオファージ)に対する防御機構として発見された。自然発生CRISPR/Casシステムは、以下の3つの構成要素の発現に依存する:1)標的配列に相補的なガイドRNA配列、2)第3の構成要素であるエンドヌクレアーゼの部位への動員を助けるスキャフォールドRNA。多くの細菌種及び古細菌種では、CRISPR/Casシステムは外来遺伝物質を分解するために用いられるが、このシステムは広範な原核生物及び真核生物への使用に適合されており、遺伝子ノックアウト、突然変異誘発、及び発現の活性化又は抑制を含む多くの方法に用いられている(非特許文献1)。遺伝子操作されたCRISPR/Casシステムでは、3つの独立した構成要素の要求は、個々のガイドRNA配列及びスキャフォールド配列によって形成される構造を共に模倣する、標的配列に結合するためのCRISPRガイドRNA配列及びスキャフォールドRNAの両方を含有し、エンドヌクレアーゼを適切な標的部位に動員するのに十分な小型ガイドRNA(sgRNA、又は単にガイドRNA(gRNA))の発現によって回避することができる(非特許文献2)。Cas-gRNA複合体のDNA標的化の成功のための更なる必要条件は、標的DNAにおけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)DNA配列の存在であり、その正確な配列は細菌Cas酵素によって決まる(12~15)。最も広く用いられている化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9(SpCas9)については、この配列はNGGの形式を有し、Nは任意のヌクレオチドであり得る。中でも注目すべきは、Cas酵素はヒト細胞において発現され、ヒトDNA指向gRNAを供給することによって、修復することができない高度に特異的なDNA二本鎖切断を誘導し、挿入及び欠失(InDel)突然変異をもたらすことができる(13、16)。InDel突然変異の表現型は、インフレーム欠失から完全な遺伝子ノックアウトに及ぶ。近年、患者由来の幹細胞及び前駆細胞を用いることによって、CRISPR/Casシステムが鎌状赤血球症に関与する突然変異を効率的に修正することが実証されている(17)。したがって、CRISPR/Casシステムは、標準細胞生物学から治療用途に及ぶ非常に大きな可能性を有するプログラム可能な遺伝子編集ツールである(18)。
【0003】
単一遺伝子変化は、十分に制御されたモデルシステムの生成に用いることができるが、バイアスのないスクリーニングは可能でない。遺伝的スクリーンを行うために、多数のgRNA配列を組み合わせてライブラリーを生成し、ヒト及び他のゲノムにおける特定の領域を標的とすることができる(19~22)。これらの遺伝的スクリーンの大きな利点は、それらのバイアスのない適用及び使い易さである。今日の時点で、2、3のゲノムワイドCRISPR/Casノックアウトスクリーンしか公開されていないが、これらの実験が行われ、それぞれの結果が報告されるペースは大いに加速している。ノックアウトスクリーンに加えて、小数の研究室がゲノムワイドCRISPR/Cas転写活性化及び抑制スクリーンの利益を実証している(23~27)。これらのスクリーンが対象とする分野には、薬剤耐性、細胞増殖、潜性遺伝子及び必須遺伝子、長鎖非コードRNA(lncRNA)、並びにNF-KB活性化/抑制遺伝子、又は転移誘導遺伝子が含まれる(28~30)。
【0004】
現在利用可能なgRNAライブラリーは、設計及び範囲の点で大きく異なる。初めて公開されたライブラリーは、FengZhangの研究室(McGovern,Broad,MIT,Boston,USA)によるlentiCRISPRv1及びlentiCRISPRv2プラスミドに基づくものであり、ゲノム上のPAM配列の存在を原則として設計された(19)。より最近のライブラリーは、gRNA活性を最適化し、ヒト(Brunelloライブラリー)及びマウス(Brieライブラリー)のゲノムにおける潜在的オフターゲット効果を最小限に抑えることにより、初期結果のより高い信頼性をもたらす機械学習アルゴリズムに基づいて設計される(31、32)。以下の2つの基本原理により、これらのゲノムワイドライブラリーが区別される:1)機能的gRNAの予測及び選択に用いられるアルゴリズム、並びに2)Brunello及びTorontoKnockOut(30、32)のそれぞれについて4~12の範囲である、単一遺伝子を標的とするgRNAの総数によって主に決まるライブラリーの全体的複雑性。これらのライブラリーを生成する方法は主に、従来の制限酵素消化又はギブソンアセンブリによるクローニングに基づく。そのため、これらのライブラリーは、その後の適用及び結果の規模及び品質を直接妨げる、gRNAの一部に対する最大数百倍のバイアスを有する(19、32)。したがって、望ましくないバイアスなしに任意の複雑性のRNA/DNAコード化遺伝子摂動ライブラリーを生成する新規の方法が緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hsu, et al. Cell (2014) 157(6): 1262-1278
【文献】Jinek, et al. Science (2012) 337(6096):816-821
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、一態様において、共有結合閉環状(ccc)DNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを生成する方法であって、
(a)(i)RNA/DNAプロモーターと、空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、及び/又はDNA/RNAヌクレアーゼ標的配列、又はその部分配列とを含む少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットと、(ii)ファージORI等の一本鎖DNAの少なくとも1つの複製起点(ORI)、特にf1起点(f1-origin)とを含む一本鎖(ss)ファージミドベクターを準備する工程と、
(b)少なくとも1種の突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーを準備する工程であって、該突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーが、3'→5'方向に以下の構造:第1の相同性領域、発現させる小型RNA/DNAをコードする標的配列領域、及び第2の相同性領域を有し、上記第1の相同性領域が、5'側で上記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは上記小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能であり、上記第2の相同性領域が、3'側で上記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは上記小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接する上記ssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能である、工程と、
(c)少なくとも1種の突然変異誘発性RNA又はDNAプライマーを上記ssファージミドベクター構築物にアニーリングし、そこから共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAを増幅する工程と、
(d)残留野生型ファージミドベクターDNAを除去する工程と、
を含む、方法によって解決される。
【0007】
残留野生型ファージミドベクターDNAを除去するために、エンドヌクレアーゼ消化を適用することができる。例えば、エンドヌクレアーゼ標的部位を、一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物において、その少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセット内に設ける。エンドヌクレアーゼ標的部位は、一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物において、突然変異誘発性DNAプライマーの第1の相同性領域に相補的な領域と、突然変異誘発性プライマーの第2の相同性領域に相補的な領域との間に位置するのが好ましい。このため、エンドヌクレアーゼ標的部位は、3Cs合成において複製されない位置にあり、したがって野生型ssファージミドベクター構築物においてのみ存在する。したがって、ここでの方法は、工程(d)において、3Cs DNAを標的部位に特異的なエンドヌクレアーゼで酵素的に消化することを含む。例えば、エンドヌクレアーゼとして、一部の実施の形態では制限酵素及びそれらの標的部位を用いる。例示的な制限酵素及びそれらの標的部位はI-PpoI、SmaI、HpaI、I-SceI又はI-CeuIである。鋳型ssDNAにも突然変異誘発性プライマー中の導入配列にも生じない任意の制限認識部位を用いることができる。制限エンドヌクレアーゼの使用に加えて、以下の酵素のいずれか1つを、残留野生型プラスミドを除去するために用いることもできる:I-CeuI、I-PpoI、I-SceI(全てのホーミングエンドヌクレアーゼが好ましい)、全ての非ホーミングエンドヌクレアーゼ、例えばTALEN、ZFN、CRISPR/Cas及び同様の酵素の遺伝子摂動標的配列の使用、残留野生プラスミドの配列の増幅を抑制することを目的とした、原核生物及び/又は真核生物の毒性ヌクレオチド配列の使用、並びに相同性及び/又は組換えに基づくクローニング配列の使用。
【0008】
野生型DNAベクターを除去する別の可能性は、Kunkel法を用いることである。したがって、上記の問題は、本発明により、Kunkelの突然変異誘発方法(Kunkel法)を用いた小型RNA/DNA発現(又はコード化)ベクターを生成する方法又は小型RNA/DNAコード配列をベクターに導入する方法によって解決される。したがって、好ましい態様は、Kunkel法又はKunkel突然変異誘発を用いて小型RNA/DNA配列をベクターに導入する方法に関する。本発明におけるKunkel法又はKunkel突然変異誘発は、以下の手順を指す:突然変異させるDNA断片をファージミド(M13mp18/19等の任意のf1 ori含有ベクター)に挿入した後、dUTPアーゼ(dut)及びウラシルデグリコシダーゼ(deglycosidase)(ung)の2つの酵素が欠損した大腸菌(E. coli)株に形質転換する。どちらの酵素も細菌染色体をdCTPからdUTPへの自然脱アミノ化による突然変異から保護するDNA修復経路の一部である。dUTPアーゼ欠損は、dUTPの分解を妨げ、細胞において高レベルのdUTPをもたらす。ウラシルデグリコシダーゼ欠損は、新たに合成されたDNAからのウラシルの除去を妨げる。したがって、二重変異体大腸菌がファージDNAを複製する際に、その酵素機構がdUTPをdTTPの代わりに誤って取り込み、幾つかのウラシルを含有する一本鎖DNA(ssUDNA)が生じる可能性がある。ssUDNAを培地中に放出されるバクテリオファージから抽出した後、突然変異誘発の鋳型として用いる。ヌクレオチド配列中に所望の突然変異又は変化を有するオリゴヌクレオチドがプライマー伸長に用いられる。形成されるヘテロ二本鎖DNAは、dUTPを含有する1本の親非突然変異鎖と、dTTPを含有する突然変異鎖とからなる。次いで、このDNAを、野生型dut及びung遺伝子を保有する大腸菌株に形質転換する。ここで、ウラシルを含有する親DNA鎖が分解されるため、生じるDNAのほぼ全てが突然変異鎖からなる。本発明の方法は、標的ゲノム編集のためにガイドRNA配列をゲノム編集ベクターに導入するのに特に好適である。
【0009】
本発明における「Kunkel法」は、一本鎖ウラシル化(uracilated)DNA、好ましくは環状一本鎖ウラシル化DNAを鋳型として用いた突然変異プライマーによる増幅を含む方法である。「ウラシル化」は、ヌクレオチド中に1つ以上のウラシル塩基を含有する任意のDNA分子を指すものとする。
【0010】
本発明の好ましい一実施の形態では、上記方法は、共有結合閉環状(ccc)DNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを生成する方法であって、
(a)少なくとも1つのウラシル塩基及び/又はDNA/RNAヌクレアーゼ標的配列を含む一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を準備する工程であって、該ssファージミドベクター構築物が、(i)RNA/DNAプロモーターと、空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列とを含む少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットと、(ii)ファージORI等の一本鎖DNAの少なくとも1つの複製起点(ORI)、特にf1起点とを含む、工程と、
(b)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーを準備する工程であって、該突然変異誘発性DNAプライマーが、3'→5'方向に以下の構造:第1の相同性領域、発現させる小型RNA/DNAをコードする標的配列領域、及び第2の相同性領域を有し、上記第1の相同性領域が、5'側で上記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは上記小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能であり、上記第2の相同性領域が、3'側で上記空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは上記小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接する上記ssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能である、工程と、
(c)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーを上記ssファージミドベクター構築物にアニーリングし、共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAを増幅する工程と、
(d)上記cccヘテロ二本鎖dsDNA中のウラシル含有鎖を非ウラシル含有相補的DNA鎖で置き換え、cccDNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを得る工程と、
を含む、方法である。
【0011】
本明細書において「ファージミド」という用語は、プラスミドに変換されたファージゲノムを指す。
【0012】
好ましい一実施の形態では、一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物は、その少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセット内に制限酵素認識部位(制限部位)を付加的に含む。制限部位は、一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物において、突然変異誘発性DNAプライマーの第1の相同性領域に相補的な領域と、突然変異誘発性プライマーの第2の相同性領域に相補的な領域との間に位置するのが好ましい。このため、制限部位は、3Cs合成において複製されない位置にあり、したがってウラシル含有ssファージミドベクター構築物においてのみ存在する。この実施の形態では、残留ウラシル化野生型DNAの付加的な消化が可能である。したがって、方法は、一実施の形態では工程(c)と工程(d)との間に、制限部位での二本鎖切断の選択的導入が可能な制限酵素で3Cs DNAを酵素的に消化することを含む(c')の工程を更に含む。この実施の形態においては、ゲノム中に殆ど見られない認識部位を有する制限部位及びそれらの対応酵素が用いられる。例示的な制限酵素及びそれらの標的部位はI-PpoI、SmaI、HpaI、I-SceI又はI-CeuIである。鋳型ウラシル化(uracilated)ss DNAに生じない任意の制限認識部位を用いることができる。制限エンドヌクレアーゼの使用に加えて、以下の酵素のいずれか1つを、残留野生型プラスミドを除去するために用いることもできる:I-CeuI、I-PpoI、I-SceI(全てのホーミングエンドヌクレアーゼが好ましい)、全ての非ホーミングエンドヌクレアーゼ、例えばTALEN、ZFN、CRISPR/Cas及び同様の酵素の遺伝子摂動標的配列の使用、残留野生型プラスミドの配列の増幅を抑制することを目的とした、原核生物及び/又は真核生物の毒性ヌクレオチド配列の使用、並びに相同性及び/又は組換えに基づくクローニング配列の使用。
【0013】
好ましい一実施の形態では、本発明は、少なくとも2個の小型RNA/DNA発現カセット、より好ましくは少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個及びそれ以上の本明細書で先に記載した小型RNA/DNA発現カセットを含む、先に記載した一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を提供する。「多重」と称される、この実施の形態では、ベクター分子は、同時に発現される多数の小型RNA/DNAを生成することが可能である。
【0014】
付加的な一実施の形態では、少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットは、少なくとも2つ以上の小型RNA/DNA発現カセットである(gRNA又は他の小型RNA/DNAの多重発現)。他の好ましい実施の形態では、2つ以上の小型RNA/DNA発現カセット内に用いられる制限部位は同一、同様であるか又は異なる。
【0015】
本明細書で使用される「共有結合閉環状DNA」又は「cccDNA」という用語は、切れ目を含むか、又は遊離3'末端若しくは5'末端を含む真核生物染色体DNA又は細菌染色体DNA等の直鎖状DNA分子とは対照的に環状形態をとるDNA分子を指す。さらに、上記のDNA分子の環状構造は、共有結合で閉じている。cccDNAは当該技術分野で既知であり、例えば、KG. Hardy (ed)"Plasmids, a practical approach", IRL Press Oxford U.K., WashingtonD.C., U.S.A., 1987に更に記載されている。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ベクターライブラリー」という用語は、RNA/DNA発現カセットに挿入される、発現される複数の固有小型RNA/DNA配列(例えばsiRNA、shRNA、gRNA又は同様の配列)を含む複数のベクター(又はプラスミド)を指す。好ましい実施の形態では、ベクターライブラリーは、少なくとも101個又は102個、より好ましくは少なくとも103個、更により好ましくは少なくとも104個、また更により好ましくは少なくとも105個、106個、107個、108個又は109個の固有ベクター配列(各々のベクター又はプラスミドに含有されるRNA/DNA配列を意味する)を含む。
【0017】
本発明において、小型RNAはsiRNA、shRNA、抗miR、ガイドRNA(gRNA)又はガイドDNA(gDNA)を含むことが理解されるものとする。小型RNAがgRNAであり、ssファージミドベクター構築物が、限定されるものではないが、任意にプロモーターに操作可能に連結したゲノム編集ヌクレアーゼ発現配列の存在を更に含むことが最も好ましい。
【0018】
本発明は、一部の好ましい実施の形態では、小型RNA/DNA発現ベクターのより高次のライブラリーを生成する新たな方法を提供しようとするものである。本発明において、「より高次の」という用語は、ライブラリーがベクターによって発現される小型RNA/DNAの配列が異なる複数種のベクターを含むことを意味するものとする。本方法では、かかる配列を選択ベクターに導入するために突然変異誘発性DNAプライマーを用いる。したがって、一部の実施の形態では、上記少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーは少なくとも2種の突然変異誘発性DNAプライマー、好ましくは少なくとも3種、より好ましくは少なくとも4種、5種、6種、10種、50種、100種、1000種、104種、105種、106種、107種、108種、109種、1010種、1011種又は1012種の突然変異誘発性DNAプライマーであり、cccDNAの各種が選択小型RNA/DNAコード配列内に異なる配列を有する。
【0019】
本発明の一部の実施の形態では、多数の突然変異誘発性DNAプライマー配列種が、選択される小型RNA/DNAコード配列(本発明の突然変異誘発性DNAプライマーに含有される)に少なくとも1つ以上のIUPACコード化塩基(例えば、縮重塩基)を導入することによって提供される。「縮重塩基」又は「縮重位置」は、配列の名称中では「n」と称される。本発明において、縮重塩基はヌクレオチド塩基のタイプではなく、本質的に同じ配列を有する核酸の調製物において、該配列中の位置「n」が、この位置での複数種類の塩基の可能性を与える可能性を表す。したがって、少なくとも1つの「n」位置を含有する配列を有する核酸の調製物は、アデニン、グアニン、チミン又はシトシンのいずれかを(等確率で)位置nに有する核酸の混合物を表す。例えば、オリゴヌクレオチドを合成する場合、1つ以上の位置での反応は、ドナーヌクレオチドとして同量のアデニン、グアニン、チミン及びシトシンを含有するヌクレオチドを用いて行うことができる。かかる反応では、これらのヌクレオチドは各々、成長オリゴヌクレオチド鎖に付加される等しい機会を有し、したがって位置「n」に異なる塩基を有する分子の混合物が生じることが可能になる。1つの位置に2つ又は3つの異なる塩基のみが導入されることが意図される場合、同じ原理を用いることができる。本開示では、以下の名称が用いられる:R=G、A(プリン)、Y=T、C(ピリミジン)、K=G、T(ケト)、M=A、C(アミノ)、B=G、T、C(A以外の全て)、D=G、A、T(C以外の全て)、H=A、C、T(G以外の全て)、V=G、C、A(T以外の全て)及びN=A、G、C、T(任意)。
【0020】
本発明の他の実施の形態では、小型RNA/DNAコード配列は、少なくとも10ヌクレオチド長~200ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長~100ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長~50ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、最も好ましくは17ヌクレオチド長~23ヌクレオチド長、最も好ましくは約20ヌクレオチド長である。配列の長さは、発現される小型RNA/DNAのタイプに応じて当業者が調整することができる。ガイドRNA及びshRNA又はsiRNAの好ましい長さは異なるが、当業者に既知である。
【0021】
本発明の突然変異誘発性DNAプライマーは、プライマーと本発明の反応に用いられるss環状ウラシル化ベクター分子とをアニールするのに用いられる隣接相同性領域を含む。したがって、隣接領域は、プライマー伸長に好適な条件での鋳型への突然変異誘発性DNAプライマーのアニーリングを可能にする長さであるのが好ましい。3'又は5'相同性領域の長さは、同一であっても又は異なっていてもよい。一部の実施の形態では、相同性領域は各々、少なくとも5ヌクレオチド、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、より好ましくは5ヌクレオチド~40ヌクレオチド、最も好ましくは10ヌクレオチド~30ヌクレオチド、又は10ヌクレオチド~20ヌクレオチド、最も好ましくは13ヌクレオチド~18ヌクレオチド、更により好ましくは約15ヌクレオチドの長さを有する。5ヌクレオチド~40ヌクレオチドが最も好ましい。本発明の一部の他の実施の形態では、突然変異誘発性DNAプライマーは、配列番号2~12のいずれかに示される配列を有する。
【0022】
本発明の方法の一部の実施の形態では、上記一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を、以下の付加的な方法の工程:
(aa)同じ配列のdsDNAファージミドベクターを、dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくはCJ236株において増幅し、ウラシル含有ヘテロ二本鎖dsDNAファージミドベクターを得ることと、
(bb)ウラシル含有ssDNAを含むファージ粒子を生成することと、
(cc)上記ファージ粒子から、上記ウラシル含有ssDNAを精製して、少なくとも1つのウラシル塩基を含むssファージミドベクター構築物を得ることと、
によって準備する。
【0023】
本発明による好ましい別の実施の形態では、上記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくは、CJ236株はヘルパーファージミドを含むか、又は工程(bb)において、上記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくはCJ236株にヘルパーファージを感染させ、上記ヘルパーファージミド又はヘルパーファージが好ましくはM13KO7である。
【0024】
一部の実施の形態では、本発明の方法の工程(d)を、上記cccヘテロ二本鎖dsDNAを、XL1又はSS320等の機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌において形質転換及び増幅することによって行い、上記cccDNAを得ることが好ましい。
【0025】
一部の実施の形態では、本発明の方法は、ゲノム編集に好適なベクターの生成に向いている。かかるゲノム編集ベクターは通常、ゲノム編集複合体をゲノム中の標的部位へとガイドする選択gRNA配列の導入のための部位を含むガイドRNA発現カセットの存在を特徴とする。そのため、gRNA発現カセットは、標的化のためのgRNA部分と、ゲノム編集ヌクレアーゼ(Cas)への結合のためのgRNAセグメントとの両方を含む。gRNA発現カセットは通常、ヒト若しくはマウスU6プロモーター、又はヒト7SKプロモーター、又はマウスH1プロモーター等のRNAプロモーターと操作可能に連結(転写調節)している。しかしながら、他のRNAプロモーターが当業者に既知である。ゲノム編集ベクターは通常、Cas9等の発現可能なゲノム編集ヌクレアーゼを更に含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA」という用語は概して、Casタンパク質に結合し、標的ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)内の特定の位置へのCasタンパク質の標的化を助けることができるRNA配列又は分子(又は集合的にRNA分子の群)を指す。ガイドRNAは、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントを含み得る。本明細書で使用される場合、「crRNA」又は「crRNAセグメント」という用語は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列、ステム配列及び任意に5'オーバーハング配列を含むRNA分子又はその一部分を指す。本明細書で使用される場合、「tracrRNA」又は「tracrRNAセグメント」という用語は、タンパク質結合セグメント(例えば、タンパク質結合セグメントは、Cas9等のCRISPR関連タンパク質と相互作用することが可能である)を含むRNA分子又はその一部分を指す。「ガイドRNA」という用語は、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントが同じRNA分子中に位置する単一ガイドRNA(sgRNA)を包含する。「ガイドRNA」という用語は集合的に、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントが別個のRNA分子中に位置する2つ以上のRNA分子の群も包含する。
【0027】
「スキャフォールド」という用語は、天然の生物学的種間で実質的に同一であるか又は高度に保存された配列を含むガイドRNA分子の部分を指す。スキャフォールドは、天然のcrRNA及びtracrRNAにおいて保存されていない配列を含む任意の非天然部分を除く、tracrRNAセグメントとcrRNAセグメントの5'末端又は5'末端近くのポリヌクレオチド標的化ガイド配列以外のcrRNAセグメントの部分とを含む。
【0028】
本発明のゲノム編集ベクターはf1バクテリオファージ複製起点、RNAポリメラーゼプロモーター、CRISPR/CasシステムのガイドRNAスキャフォールド、RNAガイドヌクレアーゼ、又はその任意の他の好適な代替物をコードし得る。好ましい構築物は、レンチウイルスベースの構築物である。本発明において使用することができるか、又は他のゲノム編集ベクターの開発のための青写真となり得る当該技術分野で既知の標準CRISPR/CasベクターはpLentiCRISPR、pLentiCRISPRv2又はpLentiGuideとして知られるベクターである。
【0029】
本発明の一部の実施の形態では、工程(c)における共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAの増幅は、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、例えばT7 DNAポリメラーゼを、任意にT4 DNAリガーゼ等のDNAリガーゼ又は当業者に既知のその代替物と共に用いることによって行われる。
【0030】
別の態様では、本発明の目的は、本明細書に開示される本発明の方法に従って生成されるベクター又はベクターライブラリーを提供することによって解決される。本発明に従って作製されるベクターライブラリーは少なくとも106個、より好ましくは107個、108個、最も好ましくは109個の本明細書に記載の異なる種のベクター配列を含むことを特徴とするのが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の方法に従って作製されるベクターライブラリーの使用を含む、細胞表現型のゲノムワイドスクリーニングの方法が提供される。
【0032】
本発明のスクリーニング方法は、本発明のベクターライブラリー、特にゲノムワイドライブラリーを標的細胞の集団に導入する工程と、任意の対象のアッセイを用いて形質導入細胞の表現型を決定する工程とを含み得る。対象の表現型を有する任意の細胞を、次の工程において形質導入gRNA又はRNAiの同一性について分析し、表現型の生成に関与する遺伝子又はゲノム領域を特定することができる。例えば、細胞を細胞死誘導剤と接触させてもよく、生存細胞を形質導入3Csベクターについて分析し、細胞死誘導剤に対する耐性に関与する遺伝的摂動を特定する。
【0033】
本発明の別の態様では、本明細書で上記に記載の方法を行うためのキットであって、
(a)
(i)gRNA/gDNAプロモーター、空のgRNA/gDNA標的化配列導入部位又はgRNA/gDNA標的化配列を含む少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)/ガイドDNA(gDNA)発現カセットと、
(ii)少なくとも1つのファージ複製起点と、
(iii)プロモーター配列の制御下のゲノム編集ヌクレアーゼをコードする配列を含む少なくとも1つの発現カセットと、
を含むファージミドベクター構築物と、
(b)DNAポリメラーゼ、任意にDNAリガーゼと、
(c)機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌細胞の調製物と、
(d)任意に本発明のキットを使用説明書と、
を含む、キットが提供される。
【0034】
キットは、一部の実施の形態では、本明細書で上記に記載及び規定される突然変異誘発性DNAプライマーを少なくとも1つ以上含んでいてもよい。
【0035】
一部の実施の形態では、DNAポリメラーゼはT7 DNAポリメラーゼであり、及び/又はDNAリガーゼはT4 DNAリガーゼ、若しくはその任意の一般に知られる代替物である。
【0036】
本発明の他の実施の形態では、本発明のファージミドベクター構築物は、少なくとも1つのウラシル塩基を含む一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物である。
【0037】
更なる実施の形態では、ファージミドベクターはdsDNAベクターである。
【0038】
本発明のキットは、一部の実施の形態では、dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌細胞、好ましくはCJ236株の調製物、サンプル又は培養物を含み得る。かかる株は、関連技術において一般に知られている。
【0039】
本発明のキットに関する他の実施の形態では、細菌細胞はヘルパーファージミド、好ましくはM13KO7を更に含む/含有する。
【0040】
本発明の他の実施の形態では、本発明によるキットは、ヘルパーファージミド又はヘルパーファージの調製物を更に含み、ここでヘルパーファージミド又はヘルパーファージは、M13KO7粒子であるのが好ましい。
【0041】
本発明のまた別の態様は、本明細書に記載の方法を用いて作製されるベクターライブラリーに関する。本発明の別の代替的又は付加的な態様は、少なくとも101個、102個、より好ましくは少なくとも103個、更により好ましくは少なくとも104個、また更により好ましくは少なくとも105個、106個、107個、108個又は109個の固有ベクター配列(各々のベクター又はプラスミドに含有されるRNA/DNA配列を意味する)を含むベクターライブラリーである。したがって、本発明の好ましい実施の形態は、複数の固有ベクター配列を含むベクターライブラリーに関し、ここでライブラリー内の各ベクターのベクター骨格は、CRISPR/Cas9ベクター又はその機能的代替物であり、ライブラリー内の各々の固有ベクター配列が固有gRNA発現配列を含む。かかるライブラリー内の固有gRNA配列の数は、好ましくは少なくとも101個又は102個、より好ましくは少なくとも103個、更により好ましくは少なくとも104個、また更により好ましくは少なくとも105個、106個、107個、108個又は109個である。より好ましくは、ベクターライブラリーは、ライブラリー内の固有gRNA配列の変動を有し、所与のゲノム中の全配列をゲノム編集により標的とすることができ、したがって真にゲノムワイドなgRNA発現ライブラリーである。代替的な実施の形態は、siRNA(又は概してRNAi)発現ベクター骨格に基づく本発明のベクターライブラリーに関する。
【0042】
さらに、本発明は以下の好ましい項目に関する:
【0043】
項目1:共有結合閉環状(ccc)DNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを生成する方法であって、
(a)少なくとも1つのウラシル塩基を含む一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を準備する工程であって、該ssファージミドベクター構築物が、(i)RNA/DNAプロモーターと、空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、及び/又はDNA/RNAヌクレアーゼ標的配列、又はその部分配列とを含む少なくとも1つの小型RNA/DNA発現カセットと、(ii)ファージORI等の一本鎖DNAの少なくとも1つの複製起点(ORI)、特にf1起点とを含む、工程と、
(b)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーを準備する工程であって、該突然変異誘発性DNAプライマーが、3'→5'方向に以下の構造:第1の相同性領域、発現させる小型RNA/DNAをコードする標的配列領域、及び第2の相同性領域を有し、第1の相同性領域が、5'側で空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能であり、第2の相同性領域が、3'側で空の標的小型RNA/DNA配列導入部位若しくは小型RNA/DNAコード配列、又はその部分配列に隣接するssファージミドベクター構築物の配列に相補的であるか又はアニーリング可能である、工程と、
(c)少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーをssファージミドベクター構築物にアニーリングし、そこから共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAを増幅する工程と、
(d)cccヘテロ二本鎖dsDNA中のウラシル含有鎖を非ウラシル含有相補的DNA鎖で置き換え、cccDNAベースの小型RNA/DNA発現ベクター又はベクターライブラリーを得る工程と、
を含む、方法。
【0044】
項目2. 上記小型RNAがsiRNA、shRNA、抗miR、ガイドRNA(gRNA)若しくはガイドDNA(gDNA)、又は任意の他のRNA/DNAコード化遺伝子摂動配列である、項目1に記載の方法。
【0045】
項目3. 上記小型RNAがgRNAであり、上記ssファージミドベクター構築物が、任意にプロモーター(安定又は誘導性)に操作可能に連結したゲノム編集ヌクレアーゼ発現配列を更に含む、項目2に記載の方法。
【0046】
項目4. 上記少なくとも1種の突然変異誘発性DNAプライマーが少なくとも2種の突然変異誘発性DNAプライマー、好ましくは少なくとも3種、より好ましくは少なくとも4種、5種、6種、10種、50種、100種、1000種、104種、105種、106種、107種、108種、109種、1010種、1011種又は1012種の突然変異誘発性DNAプライマーであり、cccDNAの各種が選択小型RNAコード配列内に異なる配列を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
項目5. 多数の突然変異誘発性DNAプライマー種を、上記選択小型RNAコード配列中に少なくとも1つ以上の縮重塩基(N)を導入することによって準備する、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
項目6. 小型RNAコード配列が少なくとも10ヌクレオチド長~100ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長~50ヌクレオチド長、より好ましくは10ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、最も好ましくは17ヌクレオチド長~23ヌクレオチド長、最も好ましくは約20ヌクレオチド長である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
項目7. 上記相同性領域が各々、少なくとも5ヌクレオチド、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、より好ましくは5ヌクレオチド~40ヌクレオチド、最も好ましくは10ヌクレオチド~30ヌクレオチド又は10ヌクレオチド~20ヌクレオチド、最も好ましくは13ヌクレオチド~18ヌクレオチド、更により好ましくは約15ヌクレオチドの長さを有する、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0050】
項目8. 上記突然変異誘発性DNAプライマーが、配列番号1~12のいずれかに従う配列を有する、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
項目9. 上記一本鎖(ss)ファージミドベクター構築物を、
(aa)同じ配列のdsDNAファージミドベクターを、dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくはCJ236株において増幅し、ウラシル含有ヘテロ二本鎖dsDNAファージミドベクターを得ることと、
(bb)ウラシル含有ssDNAを含むファージ粒子を生成することと、
(cc)上記ファージ粒子から、上記ウラシル含有ssDNAを精製して、少なくとも1つのウラシル塩基を含むssファージミドベクター構築物を得ることと、
によって準備する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
項目10. 上記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくはCJ236株がヘルパーファージミドを含むか、又は工程(bb)において、上記dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ、及び/又はそれらのホモログ、パラログ若しくはオルソログが欠損した細菌株、好ましくはCJ236株にヘルパーファージを感染させ、上記ヘルパーファージミド又はヘルパーファージが好ましくはM13KO7である、項目7に記載の方法。
【0053】
項目11. 工程(d)を、上記cccヘテロ二本鎖dsDNAを、XL1又はSS320等の機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌において形質転換及び増幅することによって行い、上記cccDNAを得る、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
項目12. 工程(c)における共有結合閉環状(ccc)ヘテロ二本鎖dsDNAの増幅を、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、例えばT7 DNAポリメラーゼを、任意にT4 DNAリガーゼ等のDNAリガーゼと併せて用いることによって行う、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
項目13. 項目1~12のいずれか一項に記載の方法を行うためのキットであって、
(a)
(i)gRNA/gDNAプロモーター、空のgRNA/gDNA標的化配列導入部位又はgRNA/gDNA標的化配列を含む少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)/ガイドDNA(gDNA)発現カセットと、
(ii)少なくとも1つのファージ複製起点と、
(iii)プロモーター配列の制御下のゲノム編集ヌクレアーゼをコードする配列を含む少なくとも1つの発現カセットと、
を含むファージミドベクター構築物と、
(b)DNAポリメラーゼ、任意にDNAリガーゼと、
(c)機能的dUTPアーゼ及び/又はウラシルグリコシラーゼ活性を有する細菌細胞の調製物と、
(d)使用説明書と、
を含む、キット。
【0056】
項目14. 項目1~12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるベクターライブラリー。
【0057】
項目15. 少なくとも107個、好ましくは少なくとも109個の固有ベクター配列を含むベクターライブラリーであって、該ライブラリー内の各固有ベクター配列のベクター骨格が、発現可能なCRISPR/Cas9酵素とgRNA発現カセットとを含むベクター等のゲノム編集ベクターである、ベクターライブラリー。
【0058】
ここで、添付の図面及び配列を参照して、本発明について下記実施例で更に記載するが、これらに限定されない。本発明の目的で、本明細書中に引用する参照文献は全て、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】共有結合閉環状合成(3Cs)dU-dsDNA生成の基本原理を示す図である。A)3Cs-gRNA合成の必須の工程を示す図。B)従来のCRISPR/CasプラスミドをdU-ssDNAへと変換し、ゲル電気泳動によって分解することができる。C)eGFP標的化3Cs-gRNAライブラリーの次世代シークエンシング(NGS)から、3Cs反応/試薬に配列バイアスがないことが明らかである。D)NGS(eGFP標的化3Cs-gRNAライブラリー)データの統計分析から、変動係数が33.18%と特定され、配列バイアスがないことが確認される。
図2】eGFP標的化3Cs-gRNAの生成を示す図である。A)dU-3Cs-dsDNAの生成に最適な3Csプライマー相同性の決定。B)6つのeGFP標的化gRNA配列を用いた3Cs反応。C)増幅及びクローンシークエンシング後の突然変異配列と野生型配列との比率。D)突然変異gRNAのシークエンスロゴ及びgRNA分布。E)CJ236培養培地中に付加的なウリジンを用いずに及び用いて分析した場合の突然変異配列と野生型配列との比率。
図3】3Cs-gRNAが細胞内で機能的であることを示す図である。A)eGFP標的化3Cs-gRNAによる細胞形質導入後の緑色蛍光シグナルのレンチウイルス用量に依存的な低減。B)T7エンドヌクレアーゼIサーベイヤーアッセイ(surveyor assay)から、安定したeGFP遺伝子座のゲノムDNA編集が実証される(wt:野生型eGFP遺伝子座、*:非特異的PCR産物)。
図4】ヒトSpCas9標的化部位の分布を示す図である。A、B)ヒト染色体1本当たりのSpCas9 gRNA配列の総数及び固有の数。C)ヌクレオチド(nts)単位での平均染色体SpCas9 PAM配列の距離。D)全ヒトgRNAに対するパーセンテージとしてのビニングgRNA発生率。E)gRNA発生率及びヒトゲノム内でx回生じるgRNAのパレート分布。
図5】最適化SpCas9 gRNAの真にゲノムワイドな3Cs-gRNAライブラリーを示す図である。A)最適化高活性gRNAのための変性3Cs-gRNAプライマー設計を示すスキーム。B)ゲル電気泳動によって分解した、最適化変性3Csプライマーを用いた3Cs反応。C)増幅及びクローンシークエンシング後の突然変異配列と野生型配列との比率。D)ヒートマップ形式で示した3Cs-gRNAライブラリーシークエンシングの結果。gRNA位置1つ当たりの個々のヌクレオチドのパーセンテージを色分けする。
図6】最適化3Cs-gRNAライブラリーを用いたドキソルビシン耐性の特定を示す図である。A)レンチウイルス粒子で形質導入し(MOI=1)、3週間にわたって1 μMドキソルビシンで選択したhTERT-RPE1細胞の使用を示す実験スキーム。B)ドキソルビシン耐性を誘導するgRNA及び注釈付きヒトゲノムDNA内のそれらの位置のNGS及びバイオインフォマティクスによる特定。C)CYSLTR2遺伝子は、2つの化学阻害剤が市販されている再現可能なタンパク質コードヒットである。両方の阻害剤を漸増濃度のドキソルビシンに対して用量設定し、ドキソルビシンに対する耐性を誘導した。
図7】多重化gRNAを含有する共有結合閉環状合成(3Cs)dU-dsDNA試薬を生成する一般原理を示す図である。A)多重化3Cs-gRNA試薬を生成する必須の工程を示す図。B)多重化3Cs-gRNA試薬の生成に用いたeGFP及びmCherry遺伝子標的化gRNAの位置、品質及び量。C)ゲル電気泳動によって分解した、成功した3Cs反応の典型的な3バンドパターン(eGFP、mCherry及びeGFP+mCherry標的化3Cs-gRNAライブラリーの生成)。D)3Cs合成生成物の電気穿孔後の第1のDNA精製の品質管理。精製DNAをI-CeuI、I-SceI又は両方の組合せで酵素的に消化して、野生型(中にgRNA、酵素切断部位のない)プラスミドのレミニセント(reminiscents)を特定する。次いで、酵素的に消化したDNAを電気穿孔して、野生型レミニセントを除去する。E)第2のDNA増幅の品質管理から、野生型レミニセントがないことが明らかである。F)多重化3Cs-gRNAライブラリーのサンガーシークエンシングから、3Cs反応中に設けられる5'及び3'相同性領域に依存したgRNA配列の選択的な組入れが特定される。G)多重化3Cs-gRNA試薬は、GFP/mCherry陽性細胞に形質導入されるレンチウイルス3Cs-gRNAライブラリーに応じたGFP及び/又はmCherryの枯渇によって実証されるように、ヒト細胞内で完全に機能的である。
図8】3Csが極めて多用途であり、shRNAコード化試薬の生成を可能にすることを示す図である。A)従来のレンチウイルスshRNAコードプラスミド(pLKO.1)は、一本鎖プラスミドDNAへと効率的に変換し(図1及び図4に示される)、ゲル電気泳動によって分解することができる。B)3Cs-shRNAプライマーの設計原理を示す。C)ゲル電気泳動によって分解した、成功した3Cs反応の典型的な3バンドパターン(eGFP標的化3Cs-shRNAの生成)。D)3Cs-shRNAに由来する細菌コロニーのサンガーシークエンシングによりプラスミドが生成し、eGFP標的化shRNA配列の組入れの成功が確認される(赤色で強調表示される)。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0060】
実施例1:共有結合閉環状合成突然変異CRISPR/Cas9プラスミド
従来の部位特異的突然変異誘発は、大きなレトロウイルス要素含有プラスミドに対しては効率的に作用しないが、T7 DNAポリメラーゼ及びT4 DNAリガーゼに媒介される、ssDNAに基づく5'オリゴヌクレオチド伸長が高品質かつバイアスのないgRNAライブラリーを生成する効率的なアプローチであることが予想された(図1A)。この目的で、dut-/ung-のF因子含有K12大腸菌(Escherichia coli)CJ236細菌を、最も広く用いられているf1起点(f1-ori)を含有するCRISPR/CasプラスミドであるpLentiGuide及びpLentiCRISPRv2で形質転換した。従来のK12大腸菌株とは対照的に、CJ236細菌は、酵素dUTPアーゼの欠如(dut-)及びウラシルグリコシラーゼの欠如(ung-)のためにゲノムDNA及びプラスミドDNA中のデオキシウリジンの存在に寛容性を示す。その後のM13KO7バクテリオファージでの形質転換CJ236の重複感染により、pLentiGuide及びpLentiCRISPRv2のデオキシウリジン含有ssDNA(dU-ssDNA)鋳型をパッケージングするバクテリオファージ粒子の作製が可能となる。次の工程では、dU-ssDNAを沈殿バクテリオファージ粒子から精製する(図1B)。概して、このアプローチは、f1-oriをコードする任意のプラスミドに適用することができる。
【0061】
ヘテロ二本鎖共有結合閉環状合成dsDNA(3Cs-dsDNA)をdU-ssDNA鋳型から首尾よく生成するために、最適なプライマー/相同性長さを10ヌクレオチド、13ヌクレオチド、15ヌクレオチド及び18ヌクレオチド(nts)の5'及び3'相同性領域を2時間のin vitro 3Cs反応において比較することによって試験した(図2A)。dU-CCC-dsDNA反応生成物をゲル電気泳動によって分解し、ヘテロ二本鎖dsDNA反応の典型的な3バンドパターンを特定した(33、34)。正確に伸長した、切れ目の入った及び鎖置換された3Cs生成物の最適な比率は、15 ntsのプライマー相同性領域(図2A)で達成されたため、この長さをその後の全ての反応に用いた。
【0062】
次に、細胞における高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)遺伝子を標的とする活性gRNAの生成についてこのプロトコルを試験した。6つのgRNA配列を、ルールセット2(RS2)アルゴリズムを用いて設計し、3Cs反応を用いてU6プロモーターの制御下の非ヒト標的化(NHT)制御配列、続いてSpCas9への結合に関与するgRNAスキャフォールドDNA配列を含有するpLentiGuide及びpLentiCRISPRv2にクローニングした(図2B)(32)。得られるヘテロ二本鎖dU-CCC-dsDNAを用いてXL1細菌を形質転換し、正確に突然変異した配列と野生型(NHT)含有配列との比率を決定した。20個のクローンを個別にシークエンシングし、81%のpLentiGuide及び82%のplentiCRISPRv2がeGFP標的化gRNAで修飾されたと決定した(図2C図2D)。M13KO7培養培地へのウリジンの添加により野生型率が約12%まで顕著に低減し、非修飾プラスミドの発生がdU-ssDNA鋳型へのdUの不十分な組込みによる可能性が最も高いことが示された(図2E)。重要なことには、20個の個々のクローンしかシークエンシングしなかったにも関わらず、6つ全てのeGFP標的化gRNA配列の幾つかのコピーを特定することができ(図2D)、本発明者らの極めて効率的なプロトコルがライブラリー構築に好適であることが示唆された。
【0063】
細胞内で本発明者らのeGFP標的化gRNA構築物の機能性を試験するために、感染性レンチウイルス粒子を生成し、eGFP陽性ヒトテロメラーゼ不死化網膜色素上皮(RPE1)細胞の形質導入に使用した。7日後に、あらゆる選択圧を排除し、eGFP陽性及び陰性細胞の存在をフローサイトメトリーによって分析した。レンチウイルス3Cs-gRNA構築物を用いた緑色蛍光の低減は非常に強力であったが、対照プラスミドは、eGFP蛍光に対して影響を有しなかった(図3A)。興味深いことに、用量依存的な蛍光の低減が観察され、RPE1細胞のレンチウイルス形質導入が、従来法で生成したレンチウイルスCRISPR/Cas粒子を用いる場合と同様に効率的であることが示された(図3A)。用量依存的な緑色蛍光の低減は、T7サーベイヤーアッセイによって実証される3Cs-gRNA構築物によるゲノムDNA編集の直接的な結果であった(図3B)。したがって、共有結合閉環状合成CRISPR/Cas gRNAは、本発明者らの新たに確立した3Cアプローチを用いて迅速に生成することができ、細胞内で完全に機能的である。
【0064】
残留ウラシル化野生型プラスミドを更に低減するために、I-SceIのホーミング酵素制限部位をgRNAカセットに挿入することによってpLentiGuide及びplentiCRISPRv2を修飾し、eGFP標的化オリゴヌクレオチドを用いた3Cs合成を繰り返した。I-SceI切断部位の存在は、3Cs反応後の非修飾野生型プラスミドの消化及び除去を容易にし、野生型プラスミドの発生率を本発明者らのサンガーシークエンシング検出限界未満まで低減した。eGFP 3Cs-gRNAライブラリー(pLentiCRISPRv2骨格)の次世代シークエンシング(NGS)から、1%未満の野生型率及び明らかな配列バイアスのない6つ全てのgRNAの等しい存在度(presence)が明らかになった(変動係数(CV)は33.18%である)(図1c及び図1d)。
【0065】
実施例2:極めて複雑な3Cs-gRNAライブラリーの生成
殆どのヒトゲノムワイドSpCas9 gRNAライブラリーは、全ヒトゲノム配列のおよそ1.5%にすぎないコードゲノムを標的とする。したがって、本発明の方法を用いて任意の複雑性のgRNAライブラリーだけでなく、コード領域に限定されない真にゲノムワイドな規模を含む、siRNA又は他の小型核酸ライブラリーも生成することができると仮定した。この目的で、本発明者らは、最初の段階で全ての推定ヒトSpCas9標的部位を特定し、個々の染色体間でのそれらの分布を分析した。分析から、染色体サイズ及びPAM発生率が強く相関することが実証され、9ヌクレオチドの明らかな距離中央値(図4C)を有するSpCas9標的部位のランダム分布(図4A図4B)が示唆される。この結果は、ランダムヌクレオチド配列における平均PAM距離がおよそ8ヌクレオチドであるという観察結果と一致する。本発明者らは、合計248985973(2.5×108)個の独立したgRNA配列を特定したが、そのうち98%がヒトゲノムに固有である(図4D)。発生回数及びヒトゲノムにおいてn回生じるgRNAの数は、直接パレート分布又はべき法則に従い(図4E)、全ヒトSpCas9標的部位の大部分が実際に固有であり、確立されたCRISPR/Cas法によって高いオンターゲット活性で標的とすることができることが実証される。
【0066】
SpCas9標的部位の選好は以前にマッピングされており、3'ピリジン(pyridine)塩基について明らかな選好を示すが、チミジンヌクレオチドは好まれない(31、32)。本発明者らは、SpCas9ヌクレオチドの選好をIUPAC命名標準に従って単一オリゴヌクレオチド合成により生成した最適化20 nts長鎖オリゴヌクレオチド配列に転換した(図5A)。理論的には、この単一gRNA配列により、ヒトゲノム中の全ての可能なコード領域及び非コード領域を標的とする極めて機能的なSpCas9 gRNAライブラリーを生成することができる。本発明者らの確立した設計原理をgRNA標的化eGFPに用いることで、この真にゲノムワイドなgRNAライブラリーのin vitro合成を行った(図5B図2B)。SS320細菌をin vitro合成生成物で電気穿孔し、ライブラリー多様度を形質転換細菌の総数に基づいて決定した。2回の独立反応において、1.92×109の平均ライブラリー多様度が達成され、3.8×109個の固有のgRNAの組み合わせライブラリーが得られた。その結果として、新たに構築されたgRNAライブラリーは、現在利用可能な全てのライブラリーよりも4桁大きい。200個の個々のクローンのシークエンシングから、突然変異分布が縮重オリゴヌクレオチドの合成時に導入されるヌクレオチドバイアスと一致することが確認された(図5C図5D)。このため、本発明により、現在用いられている全ての現行のライブラリー設計とは桁外れの38億個の固有gRNA配列の多様度を有する最初の真にゲノムワイドなCRISPR/Cas gRNAライブラリーが生成した。結果として、この真にゲノムワイドなライブラリーは、ヒトゲノムのコード領域及び非コード領域の機能を詳細に分析するスクリーニングアプローチに使用することができる。
【0067】
本発明では、任意の規模及び多様度のライブラリーを作り出すために用いることができる遺伝子摂動ライブラリーを効率的に生成する新規の方法を提示する。今日のゲノムワイドライブラリーは個々の複雑性が異なるが、Brunello及びActivity-Optimized CRISPR KnockoutLibraryのそれぞれについて7.6×104~1.8×105の範囲にまたがる(29、32)。しかしながら、これらのライブラリーは高品質ではあるものの、主に従来のgRNAクローニング及び合成gRNA配列のPCR増幅によって引き起こされる、選択gRNAに対する数十倍~数百倍のバイアスを有する。本発明の革新的なアプローチでは、T7 DNAポリメラーゼをT4 DNAリガーゼと併せて用い、3Cs反応に用いられる異なるオリゴヌクレオチドの総数によってのみ限定される従来のCRISPR/CasプラスミドのssDNA鋳型にアニールしたオリゴヌクレオチドの5'伸長を媒介する。したがって、従来のクローニング戦略の欠点が回避される。
【0068】
本発明の方法は、数個の配列から極めて多様な配列のセットまでの合成規模を達成することができる。したがって、本発明では、例えば単一KO細胞株、中間サイズのライブラリー及びバイアスのないゲノムワイドライブラリーの生成のような種々の実験的設定に適用可能な方法が確立される。付加的には、最大数百個の配列の多様性について、本発明の方法は、アレイ形式及びプール形式を同時に生成し、実験計画を均一なアレイ画像ベースのスクリーンにまで拡大する。最も重要なことには、本発明の方法は、配列バイアスのない遺伝子摂動ライブラリーを生成し、したがって、全体的な実験規模及びコストが顕著に低減する。
【0069】
実施例3:3Csライブラリーを用いたドキソルビシン関連遺伝子のスクリーニング
細胞における機能性を実証するために、RPE1細胞を真にゲノムワイドな(TGW)ライブラリーで形質導入し、第一選択(first-in-line)化学療法剤であるドキソルビシンに対するコード及び非コード耐性機構を特定した。非摂動条件では、ドキソルビシンは、4日間でRPE1細胞生存性の着実かつ用量依存的な低減を誘導する。薬物から逃れる細胞を回避し、真陽性結果の比率を増大するために、1 μMのドキソルビシンをスクリーニング濃度として選択した。合計3回の生物学的反復実験において、1 mL当たり107個の感染粒子という平均力価のレンチウイルス上清を生成し、約6億個のRPE1細胞をスクリーニングし、1 MOIで形質導入した。レンチウイルス形質導入についての最初の7日間の選択の後に、細胞を1 μMドキソルビシンに曝露し、更に21日間培養した後、残存する細胞を採取し、それらのゲノムDNAを抽出し、gRNAのNGSによる特定のために処理した(図6a)。興味深いことに、全ての生物学的反復実験で顕著なgRNA及び標的の重複が特定された。これにより、生物学的に関連するヒットの大部分を特定するために全てのTGWライブラリー含有gRNAを実験的に調査する必要がないことが示唆される。
【0070】
ドキソルビシン選択に生き残った細胞から、生物学的反復実験間で高い再現性を示すTGW 3Cs-gRNAを特定した。興味深いことに、TGWライブラリーは非コードゲノムの標的化に対して強いバイアスを有するが、ドキソルビシン選択後に濃縮されたgRNAは、ほぼ逆転した、タンパク質コードゲノムに対するバイアスを示す。全ての残存するgRNAのうち、45.6%がコード領域内に位置し、22.2%がイントロン内にあり、10.5%が非コード(RNAコード)領域内にある(図6b)。しかしながら、21.7%のgRNAがバイオタイプを割り当てることができなかったゲノム領域内に位置し、これらの領域についての知識の欠落が示される(図6b)。研究結果の一部をCRISPR/Casとは独立して検証するために、2つの化学アンタゴニストが市販されているタンパク質コードヒット遺伝子CYSLTR2を選んだ。漸増濃度のドキソルビシンを漸増濃度の2つの化合物(BayCysLTR2及びBayu9773)に対して用量設定し、薬物に曝露したRPE1細胞を4日間インキュベートした後、細胞生存性アッセイAlamarBlueに供した。興味深いことに、どちらの化合物もドキソルビシンの細胞障害効果を用量依存的に回復することが可能であったが、Bay u9773がより強い効果を再現可能に示した(図6c)。これにより、本発明の真にゲノムワイドなCRISPR/Cas 3Cs-gRNAライブラリーがドキソルビシン耐性と関連するゲノム領域の特定において機能的であることが確認され、他の生物学的問題にも適用することができることが示唆される。
【0071】
実施例4:多重3Csライブラリー
単一3Cs-gRNA試薬を生成するプロトコルが確立されたため、本発明の3Cs方法を、個々のプライマー結合部位(カセット)間で十分な固有の相同性を生じさせることができる限りにおいて、2つ以上のgRNAをコードするプラスミドに対して効率的に行うことができることが推論された(図7a)。この目的で、eGFP及びmCherry遺伝子中の全ての可能なSpCas9標的部位のRS2スコアをバイオインフォマティクスにより特定し、計算した(図7b)。合計119個のeGFP標的化gRNAを特定し、5'及び3'相同性領域をヒトS7Kプロモーター及び第2世代SpCas9 gRNAスキャフォールドのそれぞれに付加した。mCherry遺伝子を標的とする140個のgRNAをコードするオリゴヌクレオチドを、ヒトU6プロモーター及び元のSpCas9 gRNAスキャフォールドのそれぞれに対する5'及び3'相同性領域で補完した。レンチウイルスSpCas9 gRNA多重プラスミド(pLenti-Multiplex)に基づく3回の個々の3Cs反応において、GFP、mCherry、又はGFPとmCherryとの組合せを標的とする3つのライブラリー(16600個のgRNAの組合せ)を生成した(図7c)。全ての独立した3Cs反応の平均電気穿孔効率は1.7×109を超え、単一及び多重化ライブラリーの完全な増幅が確実であった。単一3CsgRNA試薬のI-SceIクリーンアップ工程と同様に、I-CeuI(GFPカセット)、I-SceI(mCherryカセット)又はI-CeuI/I-SceIの組合せのクリーンアップを行い、鋳型レミニセントを最終ライブラリーから除去した(図7d図7e)。各実験条件からの10個の細菌プラスミドコロニーのサンガーシークエンシングを行い、高度に突然変異するそれぞれのgRNA領域を特定したが、5'及び3'に隣接して位置するヌクレオチドは、突然変異荷重を有しない(図7f)。GFP/mCherry多重化3Cs-gRNA試薬を機能的に検証するために、感染性レンチウイルス粒子を誘導し、これらを用いてGFP/mCherry陽性RPE1レポーター細胞株を形質導入した。ゲノムDNA編集は、FACS分析によって分析した場合のGFP及びmCherryのタンパク質レベルに対する強い負の影響に転換された(図7g)。したがって、ライブラリーがクローニングアーチファクトを有さず、異なるgRNAコードプライマー配列の数によってのみ限定される可能性がある、多重化SpCas9 3Cs-gRNAライブラリーを生成する初めての1工程プロトコルが提示される。付加的には、本発明のプロトコルは潜在的に、多重化試薬を種々のCas酵素の組合せにまで拡大するgRNA多重化目的で任意のCas/gRNAシステムと組み合わせることができる。
【0072】
実施例5:3Cs shRNAライブラリーの生成
本3Cs技術が高品質の単一及び多重化CRISPR/Cas遺伝子摂動試薬の生成に非常によく適していることが実証された。したがって、3Cs技術の多用性を古典的RNA干渉(RNAi)試薬に対して更に試験した。これを試験するために、殆どのレンチウイルスCRISPR/Casプラスミドが由来する最も一般的なレンチウイルスshRNA送達プラスミドpLKO.1(pLKO.1)を使用し、2つの細菌CJ236クローンのssDNAを生成し、それらをM13KO7バクテリオファージで重複感染し、続いてファージ沈殿及びssDNA精製を行い、ssDNAをゲル電気泳動によって分解した(図8a、レーン2及び3)。次いで、U6 RNAプロモーターに対する15ヌクレオチドの5' 3Cs相同性領域、続いてeGFP標的化センスshRNAをコードする21ヌクレオチド、続いて6ヌクレオチドのshRNAヘアピン配列、続いてセンスshRNAに対する21の逆相補鎖ヌクレオチド及び15ヌクレオチドの3' 3Cs相同性領域を含有する3Cs-shRNAプライマーを設計した(図8b)。3Cs-shRNAプライマーを2つの3Cs反応規模(60 ng及び120ngのssDNA)に適用し、3Cs生成物をゲル電気泳動によって分離し、120 ngのssDNA反応において最も顕著な典型的な3バンドパターンを観察した(図8c)。120ngの3Cs生成物のサンガーシークエンシングと組み合わせた細菌形質転換、プラスミドDNA精製から、pKLO.1プラスミドへのeGFP標的化shRNA配列の組入れが明らかになった(図8d)。これにより、本発明者らの3Cs技術がCRISPR/Cas gRNA試薬の生成に限定されず、非常に多用途であり、RNAi目的での3Cs-shRNA試薬の生成にも用いることができることが実証される。
【0073】
材料及び方法
CJ236細胞におけるdU-ssDNA鋳型増幅
KCMコンピテントかつdut-/ung-の大腸菌細胞(K12 CJ236株)を500 ngの鋳型プラスミド、2 μlの5×KCM及び7 μlのH2Oで形質転換し、アンピシリンを添加したLB寒天上にプレーティングした。翌朝、コロニーを各々、100 μgのアンピシリン、35 μgのクロラムフェニコール及び1:1000のヘルパーファージM13KO7(1e11 pfu)を含有する1 mlの2YT培地の新たな培養物中に採取した。37℃及び200 rpmで2時間のインキュベーション後に、25 μgのカナマイシンを添加し、振盪を更に10時間継続した。10時間後に、各培養物を3000 μgのアンピシリン、750 μgのカナマイシン及び187.5 μgのウリジンを含有する30 mlの2YT増殖培地に移した。増殖培地を37℃及び200 rpmで20時間インキュベートした。
【0074】
dU-ssDNAの精製
20時間後に培養物をBeckmanのJA-12固定角ローターにて10000 rpm及び4℃で10分間遠心分離した。ファージを含有する上清を6 ml(1:5)のPEG/NaCl(20%ポリエチレングリコール8000、2.5M NaCl)の入った新たなファルコンチューブ内で穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートして、ファージを沈殿させた。次いで、混合物を10000 rpm及び4℃で10分間遠心分離した。上清を捨て、ファージペレットを4000 rpmで短時間遠心分離して、残存する上清を除去した。残存する上清を吸引し、ファージペレットを1 mlのPBSに再懸濁した。次いで、再懸濁したファージペレットを13000 rpmで5分間遠心分離して、残存する細胞残屑を除去した。上清を新たな1.5 ml容の反応管に移した。
【0075】
一本鎖DNAを、E.Z.N.A. M13 DNA Mini Kit(Omega)を用い、製造業者の(manufactures)プロトコルに従って上清から精製した。NanoDropを用いてDNA濃度を決定し、500 ngの一本鎖DNAを0.8%TAE/アガロースゲル上で電気泳動することによってDNAを分析した。
【0076】
共有結合閉環状合成gRNA(3Cs-gRNA):小規模及び大規模
漸増長さのプライマーを有する4つの構築物を、個々の実験において種々の相同性長さの合成効率を試験するために、小規模合成のプロトコルを用いて合成した(「eGFPプールの小規模合成及び種々の相同性長さ」を参照されたい)。6つのeGFP-KO構築物を、同じプロトコルを用いてプール形式で合成した。
【0077】
20N及び最適化プライマー構築物を、大規模合成のプロトコルを用いて合成した(「20N及びOptiプライマーの大規模合成」を参照されたい)。小規模合成及び大規模合成の両方のアプローチに用いた鋳型プラスミドは、各々非ヒト標的化(NHT)gRNAが組み込まれたpLentiCRISPRv2及びpLentiGuideであった。
【0078】
以下のNHT gRNA配列を用いた:
NHT:5'-aaaacatcgaccgaaagcgt-3'(配列番号1)
【0079】
種々の相同性アーム長さを試験するために、plentiGuide-NHTプラスミド及び以下のオリゴヌクレオチド(全て5'-3'方向)を使用した:
10 nts:gctctaaaac YBBNDHDNNNNDNNNNNHNN cGGTGTTTCG(配列番号2)
13 nts:Ctagctctaaaac YBBNDHDNNNNDNNNNNHNN cGGTGTTTCGTCC(配列番号3)
15 nts:TTCtagctctaaaac YBBNDHDNNNNDNNNNNHNN cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号4)
18 nts:taTTTCtagctctaaaac YBBNDHDNNNNDNNNNNHNN cGGTGTTTCGTCCTTTCC(配列番号5)
【0080】
6つのeGFP構築物のプールについては、pLentiGuide-NHT及びpLentiCRISPRv2-NHTを、各々以下のオリゴヌクレオチド(全て5'-3'方向)のプールと共に使用した:
eGFP-1:TTCtagctctaaaac aggtgaagttcgagggcgac cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号6)
eGFP-2:TTCtagctctaaaac ccctgagcaaagaccccaac cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号7)
eGFP-3:TTCtagctctaaaac tcgtgaccaccctgacctac cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号8)
eGFP-4:TTCtagctctaaaac cggcgcgggtcttgtagttgC cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号9)
eGFP-5:TTCtagctctaaaac ttcagctcgatgcggttcac cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号10)
eGFP-6:TTCtagctctaaaac cggtgaacagctcctcgccc cGGTGTTTCGTCCTT
【0081】
20Nプライマー(20N)及び最適化プライマー(Opti)を合成するために、pLentiGuide及びpLentiCRISPRv2を用い、4つの条件を生じさせた:pLentiGuide-NHT上の20N、pLentiCRISPRv2-NHT上の20N、pLentiGuide-NHT上のOpti及びpLentiCRISPR-NHT上のOpti。20Nプライマーは、完全にランダム化されたプライマーであり、すなわち各ヌクレオチドが各位置に等確率で現れる。Optiプライマーは、以前に公開されたパターンをモデルにしている(31、32)。このプライマーでは、得られるライブラリーのサイズを縮小するためにヌクレオチドの選択に関する幾つかの位置に制約を与えた(全て5'-3'方向)。
20N:TTCtagctctaaaac NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号11)
Opti:TTCtagctctaaaac YBBNDHDNNNNDNNNNNHNN cGGTGTTTCGTCCTT(配列番号12)
【0082】
増殖培地のウリジン補充
合成効率に対するウリジン補充の影響を試験するために、2つの異なる増殖培地を用いた6つのeGFP-KO構築物のプールの小規模合成を行った。一方の実験では、30 mlの増殖培地に187.5 μg(6.25 μg/ml)のウリジンを補充した。もう一方の実験は、ウリジン補充せずに行った。それ以外では、実験を小規模合成プロトコルに従って行った。合成生成物をコンピテント大腸菌細胞に熱ショック形質転換し、LB寒天/アンピシリンプレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。両方の実験における野生型プラスミド含有クローン対eGFP-KO gRNA含有クローンの比率をシークエンシングによって決定した。各実験から10個のクローンを選び、サンガーシークエンシングによって分析した。
【0083】
小規模3Cs-gRNA合成:T4ポリヌクレオチドキナーゼによるオリゴヌクレオチドリン酸化
オリゴヌクレオチドを5'リン酸化するために、0.6 μgの突然変異誘発性オリゴヌクレオチド、2 μlの10×TMバッファー、2 μlの10 mM ATP、1 μlの100 mM DTT及び20単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを組み合わせた。H2Oを20 μlの総容量まで添加した。混合物を37℃で1時間インキュベートし、即座にアニーリングに用いた。eGFP-KO構築物のプールについては、100 ngの各プライマーを単一反応に用いた。種々の相同性長さを有する構築物を個別に合成した。
【0084】
小規模3Cs-gRNA合成:鋳型へのオリゴヌクレオチドのアニーリング
リン酸化オリゴヌクレオチドをdU-ssDNA鋳型にアニールするために、2.5 μlの10×TMバッファー及び2 μlのリン酸化オリゴヌクレオチドを2μgのdU-ssDNA鋳型に添加し、H2Oを25 μlの最終容量まで添加した。混合物をサーモサイクラーにおいて90℃で3分間、50℃で3分間及び20℃で5分間インキュベートした。
【0085】
小規模3Cs-gRNA合成:3Cs-gRNAの酵素的合成
3Cs-dsDNAを1 μlの10 mM ATP、1 μlの10 mM dNTPミックス、1.5 μlの100 mM DTT、200ライゲーション単位又は3 Weiss単位のT4 DNAリガーゼ及び3単位のT7 DNAポリメラーゼを、アニールしたオリゴヌクレオチド/鋳型混合物に添加することによって合成した。合成ミックスを室温で2時間インキュベートした。8 μlの反応生成物を0.8%TAE/アガロースゲル(100 V、5分間)上で分析した。2 mlの反応生成物をコンピテント大腸菌細胞に熱ショック形質転換した。
【0086】
小規模3Cs-gRNA合成:シークエンシング
形質転換大腸菌を、アンピシリンを添加したLB寒天上にプレーティングした。種々の相同性アーム長さの構築物をTAE/アガロースゲル上で分析した。eGFP構築物のプールで形質転換した細菌の20個のクローンを無作為に選び、サンガーシークエンシングによって分析して、集団内のgRNA配列の分布を決定した。
【0087】
大規模3Cs-gRNA合成:T4ポリヌクレオチドキナーゼによるオリゴヌクレオチドリン酸化
オリゴヌクレオチドを5'リン酸化するために、0.6 μgの突然変異誘発性オリゴヌクレオチド、2 μlの10×TMバッファー、2 μlの10 mM ATP、1 μlの100 mM DTT及び20単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを組み合わせた。H2Oを20 μlの総容量まで添加した。混合物を37℃で1時間インキュベートし、即座にアニーリングに用いた。20N及びOptiプライマーを別個の合成反応に適用した。
【0088】
大規模3Cs-gRNA合成:鋳型へのオリゴヌクレオチドのアニーリング
リン酸化オリゴヌクレオチドをdU-ssDNA鋳型にアニールするために、25 μlの10×TMバッファー及び20 μlのリン酸化オリゴヌクレオチドを20μgのdU-ssDNA鋳型に添加し、H2Oを250 μlの最終容量まで添加した。混合物をサーモサイクラーにおいて90℃で3分間、50℃で3分間及び20℃で5分間インキュベートした。
【0089】
大規模3Cs-gRNA合成:3Cs-gRNAの酵素的合成
3Cs-ssDNAを10 μlの10 mM ATP、10 μlの10 mM dNTPミックス、15 μlの100 mM DTT、2000ライゲーション単位(又は30 Weiss単位)のT4 DNAリガーゼ及び30 単位のT7 DNAポリメラーゼを、アニールしたオリゴヌクレオチド/鋳型混合物に添加することによって合成した。合成ミックスを室温で2時間インキュベートした。2時間後、ミックスをアフィニティー精製し、QiagenのQIAquick Gel Extraction Kitを用いて脱塩した。混合物に1 mlのバッファーQG(Qiagen)を添加し、混合した。サンプルを2 ml容の微小遠心管内に入れられた2本のQIAquickスピンカラムに適用し、2500 rpmで3分間遠心分離した。単一カラムの結合能が合成ミックス中のDNAの総量に対して低過ぎることから2本のスピンカラムを使用した。各カラムに750 μlのバッファーPE(Qiagen)を添加し、13000 rpmで1分間遠心分離した。次いで、カラムを新たな1.5 ml容の微小遠心管に移し、蓋を開けたまま13000 rpmで5分間遠心分離した。カラムを新たな1.5 ml容の微小遠心管(microcentrifugetube)に移し、20 μlの蒸留水を膜に適用した。5分後に更に20 μlの蒸留水をカラムに添加し、5分間インキュベートした。DNAを溶出させるために、カラムを13000 rpmで1分間遠心分離した。2本の管からの溶出液を新たな1.5 ml容の微小遠心管内に合わせ、蓋を開けたまま13000 rpmで15分間遠心分離して、総容量をおよそ70 μlまで減らした。1 μlの溶出反応生成物を0.8%TAE/アガロースゲル上で一本鎖DNA鋳型と並べて電気泳動した(100 V、30分間)。
【0090】
大規模3Cs-gRNA合成:電気穿孔
20N及び最適化ガイドライブラリーを、エレクトロコンピテント大腸菌(SS320株)にBio-RadのGene Pulserで以下の設定を用いて電気穿孔した:抵抗200オーム、電気容量25、電圧1.2kV。100 μlの細胞を形質転換するために、400 ngのDNAを使用した。電気穿孔した細胞を4 mlの予め温めたSOC培地中に回収し(rescued)、37℃及び200rpmで1時間インキュベートした。
【0091】
1時間のインキュベーション後に、段階希釈(dilution series)を行い、形質転換効率及び形質転換細菌の数を決定した。10 μlの培養物を10-1~10-12希釈し、アンピシリンを含むLB寒天プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。翌日、電気穿孔効率及び形質転換細菌の数を決定した。残りの培養物を、アンピシリンを添加した200 mlのLB培地に添加し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、QiagenのPlasmid Maxi Kitを用いてDNAを精製した。
【0092】
大規模3Cs-gRNA合成:96ウェルシークエンシング
XL1 Blue細胞を20N及び最適化ガイドライブラリーの精製DNAで熱ショックにより形質転換し、37℃で一晩インキュベートした。形質転換細胞のコロニーを各々、96ウェルプレート内の100 μg/mlアンピシリン及び1:1000のM13KO7ヘルパーファージ(1e11 pfu)を添加した450 μlの2YT培地に接種し、37℃にて200rpmで一晩増殖させた。翌日、細胞を4000 rpmで5分間遠心分離した。ファージを含有する上清を、新たな96ウェルプレートにおいてPBTバッファーで15倍希釈した。新たな96ウェルプレート上で、2 μlの希釈ファージを以下のPCRミックスに添加した:16.9 μlの蒸留水、5 μlの5×OneTaq標準反応バッファー(NEB)、0.5 μlの10 mM dNTP、0.5単位のOneTaqDNAポリメラーゼ(NEB)及び0.25 μlの10 μM各プライマー。以下のPCRプログラムを用いてDNA断片を増幅した:95℃で5分間、30サイクルの増幅(95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で40秒間)、72℃で7分間、及び4℃での貯蔵。代表的な反応をTAE/アガロースゲル上で分析した。
【0093】
新たな96ウェルプレートの各ウェルに、20 μlの蒸留H2O、4単位のエキソヌクレアーゼI及び0.4単位のエビアルカリホスファターゼを含有する20.8 μlのクリーンアップミックスを分注した。6 μlのPCR産物を各ウェルに移し、混合した。クリーンアップ反応を37℃で15分間及び80℃で15分間インキュベートした。プレートをシークエンシングにかけ、種々のgRNAの分布を決定した。
【0094】
レンチウイルス形質導入
RPE1-H2B-eGFP細胞を6ウェルプレート上で、1ウェル当たり10000細胞の密度で0.02μg/mlハイグロマイシン、110単位/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン及び100 μl/ml FBSを添加したDMEM-F12培地中に三連で播種した。翌日、レンチウイルス形質導入を、6つのeGFP-KO gRNAのプールを含む漸増量のレンチウイルスを用いて行った。1つのウェルを400 μLの非ヒト標的gRNAで形質導入し、陰性対照とした。培地を1週間にわたって2日に1回交換した。形質導入後7日目に、eGFP枯渇の程度をフローサイトメトリーによって決定した。
【0095】
T7エンドヌクレアーゼIサーベイヤーアッセイ
RPE1-H2B-eGFP細胞を1ウェル当たり10000細胞の密度で0.02 μg/mLハイグロマイシン、110単位/mLペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン及び100 μL/mLFBSを添加したDMEM/F12培地中に播種した。翌日、1つのウェルのレンチウイルス形質導入を、eGFPに対する6つのgRNAのプールを含む200 μLのレンチウイルス上清を用いて行った。別のウェルを非ヒト標的gRNAで形質導入し、陰性対照とした。形質導入後3日目に、培地を0.02 μg/mLハイグロマイシン、110単位/mLペニシリン、100 μg/mLストレプトマイシン及び100 μL/mL FBSを添加した新たなDMEM/F12に交換した。形質導入後7日目に、フェノール-クロロホルム抽出を用いてゲノムDNAを抽出した。PCR増幅を1 μgのDNA、10 μLのOneTaq標準バッファー、1 μLの10 mM dNTP、0.25 μLのOneTaq DNAポリメラーゼ、2.5μLの以下の10 μMプライマーを含有する50 μLの反応容量のゲノムDNAサンプル:
GCGGGATCCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCGAG(配列番号13)、
CACATCCCGCGAGATCCAGACG(配列番号14)、
及び50 μLの反応容量となるような蒸留H2Oを用いて行った。以下のサイクリング条件を用いた:95℃で2分間の初期変性、95℃で15秒間の変性、60℃で15秒間のアニーリング及び72℃で30秒間の伸長の30サイクル。最終伸長を72℃で1分間行った。次いで、2つのPCR増幅サンプルを、以下のプロトコルを用いて変性させた:95℃で5分間の初期変性、以下のランプでのアニーリング:85℃で10秒間、75℃で10秒間、50℃で10秒間及び25℃で1分間。50 μLのPCR産物を、2.7 μLのT7エンドヌクレアーゼI及び5.5 μLのNEBuffer 2を用いて58.2μLの総容量で消化した。混合物を37℃で1時間インキュベートし、2.5%TAE/アガロースゲル上で分析した。
引用文献
1. R. Barrangou et al., CRISPRprovides acquired resistance against viruses in prokaryotes. Science 315,1709-1712 (2007).
2. J. E. Garneau et al., TheCRISPR/Cas bacterial immune system cleaves bacteriophage and plasmid DNA.Nature 468, 67-71 (2010).
3. G. Gasiunas, R. Barrangou, P.Horvath, V. Siksnys, Cas9-crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNAcleavage for adaptive immunity in bacteria. Proc Natl Acad Sci U S A 109,E2579-2586 (2012).
4. M. Jinek et al., A programmabledual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science 337,816-821 (2012).
5. J. A. Doudna, E. Charpentier,Genome editing. The new frontier of genome engineering with CRISPR-Cas9.Science 346, 1258096 (2014).
6. R. Jansen, J. D. Embden, W.Gaastra, L. M. Schouls, Identification of genes that are associated with DNArepeats in prokaryotes. Molecular microbiology 43, 1565-1575 (2002).
7. A. Bolotin, B. Quinquis, A.Sorokin, S. D. Ehrlich, Clustered regularly interspaced short palindromerepeats (CRISPRs) have spacers of extrachromosomal origin. Microbiology 151,2551-2561 (2005).
8. F. J. Mojica, C.Diez-Villasenor, J. Garcia-Martinez, E. Soria, Intervening sequences ofregularly spaced prokaryotic repeats derive from foreign genetic elements.Journal of molecular evolution 60, 174-182 (2005).
9. C. Pourcel, G. Salvignol, G.Vergnaud, CRISPR elements in Yersinia pestis acquire new repeats bypreferential uptake of bacteriophage DNA, and provide additional tools forevolutionary studies. Microbiology 151, 653-663 (2005).
10. D. H. Haft, J. Selengut, E. F.Mongodin, K. E. Nelson, A guild of 45 CRISPR-associated (Cas) protein familiesand multiple CRISPR/Cas subtypes exist in prokaryotic genomes. PLoScomputational biology 1, e60 (2005).
11. E. Deltcheva et al., CRISPR RNAmaturation by trans-encoded small RNA and host factor RNase III. Nature 471,602-607 (2011).
12. F. A. Ran et al., Genomeengineering using the CRISPR-Cas9 system. Nature protocols 8, 2281-2308 (2013).
13. P. Mali et al., RNA-guided humangenome engineering via Cas9. Science 339, 823-826 (2013).
14. T. Gaj, C. A. Gersbach, C. F.Barbas, 3rd, ZFN, TALEN, and CRISPR/Cas-based methods for genome engineering.Trends Biotechnol 31, 397-405 (2013).
15. S. W. Cho, S. Kim, J. M. Kim, J.S. Kim, Targeted genome engineering in human cells with the Cas9 RNA-guidedendonuclease. Nat Biotechnol 31, 230-232 (2013).
16. L. Cong et al., Multiplex genomeengineering using CRISPR/Cas systems. Science 339, 819-823 (2013).
17. D. P. Dever et al., CRISPR/Cas9beta-globin gene targeting in human haematopoietic stem cells. Nature, (2016).
18. P. Mali, K. M. Esvelt, G. M.Church, Cas9 as a versatile tool for engineering biology. Nature methods 10,957-963 (2013).
19. O. Shalem et al., Genome-scaleCRISPR-Cas9 knockout screening in human cells. Science 343, 84-87 (2014).
20. T. Wang, J. J. Wei, D. M.Sabatini, E. S. Lander, Genetic screens in human cells using the CRISPR-Cas9system. Science 343, 80-84 (2014).
21. Y. Zhou et al., High-throughputscreening of a CRISPR/Cas9 library for functional genomics in human cells.Nature, (2014).
22. C. Kuscu, S. Arslan, R. Singh,J. Thorpe, M. Adli, Genome-wide analysis reveals characteristics of off-targetsites bound by the Cas9 endonuclease. Nat Biotechnol 32, 677-683 (2014).
23. P. Mali et al., CAS9 transcriptionalactivators for target specificity screening and paired nickases for cooperativegenome engineering. Nat Biotechnol 31, 833-838 (2013).
24. L. A. Gilbert et al.,CRISPR-mediated modular RNA-guided regulation of transcription in eukaryotes.Cell 154, 442-451 (2013).
25. L. S. Qi et al., RepurposingCRISPR as an RNA-guided platform for sequence-specific control of geneexpression. Cell 152, 1173-1183 (2013).
26. B. Chen et al., Dynamic imagingof genomic loci in living human cells by an optimized CRISPR/Cas system. Cell155, 1479-1491 (2013).
27. A. W. Cheng et al., Multiplexedactivation of endogenous genes by CRISPR-on, an RNA-guided transcriptionalactivator system. Cell research 23, 1163-1171 (2013).
28. F. Meitinger et al., 53BP1 andUSP28 mediate p53 activation and G1 arrest after centrosome loss or extendedmitotic duration. J Cell Biol 214, 155-166 (2016).
29. T. Wang et al., Identificationand characterization of essential genes in the human genome. Science 350,1096-1101 (2015).
30. T. Hart et al., High-ResolutionCRISPR Screens Reveal Fitness Genes and Genotype-Specific Cancer Liabilities.Cell 163, 1515-1526 (2015).
31. J. G. Doench et al., Rationaldesign of highly active sgRNAs for CRISPR-Cas9-mediated gene inactivation. NatBiotechnol 32, 1262-1267 (2014).
32. J. G. Doench et al., OptimizedsgRNA design to maximize activity and minimize off-target effects ofCRISPR-Cas9. Nat Biotechnol, (2016).
33. R. Huang, P. Fang, B. K. Kay,Improvements to the Kunkel mutagenesis protocol for constructing primary andsecondary phage-display libraries. Methods 58, 10-17 (2012).
34. T. A. Kunkel, Rapid andefficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection. Proc NatlAcad Sci U S A 82, 488-492 (1985).
【符号の説明】
【0096】
図面訳
図1
amplificationof library backbone in CJ236 CJ236におけるライブラリー骨格の増幅
helper phage ヘルパーファージ
purificationof dU-ssDNA dU-ssDNAの精製
Primer extensionwith T7 DNA Pol. T7 DNAポリメラーゼを用いたプライマー伸長
heteroduplexdU-dsDNA gRNA library ヘテロ二本鎖dU-dsDNA gRNAライブラリー
Electroporationinto SS320 SS320への電気穿孔
complete gRNAlibrary 完全なgRNAライブラリー
WT new 新たなWT
gRNAexpression cassette gRNA発現カセット
f-origin(phagemid) f起点(ファージミド)
new gRNAPrimer(s) 新たなgRNAプライマー
dU mismatch dUミスマッチ
gRNA paircopy number gRNA対コピー数
reads tomedian normalized 正規化中央値に対する読み取り値

図2
homologylength 相同性長さ
% ofSequences 配列に対する%
Uridine ウリジン

図3
ratio ofinfection 感染の比率

図4
# gRNA Sequences gRNA配列の数
Chromosome 染色体
Total 総
Unique 固有
% of Chr.Sequence 染色体配列に対する%
PAM distance PAM距離
all 全て
% of allgRNAs 全gRNAに対する%
gRNAOccurences gRNA発生率
gRNAsoccuring X times X回生じるgRNA
Number ofOccurences 発生回数

図5
homology 相同性
optimizedgRNA 最適化gRNA
% mutated 突然変異%
gRNA Position gRNA位置

図6
TGW gRNAlibrary TGW gRNAライブラリー
7 days 7日間
Doxorubicin ドキソルビシン
3 weeks 3週間
Survival 生存
coding コード
intron イントロン
non-coding 非コード
no biotype バイオタイプなし

図7
Multiplexing3Cs-Technology 多重化3Cs技術
amplificationof library backbone in CJ236 CJ236におけるライブラリー骨格の増幅
helper phage ヘルパーファージ
purificationof dU-ssDNA dU-ssDNAの精製
Primerextension with T7 DNA Pol. T7 DNAポリメラーゼを用いたプライマー伸長
heteroduplexdU-dsDNA gRNA library ヘテロ二本鎖dU-dsDNA gRNAライブラリー
Electroporation 電気穿孔
final gRNAlibrary 最終gRNAライブラリー
WT new 新たなWT
gRNAexpression cassette gRNA発現カセット
f-origin(phagemid) f起点(ファージミド)
new gRNAPrimer(s) 新たなgRNAプライマー
dU mismatch dUミスマッチ
eGFP position eGFP位置
mCherryposition mCherry位置
Norm. RS2 正規化RS2
comb. 組合せ
empty 空
% fluoresc.positive 蛍光陽性%
no virus ウイルスなし

図8
homology 相同性
for shRNA shRNA
rev complshRNA 逆相補鎖shRNA
shRNA hairpin shRNAヘアピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007142637000001.app