(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】HDAC阻害剤またはREPタンパク質を伴う細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20220916BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20220916BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20220916BHJP
C12N 15/89 20060101ALI20220916BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20220916BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20220916BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20220916BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/861
C12N15/35
C12N15/89
C12N15/88
C12N7/02
C12N15/90 Z
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019552215
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 US2018023841
(87)【国際公開番号】W WO2018175775
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513009107
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ティアナン, オーブリー
(72)【発明者】
【氏名】ティッパー, クリストファー
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/201252(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/134337(WO,A1)
【文献】Xiang, Q. et al.,A method mediated AAVS1 recombination with Rep mRNA and homologous arm,Acta Biochimica et Biophysica Sinica,2012年,Vol. 44(12),pp. 1015-1022
【文献】Howden, S. E. et al.,The transient expression of mRNA coding for Rep protein from AAV facilitates targeted plasmid integration,J. Gene Med.,2008年,Vol. 10(1),pp. 42-50
【文献】小澤 敬也,4. AAVを利用した遺伝子治療,ウイルス,2007年,Vol. 57(1),pp. 47-56
【文献】Li, J. et al.,Role for highly regulated rep gene expression in adeno-associated virus vector production,J. Virol.,1997年,Vol. 71(7),pp. 5236-5243
【文献】Martin, J. et al.,Generation and Characterization of AAV Producer Cell Lines for Research and Preclinical Vector Production,Human Gene Therapy Methods,2013年,Vol. 24(4),pp. 253-269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えAAV(rAAV)ベクター力価を増加させる方法であって、
a)rAAVベクターを
AAV rep mRNAと共に真核細胞培養物に共送達すること
;
b)前記真核細胞培養物にヘルパーアデノウイルスを感染させること;および
c)前記真核細胞培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増加させること
を含
み、前記rep mRNAが、rep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共送達することが磁気ビーズを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記共送達することがナノ粒子を伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記共送達することがセルスクイージングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記
共送達することが脂質への曝露を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記
共送達することがリン酸カルシウムへの曝露を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記
共送達することがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記
共送達することがDEAEデキストランへの曝露を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記
共送達することが活性化デンドリマーへの曝露を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
組換えAAV(rAAV)を産生するための細胞株を開発する方法であって、
a)rAAVベクターを
AAV rep mRNAと共に真核細胞
培養物に共送達すること;
b)前記真核細胞培養物にヘルパーアデノウイルスを感染させること;
c)真核細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞を同定すること;および
d)前記真核細胞を含む培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増強すること
を含
み、前記rep mRNAが、rep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、方法。
【請求項13】
前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記共送達することが磁気ビーズを伴う、請求項1
2に記載の方法。
【請求項15】
前記共送達することがナノ粒子を伴う、請求項1
2に記載の方法。
【請求項16】
前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項17】
前記共送達することがセルスクイージングを含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項18】
前記
共送達することが脂質への曝露を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
前記
共送達することがリン酸カルシウムへの曝露を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項20】
前記
共送達することがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項21】
前記
共送達することがDEAEデキストランへの曝露を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項22】
前記
共送達することが活性化デンドリマーへの曝露を含む、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年3月22日に出願された米国出願番号第62/475,112号に基づく利益および優先権を主張しており、この出願の全体の内容は、すべての目的のためにその全体が参考として本明細書によって援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、HDAC阻害剤またはアデノ随伴ウイルス(AAV)repタンパク質の使用を伴う細胞培養法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、非病原性の複製欠損パルボウイルスである。組換えAAV(rAAV)ベクターは、それらを遺伝子治療のためのベクターとして魅力的なものとする多くの独特の特徴を有する。特に、rAAVベクターは、分裂細胞および非分裂細胞に治療遺伝子を送達することができ、これらの遺伝子は、標的細胞のゲノムに組み込まれることなく、長期間存続することができる。rAAVの幅広い治療応用を考えると、多量のウイルスを費用対効果の高い様式で産生することは有用である。安定な真核細胞株は、宿主ゲノムの第19染色体に優先的に組み込まれるrAAVベクターを用いてそれらをトランスフェクトするによって生成されうる。しかし、典型的には費用対効果の高い製造工程を開発するのに十分高いrAAV収率を有する1つの産生細胞株を同定するために、数千の細胞クローンが複数回のトランスフェクション実行からスクリーニングされなければならない。したがって、高収率のrAAVを産生する安定細胞株を生成する方法の改善に対する必要性がある。
【0004】
野生型AAVゲノムはrep78、rep68、rep52およびrep40と称される4つの制御タンパク質をコードする。これらのタンパク質は、ウイルス生活環の状況を調整する、部位特異的DNA結合、ATP依存性部位特異的エンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼおよびATPase活性を累積的に含む。典型的には、rAAVベクターは、repタンパク質をコードするDNA配列を欠いており、145ヌクレオチド長AAV末端逆位配列(ITR)によって隣接された外来DNAから構成される。しばしば、rAAVは、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスを用いて産生される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
AAV rep mRNAの送達が、例えば、rAAV安定細胞株の生成およびこれらの細胞から収集されるrAAVベクターの力価を増強するために使用されうることが今や発見された。したがって、本発明の一態様は、rAAVベクター力価を増加させる、または、例えば真核細胞または宿主細胞培養物からの、rAAV収率を増強する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達(co-delivering)すること、ならびに細胞培養物からrAAVを収集することを含む。
【0006】
一部の実施形態では、共送達法は、リポソームに基づくトランスフェクションを含む。一部の実施形態では、共送達法は、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAEデキストランまたは活性化デンドリマーを使用する方法などの化学物質に基づくトランスフェクション(chemical-based transfection)を含む。他の実施形態では、共送達法は、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、磁気ビーズ、ナノ粒子またはセルスクイージングを伴う。
【0007】
本発明の別の態様は、細胞株、例えば組換えAAV(rAAV)を産生するための安定細胞株を生成するまたは開発する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することに続いて、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること(例えば、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞コロニーを選択することによる)、ならびに必要に応じて、細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、rAAVのrep mRNAを伴う共送達は、収集されるrAAVの力価を増強する。
【0008】
一部の実施形態では、共送達法は、リポソームに基づくトランスフェクションを含む。一部の実施形態では、共送達法は、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAEデキストランまたは活性化デンドリマーを使用する方法などの化学物質に基づくトランスフェクションを含む。他の実施形態では、共送達法は、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、磁気ビーズまたはナノ粒子を伴う。
【0009】
HDAC阻害剤が、例えば、真核細胞もしくは宿主細胞ゲノムへの組換えポリヌクレオチドの組み込みを増強するため、および/または真核細胞もしくは宿主細胞からの遺伝子産物もしくはウイルスベクターの収率を増加させるために使用されうることも発見された。したがって、本発明の一態様は、組換えポリヌクレオチドをトリコスタチンA(TSA)などのHDAC阻害剤と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、真核細胞もしくは宿主細胞ゲノムへのポリヌクレオチドの組み込みは検出される、および/または安定真核細胞もしくは宿主細胞株が生成される。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子産物は、真核細胞または宿主細胞培養物において発現される。遺伝子産物は、組換えポリヌクレオチドによってコードされていてよい、または組換えポリヌクレオチドの存在に間接的に依存してよい。遺伝子産物は、例えば、リボ核酸、ペプチまたはタンパク質でありうる。一部の実施形態では、組換えポリヌクレオチドは、これだけに限らないがrAAVベクターを含むウイルスベクターである。組換えウイルスベクターのHDAC阻害剤を伴う共送達は、ウイルスベクターの宿主細胞ゲノムへの組み込みを増強し、宿主細胞から収集されるウイルスベクターの収率を増加しうる。
【0010】
一部の実施形態では、共送達法は、リポソームに基づくトランスフェクションまたは、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAEデキストラン、もしくは活性化デンドリマーを利用する方法などの化学物質に基づくトランスフェクションを伴う。他の実施形態では、共送達法は、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、磁気ビーズ、ナノ粒子またはセルスクイージングを伴う。
【0011】
本発明のこれらおよび他の態様および特性は、次の詳細な記載および特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、rAAVベクターのrep68 mRNAおよび/またはTSAを伴うエレクトロポレーションによる同時トランスフェクション後に、組み込まれたrAAVゲノムを含有するHeLa S3細胞コロニーの定量を示す図である。結果は、96ウエルプレート上でのトランスフェクション10日後のコロニー増殖数を表している。TSAを含まない、1μgのrep68 mRNAのトランスフェクション条件下でのコロニー数は、10枚の96ウエルプレートからの平均であった(+/-標準偏差)。
【0013】
【
図2】
図2は、qPCRによるDNase抵抗性粒子の定量を示す図である。rAAVは、rAAVベクターのrep68 mRNAおよび/またはTSAを伴うエレクトロポレーションによる共送達後に確立されたHela S3コロニーによって産生された。低いC
t値は、宿主細胞から産生されたrAAVの高い収率を示している。平均C
t値およびC
t値の分布が示されている。
【0014】
【
図3】
図3は、rep68 mRNAおよび/またはTSA:1μg rep68 mRNA-8G3クローン、30nM TSA-12B5クローンおよび0.75μg rep68 mRNA+100nM TSA-16D2クローンを伴うrAAVベクターの同時トランスフェクション後のHeLa細胞に由来する4つの細胞株においてqPCRによってアッセイされた増幅rAAVゲノムコピー(GC)を示す図である。細胞株10G8は、rAAVベクター単独のトランスフェクション後に確立された。アデノウイルスヘルパーウイルスを用いた感染後、細胞は感染後0、1、2、3および4日目(D0、D1、D2、D3、D4)に採取され、それからゲノムDNAがアッセイのために単離された。エラーバーは、三回反復のqPCR由来の標準偏差を示している。
【0015】
【
図4】
図4は、
図3に記載されているのと同じ4つの細胞株において産生されたrAAV力価を示す図である。ヘルパーウイルス感染後、細胞から上清を採取し、DNase抵抗性粒子(DRP)がqPCRによって定量され、上清1mlあたりのrAAVゲノムコピー(GC/ml)をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明は、トリコスタチンAなどのHDAC阻害剤が、組換えポリヌクレオチドと共に真核細胞に共送達され得、それが例えば、真核細胞におけるポリヌクレオチドの組み込みおよび/または発現を促進できるという発見に部分的に基づいている。本発明は、rep mRNA(例えば、rep68およびrep78)ならびに/またはHDAC阻害剤が、rAAVベクターと共に宿主細胞に共送達されてよく、例えば宿主細胞へのrAAVの送達および組み込み、宿主細胞でのrAAVの増幅ならびに/または宿主細胞によって産生されるrAAVの力価を増強するという発見にも部分的に基づいている。
【0017】
本発明の種々の特性および態様は、下により詳細に論じられる。
I.rAAVの産生の増加
【0018】
本発明の一つの態様は、rAAV力価を増加させる、または例えば真核細胞または宿主細胞培養物からの、rAAV収率を増強する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68およびrep78 mRNA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68およびrep78 mRNA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、真核細胞または宿主細胞培養物をrAAVの生成を可能にする条件下で培養すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。
【0019】
本発明の別の態様は、rAAVベクター力価を増加させる、または例えば真核細胞または宿主細胞培養物からの、rAAV収率を増強する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、rAAVベクターをHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、真核細胞または宿主細胞培養物をさらなるrAAVの生成を可能にする条件下で培養すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。
【0020】
本発明の別の態様は、rAAVベクター力価を増加させる、または例えば真核細胞または宿主細胞培養物からの、rAAV収率を増強する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68およびrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68およびrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、真核細胞または宿主細胞培養物をさらなるrAAVの生成を可能にする条件下で培養すること、および細胞培養物からrAAVを収集することを含む。
【0021】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、Parvovirus科のDependoparvovirus属の小さな無エンベロープの正二十面体ウイルスである。これは、異なる組織向性を示す異なるAAV血清型により、数種の組織タイプの分裂細胞および静止状態の細胞の両方に感染することができる。AAVは、非自律的に複製し、潜伏期および感染期を有する生活環を有する。潜伏期において、細胞がAAVに感染した後、AAVはプロウイルスとして宿主のゲノムに組み込まれる。ヒト細胞では、優先的組み込み部位は、第19染色体の長腕上のおよそ2kbの領域に存在する(19q13.3-qter)。感染期は、AAV遺伝子発現を活性化し、宿主細胞染色体からのプロウイルスDNAの切り出しに続いて、ウイルスゲノムの複製およびパッケージングをもたらす、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルス)もまた細胞に感染しなければ生じない。ヘルパーウイルス誘導細胞溶解では、新たに構築されたウイルスが放出される。
【0022】
野生型AAVは、2つのウイルス遺伝子-repおよびcapに隣接する末端に2つの145ヌクレオチド長の末端逆位配列(ITR)を含有する、およそ4.7kbの1本鎖直鎖DNAゲノムを有する。rep遺伝子は、2つのプロモーターおよび選択的スプライシングの使用を通じて、4つの制御タンパク質-rep78、rep68、rep52およびrep40をコードする。これらのタンパク質は、AAVゲノム複製に関与している。cap遺伝子は、選択的スプライシングおよび翻訳の開始を通じて、3つのカプシドタンパク質、VP1、VP2およびVP3をもたらす。これらのタンパク質は、AAV粒子のカプシドを形成する。
【0023】
AAV ITRが、ゲノムレスキュー、複製およびパッケージングに関与するすべてのシス作用性エレメントを含有しており、AAV ITRがウイルスコード領域、すなわちrepおよびcap遺伝子領域から分離されていることを考慮すると、一部またはすべてのAAV 4.3kb内部ゲノムは、組換えAAV(rAAV)ベクターを生じさせるように、外来DNA、例えば目的の外来タンパク質のための発現カセットで置換されうる。rAAVのゲノムは、一本鎖DNAであり、4.7kbである。AAVベクターは、サイズが4.7kbであるか、または5.2kb規模の特大ゲノムもしくは3.0kbほどの小さなゲノムを含む、4.7kbよりも大きいかもしくは小さい一本鎖ゲノムを有しうる。さらに、ベクターゲノムは、ウイルス内でゲノムが実質的に二本鎖であるように、実質的に自己相補性でありうる。すべてのタイプのゲノムを含有するrAAVベクターは、本発明の方法における使用に好適である。
【0024】
AAVは、血清型AAV-1~AAV-12だけでなく、非ヒト霊長類由来の100を超える血清型を含む、多数の血清学的に識別可能なタイプを含む(例えば、Srivastava、J. Cell Biochem.、105巻(1号):17~24頁(2008年);およびGaoら、J. Virol.、78巻(12号)、6381~6388頁(2004年)を参照されたい)。任意の血清型のAAVを本発明において使用することができ、当業者はその所望のrAAVベクターの産生に好適なAAVタイプを特定することができる。
【0025】
rAAVベクターは、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して、rep mRNA(例えば、rep68 mRNAおよび/またはrep78 mRNA)と共に細胞培養物、例えば宿主または真核細胞培養物に共送達されうる。rAAVベクターは、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して、HDAC阻害剤と共に細胞培養物、例えば宿主または真核細胞培養物に共送達されうる。rAAVベクターは、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して、rep mRNA(例えば、rep68 mRNAおよび/またはrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤と共に細胞培養物、例えば宿主または真核細胞培養物に共送達されうる。
【0026】
本明細書において使用される場合、真核細胞培養物は、rAAVを産生できる任意の1種または複数種の細胞でありうる。一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えばHeLa細胞、COS細胞、HEK293細胞、A549細胞、BHK細胞またはVero細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞、例えばSf9細胞、Sf-21細胞、Tn-368細胞またはBTI-Tn-5B1-4(High-Five)細胞である(例えば米国特許第6,156,303号、第5,387,484号、第5,741,683号、第5,691,176号、第5,688,676号、第8,163,543号、米国公開第20020081721号、PCT公開第WO00/47757号、第WO00/24916号および第WO96/17947号を参照されたい)。他に示さない限り、用語「細胞」または「細胞株」は、示される細胞または細胞株の改変されたまたは操作されたバリアントを含むと理解される。
【0027】
Rep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNAは、例えばin vitro転写によって産生されうる(Howdenら、J Gene Med 2008年;10巻:42~50頁)。
【0028】
本明細書において使用されるHDAC阻害剤は、HDACの4種のクラスのいずれか1つの阻害剤でありうる。例示的HDAC阻害剤としては、トリコスタチンA(TSA)、トラポキシン(trapxin)B、ベンズアミド、フェニルブチレート(phenylbutyraet)、バルプロ酸、ヒドロキサム酸ボリノスタット(vorinostate)(SAHA)、ベリノスタット、LAQ824、パノビノスタット、エンチノスタット、CI994、モセチノスタット、ニコチンアミド、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンおよび2-ヒドロキシナフトアルデヒドが挙げられる。
【0029】
共送達の方法は、標的細胞に応じて変化する。好適な方法としては、例えば、リポソームに基づくトランスフェクション;リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAEデキストランもしくは活性化デンドリマーを利用する方法などの化学物質に基づくトランスフェクション;マイクロインジェクション;エレクトロポレーション;磁気ビーズ;ナノ粒子;またはセルスクイージングが挙げられる(例えば、Dingら、(2017年)Nat. Biomed. Eng. 1巻:0039を参照されたい)。当業者は、好適な共送達法を同定することができ、rAAVベクターを送達しようとする細胞の種類に応じて条件を最適化することができる。
【0030】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、エレクトロポレーションを使用してHelaS3細胞にrep68 mRNAと共に共送達される。一部の実施形態では、rAAVベクターは、エレクトロポレーションを使用してHelaS3細胞にHDAC阻害剤、例えばTSAと共に共送達される。一部の実施形態では、rAAVベクターは、エレクトロポレーションを使用してHelaS3細胞にrep68 mRNAおよびTSAの両方と共に共送達される。
【0031】
真核細胞培養物への送達後、rAAVベクターは、当技術分野において公知の多数の方法によって細胞によって産生されうる。rAAVの産生を可能にするために、宿主細胞は、AAV末端逆位配列(ITR)(例えば、目的の異種性ヌクレオチド配列または目的の外来タンパク質をコードする発現カセットに隣接していてよい)、AAV repおよびcap遺伝子機能だけでなく追加的ヘルパー機能も含んで提供されなければならない。これらは、種々の適切なプラスミドまたはベクターを使用して宿主細胞に提供されうる。追加的ヘルパー機能は、例えばアデノウイルス(AV)感染によって、必要なすべてのAVヘルパー機能遺伝子を保有するプラスミドによって、または単純ヘルペスウイルルス(HSV)もしくはバキュロウイルスなどの他のウイルスによって提供されうる。任意の遺伝子、遺伝子機能または宿主細胞によるrAAV産生のために必要な他の遺伝材料は、宿主細胞内に一過的に存在しうる、または宿主細胞ゲノムに安定に挿入されうる。一部の実施形態では、宿主細胞は、AAV repおよびcap遺伝子機能およびrAAVベクターゲノムを含む産生細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、産生の時に別の組換えウイルスによってrAAVベクターゲノムが提供される、AAV repおよびcap遺伝子機能を含むパッケージング細胞である。本発明の方法とともに使用されるのに好適なrAAV産生方法は、Clarkら、Human Gene Therapy、6巻:1329~1341頁(1995年)、Martinら、Human Gene Therapy Methods、24巻:253~269頁(2013年)、Thorneら、Human Gene Therapy、20巻:707~714頁(2009年)、Fraser Wright、Human Gene Therapy、20巻:698~706頁(2009年)およびViragら、Human Gene Therapy、20巻:807~817頁(2009年)に開示されたものを含む。
【0032】
rAAV粒子は、細胞を溶解することにより、宿主細胞から得られうる。AAV感染細胞の溶解は、感染性(infections)ウイルス粒子を放出するために細胞を化学的にまたは酵素的に処理する方法により達成されうる。これらの方法は、ベンゾナーゼもしくはDNAseなどのヌクレアーゼ、トリプシンなどのプロテアーゼ、または洗剤もしくは界面活性剤の使用を含む。ホモジナイゼーションもしくは粉砕などの物理的破壊、またはマイクロフルイダイザー圧力セルによる加圧、または凍結融解サイクルも使用されうる。代替的に、細胞溶解を必要とせずに、上清がAAV感染細胞から採取されうる。
【0033】
例えば、細胞溶解の結果として生じた細胞残屑を除去するために、rAAV粒子およびヘルパーウイルス粒子を含有する試料を精製することが必要であり得る。ヘルパーウイルス粒子およびAAV粒子の最小限の精製の方法は、当分野で公知であり、本発明の方法における使用のためのAAV粒子およびヘルパーウイルス粒子の両方を含有する試料を準備するために、任意の適切な方法が使用されうる。2つの例示的な精製方法は、塩化セシウム(CsCl)およびイオジキサノールに基づく密度勾配精製である。両方法は、Strobelら、Human Gene Therapy Methods、26巻(4号):147~157頁(2015年)に記載されている。最小限の精製は、例えば、AVBセファロース親和性樹脂(GE Healthcare Bio-Sciences AB、Uppsala、Sweden)を使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して達成することもできる。AVBセファロース親和性樹脂を使用するAAV精製の方法は、例えば、Wangら、Mol Ther Methods Clin Dev.、2巻:15040頁(2015年)に記載されている。
【0034】
熱によってヘルパーウイルスを不活性化することが必要であり得る。熱不活性化技術は、AAV粒子およびヘルパーウイルス粒子の異なる熱安定性に基づく。例えば、AAV粒子は、56℃もの高い温度まで加熱されうるが、依然としてインタクトなままであり、一方、AV粒子は不活性にされる。Conwayら、Gene Therapy 6巻、986~993頁、1999年は、AAVを含有する試料中のHSVの示差熱不活性化(differential heat inactivation)を記載している。熱不活性化は、任意の公知の方法論により達成されうる。以下に記載の例において、熱不活性化は、300μLまたはそれ未満の試料容積を急速に加熱および冷却するために、サーモサイクラーを使用して達成された。このシステムは、主に伝導性の熱伝達に依拠するという理由で選択され、連続フローシステムおよび能動的混合を採用するより大きなバッチシステムの両方のための実行可能なモデルとなっている。連続フローシステムの例としては、Bio-therapeutic ManufacturingのためのDHX(商標)Single-Use Heat Exchanger(Thermo Fisher Scientific、Millersberg、PA)などの、連続フロー熱交換器を通る試料の通過が挙げられる。そのようなシステムは、熱交換器を通る試料の流速を制御し、その結果として加熱プロセスの持続時間および熱交換器の温度を制御し、その結果として熱不活性化の温度を制御することにより、オペレーターが熱不活性化プロセスを制御することを可能にする。
【0035】
代替的に、熱不活性化は、様々なサイズのバッチシステムを使用して達成されうる。例えば、熱不活性化は、AAVを含有する試料を1LのPETGボトル中に置き、そのボトルを所望の不活性化温度に設定した水浴中に所望の期間、混合しながら置くことにより1Lスケールで達成可能であり、例えば、試料は、47℃に20分間加熱されうる。より大きなスケールでは、熱不活性化は、5Lのバイオプロセシングバッグ中のrAAVを含有する試料を、所望の不活性化温度に設定した温度制御ロッキングプラットフォーム上に所望の期間置くことにより達成されうる。例えば、ロッキングプラットフォームは、12°の混合角度、30RPMのロッキングスピード、49℃で40分間に設定されうる。
【0036】
熱不活性化は、rAAV粒子とヘルパーウイルス粒子の間で安定性が十分に異なるために、ヘルパーウイルス粒子が実質的に不活性化される一方、活性なrAAV粒子が残存する、任意の温度で行いうる。当業者は、より大きなレベルのAV低減を達成するためにはより高い温度が必要とされうることを理解する。
【0037】
熱不活性化が達成されると、不活性化の効率を決定することが必要または望ましい場合がある。不活性化プロトコールの効力は、プラークアッセイなどの複製可能なヘルパーウイルスの存在を検出するアッセイにより決定される。AV、HSV、バキュロウイルスなどのためのプラークアッセイを含む、ヘルパーウイルスのためのプラークアッセイは、当業者に周知である。アデノウイルスのプラークアッセイは、任意の適切な細胞タイプ、例えば、HeLa細胞またはHEK293細胞を使用して実行されうる。標準的なプラークアッセイプロトコールは、例えば、Current Protocols in Human Genetics、2003年に記載されている。アデノウイルス力価を測定するための代替アッセイは、免疫細胞化学染色を使用してヘキソンタンパク質などのウイルスタンパク質を検出することによる、培養物中の感染細胞の同定を可能とするものを含む。そのようなアッセイは、QuickTiter(商標)Adenovirus Titer Immunoassay Kit(Cell Biolabs、San Diego、CA)を含む。一般に、不活性化の効率は、ウイルスの対数減少(LRV)として報告される。
【0038】
rAAV粒子の定量は、AAV感染がin vitroの細胞変性効果をもたらさず、したがって、感染力価を決定するためにプラークアッセイが使用できないという事実により、複雑である。しかしながら、AAV粒子は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(Clarkら、Hum. Gene Ther.、10巻、1031~1039頁(1999年))もしくはドットブロットハイブリダイゼーション(Samulskiら、J. Virol.、63巻、3822~3828頁(1989年))を含むいくつかの方法を使用して、または高度に精製されたベクター調製物の光学密度により(Sommerら、Mol. Ther.、7巻、122~128頁(2003年))定量可能である。DNase抵抗性粒子(DRP)は、サーモサイクラー(例えば、iCycler iQ 96ウエルブロックフォーマットサーモサイクラー(Bio-Rad、Hercules、CA))におけるリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(DRP-qPCR)により、定量可能である。AAV粒子を含有する試料が、DNaseI(100U/ml;Promega、Madison、WI)の存在下、37℃で60分間インキュベートされ、続いて、50℃で60分間のプロテイナーゼK(Invitrogen、Carlsbad、CA)消化(10U/ml)、次いで、95℃で30分間、変性させる。使用されるプライマープローブセットは、AAVベクターゲノムの非天然部分、例えば、目的のタンパク質のポリ(A)配列に特異的であるべきである。PCR産物は、プライマー、プローブおよび増幅された配列の長さおよび組成に基づく、任意の適切なサイクリングパラメータのセットを使用して増幅されうる。代替プロトコールは、例えば、Lockら、Human Gene Therapy Methods、25巻(2号):115~125頁(2014年)に開示されている。
【0039】
rAAV粒子の感染力は、例えば、Zhenら、Human Gene Therapy、15巻:709~715頁(2004年)に記載のTCID50(50%の組織培養感染量)アッセイを使用して決定されうる。このアッセイでは、AAVベクター粒子が連続的に希釈され、96ウエルプレート中でAV粒子とともにrep/cap発現細胞株に共感染するために使用される。感染後48時間で、感染させたウエルおよび対照ウエルからの全細胞内DNAが抽出される。次いで、導入遺伝子特異的プローブおよびプライマーとともにqPCRを使用して、AAVベクターの複製が測定される。1ミリリットルあたりのTCID50感染力(TCID50/ml)は、10倍の連続希釈でのAAV陽性のウエルの比を使用して、Kaerber方程式により計算される。
II.安定細胞株の生成
【0040】
本発明の別の態様は、細胞株、例えば組換えAAV(rAAV)を産生するための安定細胞株を生成するまたは開発する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することに続いて、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること(例えば、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞コロニーを選択することによって)および、必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、rAAVベクターをrep mRNAと共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、rAAVベクターを真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込むことを可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞培養物を培養すること、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること、さらなるrAAVの生成を可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞を培養すること、および必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、rAAVのrep mRNAを伴う共送達は、rAAVベクターの真核細胞または宿主細胞ゲノムへの組み込みを増強する。一部の実施形態では、rAAVのrep mRNAを伴う共送達は、収集されるrAAVの力価を増強する。
【0041】
本発明の別の態様は、細胞株、例えば組換えAAV(rAAV)を産生するための安定細胞株を生成するまたは開発する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することに続いて、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること(例えば、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞コロニーを選択することによって)および、必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、rAAVベクターをHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、rAAVベクターを真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込むことを可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞培養物を培養すること、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること、さらなるrAAVの生成を可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞を培養すること、および必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、rAAVのHDAC阻害剤(例えば、TSA)を伴う共送達は、rAAVベクターの真核細胞または宿主細胞ゲノムへの組み込みを増強する。一部の実施形態では、rAAVのHDAC阻害剤(例えば、TSA)を伴う共送達は、収集されるrAAVの力価を増強する。
【0042】
本発明の別の態様は、細胞株、例えば組換えAAV(rAAV)を産生するための安定細胞株を生成するまたは開発する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することに続いて、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること(例えば、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞コロニーを選択することによって)および、必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達すること、rAAVベクターを真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込むことを可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞培養物を培養すること、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること、さらなるrAAVの生成を可能にする条件下で真核細胞または宿主細胞を培養すること、および必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。一部の実施形態では、rAAVのrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)を伴う共送達は、rAAVベクターの真核細胞または宿主細胞ゲノムへの組み込みを増強する。一部の実施形態では、rAAVのrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)およびHDAC阻害剤(例えば、TSA)を伴う共送達は、収集されるrAAVの力価を増強する。
【0043】
本発明の別の態様は、細胞株、例えば組換えAAV(rAAV)を産生するための安定細胞株を生成するまたは開発する方法を提供する。方法は、rAAVベクターをrep mRNA(例えば、rep68および/またはrep78 mRNA)ならびにHDAC阻害剤(例えば、TSA)と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することに続いて、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞または宿主細胞を同定すること(例えば、真核細胞または宿主細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞コロニーを選択することによって)および、必要に応じて細胞培養物からrAAVを収集することを含む。
【0044】
トランスフェクション後、rAAVの宿主ゲノムへの組み込みは、Nakaiら、Nature Genetics(2003年)34巻、297~302頁、Philpottら、Journal of Virology (2002年)76巻(11号):5411~5421頁およびHowdenら、J Gene Med 2008年;10巻:42~50頁によって記載されるとおり、抗生物質選択、蛍光標識細胞分取、サザンブロット、PCRに基づく検出、蛍光in situハイブリダイゼーションなどの種々の方法によってアッセイされうる。さらに、安定細胞株は、Clark、Kidney International、61巻(2002年):S9~S15頁およびYuanら、Human Gene Therapy 2011年5月;22巻(5号):613~24頁に記載のものなどの当技術分野において周知のプロトコールに従って確立されうる。
III.組換えポリヌクレオチドのHDAC阻害剤を伴う共送達
【0045】
本発明の別の態様は、組換えポリヌクレオチドをトリコスタチンA(TSA)などのHDAC阻害剤と共に真核細胞または宿主細胞培養物に共送達することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、組換えポリヌクレオチドをHDAC阻害剤と共に真核細胞もしくは宿主細胞培養物に共送達すること、ポリヌクレオチドの真核細胞もしくは宿主細胞ゲノムへの組み込みを可能にする条件下で真核細胞もしくは宿主細胞培養物を培養すること、ポリヌクレオチドの真核細胞もしくは宿主細胞ゲノムへの組み込みを検出すること、および/または安定な真核細胞もしくは宿主細胞株を生成すること、を含む。
【0046】
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子産物は、真核細胞または宿主細胞培養物において発現される。遺伝子産物は、組換えポリヌクレオチドによってコードされていてよい、または組換えポリヌクレオチドの存在に間接的に依存してよい。遺伝子産物は、例えば、リボ核酸、ペプチドまたはタンパク質でありうる。
【0047】
一部の実施形態では、組換えポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、例えばrAAVベクターである。組換えウイルスベクターのHDAC阻害剤を伴う共送達は、ウイルスベクターの宿主細胞ゲノムへの組み込みを増強し、宿主細胞から収集されるウイルスの収率を増加させうる。
【0048】
本明細書において使用される組換えポリヌクレオチドは、DNA、RNA、ハイブリッドおよびこれらのキメラでありうる。それらは、1本鎖または2本鎖でありうる。一部の実施形態では、それらは、所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列がシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の下流に組み込まれ、シグナルペプチドのヌクレオチド配列の下流のタンパク質の高レベルでの発現を可能にする、発現ベクターでありうる。本発明は、一般に使用されるプラスミドおよびウイルスなどの任意のベクターに好適である。そのようなベクターの例として、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218およびアデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスに基づくベクターを含みうる。本発明の組換えポリヌクレオチドは、プロモーター、ターミネーター、コザック配列、マルチクローニング部位、薬剤耐性遺伝子および他のヌクレオチド配列などの発現ベクターにおいて一般に使用される他のヌクレオチド配列をさらに組み入れることができる。
【0049】
本明細書において使用されるHDAC阻害剤は、HDACの4種のクラスのいずれか1つに作用する阻害剤でありうる。例としては、トリコスタチンA、トラポキシンB、ベンズアミド、フェニルブチレート、バルプロ酸、ヒドロキサム酸ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、パノビノスタット(LBH589)、エンチノスタット(MS-275)、CI994、モセチノスタット(MGCD0103)、ニコチンアミド、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンおよび2-ヒドロキシナフトアルデヒドが挙げられる。
【0050】
HDAC阻害剤および組換えポリヌクレオチドは、哺乳動物由来、昆虫由来もしくは酵母由来の細胞株;初代細胞または培養物中で増殖できる幹細胞を含む任意の真核細胞培養物に同時投与されうる。ポリヌクレオチドおよびHDAC阻害剤の共送達法は、標的細胞型およびポリヌクレオチドに大きく依存する。それらとしては、リポソームに基づくトランスフェクション;リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAEデキストランもしくは活性化デンドリマーを利用する方法などの化学物質に基づくトランスフェクション;マイクロインジェクション;エレクトロポレーション;磁気ビーズ;ナノ粒子;またはセルスクイージングが挙げられる。当業者は、ポリヌクレオチドを送達しようとする細胞の種類に応じて好適な共送達法を同定することができるであろう。
【0051】
ポリヌクレオチドをHDAC阻害剤と共に真核細胞培養物に共送達した後に、ポリヌクレオチドの宿主ゲノムへの組み込みは、Wangら、Gene Therapy(2004年)11巻、711~721頁、Philpottら、Journal of Virology(2002年)76巻(11号):5411~5421頁、Howdenら、J Gene Med 2008年;10巻:42~50頁によって記載されるとおり、抗生物質選択、蛍光標識細胞分取、PCRに基づく方法、蛍光in situハイブリダイゼーションなどの当技術分野において周知の種々の方法によってアッセイされうる。付加的に、安定細胞株は、Longoら、Methods Enzymol 2013年;529巻:209~226頁およびYuanら、Human Gene Therapy 2011年5月;22巻(5号):613~24頁に記載のプロトコールに従って確立されうる。一部の実施形態では、宿主細胞中の1つまたは複数の遺伝子産物は、発現される。遺伝子産物は、組換えポリヌクレオチドによってコードされていてよい、または宿主細胞に導入された組換えポリヌクレオチドの存在に間接的に依存してよい。リボ核酸、ペプチドからタンパク質に変化した遺伝子産物は、RT-PCR、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、サザンブロット、免疫蛍光およびELISAなどの当技術分野において十分確立された方法によって検出されうる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターであり、それらの産生、単離および定量は、当技術分野において公知である。
【0052】
記載全体を通じて、組成物が特定の構成成分を有している、含んでいる(including)もしくは含んでいる(comprising)として記載される場合、または工程および方法が特定のステップを有している、含んでいる(including)もしくは含んでいる(comprising)として記載される場合、追加的に、列挙された構成成分から本質的になるまたはそれからなる本発明の組成物があり、列挙された処理ステップから本質的になるまたはそれからなる本発明による工程および方法があることが企図される。
【0053】
本出願において、エレメントまたは構成成分が、列挙されたエレメントまたは構成成分のリストに含まれるおよび/またはそれから選択されると述べられている場合、エレメントもしくは構成成分は、列挙されたエレメントもしくは構成成分の任意の1つでありうる、またはエレメントもしくは構成成分は、列挙されたエレメントもしくは構成成分の2つもしくはそれより多くからなる群から選択されうることは理解されるべきである。
【0054】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法のエレメントおよび/または特性が、本明細書において明確であるかまたは暗示的であるかどうかに関わらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の方法において組み合わされうることは理解されるべきである。例えば、具体的な化合物に言及する場合、その化合物は、内容からそうでないと理解されない限り、本発明の組成物の種々の実施形態および/または本発明の方法において使用されうる。言い換えると、本出願内で、実施形態は、明確で簡潔な応用が記載され、描かれることを可能にする方法で記載され、描かれているが、実施形態が本教示および発明(単数または複数)から離れることなく、種々に組み合わされる、または分けられうることは意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載および描かれるすべての特性は、本明細書に記載され、描かれる本発明のすべての態様(単数または複数)に適用可能であることは理解されるであろう。
【0055】
表現「少なくとも1つの」は、内容および使用から他に理解される場合を除いて、表現の後に列挙された対象のそれぞれを個別に、および列挙された対象の2つまたはそれよりも多くの種々の組合せを含むことは理解されるべきである。3つまたはそれよりも多い列挙された対象と関連する表現「および/または」は、内容から他に理解される場合を除いて、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0056】
その文法的同等語を含む、用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」または「含有している(containing)」の使用は、他に具体的に述べられているまたは内容から理解されない限り、一般に制約なくかつ非限定的であるとして、例えば、追加的な列挙されていないエレメントまたはステップを排除しないとして理解されるべきである。
【0057】
用語「約(about)」の使用が定量的な値の前である場合、本発明は、他に具体的に述べられない限り、具体的な定量値それ自体も含む。本明細書において使用される場合、用語「約(about)」は、他に示されるまたは推測されない限り、名目値からの±10%変動を指す。
【0058】
ステップの順序またはある特定の作用を実施する順序は、本発明が作動可能なままである限り重要でないことは理解されるべきである。さらに、2つまたはそれよりも多いステップまたは作用は、同時に実施されうる。
【0059】
本明細書におけるありとあらゆる例、または例示的語の使用、例えば「などの(such as)」または「挙げられる(including)」は、本発明をよりよく例示する目的のためだけであり、特許請求しない限り本発明の範囲に制限を提示しない。本明細書における語は、特許請求されていない任意のエレメントが本発明の実施に不可欠であるとことを示すとして解釈されるべきでない。
【0060】
本発明の実施は、例示的目的のためだけに本明細書において提示され、いかなる方法においても本発明を限定すると解釈されるべきでない、前述の例からさらに十分に理解される。
【実施例】
【0061】
コロニー形成
懸濁液で培養したHeLa S3細胞を、それらを接着培養条件に適合させるためにトランスフェクションの前日に蒔いた。トランスフェクション当日に、15μgのrAAVベクターを0、0.75または1μgのrep68 mRNAと0、30nMまたは100nMトリコスタチンA(TSA)と組み合わせて混合し、次に0.2cmギャップキュベット(gap cuvette)中100V、30msでのエレクトロポレーションによって細胞10
6個にトランスフェクトした。エレクトロポレーションの後、細胞を10%FBSを含有するDMEM培地を含む96ウエルプレートに蒔く前に室温で、5分間インキュベートした。トランスフェクションの24時間後、400ng/mlピューロマイシンを含有する培地を、それらのゲノムに組み込まれたrAAVベクターを有する細胞を選択するために使用した。トランスフェクション後10日目に増殖したコロニーの数を各プレートで計数した。
図1は、rAAVベクターの、種々の量のrep68 mRNAおよび/またはTSAを伴う共送達後の細胞コロニーの定量を示している。結果は、96ウエルプレートに蒔き、抗生物質選択した後に増殖したコロニーの数を表している。TSAを含まない1μgのrep68のトランスフェクション条件下のコロニーの数は、10枚の96ウエルプレートからの平均であった(+/-標準偏差)。結果は、rAAVベクターのrep68 mRNAを伴う同時トランスフェクションがコロニー形成を顕著に増強し、TSAもコロニー形成を中程度に増加させることを示している。
rAAV産生
【0062】
上に記載の同時トランスフェクション後15日目に、96ウエルプレート上に形成されたコロニーをウイルス粒子の形成を可能にする30の感染多重度(MOI)でアデノウイルス5(Ad5)を用いて感染させた。18日目に、感染細胞を2時間、37℃で、デオキシコール酸ナトリウムおよびBenzonase(登録商標)を含有する溶解緩衝液で溶解させた。試料からの上清をrAAVゲノムDNAを遊離するためにDNase Iおよび次にプロテイナーゼKを用いて連続的に消化した。rAAVベクターのBGH-PolyAコード領域を増幅するTaqMan qPCRを次に各試料のC
t値を決定するために使用した。
図2は、各同時トランスフェクション条件下でのコロニーのC
t値および平均C
t値の分布を示している。rAAVの1μg rep68 mRNA+30nM TSA、または0.75μg rep68 mRNA+100nM TSAを伴う共送達は、C
t値の減少をもたらし、これらのトランスフェクション条件下での宿主細胞からのrAAV産生の増強を示している。
安定細胞株の生成
【0063】
安定細胞株を上に記載のさまざまなrAAV同時トランスフェクション条件:1μg rep68 mRNA(8G3クローン)、30nM TSA(12B5クローン)、または0.75μg rep68 mRNA+100nM TSA(16D2クローン)から、rep mRNAもTSAも伴わないrAAVベクターのトランスフェクション(10G8クローン)によって生成された対照細胞株と一緒に生成した。Ad5を用いたMOI、50での感染後、細胞を感染後0、1、2、3および4日目(D0、D1、D2、D3、D4)に採取し、それからゲノムDNAを単離した。TaqMan qPCRをrAAVゲノムだけでなく内在性遺伝子-RNase Pも増幅するために使用した。細胞あたりのrAAVゲノムコピー数(GC/細胞)の定量を、各HeLa細胞におよそ3コピーで存在するRNase P遺伝子を用いた正規化によって達成した。
図3は、rAAVベクターならびにrep68 mRNAおよび/またはTSAの同時トランスフェクションによって得られる安定細胞株中のrAAVゲノムコピーの増加を、rAAV単独でトランスフェクトした細胞株と比較して示し、rep68 mRNAおよび/またはTSAがrAAVゲノムの宿主細胞への組み込みおよび安定宿主細胞株生成を改善したことを示している。
安定細胞株からのrAAV収率
【0064】
rAAV収率を対照および上に記載の3つの安定細胞株からアッセイした。細胞を2回反復で100mLの産生培地(90mL Suspension DMEM+10mL EX-CELL)中、細胞1.5×10
6個/mLでフラスコに播種し、Ad5を用いてMOI、50で感染させた。感染の4日後、細胞を2時間、37℃で、デオキシコール酸ナトリウムおよびBenzonase(登録商標)を含有する溶解緩衝液で溶解させた。試料からの上清をrAAVゲノムDNAを遊離するためにDNase Iおよび次にプロテイナーゼKを用いて連続的に消化した。rAAVゲノムのBGH-PolyAコード領域を増幅するTaqMan qPCRを次にrAAVプラスミド標準曲線に基づいてrAAVゲノムコピー数(GC)を決定するために使用した。
図4は、rAAVベクターならびにrep68 mRNAおよび/またはTSAの共送達によって確立した安定細胞株からのrAAVの産生の増強を示し、rAAVベクターのrep68 mRNAおよび/またはTSAを伴う宿主細胞への共送達が宿主細胞からのrAAV産生を改善したことを示唆している。
番号付き実施形態
【0065】
1.組換えAAV(rAAV)ベクター力価を増加させる方法であって、
a)rAAVベクターをrep mRNAと共に真核細胞培養物に共送達すること;および
b)前記真核細胞培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増加させること
を含む方法。
【0066】
2.前記rep mRNAがrep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0067】
3.前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、実施形態1に記載の方法。
【0068】
4.前記共送達することが磁気ビーズを伴う、実施形態1に記載の方法。
【0069】
5.前記共送達することがナノ粒子を伴う、実施形態1に記載の方法。
【0070】
6.前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、実施形態1に記載の方法。
【0071】
7.前記共送達することがセルスクイージングを含む、実施形態1に記載の方法。
【0072】
8.前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、実施形態1に記載の方法。
【0073】
9.前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、実施形態8に記載の方法。
【0074】
10.前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、実施形態8に記載の方法。
【0075】
11.前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、実施形態8に記載の方法。
【0076】
12.前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、実施形態8に記載の方法。
【0077】
13.前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、実施形態8に記載の方法。
【0078】
14.組換えAAV(rAAV)を産生するための細胞株を開発する方法であって、
a)rAAVベクターをrep mRNAと共に真核細胞に共送達すること;
b)真核細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞を同定すること;および
c)必要に応じて、前記真核細胞を含む培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増強すること
を含む方法。
【0079】
15.前記rep mRNAがrep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、実施形態14に記載の方法。
【0080】
16.前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、実施形態14に記載の方法。
【0081】
17.前記共送達することが磁気ビーズを伴う、実施形態14に記載の方法。
【0082】
18.前記共送達することがナノ粒子を伴う、実施形態14に記載の方法。
【0083】
19.前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、実施形態14に記載の方法。
【0084】
20.前記共送達することがセルスクイージングを含む、実施形態14に記載の方法。
【0085】
21.前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、実施形態14に記載の方法。
【0086】
22.前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、実施形態21に記載の方法。
【0087】
23.前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、実施形態21に記載の方法。
【0088】
24.前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、実施形態21に記載の方法。
【0089】
25.前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、実施形態21に記載の方法。
【0090】
26.前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、実施形態21に記載の方法。
【0091】
27.HDAC阻害剤および組換えポリヌクレオチドを真核細胞に共送達することを含む方法。
【0092】
28.前記真核細胞の1つの染色体内での前記組換えポリヌクレオチドの組み込みを検出するステップをさらに含む、実施形態27に記載の方法。
【0093】
29.前記真核細胞ゲノムに組み込まれた前記組換えポリヌクレオチドを含む安定細胞株を確立するステップをさらに含む、実施形態27または28に記載の方法。
【0094】
30.前記真核細胞内の前記組換えポリヌクレオチドの存在に依存して遺伝子産物を発現するステップをさらに含む、実施形態27から29のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
31.前記遺伝子産物がリボ核酸である、実施形態30に記載の方法。
【0096】
32.前記遺伝子産物がポリペプチドである、実施形態30に記載の方法。
【0097】
33.前記ポリヌクレオチドが前記遺伝子産物をコードする、実施形態30に記載の方法。
【0098】
34.前記ポリヌクレオチドが組換えウイルスベクターを含む、実施形態30に記載の方法。
【0099】
35.前記組換えウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)である、実施形態34に記載の方法。
【0100】
36.前記真核細胞の培養物から組換えウイルスを収集するステップをさらに含む、実施形態34に記載の方法。
【0101】
37.前記真核細胞の培養物から組換えAAVを収集するステップをさらに含む、実施形態35に記載の方法。
【0102】
38.前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、実施形態27に記載の方法。
【0103】
39.前記共送達することが磁気ビーズを伴う、実施形態27に記載の方法。
【0104】
40.前記共送達することがナノ粒子を伴う、実施形態27に記載の方法。
【0105】
41.前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、実施形態27に記載の方法。
【0106】
42.前記共送達することがセルスクイージングを含む、実施形態27に記載の方法。
【0107】
43.前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、実施形態27に記載の方法。
【0108】
44.前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、実施形態43に記載の方法。
【0109】
45.前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、実施形態43に記載の方法。
【0110】
46.前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、実施形態43に記載の方法。
【0111】
47.前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、実施形態43に記載の方法。
【0112】
48.前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、実施形態43に記載の方法。
【0113】
49.前記HDAC阻害剤がトリコスタチンAである、実施形態27から48のいずれか一項に記載の方法。
参照による組み込み
【0114】
本明細書において参照される特許および科学文書のそれぞれの開示全体は、すべての目的について参照により組み込まれる。
均等物
【0115】
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において具体化されうる。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明への制限よりむしろ、あらゆる点で例示的であると見なされるべきである。本発明の範囲は、したがって前述の記載によってよりむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に生じるすべての変化は、それに含まれることが意図される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
組換えAAV(rAAV)ベクター力価を増加させる方法であって、
a)rAAVベクターをrep mRNAと共に真核細胞培養物に共送達すること;および
b)前記真核細胞培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増加させること
を含む方法。
(項目2)
前記rep mRNAがrep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記共送達することが磁気ビーズを伴う、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記共送達することがナノ粒子を伴う、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記共送達することがセルスクイージングを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、項目8に記載の方法。
(項目14)
組換えAAV(rAAV)を産生するための細胞株を開発する方法であって、
a)rAAVベクターをrep mRNAと共に真核細胞に共送達すること;
b)真核細胞ゲノムに組み込まれたrAAVベクター配列を含有する真核細胞を同定すること;および
c)必要に応じて、前記真核細胞を含む培養物からrAAVを収集することであって、前記rep mRNAを伴う前記共送達が前記収集されるrAAVの力価を増強すること
を含む方法。
(項目15)
前記rep mRNAがrep68 mRNAおよびrep78 mRNAからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記共送達することが磁気ビーズを伴う、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記共送達することがナノ粒子を伴う、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記共送達することがセルスクイージングを含む、項目14に記載の方法。
(項目21)
前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、項目14に記載の方法。
(項目22)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、項目21に記載の方法。
(項目27)
HDAC阻害剤および組換えポリヌクレオチドを真核細胞に共送達することを含む方法。
(項目28)
前記真核細胞の1つのゲノムへの前記組換えポリヌクレオチドの組み込みを検出するステップをさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記真核細胞ゲノムに組み込まれた前記組換えポリヌクレオチドを含む安定細胞株を確立するステップをさらに含む、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
前記真核細胞内の前記組換えポリヌクレオチドの存在に依存して遺伝子産物を発現するステップをさらに含む、項目27から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記遺伝子産物がリボ核酸である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記遺伝子産物がポリペプチドである、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記ポリヌクレオチドが前記遺伝子産物をコードする、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記ポリヌクレオチドが組換えウイルスベクターを含む、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記組換えウイルスベクターが組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAVベクター)である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記真核細胞の培養物から組換えウイルスを収集するステップをさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記真核細胞の培養物から組換えAAVを収集するステップをさらに含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記共送達することがエレクトロポレーションを含む、項目27に記載の方法。
(項目39)
前記共送達することが磁気ビーズを伴う、項目27に記載の方法。
(項目40)
前記共送達することがナノ粒子を伴う、項目27に記載の方法。
(項目41)
前記共送達することがマイクロインジェクションを含む、項目27に記載の方法。
(項目42)
前記共送達することがセルスクイージングを含む、項目27に記載の方法。
(項目43)
前記共送達することが化学物質に基づくトランスフェクションを含む、項目27に記載の方法。
(項目44)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが脂質への曝露を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがリン酸カルシウムへの曝露を含む、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがカチオン性ポリマーへの曝露を含む、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記化学物質に基づくトランスフェクションがDEAEデキストランへの曝露を含む、項目43に記載の方法。
(項目48)
前記化学物質に基づくトランスフェクションが活性化デンドリマーへの曝露を含む、項目43に記載の方法。
(項目49)
前記HDAC阻害剤がトリコスタチンAである、項目27から48のいずれか一項に記載の方法。