(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】積層装置及び積層方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/00 20060101AFI20220916BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220916BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20220916BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20220916BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220916BHJP
【FI】
B28B11/00
B28B1/30 101
B32B37/12
B32B18/00 A
H01G13/00 391J
(21)【出願番号】P 2021032406
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植野 琴美
(72)【発明者】
【氏名】森 隆博
(72)【発明者】
【氏名】森永 高広
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/188607(WO,A1)
【文献】特開平5-267844(JP,A)
【文献】特開平7-86746(JP,A)
【文献】特開2016-171151(JP,A)
【文献】特開2015-171947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00
B28B 1/00
B32B
H01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートを順次積層する積層装置であって、
前記シートの位置合わせを行うアライメントステージと、
前記位置合わせされたシートが積層される積層ステージと、
前記アライメントステージから前記積層ステージにシートを移動させる搬送ホルダと、
前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行うUV照射装置と、を備え、
前記UV照射装置は前記アライメントステージと前記積層ステージとの間に設けられ、前記UV照射は前記位置合わせの後に行われる積層装置。
【請求項2】
前記UV照射の積算照射量は、1000mJ/cm
2以上50000mJ/cm
2以下である、請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記UV照射の際、前記シートと前記UV照射装置のUV光源との間の距離は10mm以上30mm以下である、請求項1または2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記シートはセラミックグリーンシートである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層装置。
【請求項5】
前記積層されたシートを固定する固定ユニットをさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層装置。
【請求項6】
前記固定ユニットは、前記UV照射装置と前記積層ステージとの間に設けられ、前記UV照射の後に前記積層ステージに積層されるシートに対して、荷電粒子を照射する帯電器及び除電器を含む請求項5に記載の積層装置。
【請求項7】
接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートをアライメントステージに提供する工程と、
前記アライメントステージで前記シートの位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせされたシートが前記アライメントステージから搬送ホルダで積層ステージに搬送される工程と、
前記搬送の途中でUV照射装置により前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行う工程と、
前記UV照射されたシートが前記積層ステージに積層される工程と、を含む積層方法。
【請求項8】
前記UV照射されたシートに対して、前記シートが前記積層ステージに積層される前に、帯電器から荷電粒子が照射される工程をさらに含む、請求項7に記載の積層方法。
【請求項9】
前記UV照射の積算照射量は、1000mJ/cm
2以上50000mJ/cm
2以下である、請求項7または8に記載の積層方法。
【請求項10】
前記UV照射の際、前記シートと前記UV照射装置のUV光源との間の距離は10mm以上30mm以下である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線(UV)照射装置を備えた積層装置及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサやセラミック基板等の電子素子の製造に当たり、導体パターンが印刷されたセラミックグリーンシート(印刷ポリマーシート)が用いられる。印刷ポリマーシートは、キャリアフィルム上に誘電体材料が塗布され、更に塗布された誘電体材料上に金属ペーストが例えばスクリーン印刷されることにより形成される。印刷された印刷ポリマーシートを正確に積層し、圧着及び焼成することによって電子素子が作成される。
【0003】
しかし、積層されたシート間の密着性が弱いと積層工程中や搬送中に積層にずれが生じ、製造される電子部品の断線やショートなど接触不良につながるおそれがある。
【0004】
そこで、印刷ポリマーシートの積層圧着工程の前処理として、シートにプラズマ処理を行い、表面改質させ、密着性を向上させることが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、プラズマ処理により接着性を高めるためには、一般に真空下で処理が行われる必要があり、装置の設置面積、作業工数、及びコストが増大する。また、プラズマ処理は照度が強く、シートの材質によっては特性を悪化させるおそれもある。
【0007】
そのため、本発明は、大気下でより簡便にかつ表面破壊なくポリマーシートの表面改質を行い、密着性の高い積層体を製造する積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る一実施態様の積層装置は、接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートを順次積層する積層装置であって、
前記シートの位置合わせを行うアライメントステージと、
前記位置合わせされたシートが積層される積層ステージと、
前記アライメントステージから前記積層ステージにシートを移動させる搬送ホルダと、
前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行うUV照射装置と、を備え、
前記UV照射装置は前記アライメントステージと前記積層ステージとの間に設けられ、前記UV照射は前記位置合わせの後に行われる積層装置である。
【0009】
また、本発明の他の実施態様の積層方法は、接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートをアライメントステージに提供する工程と、
前記アライメントステージで前記シートの位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせされたシートが前記アライメントステージから搬送ホルダで積層ステージに搬送される工程と、
前記搬送の途中でUV照射装置により前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行う工程と、
前記UV照射されたシートが前記積層ステージに積層される工程と、を含む積層方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、大気下でより簡便にかつ表面破壊なくシートの表面改質を行い、密着性の高い積層体を製造する積層装置及び積層方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施態様に係る積層装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施態様に係る積層装置を示すX-Z側面図である。
【
図3】本発明の一実施態様に係る積層装置を用いた、積層工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限られない。
【0013】
<積層装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施態様の積層装置10の斜視図である。本発明の一実施態様において、積層装置10は、制御器20、シートストッカ30L1
f~30L5
f,ストッカ用搬送ホルダ40、アライメントステージ50、積層用搬送ホルダ60、積層ステージ80、圧着器90、及びUV照射装置100を備える。また積層装置10は、帯電ユニットを備えていてもよく、例えば、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74を備えてもよい。
【0014】
図1では、積層装置10のレイアウト等を説明するための方向軸として、X軸、Y軸、及びZ軸が適宜用いられる。X軸は積層用搬送ホルダ60の移動方向に沿った軸である。Y軸はX軸と水平面上で直行する軸である。Z軸はX軸及びY軸と直交する鉛直軸であって、被積層対象であるシートL1~L5の積層方向に等しい。また、積層装置10の各機構の配置を説明するうえで、シートストッカ30L1
f~30L5
f側が上流側となり、X軸に沿って積層ステージ80側が下流側となる。
【0015】
(シート)
シートL1~L5は、積層装置10により積層されるシートである。シートL1~L5のそれぞれは、接着時にシート同士が互いの接する面(以下、接着面と称する)の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出している。
【0016】
ポリマーシートは耐熱性である。また、ポリマーシートはキャリアフィルム上にUV照射により改質されるポリマーを含む誘電体材料が塗布され、形成される。例えば、ポリマーシートは、キャリアフィルム上にセラミック前駆体をドクターブレード法などによって積層したセラミックグリーンシートであってもよい。キャリアフィルムは、後述するようにシートL1~L5の保護シートとして用いることができ、本明細書では、キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシートL1~L5をそれぞれL1f~L5fとする。キャリアフィルム(保護フィルム)はUV照射工程前に剥離されてもよい。
【0017】
また、シートL1~L5は、塗布された誘電体材料上に金属パターンが形成された、印刷ポリマーシートであってもよい。積層装置10で積層されるシートL1~L5はそれぞれ印刷ポリマーシートであっても、金属パターンを有さないポリマーシートであってもよい。印刷ポリマーシートは、例えば、キャリアフィルム上にUV照射により改質されるポリマーを含む誘電体材料が塗布され、金属ペーストがスクリーン印刷されることにより形成される。印刷ポリマーシートは、接着面の少なくとも20%以上の面積に露出し、好ましくは接着面の50%以上に露出している。
【0018】
シートL1~L5のポリマーシートに用いられるポリマーは、UV照射により改質され、耐熱性を有するものであればよい。好ましくは、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)を用いることができる。
【0019】
シートL1~L5は接着層を有してもよい。また、シートL1~L5はUV照射工程前に剥離される保護フィルムを備えてもよい。当該保護フィルムは、接着層の保護フィルムとして用いることができる。
【0020】
(シートストッカ)
シートストッカ30L1f~30L5fには、キャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fがそれぞれ収容される。本実施態様ではキャリアフィルムを備えたシートを用いて説明するが、シートストッカにはキャリアフィルムを備えないシートが収容されてもよい。
【0021】
なお、
図1では、キャリアフィルムを備えたシートL1
f~L5
fがいわゆる枝葉式のシートとして図示され、またシートストッカ30L1
f~30L5
fが枝葉式のキャリアフィルムを備えたシートL1
f~L5
fを収容するカートリッジとして図示されているが、本実施形態に係る積層装置10は、この形態に限定されない。例えば、複数枚分のシートが連続的に形成されたシートロールが、キャリアフィルムを備えたシートL1
f~L5
fのそれぞれに対して形成されるとともに、当該シートロールをカットするカッターが設けられてもよい。この場合、シートストッカ30L1
f~30L5
fは、キャリアフィルムを備えたシートL1
f~L5
fに対応するシートロールをそれぞれ保持するロールホルダとして構成される。
【0022】
(ストッカ用搬送ホルダ)
ストッカ用搬送ホルダ40は、シートストッカ30L1f~30L5fとアライメントステージ50との間を往復移動する搬送装置である。ストッカ用搬送ホルダ40は、積層用搬送ホルダ60よりも上流側に設けられることから、「前段ホルダ」とも称される。
【0023】
ストッカ用搬送ホルダ40は、X軸方向及びY軸方向に移動可能となっており、X軸方向及びY軸方向に点在するシートストッカ30L1f~30L5fからキャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fを搬送することができる。ストッカ用搬送ホルダ40は、例えば図示しないX軸ステージ及びY軸ステージに沿って移動可能となっている。
【0024】
リフト機構42の下端には吸着板44が設けられる。リフト機構42は吸着板44をZ軸方向(鉛直方向)に移動させる。
【0025】
吸着板44は、例えばアルミ板等の金属板に、空気孔が複数設けられた構造を備える。空気孔の下端は露出され、上端はエア配管46に接続される。エア配管46には負圧(Vac)及び静圧(Prs)のエアが供給される。キャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fの吸着時にはエア配管46が真空引きされる。キャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fの離脱時にはエア配管46から加圧空気が供給される。また、キャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fに接触する吸着板44の当接面には、軟質の多孔質シートが設けられてもよい。
【0026】
また、場合により、アライメントステージ50の前に反転ステージ(不図示)を設け、シートを反転させた後、積層を行ってもよい。
【0027】
(アライメントステージ)
アライメントステージ50は、シートストッカ30L1f~30L5fから発送されたキャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fの位置合わせを行う。アライメントステージ50に載置されたキャリアフィルムを備えたシートL1f~L5fは、位置合わせの前に、剥離ユニット(不図示)により保護フィルムが除去され、シートL1~L5が留置される。
【0028】
アライメントステージ50は、移動機構52、載置台であるステージプレート53、及びアライメントカメラ56を備える。
【0029】
移動機構52は、ステージプレート53をX軸及びY軸に移動可能であり、かつ、Z軸を回転軸にステージプレート53を回転可能に構成されている。ステージプレート53は、透光性部材である透光板54を備える。透光板54は、シートL1~L5が載置されるシート載置領域の少なくとも一部に設けられる。例えば、
図1のように、ステージプレート53のシートL1~L5の四隅に相当する箇所は、透光板54から構成されてもよい。また、これに代えて、シートL1~L5の四隅のうち、対角線上の二隅が透光板54から構成されるものであってもよく、また、シートL1~L5の四隅に相当する箇所を含めて、一枚の透光板54がステージプレート53に設けられてもよい。
【0030】
アライメントカメラ56は、ステージプレート53の下に複数設けられる。例えばシートL1~L5の四隅、または対角線上の二隅が撮像可能となるような位置に、アライメントカメラ56が配置される。アライメントカメラ56は、透光板54(透光性部材)を通してステージプレート53上に載置されたシートL1~L5を撮像可能となっている。アライメントカメラ56からの画像を基に、アライメントステージ50を移動させ、シートL1~L5の位置合わせが行われる。
【0031】
(積層用搬送ホルダ)
積層用搬送ホルダ60は、アライメントステージ50にて位置合わせされたシートL1~L5を真空吸着により保持して、積層ステージ80まで搬送する。例えば、アライメントステージ50及び積層ステージ80がX軸上に配置される場合、積層用搬送ホルダ60は、X軸のみに沿って移動可能となる。
【0032】
図2に示されるように、積層用搬送ホルダ60は、ストッカ用搬送ホルダ40と略同様の構造を備える。すなわち、積層用搬送ホルダ60は、リフト機構62、リフト機構62の下端に設けられた吸着板64、及び吸着板64に接続されたエア配管66を備える。
【0033】
リフト機構62は吸着板64をZ軸方向(鉛直方向)に移動させる。
【0034】
吸着板64は、例えばアルミ板等の金属板に、空気孔が複数設けられた構造を有する。空気孔の下端は露出され、上端はエア配管66に接続される。エア配管66には負圧(Vac)及び静圧(Prs)のエアが供給される。シートL1~L5の吸着時にはエア配管66が真空引きされる。シートL1~L5の離脱時にはエア配管66から加圧空気が供給される。また、シートL1~L2に接触する吸着板64の当接面には、軟質の多孔質シートが設けられてもよい。
【0035】
(UV照射装置)
積層装置10には、UV照射にてシートを活性化させ、積層の際のシート間の接着性を向上させるUV照射装置100が備えられる。本発明の一実施態様において、UV照射はアライメントステージ50でシートL1~L5のアライメントが行われた後、積層用搬送ホルダ60によりシートL1~L5を積層ステージ80に搬送し、積層させる間に行われる。
【0036】
UV照射はシートL1~L5のUV照射される面(照射面)全体を一度に照射してもよく、また照射面の一部を照射しながら、シートL1~L5またはUV照射装置100の何れかを移動させて、照射面全体を照射させてもよい。また、シートL1~L5を相対して照射することができれば、任意の方向(例えば、上方から下方、または下方から上方)に向かってUV照射が行われてもよい。すなわち、UV照射はポリマーシートが露出している面側から実施される場合に限定されず、ポリマーシートのUV改質が可能であれば、露出している面とは反対側から実施してもよい。
【0037】
本発明の一実施態様において、UV照射装置100は、
図1に示されるように、アライメントステージ50と積層ステージ80の間で、積層用搬送ホルダ60により搬送されるシートL1~L5の照射面に下方からUV光源が面するように設置される。
【0038】
一実施態様において、UV照射装置100のUV光源の幅はシートL1~L5よりもX軸方向に狭く、シートL1~L5がUV照射装置100上を移動することで、シートL1~L5の照射面全体が露光及び活性化される。また他の実施態様において、UV照射装置はシートL1~L5の照射面を一度に露光し得る大きさのUV光源を有し(不図示)、アライメントステージ50から積層用搬送ホルダ60で搬送されてきたシートL1~L5はUV照射装置100の光源と相対する位置に設置され、UV照射される。
【0039】
例えば、UV照射装置100は、上方(Z軸正方向)に向かってUV光を照射する。上述したように、積層用搬送ホルダ60はその下端にシートL1~L5を真空吸着する。したがって、積層用搬送ホルダ60がUV照射装置100上を移動する際にUV光が照射されると、搬送されているシートL1~L5のポリマーシートがUV光により改質される。
【0040】
UV照射装置のUV光源は、350nm以下の波長のUV光を発生するものであればよい。例えば、UV光源として、波長172nmのエキシマランプ、波長185nm及び254nmの低圧水銀灯、または265nm、280nmもしくは310nmの波長を有するUV-LEDなどを用いることができる。350nm以下の波長を有するUV光源を用いることで、これらに限定されないが、シート表面で化学結合切断や酸素種の活性化が行われ、シートL1~L5の表面改質がなされる。
【0041】
UV照射装置100によるUV照射の積算照射量はシートL1~L5の材質にもよるが、シートL1~L5の密着性を向上させ、またシートL1~L5の表面を破壊しない程度であることが望ましい。好ましくは、1000mJ/cm2以上50000mJ/cm2以下である。UV照射装置100のシートL1~L5への積算照射量が1000mJ/cm2未満であると、密着性向上の効果が十分ではなく、また50000mJ/cm2より大きい場合、シート表面が破壊されるおそれがある。
【0042】
上述するように、UV照射装置100はシート表面に対して相対し、UV照射装置100からのUVがシートL1~L5に十分に照射される距離に設置される。例えば、UV光源がUV-LEDであった場合、UV光源とシート表面との距離(WD)は10mm以上30mm以下程度であってもよく、好ましくは20mm程度である。UV光源とシート表面との距離が近すぎる場合、照度ムラが生じやすい。また、UV光源とシート表面との距離が遠すぎる場合にはUV光源からの照度が低くなり、十分な表面改質がなされない。UV-LEDの照度を均一化させるため、UV照射装置100はUV-LEDモジュールにリフレクタを備えてもよい。
【0043】
また、UV―LEDは
図1に示されるように、ライン(直線)状に設置されてもよい。その場合、搬送方向(X軸方向)に幅30mm以上、搬送方向に垂直な方向(Y軸方向)にシートL1~L5のY軸方向寸法よりも数mm長くなるような大きさとすることが好ましい。このような大きさのUV光源を用いることで、生産性を維持しつつ、均一で十分な照度を提供することができる。
【0044】
(積層ステージ)
上述のようにシートL1~L5は、アライメントステージ50から積層用搬送ホルダ60により積層ステージ80に搬送され、積層される。最終積層体が形成される積層ステージ80の載置面には、最下層のシートL5を保持するための吸着孔(不図示)が形成されてもよい。この吸着孔は、
図2に示されるように、エア配管82に接続される。エア配管82から負圧が引き込まれることで、最下層のシートL5が積層ステージ80に保持される。また、真空吸着に代えて、積層ステージ80の載置面に粘着シートが設けられてもよい。
【0045】
(固定ユニット)
アライメントステージ50で位置合わせを行い、積層ステージ80に積層されたシートL1~L5は、好ましくは、圧着前に積層されたシートL1~L5のずれが生じないよう、固定される。積層シートの固定は一般的な方法を用いることができ、例えば、機械的な固定、接着剤による固定、熱溶着による固定、および帯電積層による固定を用いることができる。
【0046】
本発明の一実施態様において、シート積層体は帯電積層により固定される。積層装置10は、帯電積層固定ユニットとして、積層用搬送ホルダ60、当該ホルダによって搬送されるシートL1~L5、及び、積層ステージ80にて積層される積層中間体に対して、荷電粒子を照射する帯電器及び除電器を備える。
【0047】
具体的には、積層装置10には、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74を備える。これらの帯電器及び除電器は、例えばイオナイザから構成される。
【0048】
ステージ用帯電器68は、積層ステージ80の載置面及び積層ステージ80上に積層されたシートL1~L5の露出面に向かって、荷電粒子を照射する。ステージ用帯電器68は、積層ステージ80と相対移動可能であってもよい。例えば、
図1に例示されるように、ステージ用帯電器68は、積層用搬送ホルダ60の下流端(積層ステージ80寄りの位置)に取り付けられ、移送用搬送ホルダ60とともにX軸上を移動可能となっている。
【0049】
ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、積層用搬送ホルダ60と、X軸方向、つまり積層用搬送ホルダ60の移動方向に沿って相対移動可能となっている。ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、アライメントステージ50及び積層ステージ80の間に設けられ、その上を積層用搬送ホルダが通過する位置に配置される。好ましくは、帯電用ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、UV照射装置100の下流に設けられる。UV照射装置100の下流に設けられることで、UV照射による除電を回避することができる。
【0050】
例えば、ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、上方(Z軸正方向)に向かって荷電粒子を照射する。したがって、積層用搬送ホルダ60がホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74上を移動する際に荷電粒子が照射されると、搬送されているシートL1~L5の露出面に荷電粒子が入射される。ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、UV照射装置100の下流に設けられていた場合、搬送されているシートL1~L5はUV光により表面改質された面に荷電粒子が入射されることとなる。
【0051】
ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、積層用搬送ホルダ60に保持されたシートL1~L5の露出面よりも小さい領域に、当該露出面上の荷電粒子の照射スポットが定められてもよい。例えば、シートL1~L5のX軸方向の長さよりも短い領域がホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74の、シートL1~L5の露出面上の照射スポットとなる。一方、照射スポットのY軸方向の長さは、シートL1~L5のY軸方向長さ以上であってよい。積層用搬送ホルダ60とホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74とがX軸方向に相対移動することで、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL1~L5の露出面の全面に亘り、荷電粒子を照射可能となる。
【0052】
ステージ用除電器72は、例えば、積層ステージ80に対して固定されていてよい。例えばステージ用除電器72は、積層ステージ80の載置面の全面に亘り、荷電粒子を照射可能となっている。
【0053】
これらの帯電積層固定ユニットにより積層用搬送ホルダ60、当該ホルダによって搬送されるシートL1~L5、及び、積層ステージ80にて積層される積層中間体に荷電粒子が入射され、積層構造が固定される。
【0054】
(圧着器)
上述のように固定された積層体は、圧着器90により加熱されながら上下方向、言い換えると積層方向から圧縮される。この圧着プロセスの結果、最終積層体は各層が固定される。積層装置10は圧着器90をその一部として備えていてもよく、また、別の装置として備えていてもよい。
【0055】
(制御器)
制御器20は、積層装置10の各機器を制御する。例えば、制御器20は、ストッカ用搬送ホルダ制御部、反転ユニット制御部、アライメントステージ制御部、積層用搬送ホルダ制御部、UV照射装置制御部、シート情報記憶部、帯電器制御部、除電器制御部、及び圧着器制御部を備える。制御器20は、例えばコンピュータから構成される。
【0056】
<積層工程>
次に本発明の一実施態様の積層装置10を用いたシートL1~L5の積層工程を、
図1乃至
図3を参照しながら説明する。
【0057】
図3はシートL3の積層工程を概略図としたものである。
【0058】
保護フィルムを備えたシートL3
fはシートストッカ30L3
fからストッカ用搬送ホルダ40によりアライメントステージ50のステージプレート53上に搬送され、固定される。次いで、L3のアライメントステージ50のステージプレート53と当接した面と逆側の面に貼付されていた保護フィルムfが剥離ユニット(不図示)により剥離される(
図3(a))。
【0059】
次いで、アライメントカメラ56が撮影した、ステージプレート53上に載置されたシートL3の画像に基づいて、シートL3の位置ずれ及び角度ずれが、アライメントステージ50の移動により、修正される(
図3(b))。
【0060】
位置修正がされたシートL3は、積層用搬送ホルダ60により、アライメントステージ50から積層ステージ80へ搬送される。その際、アライメントステージ50と積層ステージ80との経路の間に設けられたUV照射装置100により、UV照射される(
図3(c))。このとき、UV-LEDなどのUV発生源とシートL3の露出面との距離は20mm程度に制御される。また、UV照射装置100のシートL3への積算照射量が1000mJ/cm
2以上、50000mJ/cm
2以下であるように、UV照度及びシートの搬送速度が制御される。このような条件で照射することで、シートL3の表面が深度0.1nm以上500nm以下の範囲で改質され、積層した際の密着力が向上する。他方、プラズマ照射を行った場合では、シートの表面が1μm以上の深度で破壊され、特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0061】
さらに、シートL3は、アライメントステージ50から積層ステージ80へ搬送される間に、帯電ユニットにより荷電粒子が入射される。
【0062】
積層用搬送ホルダ60で搬送されながらUV照射による表面改質及び帯電処理が行われたシートL3は、積層ステージ80にて、すでにシートL1に積層されているシートL2上に、ポリマーシートが露出した面が接するように積層される(
図3(d))。シートL3のポリマーシートが露出した面は、接着層が設けられていてもよい。その場合、接着層による接着に加え、UV照射による接着性の向上により、より強固に積層体の固定を行うことができる。
【0063】
このようにして得られた積層中間体(
図3(e))はさらに積層工程(
図3(a)~(d))を繰り返してもよく、所望の積層が行われた後、圧着器90(不図示)により、加熱圧着され、積層体が提供される。
【0064】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートを順次積層する積層装置であって、前記シートの位置合わせを行うアライメントステージと、前記位置合わせされたシートが積層される積層ステージと、前記アライメントステージから前記積層ステージにシートを移動させる搬送ホルダと、前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行うUV照射装置と、を備え、前記UV照射装置は前記アライメントステージと前記積層ステージとの間に設けられ、前記UV照射は前記位置合わせの後に行われる積層装置である。
【0065】
これにより、大気下でより簡便にかつ表面破壊なくシートの表面改質を行い、密着性の高い積層体を製造するという効果を奏する。
【0066】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、前記UV照射の積算照射量が1000mJ/cm2以上50000mJ/cm2以下であることにある。
【0067】
これにより、シート表面を破壊することなく、大気中であっても十分に表面改質が行われ、密着性を向上することができるという効果を奏する。
【0068】
本発明の第3の実施の態様は、第1又は第2の実施の態様において、前記UV照射の際、前記シートと前記UV照射装置のUV光源との間の距離が10mm以上30mm以下であることにある。
【0069】
これにより、照度ムラを生じさせず、また、十分なUV光源からの照度がもたらされ、接着性を向上させるのに十分な表面改質が行われるという効果を奏する。
【0070】
本発明の第4の実施の態様は、第1乃至第3のいずれかの実施の態様において、前記シートがセラミックグリーンシートであることにある。
【0071】
これにより、密着性の高いセラミックグリーンシート積層体を提供でき、その結果、積層ずれの少ない積層セラミック製電子部品が提供されるという効果を奏する。
【0072】
本発明の第5の実施の態様は、第1乃至第4のいずれかの実施の態様において、積層装置が前記積層されたシートを固定する固定ユニットをさらに備えることにある。
【0073】
これにより、積層されたシートが、ずれが生じないよう、さらに固定されるという効果を奏する。
【0074】
本発明の第6の実施の態様は、第5の実施の態様において、前記固定ユニットが、前記積層ステージに積層されるシートに対して、荷電粒子を照射する帯電器及び除電器を含むことにある。
【0075】
これにより、搬送ホルダ、当該ホルダによって搬送されるシート、及び、積層ステージにて積層されるシートに荷電粒子が入射され、積層構造が固定されるという効果を奏する。
【0076】
本発明の第7の実施の態様は、接着面の少なくとも一部に、UV照射により改質されるポリマーシートが露出したシートをアライメントステージに提供する工程と、前記アライメントステージで前記シートの位置合わせを行う工程と、前記位置合わせされたシートが前記アライメントステージから搬送ホルダで積層ステージに搬送される工程と、前記搬送の途中でUV照射装置により前記シートに350nm以下の波長でUV照射を行う工程と、前記UV照射されたシートが前記積層ステージに積層される工程と、を含む積層方法である。
【0077】
これにより、大気下でより簡便にかつ表面破壊なくシートの表面改質を行い、密着性の高い積層体を製造するという効果を奏する。
【0078】
本発明の第8の実施の態様は、第7の実施の態様において、前記UV照射されたシートに対して、前記シートが前記積層ステージに積層される前に、帯電器から荷電粒子が照射される工程をさらに含むことにある。
【0079】
これにより、積層されたシートが、ずれが生じないよう、さらに固定されるという効果を奏する。
【0080】
本発明の第9の実施の態様は、第7または第8の実施の態様において、前記UV照射の積算照射量は、1000mJ/cm2以上50000mJ/cm2以下であることにある。
【0081】
これにより、シート表面を破壊することなく、大気中であっても十分に表面改質が行われ、密着性を向上することができるという効果を奏する。
【0082】
本発明の第10の実施の態様は、第7乃至第9のいずれかの実施の態様において、前記UV照射の際、前記シートと前記UV照射装置のUV光源との間の距離は10mm以上30mm以下であることにある。
【0083】
これにより、照度ムラを生じさせず、また、十分なUV光源からの照度がもたらされ、接着性を向上させるのに十分な表面改質が行われるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0084】
10 積層装置
20 制御器
30L1f シートストッカ
30L1f シートストッカ
30L3f シートストッカ
30L4f シートストッカ
30L5f シートストッカ
40 ストッカ用搬送ホルダ
42 リフト機構
44 吸着板
46 エア配管
50 アライメントステージ
52 移動機構
53 ステージプレート
56 アライメントカメラ
60 積層用搬送ホルダ
62 リフト機構
64 吸着板
66 エア配管
68 ステージ用帯電器
70 ホルダ用帯電器
72 ステージ用除電器
74 ホルダ用除電器
80 積層ステージ
82 エア配管
90 圧着器
100 UV照射装置
L1 シート
L2 シート
L3 シート
L4 シート
L5 シート
L1f キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシート
L2f キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシート
L3f キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシート
L4f キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシート
L5f キャリアフィルム(保護フィルム)を備えたシート