IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘルステック バイオ アクティブズ,エス.エル.ユーの特許一覧

特許7142678甘味および矯味組成物、製品およびその使用
<>
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図1
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図2
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図3
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図4
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図5
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図6
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図7
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図8
  • 特許-甘味および矯味組成物、製品およびその使用 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】甘味および矯味組成物、製品およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/30 20160101AFI20220916BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20220916BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A23L27/30 D
A23L29/00
A61K47/40
A61K47/26
A61K47/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020504375
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018070299
(87)【国際公開番号】W WO2019020750
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】17382503.5
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520029561
【氏名又は名称】ヘルステック バイオ アクティブズ,エス.エル.ユー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドール,トム ネリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ボレゴ リオス,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】クレスポ モンテロ,フランシスコ ハビエル
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-035349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0275147(US,A1)
【文献】J. Agric. Food Chem., 1998年,Vol.46,p.1500-1505
【文献】Journal of Molecular Liquids, 2017年5月22日,Vol.241,p.926-933
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/40
A23L 29/00
A61K 47/40
A61K 47/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む、甘味組成物。
【請求項2】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:10に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:6に含まれる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:1±0.1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:1±0.05である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:3である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:3±0.3である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:3±0.15である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
摂取可能製品に甘味を付加するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の甘味組成物の使用。
【請求項11】
前記摂取可能製品が、食品および医薬品からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
摂取可能製品に、請求項1~9のいずれか1項に記載の甘味組成物を添加することを含む、摂取可能製品に甘味を付与するための方法
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の甘味組成物を含む、摂取可能製品。
【請求項14】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む組成物の矯味剤としての使用。
【請求項15】
少なくとも1種の不快な味覚の物質を含む摂取可能製品の不快な味覚をマスクするための方法であって、前記摂取可能製品に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む矯味組成物を添加することを含む、上記方法
【請求項16】
少なくとも1種の不快な味覚の物質と、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む矯味組成物とを含む、摂取可能製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月27日に出願された欧州特許出願EP17382503.5の利益を主張する。
【0002】
本発明は、甘味および矯味の分野に関し、特に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンを含む甘味および矯味組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
砂糖で甘味付与された食品および飲料の消費は、肥満症、糖尿病および心臓疾患のリスクの増加に関連付けられてきており、また、歯科衛生にとっては有害である。従って、現在では一般に、スクロース、ならびにグルコース、フルクトースまたは高果糖コーンシロップなどのその他のカロリー甘味料の消費を減らす必要があると考えられている。
【0004】
この糖消費を減らす必要性により、特に、ステビア抽出物、モンクフルーツ、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファームK、シクラメート、スクラロースまたはネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどの低カロリー甘味料の使用が増大した。
【0005】
特に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(ネオヘスペリジンDCまたはNHDCとしても知られる)はよく知られた低カロリー甘味料であり、これは、柑橘類で見つけられたフラバノンである天然物ネオヘスペリジンの誘導体である。これは、高強度甘味料で、スクロースより約1500倍甘く、甘味食品、飲料、ならびに医薬品に有用である。
【0006】
しかし、糖代用品としての高強度低カロリー甘味料の使用は、重要なのは甘味強度だけでなく、他の嗜好特性もまた必要なために、いくつかの課題がある。従って、一般に、理想的甘味料は、即効性で、持続する残味のない、口当たりのよい味を有するべきであると考えられている。実際に、スクロース様甘味および機能が強いほど、消費者の受容性は大きくなる。他方では、最小量の甘味料で望ましい甘味度を達成することも経済的理由から望ましい。
【0007】
従って、例えば、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンは強烈に甘いが、比較的に遅発性の甘味および甘草様の持続する残味を有するという欠点があり、これが糖代用品としてのより広範な使用を妨げている。
【0008】
これらの欠点を克服し、低カロリー甘味料、特に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンの味覚プロファイルを改善するために、これまで、そのときの技術水準で、いくつかの溶液が提案されてきた。
【0009】
第1の戦略は、低カロリー甘味料をカロリー甘味料と組み合わせることである。低カロリー甘味料はカロリー甘味料をある程度まで低減可能とする。他方では、低カロリー甘味料の量は充分に低く、そのために、得られた甘味料混合物の甘味プロファイルに大きな影響を与えない。これに関してネオヘスペリジンジヒドロカルコンは、カロリー甘味料と非常に強力な相乗作用を有するために、極めて興味深い候補の低カロリー甘味料である。これらの相乗作用は、甘味プロファイルを台無しにすることなく、予測よりも高いカロリー甘味料低減を可能とする。カロリー甘味料をさらに減らすために、これらの相乗作用をさらに高めることに対する興味および必要性が当然存在する。
【0010】
第2の戦略は、2種以上の低カロリー甘味料の混合物を使用することである。理由は、多くのこれらの混合物は相乗作用を生じ、そのため、所望のレベルの甘味がより少量の甘味料を用いて達成でき、従って、コスト削減になるためである。さらに、これらの混合物のいくつかはまた、定性的相乗作用をもたらし、すなわち、混合物の味覚品質が、多くの場合、個々の成分より良好であり、例えば、望ましくない残味覚が低減され得る。
【0011】
例えば、米国特許第4,158,068号は、アセスルファームKと、他の甘味料、例えば、ネオヘスペリジンDCとの混合物の使用が、甘味料を個別に使用した場合よりもサッカロース様である甘味をもたらすことを開示している。
【0012】
さらに、欧州特許出願公開第0507598A1号は、ネオヘスペリジンDCと、スクラロースの組み合わせが、相乗作用をもたらし、甘味品質の改善ももたらすことを開示している。
【0013】
論文:Chung H.J.,The effect of β-cyclodextrin on the taste quality of neohesperidin dihydrochalcone,J.Food Sci.Nutr.,1996,1(2),186-189において、NHDCの甘味および残味覚に対するベータシクロデキストリンの効果が調査され、ベータシクロデキストリンの添加がNHDCの甘味強度および残味覚の両方を低減したと結論づけた。甘味強度が残味覚より急速に低減することが明らかになった。従って、著者は、ベータシクロデキストリンを用いることにより、NHDCの甘味を維持すると同時に、残味覚を抑制することは可能ではないと結論づけた。換言すれば、得られた混合物の甘味品質は、NHDC単独よりも劣っていた。
【0014】
従って、当該技術分野において、改善された特性、すなわち、最小量の甘味料で望ましい甘味をもたらし、改善された味覚品質を有し、残味覚のない、スクロースの味により類似した、新規高強度甘味組成物が求められている。
【0015】
他方では、食品、飲料および医薬品で頻繁に認められる多くの物質の不快な味に起因する別の関連する問題が生じている。
【0016】
不快として通常知覚される主要な味または味覚は、苦味、渋味および金属味である。
【0017】
ごく希に、消費者は、食品および飲料の苦味/渋味、例えば、ブラックコーヒー、紅茶または緑茶、ビール、赤ワイン、グレープフルーツ製品またはビターレモン中の苦味/渋味を受け入れる。他のほとんどの場合、これらの味覚は望ましくなく、除去またはマスクされる必要がある。
【0018】
しかし、例えば、健全と見なされる多くの物質および健全な食品調理物に意図的に添加された多くの物質は、消費者により味覚の観点から悪い方向に知覚される。これは、苦い味の特定のビタミン、ミネラル、ペプチドまたはタンパク質加水分解物または苦味または渋味の特定の植物ベースフェノール、フラボノイド、イソフラボン、テルペンおよびグルコシノレート(これらは、陽性の抗酸化および抗腫瘍形成特性を有すると報告されている)のケースで該当し得る。
【0019】
別の例は、塩化カリウムに関連する苦味残味覚で、これは、食品に塩味を与えるために、より健康的な塩化ナトリウム代用物として、ますます使用されるようになっている。
【0020】
特に問題がある味覚の観点からの一連の消耗品は医薬品であり、これは、苦味、渋味または金属味を有する有効成分を含むことが多い。この不都合な知覚作用は、嫌な味に特に敏感な集団中の患者、特に子供に対する服薬遵守に悪影響さえ与え得る。
【0021】
従って、消耗品の味覚は、消費者によるそれらの受け入れに重要な役割を果たすことから、消耗品、すなわち、食品、飲料および医薬品におけるこれらの不快味覚の抑制または低減をする努力がなされてきた。
【0022】
例えば、いくつかの可能な戦略として、苦味物質を部分的に除去すること、それらをコーティングまたはマイクロカプセル化すること、香味および/または甘味料を加えること、または特定の矯味物質を加えることなど、先行技術で広範に報告されてきたように、それぞれの特定の物質およびそれぞれの特定の消耗品に応じて、異なる矯味溶液が使用され得る。
【0023】
不快な味覚、特に苦味、渋味または金属味を調節する、低減するまたは抑制することができる、矯味物質の使用は、多くの特定の用途に対しに有用であることが立証された。
【0024】
例えば、Ley J.P.in the article Masking bitter taste by molecules,Chem.Percept.,2008,1,58-77で概説されているように、食品および医薬品の矯味剤として使用するための多数の物質が当該技術分野において報告されてきた。多くの矯味物質の中で、タウマチンおよびネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどのいくつかの甘味料;シクロデキストリン、ポリ-γ-グルタミン酸およびキトサンなどのポリマーおよび錯化剤;ネオジオスミン;L-オルニチンおよびL-オルニチル-β-アラニンまたはL-オルニチニルタウリンなどの誘導体;L-アスパルチル-L-フェニルアラニンカリウム塩などのアスパラギン酸を含むいくつかのジペプチド;ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムおよびラウリン酸ナトリウムなどの飽和脂肪酸のナトリウム塩;有機燐酸塩、ホスホネート、バナジン酸塩、チオホスフェート、および重リン酸塩;エリオジクチオールおよびホモエリオジクチオールなどのフラバノンが特に言及されている。
【0025】
特に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンは、効果的矯味物質として報告されており、例えば、これは、パラセタモール、デキストロメトルファンなどの物質およびその他の医薬品、ならびにBorrego et al.,Neohesperidin Dihydrochalcone,in:L O’Brien Nabors,eds.Alternative Sweeteners,Fourth Edition,CRC Press,2012,94-95で開示されている特別食などの物質の苦味のマスキングに使用された。
【0026】
しかし、受け入れ可能なレベルの矯味を達成することは、通常、かなりの量の矯味物質の使用を必要とし、これは、コストおよび追加の異質な香りの観点から満足できるものではない。
【0027】
従って、当該技術分野において、不快味覚を効果的に調節、低減または抑制でき、低減した量の矯味組成物の使用を必要とする新規矯味組成物が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】水中の1%および3%スクロース溶液と等甘味度であるネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)の濃度を表す図である。横軸は、評価される2つの甘味度、すなわち、1%および3%スクロース溶液を表し、縦軸は、これらの甘味度に達するのに必要なNHDCの濃度を表す。逐次試験において、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンを、単独で(NHDC、黒丸)、ガンマシクロデキストリンと組み合わせて(黒四角、菱形、三角、クロスおよび直線-実施例A~E)、およびベータシクロデキストリンと組み合わせて(灰色四角および菱形)使用した。実施例D(NHDC:gCD 1:6)とE(NHDC:gCD 1:10)に対応する線間で部分的重なり合いが観察される。
図2図1のプロットの拡大部分を示し、水中の1%および3%スクロース溶液と等甘味度であるガンマシクロデキストリンと組み合わせたネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)の濃度を追加で表し、各試料は、モル比で、NHDC:ガンマシクロデキストリン1:1(実施例A、四角)、1:3(実施例B、菱形)、1.5:1(実施例C、三角)、1:6(実施例D、クロス)および1:10(実施例E、直線;実施例Dに対応する線と部分的に重なり合う)である。
図3】異なる甘味度での試験した組成物のスクロースに比較した甘味力を表す。縦軸は、相対的甘味力を表し、横軸は、甘味度、すなわち、1%および3%スクロース溶液に等価な甘味度を表す。試験物質は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン単独(NHDC、黒丸)、およびガンマシクロデキストリンと組み合わせて、モル比で、NHDC:ガンマシクロデキストリン1:1(実施例A、四角)、1:3(実施例B、菱形)、1.5:1(実施例C、三角)、1:6(実施例D、クロス)とした。
図4】スクロース(三角)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC、丸)ならびにモル比でNHDC:ガンマシクロデキストリン 1:1(実施例A、四角)および1:3(実施例B、菱形)のNHDCおよびガンマシクロデキストリンを含む2種の組成物の感覚受容性プロファイルを表すスパイダー・ダイアグラムである。評価される感覚記述子は、0~5点数尺度による、総甘味、最初の甘味検出までの時間、最大甘味までの時間、メントール/甘草異臭および口当たりとした。
図5】DO中、400MHzでの、1:1モル比のNHDC:ガンマシクロデキストリンを有する実施例Aの錯体のH-NMRスペクトルを表す。
図6】DO中、400MHzでの、ガンマシクロデキストリンのH-NMRスペクトルを表す。
図7】重水素化DMSO中、400MHzでの、NHDCのH-NMRスペクトルを表す。
図8】ガンマシクロデキストリンの構造の1つのグルコピラノース環形成部分を模式的に表し、H NMRスペクトルで記載のプロトンは、識別されている。
図9】ネオヘスペリジンジヒドロカルコンの構造のアグリコン部分を模式的に表し、H NMRスペクトルで記載のプロトンは、識別されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的
第1の態様では、本発明は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む甘味組成物に関する。
【0030】
本発明の第2の態様は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む組成物の矯味剤としての使用に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、甘味摂取可能製品のための甘味組成物の使用に関する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、甘味組成物を含む摂取可能製品に関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、不快な味覚の物質ならびにネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびベータおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む矯味組成物を含む摂取可能製品に関する。
【0034】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む甘味組成物に関する。
【0035】
第2の態様では、本発明は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む組成物の矯味剤としての使用に関する。
【0036】
本発明の発明者は、驚くべきことに、顕著な相乗的効果をもたらし、それにより、より少ない量のNHDCを用いて所望の甘味度を達成する、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)およびガンマシクロデキストリンの組み合わせを含む新規甘味組成物を開発した。さらに、相乗的に高められるのは、甘味強度だけでなく、組み合わせ物の甘味品質も同様に、NHDC単独での使用より著しく優れており、例えば、持続する残味は大幅に低減され、その甘味開始時間も短縮され、したがって、スクロースで得られるものにより類似した、より良好な全体味覚プロファイルをもたらす。
【0037】
さらに、同様に驚くべきことに、NHDCとベータシクロデキストリンまたはガンマシクロデキストリンとの組み合わせを含む組成物は、強力な矯味相乗作用を示す、すなわち、典型例では、苦味または渋味のマスキングに関して、その組み合わせで達成される矯味効果は、それぞれ個々の物質の効果の合計よりも高いことも発見した。
【0038】
本記載中、ならびに特許請求の範囲において、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、通常、「a」、「an」または「the」が先行する単数形は、複数形も含むように解釈されるべきである。
【0039】
本明細書で使用される場合、定量値の前に使用される「約(about)」という用語は、特定の定量値と、所与の値の±10%以下の変動、好ましくは、所与の値の±5%以下の変動を含むとして解釈されるべきである。
【0040】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン
ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(CAS番号20702-77-6)は、よく知られた合成の強力な甘味料であり、ネオヘスペリジンDCまたはNHDCとして略されることもある。これは、その化学名、1-[4-[[2-O-(6-デオキシ-α-L-マンノピラノシル)-β-D-グルコピラノシル]オキシ]-2,6-ジヒドロキシフェニル]-3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパン-1-オンによっても知られる。
【0041】
構造的には、これは、柑橘類で発生する苦味フラバノンであるネオヘスペリジンの類似体である。例えば、Borregoらの、L O’Brien Nabors,eds.Alternative Sweeteners,Fourth Edition,CRC Press,2012,117-131中のNeohesperidin Dihydrochalconeで概説されているように、NHDCは、グレープフルーツ(Citrus paradisi)から得られるナリンギンから、または橙(Citrus aurantium)から抽出できるネオヘスペリジンから合成できる。
【0042】
さらにNHDCは、種々の業者から、例えば、Interquim S.AまたはFerrer HealthTech.などの会社から市販品として幅広く入手可能である。
【0043】
シクロデキストリン
シクロデキストリンは、デンプン由来の環状オリゴ糖である。シクロデキストリンの環状構造は通常、円錐形または円環様形状を有するとして説明され、一級および二級ヒドロキシル基が外側を向き、非極性水素およびエーテル様酸素が分子内部にあり、これにより、親水性の外面および非極性で疎水性の内部空洞を形成する。
【0044】
この三次元構造の結果として、シクロデキストリンは、通常は疎水性分子または疎水性部分を含む分子である、多種多様のゲスト分子と包接錯体を形成するホストとしての役割を果たすことができる。これらの包接錯体では、ゲスト分子は、少なくとも一部は、シクロデキストリンホスト分子の疎水性空洞内に保持される。
【0045】
特に、ガンマシクロデキストリン(γ-シクロデキストリン、CAS番号17465-86-0)は、シクロマルトオクタオースまたはシクロオクタアミロースとしても知られ、8(1→4)結合α-D-グルコピラノシル単位を含むシクロデキストリンである。
【0046】
例えば、Hedges A,Cyclodextrins:Properties and Applications,In:Starch.Chemistry and Technology,BeMiller J and Whistler R,eds.,Food Science and Technology International Series,Third Edition,Elsevier,2009,833-851で開示のように、ガンマシクロデキストリンは、酵素シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CTDGase;ED2.4.1.19)の作用によりデンプンから得ることができる。
【0047】
ガンマシクロデキストリンは、いくつかの市販品入手源から、例えば、Wacker Chemie and Roquetteなどの会社から容易に入手できる。
【0048】
ベータシクロデキストリン(β-シクロデキストリン、CAS番号7585-39-9)は、ベータシクロアミロース、ベータデキストリン、ベータデキサム(betadexum)、シクロヘプタアミロース、シクロヘプタグルカンまたはシクロマルトヘプトースとも呼ばれ、7(1→4)結合α-D-グルコピラノシル単位を含むシクロデキストリンである。
【0049】
例えば、Hedges A,Cyclodextrins:Properties and Applications,In:Starch.Chemistry and Technology,BeMiller J and Whistler R,eds.,Food Science and Technology International Series,Third Edition,Elsevier,2009,833-851で開示のように、ベータシクロデキストリンは、酵素シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CTDGase;ED2.4.1.19)の作用によりデンプンから得ることができる。
【0050】
ベータシクロデキストリンは、いくつかの市販品入手源から、例えば、Wacker Chemie and Roquetteなどの会社から容易に入手できる。
【0051】
甘味組成物
本発明の甘味組成物は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む。
【0052】
この甘味組成物は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンの単純混合物を含むこと、ならびに、両成分が錯体の形である場合が意図されている。
【0053】
一実施形態では、甘味組成物は両成分の混合物である。
【0054】
この実施形態による組成物は、任意の好適な混合手段、例えば、タンブリング混合機または撹拌混合機を用いたNHDCとガンマシクロデキストリンの単純な乾式混合により作製できる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、NHDCおよびガンマシクロデキストリンは、錯体の形である。
【0056】
この錯体では、おそらく、NHDCがガンマシクロデキストリンの空洞中に挿入され、少なくとも部分的に包接錯体を形成している。しかし、本発明の意味では、用語の「錯体」は、NHDCとガンマCDとの間のさらなる非化学量論的相互作用による超分子錯体の形成を含む、その他の可能な変種を包含することが意図されている。
【0057】
この錯体は通常、ガンマシクロデキストリンを好適な溶媒、好ましくは水に溶解し、その後にNHDCをその溶液に加え、その溶液から錯体を単離することにより作製される。
【0058】
溶液中のガンマシクロデキストリンの濃度は通常、1~20%w/v、好ましくは5~10%w/vからなる。NHDCは、錯体中のNHDC:ガンマシクロデキストリンが所望のモル比になる量としてこの溶液に加えられる。
【0059】
混合物は、通常10分~3時間、通常20℃~60℃、好ましくは20℃~25℃の温度で、通常、完全に溶解するまで撹拌される。
【0060】
固体錯体を単離するために、溶媒は、任意の好適な方法、例えば、凍結乾燥により除去されるか、または減圧下で留去され得る。
【0061】
本発明の甘味組成物中のNHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は通常、1.5:1~1:10からなり、好ましくは、1.5:1~1:6からなり、より好ましくは、1.2:1~1:4からなり、さらにより好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は約1:1である。
【0063】
別の好ましい実施形態では、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は約1:3である。
【0064】
本発明の組成物は、顕著な相乗的効果をもたらし、それにより、驚くべきことに、ガンマシクロデキストリンはNHDCの甘味を強力に高める。従って、例えば、実施例3(表3)に開示するように、較正パネルで実施された官能検査では、NHDCが単独で使用される場合、水中の1%のスクロース溶液と等価の甘味度を達成するために、5ppmのNHDCが必要であることが観察された。逆に、NHDCがガンマシクロデキストリンと組み合わせて使用される場合、同じ効果を達成するために、かなり少量のNHDCで十分である(実施例A~Eで、3.5~3.9ppmのみ)。同様にして、NHDCが単独で使用される場合、水中の3%のスクロース溶液と等価の甘味度を達成するために、24ppmのNHDCが必要であり、一方、再度ガンマシクロデキストリンと組み合わせて使用される場合、かなり少量のNHCDで十分である(実施例A~Eで、12.2~13.5ppmのみ)。
【0065】
さらに、驚くべきことに、ガンマシクロデキストリンの代わりに、ベータシクロデキストリンを含有する組成物では、明確に逆の効果が観察され(表3の比較例AおよびBを参照)、すなわち、NHDC単独使用の場合、同じ甘味度を達成するために、より多量のNHDCが必要である(例えば、1%のスクロース甘味度を得るために、組成物中のNHDCの6.1ppmおよび7.7ppmに比べて、NHDC単独で5ppm;および3%のスクロース甘味度を達成するために、組成物中のNHDCの28.8ppmおよび28.3ppmに比べて、NHDC単独で24ppm)。
【0066】
ガンマシクロデキストリンおよびNHDCを含む本発明の甘味組成物で得られた強力な甘味相乗作用は、図1および2のグラフでも観察できる。
【0067】
さらに、この相乗的効果の定量的計算も与えられている(実施例3、表5および6)。本発明の組成物は、顕著な甘味相乗作用、すなわち、1%スクロース甘味度では、15%を超える甘味相乗作用、1%のスクロース甘味度では、好ましくは18%~40%の範囲の甘味相乗作用、特に1%のスクロース甘味度で、1:1~1:3のモル比のそれぞれNHDC:ガンマシクロデキストリンを有する組成物に対し、29.9%~38.9%の甘味相乗作用を示し;3%のスクロース甘味度では、60%を超える甘味相乗作用、好ましくは60%~95%の範囲、特に1:1~1:3のモル比のそれぞれNHDC:ガンマシクロデキストリンを有する組成物に対し、3%のスクロース甘味度では、76.5%~92.3%の甘味相乗作用を示すことが観察できる。逆に、ベータシクロデキストリンを含む比較例の組成物は、負の相乗作用を示す、すなわち、その組み合わせは、抑制性甘味効果を示す。
【0068】
ベータシクロデキストリンのNHDCの甘味に対するこの抑制性効果は、例えば、論文:Chung H.J.,The effect of β-cyclodextrin on the taste quality of neohesperidin dihydrochalcone,J.Food Sci.Nutr.,1996,1(2),186-189で開示された先行技術と一致する。
【0069】
本発明の甘味組成物の別の特性は、NHDC単独に比べて、甘味度が増大するに伴い、あまり明確ではないが、その相対的甘味力は低下する。
【0070】
所与の甘味度での所与の化合物の相対的甘味力は、この化合物がスクロースより何倍甘味があるかを示し、これは、スクロースの濃度と、化合物の等甘味濃度の間の比率として計算できる。
【0071】
本発明の組成物の相対的甘味力の変化を評価する試験を実施した(実施例4)。結果(表7)は、NHDC単独では、スクロースに対して甘味度と共に甘味力が顕著に低下し、本発明の甘味組成物の甘味力は、顕著により遅い低下を示す。この効果は、図3でより良く理解できる。
【0072】
本発明の甘味組成物の別の利点は、これが、NHDC単独での味覚プロファイルよりもスクロースに近い全体味覚プロファイルを与えることである。スクロース、NHDCおよび本発明による2種の組成物の味覚プロファイルを、3%のスクロースに等甘味濃度の各試料を用いて試験した(実施例5)。次の感覚パラメーターを0~5点数尺度法で較正味覚パネルにより評価した:最初の甘味までの時間(または開始期間、すなわち、甘味開始の前の期間)、最大甘味までの時間(すなわち、最大甘味知覚の前の期間)、残存時間(すなわち、甘味が消滅するまでの期間)、メントール/甘草異臭(すなわち、甘味とは異なる任意の味覚の知覚作用、すなわち、メントールおよび/または甘草味覚)および口当たり(密度として記載される、すなわち、口内中で知覚される粘度)。
【0073】
実施例5の表8で示されるように、得られた結果では、NHDCの味覚プロファイルは、スクロースの標的プロファイルとは顕著に異なり、最初の甘味検出および最大甘味に達するまでにより長い時間を要し、残存もより長いことを示し、これは、顕著な異臭および口当たりが悪いことと関連している。
【0074】
逆に、本発明の甘味料は、スクロースの味覚プロファイルに近い味覚プロファイルを有する。従って、NHDCと比較して、最初および最大甘味までの時間が短縮され、残存味覚および異臭も低減され、同時に、口当たりが改善される。
【0075】
図4は、この比較味覚アッセイの結果をスパイダーグラフの形で示す。このグラフは、ガンマシクロデキストリンがNHDCの味覚プロファイルをどのようにスクロースのプロファイルに近づけるかを明確に示す。味覚プロファイルの観点からの最良の結果は、実施例Bで得られ、これは、モル比で1:3のNHDC:ガンマシクロデキストリンを含む。
【0076】
甘味料としての使用
観察された甘味相乗作用および得られた改善された全体味覚プロファイルに起因して、本発明の甘味組成物は、あらゆる種類の摂取可能製品に甘味を付与するのに特に好適する。
【0077】
従って、さらなる態様では、本発明は、上記定義の組成物の摂取可能製品に甘味を付与するための使用に関する。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、摂取可能製品に甘味を付与する方法に関し、該方法は、上記定義の甘味組成物を摂取可能製品に添加するステップを含む。通常、有効量の甘味組成物が添加される。
【0079】
本発明における意味では、用語の「摂取可能製品」は、広く、ヒトまたは動物により経口摂取されることが意図される任意の甘味付与可能物質に関し、飲まれる、食される、飲み込まれる、または他の方法で摂取される物質、すなわち、食品および医薬品を含む。さらに、用語の「摂取可能製品」は、摂取されることはないが、しかし、最初に口内に取り込まれ、その後、排出される物質、例えば、チューインガムおよび口腔ケア組成物、例えば、うがい薬、歯磨き粉、または歯磨きジェル、も含むことが意図されている。
【0080】
本発明の一実施形態では、摂取可能製品は、食品、医薬品、および口腔ケア組成物からなる群より選択され;好ましくは食品および医薬品から選択される。
【0081】
本発明の別の実施形態では、摂取可能製品は食品である。
【0082】
本発明の別の実施形態では、摂取可能製品は医薬品である。
【0083】
本明細書で使用される場合、表現の「食品」は、ヒトまたは動物栄養摂取向けの任意の食用製品、および固体、半固体および液体を含み、飲料も含む。表現の「食品」はまた、部分的にのみ摂取され、その後に、口腔から排出されることを目的とする製品、特にチューインガムを含む。
【0084】
本発明の組成物で甘味付与されるのに好適な飲料は、限定されないが、任意の種類の甘味付与可能な炭酸または非炭酸、アルコール性または非アルコール性飲料であり得、特に、フルーツ味のソフトドリンク、ソーダ、コーラ、スポーツ飲料、および一般的に、果実、野菜、芳香植物、ティー、コーヒーまたはココアを含有および/またはそれで味付けした任意の飲料、などを含み、また、ワインまたはビールなどを含有する飲料も含む。飲料カテゴリーは、すぐに飲める飲料、ならびにその他の形態、例えば、粉末、顆粒、タブレットまたは液体濃縮物を含み、これらは、水で再構成されることが意図されている。
【0085】
その他の食品は、数ある中で、例えば、パン、ケーキ、ビスケット、マフィンなどのベーカリー製品、および一般的に任意の種類の焼成食品;ヨーグルト、飲むヨーグルト、フローズンヨーグルト、乳汁、乳汁ベース飲料、練乳、クリーム、チーズまたはアイスクリームなどの乳製品;豆乳または大豆レシチンなどの大豆製品;チョコレート、カラメル、キャンディー、マジパン、またはチューインガムなどの菓子製品;朝食用シリアル、シリアルバー、エネルギー/栄養バールまたはフレークなどのシリアル製品;ジャム、フルーツピューレ、保存果実、またはソースなどの果実由来製品;ソース、乾燥野菜、保存野菜または凍結野菜などの野菜由来製品;マヨネーズおよびいくつかのドレッシングなどの油性品およびエマルジョンである。
【0086】
食品カテゴリーはまた、特に、栄養または栄養補助食品、すなわち、一部の栄養成分、例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、植物性薬品、酵素、またはヒトの食事を補充することを目的とする他の物質を富化した食品を含み、これは、任意の好適な食品形態、典型的な例では、例えば、飲料またはバーであってよい。
【0087】
また、デザートミックスまたは乾燥調理済み食品などの任意の種類の乾燥製品も食品の表現に含まれる。
【0088】
食品はまた、特に、動物栄養摂取のための任意の飼料も含む。
【0089】
本発明による組成物で甘味を付与するのに好適する医薬品には、ヒトまたは獣医学療法のための経口投与用の任意の薬物を含む配合物が含まれ、加えて、任意の種類の健康補助食品、例えば、ビタミン、ミネラルおよびこれらの混合物も含まれる。医薬品は、当業者によく知られた経口投与に好適する任意の形態、例えば、タブレット、チュアブル錠、口腔内崩壊錠(ODT)、舌下錠、口腔内崩壊フィルム剤(フラッシュフィルム)、トローチ剤、咀嚼性ガムまたは粉末などの固体形態;または点滴剤、シロップまたは懸濁剤などの液体形態;あるいは、投与される液体に溶解することを目的とする粉末、顆粒、またはタブレット、例えば、発泡錠であり得る。
【0090】
上記例は、非限定的であり、甘味付与するのに好適な任意の摂取可能製品は、本発明の組成物を用いて甘味付与するのに適切であり得ることは理解されよう。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語の「甘味付与(sweetening)」は、この用語の一般的意味、すなわち、食用製品に甘味を与えることに関する。このような甘味付与効果は、甘味組成物が製品中に存在する唯一の甘味源である実施形態、ならびにその他の甘味料と組み合わせて使用される他の代替実施形態を包含すると理解される。
【0092】
従って、一実施形態では、本発明の甘味組成物は、他の甘味剤、例えば、ステビア抽出物、モンクフルーツ、アセスルファームK、アスパルテーム、シクラメート、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、タウマチン、またはこれらの混合物などの他の高強度甘味料(低カロリー甘味料);および/またはスクロース、グルコース、フルクトース、およびこれらの混合物などの炭水化物甘味料(カロリー甘味料)と組み合わせて使用される。
【0093】
甘味付与食用製品が、食品、特に、ヒト消費のための食品である場合、甘味組成物は通常、炭水化物甘味料と組み合わせて使用される。この特定の実施形態では、組成物は、糖代用品または糖低減剤として使用され、これは、製品の糖様味覚を変えることなく、食品中に含まれる糖の量を可能な限り減らす目的を有する。実際に、炭水化物甘味料により得られる甘味は一般に、消費者により最も受け入れられており、一方、一般的に、高強度甘味料の味覚プロファイルは、それらの異なる開始、持続時間、口当たりおよび/または残味覚に起因して、糖味覚を完全には模倣できていない。
【0094】
驚くべきことに、本発明の組成物の使用により、摂取可能製品、すなわち、食品中の特定の比率の糖を置換するのに必要なNHDCの量を低減することが可能となることを見出した。従って、例えば、実施例6で開示するように、本組成物をオレンジソフトドリンクの甘味付与に使用して、甘味料として元々使用されている高フルクトースコーンシロップ(HFCS)の含量の一部を置換した。NHDC単独を使用して、10ppmのNHDCを置換物として用いて、較正パネルにより何らの味覚変化が知覚されることなしに、達成された最大減糖は、HFCSの10%低減であったことが明らかになった。しかし、本発明によるNHDCおよびガンマシクロデキストリンを含む組成物を用いる場合、同様に全体味覚プロファイルのなんらの変化もなしに、同じパーセンテージの糖置換が、4.5ppmのみのNHDCで達成された。
【0095】
さらに、本組成物はまた、味覚プロファイルの知覚できる何らの変化もなしに、甘味付与された食用製品中で置換できる糖の比率を高めるのにも効果的である。従って、例えば、実施例7で開示するように、NHDC単独を糖代用品として用いて、オレンジジュースベースソフトドリンク中の15%の減スクロースが可能であり、一方、NHDCとガンマシクロデキストリンの組み合わせを用いることにより、糖含量を最大25%まで低減可能であった。同様にして、実施例8で開示するように、NHDC単独を糖代用品として用いて、ブラックチョコレート製品中の糖含量の10%の低減が可能であったが、しかし、本発明の組成物を糖代用品として使用した場合、チョコレート製品の糖含量を最大28%まで低減することが可能であった。
【0096】
従って、NHDCおよびガンマシクロデキストリンを含む本発明の組成物は、糖のNHDC置換効率を改善し、すなわち、所与の置換される糖の比率に対し、それは、より少ない量のNHDCの使用を可能とし、さらに、NHDC単独を用いた場合に比べて、何ら知覚可能な味覚の変化なしに、食用製品中のより大きな比率の糖の置換も可能とする。
【0097】
本発明の一実施形態では、甘味組成物は、糖置換剤として使用される。本明細書で使用される場合、糖としては、任意の好適な炭水化物甘味料、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、およびこれらの混合物が意図されている。
【0098】
甘味料により置換される糖のパーセンテージは、特定の食品に応じて変化する。例えば、置換される炭水化物甘味料のパーセンテージは通常、5~60%の範囲、好ましくは10~30%の範囲であり、この場合、パーセンテージは、元の総炭水化物含量に対し、置換された炭水化物甘味料の重量に関する。
【0099】
通常、摂取可能製品に甘味付与するための組成物の使用は、摂取可能製品に対する組成物の添加を含む。
【0100】
本発明の甘味組成物は、通常の甘味剤と同様に、従来の方式で摂取可能製品に添加できる。例えば、甘味組成物は、医薬品技術または食品技術の当業者によく知られているように、その他の医薬賦形剤と共に医薬品に添加し得るか、または製造工程のいくつかの段階でそれを取り込むことにより、食品に添加し得る。
【0101】
代替的実施形態では、甘味組成物は、その場で生成されてもよく、それにより、両成分、すなわち、NHDCおよびガンマシクロデキストリンが摂取可能製品の製造中に、別々に、好ましくは逐次に添加され、通常はその後に、完全に混合され得る。
【0102】
さらなる態様では、本発明は、摂取可能製品に甘味を付与するプロセスに関し、該プロセスは、上記定義の甘味組成物を摂取可能製品に添加することを含む。
【0103】
さらなる態様では、本発明はまた、上記で定義の甘味組成物を含む甘味付与された摂取可能製品に関する。
【0104】
摂取可能製品に甘味付与するために使用される、または甘味付与される摂取可能製品に含める、甘味組成物の量は、それに甘味付与するための、すなわち、摂取可能製品に甘味を与えるための「有効量」であることが意図されている。この「有効量」は、特定の製品に応じて、また、所望の甘味の程度に応じて、広く変化する。当業者は、特定の場合に応じて、摂取可能製品に添加される組成物の適切な量を容易に確定できる。
【0105】
例えば、摂取可能製品に甘味付与するために使用される、または甘味付与される摂取可能製品に含める、甘味組成物の量は、摂取可能製品の総重量に対して、1~5000ppmの範囲、好ましくは、1~500ppmの範囲、より好ましくは、1~200ppmの範囲であり得る。摂取可能製品の総重量は、添加される甘味組成物の重量も含むことを意味する。
【0106】
NHDCおよびガンマシクロデキストリンを含む甘味組成物に関する本発明の態様は、次の実施形態により定義できる:
1.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む甘味組成物。
2.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンの混合物であることを特徴とする、実施形態1に記載の甘味組成物。
3.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンが錯体の形であることを特徴とする、実施形態1に記載の甘味組成物。
4.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:10からなることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の甘味組成物。
5.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:6からなることを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
6.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.2:1~1:4からなることを特徴とする、実施形態5に記載の組成物。
7.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.1:1~1:3.5からなることを特徴とする、実施形態6に記載の組成物。
8.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:1~1:3からなることを特徴とする、実施形態7に記載の組成物。
9.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:1であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
10.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:1±0.1であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
11.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:1±0.05であることを特徴とする、実施形態10に記載の組成物。
12.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:1であることを特徴とする、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:3であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
14.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:3±0.3であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
15.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:3±0.15であることを特徴とする、実施形態14に記載の組成物。
16.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:3であることを特徴とする、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
17.摂取可能製品に甘味を付加するために、実施形態1~16のいずれか1つに記載の組成物の使用。
18.摂取可能製品が食品および医薬品から選択されることを特徴とする、実施形態17に記載の使用。
19.摂取可能製品が食品であることを特徴とする、実施形態17または18に記載の使用。
20.食品がヒトの栄養摂取のためであることを特徴とする、実施形態19に記載の使用。
21.食品が動物の栄養摂取のためであることを特徴とする、実施形態19に記載の使用。
22.食品が飲料であることを特徴とする、実施形態19に記載の使用。
23.組成物が、糖置換剤として使用されることを特徴とする、実施形態19に記載の使用。
24.組成物が、少なくとも1つのさらなる甘味料と組み合わせて投与されることを特徴とする、実施形態17~23のいずれか1つに記載の使用。
25.少なくとも1つのさらなる甘味料が、ステビア抽出物、モンクフルーツ、アセスルファームK、アスパルテーム、シクラメート、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、タウマチン、スクロース、グルコース、フルクトースおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態24に記載の使用。
26.摂取可能製品に、実施形態1~16のいずれか1つに記載の甘味組成物を添加することを含む摂取可能製品に甘味を付与するためのプロセス。
27.甘味組成物が、インサイツ生成されることを特徴とする、実施形態26に記載のプロセス。
28.甘味組成物の各成分が、摂取可能製品の製造中に別々に添加され、好ましくは、甘味組成物の各成分が摂取可能製品の製造中に逐次添加される、実施形態27に記載のプロセス。
29.甘味組成物が、摂取可能製品の総重量に対し、1~5000ppmからなる量、好ましくは1~500ppmからなる量、より好ましくは1~200ppmからなる量で添加されることを特徴とする、実施形態26~28のいずれか1つに記載のプロセス。
30.摂取可能製品が食品および医薬品から選択されることを特徴とする、実施形態26~29のいずれか1つに記載のプロセス。
31.摂取可能製品が食品であることを特徴とする、実施形態30に記載のプロセス。
32.食品がヒトの栄養摂取のためのものであることを特徴とする、実施形態31に記載のプロセス。
33.食品が動物の栄養摂取のためのものであることを特徴とする、実施形態31に記載のプロセス。
34.食品が飲料であることを特徴とする、実施形態31に記載のプロセス。
35.実施形態1~16のいずれか1つに記載の甘味組成物を含む摂取可能製品。
36.甘味組成物が、摂取可能製品の総重量に対し、1~5000ppmからなる量、好ましくは1~500ppmからなる量、より好ましくは1~200ppmからなる量であることを特徴とする、実施形態35に記載の摂取可能製品。
37.食品および医薬品から選択されることを特徴とする、実施形態35または36に記載の摂取可能製品。
38.食品であることを特徴とする、実施形態37に記載の摂取可能製品。
39.食品がヒトの栄養摂取のためのものであることを特徴とする、実施形態38に記載の摂取可能製品。
40.食品が動物の栄養摂取のためのものであることを特徴とする、実施形態38に記載の摂取可能製品。
41.食品が飲料であることを特徴とする、実施形態38に記載の摂取可能製品。
【0107】
矯味剤
本発明の別の態様は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む組成物の矯味剤としての使用である。
【0108】
本発明の一実施形態では、矯味組成物は、NHDCおよびベータまたはガンマシクロデキストリンの混合物であり、任意の好適な混合手段、例えば、タンブリング混合機または撹拌混合機を用いた両成分の単純な乾式混合により作製できる。
【0109】
本発明の別の実施形態では、矯味組成物は、錯体の形である。
【0110】
この錯体では、おそらく、NHDCが、少なくとも部分的に、ベータまたはガンマシクロデキストリンの空洞中に挿入され、包接錯体を形成している。しかし、本発明の意味では、用語の「錯体」は、NHDCとシクロデキストリンとの間のさらなる非化学量論的相互作用による超分子錯体の形成を含む、その他の可能な変種を包含することが意図されている。
【0111】
この錯体は通常、シクロデキストリンを好適な溶媒、好ましくは水に溶解し、その後にNHDCをその溶液に加え、その溶液から錯体を単離することにより作製される。
【0112】
ガンマシクロデキストリンで錯体を作製するために、溶液中のガンマシクロデキストリンの濃度は通常、1~20%w/v、好ましくは5~10%w/vからなる。ベータシクロデキストリンで錯体を作製するために、溶液中のベータシクロデキストリンの濃度は通常、0.5~5%w/v、好ましくは1~2%w/vからなる。
【0113】
NHDCは、錯体中のNHDC:シクロデキストリンが所望のモル比になる量としてシクロデキストリン溶液に加えられる。
【0114】
得られた混合物は、通常10分~3時間、通常20℃~60℃の温度で、通常、完全に溶解するまで撹拌される。
【0115】
固体錯体を単離するために、溶媒は、任意の好適な方法、例えば、凍結乾燥により除去されるか、または減圧下で留去され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、矯味剤、または味覚マスキング剤は、矯味効果を与える任意の物質または組成物を意味する。当該技術分野において周知の、矯味効果は、物質の不快な味覚または不快な味覚印象の知覚の低減、調節、または除去を意味する。
【0117】
通常、矯味効果を働かせるために、矯味組成物が、不快な味覚の物質と混合され、通常、両方が食品中に含まれる。
【0118】
さらなる態様では、本発明は、物質の不快な味覚のマスキング方法に関し、該方法は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む組成物を不快な味覚の物質に添加するステップを含む。通常、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびシクロデキストリンを含む組成物が、矯味有効量で不快な味覚の物質に添加される。
【0119】
あるいは、矯味組成物は、その場で生成されることができ、それにより、両成分、すなわち、NHDCおよびベータまたはガンマシクロデキストリンが不快な味覚の物質に、または不快な味覚の物質を含む摂取可能製品に、別々に、好ましくは逐次に添加され、通常はその後に、完全に混合され得る。
【0120】
実施例10~12に示すように、驚くべきことに、NHDCとベータシクロデキストリンまたはガンマシクロデキストリンとを含む組成物は、強力な矯味相乗作用を示す、すなわち、成分の組み合わせで達成された矯味効果は、それぞれ個々の物質の効果の合計よりも高いことを発見した。
【0121】
この相乗作用は、摂取可能製品、すなわち、食品および医薬品中の不快な味覚をマスキングするためにより少ない物質の使用を可能にするために、かなりのコスト削減をもたらす。
【0122】
本発明の目的のための不快な味覚の物質は:a)苦味、渋味、ボール紙様、埃っぽい、粉っぽい、酸敗臭および/または金属味の物質、およびb)苦味、渋味、ボール紙様、埃っぽい、乾燥した、粉っぽい、酸敗臭または金属味の残味覚を有する物質である。
【0123】
本発明の使用によりマスクできる不快な味覚または不快な味覚印象は、例えば、苦味、渋味および金属味、好ましくは、苦味および/または渋味である。
【0124】
一実施形態では、本発明による矯味剤は、苦味および渋味、または苦味および渋味の混合物から選択される不快な味覚をマスクするために使用される。
【0125】
特に、苦味をマスクするために使用される場合、矯味剤または味覚マスキング剤は、抗苦味剤、または苦味マスキング剤と呼ばれることがある。
【0126】
特に、渋味をマスクするために使用される場合、矯味剤または味覚マスキング剤は、抗渋味剤、または渋味マスキング剤と呼ばれることがある。
【0127】
本発明の矯味組成物中のNHDC:シクロデキストリンのモル比は通常、1.5:1~1:6からなり、好ましくは、1.2:1~1:4からなり、より好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。
【0128】
好ましい実施形態では、NHDC:シクロデキストリンのモル比は約1:1である。
【0129】
別の好ましい実施形態では、NHDC:シクロデキストリンのモル比は約1:3である。
【0130】
本発明の一実施形態では、シクロデキストリンはガンマシクロデキストリンである。
【0131】
本発明の別の実施形態では、シクロデキストリンはベータシクロデキストリンである。
【0132】
苦い味覚または苦味は、舌上の味蕾中に位置する味覚受容体細胞の頂端膜上に位置する特定の苦味受容体に結合する特定の物質により生成されると考えられている。苦味受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーであると考えられており、T2Rと呼ばれる。これらの苦味受容体は、化学的に非常に多様なリガンドと相互作用でき、そのために、苦いといされる多数の物質が存在し、それらの化学構造は、多くの異なる化学的クラスに属し得る。
【0133】
一般に、苦味を付与することが知られているいずれの物質の味覚も、本発明による組成物を用いて、すなわち、NHDCとベータまたはガンマシクロデキストリンの組み合わせを用いて、マスクし得る。
【0134】
苦味物質の非限定的リストには、例えば、ナリンギン、ネオヘスペリジン、またはヘスペリジンなどのフラバノン;タンゲリチンまたはノビレチンなどのフラボン;アビクラリン、ケルセチン、クエルシトリン、イソケルセチン、ミリセチン、またはルチンなどのフラボノール;タキシフォリン、カテキン(カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンまたはエピガロカテキンガレート)またはテアフラビン(テアフラビン、イソテアフラビン、ネオテアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ジガレート、イソテアフラビン-3-ガレートまたはテアフラビン酸)などのフラバノール;ゲニステインまたはダイゼインなどのイソフラボン;フロリジンなどのカルコン、リモニン、ノミリンまたはリモニングルコシドなどのトリテルペン;コーヒー酸またはそのエステルなどのヒドロキシケイ皮酸;オレウロペインなどのオリーブポリフェノール、シニグリン、プロゴイトリンまたはグルコブラシシンなどのグルコシノレート;ニコチン、テオブロミン、テオフィリン、キニーネまたはカフェインなどのアルカロイド;サリシンまたはアルブチンなどのフェノール性グリコシド;フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、またはプレフムロンなどのホップの樹脂中に認められる苦味アルファ酸;塩化カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸カリウム、コハク酸カリウム、乳酸カリウム、リンゴ酸カリウムなどの金属塩、特に、カリウム、マグネシウムおよびビスマス塩;次クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、サリチル酸ビスマスまたは硫酸マグネシウム;フルオロキノロン抗生物質、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、デキストロメトルファン、フェニレフリン、ロペラミド、トラマドール、ラニチジン塩酸塩、アセチルシステイン、グルコサミン硫酸塩、エリスロマイシン、レボスルピリド、クロルヘキシジン、ジオスミン、β-ラクタム系抗生物質、アンブロキソール、またはグアイフェネシンなどの一部の医薬有効成分;不飽和脂肪酸;ビタミン;苦味アミノ酸(例えば、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、リシンまたはフェニルアラニン)およびいくつかの苦味ペプチド、特に疎水性アミノ酸のフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンを含むものが挙げられる。
【0135】
渋味は、米国材料試験協会(ASTM、2004)により、ミョウバンおよびタンニンなどの物質への曝露の結果として、上皮の回避、延伸または縮みによる感覚の複合として定義されている。渋味分子が唾液タンパク質、特に、プロリンリッチタンパク質と反応し、それらを析出させ、生じた潤滑性の減少が、口内の渋味と関連する触感に繋がると考えられている。
【0136】
渋味分子は、一般に植物系産物で、最も一般的には、果実および葉または樹皮中に存在するタンニンである。
【0137】
通常、渋味として知覚されるいくつかの物質は、例えば、ティー、赤ワイン、ダイオウおよび未成熟の柿の実およびバナナである。
【0138】
渋味の印象を与える物質の典型的な例は、緑茶で、これは、渋いことがわかっているカテキンとして知られるいくつかのポリフェノール、すなわち、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキンおよびそれらのそれぞれの立体異性体を含む。渋味を引き起こす物質の他の例は、ピープロテイン、乳清タンパクおよび大豆タンパク質などのタンパク質である。
【0139】
渋味物質の他の例は、紅茶のテアフラビン、すなわち、テアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ジガレート、およびテアフラビン酸である。
【0140】
いくつかの物質の味覚は、苦味および渋味の混合物として知覚され得る。従って、例えば、緑茶および紅茶の渋味は、ときには、苦味/渋味の混合物として知覚される。
【0141】
その他の物質は、不快ではない原味または原香を有し得るが、苦味、渋味または金属臭などの追加の不快な味覚を有し得る。限定されないが、これらの物質は、アスパルテーム、ネオテーム、スーパーアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、タガトース、モネリン、モンクフルーツ、ステビア抽出物、個々のステビオールグリコシドまたはそれらの組み合わせ、ヘルナンズルシン、タウマチン、ミラクリン、グリチルリチン、グリチルレチン酸およびシクラメートを含む群に属し得る。
【0142】
一実施形態では、本発明によるNHDCおよびガンマまたはベータシクロデキストリンを含む組成物は、抗苦味剤として使用される。
【0143】
別の実施形態では、本発明によるNHDCおよびガンマまたはベータシクロデキストリンを含む組成物は、抗渋味剤として使用される。
【0144】
好ましくは、組成物は、カフェイン、イブプロフェン、リモニン、ナリンギン、パラセタモール、アスピリン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、テオブロミン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシン、次サリチル酸ビスマス、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質の苦味および/または渋味のマスキングのために使用される。
【0145】
より好ましくは、組成物は、カフェイン、ナリンギン、パラセタモール、塩化カリウム、タンパク質、カテキン、スクラロース、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質の苦味および/または渋味のマスキングのために使用される。
【0146】
好ましい実施形態では、矯味組成物は、パラセタモールの苦味をマスクするために使用される。好ましくはNHDCおよびガンマシクロデキストリンを含む組成物が使用される。この実施形態では、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は、好ましくは1.5:1~1:10からなり、より好ましくは、1.5:1~1:6からなり、さらにより好ましくは、1.2:1~1:4からなり、さらにより好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。特定の好ましい実施形態では、比率は約1:3である。別の特定の好ましい実施形態では、比率は約1:1である。
【0147】
別の好ましい実施形態では、矯味組成物は、キニーネの苦味をマスクするために使用される。好ましくは、NHDCおよびベータシクロデキストリンを含む組成物が使用される。この実施形態では、NHDC:ベータシクロデキストリンのモル比は、好ましくは1.5:1~1:10からなり、より好ましくは、1.5:1~1:6からなり、さらにより好ましくは、1.2:1~1:4からなり、さらにより好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。特定の好ましい実施形態では、比率は約1:3である。別の特定の好ましい実施形態では、比率は約1:1である。
【0148】
別の好ましい実施形態では、矯味組成物は、緑茶の渋味をマスクするために使用される。この実施形態では、組成物は、緑茶の渋味成分、通常は、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレートおよび/またはエピカテキンに対する渋味マスキング効果を有する。
【0149】
この実施形態では、NHDC:シクロデキストリンのモル比は、好ましくは1.5:1~1:10からなり、より好ましくは、1.5:1~1:6からなり、さらにより好ましくは、1.2:1~1:4からなり、さらにより好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。特定の好ましい実施形態では、比率は約1:3である。別の特定の好ましい実施形態では、比率は約1:1である。
【0150】
本発明による矯味剤は通常、苦味物質および/または渋味物質を含む、不快な味覚の物質を含む摂取可能製品に通常添加される。
【0151】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の不快な味覚の物質を含む摂取可能製品の不快な味覚をマスクするためのプロセスであり、該プロセスは、摂取可能製品に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む矯味組成物を添加することを含む。
【0152】
摂取可能製品に矯味組成物を添加するステップは、予混合組成物を添加すること、ならびに、両成分、すなわち、NHDCおよびベータまたはガンマシクロデキストリンを、別々に、好ましくは逐次的に、摂取可能製品に取り込むことを含むことが意図されている。
【0153】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の不快な味覚の物質ならびにネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む矯味組成物を含む摂取可能製品である。好ましくは、不快な味覚の物質は、苦味または渋味物質である。
【0154】
摂取可能製品中に含まれる不快な味覚の物質の量は、摂取可能製品が矯味剤を含まない場合に、不快と知覚されるのに十分な量である。
【0155】
一実施形態では、摂取可能製品中の不快な味覚の物質の量は、矯味剤不含時の摂取可能製品の総重量を基準にして、1~5000ppmの範囲である。
【0156】
矯味剤は、矯味有効量で摂取可能製品に添加される。本明細書で使用される場合、「矯味有効量」は、矯味剤不含時の摂取可能製品に比べて、不快な味覚の物質の不快な味覚を低減する、調節するまたは除去するのに十分である矯味組成物の量である。味覚マスキング有効量は、特定の不快な味覚の物質、摂取可能製品中のその相対量、および特定の摂取可能製品に応じて、広く変化し得る。
【0157】
当業者なら、それぞれ特定の場合における味覚マスキング剤の適切な量を選択するのに困難は生じないであろう。
【0158】
一実施形態では、矯味組成物は、摂取可能製品の総重量に対し、1~2000ppmからなる量、好ましくは1~1000ppmからなる量、より好ましくは1~500ppmからなる量で添加される。摂取可能製品の総重量は、添加される甘味組成物の重量も含むことを意味する。
【0159】
本明細書で使用される場合、用語の「摂取可能製品」は、広く、ヒトまたは動物により経口摂取されることが意図される任意の物質に関し、飲まれる、食される、飲み込まれる、または他の方法で摂取される物質、すなわち、食品および医薬品を含む。さらに、用語の「摂取可能製品」は、摂取されることはないが、しかし、最初に口内に取り込まれ、その後、排出される物質、例えば、チューインガムおよび口腔ケア組成物、例えば、うがい薬、歯磨き粉、または歯磨きジェル、も含むことが意図されている。
【0160】
本発明の一実施形態では、摂取可能製品は、食品、医薬品、および口腔ケア組成物からなる群より選択され;好ましくは食品および医薬品から選択される。
【0161】
本発明の別の実施形態では、摂取可能製品は食品である。
【0162】
本発明の別の実施形態では、摂取可能製品は医薬品である。
【0163】
本明細書で使用される場合、表現の「食品」は、ヒトまたは動物栄養摂取向けの任意の食用製品、および固体、半固体および液体を含み、飲料も含む。表現の「食品」はまた、部分的にのみ摂取され、その後に、口腔から排出されることを目的とする製品、特にチューインガムを含む。
【0164】
本発明による矯味剤をその中に添加されるのに好適な飲料は、限定されないが、不快な味覚の物質、好ましくは、苦味および/または渋味物質を含む任意の種類の飲料であり得、また、それらは、炭酸または非炭酸、アルコール性または非アルコール性であり得、特に、フルーツ味のソフトドリンク、ソーダ、コーラ、スポーツ飲料、および一般的に、果実、野菜、芳香植物、ティー、コーヒーまたはココアを含有および/またはそれで味付けした任意の飲料、などを含み、ワインまたはビールなどを含有する飲料も含み、苦味および/または渋味を有するタンパク質加水分解物、ビタミンおよび/または植物栄養素などを含むエネルギーまたは健康飲料も含む。
【0165】
飲料カテゴリーは、すぐに飲める飲料、ならびにその他の形態、例えば、粉末、顆粒、タブレットまたは液体濃縮物を含み、これらは、水で再構成されることが意図されている。
【0166】
本発明による矯味剤をその中に加えるのに好適する他の食品は、数ある中で、例えば、パン、ケーキ、ビスケット、マフィンなどのベーカリー製品、および一般的に任意の種類の焼成食品;ヨーグルト、飲むヨーグルト、フローズンヨーグルト、乳汁、乳汁ベース飲料、練乳、クリーム、チーズまたはアイスクリームなどの乳製品;豆乳または大豆レシチンなどの大豆製品;チョコレート、カラメル、キャンディー、マジパン、またはチューインガムなどの菓子製品;朝食用シリアル、シリアルバー、エネルギー/栄養バールまたはフレークなどのシリアル製品;ジャム、フルーツピューレ、保存果実、およびソースなどの果実由来製品;ソース、乾燥野菜、保存野菜または凍結野菜などの野菜由来製品;マヨネーズおよびいくつかのドレッシングなどの油性品およびエマルジョンであるが、但し、それらが不快な味覚の物質、好ましくは、苦味および/または渋味物質を含むことが前提である。
【0167】
食品カテゴリーはまた、特に、栄養または栄養補助食品、すなわち、一部の栄養成分、例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、植物性薬品、酵素、またはヒトの食事を補充することを目的とする他の物質を富化した食品を含み、これは、任意の好適な食品形態、典型的な例では、例えば、飲料またはバーであってよい。
【0168】
また、デザートミックスまたは乾燥調理済み食品などの任意の種類の乾燥製品も食品の表現に含まれる。
【0169】
食品はまた、特に、動物栄養摂取のための任意の飼料も含む。
【0170】
本発明による矯味剤をその中に添加するのに好適する医薬品は、不快な味覚の有効成分、すなわち、苦味または渋味成分を含むものであり、これらには、同様に、任意の種類の不快な味覚の健康補助食品、例えば、ビタミン、ミネラルおよびこれらの混合物が含まれる。好ましくは苦味または渋味有効成分は、フルオロキノロン抗生物質、イブプロフェン、パラセタモール、β-ラクタム系抗生物質、アンブロキソール、グアイフェネシン、およびこれらの混合物から選択され;好ましくは、有効成分はパラセタモールである。
【0171】
医薬品は、ヒトまたは獣医学療法のための経口投与に好適する任意の形態であり得る。医薬品は、当業者によく知られた経口投与に好適する任意の形態、例えば、タブレット、チュアブル錠、口腔内崩壊錠(ODT)、舌下錠、口腔内崩壊フィルム剤(フラッシュフィルム)、トローチ剤、咀嚼性ガムまたは粉末などの固体形態;または点滴剤、シロップおよび懸濁剤などの液体形態;あるいは、投与される液体に溶解することを目的とする粉末、顆粒、またはタブレット、例えば、発泡錠であり得る。
【0172】
本発明の矯味組成物は、医薬品技術または食品技術の当業者によく知られているような、従来の方式で摂取可能製品に添加でき、例えば、製剤の他の賦形剤と共に医薬品に添加し得るか、または製造工程の好適な段階で食品に添加し得る。
【0173】
上記例は、非限定的であり、不快な味覚の物質、好ましくは苦味および/または渋味物質を含有する任意の摂取可能製品は、本発明による矯味組成物をその中に添加するのに適切であり得る。
【0174】
本発明の別の態様は、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む矯味組成物に関する。
【0175】
一実施形態では、矯味組成物は両成分の混合物である。
【0176】
別の実施形態では、NHDCおよびガンマシクロデキストリンは、錯体の形である。
【0177】
本発明のこの態様による、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は、通常、1.5:1~1:10からなり、より好ましくは、1.5:1~1:6からなり、さらにより好ましくは、1.2:1~1:4からなり、さらにより好ましくは、1.1:1~1:3.5からなり、さらにより好ましくは、1:1~1:3からなる。
【0178】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は約1:1である。
【0179】
別の好ましい実施形態では、NHDC:ガンマシクロデキストリンのモル比は約1:3である。
【0180】
NHDCおよびガンマシクロデキストリンまたはベータシクロデキストリンを含む矯味組成物に関する本発明の態様は、次の実施形態により定義できる:
1.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む組成物の矯味剤としての使用。
2.組成物が、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびシクロデキストリンの混合物であることを特徴とする、実施形態1に記載の使用。
3.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびシクロデキストリンが錯体の形であることを特徴とする、実施形態1に記載の使用。
4.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:10からなることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の使用。
5.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:6からなることを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の使用。
6.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1.2:1~1:4からなることを特徴とする、実施形態5に記載の使用。
7.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1.1:1~1:3.5からなることを特徴とする、実施形態6に記載の使用。
8.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:1~1:3からなることを特徴とする、実施形態7に記載の使用。
9.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1:1であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
10.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、約1:1であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
11.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1±0.1:1±0.1であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
12.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1±0.05:1±0.05であることを特徴とする、実施形態11に記載の使用。
13.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1:3であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
14.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、約1:3であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
15.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1±0.1:3±0.3であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用。
16.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比が、1±0.05:3±0.15であることを特徴とする、実施形態15に記載の使用。
17.シクロデキストリンが、ベータシクロデキストリンであることを特徴とする、実施形態1~16のいずれか1つに記載の使用。
18.シクロデキストリンが、ガンマシクロデキストリンであることを特徴とする、実施形態1~16のいずれか1つに記載の使用。
19.苦味をマスキングするための実施形態1~18のいずれか1つに記載の使用。
20.渋味をマスキングするための実施形態1~19のいずれか1つに記載の使用。
21.金属臭をマスキングするための実施形態1~20のいずれか1つに記載の使用。
22.苦味および/または渋味および/または金属臭をマスキングするための実施形態1~21のいずれか1つに記載の使用。
23.カフェイン、イブプロフェン、リモニン、ナリンギン、パラセタモール、アスピリン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、テオブロミン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシン、次サリチル酸ビスマス、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質の苦味および/または渋味をマスキングするための実施形態1~20のいずれか1つに記載の使用。
24.物質が、カフェイン、ナリンギン、パラセタモール、塩化カリウム、タンパク質、カテキン、スクラロース、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態23に記載の使用。
25.パラセタモールの苦味をマスキングするためであることを特徴とする、実施形態1~18のいずれか1つに記載の使用。
26.キニーネの苦味をマスキングするためであることを特徴とする、実施形態1~18のいずれか1つに記載の使用。
27.緑茶の渋味をマスキングするためであることを特徴とする、実施形態1~18のいずれか1つに記載の使用。
28.摂取可能製品に、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む矯味組成物を添加することを含む、少なくとも1種の不快な味覚の物質を含む摂取可能製品の不快な味覚をマスクするためのプロセス。
29.矯味組成物が、1.5:1~1:10からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28に記載のプロセス。
30.矯味組成物が、1.5:1~1:6からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28または29に記載のプロセス。
31.矯味組成物が、1.2:1~1:4からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態30に記載のプロセス。
32.矯味組成物が、1.1:1~1:3.5からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態31に記載のプロセス。
33.矯味組成物が、1:1~1:3からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態32に記載のプロセス。
34.矯味組成物が、1:1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
35.矯味組成物が、約1:1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
36.矯味組成物が、1±0.1:1±0.1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
37.矯味組成物が、1±0.05:1±0.05のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態36に記載のプロセス。
38.矯味組成物が、1:3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
39.矯味組成物が、約1:3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
40.矯味組成物が、1±0.1:3±0.3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態28~33のいずれか1つに記載のプロセス。
41.矯味組成物が、1±0.05:3±0.15のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態40に記載のプロセス。
42.不快な味覚が、苦味および/または渋味であることを特徴とする、実施形態28~41のいずれか1つに記載のプロセス。
43.不快な味覚の物質が、カフェイン、イブプロフェン、リモニン、ナリンギン、パラセタモール、アスピリン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、テオブロミン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシン、次サリチル酸ビスマス、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態28~42のいずれか1つに記載のプロセス。
44.不快な味覚の物質が、カフェイン、ナリンギン、パラセタモール、塩化カリウム、タンパク質、カテキン、スクラロース、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態43に記載のプロセス。
45.摂取可能製品が食品および医薬品から選択されることを特徴とする、実施形態28~44のいずれか1つに記載のプロセス。
46.摂取可能製品が、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシンおよび次サリチル酸ビスマスから選択される苦味有効成分を含む医薬品であることを特徴とする、実施形態45に記載のプロセス。
47.摂取可能製品が、カフェイン、リモニン、ナリンギン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、カテキン、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンおよびステビア抽出物から選択される苦味または渋味物質を含む食品であることを特徴とする、実施形態45に記載のプロセス。
48.少なくとも1種の不快な味覚の物質および矯味組成物を含む摂取可能製品であって、矯味組成物が、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンならびにベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンを含む、摂取可能製品。
49.不快な味覚の物質が、苦味または渋味物質であることを特徴とする、実施形態48に記載の摂取可能製品。
50.不快な味覚の物質が、カフェイン、イブプロフェン、リモニン、ナリンギン、パラセタモール、アスピリン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、テオブロミン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシン、次サリチル酸ビスマス、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態48または49に記載の摂取可能製品。
51.不快な味覚の物質が、カフェイン、ナリンギン、パラセタモール、塩化カリウム、タンパク質、カテキン、スクラロース、ステビア抽出物およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態48~50のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
52.摂取可能製品が食品および医薬品から選択されることを特徴とする、実施形態48~51のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
53.パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、デキストロメトルファン、フェニレフリン、グアイフェネシンおよび次サリチル酸ビスマスから選択される苦味有効成分である不快な味覚の物質を含む医薬品であることを特徴とする、実施形態52に記載の摂取可能製品。
54.カフェイン、リモニン、ナリンギン、塩化カリウム、ケルセチン、キニーネ、カテキン、大豆タンパク質、乳清タンパク、ピープロテイン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンおよびステビア抽出物から選択される苦味または渋味物質である不快な味覚の物質を含む食品であることを特徴とする、実施形態52に記載の摂取可能製品。
55.矯味組成物が、1.5:1~1:10からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~54のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
56.矯味組成物が、1.5:1~1:16からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~55のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
57.矯味組成物が、1.2:1~1:4からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態56に記載の摂取可能製品。
58.矯味組成物が、1.1:1~1:3.5からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態57に記載の摂取可能製品。
59.矯味組成物が、1:1~1:3からなるネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態58に記載の摂取可能製品。
60.矯味組成物が、1:1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
61.矯味組成物が、約1:1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
62.矯味組成物が、1±0.1:1±0.1のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
63.矯味組成物が、1±0.05:1±0.05のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態62に記載の摂取可能製品。
64.矯味組成物が、1:3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
65.矯味組成物が、約1:3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
66.矯味組成物が、1±0.1:3±0.3のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態48~59のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
67.矯味組成物が、1±0.05:3±0.15のネオヘスペリジンジヒドロカルコン:シクロデキストリンのモル比を有することを特徴とする、実施形態66に記載の摂取可能製品。
68.シクロデキストリンが、ベータシクロデキストリンであることを特徴とする、実施形態48~67のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
69.シクロデキストリンが、ガンマシクロデキストリンであることを特徴とする、実施形態48~67のいずれか1つに記載の摂取可能製品。
70.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンを含む矯味組成物。
71.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンの混合物であることを特徴とする、実施形態70に記載の矯味組成物。
72.ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびガンマシクロデキストリンが錯体の形であることを特徴とする、実施形態70に記載の矯味組成物。
73.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:10からなることを特徴とする、実施形態70~72のいずれか1つに記載の矯味組成物。
74.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.5:1~1:6からなることを特徴とする、実施形態70~73のいずれか1つに記載の矯味組成物。
75.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.2:1~1:4からなることを特徴とする、実施形態74に記載の矯味組成物。
76.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1.1:1~1:3.5からなることを特徴とする、実施形態75に記載の矯味組成物。
77.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:1~1:3からなることを特徴とする、実施形態70~76のいずれか1つに記載の矯味組成物。
78.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:1であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
79.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:1であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
80.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:3±0.3であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
81.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:3±0.15であることを特徴とする、実施形態80に記載の矯味組成物。
82.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1:3であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
83.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、約1:3であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
84.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.1:3±0.3であることを特徴とする、実施形態70~77のいずれか1つに記載の矯味組成物。
85.ネオヘスペリジンジヒドロカルコン:ガンマシクロデキストリンのモル比が、1±0.05:3±0.15であることを特徴とする、実施形態84に記載の矯味組成物。
【0181】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【0182】
実施例
実施例1:甘味組成物
表1に示すように、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)とガンマシクロデキストリン(gCD)の間の種々のモル比を用いて、本発明によるいくつかの甘味組成物を作製した。NHDCは、Ferrer HealthTechから、ガンマシクロデキストリンはWackerから購入した。
【0183】
NHDC(613)およびガンマシクロデキストリン(1297)のモル質量から、各組成物中に含まれるNHDCの重量パーセントを計算した。
【表1】
【0184】
採用した甘味組成物は、錯体の形であった。
【0185】
実施例Aの錯体を作製するために、NHDC(14.0g、20.6mmol)を、gCD(30g、20.6mmol)の脱イオン水(500ml)中の撹拌溶液に加えた。混合物を20~25℃で1時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:1錯体の白みがかった固体(40g)を得た。
【0186】
実施例Bの錯体を作製するために、NHDC(7.5g、11mmol)を、gCD(47.7g、33mmol)の脱イオン水(500ml)中の撹拌溶液に加えた。混合物を20~25℃で1時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:3錯体の白みがかった固体(54g)を得た。
【0187】
実施例C~Eの錯体を、実施例AおよびBに対し上記したものと同じ条件下で作製した。
【0188】
実施例2:比較用甘味組成物
比較の目的で、ガンマシクロデキストリンの代わりにベータシクロデキストリンを使用する以外は、実施例AおよびBに等価な甘味組成物を同様に錯体の形で作製した。従って、表2に開示するNHDCとベータシクロデキストリン(bCD)のモル比を用いて、比較例AおよびBを作製した。ベータシクロデキストリンはWackerから購入した。
【0189】
実施例1と同様にして、NHDC(613)およびベータシクロデキストリン(1138)のモル質量を用いて、各組成物中に含まれるNHDCの重量パーセントを計算した。
【表2】
【0190】
比較例Aの錯体を作製するために、NHDC(7.0g、10.2mmol)を、bCD(13.4g、10.2mmol)の脱イオン水(900ml)中の撹拌溶液に50℃で加えた。混合物を50℃で2時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:1錯体の白みがかった固体(18.1g)を得た。
【0191】
比較例Bの錯体を作製するために、NHDC(4.0g、5.8mmol)を、bCD(22.9g、17.5mmol)の脱イオン水(1500ml)中の撹拌溶液に50℃で加えた。混合物を50℃で2時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:3錯体の白みがかった固体(23.9g)を得た。
【0192】
実施例3:甘味相乗作用試験
官能検査を実施し、本発明の組成物で達成された甘味相乗作用を評価し(実施例AおよびB)、この効果を、ベータシクロデキストリン(比較例AおよびB)を含む類似の組成物で得られた効果と比較した。本発明のさらなる組成物(実施例C、DおよびE)もこの官能検査で同様に評価した。
【0193】
一群の専門家パネリストが、甘味記述子で種々の組成物の甘味ならびに単独で使用された成分NHDC、ベータシクロデキストリンおよびガンマシクロデキストリンの甘味を評価した。
【0194】
異なる濃度のそれぞれの評価される甘味料を室温で水に溶解した。その後、パネルは、それぞれの製品に対し、水中の1%および3%のスクロースの基準溶液に等甘味度である濃度を判定した。結果を表3にまとめている(実施例AおよびBはそれぞれEx.AおよびEx.Bと略記され、比較例AおよびBはそれぞれComp.AおよびComp.Bと略記されている)。
【表3】
【0195】
ベータおよびガンマシクロデキストリンも、甘味化合物であるために、両シクロデキストリンの等甘味濃度を同様にテストパネルにより決定して、組成物の甘味に対するそれらの可能な寄与を評価した。ベータシクロデキストリンの1%および3%スクロースに対する等甘味濃度は、それぞれ12000および70000ppmであり、ガンマシクロデキストリンの等甘味濃度は、それぞれ25000および85000ppmであることが明らかになった。従って、両シクロデキストリンの等甘味濃度は、NHDCの少なくとも3桁程度大きいので、甘味に対するそれらの寄与は無視できると結論付けた。
【0196】
表3の各スクロースレベルに対する1行目のデータは、それぞれ評価された薬剤の等甘味濃度(ppm)を示し、2行目では、これらの等甘味濃度中に存在する純粋なNHDCの量(ppm)が計算されている。これらの結果はグラフを使って図1および2に示されている。
【0197】
組成物中の各成分の個々の寄与の合計から予測された理論的甘味と、ガンマシクロデキストリンおよびNHDCを含む組成物の実際に測定した甘味を比較することにより、本発明の組成物による甘味相乗作用のさらに定量的な評価を実施した。
【0198】
この目的のために、各成分の相対的甘味力を最初に計算した。比較の目的のために、ベータシクロデキストリンの相対的甘味力も同様に計算した。所与の甘味度での所与の化合物の相対的甘味力は、この化合物がスクロースより何倍甘味があるかを示す。従って、これは、各甘味度に対し、スクロースの濃度と、各成分の等甘味濃度との間の比率として計算される。NHDC、ベータシクロデキストリン(bCD)およびガンマシクロデキストリン(gCD)の相対的甘味力を表4に示す。
【表4】
【0199】
各成分の相対的甘味力から、これらの成分の混合物の予測甘味(スクロース等価)を式I:
【数1】
により計算できる。
【0200】
次に、成分の混合物の甘味相乗作用が、式II:
【数2】
により計算できる。
【0201】
表5および6は、比較目的のための、1%スクロースレベル(表5)および3%スクロースレベル(表6)に対する、本発明の組成物(実施例AおよびB)、および同様に、NHDCおよびベータシクロデキストリンの組み合わせを含む比較例AおよびBの予測(理論)甘味および甘味相乗作用を示す。
【表5】
【表6】
【0202】
例えば、1%のスクロースレベルに対して(表5)、実施例A(1列目)の組成の12ppmの予測甘味は、式Iを用いて以下のように計算される。3.85・10-4x2000+8.12・10-4x0.4、すなわち、0.77%スクロース等価。実際の甘味は1%スクロースと等価であるので、相乗作用は、式IIを用いて次のように計算できる。1-0.77/0.77、すなわち、29.9%の相乗作用。
【0203】
同様にして、3%のスクロースレベルに対して(表6)、実施例A(1列目)の組成物の42ppmの予測甘味が式Iを用いて次のように計算される。13.48・10-4x1250+28.52・10-4x0.3529、すなわち、1.70%スクロース等価。次に、相乗作用は、式IIを用いて次のように計算できる。(3-1.70/1.70、すなわち、76.5%の相乗作用。
【0204】
表5および6の予測甘味および甘味相乗作用の全ての値は、相対的甘味力(表4による)の適切な値および適切な実際の甘味値(1%または3%)を用いて、同様にして計算された。
【0205】
実施例4:甘味度による甘味力の変化
上記実施例3で示すように、所与の甘味度での所与の化合物の相対的甘味力は、この化合物がスクロースより何倍甘味があるかを示し、この値は、スクロースの濃度と、化合物の等甘味濃度の間の比率として計算される。
【0206】
1%および3%スクロースレベルでのNHDCの相対的甘味力を実施例3で計算し、表4に示す。
【0207】
本発明の組成物のスクロースに対する甘味力も、同様にして、所与のスクロースレベルで、計算できる。従って、例えば、12および42ppmの実施例Aの組成物は、1%および3%のスクロース溶液にそれぞれ等甘味度である(表3参照)ので、実施例Aの組成物は、1%および3%スクロースレベルで、スクロースより、それぞれ833および714倍甘いということになる。
【0208】
同様に、26および90ppmの実施例Bの組成物は、1%および3%のスクロース溶液にそれぞれ等甘味度である(表3参照)ので、実施例Bの組成物は、1%および3%スクロースレベルで、スクロースより、それぞれ385および333倍甘いということになる。
【0209】
各物質の相対的甘味力の値、および実施例A~Dの組成物の相対的甘味力の値を下表7にまとめている。
【表7】
【0210】
表7の結果は、図3のグラフに示されている。
【0211】
実施例5:味覚プロファイル
本発明の甘味組成物で達成された全体味覚プロファイルを評価し、スクロースの目標味覚プロファイルと比較した。
【0212】
このアッセイのために、全ての試料を同じ甘味度で評価し、そのために、各試料を3%スクロースに対する等甘味度の濃度で使用した。各サンプルについて以下のパラメーターを評価した。
-最初の甘味検出までの時間
-最大甘味までの時間
-残存(甘味が消滅するまでの時間)
-異臭:メントール、甘草(甘味とは異なる全ての味覚)
-口当たり(密度、すなわち、口内で知覚される粘度)
【0213】
これらの評価を較正味覚パネルにより実施し、室温で行った。
【0214】
これらのパラメーターのそれぞれを、0~5点数尺度法で評価した。スクロースの値を基準値にし、模倣する標的と見なした。
【0215】
この試験で得られた結果を、下表にまとめている。
【表8】
【0216】
表8の結果は、図4で、スパイダーグラフの形でグラフを使って示される。
【0217】
実施例6:甘味付与飲料
高いフルクトースコーンシロップ(HFCS)で甘味付与された基準オレンジソフトドリンクを、表9に記載の成分(配合1)を用いて作製した。表中の全てのパーセンテージは重量による。
【表9】
【0218】
飲料を作製するために、次のプロセスを用いた。高フルクトースコーンシロップを1Lビーカーに秤取した。残りの微量成分(安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸、オレンジソーダ染料およびオレンジソーダ香料およびオレンジソーダ香料)を別に小さいビーカーに秤取し、水をそれぞれの小さいビーカーに加え、各成分が溶解するまで混合した。溶解すると、全てのこれらの微量成分を1LのHFCS含有ビーカーに加えた。得られた溶液を完全に混合し、水をゆっくり加えて1Kgにした。
【0219】
本発明の組成物(実施例B)を用いて、NHDCによるHFCSの可能な置換をアッセイするために、0.1gのNHDCを99.9gの水に徐々に加え、混合して、黄色がかった溶液が得られるまで、66℃で15分間加熱することにより、水中0.1%のNHDC母液を作製し、その後、溶液を室温まで冷却した。同様にして、1gの実施例Bを99gの水に加え、混合し、黄色がかった溶液を得ることにより、水中1%の実施例Bの母液を作製した。
【0220】
次に、漸増量のHFCSをNHDCにより置換した後、基準およびプロトタイプを較正パネルによる3点試験法を通すことにより、NHDCによる最大糖置換を決定した。従って、最大糖置換を測定する判断基準は、基準とプロトタイプの間の等甘味度のみではなく、全体味覚プロファイルも含まれた。
【0221】
3点試験法における何ら顕著な差異なしに、NHDCにより到達される最大糖置換は、10%(表9の配合2)。この置換は、10ppmのNHDCで得られた。
【0222】
第2ステップでは、パネルは、同じ糖置換を得るための実施例B(モル比1:3のNHDC:bCDを含む組成物)の量を決定した。同じ10%の糖置換は、33ppmの実施例Bの組成物で到達され、これは、4.5ppmのNHDC(表9の配合3)を含んでいた。
【0223】
実施例7:甘味付与飲料
この実施例の目的は、オレンジジュースベースのソフトドリンクの糖置換を最大化し、同時に、同じ全体味覚プロファイルを維持することであった。較正パネルは、3点試験法で、異なるプロトタイプから基準を識別できなかった。
【0224】
基準製品(表10の配合1)は、10%の添加スクロースを含んでいた。NHDCにより達成された最大スクロース置換は、10ppmのNHDCを使用することにより、初期の10%から変化して15%であった(表10の配合2)。本発明の甘味組成物を用いることにより、飲料の味覚プロファイルを変えることなく、スクロース置換を25%まで増大させることが可能であった(表10の配合3)。
【0225】
各飲料の比較を表10に示す。これらの飲料の作製のために、オレンジジュース濃縮物65°Bx(Dallant)およびオレンジ香味料#2N341/C(Dallant)を使用した。表中の全てのパーセンテージは重量による。
【表10】
【0226】
実施例8:甘味付与ブラックチョコレート
異なる配合の甘味付与ブラックチョコレートを表11に示す成分を用いて作製した。表中のパーセンテージは重量で表される。
【表11】
【0227】
基準製品(表11の配合1)は、市販の70%のココア含量のチョコレート(Lindt(登録商標))および6%の粉末状糖を含んでいた。
【0228】
実施した全アッセイでは、目標は、スクロース置換を最大化し、同時に同じ全体味覚プロファイルを維持することであった。較正パネルは、試験した異なるプロトタイプから基準を識別できなかった。
【0229】
最初の試験では、NHDC単独による最大スクロース置換を評価した。この場合、NHDCは、グリセロール中の1%溶液の形で添加され、この場合の最大糖置換は10%のスクロースであった(配合の初期の6%から)。この低減は、3ppmのNHDCに等価な、0.03%のグリセロール溶液を用いて達成された(表11の配合2)。
【0230】
実施例Bの組成物内に含まれる(実施例Bの22ppmに等価)ことを除いて、同じ量の純粋なNHDC、すなわち、3ppmを使って、基準製品のより大きな、18.17%までのパーセンテージの糖を置換できることを見出した(表11の配合3)。
【0231】
さらなるアッセイでは、実施例Bの組成物による最大スクロース置換を決定した。この組成物を用いて、40ppmの実施例B(5.45ppmのNHDCを含有)を使用して、製品の味覚プロファイルを変えることなく、基準製品の糖の28%まで低減できた(表11の配合4)。
【0232】
このアッセイのブラックチョコレート製品の作製のために使用された方法は以下の通りであった。最初に、1gのNHDCを99gのグリセロールに加え、混合し、透明な溶液が得られるまで60℃で15分間加熱することにより、1%のグリセロール中NHDCの溶液を作製した。溶液を室温まで放冷した。ブラックチョコレートを秤量し、45℃に加熱し、チョコレートが完全に融解すると、粉末状糖を加え、任意選択で、1%NHDCグリセロール溶液または実施例Bの組成物を同様に添加し、その後、混合物を完全に混合した。混合物を45℃になるまで加熱し、その後、30℃まで放冷した後、モールド(6g/1個)に注ぎ込んだ。迅速に硬化させるために、チョコレートを含むモールドを冷蔵庫に入れた。
【0233】
実施例9:矯味組成物
表12に開示するように、種々のモル比による、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンとガンマシクロデキストリン(gCD)またはベータシクロデキストリン(bCD)との錯体として、種々の矯味組成物を作製した。NHDCは、Ferrer HealthTechから、シクロデキストリンはWackerから購入した。
【表12】
【0234】
採用した甘味組成物は、錯体の形であった。
【0235】
実施例Aの錯体を作製するために、NHDC(14.0g、20.6mmol)を、gCD(30g、20.6mmol)の脱イオン水(500ml)中の撹拌溶液に加えた。混合物を20~25℃で1時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:1錯体の白みがかった固体(40g)を得た。
【0236】
実施例Bの錯体を作製するために、NHDC(7.5g、11mmol)を、gCD(47.7g、33mmol)の脱イオン水(500ml)中の撹拌溶液に加えた。混合物を20~25℃で1時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:3錯体の白みがかった固体(54g)を得た。
【0237】
実施例C、DおよびEのNHDC-gCD錯体を実施例AおよびBに対し上記したものと同じ条件下で作製した。
【0238】
実施例Fの錯体を作製するために、NHDC(7.0g、10.2mmol)を、bCD(13.4g、10.2mmol)の脱イオン水(900ml)中の撹拌溶液に50℃で加えた。混合物を50℃で2時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:1錯体の白みがかった固体(18.1g)を得た。
【0239】
実施例Gの錯体を作製するために、NHDC(4.0g、5.8mmol)を、bCD(22.9g、17.5mmol)の脱イオン水(1500ml)中の撹拌溶液に50℃で加えた。混合物を50℃で2時間、完全溶解まで撹拌した。溶液を、0.8μmフィルターを通して清澄化し、不溶性粒子を取り除いた。減圧下で溶媒を除去した。1:3錯体の白みがかった固体(23.9g)を得た。
【0240】
実施例10:パラセタモールの苦味マスキング
パラセタモールに対する苦味マスキング効果をアッセイした。用量反応プロファイル対パラセタモール溶液として抗苦味効果を測定した。
【0241】
次の物質をアッセイした。NHDC単独、ガンマシクロデキストリン単独ならびにNHDCおよびガンマシクロデキストリンを1:3(実施例B)、1.5:1(実施例C)、1:6(実施例D)および1:10(実施例E)のモル比で含む組成物。
【0242】
各物質のマスキング効果を評価するために、それぞれ5000ppmのパラセタモールおよび種々の濃度の試験物質、すなわち、5、25、50、75および100ppmを含むいくつかの水溶液を作製した。
【0243】
較正テストパネルは、種々の濃度のパラセタモールのいくつかの水溶液のそれぞれを比較し、等苦味(equibitter)パラセタモール溶液を決定した。等苦味溶液をパネルの全ての平均値として計算した。
【0244】
次に、マスキング効果を各試験溶液中に含まれるパラセタモールの基準量(5000ppm)および等苦味溶液中のパラセタモールの量から次の式(式III):
【数3】
を用いて計算した。
【0245】
従って、例えば、5000ppmのパラセタモールおよび100ppmのNHDCを含む溶液は、3266.7ppmのパラセタモールを含む溶液と等苦味であった。従って、マスキング効果は34.67%であった。
【0246】
同様にして、各濃度での各物質のマスキング効果を計算した。結果を表13に示す。
【表13】
【0247】
最初に組み合わせ(実施例A~E)のそれぞれの量に対し、ガンマシクロデキストリンとNHDCとの間のマスキング相乗作用を計算するために、各成分の分子量を用いて、含まれるガンマシクロデキストリンおよびNHDCの量を計算した。例えば、100ppmの実施例Bは、13.61ppmのNHDCおよび86.39ppmのガンマシクロデキストリンを含む。次に、表13のデータを基準にして、組成物中の各成分の抗苦味への寄与を計算した。例えば、13.61ppmのNHDCは、9.44%のマスキング効果をもたらし、86.39ppmのガンマシクロデキストリンは、5.46%のマスキング効果をもたらす(それぞれ特定の濃度での抗苦味効果を表13のデータポイントの補間により計算した)。従って、予測マスキング効果は、各成分の寄与の合計として計算される。例えば、100ppmの実施例Bの予測マスキング効果は14.90%(9.44+5.46)である。
【0248】
最後に、マスキング相乗作用は、式IV:
【数4】
を用いて計算される。
【0249】
1:3のモル比のNHDC-gCD組成物に対応する結果を表14に開示する。
【表14】
【0250】
実施例C(NHDC:gCD=1.5:1)、実施例D(NHDC:gCD=1:6)および実施例E(NHDC:gCD=1:10)のマスキング効果も評価した。それぞれ1つが5000ppmのパラセタモールおよび試験配合Ex.C~Eの内の異なる濃度、すなわち、25および50ppmのいずれか1つを含む、水溶液を作製した。結果を表15~17に示す。
【表15】
【表16】
【表17】
【0251】
実施例11:キニーネの苦味マスキング
実施例10でパラセタモールに対して使用したものと類似の手順に従って、キニーネに対する苦味マスキング効果をアッセイした。
【0252】
次の物質をアッセイした。NHDC単独、ベータシクロデキストリン単独、NHDCおよびベータシクロデキストリンを1:1のモル比で含む組成物(実施例F)ならびにNHDCおよびベータシクロデキストリンを1:3のモル比で含む組成物(実施例G)。
【0253】
実施例10と同様にして、それぞれ250ppmのキニーネおよび種々の濃度の試験物質、すなわち、5、25、50、75および100ppmを含むいくつかの水溶液を作製した。各試験溶液に対し、テストパネルが等苦味キニーネ溶液を決定し、マスキング効果を式III(5000を259で置換)に類似の式を用いて計算した。各試験濃度での各物質のマスキング効果を表18に示す。
【表18】
【0254】
実施例FおよびGのベータシクロデキストリンとNHDCとの間のマスキング相乗作用を実施例10で示すものと類似の手順により計算した。従って、各成分の分子量を用いて、実施例FおよびGの組み合わせのそれぞれの量に含まれるベータシクロデキストリンおよびNHDCの量を計算し、次に、表19のデータを基準にして、各成分の抗苦味への寄与を計算した。各成分の寄与の合計として予測マスキング効果を計算し、最後に、マスキング相乗作用を計算した(式IVを使用)。
【0255】
実施例FおよびGの結果を表19および20にそれぞれ示す。
【表19】
【表20】
【0256】
実施例12:緑茶抽出物の渋味マスキング
苦味マスキング能力に対し示したもの(実施例10および11)と同じ方法を用いて、渋味マスキング能力を測定した。
【0257】
次の物質をアッセイした。NHDCおよびガンマシクロデキストリンを1:3のモル比で含む組成物(実施例B)ならびにNHDCおよびベータシクロデキストリンを1:3のモル比で含む組成物(実施例G)、さらにNHDC単独、ガンマシクロデキストリン単独およびベータシクロデキストリン単独。評価する味覚マスキング剤を5ppmの緑茶抽出物と一緒に水に溶解した。
【0258】
最初に、較正味覚パネルは、30ppmの実施例Gおよび5ppmの緑茶抽出物を、水中での緑茶抽出物の種々の基準液に対し比較し、水溶液中の等渋味基準を決定した。次に、それぞれ、30ppmの実施例Gに含まれる比例量のNHDCおよびベータシクロデキストリンを、5ppmの緑茶抽出物と共に含む2種の溶液を作製し、味覚パネルが、両方の溶液に対する水溶液中の等渋味基準を決定した。
【0259】
各物質に対し、式III(5000を5で置換)に類似の式を用いてマスキング効果を計算し、実施例GのベータシクロデキストリンとNHDCとの間の渋味マスキング相乗作用を、式IVを使って計算した。
【0260】
30ppmの実施例Bに対するマスキング効果およびガンマシクロデキストリンとNHDCとの間の渋味マスキング相乗作用を計算した。
【0261】
結果を表21に示す。
【表21】
【0262】
実施例13:錯体NHDC:gCDのH NMR特性評価
実施例Aの組成物は、1:1のモル比のNHDC:gCDを有する錯体の形である。これは、実施例1および9に記載のようにして作製された。
【0263】
この錯体のH NMRスペクトルをDO中、400MHzで記録し、図5に示す。
【0264】
さらに、純粋なガンマシクロデキストリンのDO中、400MHzのH NMR(図6)および純粋なNHDCの重水素化DMSO(DMSO-d6)中、400MHzのH NMR(図7)も記録し、錯体のスペクトルと比較した。
【0265】
下表22は、特に、純粋なガンマシクロデキストリンのプロトンH1~H6のH NMRの化学シフト(図6)と、錯体中の等価プロトンの化学シフト(図5)との比較を示す。ガンマCD中の各プロトンは、図8に示す模式図で識別される。
【表22】
【0266】
シクロデキストリン単独に比べて、錯体中の化学シフトのバラツキが存在することが観察できる(表の最後の列)。
【0267】
同様にし、下表23は、特に、純粋なNHDCのプロトンのH NMRの化学シフト(図7)と、実施例AでNHDCが錯体の一部を形成している場合の等価プロトンの化学シフト(図5)との比較を示す。NHDC中の各プロトンは、図9に示す模式図で識別される。
【表23】
【0268】
NHDC単独に比べて、錯体中の化学シフトのバラツキが存在することが観察できる(表の最後の列)。
【0269】
さらに、純粋なNHDC中では化学的に等価な、プロトンH-6およびH-8は、実施例Aの錯体中で鑑別されることも観察できる。加えて、NHDCのH NMRではトリプレットとして現れている、位置2および3のメチレン基(CH)中のプロトンは、錯体中では、マルチプレットとして現れている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9