(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】スチールコード、タイヤ
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20220916BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220916BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 L
B60C9/20 E
(21)【出願番号】P 2020507377
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001896
(87)【国際公開番号】W WO2019181177
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018052816
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504211429
【氏名又は名称】栃木住友電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 映史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
(72)【発明者】
【氏名】高村 伸栄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 益任
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩二
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075003(JP,A)
【文献】特開2001-055676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
D07B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の素線が撚り合わされた1×4構造を有し、
4本の前記素線のうち少なくとも1本が、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線であり、
長手方向と垂直な断面が扁平形状を有し、
長手方向と垂直な複数の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合に、前記楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内に位置するスチールコード。
【請求項2】
前記波付き素線を平面に置いた時の、前記平面から、前記平面から遠い側の前記屈曲部までの高さを屈曲高さと定義した場合に、
前記屈曲高さは、前記波付き素線の素線径の240%以上280%以下である請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
長手方向と垂直な複数の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合に、前記楕円の長軸長に対する短軸長の比である短軸長/長軸長の平均値が0.76以上0.82以下である請求項1または請求項2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記素線の素線径が0.25mm以上0.45mm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスチールコード。
【請求項5】
長手方向と垂直な一の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合の、前記楕円の短軸方向を厚み方向とし、
長手方向と垂直な断面における前記厚み方向の最大長さを厚みと定義した場合に、
前記厚みの変動係数が0.05以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスチールコード。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のスチールコードを含むタイヤ。
【請求項7】
前記スチールコードのゴム浸透度が70%以上である請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード、タイヤに関するものである。
【0002】
本出願は、2018年3月20日出願の日本出願第2018-052816号に基く優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば特許文献1には、4本のフィラメントが撚り合わされた撚り線からなり、断面が楕円状を呈しており、楕円状の断面において、断面の長軸の長さに対する短軸の長さの比を所定の範囲とし、各フィラメントを所定の配置としたベルトコードを用いた空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一観点によれば、4本の素線が撚り合わされた1×4構造を有し、
4本の前記素線のうち少なくとも1本が、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線であり、
長手方向と垂直な断面が扁平形状を有し、
長手方向と垂直な複数の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合に、前記楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内に位置するスチールコードを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一態様に係る1×4構造のスチールコードの説明図である。
【
図2】
図1のスチールコードの長手方向と垂直な面での断面図である。
【
図5】従来の扁平化したスチールコードにおける、長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きと、スチールコードの厚みのばらつきとの関係の説明図である。
【
図6】本開示の一態様に係るスチールコードにおける、厚みの最大値、最小値の説明図である。
【
図8】本開示の一態様に係るタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に開示された発明においては、ベルトコードの断面が楕円状を呈し、この断面の長軸の長さとその短軸の長さとの比を所定の範囲とすることにより、タイヤのベルトにおけるトッピングゴムのボリュームの低減に寄与し、転がり抵抗の低減に寄与するとしている。
【0008】
しかしながら、近年ではタイヤに対して更なる性能向上が求められている。このため、例えば転がり抵抗のさらなる低減等のために、タイヤに対してさらなる軽量化が求められている。同時に、タイヤの交換頻度を抑制し、より長期間に渡って使用できるように耐久性に優れたタイヤとすることが求められている。そして、タイヤに用いられるスチールコードについても軽量性、及び耐久性に優れたタイヤを形成することができるスチールコードであることが求められるようになっている。
【0009】
このため、本開示の目的は、軽量性、及び耐久性に優れたタイヤを形成することができるスチールコードを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、軽量性、及び耐久性に優れたタイヤを形成することができるスチールコードを提供できる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
(1)本開示の一態様に係るスチールコードは、4本の素線が撚り合わされた1×4構造を有し、
4本の前記素線のうち少なくとも1本が、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線であり、
長手方向と垂直な断面が扁平形状を有し、
長手方向と垂直な複数の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合に、前記楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内に位置する。
【0012】
スチールコードは例えばタイヤのベルト層に配置することができる。ベルト層はスチールコードと、ゴムとを有し、スチールコードはゴム内に埋め込まれている。ベルト層の厚みは、ゴム内にスチールコードを埋め込めるように選択できる。このため、スチールコードの長手方向と垂直な断面の形状を扁平形状とし、スチールコードの厚みを抑制することで、スチールコードを埋め込むために必要なゴムの厚みを抑制でき、ベルト層の厚みも抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の発明者らの検討によれば、従来は着目されていなかった、長手方向と垂直な複数の断面における4本の素線に外接する楕円の短軸の傾きを、その中央値±30度以内とすることで、スチールコードの厚みのばらつきや最大厚みを抑制できる。
【0014】
このように、本開示の一態様に係るスチールコードはその厚みが薄く、さらには厚みのばらつきや最大厚みが小さいため、該スチールコードを用いて作製したベルト層の厚みを抑制でき、ベルト層を軽量にすることができる。その結果、該ベルト層を含むタイヤについても軽量化を図ることが可能になる。
【0015】
さらに、スチールコードが有する4本の素線のうち少なくとも1本を、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線とすることで、スチールコードを用いてタイヤを形成する際に、スチールコード内部へのゴム浸透度を高められる。このようにタイヤを形成する際のスチールコード内部へのゴム浸透度を高めることで、スチールコードに含まれる素線のゴムと接している面積を高め、素線とゴムとの密着性を高めることができる。そして、タイヤを車等に装着し、使用していると、水分等がゴムを透過し、浸入する場合があるが、上述のように、素線のゴムと接している面積を高めることで、素線表面が水分と接触、反応することを抑制できる。このため、ゴムと素線との密着性を高く維持することができ、タイヤの耐久性を高めることが可能になる。
【0016】
(2) 前記波付き素線を平面に置いた時の、前記平面から、前記平面から遠い側の前記屈曲部までの高さを屈曲高さと定義した場合に、
前記屈曲高さは、前記波付き素線の素線径の240%以上280%以下であってもよい。
【0017】
(3) 長手方向と垂直な複数の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合に、前記楕円の長軸長に対する短軸長の比である短軸長/長軸長の平均値が0.76以上0.82以下であってもよい。
【0018】
(4) 前記素線の素線径は0.25mm以上0.45mm以下であってもよい。
【0019】
(5) 長手方向と垂直な一の断面において、4本の前記素線に外接する楕円を描いた場合の、前記楕円の短軸方向を厚み方向とし、
長手方向と垂直な断面における前記厚み方向の最大長さを厚みと定義した場合に、
前記厚みの変動係数は0.05以下であってもよい。
【0020】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載のスチールコードを含むタイヤとすることもできる。
【0021】
(7) 前記スチールコードのゴム浸透度が70%以上であるタイヤであってもよい。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係るスチールコード、タイヤの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0023】
〔スチールコード〕
以下、本実施形態に係るスチールコードについて
図1~
図7に基づき説明する。
【0024】
本実施形態に係るスチールコードはフィラメントとも呼ばれる素線を4本、長手方向に沿って螺旋状に撚り合わせた1×4構造を有している。
【0025】
ここで、
図1に本実施形態のスチールコード10の一構成例の斜視図を示す。また、
図1に示したスチールコード10の長手方向と垂直な面での断面図を
図2に示す。なお、スチールコード10の長手方向は図中のY軸方向となる。長手方向と垂直な面は、図中のXZ平面と平行な面になる。
【0026】
図1、
図2に示したスチールコード10は、4本の素線11が撚り合わされた1×4構造を有している。1×4構造とは、4本の素線を単層(1層)となるように撚り合わせた構造を意味する。単層とは、
図2に示すようにスチールコード10の長手方向と垂直な断面において、素線11が1つの円の円周方向に沿って単層(1層)となるように配列されている構造を意味する。
【0027】
本発明の発明者らは、素線の本数を2本から6本の間で変化させ、同じ破断強度となるように素線径を選択した1×N構造のスチールコードを5種類作製し、そのコード径、及び質量を評価、検討した。なお、この場合、1×N構造のNは各スチールコードに含まれる素線の本数に相当し、いずれの場合もN本の素線を、その長手方向と垂直な断面において、素線が1つの円の円周方向に沿って単層となるように配列し撚り合せた構造を有する。
【0028】
その結果、スチールコードが有する素線の本数が4本である1×4構造とすることで、他の1×N構造のスチールコードと比較して、特にスチールコードのコード径を小さくし、質量を低減できることが確認できた。このため、本実施形態のスチールコードを1×4構造とすることで、該スチールコードを用いたタイヤの軽量化を特に図ることが可能になり好ましい。
【0029】
本実施形態のスチールコードに含まれる素線の直径、すなわち素線径は特に限定されないが、0.25mm以上0.45mm以下であることが好ましく、0.35mm以上0.42mm以下であることがより好ましい。
【0030】
素線径を0.25mm以上とすることで該素線を含むスチールコードについて、破断荷重を十分に高めることができる。
【0031】
また、素線径を0.45mm以下とすることで、スチールコードの質量を抑制できる。このため、該スチールコードを用いたタイヤを特に軽量化することができるため、好ましい。
【0032】
なお、後述する波付き素線についても素線径は上記素線径の好適な範囲を満たすことが好ましい。
【0033】
そして、本実施形態のスチールコードは、4本の素線のうち少なくとも1本が、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線であることが好ましい。
【0034】
本実施形態のスチールコードは、後述するように長手方向と垂直な断面が扁平形状となっている。しかしながら、長手方向と垂直な断面を扁平形状とした場合、素線間の隙間を十分に確保できず、スチールコード内部へのゴムの浸透度が低下する恐れがある。そこで、本実施形態のスチールコードにおいては、該スチールコードが有する4本の素線のうち少なくとも1本を、長手方向に沿って屈曲部と、非屈曲部とを繰り返し有する波付き素線としている。これにより、素線間に十分な隙間を形成し、本実施形態のスチールコードを用いてタイヤを形成する際に、スチールコード内部へのゴム浸透度を高められる。このようにタイヤを形成する際のスチールコード内部へのゴム浸透度を高めることで、スチールコードに含まれる素線のゴムと接している面積を高め、素線とゴムとの密着性を高めることができる。
【0035】
タイヤを車等に装着して使用していると、水分等がゴムを透過し、タイヤ内部に浸入してくる場合があるが、上述のように、素線のゴムと接している面積を高めることで、素線表面が水分と接触、反応することを抑制できる。このため、タイヤ内部でのゴムと素線との密着性を高く維持することができ、タイヤの耐久性を高めることが可能になる。
【0036】
なお、本実施形態のスチールコードに含まれる波付き素線の本数の上限は特に限定されない。例えば、スチールコードに含まれる全ての素線を波付き素線とすることもできる。ただし、波付き素線の本数が多いと、例えばスチールコードの長手方向の端部等において、スチールコードの撚りが解け易くなり、外形形状を維持しにくくなる恐れもある。そこで、本実施形態のスチールコードが有する波付き素線の本数は、3本以下であることが好ましく、2本以下であることがより好ましい。
【0037】
ここで、波付き素線について説明する。
【0038】
図3に波付き素線30の構成例を示す。波付き素線30は、長手方向に沿って屈曲部31と、非屈曲部32とを交互に繰り返し有している。
【0039】
なお、
図3では屈曲部31において、90度に近い角度で屈曲した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、例えば90度未満もしくは90度より大きい角度で屈曲していても良い。
【0040】
波付き素線について、その具体的な波型形状は特に限定されるものではない。ただし、波付き素線の屈曲高さhが、波付き素線の素線径の240%以上280%以下であることが好ましい。
【0041】
なお、
図3に示す様に、波付き素線30を平面Sに置いた時の、平面Sから、平面Sから遠い側の屈曲部31Bまでの高さを屈曲高さhと定義する。なお、屈曲高さhを評価する際、波付き素線30は、
図3に示すように波付き素線30の屈曲部31、及び非屈曲部32を通る面が平面Sと垂直になるように配置する。
【0042】
そして、係る屈曲高さhを、波付き素線の素線径に対して240%以上とすることで、波付き素線は素線径に対して十分な屈曲高さを有していることになる。すなわち、波付き素線と、その他の素線との間に特に十分な隙間を形成することができる。このため、ゴム浸透度を高めることができ好ましい。
【0043】
また、屈曲高さhを、波付き素線の素線径に対して280%以下とすることで、スチールコードの長手方向の端部等においてスチールコードの撚りが解け、外形形状にくずれ等が生じることをより確実に防ぐことができるため、好ましい。
【0044】
波付き素線の屈曲高さhは、素線径に対して、260%以上280%以下であることがより好ましい。
【0045】
波付き素線において、屈曲部と、非屈曲部との間の繰り返しピッチは、特に限定されないが、例えば5.0mm以上30.0mm以下とすることが好ましく、5.0mm以上20.0mm以下とすることがより好ましい。
【0046】
屈曲部と非屈曲部との間の繰り返しピッチとは、同じ形状の屈曲部間の距離を意味し、基準となる屈曲部から2つ隣の屈曲部までのスチールコードの長手方向の長さを意味する。このため、
図3に示した例では、屈曲部と非屈曲部との間の繰り返しピッチPとは例えば屈曲部31Aから、その2つ隣の屈曲部31Cまでの距離を意味する。
【0047】
屈曲部と非屈曲部との間の繰り返しピッチを5.0mm以上とすることで素線に屈曲部と、非屈曲部とを形成し易く、正確に制御し易いため好ましい。また、屈曲部と非屈曲部との間の繰り返しピッチを30.0mm以下とすることで、屈曲部と非屈曲部とを比較的簡易な装置で製造することができ、製造コストを抑制できるため好ましい。
【0048】
波付き素線は、例えば
図4に示すように、プリフォーム41を複数個配置しておき、波付き素線とする素線42を図中のブロック矢印の方向に沿って複数のプリフォーム41間に通すことで形成することができる。プリフォーム41の配置や、大きさ、形状を変更することで、屈曲部の形状や、非屈曲部の長さ等を選択することができる。プリフォーム41は、例えばピン型(円柱型)や、歯車型の形状を有することができる。
【0049】
そして、本実施形態のスチールコードは、長手方向と垂直な断面が扁平形状を有することが好ましい。また、本実施形態のスチールコードは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合に、該楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内に位置することが好ましい。
【0050】
本実施形態のスチールコードの長手方向と垂直な断面における形状について、
図2を用いて説明する。
【0051】
本実施形態のスチールコード10は、
図2に示すように、長手方向と垂直な断面において幅よりも、厚みが小さい扁平形状を有することができる。なお、
図2中X軸方向が幅方向、Z軸方向が厚み方向となる。
【0052】
具体的には、本実施形態のスチールコード10は4本の素線11を撚り合せた形状を有しており、その長手方向と垂直な断面において、4本の素線11に外接する外接円は楕円Cとなっており、扁平な形状を有している。なお、楕円Cは短軸ASの長さLASが長軸ALの長さLALよりも短くなっている。
【0053】
スチールコードは例えばタイヤのベルト層に配置することができる。ベルト層はタイヤについての説明で後述するように、スチールコードと、ゴムとを有し、スチールコードはゴム内に埋め込まれている。ベルト層の厚みは、ゴム内にスチールコードを埋め込めるように選択できる。このため、スチールコードの長手方向と垂直な断面の形状を扁平形状とし、スチールコードの厚みを抑制することで、スチールコードを埋め込むために必要なゴムの厚みを抑制でき、ベルト層の厚みも抑制することができる。従って、断面形状が扁平形状のスチールコードとすることで、該スチールコードをベルト層に用いた場合に、ベルト層に含まれるゴムの量を抑制し、ベルト層を軽量化できる。さらには、該ベルト層を含むタイヤを軽量化することができる。
【0054】
しかし、本発明の発明者らの検討によれば、従来の長手方向と垂直な断面を扁平形状としたスチールコード(以下、単に「従来の扁平化したスチールコード」と記載する場合もある)では、厚みのばらつきが非常に大きくなっていた。このため、従来の扁平化したスチールコードを用いてタイヤを製造する場合、スチールコードの厚みが最大となる部分にあわせてベルト層の厚みを設定する必要があり、ベルト層を十分に薄くすることができなかった。従って、従来の扁平化したスチールコードを用いてタイヤを製造した場合、ベルト層や、該ベルト層を含むタイヤについて、十分に軽量化できていなかった。
【0055】
本発明の発明者らは係る原因について更なる検討を行った。その結果、従来の扁平化したスチールコードの長手方向と垂直な複数な断面において、素線に外接する楕円、すなわち楕円形状の外接円を描いた場合に、該楕円の短軸の傾きが、長手方向の位置により大きく変動していることが確認できた。具体的には、係る楕円の短軸の傾きをスチールコードの長手方向の任意の複数箇所で測定した場合に、短軸の傾きが例えば中央値±90度程度の範囲に分布していることが確認できた。すなわち、従来の扁平化したスチールコードでは長手方向と垂直な断面において素線に外接する楕円の短軸は、その傾きが、最大で180度程度ばらついていることが確認できた。そして、このように長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きが大きく変動することによって、スチールコードの厚みがばらついていることを見出した。
【0056】
従来の扁平化したスチールコードにおける、長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きと、スチールコードの厚みのばらつきとの関係について、
図5を用いて説明する。
【0057】
図5は、従来の扁平化したスチールコード50の、長手方向と垂直な断面における素線に外接する、短軸の傾きが異なる楕円C51と、楕円C52とを重ねて示した図である。楕円C51は、その短軸AS51の傾きが、短軸の傾きの基準となる、すなわち中央値となる位置での、長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円を示している。このため、楕円C51の短軸AS51の傾きを0度とする。
【0058】
また、楕円C52は、短軸AS52が短軸の傾きの基準から90度傾いた位置での、すなわち楕円C51の短軸AS51と、短軸AS52との間で形成する角度d5が90度となる位置での長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円を示している。
【0059】
このように、
図5は、従来の扁平化したスチールコード50の長手方向の選択した2つの位置における、長手方向と垂直な断面での素線に外接する楕円を重ね合せた図となる。
図5中、紙面の上下方向がスチールコードの厚み方向に相当する。なお、
図5ではスチールコードに含まれる素線は記載を省略している。
【0060】
図5に示したように、従来の扁平化したスチールコード50では、長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きが中央値である0度となる位置においては、スチールコードの厚みT51は楕円C51の短軸AS51の長さと同じになる。
【0061】
しかしながら、長手方向と垂直な面における素線に外接する楕円の短軸が中央値(0度)よりも傾き、楕円C52となる位置においてはスチールコードの厚み方向に沿って、楕円C52の長軸が配置されることになる。従って、該位置における従来の扁平化したスチールコード50の厚みT52は、楕円C52の長軸の長さと同じになる。
【0062】
このように、従来の扁平化したスチールコード50では長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きが中央値±90度程度の範囲に分布し、そのばらつきが非常に大きくなっていた。このため、従来の扁平化したスチールコード50では、厚みが例えば
図5中の楕円C51の短軸AS51の長さに相当する厚みT51から、楕円C52の長軸の長さに相当する厚みT52まで、その長手方向の位置により、大きくばらつくことになっていた。
【0063】
一方、本実施形態のスチールコードは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円、すなわち楕円形状の外接円を描いた場合に、該楕円の短軸の傾きを中央値±30度以内としている。ここで、本実施形態のスチールコードの厚みの最大値、最小値ついて、
図6を用いて説明する。
【0064】
図6は、本実施形態のスチールコード60の、長手方向と垂直な断面における4本の素線に外接する、短軸の傾きが異なる楕円C61と、楕円C62とを重ねて示した図である。楕円C61は、その短軸AS61の傾きが、短軸の傾きの基準となる、すなわち中央値となる位置での、長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円を示している。このため、楕円C61の短軸AS61の傾きを0度とする。
【0065】
楕円C62は、短軸AS62が短軸の傾きの基準から30度傾いた位置での、すなわち楕円C61の短軸AS61と、短軸AS62との間で形成する角度d6が最大の30度となる位置での長手方向と垂直な断面における4本の素線に外接する楕円である。
【0066】
このように、
図6は、本実施形態のスチールコード60の長手方向の選択した2つの位置における、長手方向と垂直な断面での4本の素線に外接する楕円を重ね合せた図となる。
図6中、紙面の上下方向がスチールコードの厚み方向に相当する。なお、
図6ではスチールコードに含まれる素線は記載を省略している。
【0067】
図6に示した本実施形態のスチールコード60では、楕円C61の位置においては、スチールコードの厚みT61は短軸AS61と同じになり、最小値となる。また、4本の素線に外接する楕円の短軸が最大30度傾いた楕円C62の場合に、スチールコード60の厚みは最大値をとるが、この場合でもスチールコードの厚みT62は、該楕円C62の長軸長よりも短くなっている。このため、
図5に示した従来の扁平化したスチールコード50の場合と比較して厚みは大きく変化せず、最大厚みも抑制できていることが分かる。
【0068】
このように、本実施形態のスチールコードでは、長手方向と垂直な複数の断面における4本の素線に外接する楕円の短軸の傾きを、その中央値±30度以内とし、該楕円の短軸の傾きの変動を抑制している。このため、本実施形態のスチールコードではその厚みのばらつきや、最大厚みを十分に抑制できる。
【0069】
従って、本実施形態のスチールコードをタイヤの部材に用い、本実施形態のスチールコードの厚みの最大値に合わせてベルト層を形成した場合、従来の扁平化したスチールコードを用いた場合と比較してベルト層の厚みを抑制でき、ベルト層を薄く、軽量にできる。その結果、該ベルト層を含むタイヤについても軽量化を図ることが可能になる。
【0070】
なお、スチールコードの長手方向と垂直な複数の断面における4本の素線に外接する楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内であるとは、該短軸の傾きが中央値を基準として-30度以上+30度以下の、合計で60度以内の範囲内に分布していることを意味する。以下、短軸の傾きの中央値を基準とした場合のプラス、またはマイナス側への最大変動幅、すなわち上述のように中央値±30度以内の場合には、該30度のことを「短軸の傾きの中央値からの最大変動幅」と記載する場合もある。
【0071】
本実施形態のスチールコードにおいては、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の短軸の傾きは中央値±20度以内に位置することがより好ましく、中央値±15度以内に位置することがさらに好ましい。すなわち短軸の傾きの中央値からの最大変動幅は20度以下であることがより好ましく、15度以下であることがさらに好ましい。これは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の短軸の傾きの分布を中央値±20度以内、さらには中央値±15度以内とすることで特にスチールコードの厚みのばらつきや最大厚みを抑制できるからである。その結果、ベルト層や、該ベルト層を含むタイヤの軽量化を特に図ることができるからである。
【0072】
本実施形態のスチールコードの長手方向と垂直な複数の断面における4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の短軸の傾きの中央値からの最大変動幅の測定方法は特に限定されない。
【0073】
例えばスチールコードを透明樹脂に埋め込み、スチールコードの長手方向と垂直な面(断面)が露出するように、スチールコードの長手方向の任意の複数の位置で試料を切り出す。次いで、投影機を用いてそれぞれの断面に含まれる4本の素線に外接する楕円を描き、その短軸の傾きを測定することで求めることができる。
【0074】
また、例えばCT(コンピュータ断層撮影法:Computed Tomography)を用い、スチールコードの長手方向と垂直な断面画像を複数箇所で測定する。そして、係る断面画像に含まれる4本の素線に外接する楕円を描き、その短軸の傾きを測定することで求めることもできる。
【0075】
いずれの方法で測定する場合でも、例えばスチールコードの長手方向に沿った5cm以上25cm以下の範囲について、10点以上の測定点での断面において、素線に外接する楕円を描き、該楕円の短軸の傾きを測定し、短軸の傾きのばらつきを評価することが好ましい。なお、測定点の上限は特に限定されないが、例えば生産性の観点から250点以下とすることが好ましい。また、測定点はスチールコードの長手方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。
【0076】
ここまで説明したように、本実施形態のスチールコードは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合に、該楕円の短軸の傾きのばらつきを抑制している。このため、本実施形態のスチールコードはその厚みのばらつきを抑制できている。
【0077】
スチールコードの厚みのばらつきは、例えば標準偏差を平均値で除した値である変動係数により表すことができる。すなわち、スチールコードの厚みのばらつきは、スチールコードの長手方向に沿って配置した複数の測定点でスチールコードの厚みを測定し、該複数の測定点での厚みの標準偏差を、該複数の測定点での厚みの平均値で除した値である変動係数により表すことができる。そして、例えば、係る厚みの変動係数は0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましい。
【0078】
厚みの変動係数の下限値は特に限定さないが、例えば0以上とすることができる。
【0079】
厚みの変動係数が0.05以下のスチールコード場合、スチールコードの厚みのばらつきが特に抑制できていることを意味する。このため、係るスチールコードをタイヤの部材に用い、スチールコードの厚みの最大値に合わせてベルト層を形成した場合、ベルト層を特に薄く、軽量にすることができる。その結果、該ベルト層を含むタイヤについても特に軽量化を図ることが可能になる。
【0080】
本実施形態のスチールコードの厚みの変動係数は、例えば以下の手順により測定、算出できる。
【0081】
まず、本実施形態のスチールコードの長手方向に沿った5cm以上25cm以下の範囲について、5点以上15点以下の点で厚みを測定し、該測定値の平均値、及び標準偏差を求める。そして、標準偏差を平均値で割ることで変動係数を算出できる。
【0082】
なお、測定点はスチールコードの長手方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。
【0083】
スチールコードの厚みの測定についても、短軸の傾きの場合と同様に、スチールコードを透明樹脂に埋め込みスチールコードの長手方向と垂直な断面を切り出し、測定することができる。また、CTを用いてスチールコードの長手方向と垂直な断面画像を複数箇所で測定し、該断面の画像から厚みの測定を実施することもできる。
【0084】
ただし、測定に当たっては、まずスチールコードの長手方向と垂直な任意の1つの断面における、4本の素線に外接する楕円の短軸方向を厚み方向と設定する。そして、その他のスチールコードの長手方向と垂直な断面においては、係る設定した厚み方向の最大長さを測定することで各位置でのスチールコードの厚みを測定できる。
【0085】
本実施形態のスチールコードは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合に、該楕円の長軸長L
ALに対する、短軸長L
AS(
図2を参照)の比の平均値は特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。なお、長軸長L
ALとは4本の素線11に外接する楕円形状の外接円である楕円Cの長軸ALの長さを、短軸長L
ASとは楕円Cの短軸ASの長さをそれぞれ意味する。ただし、本実施形態のスチールコードは、上記楕円における長軸長に対する短軸長の比である短軸長/長軸長(L
AS/L
AL)の平均値が0.76以上0.82以下であることが好ましく、0.78以上0.80以下であることがより好ましい。
【0086】
これは、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の短軸長/長軸長の平均値を0.76以上とすることで、例えば本実施形態のスチールコードの端部等において、撚りが解けることをより確実に抑制できるからである。
【0087】
また、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の短軸長/長軸長の平均値を0.82以下とすることで、スチールコードの厚みを特に抑制でき、該スチールコードを用いたベルト層の厚みも十分に抑制できる。このため、該ベルト層を含むタイヤの軽量化を特に図ることができ、好ましいからである。
【0088】
本実施形態のスチールコードの、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合の、該楕円の長軸長LALに対する短軸長LASの比である短軸長/長軸長の平均値の測定、算出方法は特に限定さない。
【0089】
例えばスチールコードを透明樹脂に埋め込み、スチールコードの長手方向と垂直な面(断面)が露出するように、スチールコードの長手方向の任意の複数の位置で試料を切り出す。次いで、投影機を用いてそれぞれの断面に含まれる4本の素線に外接する楕円を描き、その短軸、及び長軸の長さを測定し、各断面での短軸長/長軸長を算出することができる。
【0090】
また、例えばCTを用い、スチールコードの長手方向と垂直な断面画像を複数箇所で測定する。そして、係る断面画像に含まれる4本の素線に外接する楕円を描き、短軸、及び長軸の長さを測定し、各断面での短軸長/長軸長を算出することができる。
【0091】
いずれの方法で測定する場合でも、複数の断面において短軸長/長軸長を測定する場合には、例えばスチールコードの長手方向に沿った5cm以上25cm以下の範囲について、10点以上の測定点での断面において、素線に外接する楕円を描き、該楕円の短軸長/長軸長を測定、算出することが好ましい。
【0092】
なお、測定点の上限は特に限定されないが、例えば生産性の観点から250点以下とすることが好ましい。また、測定点はスチールコードの長手方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。
【0093】
そして、得られた各断面における楕円の短軸長/長軸長の平均値を算出することができる。
【0094】
以上に説明した本実施形態のスチールコードによれば、タイヤの部材として用いることで、軽量性、及び耐久性に優れたタイヤを形成することができる。
[スチールコードの製造方法]
本実施形態のスチールコードの製造方法は特に限定されないが、例えば、本実施形態のスチールコードの製造方法は以下の工程を有することができる。
【0095】
4本の素線を撚り合せる撚り工程。
撚り工程で得られたスチールコードを、その厚み方向に沿って押圧し、扁平化する扁平化工程。
【0096】
撚り工程では、常法に従って、撚線機により素線を撚り合わすことで実施できるため、具体的な説明はここでは省略する。なお、撚り工程に供給する4本の素線のうち、少なくとも1本は波付き素線とすることが好ましい。
【0097】
扁平化工程では、例えば
図7に示す扁平化装置70を用いてスチールコードをその厚み方向に沿って押圧し、扁平化することができる。
【0098】
扁平化装置70は、基台71と、基台71の上に設けられた第1扁平化ローラー部73を有することができる。第1扁平化ローラー部73は1つのローラーから構成することもできるが、
図7に示すように、複数の第1扁平化ローラー73A~73Dを有することもできる。なお、複数の第1扁平化ローラーを配置する場合においてもその数は特に限定されない。第1扁平化ローラー部73に含まれる第1扁平化ローラー73A~73Dの回転軸731A~731Dは、基台71に対して垂直方向、すなわち図中のZ軸方向に延びている。
【0099】
また、扁平化装置70は、基台72と、基台72の上に設けられた第2扁平化ローラー部74を有することができる。第2扁平化ローラー部74は、1つのローラーから構成することもできるが、
図7に示すように、複数の第2扁平化ローラー74A~74Cを有することもできる。なお、複数の第2扁平化ローラーを配置する場合においてもその数は特に限定されない。第2扁平化ローラー部74に含まれる複数の第2扁平化ローラー74A~74Cの回転軸741A~741Cは、基台72に対して垂直方向、すなわち図中のZ軸方向に延びるように構成できる。
【0100】
そして、第1扁平化ローラー部73と、第2扁平化ローラー部74との間に撚り工程で作製した4本の素線を撚り合せたスチールコード75を例えば図中のX軸方向に沿って供給する。供給されたスチールコード75を、第1扁平化ローラー部73と、第2扁平化ローラー部74とにより、図中のY軸方向に沿って押圧することで、扁平化を行うことができる。具体的には、第1扁平化ローラー部73は、スチールコード75を押圧するようにブロック矢印732に沿って、第2扁平化ローラー部74は、スチールコード75を押圧するようにブロック矢印742に沿って、スチールコード75を押圧できる。
【0101】
本発明の発明者らの検討によれば、スチールコードは複数本の素線を長手方向に沿って螺旋状に撚り合せているため、厚み方向に沿って押圧する際に、中心軸を回転軸として、その周方向に沿って回転し易くなっている。なお、ここでいう中心軸とは、扁平化する前のスチールコードの長手方向と垂直な面での中心を通り、長手方向と平行な軸を意味する。
【0102】
係るスチールコードの回転について何ら認識していなかった従来の扁平化したスチールコードの製造方法では、扁平化処理を行う際にスチールコードが中心軸を回転軸として周方向に沿って大きく回転していた。このため、既述の様に長手方向と垂直な断面における素線に外接する楕円の短軸の傾きが、長手方向の位置により大きく変動し、ばらついていた。
【0103】
そこで、本実施形態のスチールコードを製造するに当っては、扁平化工程において、扁平化装置によりスチールコードを扁平化する際に、スチールコードが中心軸を回転軸として回転する程度を抑制することが好ましい。扁平化工程におけるスチールコードの中心軸を回転軸とした回転は、特に中央値±30度以内であることが好ましく、中央値±20度以内であることがより好ましく、中央値±15度以内であることがさらに好ましい。
【0104】
係る回転を抑制する方法は特に限定されず、任意に選択できる。
【0105】
例えば既述の扁平化装置70の第1扁平化ローラー部73、及び第2扁平化ローラー部74のスチールコード75と接する面に、スチールコード75の外形に対応した溝を形成し、スチールコード75が回転しないように構成することができる。例えば第1扁平化ローラー部73のスチールコード75と接する面と、第2扁平化ローラー部74のスチールコード75と接する面とで異なる形状の溝を形成することで、特にスチールコードの回転を抑制できる。
【0106】
〔タイヤ〕
次に、本実施形態におけるタイヤについて
図8、
図9に基き説明する。
【0107】
本実施形態のタイヤは、既述のスチールコードを含むことができる。
【0108】
図8は、本実施形態に係るタイヤ81の周方向と垂直な面での断面図を示している。
図8ではCL(センターライン)よりも左側部分のみを示しているが、CLを対称軸として、CLの右側にも連続して同様の構造を有している。
【0109】
図8に示すように、タイヤ81は、トレッド部82と、サイドウォール部83と、ビード部84とを備えている。
【0110】
トレッド部82は、路面と接する部位である。ビード部84は、トレッド部82よりタイヤ81の内径側に設けられている。ビード部84は、車両のホイールのリムに接する部位である。サイドウォール部83は、トレッド部82とビード部84とを接続している。トレッド部82が路面から衝撃を受けると、サイドウォール部83が弾性変形し、衝撃を吸収する。
【0111】
タイヤ81は、インナーライナー85と、カーカス86と、ベルト層87と、ビードワイヤ-88とを備えている。
【0112】
インナーライナー85は、ゴムで構成されており、タイヤ81とホイールとの間の空間を密閉する。
【0113】
カーカス86は、タイヤ81の骨格を形成している。カーカス86はポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの有機繊維あるいはスチールコードと、ゴムと、により構成されている。
【0114】
ビードワイヤ-88は、ビード部84に設けられている。ビードワイヤ-88は、カーカスに作用する引っ張り力を受け止める。
【0115】
ベルト層87は、カーカス86を締め付けて、トレッド部82の剛性を高めている。
図8に示した例では、タイヤ81は2層のベルト層87を有している。
【0116】
図9は、2層のベルト層87を模式的に示した図である。
図9は、ベルト層87の長手方向、すなわちタイヤ81の周方向と垂直な面での断面図を示している。
【0117】
図9に示したように、2層のベルト層87は、タイヤ81の径方向に重ねあわされている。各ベルト層87は、複数本のスチールコード91と、ゴム92とを有している。複数本のスチールコード91は、一列に並列されている。スチールコード91としては既述のスチールコードを用いることができる。
【0118】
なお、既述のスチールコードは長手方向と垂直な断面が扁平形状を有しており、スチールコードの厚み方向が、ベルト層の厚み方向と一致するように配置することが好ましい。スチールコードの厚み方向とは、例えばスチールコードの長手方向と垂直な任意の一断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた際の短軸方向とすることができる。
【0119】
そして、ゴム92は、スチールコード91を被覆しており、個々のスチールコード91の全周はそれぞれゴム92で覆われている。スチールコード91はゴム92の中に埋め込まれている。
【0120】
既述のスチールコードは、長手方向と垂直な断面が扁平形状であり、厚みのばらつきや、最大厚みを抑制している。このため、ベルト層87においてスチールコード91の下部に配置するゴム92の厚さである第1ゴム厚みt1と、スチールコード91の上部に配置するゴム92の厚さである第2ゴム厚みt2とを薄くしても、スチールコード91が露出することを抑制できる。従ってベルト層87全体の厚みを薄くできる
このように、本実施形態のタイヤによれば、既述のスチールコード91を含むベルト層87全体の厚みを抑制することができ、ベルト層87を軽量化することが可能になる。このため、係るベルト層を含む本実施形態のタイヤについても軽量化することができる。
【0121】
また、既述の様に、既述のスチールコードは、該スチールコードを用いてタイヤを形成する際のスチールコード内部へのゴムの浸透度が高くなっている。このため、スチールコードに含まれる素線のゴムと接している面積を高め、素線とゴムとの密着性が高められている。そして、タイヤを車等に装着して使用していると、水分等がゴムを透過し、タイヤ内部に進入する場合があるが、本実施形態のタイヤは、上述のように素線のゴムと接している面積が高いため、素線表面が水分と接触、反応することを抑制できる。このため、タイヤ内部でのゴムと素線との密着性を高く維持することができ、耐久性に優れたタイヤとすることができる。
【0122】
本実施形態のタイヤに含まれるスチールコードは、ゴムの浸透度が高いことが好ましく、例えば70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なおゴム浸透度は高い方が好ましいことから上限値は特に限定されず、例えば100%以下とすることができる。ゴム浸透度の評価方法については、実験例において後述する。
【0123】
本実施形態のタイヤに含まれるスチールコードのゴム浸透度が70%以上の場合、スチールコードの内部にまで十分にゴムが浸透しており、タイヤの耐久性を特に高めることができるため好ましい。
【0124】
本実施形態のタイヤに含まれるスチールコードのゴム浸透度は、波付き素線の本数や屈曲高さh等により選択することができる。
【0125】
以上に説明した本実施形態のタイヤによれば、軽量性、及び耐久性に優れたタイヤとすることができる。そして、軽量性に優れることから、ドラムにタイヤを押し付けて回転させる際に発生する力である転がり抵抗を抑制できる。また、タイヤの横滑り角に対するコーナーリングフォースの立ち上がり勾配を示すコーナーリングパワーを高くすることができる。すなわちタイヤを装着した車の操縦安定性を高めることができる。
【0126】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【実施例】
【0127】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実験例において作製したスチールコード、タイヤの評価方法について説明する。
(1)スチールコードの評価
(1-1)厚みの変動係数
各実験例で作製したスチールコードについて、長手方向の5つの測定点でスチールコードの厚みを測定し、その平均値を該スチールコードの厚みとした。
【0128】
具体的にはまず、各実験例で作製したスチールコードの長手方向に沿って15cmの範囲について、長手方向に沿って等間隔に配置した5つの測定点で厚みを測定した。
【0129】
厚みの測定に当たっては、CT(島津製作所製 型式:inspeXio SMX-225CT)を用い、上記測定点における断面画像を撮影した。そして、任意に選択した1つの断面における、4本の素線に外接する楕円の短軸方向を厚み方向として設定した。次いで、各断面において、設定した厚み方向のスチールコードの最大長さを測定することで各断面でのスチールコードの厚みを測定した。
【0130】
次いで、5つの測定点での厚みを用い、厚みの変動係数を求めた。変動係数は、5つの測定点での厚みの測定値を用いて算出した標準偏差を、平均値で除した値となる。
(1-2)短軸の傾きの中央値からの最大変動幅、長手方向と垂直な複数の断面における4本の素線に外接する楕円の短軸長/長軸長の平均値
まず、各実験例で作製したスチールコードについて、CTを用いて、長手方向と垂直な断面の断面形状の測定を行った。具体的には、スチールコードの長手方向に沿って110mmの範囲に渡って、0.5mmずつ離れた測定点で断面画像を撮影した。
【0131】
そして、得られた各断面について、4本の素線に外接する楕円を書き、該楕円の短軸の傾きを求め、短軸の傾きの中央値からの最大変動幅を算出した。
【0132】
また、短軸の傾きの中央値からの最大変動幅を算出する際に、CTを用いて測定した断面画像を用いて、各断面における4本の素線に外接する楕円の短軸長/長軸長を算出した。具体的には、CTを用いて測定した各断面画像において描いた4本の素線に外接する楕円の短軸長と、長軸長とを求め、短軸長/長軸長を算出した。そして、各断面画像について算出した短軸長/長軸長の平均値を算出した。
(2)タイヤの評価
(2-1)ゴム浸透度
各実験例で作製したタイヤからカッターナイフでスチールコードを取出した。
【0133】
そして、取出したスチールコードについて、1本の波付き素線を除去した。1本の波付き素線を除去することで露出した領域の幅方向の中央線に沿って100mmの観察長さのうち、ゴムで被覆されている部分の長さの割合を百分率で算出し、ゴム浸透度とした。なお、実験例17では任意に選択した1本の素線を除去した点以外は同様にしてゴム浸透度を評価した。
【0134】
ゴム浸透度は数値が大きいほどゴム浸透性に優れていることを意味する。
(2-2)転がり抵抗
各実験例で作製したタイヤについて、転がり抵抗試験機を用い、ISO28580の規格に準拠して、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
【0135】
使用リム:5.5J
内圧:525kPa
荷重:15.74kN
速度:80km/h
そして、実験例14に係るタイヤの転がり抵抗を100として、その他の実験例で作製したタイヤの転がり抵抗を指数表示している。指数が小さいほど転がり抵抗に優れていることを意味する。
(2-3)タイヤの耐久性
各実験例で作製したタイヤを正規リム(サイズ:5.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を525kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、15.74kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を、測定した。ただし、30000km走行した時点で、損傷がなければ試験を終了させた。上記試験の結果を、30000km走行した場合を100とした指数として、示している。指数が大きいほど、タイヤの耐久性に優れていることを意味する。
(2-4)コーナーリングパワー
フラットベルトマシンのベルト表面に紙やすりを貼り付けて路面にみたて、これに各空気入りタイヤを速度60km/hで、キャンバー角を0度、荷重5kNで押し付けて、スリップ角を0度から1度まで変化させた際の傾きをコーナーリングパワーとして計測した。なお、キャンバー角は、フラットベルトマシンのベルト表面に対する鉛直面と、タイヤの径方向との間に形成される角を意味し、CA(Camber Angle)と表記される場合もある。また、スリップ角は、進行方向とタイヤの向いている方向との間に形成される角を意味し、SA(Slip Angle)と表記される場合もある。
【0136】
実験例14に係るタイヤのコーナーリングパワー特性を100として、その他の実験例で作製したタイヤのコーナーリングパワー特性を指数表示した。なお、指数が大きいほど、コーナーリングパワー特性に優れていることを意味する。
(2-5)ベルト層質量
各実験例でタイヤを製造する際に作製した1層のベルト層の質量を測定した。実験例14においてタイヤを製造する際に作製したベルト層の質量を100として、その他の実験例においてタイヤを製造する際に作製したベルト層の質量を指数表示している。このため、指数が小さいほど軽量なベルト層であることを意味している。なお、各実験例で評価したベルト層を含む各実験例のタイヤについても同様の傾向を示すことが確認している。
【0137】
以下に各実験例におけるスチールコード、及びタイヤの製造条件を説明する。実験例1~13が実施例、実験例14~17が比較例になる。
[実験例1]
まず、以下の手順により、スチールコードを製造した。
【0138】
素線径が0.415mmの鋼製の素線を4本撚り合せ、撚り構成が1×4構造のスチールコードを作製した(撚り工程)。なお、4本の素線のうち1本の素線については、素線径に対する屈曲高さhの割合が260%、屈曲部と非屈曲部との間の繰り返しピッチPが12mmとなるように、屈曲部と非屈曲部とを形成した波付き素線を用いた。
【0139】
1×4構造については
図1、
図2を用いて、屈曲高さh、及び繰り返しピッチPについては
図3を用いて既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0140】
4本の素線を撚り合せたスチールコードについて、
図7に示した扁平化装置70に供給し、その長手方向と垂直な断面が扁平な形状となるように扁平化処理を行った(扁平化工程)。扁平化処理を行う際、第1扁平化ローラー部73、第2扁平化ローラー部74のスチールコードと接する面に、スチールコードの外形に対応した溝を形成し、スチールコードが回転しないように構成した。具体的には、第1扁平化ローラー部73のスチールコードと接する面と、第2扁平化ローラー部74のスチールコードと接する面とで異なる形状の溝を形成しておいた。そして、スチールコードの回転角度が±20度以内に収まるように、スチールコードの位置を確認しながら扁平化処理を実施した。
【0141】
以上により、本実験例のスチールコードを作製し、スチールコードについて既述の評価を行った。
【0142】
次に、作製したスチールコードを用いてタイヤを作製した。
【0143】
まず、ゴム成分と、添加剤とを含むゴム組成物を用意した。ゴム組成物は、ゴム成分として天然ゴムを100質量部含む。そして、ゴム組成物は添加剤として、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを60質量部、硫黄を6質量部、加硫促進剤として1質量部、酸化亜鉛10質量部、有機酸コバルトとしてステアリン酸コバルトを1質量部の割合で含有する。
【0144】
上記スチールコード、及びゴム組成物を用いて、
図8、
図9を用いた構造を有し、サイズが225/40R18である空気入りタイヤを作製した。
【0145】
なお、上記タイヤを作製する際、加硫は、温度が160℃、圧力が25kgf/cm2、ECU×時間が58となるようにして実施した。
【0146】
上記ECU(Equivalent Cure Unit:等価加硫量)は、以下の式(1)により算出することができる。
ECU=exp((-E/R)×(1/T-1/T0))・・・(1)
式(1)中のEは活性化エネルギー、Rは一般ガス定数、T0は基準温度、Tは加硫温度となり、それぞれE=20kcal/mol、R=1.987×0.001kcal/mol・deg、T0=141.7℃となる。
【0147】
また、ECU×時間における時間は、加硫時間を意味しており、単位は分となる。
【0148】
得られたタイヤについて、既述の評価を行った。スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例2、実験例3]
スチールコードの扁平化処理を行う際、スチールコードの回転角度が実験例2は中央値±15度以内に収まるように、実験例3は中央値±30度以内に収まるように確認しながら実施した点以外は、実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0149】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0150】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例4、実験例5]
スチールコードを作製する際、4本の素線の内、実験例4は2本の素線を波付き素線とし、実験例5は3本の素線を波付き素線とした。以上の点以外は実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0151】
なお、実験例4、実験例5で作製したいずれのスチールコードも端部における撚りの解けは確認されず、スチールコードの外形形状を保持できていることを確認できた。
【0152】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0153】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例6~実験例8]
スチールコードを作製する際、波付き素線について、素線径に対する屈曲高さhの割合を実験例6は230%、実験例7は240%、実験例8は280%とした。以上の点以外は実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0154】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0155】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例9~実験例11]
スチールコードの扁平化処理を行う際、長手方向と垂直な断面における4本の素線に外接する楕円の短軸長/長軸長の平均値が実験例9は0.77、実験例10は0.81、実験例11は0.85となるように、第1扁平化ローラー部73、及び第2扁平化ローラー部74による押圧の程度を変更した。以上の点以外は、実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0156】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0157】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例12、実験例13]
スチールコードを作製する際、素線径が実験例12は0.27mm、実験例13は0.45mmの素線を用いた。以上の点以外は実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0158】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0159】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例14]
スチールコードの扁平化処理を行う際、スチールコードの回転角度が±40度以内に収まるようにした点以外は、実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0160】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0161】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例15]
スチールコードの扁平化処理を行う際、スチールコードの回転の程度については特に調整せず、扁平化装置70の第1扁平化ローラー部73のスチールコードと接する面と、第2扁平化ローラー部74のスチールコードと接する面とに同じ形状の溝を形成した。以上の点以外は、実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0162】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0163】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例16]
スチールコードについて扁平化処理を行わなかった点以外は、実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0164】
なお、得られたスチールコードの長手方向と垂直な断面の形状を確認したところ、4本の素線に外接する外接円は真円であり、扁平形状とはなっていなかった。
【0165】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0166】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
[実験例17]
スチールコードを作製する際、4本の素線全てについて波付き素線を用いず、屈曲部を有さない直線状の素線を用いた点以外は実験例1と同様にしてスチールコードを作製し、評価を行った。
【0167】
また、得られたスチールコードを用いて、実験例1と同様にしてタイヤを作製し、評価を行った。
【0168】
スチールコード、及びタイヤの評価結果を表1に示す。
【0169】
【表1】
表1に示した結果によると、実験例1~実験例13については、ベルト層質量の指数が100未満になっていることを確認できた。これらの実験例のスチールコードは、長手方向と垂直な断面を扁平形状とし、長手方向と垂直な複数の断面において、4本の素線に外接する楕円を描いた場合に、楕円の短軸の傾きが中央値±30度以内に位置している。このためスチールコードの厚みのばらつきや、最大厚みを抑制できたためと考えられる。
【0170】
また、実験例1~実験例13では転がり抵抗の指数が100未満と小さくなり、コーナーリングパワーの指数が100を超えて大きくなることを確認できた。これはタイヤの軽量化に伴い得られた特性であると考えられる。
【0171】
また、実験例1~実験例13ではタイヤの耐久性の指数が100になっていることを確認できた。これは4本の素線のうち、波付き素線を1本以上とすることにより、タイヤを製造する際のゴム浸透度が高くなったためと考えられる。
【符号の説明】
【0172】
10、50、60、75、91 スチールコード
11、42 素線
30 波付き素線
31、31A、31B、31C 屈曲部
32 非屈曲部
41 プリフォーム
70 扁平化装置
71、72 基台
73 第1扁平化ローラー部
73A、73B、73C、73D 第1扁平化ローラー
74 第2扁平化ローラー部
74A、74B、74C 第2扁平化ローラー
731A~731D、741A~741C 回転軸
732、742 ブロック矢印
81 タイヤ
82 トレッド部
83 サイドウォール部
84 ビード部
85 インナーライナー
86 カーカス
87 ベルト層
92 ゴム
AS、AS51、AS52、AS61、AS62 短軸
AL 長軸
C、C51、C52、C61、C62 楕円
d5、d6 角度
LAL 長軸長
LAS 短軸長
P 繰り返しピッチ
S 平面
T51、T52、T61、T62 厚み
t1 第1ゴム厚み
t2 第2ゴム厚み