(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】2-シアノイミダゾール化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/90 20060101AFI20220916BHJP
A61K 31/4164 20060101ALN20220916BHJP
A61P 31/10 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
C07D233/90 C
A61K31/4164
A61P31/10
(21)【出願番号】P 2019545974
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 IL2018050211
(87)【国際公開番号】W WO2018154582
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】201731006545
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】517104138
【氏名又は名称】アダマ・マクテシム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ボーパル,メカ
(72)【発明者】
【氏名】ジャガディーシュ,スーラ
(72)【発明者】
【氏名】ピライ,ビジュクマー ゴピナザン
(72)【発明者】
【氏名】グラバニク,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ドローン
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103936678(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104292166(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102424671(CN,A)
【文献】特開平04-059766(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024224(WO,A1)
【文献】O. S. SIZOVA ET AL.,PYRROLO[3,2-d]PYRIMIDINES. IV. SYNTHESIS AND ANTIBACTERIAL AND ANTITUMOR ACTIVITY OF 2,4,7-SUBSTITUTED PYRROLO[3,2-d]PYRIMIDINES,PHARMACEUTICAL CHEMISTRY JOURNAL,1982年,vol. 16, no. 11,834-838
【文献】Kiasat, Ali Reza; Kazemi, Foad; Khosravian, Forogh.,Na2SO3/SOCl2, an efficient reagent for the dehydration of aldoximes to nitriles,Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements,2003年,178(6),1377-1383
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/90
A61K 31/4164
A61P 31/10
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、次式(II):
【化2】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記硫黄含有誘導体の金属塩が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元剤が、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記極性有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、Ν,Ν-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、および/またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応が
、40℃~150℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応が
、70℃~120℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物と前記還元剤のモル比が
、1:
1~1:6である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式(II)の前記化合物と前記還元剤のモル比が
、1:
1~1:3である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式(II)の前記化合物と前記還元剤のモル比が
、1:
1~1:5である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
次式(III):
【化3】
で表される4-クロロ-2-シアノ-イミダゾール化合物を調製する方法であって、
a)次式(II):
【化4】
で表される化合物を、硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択され
る還元剤と反応させるステップと、
b)a)の前記生成物を塩素化剤と反応させるステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記塩素化剤が、N-クロロスクシンイミドおよび/またはスルフリルクロリドからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩素化反応が、0℃~40℃の温度で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
次式(IV):
【化5】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、
a)次式(II):
【化6】
で表される化合物を、硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択され
る還元剤と反応させるステップと、
b)a)の前記生成物を塩素化剤と反応させるステップと、
c)b)の前記生成物を、塩基および極性有機溶媒の存在下でΝ,Ν-ジメチルスルファモイルクロリドと反応させるステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(IV)で表される化合物を現場調製するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌剤シアゾファミドを調製するための重要な中間体である式(I)の化合物として表される5-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを調製する改良方法に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
式(I)の化合物として表される化合物5-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは、殺真菌剤シアゾファミドを調製するための重要な中間体である。式(I)の化合物は、そのアルドオキシムN-オキシド前駆体である式(II)として表される1-ヒドロキシ-4-(4-メチルフェニル)-3-オキシド-1H-イミダゾール-2-カルボキサルデヒドオキシムから対応するシアノ誘導体への変換およびその後のイミダゾール環のN-オキシド基の還元によって調製できたことが文献ですでに開示されている。
【0004】
塩化リン、五酸化リン、塩化チオニルなどの適切な脱水剤を使用した、アルドオキシムから対応するシアノ誘導体への変換が開発され、文献にすでに記載されている。すなわち、塩化チオニルは、シアゾファミドのアルドオキシム中間体からそのシアノ誘導体への変換のための一般的な脱水剤として文献に記載されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0705823号には、シアゾファミドを調製する方法であって、N,N-ジアルキルアミドの存在下で塩化チオニルを使用して、式(II)として表される中間体のアルドオキシム基を脱水し、塩化硫黄をさらに添加して、式(I)として表される2-シアノイミダゾール中間体を生成するステップを含む方法が記載されている。
【0006】
日本特許第2879164号には、シアゾファミドを調製する方法であって、好ましくは塩基の存在下でリンまたは硫黄の塩化物またはオキシ塩化物を使用して、式(II)として表される中間体のアルドオキシム基を脱水して、式(I)として表される2-シアノイミダゾール中間体を生成するステップを含む方法が記載されている。
【0007】
中国特許第102424671号には、シアゾファミドを調製する方法であって、塩化チオニルを使用して、式(II)として表される中間体のアルドオキシム基を脱水し、続いてa)塩素化剤N-クロロスクシンイミド、およびb)亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム(sodium hydrogen sulfite)などの還元剤を添加し、式(III)として表される2-シアノイミダゾール中間体を生成するステップを含む方法が記載されている。
【0008】
しかし、上記の脱水試薬には、厳しい反応条件、長い反応時間、低い収率、有毒で高価なまたは容易に入手できない試薬の使用、および時間のかかる後処理などいくつかの点で限界がある。
【0009】
塩化チオニルは、化学プロセスで使用する前に新たに蒸留されるべきである危険な催涙物質である。さらに、遅い反応速度および長い反応時間のため、高い反応温度および大過剰の塩化チオニルを使用して、アルドオキシム基の好都合な脱水速度を達成しなければならない。
【0010】
脱水反応における大過剰の塩化チオニルの使用は、生成物を単離および回収する前に未反応の塩化チオニルを除去しなければならないので、望ましくない。
【0011】
さらに、すでに公知であり、米国特許第4605521号に記載されている通り、過剰量の塩化チオニルの使用を、高い反応温度および60℃より高い高温での長いストリッピング時間と組み合わせると、有機ニトリルが急速に褐色化し、やはり望ましくない残留硫黄含有量が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮して、殺真菌剤シアゾファミドを調製するための重要な中間体である、式(I)の化合物として表される5-(p-トリル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを商業的に調製する改良方法であって、工業的使用に適しており、高効率、低コストで、環境に優しく、より高い収率および容易な後処理をもたらし、それによって先行技術の欠陥を克服する改良方法が必要とされている。
【0013】
驚くべきことに、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(sodium bisulfite)、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、および/またはそれらの混合物などの硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤によって、式(II)の化合物のイミダゾール環のアルドオキシム置換基から対応するシアノ基への成功裏の変換が行われと同時に、イミダゾール部分の酸素化窒素が還元されて、式(I)として表される対応する2-シアノイミダゾールが生成されることが明らかになった。上記の本発明の方法によって、有機性廃棄物が少なくなり、生成物の収率が高くなり、先行技術で報告されている有毒で腐食性の脱水剤の使用が回避される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、次式(I):
【0015】
【化2】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、次式(II):
【0016】
【化3】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップを含む方法を提供する。
【0017】
硫黄含有誘導体の金属塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはメタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、および/またはそれらの混合物から選択される。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、次式(III):
【0019】
【化4】
で表される4-クロロ-2-シアノ-イミダゾール化合物を調製する方法であって、a)次式(II):
【0020】
【化5】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップと、b)ステップa)で得られた生成物を塩素化剤と反応させるステップとを含む方法を提供する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、式(IV):
【0022】
【化6】
で表される、シアゾファミドと呼ばれる2-シアノイミダゾールを調整する方法であって、a)次式(II):
【0023】
【化7】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップと、b)ステップa)で得られた生成物を塩素化剤と反応させて、式(III)の4-クロロ-2-シアノ-イミダゾール化合物を得るステップと、c)式(III)の化合物を、塩基および極性有機溶媒の存在下でN,N-ジメチルスルファモイルクロリドと反応させるステップとによる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義:
本発明の主題を詳細に記載する前に、本明細書で使用されるいくつかの用語の定義を記載することは有益でありうる。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本主題が属する技術分野の技術者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される用語「a」または「an」は、別段の明確な記載のない限り、単数形および複数形を包含する。したがって、用語「a」、「an」または「少なくとも1つ」を本出願では同義に使用することができる。
【0026】
本出願全体にわたって、様々な実施形態の説明に、用語「含む」が使用される。しかし、当業者は、いくつかの特定の場合に、代替として「から本質的になる」または「からなる」という言葉を使用して、実施形態を説明することがあることを理解する。
【0027】
本教示をよりよく理解し、本教示の範囲を限定しないために、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、百分率、または割合および他の数値を表すすべての数は、すべての場合に用語「約」によって修飾されると理解されるものとする。したがって、そうでないことが示されていない限り、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、得られるよう求められている所望の特性に応じて変わりうる近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮に入れて、普通の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。この点に関して、本明細書における用語「約」の使用は、具体的には表示値から±10%の範囲を含む。さらに、本明細書で同じ成分または特性に向けられているすべての範囲の端点は、端点を含み、独立して組み合わせられ、すべての中間点および範囲を含む。
【0028】
2-シアノイミダゾール化合物の調製:
本発明は、次式(I):
【0029】
【化8】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、次式(II):
【0030】
【化9】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップを含む方法を提供する。
【0031】
実施形態によれば、硫黄含有誘導体の金属塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはメタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、および/またはそれらの混合物から選択される。
【0032】
実施形態によれば、反応に悪影響を及ぼさない極性有機溶媒であればいずれでも使用することができる。
【0033】
極性有機溶媒は限定されるものではないが、例えばN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、および/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
実施形態によれば、反応に悪影響を及ぼさない追加の有機溶媒を含めることができる。
【0035】
そのような追加の有機溶媒は限定されるものではないが、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0036】
実施形態によれば、式(I)として表される化合物を調製する方法は、約40℃~150℃、好ましくは約70℃~120℃の温度で実施することができる。
【0037】
実施形態によれば、式(II)の化合物対還元剤のモル比は、約1:1~1:6、好ましくは約1:1~約1:3、より好ましくは約1:1~約1:1.5である。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、次式(III):
【0039】
【化10】
で表される4-クロロ-2-シアノ-イミダゾール化合物を調製する方法であって、a)次式(II):
【0040】
【化11】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップと、b)a)の生成物を塩素化剤と反応させるステップとを含む方法を提供する。
【0041】
実施形態によれば、塩素化ステップは、N-クロロスクシンイミド、スルフリルクロリドおよび当技術分野において公知である同類のもの(これらに限定されない)からなる群から選択される塩素化剤の存在下で実施される。
【0042】
実施形態において、塩素化反応は、0℃~40℃の温度で実施される。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、式(IV)で表されるシアゾファミドと呼ばれる2-シアノイミダゾール:
【0044】
【0045】
【化13】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップと、b)ステップa)で形成された生成物を塩素化剤と反応させて、式(III)の化合物を得るステップと、c)式(III)の化合物を、塩基および極性有機溶媒の存在下でジメチルスルファモイルクロリドと反応させるステップとによって調製する方法を提供する。
【0046】
実施形態において、塩基は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される。これらのうち、アルカリ金属の炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムが特に好ましい。
【0047】
実施形態によれば、反応に悪影響を及ぼさない極性有機溶媒であればいずれでも使用することができる。
【0048】
好ましい実施形態において、極性有機溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、および/またはそれらの混合物から選択することができる。
【0049】
実施形態によれば、シアゾファミドと呼ばれる式(IV)の化合物は、式(II)として表される中間体および/または式(III)を単離することなく現場調製される。
【0050】
本発明によって包含される方法に関与する反応の進行は、いずれか適当な方法を使用してモニターすることができる。その方法としては、例えば、クロマトグラフ法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)などを挙げることができる。
【0051】
さらに別の実施形態において、式(I)、(III)および(IV)の化合物を、当技術分野において周知であるいずれかの従来技法によって反応混合物から単離することができる。そのような単離技法は、濃縮、抽出、沈澱、冷却、濾過、結晶化、遠心、およびそれらの組合せからなる群から制限なく選択することができ、次に乾燥を行う。
【0052】
実施形態によれば、得られた式(I)の化合物は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の純度で存在する。特に、先行技術で報告されている塩化チオニルまたは他の腐食性の脱水剤の代わりに、硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤を使用すると、生成コストが削減され、後処理が単純化され、あらゆる有毒廃棄物およびさらなる廃棄問題が最小限に抑えられる。
【0053】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために記載されている。しかし、それらは、本発明の広範な範囲を限定するものと解釈されるべきでない。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される原理の多くの変形形態および修正形態に容易に想到することができる。
【0054】
[実施例1]
(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの調製:
250gの1-ヒドロキシ-4-(4-メチルフェニル)-3-オキシド-1H-イミダゾール-2-カルボキサルデヒドオキシム(0.95モル)および750mlのN,N-ジメチルアセトアミドを5リットルのフラスコ中で混合し、100℃に加熱した。メタ重亜硫酸ナトリウム(235g、1.2モル)を分割投入した。混合物を100℃で8時間保持した。混合物を室温に冷却し、2000mlの水を添加して、生成物を沈澱させた。固体を濾別し、水およびトルエンで洗浄し、乾燥した。139gの粗(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルが得られた。純度94.6%。
【0055】
[実施例2]
(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの調製:
250gの1-ヒドロキシ-4-(4-メチルフェニル)-3-オキシド-1H-イミダゾール-2-カルボキサルデヒドオキシム(0.95モル)、625mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび125mlのアセトニトリルを5リットルのフラスコ中で混合し、80℃に加熱した。重亜硫酸ナトリウム(255g、2.4モル)を分割投入した。混合物を105℃にゆっくり加熱し、4時間保持した。混合物を室温に冷却し、1500mlの水を添加して、生成物を沈澱させた。実施例1に記載されているように、固体を濾別し、洗浄し、清浄し、乾燥して、140gの(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを得た。純度95.3%。
【0056】
[実施例3]
5-クロロ-4-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの調製:
110gの実施例1の生成物を、500mlのフラスコ中で55mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび55mlのアセトニトリルと混合した。86gのスルフリルクロリドを滴下して加え、25℃未満の温度を維持した。添加が完了した後、混合物を20℃でさらに1時間撹拌した。反応の塊を10%水酸化ナトリウムで中和し、さらに1時間撹拌した。粗生成物を濾別し、水で洗浄し、トルエン中で再びスラリーにし、濾過し、真空オーブン中で乾燥して、104gの5-クロロ-4-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを得た。
【0057】
[実施例4]
4-クロロ-2-シアノ-N,N-ジメチル-5-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-1-スルホンアミドの調製:
90gの実施例3の生成物を、500mlのフラスコ中で117gの炭酸カリウムおよび100mlの酢酸エチルと混合した。混合物を75℃に加熱し、87gのN,N-ジメチルスルファモイルクロリドを30分かけて滴下して加えた。温度を10時間維持した。
冷却した後、酢酸エチルおよび水を添加し、混合物を濾過した。固体を水および酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、68gの4-クロロ-2-シアノ-N,N-ジメチル-5-(4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-1-スルホンアミドを得た。純度96.1%。
本願は以下の態様にも関するものである。
(1) 次式(I):
【化14】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、次式(II):
【化15】
で表される化合物を、極性有機溶媒の存在下で硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される還元剤と反応させるステップを含む方法。
(2) 前記硫黄含有誘導体の金属塩が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、前記(1)に記載の方法。
(3) 還元剤が、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される、前記(2)に記載の方法。
(4) 前記極性有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、Ν,Ν-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、および/またはそれらの混合物から選択される、前記(1)に記載の方法。
(5) 反応が、約40℃~150℃の温度で実施される、前記(1)に記載の方法。
(6) 前記反応が、約70℃~120℃の温度で実施される、前記(1)に記載の方法。
(7) 式(II)の化合物と前記還元剤のモル比が、約1:1~約1:6である、前記(1)に記載の方法。
(8) 式(II)の前記化合物と前記還元剤のモル比が、約1:1~約1:3である、前記(1)に記載の方法。
(9) 式(II)の前記化合物と前記還元剤のモル比が、約1:1~約1:5である、前記(1)に記載の方法。
(10) 次式(III):
【化16】
で表される4-クロロ-2-シアノ-イミダゾール化合物を調製する方法であって、
a)次式(II):
【化17】
で表される化合物を、硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される前記還元剤と反応させるステップと、
b)a)の前記生成物を塩素化剤と反応させるステップと
を含む方法。
(11) 前記塩素化剤が、N-クロロスクシンイミドおよび/またはスルフリルクロリドからなる群から選択される、前記(10)に記載の方法。
(12) 塩素化反応が、0℃~40℃の温度で実施される、前記(10)に記載の方法。
(13) 次式(IV):
【化18】
で表される2-シアノイミダゾール化合物を調製する方法であって、
a)次式(II):
【化19】
で表される化合物を、硫黄含有誘導体の金属塩からなる群から選択される前記還元剤と反応させるステップと、
b)a)の前記生成物を塩素化剤と反応させるステップと、
c)b)の前記生成物を、塩基および極性有機溶媒の存在下でΝ,Ν-ジメチルスルファモイルクロリドと反応させるステップと
を含む方法。
(14) 前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される、前記(13)に記載の方法。
(15) 式(IV)で表される化合物を現場調製するステップを含む、前記(13)に記載の方法。