(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ロボット用エンドエフェクタの取付構造及びロボット用エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
B25J17/00 Z
(21)【出願番号】P 2019566434
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2019000380
(87)【国際公開番号】W WO2019142709
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018005233
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012667(JP,A)
【文献】特開2017-164894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0250684(US,A1)
【文献】特開2015-231658(JP,A)
【文献】特開2017-074638(JP,A)
【文献】特開昭63-306891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1突起部が設けられたマウント部を有するロボット側固定部材と、
第2突起部が設けられた被マウント部を有するエンドエフェクタと、
を備え、
前記マウント部と前記被マウント部とのうち、一方に位相決め部が設けられ、他方に前記位相決め部が挿入される位相決め溝が設けられ、
前記位相決め溝は、高硬度部材を有し、
前記位相決め部が前記位相決め溝に挿入された状態において、前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合することで前記エンドエフェクタが前記ロボット側固定部材に取付けられ、
前記高硬度部材の硬度は、前記位相決め溝のうち前記高硬度部材の周辺部における硬度よりも高い、ロボット用エンドエフェクタの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の取付構造であって、
前記位相決め溝は円弧状に延びており、且つ、前記位相決め溝は第1端部及び第2端部を有し、
前記高硬度部材は、第2端部に設けられ、
前記マウント部が前記被マウント部に押し当てられると、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側に挿入された状態となり、
前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側から第2端部側へ移動するように前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合することで前記エンドエフェクタが前記ロボット側固定部材に取付けられる、取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載の取付構造であって、
前記マウント部と前記被マウント部とのうち、一方に軸受穴部が設けられて、他方に前記軸受穴部に挿入される軸芯部が設けられ、
前記位相決め部は、前記位相決め溝上の第1及び第2当接位置に移動可能であり、
第1当接位置は、前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させたときに、前記位相決め部が前記高硬度部材にはじめて当接する位置であり、
第2当接位置は、第1端部側から第2端部側へ向かう方向において、第1当接位置よりも奥の位置であり、
前記位相決め部が第1当接位置から第2当接位置へ移動するように前記被マウント部を回転させたときにおいて、前記位相決め部は、前記高硬度部材における前記位相決め部が当接する面によって、第1当接位置から第2当接位置へ案内され、
前記位相決め部が第2当接位置に位置しているときにおいて、前記軸受穴部の内周面と前記軸芯部の外周面とは、局所的に当接している、取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の取付構造であって、
回転付勢手段を更に備え、
前記回転付勢手段は、前記位相決め部が第1当接位置から第2当接位置へ移動するように、前記被マウント部を付勢する、取付構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載の取付構造であって、
前記高硬度部材は、第2端部に加えて第1端部にも設けられている、取付構造。
【請求項6】
ロボット側固定部材に設けられたマウント部に取付可能な被マウント部を備え、
前記被マウント部は、前記マウント部の位相決め部が挿入される位相決め溝を有し、
前記位相決め溝は、高硬度部材を有し、
前記位相決め部が前記位相決め溝に挿入された状態において前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合し、
前記高硬度部材の硬度は、前記位相決め溝のうち前記高硬度部材の周辺部における硬度よりも高い、ロボット用エンドエフェクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のロボット用エンドエフェクタであって、
前記位相決め溝は円弧状に延びており、且つ、前記位相決め溝は第1端部及び第2端部を有し、
前記高硬度部材は、第2端部に設けられ、
前記マウント部が前記被マウント部に押し当てられると、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側に挿入された状態となり、
前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側から第2端部側へ移動するように前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合する、ロボット用エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット側固定部材に対してエンドエフェクタを取り付けるロボット用エンドエフェクタの取付構造と、この取付構造に用いることができるロボット用エンドエフェクタとに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産工程においては、ワークを移送したり、ワークの姿勢を変更したり、ワークに溶接やネジ止め等の処理を施したりというように、ワークに対して各種の操作が行われる。近年のファクトリーオートメーション化の促進により、これらの操作をロボットアームで自動化した工場等も多く見受けられる。ロボットアームの先端には、ワーク等の操作対象物に対して直接作用する部分である「エンドエフェクタ」という装置が取り付けられる。
【0003】
ロボット用のエンドエフェクタとしては、操作対象物の形態又は性質や、操作対象物に行う操作の態様等に応じた各種のものがある。例えば、操作対象物を把持可能なグリッパ型のエンドエフェクタ(例えば、特許文献1の
図1における符号1(エンドエフェクタ)を参照。)や、操作対象物を吸着可能な吸引型のエンドエフェクタ(例えば、特許文献2の第1図における符号3(ホルダ付き吸着形エンドエフェクタ)を参照。)等がある。ロボット用のエンドエフェクタは、ロボット側固定部材に対して着脱可能な状態で取り付けられ、交換できるようになっているものが多い。
【0004】
また、特許文献2にも、ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの取付構造が開示されている(例えば、特許文献2の第3頁左上欄第9行~右下欄第14行、及び、第4図を参照)。特許文献2に記載の取付構造は、一眼レフカメラにおけるカメラ本体のマウント部に対する交換レンズの取付構造として採用されている。作業者がエンドエフェクタをロボット側固定部材に対して押し込んで取付方向に回転させるという簡単な操作で、作業者はエンドエフェクタをロボット側固定部材に取り付けることができる。また、作業者がエンドエフェクタを反取付方向に回転させてロボット側固定部材から引き抜くという簡単な操作で、作業者はエンドエフェクタをロボット側固定部材から取り外すことができる。
【0005】
以下においては、上記のような取付構造で、ロボット側固定部材に対してエンドエフェクタを取り付ける際における、エンドエフェクタをロボット側固定部材に対して押し込む操作を「(取付構造の)取付時押込操作」と呼ぶことがある。また、エンドエフェクタをロボット側固定部材に対して回転する操作を「(取付構造の)取付時回転操作」と呼ぶことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-074638号公報
【文献】特開昭63-306891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のロボット用エンドエフェクタの取付構造においては、エンドエフェクタの着脱を繰り返すうちに、上記の取付時回転操作でのエンドエフェクタの回転角度が変化し、ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの取付位置が、上記の取付時回転操作の回転方向において変わってくるという問題があった。
【0008】
というのも、ロボット用エンドエフェクタの取付構造では、上記の取付時押込操作において、ロボット側固定部材とエンドエフェクタとのうち、一方に設けられた位相決めピンが、他方に設けられた円弧状の位相決め溝の一端部付近に挿入された状態となる。そして、上記の取付時回転操作において、位相決めピンが位相決め溝の一端部付近にある状態から位相決め溝の他端部に突き当った状態となるまでエンドエフェクタを回転させることによって行われる。
一般的に、ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの回転取付位置(上記の取付時回転操作の回転方向での取付位置。以下同じ。)は、位相決めピンと位相決め溝の他端部との当接位置によって定まる構造となっている。このため、エンドエフェクタの着脱を繰り返し、位相決めピンが位相決め溝の他端部に衝突を繰り返すうちに、位相決め溝の他端部が摩耗したり、凹んだりする。位相決め溝の摩耗の度合いや凹みが大きくなると、作業者は、エンドエフェクタやその周辺の部品を交換しなければならない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ロボット用エンドエフェクタの取付構造において、ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの取付位置が変化しにくくする(ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの取付位置の復元精度を高くする)ことを目的としている。また、本発明は、この取付構造に好適に採用することのできるロボット用エンドエフェクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、第1突起部が設けられたマウント部を有するロボット側固定部材と、第2突起部が設けられた被マウント部を有するエンドエフェクタと、を備え、前記マウント部と前記被マウント部とのうち、一方に位相決め部が設けられ、他方に前記位相決め部が挿入される位相決め溝が設けられ、前記位相決め溝は、高硬度部材を有し、前記位相決め部が前記位相決め溝に挿入された状態において、前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合することで前記エンドエフェクタが前記ロボット側固定部材に取付けられ、前記高硬度部材の硬度は、前記位相決め溝のうち前記高硬度部材の周辺部における硬度よりも高い、ロボット用エンドエフェクタの取付構造が提供される。
【0011】
好ましくは、前記位相決め溝は円弧状に延びており、且つ、前記位相決め溝は第1端部及び第2端部を有し、前記高硬度部材は、第2端部に設けられ、前記マウント部が前記被マウント部に押し当てられると、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側に挿入された状態となり、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側から第2端部側へ移動するように前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合することで前記エンドエフェクタが前記ロボット側固定部材に取付けられる、ロボット用エンドエフェクタの取付構造が提供される。
好ましくは、前記マウント部と前記被マウント部とのうち、一方に軸受穴部が設けられて、他方に前記軸受穴部に挿入される軸芯部が設けられ、前記位相決め部は、前記位相決め溝上の第1及び第2当接位置に移動可能であり、第1当接位置は、前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させたときに、前記位相決め部が前記高硬度部材にはじめて当接する位置であり、第2当接位置は、第1端部側から第2端部側へ向かう方向において、第1当接位置よりも奥の位置であり、前記位相決め部が第1当接位置から第2当接位置へ移動するように前記被マウント部を回転させたときにおいて、前記位相決め部は、前記高硬度部材における前記位相決め部が当接する面によって、第1当接位置から第2当接位置へ案内され、前記位相決め部が第2当接位置に位置しているときにおいて、前記軸受穴部の内周面と前記軸芯部の外周面とは、局所的に当接している、取付構造が提供される。
好ましくは、回転付勢手段を更に備え、前記回転付勢手段は、前記位相決め部が第1当接位置から第2当接位置へ移動するように、前記被マウント部を付勢する、取付構造が提供される。
好ましくは、前記高硬度部材は、第2端部に加えて第1端部にも設けられている、取付構造が提供される。
【0012】
本発明の別の観点によれば、ロボット側固定部材に設けられたマウント部に取付可能な被マウント部を備え、前記被マウント部は、前記マウント部の位相決め部が挿入される位相決め溝を有し、前記位相決め溝は、高硬度部材を有し、前記位相決め部が前記位相決め溝に挿入された状態において前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合し、前記高硬度部材の硬度は、前記位相決め溝のうち前記高硬度部材の周辺部における硬度よりも高い、ロボット用エンドエフェクタが提供される。
【0013】
好ましくは、前記位相決め溝は円弧状に延びており、且つ、前記位相決め溝は第1端部及び第2端部を有し、前記高硬度部材は、第2端部に設けられ、前記マウント部が前記被マウント部に押し当てられると、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側に挿入された状態となり、前記位相決め部が前記位相決め溝の第1端部側から第2端部側へ移動するように前記マウント部に対して前記被マウント部を回転させると、前記位相決め部が前記高硬度部材に当接し、且つ、第1突起部と第2突起部とが係合する、ロボット用エンドエフェクタが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造は、上記のように、位相決め溝の端部がその周辺部よりも硬度を有する高硬度部材で形成されているため、位相決めピンが位相決め溝の端部に衝突等を繰り返しても、位相決め溝の端部に摩耗や凹み等が生じにくいものとなっている。このため、ロボット側固定部材に対するエンドエフェクタの取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転方向において変わりにくくすることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ロボット用エンドエフェクタの取付構造を用いて、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付けた状態を、ロボット側固定部材の中心線L
1を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図2】ロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるロボット側固定部材を、ロボット側固定部材の中心線L
1を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図3】ロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるロボット側固定部材を、マウント部が設けられた側(
図2の紙面に向かって右側)から見た状態を示した図である。
【
図4】ロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを、エンドエフェクタの中心線L
2を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図5】ロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを、被マウント部が設けられた側(
図4の紙面に向かって左側)から見た状態を示した図である。
【
図6】ロボット用エンドエフェクタの取付構造を用いて、ロボット側固定部材に対してエンドエフェクタを取り付けている途中の状態であって、エンドエフェクタの被マウント部が着脱位置にあるときを、
図1におけるA-A面で切断して示した断面図である。
【
図7】ロボット用エンドエフェクタの取付構造を用いて、ロボット側固定部材に対してエンドエフェクタを取り付けた状態であって、エンドエフェクタの被マウント部が第2位置にあるときを、
図1におけるA-A面で切断して示した断面図である。
【
図8】ロボット用エンドエフェクタの取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段の動作を説明する図である。
【
図9】
図9Aはエンドエフェクタの被マウント部が第2当接位置にあるときの、ロボット側固定部材の位相決めピン及び軸受穴部と、エンドエフェクタの位相決め溝及び軸芯部との位置関係を示した図である。
図9Bはエンドエフェクタの被マウント部が第1当接位置にあるときの、ロボット側固定部材の位相決めピン及び軸受穴部と、エンドエフェクタの位相決め溝及び軸芯部との位置関係を示した図である。
【
図10】ロボット用エンドエフェクタの取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段の他の例を説明する図である。
【
図11】ロボット用エンドエフェクタの取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段のさらに別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ロボット用エンドエフェクタの取付構造(以下においては、「取付構造」や「本実施形態の取付け構造」というように、表記を省略することがある。)の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、取付構造を用いて、ロボット側固定部材10にエンドエフェクタ20を取り付けた状態を、ロボット側固定部材10の中心線L
1を含む平面で切断して示した断面図である。
図1の断面図を始め、後掲する断面図においては、ロボット側固定部材10とエンドエフェクタ20とを識別しやすくするため、ロボット側固定部材10の断面を右上がりの斜線ハッチングで示している。また、エンドエフェクタの断面を左上がりの斜線ハッチングで示している。また、ロボットアーム50の断面を傾斜のない直線(中心線L
1,L
2に垂直な直線)のハッチングで示している。
【0017】
本実施形態の取付構造は、いわゆるバヨネット式の取付構造である。本実施形態の取付構造においては、
図1に示すように、ロボットアーム50の先端部にロボット側固定部材10が固定されており、エンドエフェクタ20は、このロボット側固定部材10を介してロボットアーム50に取り付けられる。ロボット側固定部材10を固定する対象(ロボットのパーツ)は、ロボットの構成部品であれば特に限定されず、ロボットアーム50以外の構成部品とすることも可能である。
【0018】
図2は、取付構造に用いるロボット側固定部材10を、ロボット側固定部材10の中心線L
1を含む平面で切断して示した断面図である。
図3は、取付構造に用いるロボット側固定部材10を、マウント部10aが設けられた側(
図2の紙面に向かって右側)から見た状態を示した図である。本実施形態の取付構造において、ロボット側固定部材10は、
図2に示すように、シリンダ11と、シリンダカバー12と、ピストン13と、ピストンヘッド14と、クランプリング15と、ロックナット16とを備えている。
【0019】
シリンダ11は、その内部に空圧空間11aを有する有底円筒状部材となっており、シリンダ11の開放端は、シリンダカバー12により閉塞されている。空圧空間11aには、ピストン13が、中心線L
1に平行な方向にスライド可能な状態で収容されている。ピストン13における、空圧空間11aから外部に露出する部分には、ピストンヘッド14が固定されている。このため、空圧空間11aにおける、ピストン13よりも紙面に向かって左側に位置する部分の空圧を高めると、ピストン13が
図2の紙面に向かって右側にスライドし、ピストンヘッド14が大きく突出した状態となる。その一方、空圧空間11aにおける、ピストン13よりも紙面に向かって右側に位置する部分の空圧を高くすると、ピストン13が
図2の紙面に向かって左側にスライドし、ピストンヘッド14の突出量が小さくなる。空圧空間11aの空圧は、図示省略の空圧制御手段により制御される。
【0020】
シリンダカバー12の外周面には、螺合部が形成されている。シリンダカバー12は、ロックナット16の内周面に形成された螺合部に対して螺合固定される。シリンダカバー12における、エンドエフェクタ20が取り付けられる側の面(
図2の紙面に向かって右側の面。以下、「エンドエフェクタ取付面」と呼ぶことがある。)には、軸受穴部10dが設けられている。この軸受穴部10dは、その外周断面が中心線L
1を中心とした円形を為すように形成されている。軸受穴部10dの内周面は、中心線L
1に垂直な方向での、エンドエフェクタ20の位置決め基準として機能する。また、シリンダカバー12のエンドエフェクタ取付面における軸受穴部10dの周囲の部分は、中心線L
1に平行な方向での、エンドエフェクタ20の位置決め基準として機能する。
【0021】
クランプリング15は、
図3に示すように、円環状の部材となっており、その内周部には、複数個(同図の例では3個)の第1突起部10bが内向きに設けられている。このため、クランプリング15は、花弁状の内周形状を有する。このクランプリング15は、シリンダカバー12に対してロックナット16を螺合することにより、シリンダカバー12とロックナット16とで挟持された状態となる。シリンダカバー12には、それにロックナット16を螺合する際にクランプリング15がロックナット16と供回りしないようにクランプリング15の回転を規制するための回転規制ピン12aを設けている。シリンダカバー12のエンドエフェクタ取付面には、回転付勢手段10eを設けている。この回転付勢手段10eの機能については後述する。回転付勢手段10eは、後述するように、クランプリング15の内周部に設けることも可能である。また、シリンダカバー12のエンドエフェクタ取付面には、位相決めピン10cが設けられている。位相決めピン10cは位相決め部に対応している。
【0022】
図4は、取付構造に用いるエンドエフェクタ20を、エンドエフェクタ20の中心線L
2を含む平面で切断して示した断面図である。
図5は、取付構造に用いるエンドエフェクタ20を、被マウント部20aが設けられた側(
図4の紙面に向かって左側)から見た状態を示した図である。本実施形態の取付構造において、エンドエフェクタ20は、
図4に示すように、内嵌リング21と、中間リング22と、ピストンヘッド連結部23と、操作部ベース24と、操作部25等とを備えている。
【0023】
内嵌リング21は、
図5に示すように、円環状の部材であり、その外周部には、複数個(同図の例では3個)の第2突起部20bが外向きに設けられている。このため、内嵌リング21は、花弁状の外周形状を有する。第2突起部20bの個数は、通常、第1突起部10bの個数と同一とされる。内嵌リング21における、ロボット側固定部材に取り付けられる側の面(
図4の紙面に向かって左側の面。以下、「ロボット側固定部材取付面」と呼ぶことがある。)には、位相決め溝20cが長孔状に設けられている。この位相決め溝20cは、エンドエフェクタ20の中心線L
2を中心とした円弧状に形成されている。また、内嵌リング21におけるロボット側固定部材取付面には、軸芯部20dも設けられている。この軸芯部20dは、その外周断面が中心線L
2を中心とした円形に形成されている。
【0024】
位相決め溝20cの両端部は、その周辺部よりも硬度を有する高硬度部材で形成されている。本実施形態の取付構造においては、位相決め溝20cの第1端部(一端部)及び第2端部(他端部)に、位相決め溝20cの周辺部よりも硬度を有する高硬度部材で形成された補強ピン20e及び補強ピン20fをそれぞれ埋め込んでいる。本実施形態において、位相決め溝20cと補強ピン20e、20fとはそれぞれ独立した部材であり、補強ピン20e、20fの硬度は位相決め溝20cの硬度よりも高い。本実施形態の取付構造において、内嵌リング21は、アルマイト処理を施したアルミニウムで形成している。このため、補強ピン20e及び補強ピン20fは、このアルミニウムよりも高硬度の素材で形成されている。例えば、補強ピン20e及び補強ピン20fは、S45C等の炭素鋼で形成するとよい。これらの補強ピン20e,20fはいずれも、円柱状に形成されている。補強ピン20e,20fのうち少なくとも補強ピン20fは、補強ピン20fの中心からエンドエフェクタ20の中心線L
2までの距離d
2(
図5)が、距離d
1(
図3で示す、位相決めピン10cの中心からロボット側固定部材10の中心線L
2までの距離)よりも大きくなる箇所に設けられている。
【0025】
内嵌リング21におけるロボット側固定部材取付面とは反対側の面(
図4の紙面に向かって右側の面)には、中間リング22が固定されている。この中間リング22における、内嵌リング21が固定される側とは反対側の面(
図4の紙面に向かって右側の面)には、複数個の操作部ベース24が支持されており、それぞれの操作部ベース24には、操作部25が固定されている。それぞれの操作部ベース24は、ピストンヘッド連結部23の端部外周面に設けられたカム機構等によって、中心線L
2に垂直な方向(同図の矢印Bを参照。)に開閉することができる。操作部ベース24は、ピストンヘッド連結部23が中心線L
2に平行な方向に移動すると上記の開閉を行い、それに伴って操作部25も開閉する。ピストンヘッド連結部23は、
図1に示すように、ピストンヘッド14に連結される。このため、空圧空間11aの空圧を制御することによって、操作部25の開閉を制御することができる。
【0026】
本実施形態の取付構造において、エンドエフェクタ20は、上記のように、爪状を為す複数個の操作部25が開閉を行うグリッパ型である。しかし、取付構造は、グリッパ型のエンドエフェクタ20だけでなく、吸着型のエンドエフェクタ等、他の種類のエンドエフェクタを用いる場合においても、好適に採用することができる。
【0027】
続いて、本実施形態の取付構造における、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付方法について説明する。
図6は、取付構造を用いて、ロボット側固定部材10に対してエンドエフェクタ20を取り付けている途中の状態であって、エンドエフェクタ20の被マウント部20aが着脱位置にあるときを、
図1におけるA-A面で切断して示した断面図である。
図7は、取付構造を用いて、ロボット側固定部材10に対してエンドエフェクタ20を取り付けた状態であって、エンドエフェクタ20の被マウント部20aが第2位置にあるときを、
図1におけるA-A面で切断して示した断面図である。
【0028】
本実施形態の取付構造において、エンドエフェクタ20は、以下の手順1~5により取り付ける。
[手順1]
エンドエフェクタ20の被マウント部20aがロボット側固定部材10のマウント部10aと向き合い、且つ、エンドエフェクタ20の中心線L
2がロボット側固定部材10の中心線L
1に略一致した状態となるようにエンドエフェクタ20を配する。
[手順2]
被マウント部20aの第2突起部20bが、マウント部10aの第1突起部10bに対して、中心線L
1,L
2に平行な方向において重ならず、且つ、マウント部10aの位相決めピン10cを中心線L
1,L
2に平行な方向に延長した箇所に、位相決め溝20cが位置するように、エンドエフェクタ20の向き(中心線L
2回りの向き)を調節する。
[手順3]
ロボット側固定部材10に対してエンドエフェクタ20を押し付け、被マウント部20aの軸芯部20dをマウント部10aの軸受穴部10dに挿入する(
図1を参照。)とともに、
図6に示すように、マウント部10aの位相決めピン10cを被マウント部20aの位相決め溝20cの第1端部の近傍に挿入する。このとき、被マウント部20aは、着脱位置にある。この手順3における操作は、上述した「取付構造の取付時押込操作」に相当する。
[手順4]
エンドエフェクタ20を、中心線L
2回りに取付方向(
図6においては時計方向。同図の矢印Cを参照。)に回転させ、
図7に示すように、マウント部10aの位相決めピン10cを被マウント部20aの位相決め溝20cの第2端部に移動する。このとき、被マウント部20aは、第1当接位置にある。第1当接位置は、マウント部10aに対して被マウント部20aを回転させたときに、位相決めピン10cが補強ピン20fにはじめて当接する位置である。この手順4における操作は、上述した「取付構造の取付時回転操作」に相当する。
[手順5]
ロックナット16(
図1を参照。)を締め付ける向きに回転させて、被マウント部20aの第2突起部20bをマウント部10aのシリンダカバー12とクランプリング15とで挟持する。
【0029】
上記の手順5を終えた後には、第1突起部10bと第2突起部20bとが、中心線L
1,L
2に平行な方向において互いに重なり合っている(互いに干渉する)。換言すると、第1突起部10bと第2突起部20bとが係合している。この状態において、作業者はマウント部10aから被マウント部20aを引き抜くことができない。加えて、この状態において、被マウント部20aの第2突起部20bが、マウント部10aのシリンダカバー12とクランプリング15とに挟持されている。このため、作業者はエンドエフェクタ20を中心線L
2回りに取外方向(
図7における反時計方向。同図の矢印Dを参照。)に回転させることができない。このように、作業者はロボット側固定部材10に対してエンドエフェクタ20を取り付けることができる。本実施形態の取付構造では、このような簡単な操作でロボット側固定部材10に対してエンドエフェクタ20を取り付けることができる。
【0030】
また、上記手順4の取付時回転操作においては、マウント部10aの位相決めピン10cが被マウント部20aの位相決め溝20cにおける第2端部に衝突する。ここで、位相決め溝20cの第2端部には、高硬度な素材で形成された補強ピン20f(高硬度部材)が設けられているため、位相決め溝20cの第2端部に摩耗や凹み等が生じることが抑制される。したがって、エンドエフェクタ20の着脱を繰り返しても、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、上記の取付時回転操作の回転方向において変化しにくい。このため、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置の復元精度を高くすることができる。
【0031】
ただし、補強ピン20fが高硬度部材を備えていても、位相決めピン10cが摩耗や凹みの生じやすい素材で形成されていると、作業者がエンドエフェクタ20の着脱を繰り返すうちに、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、上記の取付時回転操作の回転方向において変化する虞がある。このため、位相決めピン10cも、補強ピン20fと同様、高硬度強度の素材で形成することが好ましい。
【0032】
本実施形態の取付構造でロボット側固定部材10に取り付けられたエンドエフェクタ20において、作業者は、上記手順3~5の手順を逆に遡ること(手順5、手順4、手順3の順に行うこと)で、ロボット側固定部材10から取り外すことができる。上記手順5におけるクランプリング15の回転方向や、上記手順4におけるエンドエフェクタ20の回転方向や、上記手順3におけるエンドエフェクタ20の移動方向も、エンドエフェクタ20を取り付ける際とは逆向きになる。本実施形態の取付構造では、このような簡単な操作でロボット側固定部材10からエンドエフェクタ20を取り外すことができる。以下においては、ロボット側固定部材10からエンドエフェクタ20を取り外す際における、上記手順4に相当する操作を「取外時回転操作」と呼び、上記手順3に相当する操作を「取外時引抜操作」と呼ぶことがある。
【0033】
また、ロボット側固定部材10からエンドエフェクタ20を取り外す際には、作業者は、上記手順4に相当する取外時回転操作において、マウント部10aの位相決めピン10cが被マウント部20aの位相決め溝20cにおける第2端部に当接した第1当接位置から第1端部の近傍となる着脱位置までエンドエフェクタ20を回転させる。このため、位相決めピン10cが位相決め溝20cの第1端部に衝突し、位相決め溝20cの第1端部に摩耗や凹み等が生じる虞がある。本実施形態の取付構造では、この位相決め溝20cの第1端部に、高硬度な素材で形成された補強ピン20e(高硬度部材)が設けられている。このため、位相決め溝20cの第1端部に摩耗や凹みが生じることが抑制される。
【0034】
ところで、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置の復元精度を高くするためには、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転方向において変わりにくくするだけでなく、取付構造の取付時回転操作の回転中心線に垂直な方向において変わりにくくすることが好ましい。この点、本実施形態の取付構造においては、
図8に示す回転付勢手段10eによって、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転中心線(中心線L
2)に垂直な方向においても変わりにくくしている。
図8は、取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段10eの動作を説明する図である。
【0035】
図8に示す回転付勢手段10eは、押圧部材10e
1と、付勢部材10e
2と、ケース部材10e
3とで構成されている。押圧部材10e
1は、エンドエフェクタ20の被マウント部20a(本実施形態の取付構造においては内嵌リング21)を取付方向C側に回転する向きに押圧する。本実施形態の取付構造において、押圧部材10e
1は、球体状を為している。押圧部材10e
1は、その外周面における点P
1で内嵌リング21の端部に形成された傾斜面に接触し、内嵌リング21に押圧力F
Aを加えるように構成される。
図8において、押圧力F
Aは、紙面に向かって右上を向いているが、紙面に向かって右側には、第1突起部10b(
図1を参照)がある。このため、内嵌リング21は、紙面に向かって右側には殆ど移動せず、押圧力F
Aにおける取付方向Cに平行な成分f
Aによって、紙面に向かって上側(取付方向C側)に移動する。ロックナット16(
図1を参照)でクランプリング15(
図1を参照)を完全に締め付ける前の状態においては、内嵌リング21は、中心線L
2回りに回転することができる。
【0036】
付勢部材10e2は、押圧部材10e1を被マウント部20a側に突出する向きに付勢する。上述した押圧部材10e1による押圧力FAは、この押圧部材10e1の付勢力によって発生する。付勢部材10e2は、斯様な機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、本実施形態の取付構造においては、圧縮コイルバネを用いている。ケース部材10e3は、付勢部材10e2を収容するとともに、押圧部材10e1の押圧側に第1突起部10bが存在しない場合に押圧部材10e1がケース部材10e3から脱落しないように保持する機能を有している。本実施形態の取付構造において、ケース部材10e3は、シリンダカバー12におけるエンドエフェクタ取付面に設けた穴部12bに埋設状態で固定している。後述するように、この回転付勢手段10eによって、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転中心線(中心線L2)に垂直な方向においても変わりにくい。
【0037】
図9A及び
図9Bは、取付構造において、
図8の回転付勢手段10eを用いた場合であって、エンドエフェクタ20の被マウント部20aが第1当接位置又は第2当接位置にあるときの、ロボット側固定部材10の位相決めピン10c及び軸受穴部10dと、エンドエフェクタ20の位相決め溝20c及び軸芯部20dとの位置関係を示した図である。
【0038】
位相決めピン10cが着脱位置にある状態において、作業者が取付方向Cに被マウント部20aを回転させると、位相決めピン10cが第1当接位置へ近づいていく。ここで、取付方向Cは、位相決め溝20cの第1端部側から位相決め溝20cの第2端部側へ向かう回転方向である。なお、取外方向は、取付方向とは反対の回転方向である。つまり、取外方向は、位相決め溝20cの第2端部側から位相決め溝20cの第1端部側へ向かう回転方向である。
図9Bは、被マウント部20aが第1当接位置にあるときであって、位相決めピン10cが補強ピン20fに当接した直後の状態を示している。
図9Bに示す状態は、マウント部10aに対して被マウント部20aを回転させたときに、位相決めピン10cが補強ピン20fにはじめて当接する位置である。
【0039】
上記のように、補強ピン20fの中心からエンドエフェクタ20の中心線L
2までの距離d
2を、位相決めピン10cの中心からロボット側固定部材10の中心線L
2までの距離d
1よりも大きくしたため、補強ピン20fは、位相決めピン10cとの接点P
2において、取付方向Cに非平行な成分を有する外力を、位相決めピン10cから受ける。加えて、このときの内嵌リング21(被マウント部20a)は、
図8の回転付勢手段10eによって、取付方向Cの向きに付勢されている。つまり、回転付勢手段10eは、位相決めピン10cが第1当接位置から後述の第2当接位置へ移動するように、内嵌リング21(被マウント部20a)を付勢している。このため、
図9Bの状態にあっては、被マウント部20aは、位相決めピン10cと補強ピン20fとの接点P
2を変えながら、取付方向Cの向きにさらに回転しようとする。換言すると、マウント部10a側の位相決めピン10cは、被マウント部20aに対して相対的に取付方向Cとは逆向きに回転しようとする。このため、位相決めピン10cには、被マウント部20aに対して取付方向Cとは逆向きの推進力F
Bが生じるが、位相決めピン10cにおける推進力F
Bが向く側には、補強ピン20fが存在するため、位相決めピン10cは、推進力F
Bの、位相決めピン10cと補強ピン20fとの接点P
2での接線L
Tに平行な成分f
Bによって、被マウント部20aに対して相対的に移動する。位相決めピン10cが被マウント部20aに対して移動する際には、マウント部10aにおける軸受穴部10dも位相決めピン10cと一体的に移動する。
【0040】
位相決めピン10cが第1当接位置にある状態において、作業者が取付方向Cに被マウント部20aを更に回転させると、位相決めピン10cが更に移動する。具体的には、位相決めピン10cが、その外周面が補強ピン20fの外周面に案内されながら、被マウント部20aに対して移動すると、
図9Aに示す状態となる。
図9Aに示す状態は、被マウント部20aが第2当接位置にある。第2当接位置は、取付方向Cにおいて、第1当接位置よりも奥の位置である。つまり、位相決め溝20cが延びる方向における、着脱位置と第2当接位置との間の距離は、位相決め溝20cが延びる方向における、着脱位置と第1当接位置との間の距離よりも、長い。
【0041】
図9Bの状態から
図9Aの状態となるまでは、接点P
2の位置だけでなく、接線L
Tの向きも連続的に変化する。
図9Aの状態においては、マウント部10aの軸受穴部10dの内周面が、被マウント部20aの軸芯部20dの外周面に接点P
3で局所的に当接し、それ以上、成分f
Bの向きには移動できない状態となる。換言すると、被マウント部20aの軸芯部20dの外周面は、回転付勢手段10eの付勢力によって、マウント部10aの軸受穴部10dの内周面に押し付けられた状態となる。このときには、被マウント部20aは、マウント部10aに対して取付方向Cにはそれ以上回転できない。このため、
図9Bに示すように、マウント部10aの軸受穴部10dの内周面と被マウント部20aの軸芯部20dの内周面との間に隙間が存在しても、軸受穴部10dに対する軸芯部20dの位置、すなわち、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転中心線(中心線L
2)に垂直な方向において一義的に定まる。
【0042】
以上では、補強ピン20fの中心からエンドエフェクタ20の中心線L
2までの距離d
2を、位相決めピン10cの中心からロボット側固定部材10の中心線L
2までの距離d
1よりも大きくした場合について説明したが、距離d
2を距離d
1よりも小さくしても、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転中心線(中心線L
2)に垂直な方向において一義的に定まる。この場合、位相決めピン10cが被マウント部20aに対して移動する向きは、
図9A及び
図9Bの場合とは逆向きになり、軸受穴部10dの内周面と軸芯部20dの外周面に接点P
3の位置も、
図9A及び
図9Bの場合とは反対側(中心線L
1,L
2を挟んで反対側)となる。また、以上では、補強ピン20fと位相決めピン10cとを、同一の外径を有する円柱状に形成した場合について説明したが、補強ピン20fと位相決めピン10cとの外径は、同一にする必要はない。さらに、補強ピン20fと位相決めピン10cは、少なくともその一方が他方に対し、取付方向Cに非平行な方向に当接可能な面を有するのであれば、円柱状に形成する必要もない。
【0043】
図10は、取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段10eの他の例を説明する図である。
図11は、取付構造において好適に採用することができる回転付勢手段10eのさらに別の例を説明する図である。
図8の回転付勢手段10eでは、押圧部材10e
1が、内嵌リング21の端部に形成された傾斜面に当接するようになっていたが、
図10の回転付勢手段10eでは、押圧部材10e
1が、内嵌リング21のロボット側固定部材取付面に設けられた凹部の傾斜壁面に当接するように構成されている。また、
図8や
図9の回転付勢手段10eは、シリンダカバー12におけるエンドエフェクタ取付面に設けられた穴部12bに設けられていたが、
図11の回転付勢手段10eは、クランプリング15の内周面に設けた穴部15bに設けられている。このように、回転付勢手段10eの押圧部材10e
1で押圧する部分の形態や、回転付勢手段10eを設ける場所を変えても、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置が、取付構造の取付時回転操作の回転中心線(中心線L
2)に垂直な方向においても変わりにくくすることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の取付構造では、軸受穴部10dの内周面と軸芯部20dの内周面との隙間を小さく抑えなくても、マウント部10aに対する被マウント部20aの取付位置が一義的に定まる。このため、軸受穴部10dや軸芯部20dの寸法精度を特に高めなくても、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置の復元精度を高くすることができる。また仮に、長期間の使用によって、軸受穴部10dや軸芯部20dの接触箇所に摩耗等が生じた場合であっても、部品交換を行うことなく、ソフト的に位置補正を行うだけで、上記の復元精度を維持することもできる。ロボット用エンドエフェクタの取付構造においては、固定側部材と取付側部材との芯出し(中心線の一致)が要求される旋盤用チャック等とは異なり、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付位置の復元精度さえ担保されていれば、ロボット側固定部材10の中心線L1とエンドエフェクタ20の中心線L2とが完全に一致している必要はない。
【符号の説明】
【0045】
:10:ロボット側固定部材、:10a:マウント部、:10b:第1突起部、:10c:位相決めピン、:10d:軸受穴部、:10e:回転付勢手段、:10e1:押圧部材、:10e2:付勢部材、:10e3:ケース部材、:11:シリンダ、:11a:空圧空間、:12:シリンダカバー、:12a:回転規制ピン、:12b:穴部、:13:ピストン、:14:ピストンヘッド、:15:クランプリング、:15b:穴部、:16:ロックナット、:20:エンドエフェクタ、:20a:被マウント部、:20b:第2突起部、:20c:位相決め溝、:20d:軸芯部、:20e:補強ピン(高硬度部材)、:20f:補強ピン(高硬度部材)、:21:内嵌リング、:22:中間リング、:23:ピストンヘッド連結部、:24:操作部ベース、:25:操作部、:50:ロボットアーム