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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】人形体、股関節部、及び回動機構
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/36 20060101AFI20220916BHJP
   A63H 3/46 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A63H3/36 D
A63H3/46 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020207679
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094667
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】濱田 哲人
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-267879(JP,A)
【文献】特開2019-202074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体であって、
上体部と、
前記上体部が連結される腰関節部と、
前記腰関節部の後部に設けられ、左右の脚部にそれぞれ対応する股関節部と、
球状の一端が前記股関節部へ回動可能に軸支されるそれぞれの連結部材と、
前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能に連結されるそれぞれの脚部と
を備え
前記股関節部は、円形形状でそれぞれ形成され、
前記それぞれの連結部材は、前記人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に前記一端が前記股関節部へ軸支されることを特徴とする人形体。
【請求項2】
前記それぞれの連結部材は、前記腰関節部の後部から対応する側部へ延伸するようにL字形状で形成されることを特徴とする請求項1に記載の人形体。
【請求項3】
前記それぞれの脚部は、脚部の軸方向を中心に回動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人形体。
【請求項4】
前記股関節部は、前記腰関節部の後部に設けられる代わりに、前記腰関節部の前部に設けられることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の人形体。
【請求項5】
前記腰関節部と前記股関節部とは一体化して設けられていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の人形体。
【請求項6】
人形体の股関節部であって、
上体部が連結される腰関節部の後部に設けられ、左右の脚部に対応するそれぞれの連結部を備え、
前記それぞれの連結部は、円形形状で形成され、前記左右の脚部に連結されるそれぞれの連結部材の球状の一端を、前記人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に軸支することを特徴とする股関節部。
【請求項7】
人形体の股関節部及び脚部の回動機構であって、
上体部が連結される腰関節部の後部に設けられた、左右の脚部に対応するそれぞれの股関節部に対して、それぞれの連結部材の球状の一端がそれぞれ軸支される第1回動部と、
前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能にそれぞれの脚部を連結する第2回動部と
を備え
前記股関節部は、円形形状でそれぞれ形成され、
前記それぞれの連結部材は、前記人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に前記一端が前記股関節部へ軸支されることを特徴とする回動機構。
【請求項8】
前記それぞれの脚部が脚部の軸方向を中心に回動可能に取り付けられる第3回動部をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の回動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形体、股関節部、及び回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
人間や動物に近い動作やポージングを実現すべく、人形玩具(人形体)には種々の関節や可動部が含まれる。しかし、人形玩具に人間等と同数の関節等を設けることは、多数の部材が必要となり、精巧な人形玩具であってもその数には限りがあり実現は困難である。従って、上述のような動作やポージングを実現するためには、より少ない関節や部材で構成しつつ、関節やそれに連結される部位の可動域を拡大させることが重要である。可動域を拡大させることによって、より自由度の高い動作や多彩なポージングを行うことができる。
【0003】
特許文献1には、股関節に連結される連結部材が開位置と閉位置との間で回動し、連結部材の先端に脚部が連結される人形体が提案されている。この人形体においては、開脚と閉脚の動作を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-34232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、連結部材が開位置と閉位置との間で回動可能であるもののその動作方向は単方向である。人間の四肢のような自然な動作を実現するには、種々の方向に回動可能であることが望ましい。一方で、股関節は人間と同様に腰部の内部に設けられることによって、それに連結された自然な脚部を実現することができるが、その動作空間には限りがある。つまり、腰部やスカート等の他の部材との関係によって制限された空間内で、より自由に脚部を回動させることが要求される。
【0006】
本発明は、例えば人形体において、股関節の可動域を広げ、より自由度の高い動作や多彩なポージングを実現する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば人形体であって、上体部と、前記上体部が連結される腰関節部と、前記腰関節部の後部に設けられ、左右の脚部にそれぞれ対応する股関節部と、球状の一端が前記股関節部へ回動可能に軸支されるそれぞれの連結部材と、前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能に連結されるそれぞれの脚部とを備えることを特徴とする。また、本発明は、例えば人形体であって、上体部と、前記上体部が連結される腰関節部と、前記腰関節部の後部に設けられ、左右の脚部にそれぞれ対応する股関節部と、球状の一端が前記股関節部へ回動可能に軸支されるそれぞれの連結部材と、前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能に連結されるそれぞれの脚部とを備え、前記股関節部は、円形形状でそれぞれ形成され、前記それぞれの連結部材は、前記人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に前記一端が前記股関節部へ軸支されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、例えば人形体の股関節部及び脚部の回動機構であって、上体部が連結される腰関節部の後部に設けられた、左右の脚部に対応するそれぞれの股関節部に対して、それぞれの連結部材の球状の一端がそれぞれ軸支される第1回動部と、前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能にそれぞれの脚部を連結する第2回動部とを備えることを特徴とする特徴とする。また、本発明は、例えば人形体の股関節部及び脚部の回動機構であって、上体部が連結される腰関節部の後部に設けられた、左右の脚部に対応するそれぞれの股関節部に対して、それぞれの連結部材の球状の一端がそれぞれ軸支される第1回動部と、前記それぞれの連結部材の他端に対して、前記腰関節部の両側部付近で回動可能にそれぞれの脚部を連結する第2回動部とを備え、前記股関節部は、円形形状でそれぞれ形成され、前記それぞれの連結部材は、前記人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に前記一端が前記股関節部へ軸支されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人形体において、股関節の可動域を広げ、より自由度の高い動作や多彩なポージングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る人形体の外観正面の一例を示す図。
図2】一実施形態に係る人形体の下半身の斜視図及び分解図。
図3】一実施形態に係る人形体の脚部の装着図及び分解図。
図4】一実施形態に係る腰部の拡大図。
図5】一実施形態に係る腰部の分解図。
図6】一実施形態に係る股関節部の回動機構を示す図。
図7】一実施形態に係る股関節部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<人形体の外観>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る人形体100の外観構成の一例について説明する。図1は人形体100の外観正面を示す。
【0013】
人形体(人形玩具)100は、頭部101、胴体部102、腕部103、腰部104、及び脚部105(105a、105b)を備える。頭部101は胴体部102に連結される。胴体部102には、さらに右腕及び左腕を含む腕部103が連結され、下部において腰部104が連結される。腰部104には右足105a及び左足105bを含む脚部105が連結される。なお、以下では、頭部101、胴体部102、及び腕部103を含む上半身を上体部と称する。腰部104は、図1において点線で示される領域に位置し、上体部が連結される腰関節と、左右の脚部105a、105bが連結される股関節とが含まれる。また、腰部104には、人形体100の衣服等の装飾が外側に設けられてもよい。これらの装飾は腰部104と一体化して設けられてもよい。
【0014】
<下半身の構成>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る人形体100の下半身の構成例について説明する。図2(a)は左足のみ連結された上体の下半身の斜視図を示し、図2(b)は図2(a)の分解斜視図を示す。図2(a)及び図2(b)は共に人形体100の下方から見た斜視図となり、右足を外した上体で腰部104の内部が見える状態を示している。なお、上下、左右、前後の矢印については図における人形体の向きを示し、他の図面についても同様である。
【0015】
腰部104は、腰部基礎部材104a及び腰部装飾部材104bを備える。腰部104の詳細構成については、図4及び図5を用いて後述する。脚部105は、連結部材201(201a、201b)に回動可能に連結される連結部202bと脚部本体203bとから構成される。脚部105の詳細構成については図3を用いて後述する。脚部105は、腰部104の左右の脚部a、105bに対応するそれぞれの股関節部に連結された連結部材201に腰関節部の側部付近で回動可能に連結される。
【0016】
<脚部の詳細構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る脚部105の詳細構成について説明する。図3(a)は腰部104に脚部105bが連結される様子を示し、図3(b)は脚部105bの分解図である。図3(a)及び図3(b)は共に左足に相当する脚部105bの付け根から膝部分までの構成を示す。それ以外の部分は説明を簡略化するため省略している。
【0017】
図3(a)に示すように、連結部材201bの一端は股関節部に回動可能に連結され、他端502bが脚部105bに連結される。脚部105bに連結される他端502bは円筒形状で形成される。一方、脚部105bの連結部202bには連結部材201bの他端502bである円筒形状の部材を受け入れる嵌め込み部310が形成される。したがって、他端502bに連結された脚部105bは、当該円筒形状を軸に回動させることができる。当該回動機構は第2回動部の一例であり、人形体100の前後方向302に脚部105bを回動することができる。
【0018】
また、脚部105bの脚部本体203bはその大腿部分が脚部105bの軸方向を中心にして矢印303の方向に回動可能に構成される。図3(b)を参照して詳細に説明する。脚部105bは、連結部202bと、脚部本体203bとを含む。脚部本体203bは、装着部材305、回転部材306、及び大腿部307を含む。連結部202bに対して、装着部材305が装着される。装着部材305は、連結部202bに対して嵌め込まれて固定される。また、装着部材305の下部は円筒形状の部材で構成される。この円筒形状の部材は、回転部材306が矢印方向308へ回転可能(回動可能)に嵌め込まれる。さらに、回転部材306には、大腿部307が装着され固定される。不図示であるが、大腿部307の下部には膝下の構成が連結される。したがって、大腿部307以下の構成部材は、装着部材305の下部及び回転部材306による回動に追従する。当該回動機構は第3回動部の一例であり、脚部105の大腿部以下を脚部の軸方向を中心とした矢印303、308の方向に回動させることができる。なお、不図示の膝下においても、少なくとも膝及び踝の位置で回動可能に構成されることが望ましい。
【0019】
<腰部の詳細構成>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る腰部104の詳細構成について説明する。図4(a)は腰部基礎部材104aを上方から見た図であり、図4bは腰部基礎部材104aを下方から見た図である。また、図4(c)は上方から見た斜視図であり、図4(d)は人形体100の左側から見た図である。
【0020】
腰部基礎部材104aは、腰関節部401、及び股関節部402a、402bを含んで構成される。腰関節部401は、人形体100の上体部が連結される関節であり、上体部下部の球体(不図示)が回動可能に連結される。これにより、上半身を腰を中心に回転させることができる。腰関節部401は、上体部下部の球体を回動可能に受け入れるため円形形状で形成される。腰関節部401は、上体下部の球体の直径よりも若干短い直径で形成され、当該球体が差し込まれる際にはプラスチック等の弾性部材で形成されているため、押圧により撓んで球体を受け入れることができる。
【0021】
また、左右の脚部105a、105bに対応する股関節部402a、402bが腰関節部401の後部にそれぞれ個別に形成される。つまり、左右の脚部105a、105bはそれぞれ別の股関節部402a、402bへ軸支され、個別に動作させることができる。これにより、より自然な動作や多彩なポージングを実現することができる。また、腰部104の後部に股関節部402a、402bを設けることにより、臀部や装飾等によりそれらの形状を覆い隠すことができる。各股関節部402a、402bは、腰関節部401と同様に、それぞれが円形形状で形成される。また、図4(a)に示すように、腰関節部401と、股関節部402a、402bとは一体化して形成されてもよい。これにより、腰関節部401と、股関節部402a、402bとのそれぞれの強度を上げることができる一方で、パーツ数を低減し製造工程を簡略化することもできる。
【0022】
各股関節部402a、402bには、それぞれ連結部材201a、201bの一端が軸支される。また、連結部材201a、201bの他端には、それぞれ左右の脚部105a、105bが連結される。本実施形態によれば、図示するように、各股関節部402a、402bは、腰関節部401の後部に人形体の中心からずらして敢えて形成され、そこへ連結部材201a、201bの一端が軸支される。一方、連結部材201a、201bの他端は、腰関節部401の下方側部付近でそれぞれの脚部105a、105bへ連結される。このように、軸支された一端と、脚部105a、105bを連結する他端との距離を腰部104のパーツ内の範囲でできるだけ長く確保することにより、股関節の可動域をできる限り広げることができる。
【0023】
ここで、図5を参照して、各股関節部402a、402bへの連結部材201a、201bの連結について説明する。図5(a)は腰部基礎部材104aを上方から見た斜視図であり、図5(b)は下方から見た斜視図であり、それぞれ連結部材が取り付けられる様子を示す。
【0024】
連結部材201a、201bは、それぞれ球状に形成された一端(球体)501a、501bと、円筒形状の他端502a、502bとを備える。図5(b)に示すように、連結部材201bは、一端501bから他端502bに向かってL字形状で形成される。つまり、本実施形態に係る連結部材201a、201bは、腰関節部401の後部から、左右の脚部105a、105bに応じて、腰関節部401の対応する側部へ延伸するようにL字形状で形成される。これにより、軸支された連結部材の一端(回転中心)から脚部が連結される他端までの距離を、腰部104の空間内においてできるだけ確保することができる。連結部材201aも同様に形成される。
【0025】
なお、本発明において連結部材をL字形状に限定する意図はない。L字形状については、狭いパーツ内、例えば腰部104の内部の空間において、一端から他端までの距離をできるだけ長く確保するために人形体100の構成に応じて規定したものであり、他の人形体においてはそれぞれの部材等との関係から任意の形状を適用することができる。つまり、限られた空間内においてできるだけ一端と他端との間の距離を確保することができる形状であればよい。また、当該形状については、脚部105を動作させたときに、他の部材に接触して可動域を狭める可能性があるため、可動時の動きも考慮した形状とすることが望ましい。上記条件に加えて、さらに、軸と球体部分とが金型から抜けやすい形状であること、できるだけパーツ数を低減する(できれば1つのパーツで)実現できるものであることが望ましい。なお、L字形状についてはこれらの条件についても満足する形状となる。
【0026】
図5(a)及び図5(b)に示すように、各連結部材201a、201bは、その一端501a、501bが股関節部402a、402bの下方から装着され、軸支される。股関節部402a、402bは円形形状で形成され、その直径は球体である一端501a、501bの直径よりも若干短い直径で形成され、当該球体が差し込まれる際にはプラスチック等の弾性部材で形成されているため、押圧により撓んで球体を受け入れることができる。これにより、股関節部402a、402bは、連結部材201a、201bを軸支することができる。ここでは、股関節部402a、402bに対して下方から連結部材201a、201bが連結される例について説明したが、空間的な制約により上方から連結されてもよい。この場合においては、股関節部が腰関節部よりもさらに下方に位置することが望ましい。これにより、連結部材が回動可能な空間をできるだけ確保することができる。
【0027】
<股関節部の回動機構>
次に、図6を参照して、本実施形態に係る股関節部の回動機構について説明する。以下で説明する股関節部402a、402bの回動機構は、第1回動部の一例である。
【0028】
図6(a)は腰部104の左側断面図を示し、連結部材201bが前後方向に回動する様子を示す。点線601は、股関節部402bに軸支された一端501bを中心に連結部材201bを人形体100の前方向に回動させた位置を示す。点線602は、股関節部402bに軸支された一端501bを中心に連結部材201bを人形体100の後ろ方向に回動させた位置を示す。したがって、股関節部402bに軸支された連結部材201bは、人形体100の前後方向に、点線矢印603に示す範囲の可動域を得ることができる。また、連結部材201bの他端502bにさらに前後方向に回動可能に脚部105bが連結されるため、脚部105bはより大きな可動域を得ることができる。なお、連結部材201aも同様に回動し、同様の可動域を得ることができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、連結部材自体が股関節部を中心に前後方向に回動し、さらに脚部が回動可能に連結部材に取り付けられる。つまり、脚部の前後方向の動作に応じて、脚部の付け根部分に相当する股関節部分も追従して前後方向に回動することができ、可動域が広がることは当然であるが、さらに、躍動感のある動作やポージングを実現することができる。
【0030】
図6(b)は腰部104を上から見た図を示し、連結部材201a、201bが左右方向に回動する様子を示す。点線604aは、股関節部402aに軸支された一端501aを中心に連結部材201aを人形体100の右方向に回動させた位置を示す。点線605aは、股関節部402aに軸支された一端501aを中心に連結部材201aを人形体100の左方向に回動させた位置を示す。したがって、股関節部402aに軸支された連結部材201aは、人形体100の左右方向に、点線矢印606aに示す範囲の可動域を得ることができる。同様に、点線604bは、股関節部402bに軸支された一端501bを中心に連結部材201bを人形体100の左方向に回動させた位置を示す。点線605bは、股関節部402bに軸支された一端501bを中心に連結部材201bを人形体100の右方向に回動させた位置を示す。したがって、股関節部402bに軸支された連結部材201bは、人形体100の左右方向に、点線矢印606bに示す範囲の可動域を得ることができる。このように、本実施形態による股関節部の回動機構は、それぞれの連結部材201a、201b、及びそれに連結されるそれぞれの脚部105a、105bが、左右個別に左右方向へ回動することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る股関節部の回動機構は、球形状の一端501a、501bを股関節部402a、402bで軸支するため、人形体100の前後方向に加えて、さらに左右方向にも回動可能である。なお、ここでは、説明を簡略化するため、前後方向と左右方向とについて説明したが、一端501a、501bが球体であり、股関節部402a、402bが円形形状で形成されるため、当然のことながらその他の方向にも回動可能である。つまり、本実施形態に係る股関節部の回動機構によれば、人形体100の腰部104内の空間の範囲内で全方向に回動可能である。これにより、より自然な動作や多彩なポージングを実現することができる。
【0032】
例えば、このような本実施形態による股関節の構成によれば、二輪車に跨るような姿勢を自然な形で実現することができる。また、人形体の右の脚部を前方に回動させ、左の脚部を屈折して後ろへ回動させることにより、片足前屈の姿勢、例えば陸上競技で使用されるハードルを飛び越える際の体勢のようなポージングを実現することも可能である。また、連結部材を内側に絞って立たせることにより、より自然な内股での立位姿勢を実現することができる。或いは、連結部材を外側に開いたり、左右の連結部材で同じ右方向に回動させたりすることにより様々なポージングを実現することができる。このように、本実施形態によれば、より自然な動作や多彩なポージングを実現することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る人形体は、上体部と、上体部が連結される腰関節部と、腰関節部の後部に設けられ、左右の脚部にそれぞれ対応する股関節部と、球状の一端が股関節部へ回動可能に軸支されるそれぞれの連結部材と、それぞれの連結部材の他端に対して、腰関節部の両側部付近で回動可能に連結されるそれぞれの脚部とを備えることを特徴とする。このように、本実施形態に係る人形体は、股関節部と連結部材とにより多方向へ連結部材を回動可能な第1回動部を形成し、連結部材と脚部とにより人形体の前後方向へ脚部を回動可能な第2回動部を形成する。これにより、人形体において、股関節の可動域を広げ、より自由度の高い動作や多彩なポージングを実現する仕組みを提供する。また、本実施形態によれば、股関節部は、円形形状でそれぞれ形成され、それぞれの連結部材は、人形体の腰部内の空間の範囲内で全方向に回動可能に一端が股関節部へ軸支されてもよい。さらに、それぞれの脚部は、脚部の軸方向を中心に回動可能に構成されてもよい(第3回動部)。このように、本実施形態によれば、第1回動部及び第2回動部に加えて、さらに、大腿部以下を回動させる第3回動部を形成してもよい。これにより、より自然な動作や多彩なポージングを実現することができる。
【0034】
<変形例>
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態では、股関節部を腰関節部の後部に設ける例について説明したが本発明を限定するものではない。図7を用いて、股関節部の変形例について説明する。
【0035】
図7に示すように、腰部基礎部材700には、腰関節部701と、当該腰関節部701の前部に股関節部702a、702bが形成される。股関節部702a、702bには、上記実施形態と同様に、それぞれ連結部材703a、703bが連結され、その球状の一端が軸支される。このように、本発明によれば、上記実施形態のように腰関節部の後部に股関節部が設けられる代わりに、前記腰関節部の前部に設けられるようにしてもよい。例えば、人形体の腰部の前部に大きく装飾が施される場合などには、その内部の空間に股関節を設けることにより、より効率的に股関節の可動域を得ることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、連結部材がL字形状で形成される例について説明したが、本発明はこれに限定されず、腰部(パーツ)内部の空間に応じて、股関節部に軸支される一端と、脚部に連結される他端との距離をできるだけ長く確保できる形状であればよい。さらに、上記実施形態では、腰関節部と、2つの股関節部とが一体化して形成される例について説明したが、他の部材等の制約により離間して設けられてもよい。
【0037】
また、人形玩具(人形体)の形状は、特に限定されるものではなく、人、動物、ロボット、昆虫、恐竜等、股関節を有する様々な形状を含むものである。
【符号の説明】
【0038】
100:人形体、101:頭部、102:胴体、103:腕部、104:腰部、105a、105b:脚部、201a、201b:連結部材、304:連結部、305:装着部材、306:回転部材、307:大腿部、401:腰関節部、402a、402b:股関節部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7