(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物を有効成分とする治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220916BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020539520
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033595
(87)【国際公開番号】W WO2020045461
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018160014
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】入江 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 弥生
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
(式中、
Xは、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基を示し;
Yは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)を示し;
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ
1とZ
2、又はZ
3とZ
4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wは、-CH
2-、酸素原子又は-NH-を示し;
nは、0から2の整数を示し;
R
1は、置換基を有していても良いアミノ基を示し;
R
2及びR
3は、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR
2とR
3はこれらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R
4、R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基を示す。)
で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を有効成分とする、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療剤
であって、
前記ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミドである、治療剤。
【請求項2】
他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によって獲得された耐性又は難治性である、請求項
1記載の治療剤。
【請求項3】
他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によらずに本来備わった耐性又は難治性である、請求項
1記載の治療剤。
【請求項4】
HER2阻害剤が、抗HER2抗体である、請求項
2又は
3のいずれか1項記載の治療剤。
【請求項5】
抗HER2抗体がトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、及びペルツズマブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項
4記載の治療剤。
【請求項6】
下記一般式(I)
【化3】
(式中、
Xは、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基を示し;
Yは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)を示し;
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ
1とZ
2、又はZ
3とZ
4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wは、-CH
2-、酸素原子又は-NH-を示し;
nは、0から2の整数を示し;
R
1は、置換基を有していても良いアミノ基を示し;
R
2及びR
3は、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR
2とR
3はこれらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R
4、R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基を示す。)
で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を有効成分とする、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療に使用するための医薬組成物
であって、
前記ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミドである、医薬組成物。
【請求項7】
他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によって獲得された耐性又は難治性である、請求項
6記載の医薬組成物。
【請求項8】
他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によらずに本来備わった耐性又は難治性である、請求項
6記載の医薬組成物。
【請求項9】
HER2阻害剤が、抗HER2抗体である、請求項
7又は
8記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗HER2抗体がトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、及びペルツズマブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項
9記載の医薬組成物。
【請求項11】
他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療剤の製造のための、
下記一般式(I)
【化4】
(式中、
Xは、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基を示し;
Yは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)を示し;
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ
1とZ
2、又はZ
3とZ
4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wは、-CH
2-、酸素原子又は-NH-を示し;
nは、0から2の整数を示し;
R
1は、置換基を有していても良いアミノ基を示し;
R
2及びR
3は、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR
2とR
3はこれらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R
4、R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基を示す。)
で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の使用
であって、
前記ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミドである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を有効成分とする他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HER2(ErbB2とも呼ばれる)は、ErbBファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼである。
HER2は、がん原因遺伝子として考えられており(非特許文献1)、HER2の遺伝子増幅や変異、過剰発現等が様々ながんで報告されている(非特許文献2)。これらHER2の遺伝子異常・過剰発現を伴うがん細胞においては、HER2及び下流pathwayのシグナルが活性化することによりがん細胞の生存・増殖シグナル等が亢進していることが報告されている(非特許文献3、4)。
従って、HER2のキナーゼ活性を制御できる阻害剤は、がん細胞におけるHER2及び下流pathwayのシグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮することが想定されるため、がん治療薬として有用であると考えられる。
HER2を標的にした薬剤としては、既に抗HER2抗体(トラスツズマブ、ペルツズマブ)および抗HER2抗体―薬剤複合体(トラスツズマブ エムタンシン等)がHER2陽性乳癌における治療薬として承認されているが、これらの薬剤に対する耐性患者の出現も報告されており(非特許文献5、6)、これらの薬剤に耐性を示す患者に抗腫瘍効果を発揮する薬剤はがん治療薬として有用であると考えられる。
【0003】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン又はその塩は、HER2阻害剤として知られている(特許文献1)が、既存の薬剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対する抗腫瘍効果は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Oncogene,26(45),p.6469-6487(2007)
【文献】Cancer Treat. Rev.,40,p.770-780(2014)
【文献】Genes Cancer,4,p.187-195(2013)
【文献】Oncogene,19,p.1647-1656(2000)
【文献】Wien Med Wochenschr,160(19-20),p.506-512(2010)
【文献】Oncotarget、7(39),p.64431-64446(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような状況に鑑み、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍を治療するための抗腫瘍剤が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、次の〔1〕~〔9〕を含む。
【0008】
〔1〕下記一般式(I)
【0009】
【0010】
(式中、Xは、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基を示し;
Yは、-C(R4)=C(R5)(R6)を示し;
Z1、Z2、Z3及びZ4は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wは、-CH2-、酸素原子又は-NH-を示し;
nは、0から2の整数を示し;
R1は、置換基を有していても良いアミノ基を示し;
R2及びR3は、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3はこれらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6は、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基を示す。)
で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を有効成分とする、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療剤。
【0011】
〔2〕ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、一般式(I)中、
Xが、置換基としてハロゲン原子、又はC1-C6アルキル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基であり;
Yが、-C(R4)=C(R5)(R6)であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルキル基で置換されていても良いアミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、C1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、又はC6-C14芳香族炭化水素基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって、ヒドロキシル基で置換されていても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、又はジ(C1-C6アルキル)アミノ基で置換されていても良いC1-C6アルキル基である化合物である、〔1〕記載の治療剤。
【0012】
〔3〕ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、一般式(I)中、
Xが、ピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0013】
【化2】
であり;
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ
1とZ
2、又はZ
3とZ
4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH
2-、酸素原子又は-NH-であり;
nが、0であり;
R
1が、アミノ基であり;
R
2及びR
3が、同一または相異なって、メトキシ基、メチル基、又はフェニル基であるか、或いはR
2とR
3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって、ヒドロキシアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよい化合物である、〔1〕又は〔2〕記載の治療剤。
【0014】
〔4〕ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が次の(1)~(20)から選択される化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の治療剤。
(1)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-ブロモ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(2)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(3)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(4)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(5)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)ナフタレン-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(6)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(7)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(8)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(3-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(9)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(10)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(11)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(3-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(12)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-フルオロ-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(13)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(14)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(15)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(ジフルオロメトキシ)-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(16)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-(フルオロメトキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(17)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-ブロモ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(18)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(19)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(20)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2,5-ジクロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド。
【0015】
〔5〕ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物が、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミドである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の治療剤。
【0016】
〔6〕他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によって獲得された耐性又は難治性である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の治療剤。
【0017】
〔7〕他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性が、HER2阻害剤による治療によらずに本来備わった耐性又は難治性である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の治療剤。
【0018】
〔8〕HER2阻害剤が、抗HER2抗体である、〔6〕又は〔7〕のいずれかに記載の治療剤。
【0019】
〔9〕抗HER2抗体がトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、及びペルツズマブからなる群から選択される少なくとも1つである、〔8〕記載の治療剤。
【0020】
本発明の別の実施形態は、以下の態様にも関する。
【0021】
〔10〕上記一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を有効成分とする、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療に使用するための医薬組成物。
【0022】
〔11〕他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療剤の製造のための、上記一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の使用。
【0023】
〔12〕他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍の治療方法であって、上記一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の有効量を投与することを含む、治療方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対し、優れた抗腫瘍効果を奏する癌治療を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、Trastuzumab emtansine投与後の腫瘍再燃モデルにおけるCompound 1の抗腫瘍効果を示す。
【
図2】
図2は、既存の化学療法に耐性の乳癌患者に由来する組織を移植したマウスモデルにおけるCompound 1の抗腫瘍効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンを基本構造とする下記式(I)で表される化合物又はその塩が他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対し、優れた抗腫瘍効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
本発明において、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対し、優れた抗腫瘍効果を示す化合物は、下記一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩である。
【0028】
【0029】
(式中、X、Y、Z1~Z4、W、n、R1~R3は前記定義のとおりである。)
【0030】
本願明細書において、「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル-アルキルチオ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、シクロアルキル-アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、オキソ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、飽和若しくは不飽和複素環式基、芳香族炭化水素基、飽和複素環オキシ基等が挙げられ、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0031】
本願明細書において「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
本願明細書において「アルキル基」としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基等のC1-C6アルキル基が挙げられる。
【0033】
本願明細書において「ハロゲノアルキル基」としては、ハロゲン原子を1~13個有する炭素数1乃至6の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基(ハロゲノC1-C6アルキル基)であり、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、モノフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基等のハロゲノC1-C6アルキル基、好ましくはハロゲノC1-C4アルキル基が挙げられる。
【0034】
本願明細書において「シクロアルキル基」の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等のC3-C7シクロアルキル基が挙げられる。
【0035】
本願明細書において「シクロアルキル-アルキル基」としては、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基及びシクロヘプチルメチル基等のC3-C7シクロアルキル置換C1-C4アルキル基が挙げられる。
【0036】
本願明細書において「アラルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルオレニルメチル基等のC7-C13アラルキル基が挙げられる。
【0037】
本願明細書において「アルケニル基」としては、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、二重結合を少なくとも1個有する不飽和炭化水素基を意味し、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-、2-若しくは3-ブテニル基、2-、3-若しくは4-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、5-ヘキセニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基、3-メチル-3-ブテニル基等のC2-C6アルケニル基が挙げられる。
【0038】
本願明細書において「アルキニル基」としては、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、三重結合を少なくとも1個有する不飽和炭化水素基を意味し、例えばエチニル基、1-若しくは2-プロピニル基、1-、2-若しくは3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基等のC2-C6アルキニル基が挙げられる。
【0039】
本願明細書において「アルコキシ基」としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基等のC1-C6アルコキシ基が挙げられる。
【0040】
本願明細書において「ハロゲノアルコキシ基」としては、ハロゲン原子を1~13個有する炭素数1乃至6の直鎖状又は分枝鎖状アルコキシ基であり(ハロゲノC1-C6アルコキシ基)、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、フルオロエトキシ基、1,1,1-トリフルオロエトキシ基、モノフルオロ-n-プロポキシ基、パーフルオロ-n-プロポキシ基、パーフルオロ-イソプロポキシ基等のハロゲノC1-C6アルコキシ基、好ましくはハロゲノC1-C4アルコキシ基が挙げられる。
【0041】
本願明細書において「シクロアルコキシ基」としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びシクロヘプチルオキシ基等のC3-C7シクロアルコキシ基が挙げられる。
【0042】
本願明細書において「シクロアルキル-アルコキシ基」としては、シクロプロピルメトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロペンチルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基及びシクロヘプチルメトキシ基等のC3-C7シクロアルキル置換C1-C4アルコキシ基が挙げられる。
【0043】
本願明細書において「アラルキルオキシ基」としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フルオレニルメチルオキシ基等のC7-C13アラルキルオキシ基が挙げられる。
【0044】
本願明細書において「アルキルチオ基」としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のC1-C6アルキルチオ基が挙げられる。
【0045】
本願明細書において「シクロアルキル-アルキルチオ基」としては、シクロプロピルメチルチオ基、シクロブチルメチルチオ基、シクロペンチルメチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基及びシクロヘプチルメチルチオ基等のC3-C7シクロアルキル置換C1-C4アルキルチオ基が挙げられる。
【0046】
本願明細書において「モノアルキルアミノ基」としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等の直鎖状又は分枝鎖状のC1-C6アルキル基でモノ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0047】
本願明細書において「ジアルキルアミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジ(n-ペンチル)アミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基等の直鎖状又は分枝鎖状のC1-C6アルキル基でジ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0048】
本願明細書において「シクロアルキル-アルキルアミノ基」としては、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロブチルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基及びシクロヘプチルメチルアミノ基等のC3-C7シクロアルキル置換C1-C4アルキルアミノ基が挙げられる。
【0049】
本願明細書において「アシル基」は、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を意味する。
【0050】
本願明細書において「アルキルカルボニル基」としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、n-ペンチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の(C1-C6アルキル)カルボニル基が挙げられる。
【0051】
本願明細書において「アリールカルボニル基」としては、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、フルオレニルカルボニル基、アントリルカルボニル基、ビフェニリルカルボニル基、テトラヒドロナフチルカルボニル基、クロマニルカルボニル基、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルカルボニル基、インダニルカルボニル基及びフェナントリルカルボニル基等の(C6-C13アリール)カルボニル基が挙げられる。
【0052】
本願明細書において「アシルオキシ基」は、アルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基を意味する。
【0053】
本願明細書において「アルキルカルボニルオキシ基」としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、tert-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、イソペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基等の直鎖状又は分枝鎖状の(C1-C6アルキル)カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0054】
本願明細書において「アリールカルボニルオキシ基」としては、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、フルオレニルカルボニルオキシ基、アントリルカルボニルオキシ基、ビフェニリルカルボニルオキシ基、テトラヒドロナフチルカルボニルオキシ基、クロマニルカルボニルオキシ基、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルカルボニルオキシ基、インダニルカルボニルオキシ基及びフェナントリルカルボニルオキシ基等の(C6-C13アリール)カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0055】
本願明細書において「アルコキシカルボニル基」としては、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基及びヘキシルオキシカルボニル基等の(C1-C6アルコキシ)カルボニル基が挙げられる。
【0056】
本願明細書において「アラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基等の(C7-C13アラルキル)オキシカルボニル基が挙げられる。
【0057】
本願明細書において「飽和複素環式基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する飽和の複素環式基であり、具体的には、モルホリノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、4-メチル-1-ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、チアゾリジニル基、オキサゾリジニル基等が挙げられる。
【0058】
本願明細書において「不飽和複素環式基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する、単環式若しくは多環式の、完全不飽和又は部分不飽和の複素環式基であり、具体的には、イミダゾリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、トリアゾロピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、ジヒドロベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0059】
本願明細書において「芳香族炭化水素基」としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、テトラヒドロナフチル基等のC6-C14の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0060】
本願明細書において「飽和複素環オキシ基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する飽和複素環オキシ基であり、具体的には、モルホリニルオキシ基、1-ピロリジニルオキシ基、ピペリジノオキシ基、ピペラジニルオキシ基、4-メチル-1-ピペラジニルオキシ基、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、テトラヒドロチオフェニルオキシ基、チアゾリジニルオキシ基、オキサゾリジニルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
本明細書における基の記載において「CA-CB」とは、炭素数がA~Bの基であることを示す。例えば、「C1-C6アルキル基」は炭素数1~6のアルキル基を示し、「C6-C14芳香族炭化水素オキシ基」は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基が結合したオキシ基を示す。また「A~B員」とは、環を構成する原子数(環員数)がA~Bであることを示す。例えば、「4~10員環の飽和複素環式基」とは、環員数が4~10である飽和複素環式基を意味する。
【0062】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、Xは、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基を示す。ここで、「4~10員環の含窒素飽和複素環式基」は、窒素原子を少なくとも1個環内に含み、更に酸素原子及び硫黄原子から選択される同種又は異種のヘテロ原子を0~2個環内に含む、4~10員環の飽和複素環式基である。例えば、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、オクタヒドロキノリニレン基、オクタヒドロインドリレン基等が挙げられる。
好ましくは窒素原子を1個環内に含む4~8員環の飽和複素環式基であり、より好ましくはピロリジニル基、又はピペリジニル基であり、より好ましくは1,3-ピロリジニル基、又は1,3-ピペリジニル基であり、更に好ましくは1,3-ピペリジニル基である。
これらの4~10員環の含窒素飽和複素環式基に置換し得る「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C6アルキル基、又はアミノ基であり、より好ましくはハロゲン原子、又はC1-C6アルキル基であり、より好ましくはフッ素原子、又はメチル基であり、更に好ましくはフッ素原子である。
ハロゲン原子、又はC1-C6アルキル基で置換されていても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基は、好ましくはハロゲン原子、若しくはC1-C6アルキル基で置換されていても良いピロリジニル基、又はハロゲン原子、若しくはC1-C6アルキル基で置換されていても良いピペリジニル基であり、より好ましくはC1-C6アルキル基で置換されていても良いピロリジニル基、又はフッ素原子で置換されていても良いピペリジニル基であり、より好ましくはピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり、更に好ましくはピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基である。
【0063】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物中のXとして、好ましくは置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基であり、より好ましくは置換基としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C6アルキル基、又はアミノ基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基であり、より好ましくは置換基としてハロゲン原子、又はC1-C6アルキル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基であり、より好ましくは置換基としてハロゲン原子又はC1-C6アルキル基を有していても良いピロリジニル基、又は置換基としてハロゲン原子又はC1-C6アルキル基を有していても良いピペリジニル基であり、より好ましくは置換基としてC1-C6アルキル基を有していても良いピロリジニル基、又は置換基としてハロゲン原子を有していても良いピペリジニル基であり、より好ましくは置換基としてメチル基を有していても良いピロリジニル基、又は置換基としてフッ素原子を有していても良いピペリジニル基であり、より好ましくは置換基としてフッ素原子を有していても良いピペリジニル基であり、より好ましくはピペリジニル基である。
【0064】
Xで示される4~10員環の含窒素飽和複素環式基の窒素原子は、一般式(I)中の-COYのカルボニル基と結合しているのが好ましい。
【0065】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、Yは、-C(R4)=C(R5)(R6)を示す。R4、R5及びR6については後述する。
【0066】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、Z1、Z2、Z3及びZ4は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよい。
【0067】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「C2-C6アルケニル基」は、好ましくはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基であり、より好ましくはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロプロペニル基、又はシクロブテニル基であり、より好ましくはビニル基、又は1-プロペニル基、2-プロペニル基、又はイソプロペニル基であり、更に好ましくはビニル基である。
【0068】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基」における「C1-C6アルコキシ基」は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、又はブトキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はn-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はtert-ブトキシ基であり、更に好ましくはメトキシ基である。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基」は、好ましくはハロゲン原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基であり、より好ましくはフッ素原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基であり、より好ましくはフッ素原子で置換されていても良いメトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いエトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いプロポキシ基、フッ素原子で置換されていても良いブトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いペンチルオキシ基、又はフッ素原子で置換されていても良いヘキシルオキシ基であり、より好ましくはフッ素原子で置換されていても良いメトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いエトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いプロポキシ基、又はフッ素原子で置換されていても良いブトキシ基であり、より好ましくはフッ素原子で置換されていても良いメトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いエトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いn-プロポキシ基、フッ素原子で置換されていても良いイソプロポキシ基、フッ素原子で置換されていても良いn-ブトキシ基、フッ素原子で置換されていても良いsec-ブトキシ基、又はフッ素原子で置換されていても良いtert-ブトキシ基であり、更に好ましくは1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いメトキシ基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いエトキシ基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いn-プロポキシ基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いイソプロポキシ基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いn-ブトキシ基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いsec-ブトキシ基、又は1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いtert-ブトキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基、フルオロメトキシ基、又はジフルオロメトキシ基である。
【0069】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「C1-C6アルキル基」は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、更に好ましくはメチル基又はエチル基である。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示される。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」は、好ましくは無置換のC1-C6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はn-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0070】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いアミノ基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはC1-C6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される置換基を有していても良いアミノ基は、好ましくはモノ若しくはジアルキルアミノ基であり、より好ましくはモノ若しくはジ(C1-C6アルキル)アミノ基であり、より好ましくはジ(C1-C6アルキル)アミノ基であり、より好ましくはジ(C1-C4アルキル)アミノ基であり、更に好ましくはジメチルアミノ基である。
【0071】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基」における「C3-C7シクロアルキル基」は、好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はシクロヘプチル基であり、より好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基であり、更に好ましくはシクロプロピル基である。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示される。
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基」は、好ましくは無置換のC3-C7シクロアルキル基であり、より好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はシクロヘプチル基であり、更に好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基であり、特に好ましくはシクロプロピル基である。
【0072】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「C6-C14芳香族炭化水素基」は、好ましくはフェニル基又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0073】
Z1、Z2、Z3又はZ4で示される「不飽和複素環式基」は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する、単環式若しくは多環式の、完全不飽和又は部分不飽和の複素環式基であり、例えばイミダゾリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、トリアゾロピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、又はジヒドロベンゾフラニル基が挙げられ、好ましくは窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1個有する、単環式若しくは二環式である4~14員環の不飽和複素環式基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1個有する、単環式の4~6員環の完全不飽和複素環式基であり、より好ましくは酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の完全不飽和複素環式基であり、より好ましくはフリル基である。
【0074】
Z1とZ2、又はZ3とZ4が、これらが結合する炭素原子と一緒になって形成する「5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環」は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する、5~7員環の、飽和、完全不飽和又は部分不飽和の複素環である。
環内のヘテロ原子の数は、好ましくは0~2個であり、より好ましくは1~2個である。ヘテロ原子は、好ましくは窒素原子、酸素原子である。
5~7員環の飽和複素環又は不飽和複素環は、好ましくはピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ジオキソラン環であり、より好ましくはピリジン環、ジオキソラン環である。
Z1とZ2、又はZ3とZ4は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって形成する環としては、ベンゼン環も好ましい。
【0075】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物中のZ1、Z2、Z3及びZ4として、好ましくは同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は単環式若しくは二環式である4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、又は単環式若しくは二環式である4~14員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルキル基で置換されていても良いアミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、フッ素原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、モノ若しくはジ(C1-C6アルキル)アミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、1若しくは2個のフッ素原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、ジ(C1-C6アルキル)アミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、又はメチル基を示すか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成してもよい。
【0076】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、Wは、-CH2-、酸素原子又は-NH-を示す。Wは、好ましくは-CH2-又は酸素原子であり、より好ましくは-CH2-である。
【0077】
本発明において用いられる式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、nは0~2の整数を示す。nは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0078】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、R1は、置換基を有していても良いアミノ基を示す。ここでアミノ基に置換し得る「置換基」としては、前記のような置換基が例示される。
R1で示される置換基を有していても良いアミノ基は、好ましくは無置換のアミノ基である。
【0079】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、R2及びR3は、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3は、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよい。
【0080】
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基」における「C1-C6アルコキシ基」は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はtert-ブトキシ基であり、更に好ましくはメトキシ基である。
R2又はR3で示される置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基における「置換基」としては、前記のような置換基が例示される。
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基」は、好ましくは無置換のC1-C6アルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基であり、更に好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はtert-ブトキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0081】
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「C1-C6アルキル基」は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはC1-C6アルコキシ基であり、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はt・BR>・窒煤|ブトキシ基であり、更に好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基である。
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」は、好ましくは無置換のC1-C6アルキル基、又はC1-C6アルコキシ基置換のC1-C6アルキル基であり、より好ましくは無置換のC1-C6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基である。
置換基を有する場合、置換基の数は特に制限されないが、置換基がC1-C6アルコキシ基の場合は好ましくは1個である。
【0082】
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基」における「C6-C14芳香族炭化水素基」は、好ましくはフェニル基、又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
R2又はR3で示される「置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子で置換されていても良いC6-C14芳香族炭化水素基は、好ましくはフッ素原子、又は塩素原子で置換されていても良いフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又はトリクロロフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0083】
R2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって形成する「置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基」における「4~8員環の含窒素飽和複素環式基」は、窒素原子を少なくとも1個環内に含み、更に酸素原子及び硫黄原子から選択される同種又は異種のヘテロ原子を0~2個環内に含む、4~8員環の飽和複素環式基である。
4~8員環の含窒素飽和複素環式基は、好ましくは1個の窒素原子を含む4~8員環の飽和複素環式基であり、より好ましくはアゼチジニル基、ピロリジニル基又はピペリジニル基である。
「置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはヒドロキシル基である。
置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基は、好ましくはヒドロキシル基で置換されていても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基であり、より好ましくはアゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヒドロキシアゼチジニル基、ヒドロキシピロリジニル基、又はヒドロキシピペリジニル基であり、より好ましくはピロリジニル基、ピペリジニル基、又はヒドロキシアゼチジニル基である。
【0084】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物中のR2及びR3として、好ましくは同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、C1-C6アルコキシ基、置換基としてC1-C6アルコキシ基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基としてハロゲン原子を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、水素原子、C1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、又はC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基としてヒドロキシル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、C1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、又はC6-C14芳香族炭化水素基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基としてヒドロキシル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、メトキシ基、メチル基、フェニル基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって置換基としてヒドロキシル基を有していても良いアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよく、より好ましくは同一または相異なって、メトキシ基、メチル基、又はフェニル基を示すか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になってヒドロキシアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよく、より好ましくはメチル基である。
【0085】
本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、R4、R5及びR6は、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基を示す。
R4、R5又はR6で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「C1-C6アルキル基」は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。
R4、R5又はR6で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」における「置換基」としては、前記のような置換基が例示されるが、好ましくはジアルキルアミノ基、又は飽和複素環式基であり、より好ましくはジ(C1-C6アルキル)アミノ基、又は窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基であり、より好ましくはジ(C1-C4アルキル)アミノ基、又は窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基であり、更に好ましくはジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、1-ピペリジニル基、又は1-ピロリジニル基であり、特に好ましくはジメチルアミノ基である。
置換基の数は特に制限されないが、好ましくは1個である。
R4、R5、又はR6で示される「置換基を有していても良いC1-C6アルキル基」は、好ましくは置換基としてジ(C1-C6アルキル)アミノ基、又は窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基を有していても良いC1-C6アルキル基であり、より好ましくは置換基としてジ(C1-C4アルキル)アミノ基、又は窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基を有していても良いC1-C4アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、メチルイソプロピルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、1-ピペリジニルメチル基、又は1-ピロリジニルメチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、メチルイソプロピルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、又はジエチルアミノエチル基であり、更に好ましくはメチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、又はメチルイソプロピルアミノメチル基あり、特に好ましくはジメチルアミノメチル基である。
【0086】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物中のR4、R5及びR6として、好ましくは同一または相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基であり、より好ましくは水素原子、又は置換基としてジ(C1-C6アルキル)アミノ基若しくは窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基を有していても良いC1-C6アルキル基であり、より好ましくは水素原子、又は置換基としてジ(C1-C4アルキル)アミノ基若しくは窒素原子を有する4~8員環の飽和複素環式基を有していても良いC1-C4アルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、メチルイソプロピルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、1-ピペリジニルメチル基、又は1-ピロリジニルメチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、メチルイソプロピルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、又はジエチルアミノエチル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、ジメチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、又はメチルイソプロピルアミノメチル基あり、特に好ましくは水素原子、又はジメチルアミノメチル基である。
【0087】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、Yで示される-C(R4)=C(R5)(R6)は、好ましくは、
【0088】
【0089】
であり、特に好ましくは、
【0090】
【0091】
である。
【0092】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、好適な化合物は、
Xが、置換基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基であり;
Yが、-C(R4)=C(R5)(R6)であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、C6-C14芳香族炭化水素基、又は4~14員環の不飽和複素環式基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0から2の整数であり;
R1が、置換基を有していても良いアミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって、置換基としてヒドロキシル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基である、化合物又はその塩である。
【0093】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、置換基としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C6アルキル基、又はアミノ基を有していても良い4~10員環の含窒素飽和複素環式基であり;
Yが、-C(R4)=C(R5)(R6)であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いC3-C7シクロアルキル基、又は4~14員環の不飽和複素環式基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、置換基を有していても良いC1-C6アルコキシ基、置換基を有していても良いC1-C6アルキル基、又は置換基を有していても良いC6-C14芳香族炭化水素基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって、置換基としてヒドロキシル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していても良いC1-C6アルキル基である、化合物又はその塩である。
【0094】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、置換基としてハロゲン原子、又はC1-C6アルキル基を有していても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基であり;
Yが、-C(R4)=C(R5)(R6)であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルキル基で置換されていても良いアミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、C1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、又はC6-C14芳香族炭化水素基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になってヒドロキシル基で置換されていても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、又はジ(C1-C6アルキル)アミノ基で置換されていても良いC1-C6アルキル基である、化合物又はその塩である。
【0095】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、置換基としてC1-C6アルキル基を有していても良いピロリジニル基、又は置換基としてハロゲン原子を有していても良いピペリジニル基であり;
Yが、-C(R4)=C(R5)(R6)であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C2-C6アルケニル基、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルキル基で置換されていても良いアミノ基、C3-C7シクロアルキル基、又は酸素原子を1個有する、単環式の4~6員環の不飽和複素環式基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、又は5~7員環の飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、C1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキル基、又はC6-C14芳香族炭化水素基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になってヒドロキシル基で置換されていても良い4~8員環の含窒素飽和複素環式基を形成してもよく;
R4、R5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、又はジメチルアミノメチル基である、化合物又はその塩である。
【0096】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0097】
【0098】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、置換基としてフッ素原子を有していても良いメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、水素原子、メトキシ基、メチル基、又はフェニル基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になって、置換基としてヒドロキシル基を有していても良いアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよい、化合物又はその塩である。
【0099】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0100】
【0101】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、酸素原子、又は-NH-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、メトキシ基、メチル基、又はフェニル基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になってヒドロキシアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよい、化合物又はその塩である。
【0102】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0103】
【0104】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、又は酸素原子であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、同一または相異なって、メトキシ基、メチル基、又はフェニル基であるか、或いはR2とR3が、これらが結合する窒素原子と一緒になってヒドロキシアゼチジニル基、ピロリジニル基、又はピペリジニル基を形成してもよい、化合物又はその塩である。
【0105】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピロリジニル基、メチルピロリジニル基、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0106】
【0107】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、又は酸素原子であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、メチル基である、化合物又はその塩である。
【0108】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピペリジニル基、又はフルオロピペリジニル基であり;
Yが、
【0109】
【0110】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、ビニル基、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、シクロプロピル基、又はフリル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環、ピリジン環、又はジオキソラン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-、又は酸素原子であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、メチル基である、化合物又はその塩である。
【0111】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物において、より好適な化合物は、
Xが、ピペリジニル基であり;
Yが、
【0112】
【0113】
であり;
Z1、Z2、Z3及びZ4が、同一または相異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、又はメチル基であるか、或いはZ1とZ2、又はZ3とZ4が、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成してもよく;
Wが、-CH2-であり;
nが、0であり;
R1が、アミノ基であり;
R2及びR3が、メチル基である、化合物又はその塩である。
【0114】
本発明において用いられ得る具体的なピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物としては、国際公開第2017/038838号記載の実施例化合物1~実施例化合物79が例示できるが、これらには限定されない。
【0115】
より好適なピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物として、以下のものが例示できる:
(1)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-ブロモ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(2)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(3)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(4)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(5)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)ナフタレン-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(6)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(7)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(8)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(3-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(9)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(10)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(11)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(3-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(12)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-フルオロ-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(13)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(14)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(15)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-(ジフルオロメトキシ)-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(16)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-(フルオロメトキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(17)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-ブロモ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(18)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(19)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(5-クロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド、
(20)(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(2,5-ジクロロ-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド。
【0116】
さらにより好適なピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物は、表1に示す、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)-2,3-ジメチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(以下、「Compound 1」と称す)である。
【0117】
【0118】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物の塩は、薬学的に許容される塩であれば特に制限されず、有機化学の分野で用いられる慣用的なものを意味し、例えばカルボキシル基を有する場合の当該カルボキシル基における塩基付加塩、又はアミノ基若しくは塩基性の複素環基を有する場合の当該アミノ基若しくは塩基性複素環基における酸付加塩の塩類を挙げることができる。
該塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられる。 該酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、ギ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられる。
【0119】
なお、本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩は、例えば、国際公開第2017/038838号パンフレットに記載の方法に準じて合成することができる。ただし、一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の製造法又は合成例は、上記パンフレットに記載の方法に限定されるものではない。
【0120】
本発明において、「他の抗腫瘍剤」とは、本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物を除く、臨床において使用されている抗腫瘍剤である。「他の抗腫瘍剤」は、前記の抗腫瘍剤であれば特に限定されないが、好ましくはドキソルビシン、パクリタキセル、ベバシズマブ、カルボプラチン又は抗HER2抗体(トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン等)であり、より好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)、SYD985(Trastuzumab Duocarmazine)、XMT-1522、MEDI4276等の抗HER2抗体であり、より好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)、SYD985(Trastuzumab Duocarmazine)であり、より好ましくはトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン又はペルツズマブであり、より好ましくはトラスツズマブ又はトラスツズマブ エムタンシンである。「他の抗腫瘍剤」は、例えば標準治療において使用されている抗腫瘍剤であってよい。
【0121】
本発明において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性」とは、他の抗腫瘍剤による治療によって獲得された耐性又は難治性であってもよいし、他の抗腫瘍剤による治療によらずに本来備わった耐性又は難治性であってもよい。
「他の抗腫瘍剤による治療によって獲得された耐性又は難治性」として、好ましくはHER2阻害剤による治療によって獲得された耐性又は難治性であり、より好ましくは抗HER2抗体による治療によって獲得された耐性又は難治性であり、さらにより好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)又はSYD985(Trastuzumab Duocarmazine)による治療によって獲得された耐性又は難治性であり、さらにまたより好ましくはトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン又はペルツズマブによる治療によって獲得された耐性又は難治性であり、さらにまた一層より好ましくはトラスツズマブ又はトラスツズマブ エムタンシンによる治療によって獲得された耐性又は難治性である。
「他の抗腫瘍剤による治療によらずに本来備わった耐性又は難治性」として、好ましくはHER2阻害剤による治療によらずに本来備わったHER2阻害剤に対する耐性又は難治性であり、より好ましくは抗HER2抗体による治療によらずに本来備わった抗HER2抗体に対する耐性又は難治性であり、さらにより好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)又はSYD985(Trastuzumab Duocarmazine)による治療によらずに本来備わったトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)又はSYD985(Trastuzumab Duocarmazine)に対する耐性又は難治性であり、さらにまたより好ましくはトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン又はペルツズマブによる治療によらずに本来備わったトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン又はペルツズマブに対する耐性又は難治性であり、さらにまた一層より好ましくはトラスツズマブ又はトラスツズマブ エムタンシンによる治療によらずに本来備わったトラスツズマブ又はトラスツズマブ エムタンシンに対する耐性又は難治性である。
【0122】
本発明において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性」には、他の抗腫瘍剤に対する抵抗性、他の抗腫瘍剤に対する不耐容、他の抗腫瘍剤による化学療法後の増悪、他の抗腫瘍剤による化学療法後の再発が含まれる。
【0123】
本発明において、「HER2阻害剤」とは、本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物を除く、HER2を標的とする薬剤を示し、好ましくは標準治療において使用されているHER2阻害剤である。ここで、HER2阻害剤は、HER2を標的とする機能を有していれば、他の標的分子を標的とする機能をあわせ持っていてもよい。
HER2阻害剤として、例えばトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、ペルツズマブ、又はラパチニブが挙げられる。HER2阻害剤は、好ましくは抗HER2抗体であり、より好ましくはトラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、又はペルツズマブであり、さらにより好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)、SYD985(Trastuzumab Duocarmazine)であり、さらにまたより好ましくはトラスツズマブ、又はトラスツズマブ エムタンシンであり、さらにまた一層より好ましくはトラスツズマブである。
なお、抗HER2抗体の好ましい態様の1つとして、トラスツズマブ、又は抗体がトラスツズマブである抗体薬物複合体(例えば、トラスツズマブ エムタンシン、DS-8201、SYD985)が挙げられる。
【0124】
ここで、本明細書において「HER2」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物のHER2を含み、好ましくはヒトHER2である。また、「HER2」の語にはアイソフォームが含まれる。
【0125】
本発明において対象となる癌は、好ましくは一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩が抗腫瘍効果を発揮する癌であり、より好ましくはHER2が関与する悪性腫瘍である。ここで「HER2が関与する悪性腫瘍」とは、HER2の機能を欠失、抑制及び/又は阻害することによって、発症率の低下、症状の寛解、緩和、及び/又は完治する悪性腫瘍が挙げられる。
このような悪性腫瘍として、好ましくは、HER2過剰発現、HER2遺伝子増幅、又はHER2変異を有する悪性腫瘍である。対象となる前記の「悪性腫瘍」は特に制限はされないが、例えば、頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、血液癌、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍、中皮腫等が挙げられる。好ましくは、乳癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膀胱癌、又は結腸癌であり、より好ましくは、乳癌、胃癌、食道癌、胆道癌、卵巣癌、又は肺癌であり、より好ましくは、乳癌、又は胃癌である。
【0126】
本発明において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍」は、好ましくは他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性を有する上記の悪性腫瘍であり、より好ましくは他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性乳癌、又は他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性胃癌である。本発明の一実施形態において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍」は、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性乳癌であってよい。本発明の別の実施形態において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍」は、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性胃癌であってよい。また、本発明において、「他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍」は、例えば、トラスツマブ耐性腫瘍、トラスツズマブ エムタンシン耐性腫瘍、ペルツズマブ耐性腫瘍であってよいが、これらに限定されない。
【0127】
一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を医薬として用いるにあたっては、必要に応じて薬学的担体を配合し、治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等のいずれでもよい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0128】
薬学的担体としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤等、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調節剤・緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、矯味・矯臭剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0129】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アメ粉、ヒプロメロース等が挙げられる。
崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン等が挙げられる。
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
コーティング剤としては、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ヒプロメロース、白糖等が挙げられる。
溶剤としては、水、プロピレングリコール、生理食塩液等が挙げられる。
溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、エタノール、α-シクロデキストリン、マクロゴール400、ポリソルベート80等が挙げられる。
懸濁化剤としては、カラギーナン、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、塩化カリウム等が挙げられる。
pH調節剤・緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、塩酸、乳酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
無痛化剤としては、プロカイン塩酸塩、リドカイン等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、クレゾール、ベンザルコニウム塩化物等が挙げられる。
抗酸化剤としては、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、天然ビタミンE等が挙げられる。
着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、食用青色1号、銅クロロフィル等が挙げられる。
矯味・矯臭剤としてはアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、l-メントール、ミントフレーバー等が挙げられる。
安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、酸化マグネシウム、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0130】
経口用固形製剤を調製する場合は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を用いて、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0131】
注射剤を調製する場合は、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を用いて、常法により皮下、筋肉内及び静脈内等への投与用注射剤を製造することができる。
【0132】
上記の各投与単位形態中に配合されるべきピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の量は、これを適用すべき患者の症状により、或いはその剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では0.05~1000mg、注射剤では0.01~500mg、坐剤では1~1000mgとするのが望ましい。
【0133】
上記投与形態を有するピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物として通常成人(体重50kg)1日あたり0.05~5000mg、好ましくは0.1~1000mgとすればよく、これを1日1回又は2~3回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0134】
本発明はまた、本発明において用いられるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩と、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対して本発明において用いられるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩を投与することを記載した使用説明書を含むキット製剤に関する。ここで「使用説明書」とは、上記投与量が記載されたものであればよく、法的拘束力の有無を問わないが、上記投与量が推奨されているものが好ましい。具体的には、添付文書、パンフレット等が例示される。また、使用説明書を含むキット製剤とは、キット製剤のパッケージに使用説明書が印刷・添付されているものであっても、キット製剤のパッケージに抗腫瘍剤とともに使用説明書が同封されているものであってもよい。
【実施例】
【0135】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0136】
試験例1 トラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)投与後の腫瘍再燃モデルにおける抗腫瘍評価試験
ヒト胃癌細胞株であるNCI-N87はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI-1640(4.5g/L グルコース、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウム含有)(和光純薬株式会社)培地において、5% CO2インキュベーター中において37℃で細胞株を培養した。
【0137】
NCI-N87細胞をPBS中に108cells/mLの濃度で再懸濁した。1mLツベルクリン用シリンジと25Gの注射針を用いて、6週齢のヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu、日本クレア株式会社)の右側胸部の皮下に8×106cells/0.1mLずつ細胞懸濁液を移植した。
【0138】
腫瘍径の測定には電子ノギスを用い、1匹ずつ腫瘍の長径及び短径を電子ノギスの測定面で挟み測定した。測定は群分け日および判定日を含め、2~5日に一度の頻度で実施した。この長径及び短径から腫瘍体積(tumor volume、TV)を算出した。算出した腫瘍体積から相対腫瘍体積(relative tumor volume、RTV)及び相対腫瘍体積変化率(T/C)を算出した。TV、RTV及びT/Cは以下の式より算出した。
腫瘍体積TV(mm3)=(長径、mm)×(短径、mm)×(短径、mm)/2
相対腫瘍体積RTV=(測定日のTV)/(群分け日のTV)
相対腫瘍体積変化率T/C(%)=(投与群の平均RTV)/(Control群の平均RTV)×100
【0139】
また、体重の測定には動物用電子天秤を用いた。n日目の体重(BWn)からn日目体重変化率(BWCn)を以下の式により算出した。
体重変化率BWCn(%)=(BWn-BW0)/BW0×100
【0140】
Step1 トラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)投与後の腫瘍再燃モデルの作製
TVが100~300mm3になったヌードマウスを選別し、各群のTVの平均値が均等になるように等数法(MiSTAT(ver.2.0))により、コントロール群に6匹、Trastuzumab emtansine投与群に36匹の動物を割り付けた(Day0)。Trastuzumab emtansine(カドサイラ、Roche)は、大塚生食注を用いて1mg/mLに調整し、1日1回、Day1、22、43及び64に尾静脈より投与した。経時的に腫瘍径及び体重を測定し、TV及びBWCを算出した。
【0141】
【0142】
図1に示すように、Trastuzumab emtansine投与により、一度腫瘍が縮小することが確認できたが、Day85時点で腫瘍が再燃していることを確認した。
【0143】
Step2 腫瘍再燃モデルにおけるCompound 1の抗腫瘍効果
Step1において腫瘍の再燃が確認できたヌードマウスを18匹選別し、各群のTVの平均値が均等になるように等数法(MiSTAT(ver.2.0))により、以下のように各群9匹の動物を割り付けた(Day1、Step1起算ではDay85)。Compound 1は、0.1N HCl溶液を用いて6mg/mLに調整し、1日1回、Day1-42に連日経口投与した。Trastuzumab emtansine(カドサイラ、Roche)は、大塚生食注を用いて1mg/mLに調整し、1日1回、Day1及び22に尾静脈より投与した。経時的に腫瘍径及び体重を測定し、TV及びBWCを算出した。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
各群のTVをAspin-Welchのt検定で解析した結果、判定日(Day43)において、Compound 1投与群はTrastuzumab emtansine投与群に比して、TVが有意に低いことが示された。また、Compound 1投与群の平均体重変化率は、Trastuzumab emtansine投与群に比して、顕著な減少は認められなかった。
【0148】
試験例2 癌患者由来の細胞を用いた抗腫瘍効果の検討
表5~8で示したプロファイルを有するChampions TumorGraft model CTG-1171(Champions Oncology,Inc.)をStockマウス(Athymic Nude-Foxn1nu、Envigo)へ移植し、移植した腫瘍の腫瘍体積が1000―1500mm3に達した後、腫瘍を取り出し7週齢のヌードマウス(Athymic Nude-Foxn1nu、Envigo)の左側の皮下に約65mm3のフラグメントを移植した。腫瘍径はdigital caliperにより週2回測定した。TVは以下の式より算出した。
TV(mm3)=width(mm)2×length(mm)×0.52
腫瘍体積が150―300mm3に達した個体を各群10匹ずつ割り付けた(Day0)。
Compound 1は、0.1N HCl溶液を用いて所定の濃度に調整し、1日1回、Day0-27に連日経口投与した。腫瘍径はdigital caliperにより週2回測定した。マウスの体重は週2回測定した。体重変化率は、上記試験例1と同様の方法で算出した。Day0と比較して10%以上の体重減少が認められたマウスにはDietGel(登録商標)を与えた。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
なお、表8において示されている、トラスツズマブのTGIは弱く、当該患者由来の細胞は、トラスツズマブに対し耐性・抵抗性を有すると判断できる。
【0154】
【0155】
薬剤の抗腫瘍効果は、腫瘍増殖抑制(Tumor Growth Inhibition、TGI)で評価し、以下の計算式により算出された。
TGI=(100%×[1-(TV on day27-TV on day0 of a treated group)/(TV on day27-TV on day0 of the control group)])
また、毒性の有無の判定は、20%以上の体重減少又は10%以上の死亡が観察された用量はMTD(the maximum tolerated dose)オーバーと判断し、毒性有りと判定した。
【0156】
【0157】
【0158】
Day27において、Compound 1投与群は、コントロール投与群に比して、TVが有意に低いことが示された。
また、Compound 1投与群における投与期間中の体重変化率の平均値は、5%以上減少することがなかったため、忍容性がある用量と判断された。
【0159】
以上の結果から、本発明において用いられる一般式(I)で表されるピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物又はその塩は、他の抗腫瘍剤に対する耐性又は難治性のHER2陽性腫瘍に対して優れた抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなった。