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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】接点構造
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20220916BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20220916BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20220916BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
C25D17/08 S
C25D17/08 G
C25D17/10 B
C25D17/12 Z
F16B7/18 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020079435
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172866
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉
(72)【発明者】
【氏名】竪谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】松野 真平
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106319608(CN,A)
【文献】中国実用新案第201512596(CN,U)
【文献】実開昭54-095523(JP,U)
【文献】特開2002-332596(JP,A)
【文献】特開2006-131936(JP,A)
【文献】特開平07-180086(JP,A)
【文献】特開平07-083382(JP,A)
【文献】特開2011-106016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき処理物に通電する接点構造であって、
取付軸部を有する基部と、
前記取付軸部の軸心を中心として回動させることによって前記取付軸部に対して着脱可能に螺合されると共に前記めっき処理物に対して導通接触される着脱部と
前記軸心を中心とする径方向にて前記取付軸部と前記着脱部との間を埋設する埋設材と
を有し、
前記着脱部は、前記取付軸部に螺合される雌ねじが設けられたねじ穴を有する胴部を備え、
前記埋設材は、前記胴部の外周面の一部と前記ねじ穴の内壁面に設けられたシール被膜の一部からなる
ことを特徴とする接点構造。
【請求項2】
前記着脱部は、
前記取付軸部に対して固定される前記胴部と、
前記胴部の先端に接続されると共に前記軸心を中心とする回転体形状とされた当接軸部と
を有することを特徴とする請求項1記載の接点構造。
【請求項3】
前記着脱部は、前記当接軸部の前記胴部と反対側の先端に接続されると共に前記当接軸部よりも大径の頭部を有することを特徴とする請求項2記載の接点構造。
【請求項4】
前記着脱部は、前記当接軸部が前記胴部から離間にするに連れて窄まる円錐形状であることを特徴とする請求項2記載の接点構造。
【請求項5】
前記基部は、前記取付軸部を被覆する絶縁被膜を有することを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の接点構造。
【請求項6】
前記着脱部は、前記絶縁被膜に当接される前記シール被膜を備えることを特徴とする請求項5記載の接点構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の外装部品等を電解めっきする場合には、めっき処理物をハンガーに吊るすことで保持し、めっき液にハンガーごとめっき処理物を浸漬して行う。ハンガーには、例えば、特許文献1に示すように、めっき処理物に対して通電するための接点構造が設けられており、めっき液に浸漬された状態でめっき処理物に接点構造を介して通電されることで、めっき処理物の表面にめっき層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4714454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、給電体が治具本体に対して着脱可能とされた接点構造が開示されている。接点構造において、めっき処理物との接触箇所は、めっき処理物との導通を確保する必要があることから導電体が露出されており、めっき液に直接触れる。このため、めっき処理物との接触箇所は、他の部位と比較して劣化速度が速い。特許文献1によれば、めっき処理物との接触箇所となる給電体が、治具本体に対して着脱可能とされているため、給電体を含む部位のみを交換することができ、ハンガー全体の交換を要さないことから、メンテナンスコストを抑えることが可能となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、給電体は、治具本体に挿入されているのみであり、給電体と治具本体との隙間にめっき液が浸入する。このため、特許文献1においては、筒状のシールキャップと、2つの止め輪を用いて、給電体と治具本体との接続部分をシールしている。したがって、給電体を治具本体に対して着脱する場合には、シールキャップや止め輪の着脱も合わせて行う必要がある。周知のように、1つのハンガーに対しては多数の接点構造が設けられている。このような多数の接点構造の1つ1つに対して、シールキャップや止め輪の装着を要することは、給電体の着脱作業を行う作業者の負担の増大を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電解めっきにてめっき処理物に対して通電する接点構造において、めっき処理物と接触する箇所の着脱作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、めっき処理物に通電する接点構造であって、取付軸部を有する基部と、上記取付軸部の軸心を中心として回動させることによって上記取付軸部に対して着脱可能に螺合されると共に上記めっき処理物に対して導通接触される着脱部とを有するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記着脱部が、上記取付軸部に対して固定される胴部と、上記胴部の先端に接続されると共に上記軸心を中心とする回転体形状とされた当接軸部とを有するという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記着脱部が、上記当接軸部の上記胴部と反対側の先端に接続されると共に上記当接軸部よりも大径の頭部を有するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記着脱部が、上記当接軸部が上記胴部から離間にするに連れて窄まる円錐形状であるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記基部が、上記取付軸部を被覆する絶縁被膜を有するという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記着脱部が、上記絶縁被膜に当接されるシール被膜を備えるという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記軸心を中心とする径方向にて上記取付軸部と上記着脱部との間を埋設する埋設材を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、めっき処理物と接触される着脱部が基部の取付軸部に対して螺合されることで着脱可能とされている。このため、着脱部を基部に対して挿し込む場合と比較して着脱部の基部に対する密着性を向上させることができ、着脱部と基部との隙間にめっき液が浸入することを抑制することができる。したがって、本発明によれば、着脱部と基部との接続箇所に別途シールキャップや止め輪を設ける必要がなく、着脱部の基部に対する着脱作業を簡易に行うことが可能となる。よって、本発明によれば、電解めっきにてめっき処理物に対して通電する接点構造において、めっき処理物と接触する箇所の着脱作業を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における接点構造の概略構成を示す外形図である。
図2】本発明の一実施形態における接点構造の着脱部を含む要部断面図である。
図3】本発明の一実施形態における接点構造が備える着脱部の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における接点構造にて、着脱部を基部に取り付ける様子を説明するための模式図である。
図5】本発明の一実施形態における接点構造が備える着脱部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る接点構造の一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の接点構造1の概略構成を示す外形図である。また、図2は、接点構造1の後述する着脱部3を含む要部断面図である。本実施形態の接点構造1は、めっき液に浸漬されるワークW(めっき処理物)を保持するハンガーに対して多数設けられている。各々の接点構造1は、例えばワークWに設けられた通電リブを挟持することでワークWに対して接続されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の接点構造1は、基部2と、着脱部3と、埋設材4(図2参照)とを備えている。基部2は、ハンガー本体に対して固定された部位であり、土台部2aと、2つのアーム部2bと、絶縁コート2c(絶縁被膜)とを備えている。
【0020】
土台部2aは、ハンガー本体の導電部材に接続されており、ハンガー本体と同様に導電性を有する金属によって形成されている。この土台部2aは、2つのアーム部2bを支持している。なお、図1に示すように、土台部2aは、絶縁コート2cによって外表面が覆われており、絶縁コート2cに内包されている。
【0021】
アーム部2bは、土台部2aに対して接続された棒状の部位であり、土台部2aと同様に導電性を有する金属によって形成されている。2つのアーム部2bは、一定の隙間を介して配置されており、土台部2aから同一方向に向けて突出して設けられている。各々のアーム部2bは、断面が円形の棒材によって形成されており、根本(土台部2a側)から先端に至る途中部位が、他のアーム部2bから離間する方向に膨出するように屈曲されている。例えば、図1において、2つのアーム部2bは、左右方向に離間して配置されている。図1における右側に配置されたアーム部2bは、根本から先端に至る途中部位が、左側のアーム部2bから離間する方向(すなわち右方向)に膨出するように屈曲されている。一方、図1における左側に配置されたアーム部2bは、根本から先端に至る途中部位が、右側のアーム部2bから離間する方向(すなわち左方向)に膨出するように屈曲されている。
【0022】
これらのアーム部2bは、屈曲した上述の途中部位の屈曲角度を変更するように塑性変形が可能とされており、途中部位の屈曲角度を変更することによって取付軸部2d(図2参照)の位置を変更可能とされている。例えば、アーム部2bの途中部位の屈曲角度を小さくすることによって取付軸部2dを土台部2aに近づけることができ、アーム部2bの途中部位の屈曲角度を大きくすることによって取付軸部2dを土台部2aに対して遠ざけることが可能となる。
【0023】
アーム部2bの取付軸部2dは、土台部2aと反対側の端部(先端部)に位置する部位であり、直線状に延出されている。2つのアーム部2bの取付軸部2d同士は、互いの軸心が平行あるいは略平行となるように配置されている。各々の取付軸部2dには、外周面に対して雄ねじ2eが設けられている。この雄ねじ2eが後述する着脱部3の雌ねじ3fに螺合されることによって、着脱部3が基部2に対して接続される。なお、軸心Lを中心として着脱部3を回動させることによって、着脱部3を取付軸部2dに対して着脱することができる。なお、図1に示すように、アーム部2bは、取付軸部2dの一部を除いて絶縁コート2cによって外表面が覆われている。
【0024】
絶縁コート2cは、アーム部2bの取付軸部2dの一部を除いて、基部2の全体を覆うように設けられており、土台部2a及びアーム部2bがめっき液に接触することを防止する。このような絶縁コート2cは、例えばプラスチゾルやシリコーンによって形成されている。
【0025】
着脱部3は、ワークWに対して接触される部位であり、取付軸部2dに対して着脱可能とされている。図3は、着脱部3の斜視図である。この図に示すように、本実施形態において着脱部3は、着脱部軸心Laを中心とする回転体形状とされており、全体として略円柱状の形状とされており、胴部3aと、当接軸部3bと、頭部3cと、シールコート3d(シール被膜)とを有している。
【0026】
胴部3aは、着脱部軸心Laを中心とする円柱形状とされており、着脱部軸心Laに沿う方向の一方側の端部に当接軸部3bが接続され、着脱部軸心Laに沿う方向の他方側の端部にねじ穴3eが設けられている。ねじ穴3eの内壁面には、上述の基部2の取付軸部2dに設けられた雄ねじ2eと螺合される雌ねじ3fが設けられている。つまり、ねじ穴3eは、取付軸部2dの外径寸法よりも僅かに内径寸法が大きく設定されており、取付軸部2dが挿入可能とされている。また、ねじ穴3eの奥の底面3e1は、取付軸部2dの先端面との当接面とされている。
【0027】
このような胴部3aは、取付軸部2dと同様に導電性を有する金属によって形成されている。ねじ穴3eに挿入された取付軸部2dの雄ねじ2eの一部と、胴部3aに設けられた雌ねじ3fの一部とが直接的に接触することによって、基部2と着脱部3とが導通可能に接続される。また、取付軸部2dの先端面とねじ穴3eの底面3e1とが直接的に接触することによっても、基部2と着脱部3とが導通可能に接続される。
【0028】
当接軸部3bは、胴部3aのねじ穴3eが設けられた端部と反対側の端部に接続されており、着脱部軸心Laを中心とする回転体形状の円柱形状とされている。また、当接軸部3bは、胴部3aと同様に導電性を有する金属によって形成されている。この当接軸部3bの径寸法は、図3等に示すように、胴部3aの径寸法よりも小さく設定されている。この当接軸部3bの外周面は、ワークWに対して接点構造1が直接的に接触する接触面とされている。
【0029】
なお、図1に示すように、ワークWは通電リブ等が2つの着脱部3に挟持される。本実施形態においては、上述のように当接軸部3bが着脱部軸心Laを中心とする円柱状の回転体形状とされている。このため、取付軸部2dに対する着脱部3の回転位置に関わらず、当接軸部3bの外周面位置は、ワークWに対して同じ位置に配置されることとなる。したがって、取付軸部2dに対して着脱部3を装着する場合に、取付軸部2dに対する着脱部3の回転位置を定める必要はない。
【0030】
頭部3cは、当接軸部3bの先端(胴部3aと反対側の端)に接続されており、着脱部軸心Laを中心とする回転体形状の円柱形状とされている。また、頭部3cは、胴部3a及び当接軸部3bと同様に導電性を有する金属によって形成されている。この頭部3cの径寸法は、図3等に示すように、当接軸部3bの径寸法よりも大きく設定されており、胴部3aと同一あるいは略同一とされている。
【0031】
この頭部3cは、胴部3aと頭部3cとの間にて配置されて当接軸部3bに接触されたワークWが、着脱部軸心Laに沿った方向に移動されることを規制する。このような頭部3cによって、接点構造1からワークWが意図せずに外れることを抑止することが可能となる。
【0032】
シールコート3dは、胴部3aの一部を覆う絶縁性の被膜である。例えば、シールコート3dは、基部2の絶縁コート2cと同様に、プラスチゾルやシリコーンによって形成されている。このシールコート3dは、図2等に示されているように、胴部3aのねじ穴3eが設けられている側の端部を覆うように設けられており、胴部3aの外周面の一部と胴部3aのねじ穴3eが設けられた端面とを覆っている。このようなシールコート3dは、図2等に示すように、着脱部3が取付軸部2dに螺合された状態において、基部2の絶縁コート2cに圧接され、取付軸部2dと着脱部3との間(すなわちねじ穴3eの内部)にめっき液が浸入することを抑止する。
【0033】
埋設材4は、図2に示すように、雄ねじ2eと雌ねじ3f(すなわち取付軸部2dと着脱部3)との間に介挿されたシール部材である。この埋設材4は、軸心Lを中心とする径方向にて取付軸部2dと着脱部3との間を埋設し、取付軸部2dと着脱部3との間にめっき液が浸入することを抑止する。
【0034】
図2における拡大図に示すように、埋設材4は、ねじ穴3eの内部における全域にて取付軸部2dと着脱部3との間に介挿されているものではない。具体的には、雄ねじ2eと雌ねじ3fとが複数の箇所にて直接的に当接されており、このように雄ねじ2eと雌ねじ3fとが複数の箇所にて当接された状態で生じる取付軸部2dと着脱部3との隙間に埋設材4が埋設されている。この埋設材4は、例えばシールコート3dと同様に絶縁材によって形成されている。ただし、雄ねじ2eと雌ねじ3fとが複数の箇所にて直接的に当接されていることから、取付軸部2dと着脱部3とは導通可能に接続されている。
【0035】
このような埋設材4は、ねじ穴3eの内壁面にもシールコート3dを被膜形成し、このねじ穴3eの内壁面に設けられたシールコート3dが、雄ねじ2eと雌ねじ3fとを螺合する場合の摩擦力等で破かれて取付軸部2dと着脱部3との隙間に残存することで形成される。なお、埋設材4は、例えばシールコート3dと同様に、プラスチゾルやシリコーンによって形成することができる。
【0036】
図4は、本実施形態の接点構造1にて、着脱部3を基部2に取り付ける様子を説明するための模式図である。この図に示すように、本実施形態の接点構造1において、着脱部3を基部2に対して装着する場合には、絶縁性のコート5を装着前の着脱部3の胴部3aの表面に対して形成する。コート5は、着脱部3を基部2に装着することによって、シールコート3d及び埋設材4となるものである。その後、着脱部3のねじ穴3eの入り口を基部2の取付軸部2dの先端に合わせて、取付軸部2dの軸心Lと着脱部3の着脱部軸心Laとを重ね、さらに取付軸部2dの軸心Lを中心として着脱部3を回動させることによって、取付軸部2dに対して着脱部3を螺合する。
【0037】
なお、図4に示すように、絶縁コート2cを、取付軸部2dを覆うように形成しておいても良い。これによって、絶縁コート2cの一部を埋設材4とすることもできる。ただし、着脱部3を交換しようとする場合には、交換前の着脱部3を螺合する際に既に取付軸部2dを被覆していた絶縁コート2cが破られて剥離された状態となっている。このような状態で改めて取付軸部2dに絶縁コート2cを施すことは、交換作業を煩雑なものとする。このため、2度目以降の着脱部3の装着時においては、着脱部3の装着時に取付軸部2dを絶縁コート2cにて覆わなくても良い。このような場合であっても、上述のように、交換後に新たに装着される着脱部3のねじ穴3eの内壁面にシールコート3dを被膜形成しておくことにより、シールコート3dの一部が破かれて埋設材4とすることができる。
【0038】
このように取付軸部2dに着脱部3を螺合させる場合に、ねじ穴3eの内壁面に形成されたコート5の一部が剥がれ、雄ねじ2eと雌ねじ3fとの一部が露出して直接接触されると共に、剥がれたコート5の一部やねじ穴3eの内壁面にて剥がれなかったコート5の一部が埋設材4となる。一方、着脱部3の胴部3aの外周面及び端面に設けられたコート5の一部は、シールコート3dとなって基部2の絶縁コート2cに圧接される。そして、雄ねじ2eと雌ねじ3fとの一部が露出して直接接触され、またねじ穴3eの奥の底面3e1が取付軸部2dの先端面と当接することで、基部2と着脱部3とが導通可能に接続される。
【0039】
なお、基部2に装着された着脱部3を基部2から脱離する場合には、装着時と反対向きに着脱部3を回動させる。これによって、着脱部3を容易に取付軸部2dから取り外すことができる。
【0040】
以上のような本実施形態の接点構造1は、ワークWに通電する接点構造1であって、取付軸部2dを有する基部2と、取付軸部2dの軸心Lを中心として回動させることによって取付軸部2dに対して着脱可能に螺合されると共にワークWに対して導通接触される着脱部3とを有している。
【0041】
本実施形態の接点構造1においては、ワークWと接触される着脱部3が基部2の取付軸部2dに対して螺合されることで着脱可能とされている。このため、着脱部3を基部2に対して挿し込む場合と比較して着脱部3の基部2に対する密着性を向上させることができ、着脱部3と基部2との隙間にめっき液が浸入することを抑制することができる。したがって、本実施形態の接点構造1によれば、着脱部3と基部2との接続箇所に別途シールキャップや止め輪を設ける必要がなく、着脱部3の基部2に対する着脱作業を簡易に行うことが可能となる。よって、本実施形態の接点構造1によれば、電解めっきにてワークWに対して通電する接点構造1において、ワークWと接触する箇所の着脱作業を容易に行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の接点構造1においては、着脱部3が、取付軸部2dに対して固定される胴部3aと、胴部3aの先端に接続されると共に軸心L(すなわち着脱部軸心La)を中心とする回転体形状とされた当接軸部3bとを有している。このため、本実施形態の接点構造1によれば、取付軸部2dに対する着脱部3の回転位置に関わらず、当接軸部3bの外周面位置が、ワークWに対して同じ位置に配置されることとなる。したがって、取付軸部2dに対して着脱部3を装着する場合に、取付軸部2dに対する着脱部3の回転位置を定める必要がなく、着脱部3の装着作業をさらに容易に行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の接点構造1においては、着脱部3が、当接軸部3bの胴部3aと反対側の先端に接続されると共に当接軸部3bよりも大径の頭部3cを有している。このため、ワークWが胴部3aと頭部3cとの間に配置されることで、ワークWが着脱部軸心Laに沿った方向に移動されることを規制することができる。したがって、ワークWから意図せずに接点構造1から外れることを抑止することが可能となり、またワークWを容易に接点構造1に接続することができる。
【0044】
また、本実施形態の接点構造1においては、基部2が、取付軸部2dを被覆する絶縁コート2cを有している。このため、基部2の導電部(土台部2a及びアーム部2b)がめっき液に触れることを防止し、基部2の導電部がめっき液によって劣化することを防止することができる。
【0045】
また、本実施形態の接点構造1においては、着脱部3が、胴部3aの外周面の少なくとも一部を被覆すると共に絶縁コート2cに当接されるシールコート3dを備えている。このため、ねじ穴3eに至るめっき液の浸入経路が絶縁コート2c及びシールコート3dによって塞がれ、着脱部3と基部2との隙間(すなわち雄ねじ2eと雌ねじ3fと隙間)にめっき液が浸入することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の接点構造1においては、軸心Lを中心とする径方向にて取付軸部2dと着脱部3との間を埋設する埋設材4を有している。このため、着脱部3と基部2との隙間(すなわち雄ねじ2eと雌ねじ3fと隙間)にめっき液が浸入することをより確実に防止することが可能となる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、着脱部3にシールコート3dを設ける構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、着脱部3がシールコート3dを備えない構成を採用することも可能である。
【0049】
また、上記実施形態においては、同一のコート5から形成される絶縁コート2cと、埋設材4とを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、埋設材4を設けない構成や、埋設材4を絶縁コート2cと異なる材料によって形成することも可能である。また、取付軸部2dを有する基部2に着脱部3を螺合した後に、基部2及び着脱部3の一部を覆うように絶縁層を設けることで絶縁コート2
cを形成しても良い。
【0050】
また、上記実施形態においては、着脱部3が、胴部3a、当接軸部3b及び頭部3cを有する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、着脱部3は、外形形状が単純な円柱形状であっても良い。また、着脱部3の途中部位が屈曲された構成を採用することも可能である。また、図5(a)に示すように、角柱状の胴部3aに対して円錐形状の当接軸部3bを備える構成としても良い。また、図5(b)に示すように、円柱状の胴部3aに対して円錐形状の当接軸部3bを備える構成としても良い。なお、図5に示す構成にて、当接軸部3bは、角錐形状であっても良い。このような図5に示す構成によれば、当接軸部3bの先端部でワークWと接触する接点構造とすることが可能となる。
【0051】
また、上記実施形態においては、着脱部3の胴部3aが着脱部軸心Laを中心とする回転体形状である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、着脱部3の胴部3aの着脱部軸心Laと直交する断面の形状が多角形状とされた構成とすることも可能である。このような構成を採用することによって、例えば着脱部3を回動させる場合に、工具によって胴部3aを把持することが容易となり、着脱部3の着脱作業をより容易に行うことが可能となる。
【0052】
また、着脱部3の胴部3aを工具や作業者の指で把持する場合に、シールコート3dが破けることを防止するためには、胴部3aの外周面の全域にシールコート3dを設けずに、胴部3aの外周面の一部にシールコート3dが設けられていない露出領域を設けておくことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、胴部3aの外周面の全域をシールコート3dが覆う構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1……接点構造、2……基部、2a……土台部、2b……アーム部、2c……絶縁コート(絶縁被膜)、2d……取付軸部、2e……雄ねじ、3……着脱部、3a……胴部、3b……当接軸部、3c……頭部、3d……シールコート(シール被膜)、3e……ねじ穴、3e1……底面、3f……雌ねじ、4……埋設材、5……コート、L……軸心、La……着脱部軸心、W……ワーク(めっき処理物)
図1
図2
図3
図4
図5