(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】燃焼設備およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
F23L 1/00 20060101AFI20220916BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20220916BHJP
F23N 3/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
F23L1/00 C
F23G7/06 B
F23N3/00
(21)【出願番号】P 2021109291
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】高坂 篤
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102022(JP,A)
【文献】実開昭60-066948(JP,U)
【文献】特開昭52-007312(JP,A)
【文献】特開昭51-059711(JP,A)
【文献】特開2015-194308(JP,A)
【文献】特開2015-183896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 1/00
F23G 7/06
F23N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給経路から供給される燃料ガスを、空気供給経路から供給される空気で燃焼する加熱炉と、
前記加熱炉の内で燃焼によって発生した燃焼排ガスを前記加熱炉の外に排出する煙道と、
前記煙道に接続される煙突と、
前記空気供給経路から分岐されて外気に連通する外気連通経路と、
前記外気連通経路から分岐されて前記煙道または前記煙突の底部と連通するバイパス経路と
、
前記空気供給経路を流れる燃料ガスの流量を測定する流量計と、
前記外気連通経路に設けられるブリード弁と、
前記流量計によって測定された燃料ガスの流量に基づいて前記ブリード弁を制御するコントローラと、を備え、
前記加熱炉における燃焼に供されなかった余剰空気は、前記バイパス経路を通じて前記煙道または前記煙突の前記底部に供給されることを特徴とする、燃焼設備。
【請求項2】
前記煙道は、前記加熱炉の内での圧力を制御する炉圧制御ダンパを前記加熱炉の側に有し、
前記バイパス経路は、前記炉圧制御ダンパよりも前記煙突の側に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項3】
前記コントローラは、燃料ガスの流量が少なくなるほど、前記ブリード弁の開度を小さくする制御を行うことを特徴とする、請求項1
または請求項2に記載の燃焼設備。
【請求項4】
請求項
1に記載の燃焼設備において、燃料ガスの流量が少なくなるほど、前記ブリード弁の開度を小さくする制御を行うことによって、前記バイパス経路を流れる余剰空気の流量を多くして、前記加熱炉に対する前記煙突のドラフトによる吸引力を小さくすることを特徴とする、燃焼設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼設備およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、加熱炉の内で発生した燃焼排ガスを加熱炉の外に排出させる煙道を備える加熱炉を開示する。
【0003】
特許文献1には開示されていないが、通常、煙道に対して煙突が接続されており、燃焼排ガスは、煙突のドラフト(上昇気流)によって加熱炉の外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
煙突のドラフトによる吸引力は、煙突の高さによって決まるため、燃焼量に応じて適宜に変化させることが難しい。言い換えると、バーナの燃焼量を少なくして炉内に排出される燃焼排ガス量が少ない場合でも、煙突は、大きな吸引力によって、炉内の燃焼排ガスを炉外に吸引しようとする。そのため、加熱炉において、バーナの燃焼量を少なくする場合、バーナの燃焼がバランスを失い、燃焼および炉内圧力を安定して制御することが難しいという問題がある。
【0006】
一方、バーナの燃焼量を少なくする場合、必要となる燃焼空気量が少なくなるので、ブロアで供給された燃焼空気の一部は、ブリード弁を開けることによって炉外に捨てられている。
【0007】
そこで、この発明の課題は、加熱炉において、燃焼量を少なくする場合でも燃焼および炉内圧力を安定して制御する燃焼設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る燃焼設備は、
燃料供給経路から供給される燃料ガスを、空気供給経路から供給される空気で燃焼する加熱炉と、
前記加熱炉の内で燃焼によって発生した燃焼排ガスを前記加熱炉の外に排出する煙道と、
前記煙道に接続される煙突と、
前記空気供給経路から分岐されて外気に連通する外気連通経路と、
前記外気連通経路から分岐されて前記煙道または前記煙突の底部と連通するバイパス経路とを備え、
前記加熱炉における燃焼に供されなかった余剰空気は、前記バイパス経路を通じて前記煙道または前記煙突の前記底部に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、燃焼量が少ない場合に、炉外に捨てられていた余剰空気をバイパス経路を通じて燃焼排ガスと合流させることによって、炉内に対する煙突のドラフトによる吸引力が小さくなるので、加熱炉における燃焼および炉内圧力を安定して制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る燃焼設備を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る燃焼設備1の実施の形態を説明する。
【0012】
〔実施形態〕
図1を参照しながら、一実施形態に係る燃焼設備1を説明する。
図1は、一実施形態に係る燃焼設備1を模式的に説明する図である。なお、
図1において、弁の白抜き表示は弁の開状態を示し、弁の黒ベタ表示は弁の閉状態を示す。
【0013】
図1に示すように、燃焼設備1は、加熱炉2と、煙道5と、煙突6とを備える。加熱炉2は、複数の燃焼バーナ3によって燃料ガスを燃焼空気で燃焼して、被加熱材を所定温度に加熱する。加熱炉2は、例えば、熱間圧延設備における連続式の加熱炉2である。連続式の加熱炉2は、例えば、加熱炉2の内に装入された被加熱材であるスラブ(鋳片)を、搬送手段であるウォーキングビームによって搬送しながら、加熱炉2での予熱帯、加熱帯および均熱帯を順次通過する間に加熱する。なお、加熱炉2には、加熱炉2の内で燃焼と排気とを交互に繰り返しながら排気時に燃焼排ガスの排熱を蓄熱体によって排熱を回収し、燃焼時に、蓄熱体に蓄熱された熱によって燃焼空気を予熱する蓄熱式バーナを設置することもできる。
【0014】
煙道5は、加熱炉2に接続されて、加熱炉2の内で燃焼によって発生した燃焼排ガスを加熱炉2の外に排出する排気経路である。煙道5の一側が、加熱炉2の上部に接続され、煙道5の他側が、煙突6の底部7に接続される。ここで、煙突6の底部7とは、煙突6の底面に限らず、煙突6の底に近い側面であってもよい。
【0015】
煙道5には、炉圧制御ダンパ18が設けられる。炉圧制御ダンパ18は、煙道5における加熱炉2の側に配置されて、加熱炉2の圧力が煙突6のドラフトによる吸引力(以下、煙突6のドラフト力という。)とバランスするように圧力を制御する働きを有する。煙突6は、煙道5に接続されて、煙道5を流通する燃焼排ガスを外部に放出する排気経路である。
【0016】
燃焼バーナ3の空気供給経路21には、外部の空気(以下、外気という。)を取り込むための空気供給ブロワ11が設けられる。空気供給経路21は、複数の燃焼バーナ3に対応して、複数の分岐空気経路に分岐される。分岐空気経路のそれぞれには、燃焼空気制御弁14が設けられる。燃焼空気制御弁14は、空気供給経路21を流れる燃焼空気を制御する。
【0017】
燃焼バーナ3の燃料供給経路22には、燃料ガスの供給または停止を行う燃料ガス用開閉弁12が設けられる。燃料供給経路22は、複数の燃焼バーナ3に対応して、複数の分岐ガス経路に分岐される。分岐ガス経路のそれぞれには、燃料ガス制御弁15が設けられる。燃料ガス制御弁15は、燃料供給経路22を流れる燃料ガスを制御する。燃料供給経路22における燃料ガス用開閉弁12と燃料ガス制御弁15との間には、流量計13が設けられる。流量計13は、燃料供給経路22を流れる燃料ガスの流量を測定する。
【0018】
燃焼空気制御弁14を開いて燃焼空気を燃焼バーナ3に供給するとともに、燃料ガス制御弁15を開いて燃料ガスを燃焼バーナ3に供給することによって、燃料ガスを燃焼空気で燃焼する。これにより、火炎が生成されるとともに燃焼排ガスが生成される。
【0019】
空気供給経路21には、燃焼空気制御弁14の手前(上流側)で分岐されるとともに外気に連通する外気連通経路23が接続される。外気連通経路23には、バイパス弁16が設けられる。加熱炉2での燃焼量が多い場合、バイパス弁16が閉じられて、空気供給経路21から供給される空気の全量が、燃焼空気として燃焼に利用される。
【0020】
外気連通経路23におけるバイパス弁16の下流側(外気側)には、ブリード弁17が設けられる。ブリード弁17は、燃焼量が少ない場合に、加熱炉2における燃焼に供されずに余分となった余剰空気を外気に逃がす働きを有する。
【0021】
バイパス弁16およびブリード弁17の両方が開けられると、外気連通経路23を流通する空気が外気に放出される。加熱炉2での燃焼量が少ない場合、バイパス弁16が開けられるとともにブリード弁17が閉じられると、外気連通経路23を流通する空気が、バイパス経路24を流通するようになる。したがって、空気供給経路21から供給される空気は、燃焼空気および余剰空気となる。
【0022】
外気連通経路23からは、バイパス経路24が分岐される。バイパス経路24の一端が、外気連通経路23におけるバイパス弁16とブリード弁17との間に接続される。バイパス経路24の他端が、煙道5または煙突6の底部7に接続される。したがって、バイパス経路24は、外気連通経路23と、煙道5または煙突6の底部7とを連通する。煙道5または煙突6の底部7では、余剰空気が、バイパス経路24を通じて燃焼排ガスと合流する。
【0023】
図1に示した実施の形態では、バイパス経路24の他端が煙道5に接続される。上述したように、炉圧制御ダンパ18が、煙道5における加熱炉2の側に設けられる。そして、例えば、バイパス経路24は、炉圧制御ダンパ18よりも煙突6の側に接続される。すなわち、煙道5において、炉圧制御ダンパ18の設置場所と、バイパス経路24の接続場所とが離間している。これにより、加熱炉2における炉圧が、バイパス経路24を流通する余剰空気の影響を受けにくくなる。
【0024】
コントローラ10は、流量計13およびブリード弁17に電気的に接続される。コントローラ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むコンピュータなどを用いて構成される。コントローラ10は、流量計13で測定される燃料ガスの流量データを受け取る。コントローラ10は、燃料ガスの流量データに基づいて、ブリード弁17の開度を制御する。ブリード弁17を閉じると、余剰空気は、バイパス経路24を通じて、煙道5または煙突6の底部7に供給される。ブリード弁17を開けると、余剰空気は、外気連通経路23を通じて、外気に放出される。
【0025】
コントローラ10は、流量計13によって燃料ガスの流量を測定しており、流量計13によって測定された燃料ガスの流量に基づいて、ブリード弁17を制御する。コントローラ10は、流量計13によって測定された燃料ガスの流量が少ない場合には、燃焼バーナ3の燃焼量、つまり加熱炉2での燃焼量が少なく、排出される燃焼排ガスの量も少ないと判断する。空気供給ブロワ11によって空気供給経路21に供給される空気の流量は、ほぼ一定であるので、加熱炉2での燃焼量が少ない場合に、余剰空気が発生する。
【0026】
コントローラ10は、加熱炉2での燃焼量が少ないと判断すると、ブリード弁17の開度が小さくなるように制御する。余剰空気は、バイパス経路24を通じて、煙道5または煙突6の底部7に供給され、加熱炉2において燃焼によって発生した燃焼排ガスと合流する。コントローラ10がブリード弁17の開度を小さくする制御を行うことによって、バイパス経路24を流れる余剰空気の流量が多くなる。バイパス経路24を通じて煙道5または煙突6の底部7に供給される余剰空気の流量が多くなるほど、炉内の燃焼排ガスを吸引して排出しようとする煙突6のドラフト力が小さくなる。また、余剰空気は、燃焼排ガスと比較して低温であるので、煙突6のドラフト力を抑制する。これにより、燃焼量が少ない場合でも、加熱炉2における燃焼および炉内圧力を安定して制御できる。
【0027】
この発明の具体的な実施の形態や数値について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0028】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0029】
この発明の一態様に係る燃焼設備1は、
燃料供給経路22から供給される燃料ガスを、空気供給経路21から供給される空気で燃焼する加熱炉2と、
前記加熱炉2の内で燃焼によって発生した燃焼排ガスを前記加熱炉2の外に排出する煙道5と、
前記煙道5に接続される煙突6と、
前記空気供給経路21から分岐されて外気に連通する外気連通経路23と、
前記外気連通経路23から分岐されて前記煙道5または前記煙突6の底部7と連通するバイパス経路24とを備え、
前記加熱炉2における燃焼に供されなかった余剰空気は、前記バイパス経路24を通じて前記煙道5または前記煙突6の前記底部7に供給されることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、燃焼量が少ない場合に、余剰空気がバイパス経路24を通じて燃焼排ガスと合流するので、加熱炉2における燃焼および炉内圧力を安定して制御できる。
【0031】
また、一実施形態の燃焼設備1では、
前記煙道5は、前記加熱炉2の内での圧力を制御する炉圧制御ダンパ18を前記加熱炉2の側に有し、
前記バイパス経路24は、前記炉圧制御ダンパ18よりも前記煙突6の側に接続される。
【0032】
上記実施形態によれば、加熱炉2における炉圧が、バイパス経路24を通じて供給される余剰空気の影響を受けにくくなる。
【0033】
また、一実施形態の燃焼設備1では、
前記空気供給経路21を流れる燃料ガスの流量を測定する流量計13と、
前記外気連通経路23に設けられるブリード弁17と、
前記流量計13によって測定された燃料ガスの流量に基づいて前記ブリード弁17を制御するコントローラ10をさらに備える。
【0034】
上記実施形態によれば、燃焼の自動制御を低コストで実現できる。
【0035】
また、流量計13およびブリード弁17は、通常、燃焼設備1に既に設けられているため、新たに設ける必要が無い。これにより、従来の構造にバイパス経路24を新たに設けるだけで、少ない燃焼量でも安定して燃焼させることを低コストで実現できる。
【0036】
また、一実施形態の燃焼設備1では、
前記コントローラ10は、燃料ガスの流量が少なくなるほど、前記ブリード弁17の開度を小さくする制御を行う。
【0037】
上記実施形態によれば、余剰空気が燃焼排ガスと合流することによって、炉内の燃焼排ガスに対する煙突6のドラフト力が小さくなるので、加熱炉2における燃焼および炉内圧力を安定して制御できる。
【0038】
この発明の別の局面に係る燃焼設備1の制御方法は、
上述した燃焼設備1において、燃料ガスの流量が少なくなるほど、前記ブリード弁17の開度を小さくする制御を行うことによって、前記バイパス経路24を流れる余剰空気の流量を多くして、前記加熱炉2に対する前記煙突6のドラフトによる吸引力を小さくすることを特徴とする。
【0039】
上記実施形態によれば、余剰空気が燃焼排ガスと合流することによって、炉内の燃焼排ガスに対する煙突6のドラフト力が小さくなるので、加熱炉2における燃焼および炉内圧力を安定して制御できる。
【符号の説明】
【0040】
1…燃焼設備
2…加熱炉
3…燃焼バーナ
5…煙道
6…煙突
7…底部
10…コントローラ
11…空気供給ブロワ
12…燃料ガス用開閉弁
13…流量計
14…燃焼空気制御弁
15…燃料ガス制御弁
16…バイパス弁
17…ブリード弁
18…炉圧制御ダンパ
21…空気供給経路
22…燃料供給経路
23…外気連通経路
24…バイパス経路
【要約】
【課題】加熱炉における燃焼および炉内圧力を安定して制御する燃焼設備を提供する。
【解決手段】燃焼設備1は、燃料供給経路22から供給される燃料ガスを、空気供給経路21から供給される空気で燃焼する加熱炉2と、加熱炉2の内で燃焼によって発生した燃焼排ガスを加熱炉2の外に排出する煙道5と、煙道5に接続される煙突6と、空気供給経路21から分岐されて外気に連通する外気連通経路23と、外気連通経路23から分岐されて煙道5または煙突6の底部7と連通するバイパス経路24とを備え、加熱炉2における燃焼に供されなかった余剰空気は、バイパス経路24を通じて煙道5または煙突6の底部7に供給される。
【選択図】
図1