IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クロマトグラフィー・リサーチ・サプライズ・インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ダックビルセプタム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/18 20060101AFI20220916BHJP
【FI】
G01N30/18 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021505915
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2018065997
(87)【国際公開番号】W WO2020027862
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】16/195,548
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/714,231
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500044766
【氏名又は名称】クロマトグラフィー・リサーチ・サプライズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エー・カーライル
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・エム・マレイ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エル・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジェイ・ハイニー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エス・ハバード
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096436(JP,A)
【文献】米国特許第04954149(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148756(US,A1)
【文献】実開昭56-174053(JP,U)
【文献】特表平10-506189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0010098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回復力のあるエラストマ材料から形成され、中心軸を含む本体と、
内壁を含む、前記本体における空洞と、
前記空洞におけるダックビル弁組立体と、
前記ダックビル弁組立体から前記内壁へと延びる複数のリブと、
を備えたセプタムであって、
前記複数のリブの各々が、前記ダックビル弁組立体に取り付けられた薄い部分と、前記内壁に取り付けられた厚い部分とを備え、前記薄い部分と前記厚い部分とが、非平行な角度で配置されてヒンジ点を形成していることを特徴とする、セプタム。
【請求項2】
前記本体は、
上端、下端、前記上端と前記下端との間で延びる側部、および、前記側部から延びるフランジを有する第1の部分と、
上端、下端、前記上端と前記下端との間で延びる側部、および、前記上端における凹部を有する第2の部分であって、前記凹部が、前記第1の部分のフランジおよび下端を受け入れるような大きさおよび形とされる、第2の部分と、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のセプタム。
【請求項3】
前記ダックビル弁組立体が、前記空洞における前記第1の部分の下端から凹んでいることを特徴とする、請求項2に記載のセプタム。
【請求項4】
前記空洞が前記第2の部分の下端にあることを特徴とする、請求項に記載のセプタム。
【請求項5】
前記ダックビル弁組立体が、前記第2の部分の下端から前記空洞内に凹まされていることを特徴とする、請求項4に記載のセプタム。
【請求項6】
前記第1の部分は、前記中心軸に沿って延びる中心孔を備えていることを特徴とする、請求項に記載のセプタム。
【請求項7】
前記中心孔が少なくとも1つの狭窄部を含むことを特徴とする、請求項6に記載のセプタム。
【請求項8】
前記ダックビル弁組立体がスリットを備え、前記セプタムは、針が連続的に前記第1の部分の上端へと挿入され、前記中心孔、前記第1の部分の下端、前記凹部、および前記ダックビル弁組立体を通り、前記スリットから出ることができるように構成されていることを特徴とする、請求項6に記載のセプタム。
【請求項9】
前記第2の部分は、形が概して円筒であり、第1の直径を有する上方部分と、第2の直径を有する下方部分とを含み、前記第1の直径は前記第2の直径より大きく、
前記第2の直径が、ガスクロマトグラフィ注入ポート内に少なくとも一部嵌まる大きさとされていることを特徴とする、請求項に記載のセプタム。
【請求項10】
前記ダックビル弁組立体は、相対する側部の対とスリットとを備え、少なくとも1つのリブが、前記スリットに対して非垂直の角度で、前記ダックビル弁組立体の各々の側部から延びていることを特徴とする、請求項1に記載のセプタム。
【請求項11】
前記角度は5度から85度の間にあることを特徴とする、請求項10に記載のセプタム。
【請求項12】
少なくとも2つのリブが前記ダックビル弁組立体の各々の側部から延び、前記リブ同士は互いから離間されていることを特徴とする、請求項10に記載のセプタム。
【請求項13】
ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法であって、
回復力のあるエラストマ材料から形成される本体を有するセプタムを提供するステップであって、前記本体が、上端、下端、および、前記上端と前記下端との間で延びる少なくとも1つの側部を有する、ステップと、
内壁を含む空洞を前記下端に提供するステップと、
スリットを含むダックビル弁組立体を前記空洞に提供するステップと、
前記ダックビル弁組立体から前記内壁へと延びる複数のリブを提供するステップであって、前記複数のリブの各々が、前記スリットに対して非垂直の角度で、前記ダックビル弁組立体から延び、前記複数のリブの各々が、前記ダックビル弁組立体に取り付けられた薄い部分と、前記内壁に取り付けられた厚い部分とを備え、前記薄い部分と前記厚い部分とが、非平行な角度で配置されてヒンジ点を形成している、複数のリブを提供するステップと、
前記下端をGC注入ポートに挿入するステップと、
を含み、
前記GC注入ポートと前記本体との間の締まり嵌めが圧縮力を前記側部に加え、前記圧縮力が前記リブを通じて前記ダックビル弁組立体へと伝えられていることを特徴とする、ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法。
【請求項14】
針を前記ダックビル弁組立体を通じて前記セプタムの前記上端へと挿入するステップであって、前記針が前記スリットから出ていき、前記複数のリブの各々が、前記挿入の間に各々のリブにおいて前記ヒンジ点の周りで曲がる、ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記角度が5度から85度の間にあることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法であって、
エラストマ材料から形成される本体を有するセプタムを提供するステップであって、前記本体が、上端、下端、および、前記上端と前記下端との間で延びる少なくとも1つの側部を有する、ステップと、
内壁を含む空洞を前記下端に提供するステップと、
ダックビル弁組立体を前記空洞に提供するステップと、
前記ダックビル弁組立体から前記内壁へと延びる複数のリブを提供するステップであって、前記複数のリブの各々が、前記ダックビル弁組立体から延び、ヒンジ点を含む、ステップと、
前記下端をGC注入ポートに挿入するステップと、
を含み、
前記GC注入ポートと前記本体との間の締まり嵌めが圧縮力を前記側部に加え、前記圧縮力が前記リブを通じて前記ダックビル弁組立体へと伝えられていることを特徴とする、ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法。
【請求項17】
針を前記ダックビル弁組立体を通じて前記セプタムの前記上端へと挿入するステップであって、前記複数のリブの各々が、前記挿入の間に各々のリブにおいて前記ヒンジ点の周りで曲がる、ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のリブの各々が、前記ダックビル弁組立体に取り付けられる薄い部分と、前記内壁に取り付けられる厚い部分とを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本明細書において参照によって組み込まれている、ダックビルセプタムに関する2018年8月3日に出願された米国仮特許出願第62/714,231号の優先権の利益を主張する。
【0002】
ダックビル弁組立体を含むセプタムは、セプタムの本体からダックビル弁組立体へと延びる複数のエラストマのリブ(rib)を備える。注入ポート空洞へと挿入されるとき、セプタムの本体と空洞との間の締まり嵌めによって発生させられる力が、リブによってダックビル弁組立体へと伝えられる。リブ同士は、針がダックビル弁組立体を貫いて挿入されるとき、ヒンジ点において可逆的に潰れるように構成されており、ダックビル弁組立体に針を中心付けるのを助けるために離間されている。リブは、より低い圧力においてダックビル弁組立体を閉じるだけの圧縮力を維持する一方で、より高い入口圧力において圧縮力の集中を低減することで、ダックビル弁組立体において摩滅を低減する。
【背景技術】
【0003】
ガスクロマトグラフィ(「GC」)は、高い感度を伴う幅広く使用されている分析技術である。典型的には、液体試料が、通常はシリコーンゴムまたは他のエラストマから作られるエラストマの封止(「セプタム」)を貫いて、試料が不活性ガスの流れにおいて蒸発させられる高温注入ポートへと注入され、成分がクロマトグラフィカラムを通じて押し流されるときに分離される。カラムから溶出する成分が高感度検出器で検出される。注入の不活性および再現性は、検出において高い精度を維持するために必須である。
【0004】
セプタムの主な目的はキャリヤガスの漏れを封止することであり、そのため試料はクロマトグラフィカラムを通じて適切に溶出する。理想的には、セプタムは、針がセプタムの厚さを貫いて突き抜けることを各々必要とする最大で数百回の注入に対して、効果的な気密の封止として供する必要がある。セプタムは、周囲温度からおおよそ300℃までの範囲の温度と、最大でおおよそ100psiのガス圧力とに曝される可能性がある。注入ポートへと挿入されるセプタムの一部分が受ける温度および圧力は、それぞれ入口温度および入口圧力と称することができる。
【0005】
研究室において現在使用されているGCセプタムは、確実に封止する要件を大まかに満たしており、1つだけの基本的な設計、すなわち、針が試料を注入するために突き通されるエラストマ材料の固体の円板または栓を典型的には踏襲している。この基本的な設計は封止として効果的に機能するが、これまでに解決されていない1つの問題は、GC入口への汚染物粒子の意図しない導入である。セプタムを貫く針の繰り返しの通過は、セプタムを摩耗させ、針を粗くし、微粒子のセプタム材料と、入口で擦れる針からの金属微粒子とをもたらす。セプタム材料は、揮発性汚染物をクロマトグラフィ基線に加え、これは、試料成分からの所望のピークと干渉するピークとして表れる可能性があり、セプタム材料と金属微粒子との両方は、潜在的には、吸着材または触媒として作用し、入口における成分を検出される前に除去または分解してしまう。
【0006】
固体のエラストマの円板を成型されたダックビル弁組立体で置き換えることで粒子の発生を相当に低減する少なくとも1つの機械的な封止が、市場において入手可能である(米国特許第4,954,149号および第5,531,810号)。各々の注入に対して、ダックビル弁組立体は、鈍い針または「弾丸形のノーズ」の針が組立体を通じて延ばされるときに開けられる。針を除去すると、組立体は、(1)針の存在によって変形されていたゴム製のダックビル弁組立体の弛緩と、(2)GC入口の内側で弁組立体に発揮されるガス圧力と、(3)ダックビル弁組立体に固定された、組立体を閉じさせるように付勢されている金属バネ(米国特許第4,954,149号)またはクリップ(米国特許第5,531,810号)との組み合わせによって閉じる。組立体を閉じるための第1の機構は、ゴムの固有の回復力に依存する。この回復力は、GC入口の内部の上昇した温度に長く露出されるとゴムが硬くなるため、時間と共に低下する。閉じるための第2の機構は、特に機械的な封止が比較的低い圧力で使用されるとき、適切に閉じるには十分ではない可能性がある。より柔らかいゴムは、より弛緩しやすく、ガス圧力に対してより応答性があるが、摩耗および硬化に対してより敏感でもある。より硬いゴムは、摩耗に対してより回復力があるが、より弛緩しにくくなり、ガス圧力に対して応答性が悪くなる。このようなことから、これらの参考のものは、針が引き抜かれた後にダックビル弁組立体を確実に閉じるために、機械的なバネまたはクリップに依存している。しかしながら、機械的なバネまたはクリップは、過剰に固いバネまたは過剰にきついクリップがセプタムにおける摩滅を増加させる可能性があり、過剰に柔軟であるかまたは不適切に取り付けられたバネまたはクリップは適切な封止を提供できず、漏れを許してしまうため、正確な公差で製造され、セプタムに適切に取り付けられなければならない。さらに、機械的なバネおよびクリップは、先行技術の機械的な封止では比較的コストの掛かる構成要素であり、製品に複雑さももたらす。
【0007】
米国特許第4,954,149号(特許文献1)において検討されている代わりの手法は、ダックビルを閉じるために、金属バネを反対の径方向のリブの対で置き換えている。前記リブは、セプタムの外側周縁と隣接し、ダックビル開口に対して垂直に配置される固体材料から成る。この配置は、エラストマ材料への摩耗力を増加させ、応力軽減の唯一の状態は、スリットに対して直角の方向へのゴムの圧縮である。この方法では、リブの効果は、両方の設計ともダックビル唇部が針の挿入においてスリットに対して直角の方向に変形するのを制限するため、固体の材料の栓を使用することと同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,954,149号明細書
【文献】米国特許第5,531,810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新規のダックビルセプタムを提供することで、GC入口における汚染物を低減すること、および、低圧での向上した封止を提供することが、本発明の目的である。このダックビルセプタムは、セプタムの本体からダックビル弁組立体へと延びる複数のエラストマのリブを備える。注入ポート空洞へと挿入されるとき、セプタムの本体と空洞との間の締まり嵌めによって発生させられる力が、リブによってダックビル弁組立体へと伝えられ、封止力を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このまとめは、詳細な記載および本明細書に含まれる図面においてさらに詳細に記載されている概念の選択を導入するために提供されている。このまとめは、請求された主題の任意の主要または必須の特徴を特定するように意図されていない。記載されている特徴の一部または全部が、対応する独立請求項または従属請求項において存在し得るが、特定の請求項において明示的に提唱されていない場合、限定になるように解釈されるべきではない。本明細書に記載されている各々の実施形態は、本明細書に記載されたすべての目的に対処するように必ずしも意図されておらず、各々の実施形態は、記載された各々の特徴を必ずしも含まない。本発明の他の形態、実施形態、目的、利点、便益、特徴、および態様は、詳細な記載および本明細書に含まれる図面から当業者には明らかとなる。さらに、このまとめの部分と本明細書のどこかに記載されている様々な装置および方法は、数多くの異なる組み合わせおよび部分組み合わせで表すことができる。すべてのこのような有用な新規の発明的な組み合わせおよび部分組み合わせは本明細書において検討されており、これらの組み合わせの各々の明示的な表現は不必要であると見なされている。
【0011】
本発明のより良い理解は、添付の図面との組み合わせで以下の記載を参照することで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】ダックビルセプタムの第1の実施形態の上方からの斜視図である。
図1B図1Aのセプタムの下面図である。
図1C】反対側も同一である、図1Aのセプタムの側面図である。
図1D】反対の端も同一である、図1Aのセプタムの端面図である。
図1E図1Cの線E-Eに沿っての図1Aのセプタムの断面図である。
図2A】ダックビルセプタムの第2の実施形態の上方からの斜視図である。
図2B図2Aのセプタムの下面図である。
図2C】反対側も同一である、図2Aのセプタムの側面図である。
図2D】反対側も同一である、図2Aのセプタムの端面図である。
図2E図2Cの線E-Eに沿ってのセプタムの断面図である。
図2F】複数の注入の後の第2の実施形態のセプタムのダックビル弁組立体の内面を示す写真である。
図2G】針が弁組立体を通じて延びている第2の実施形態のセプタムの下面を示す写真である。
図3A】ダックビルセプタムの第3の実施形態の上方からの斜視図である。
図3B図3Aのセプタムの下面図である。
図3C図3Aのセプタムの下方からの斜視図である。
図3D図3Bの線D-Dに沿ってのセプタムの断面図である。
図3E図3Bの線E-Eに沿ってのセプタムの断面図である。
図4】1psi、3psi、および5psiの圧力環境において第1の実施形態のセプタムおよび第3の実施形態のセプタムが受ける圧縮応力(N/mm2またはMPa)のプロットである。
図5】20psi、25psi、および30psiの圧力環境において第1の実施形態のセプタムおよび第3の実施形態のセプタムが受ける圧縮力(N/mm2またはMPa)のプロットである。
図6A】第三者のダックビルセプタムを貫いて延びる針の下面図である。
図6B図6Aにおける第三者のセプタムの下側の側方からの斜視図である。
図6C図6Aにおける第三者のセプタムの下端側からの斜視図である。
図7】第1の実施形態のセプタム、第2の実施形態のセプタム、および第3の実施形態のセプタム(左のパネル)と、第3の実施形態のダックビルセプタム(右のパネル)とを貫いて延びる針に加えられる接触力の概略図である。
図8】シミュレーションされたバネ力(第2の実施形態のダックビルセプタムをシミュレートしている)により第1の実施形態のセプタムが受けるミーゼス応力(左のパネル)、および、針挿入において第3の実施形態のセプタムが受けるミーゼス応力(右のパネル)のプロットである。
図9A】ダックビルセプタムの第4の実施形態の上方からの斜視図である。
図9B図9Aのセプタムの下面図である。
図9C図9Aのセプタムの下方からの斜視図である。
図9D図9Bの線D-Dに沿ってのセプタムの断面図である。
図9E図9Bの線E-Eに沿ってのセプタムの断面図である。
図10】1psi、3psi、および5psiの圧力環境において第1の実施形態のセプタムおよび第4の実施形態のセプタムが受ける圧縮応力(N/mm2またはMPa)のプロットである。
図11】20psi、25psi、および30psiの圧力環境において第1の実施形態のセプタムおよび第4の実施形態のセプタムが受ける圧縮力(N/mm2またはMPa)のプロットである。
図12】シミュレーションされたバネ力(第2の実施形態のダックビルセプタムをシミュレートしている)により第1の実施形態のセプタムが受けるミーゼス応力(左のパネル)、および、針挿入において第4の実施形態のセプタムが受けるミーゼス応力(右のパネル)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進する目的のために、ここで図面に示されている選択された実施形態を参照し、具体的な言葉がこの実施形態を記載するために使用される。それでもなお、それによって本発明の範囲の限度のないことが意図されていることは理解されるものであり、記載または図示された実施形態の任意の変更およびさらなる改良、ならびに、本明細書に例示されているような本発明の原理の任意のさらなる応用は、本発明に関係する当業者が通常は思い付くとして検討されている。本発明の少なくとも1つの実施形態が非常に詳細に示されているが、一部の特徴または特徴の一部の組み合わせが明瞭さのために示されていない可能性があることは、当業者には明らかである。
【0014】
本文書内における「発明」への言及は、発明のファミリーの実施形態への言及であり、単一の実施形態が、他に述べられていない場合、すべての実施形態に必ず含まれる特徴を含むことはない。さらに、本発明の一部の実施形態によって提供される「利点」への言及があり得るが、他の実施形態が、その同じ利点を含まない可能性もある、または、異なる利点を含む可能性もある。本明細書に記載される任意の利点は、請求項のうちのいずれかへの限定として解釈されるものではない。
【0015】
特定の量(空間的な寸法、無次元のパラメータなど)が、本明細書において明示的または暗示的に使用されることがあり、このような特定の量は、他に指示されていない場合、単に例として提示されており、おおよその値である。特定の事柄の構成に関連する検討は、存在する場合、単なる例として提示されており、他の事柄の構成、特には、同様の特性を伴う他の事柄の構成の適用性を限定することはない。本明細書で使用される「上」および「下」といった用語は、図面に示されたセプタムの配向と、セプタムの上へと挿入され、セプタムを通過し、下から出てくる針の移動とを参照している。セプタムが様々な配向において取付具に装着できることは理解されるべきであり、そのため、挿入位置の「上」は、横向き、斜め、または逆さまに配向される可能性がある。
【0016】
図1A図1Eを参照すると、ダックビルセプタムの第1の実施形態10が、製造の容易性のために2つの部品で形成されている。第1の部分12は、軸対称性を有し、上端14と、下端16と、上端14と下端16との間で延びる側部18と、第1の直径20と、第1の直径20に対して実質的に垂直に延びる軸22とを有する概して円筒の形である。中心孔24が軸22に沿って延びている。第1の部分12は、側部18から延びるフランジ28をさらに備え、フランジ28は第1の直径20より大きい第2の直径30を有する。一部の実施形態では、中心孔24は、孔24の長さに沿う「ワイパ」とも称される少なくとも1つの狭窄部26を含む。これらの狭窄部26は、針が孔24を貫いて挿入されるときに封止として供し、埃が孔24を通過するのを機械的に防止し、針が各々の狭窄部26を連続的に通過するときに埃を針から拭き取る。
【0017】
ダックビルセプタム10の第2の部分32は、左右対称性を有し、上端34と、下端36と、上端34と下端36との間で延びる側部38と、下端36から下向きに延びるダックビル弁組立体40とを有する概して円筒の形である。第2の部分32の上方部分42は第1の直径44を有し、第2の部分32の下方部分46は第2の直径48を有し、第1の直径44は第2の直径48より大きい。軸22は、第1の直径44および第2の直径48に対して実質的に垂直に第2の部分32を貫いて延びている。第2の部分32は、第1の部分12のフランジ28および下端16を受け入れるような大きさおよび形とされた凹部50を備える。フランジ28と凹部50との間の摩擦による嵌まり合いは、第2の部分32の中に第1の部分12を一部維持する。ダックビル弁組立体40はスリット52を備え、そのため、針が第1の部分12の上端14へと延び、中心孔24を貫いて凹部50へと延び、ダックビル弁組立体40を貫いてスリット52から出る。ダックビル弁組立体40は、相対する側部54の対と、取り囲む切込み56とをさらに備える。
【0018】
ダックビル弁組立体40を閉じるのを支援するための機械的なバネまたは他の機構がないため、ダックビルセプタム10の第1の実施形態には望ましくない漏れがあることが分かっている。Table 1(表1)に示されているように、ダックビルセプタム10は、1psiの圧力に曝されるだけですぐに漏れ、5psiの圧力に曝されるときはおおよそ300回の注入の後に漏れ、3psiの圧力に曝されたときは、初期に、および/または、40回の注入の後に漏れた(試験は3psiにおいて繰り返して行われた)。セプタムは、好ましくは、相当の漏れが起こる前に少なくとも一千回の注入に供せるべきである。
【0019】
【表1】
【0020】
図2A図2Eを参照すると、ダックビルセプタムの第2の実施形態110は第1の実施形態10と同一であるが、機械的なバネ158をさらに備えている。バネ158は、切込み56の中に一部位置させられ、ダックビル弁組立体を取り囲んでおり、ダックビル弁組立体40の反対の側部54同士と接触するアーム160の対を含み、ダックビル弁組立体40を閉じるように付勢する力を発揮する。バネ158は、針をダックビル弁組立体40の中心で維持するために、弁組立体40の両側に実質的に等しい反対の力を好ましくは発揮する。バネ158は、針がないとき、弁組立体40を確実に閉じるのに十分な力を発揮するように好ましくは設計されるが、過剰な力は、針が挿入および引き抜きされるときにゴムのダックビル弁組立体40の摩耗を増加させてしまう。図2Fは、この第2の実施形態からのダックビル弁組立体40の内部を描写しており、摩耗が、過剰な閉じる力を伴うバネを通じての繰り返しの注入から生じている。弁組立体から摩耗された材料は、GCにおける微粒子の汚染物をもたらす可能性がある、および/または、ダックビル弁組立体の適切な封止を妨げ、漏れをもたらす可能性がある。図2Gは、非対称の閉じる力を提供するバネ158のため、第2の実施形態のダックビルセプタム110のスリットの中心から外れて出てきた針162を描写している。これらの問題に加えて、バネ158の設置における過失が、セプタム110の摩耗の加速またはバネ158の機械的失陥をもたらす可能性がある。
【0021】
図3A図3Eを参照すると、ダックビルセプタムの第3の実施形態210が、製造の容易性のために2つの部品で形成されている。この第3の実施形態における第1の部分12は、第1の実施形態10および第2の実施形態110における第1の部分12と実質的に同一である。他の設計と同様に、第1の部分12は、軸対称性を有し、上端14と、下端16と、上端14と下端16との間で延びる側部18と、第1の直径20と、上端14と下端16との間で第1の直径20に対して実質的に垂直に延びる軸222とを有する概して円筒の形である。中心孔24が軸222に沿って延びている。一部の実施形態では、中心孔24は、孔24の長さに沿う少なくとも1つの狭窄部26を含む。第1の部分12は、側部18から延びるフランジ28をさらに備え、フランジ28は第1の直径20より大きい第2の直径30を有する。
【0022】
ダックビルセプタム210の第2の部分232は、左右対称性を有し、上端234と、下端236と、上端234と下端236との間で延びる側部238とを有する概して円筒の形である。第2の部分232の上方部分242は第1の直径244を有し、第2の部分232の下方部分246は第2の直径248を有し、第1の直径244は第2の直径248より大きい。一部の実施形態では、第2の直径248はおおよそ5.38mmであり、これは、標準的な大きさのGC注入ポートへと挿入されるとき、おおよそ0.075mmの締まり嵌めをもたらす。一部の実施形態では、上方部分242の第1の直径244はおおよそ8.50mmである。特定の実施形態では、上方部分242はおおよそ1.5mmの高さを有し、下方部分246はおおよそ3.94mmの高さを有する。他の実施形態では、セプタム210とGC注入ポートとの間の締まり嵌めは、内部ジャケット、GC注入ポートにおけるセプタム210の鉛直の圧縮によって作り出される径方向の力、または、技術的に知られている他の手段もしくは機構など、他の手段によって制定され得る。
【0023】
軸は、第1の直径244および第2の直径248に対して実質的に垂直に第2の部分232を貫いて延びている。第2の部分232の上端234は、第1の部分12のフランジ28および下端16を受け入れるような大きさおよび形とされた凹部250を備える。フランジ28と凹部250との間の摩擦による嵌まり合いは、第2の部分232の中に第1の部分12を一部維持する。他の実施形態では、第1の部分12と第2の部分232とは、接着剤、化学的接合、または技術的に知られている他の手段を介して係合してもよい。係合させられるとき、第1の部分12と第2の部分232とは、集合的にセプタムの本体と称される。
【0024】
第2の部分232の下端236は、概して円筒形の下方部分246によって定められる空洞264を含む。ダックビル弁組立体240は空洞264内に位置させられている。図3C図3D、および図3Eに示されているように、ダックビル弁組立体240は、ダックビル弁組立体240とGC入口との間の接触を回避するために、下端236からおおよそ0.28mmだけ凹まされている。ダックビル弁組立体240はスリット252を備え、そのため、針が第1の部分12の上端14へと延び、中心孔24を貫いて第1の部分12の下端16の外へ延び、凹部250へと延び、ダックビル弁組立体240を貫いてスリット252から出る。複数のリブ266がダックビル弁組立体240から空洞264の内壁268へと延びている。描写されている実施形態では、2つのリブ266がダックビル弁組立体240の各々の側部254から延びており、各々が軸222のいずれかの側において離間されている。
【0025】
使用しているとき、セプタム210の少なくとも下方部分246はGC注入ポート空洞内で位置決めされている。セプタム210と注入ポート空洞との間の所定の締まり嵌めは圧縮力を発生させ、その圧縮力は側部238からリブ266を通じてダックビル弁組立体240の反対の側部254同士へと伝えられる。一部の実施形態では、ダックビル弁組立体240の内部封止面270への約0.5MPa超の圧力が適切な封止を提供するが、約2.5MPa超の圧力は、繰り返しの注入においてダックビル弁組立体240の摩耗を増加させる傾向がある。他の実施形態では、セプタム210により硬いかまたはより柔らかいエラストマ材料を使う場合、より高いかまたはより低い圧力が適切な封止を提供するのに十分であり得る、または、摩耗の増加をもたらす可能性がある。リブ266の形状の変更が、低い圧力における封止を高めるために、または、特に高い圧力における針の挿入および後退の間の摩耗を最小限にするために変更されてもよい。
【0026】
図3Bおよび図3Cにおいて最も容易に見られるように、リブ266の形状は、ダックビル弁組立体240に、針の位置変更の間に、具体的には圧縮、曲げ、または伸長といった複数の弛緩の様態を利用させることができる。各々のリブの軸に沿っての圧縮は針が挿入されるときに起こり、そうでない場合に望ましくない摩耗をもたらす応力をいくらか軽減する。さらに、各々のリブ266は、ダックビル弁組立体240に固定された比較的薄い部分267と、内壁268に固定された比較的厚い部分269とを備え、薄い部分267と厚い部分269とは平行でない角度で配置されており、それによって、リブ266の長さに沿って幾何学的なヒンジ点271を形成している。一部の実施形態では、薄い部分267は約0.375mmの幅を有し、厚い部分269は、薄い部分267との接触位置における約0.375mmから内壁268との接触位置における約0.98mmまで増加する幅を有する。ダックビル弁組立体240を貫く針の挿入において、薄い部分267は、リブがヒンジ点271の周りで曲がるように屈折できる。それと共に、これらの特徴はリブ266を屈折させることができ、それによって、針がダックビル弁組立体240を貫いて挿入されるときに針を受け入れる。最後に、伸長する弛緩は、針の外周を受け入れるために、材料がリブ266同士の間の利用可能な空間へとスリット252に対して垂直の方向で屈折できるため、ダックビル弁組立体240の各々の側部254に沿って得ることができる。この理由のため、セプタム210は、ダックビル弁組立体240の両側部254において、離間された2つのリブ266を備える。他の実施形態では、セプタム210は、各々の側部254において追加のリブもしくはより少ないリブを備え得る、または、曲がることができる湾曲したリブを利用できる。
【0027】
エラストマのリブ266は、リブがGC入口の内側の圧力に曝される有効ダックビル表面積を縮小するため、より高い動作圧力における摩耗の影響を低減することもできる。低減された摩耗の影響が顕著となる範囲は、約3psiから約100psiの間の動作圧力である。さらに、針に対するリブ266の角度は、封止面270と針との間に追加の接触の領域を可能とし、それによって圧縮力の集中を2点から4点へと低減させる。それによって、より高い圧力におけるダックビル弁組立体240への圧縮力の低減は、封止面270における摩耗の低減をもたらす。また、針に対するリブ266の角度は、針が先の設計におけるような2点だけの代わりに4点によって支持されるため、追加的な中心付けを提供する。描写されている実施形態では、各々のリブ266の薄い部分267は、スリット252に対しておおよそ67.5度の角度で配向されている。他の実施形態では、角度は、セプタム210の所望の特性に応じて、5度から85度の間または30度から75度の間といった、スリットに対して垂直とならないようにできる(つまり、90度ではない)。例えば、より大きな角度は、圧縮力をダックビル弁組立体により効率的に伝えることができ、より低い動作圧力でのGCのために意図されたセプタムにおける使用により適することができ、より小さい角度は、より高い動作圧力でのGCのために意図されたセプタムにおける使用により適することができる。
【0028】
実験は、ダックビルセプタムの第3の実施形態が第1の実施形態(閉じるのを容易にするためのバネまたはリブがない)に対してダックビル弁組立体を閉じることにおいて性能の向上を呈したことを実証している。ここで図4を参照すると、有限要素解析が、低い圧力における封止についての締まり嵌めの概念の効果を立証するために使用された。解析は、封止面の方向における圧縮応力を描写するダックビル封止唇部の上面図を示しており、ダックビルセプタムの第1の実施形態と第3の実施形態とを比較している。理屈に縛られることなく、封止面に作用する圧縮応力がより高くなると、封止の性能は低い動作圧力においてもより良好になるはずである。これらの結果において、白色は、実質的に圧縮応力がないことを示しており、より暗い色はより大きな圧縮応力を示している。結果は、第3の実施形態のダックビルセプタムが、5psiでの第1のダックビルセプタム10について達成された圧縮応力より大きいダックビル唇部の圧縮応力を1psiにおいて提供したことを示している。
【0029】
ここで図5を参照すると、有限要素解析は、ダックビルセプタムの第3の実施形態について、第1の実施形態と比較して、封止面の方向における圧縮応力の低減を示している。解析は、封止面の方向における圧縮応力を描写するダックビル封止唇部の上面図を示しており、ダックビルセプタムの第1の実施形態と第3の実施形態とを比較している。これらの結果において、白色は、実質的に圧縮応力がないことを示しており、より暗い色はより大きな圧縮応力を示している。結果は、ダックビルセプタムの第3の実施形態が、20psiにおけるダックビルセプタムの第1の実施形態と同様の圧縮応力を30psiにおいて提供すると計算されることを示している。これらのより高い圧力では、より小さい圧縮応力が摩耗を低減するのに好ましい。
【0030】
ダックビル弁組立体は、針が組立体を貫いて挿入されるとき、針の周りで変形する。図6A図6B、および図6Cは、凸状の「ダイヤモンド」形を作るように針362の周りで変形する第三者のダックビルセプタム310を示している。この変形は、スリット352の反対の側部同士においての針362とセプタム310との間の2つ接触点の周りに基づかれる。この力の配置は、図7の左のパネルにおいて概略的に示されている。比較として、図7の右のパネルに示されているように、ダックビルセプタムの第3の実施形態は、リブの場所に対応する4つの接触点の周りで変形する。
【0031】
有限要素解析は、針がセプタムに挿入されている状態において、第3の実施形態と比較して、0.15Nの仮想のバネ力が加えられている(第2の実施形態のダックビルセプタムにあるようなバネの効果をシミュレーションしている)第1の実施形態のダックビルセプタムについてのミーゼス応力の低減を示している。図8はそれぞれのセプタムの下面図を示しており、ミーゼス応力を描写している。これらの結果において、白色は、実質的にミーゼス応力がないことを示しており、より暗い色はより大きなミーゼス応力を示している。示されているように、第3の実施形態のダックビルセプタムは、より小さいミーゼス応力集中を有するだけでなく、接触点の増加によるより良好な針の中心付けを得られる。
【0032】
図9A図9Eを参照すると、ダックビルセプタムの第4の実施形態310が、製造の容易性のために2つの部品で形成されている。この第4の実施形態における第1の部分312は、第1の実施形態10、第2の実施形態110、および第3の実施形態210における第1の部分12と概して同様であるが、フランジ328の上方に短い上方部分を備える。他の設計と同様に、この第1の部分312は、軸対称性を有し、上端314と、下端316と、上端314と下端316との間で延びる側部318と、第1の直径320と、上端314と下端316との間で第1の直径320に対して実質的に垂直に延びる軸322とを有する概して円筒の形である。中心孔324が軸322に沿って延びている。一部の実施形態では、中心孔324は、孔324の長さに沿う「ワイパ」とも称される少なくとも1つの狭窄部326を含む。これらの狭窄部326は、針が孔324を貫いて挿入されるときに封止として供し、埃が孔324を通過するのを機械的に防止し、針が各々の狭窄部326を連続的に通過するときに埃を針から拭き取る。第1の部分312は、側部318から延びるフランジ328をさらに備え、フランジ328は第1の直径320より大きい第2の直径330を有する。
【0033】
ダックビルセプタム310の第2の部分332は、左右対称性を有し、上端334と、下端336と、上端334と下端336との間で延びる側部338とを有する概して円筒の形である。第2の部分332の上方部分342は第1の直径344を有し、第2の部分332の下方部分346は第2の直径348を有し、第1の直径344は第2の直径348より大きい。一部の実施形態では、第2の直径348はおおよそ10.35mmであり、これは、標準的なGC注入ポートへと挿入されるとき、おおよそ0.145mmの締まり嵌めをもたらす。一部の実施形態では、上方部分342の第1の直径344はおおよそ11.72mmである。特定の実施形態では、上方部分342はおおよそ1.75mmの高さを有し、下方部分346はおおよそ2.9mmの高さを有する。他の実施形態では、セプタム310とGC注入ポートとの間の締まり嵌めは、内部ジャケット、GC注入ポートにおけるセプタム310の鉛直の圧縮によって作り出される径方向の力、または、技術的に知られている他の手段もしくは機構など、他の手段によって制定され得る。
【0034】
軸は、第1の直径344および第2の直径348に対して実質的に垂直に第2の部分332を貫いて延びている。第2の部分332の上端334は、第1の部分312のフランジ328および下端316を受け入れるような大きさおよび形とされた凹部350を備える。フランジ328と凹部350との間の摩擦による嵌まり合いは、第2の部分332の中に第1の部分312を一部維持する。他の実施形態では、第1の部分312と第2の部分332とは、接着剤、化学的接合、または技術的に知られている他の手段を介して係合してもよい。係合させられるとき、第1の部分312と第2の部分332とは、集合的にセプタムの本体と称される。
【0035】
第2の部分332の下端336は、概して円筒形の下方部分346によって定められる空洞364を含む。ダックビル弁組立体340は空洞364内に位置させられている。図9C図9D、および図9Eに示されているように、ダックビル弁組立体340は、ダックビル弁組立体340とGC入口との間の接触を回避するために、下端336からおおよそ0.55mmだけ凹まされている。ダックビル弁組立体340はスリット352を備え、そのため、針が第1の部分312の上端314へと延び、中心孔324を貫いて下組立体340から外とへ延び、スリット352から出る。
【0036】
複数のリブ366がダックビル弁組立体340から空洞364の内壁368へと延びている。描写されている実施形態では、2つのリブ366がダックビル弁組立体340の各々の側部354から延びており、各々が軸322のいずれかの側において離間されている。
【0037】
使用しているとき、セプタム310の少なくとも下方部分346はGC注入ポート空洞内で位置決めされている。セプタム310と注入ポート空洞との間の所定の締まり嵌めは圧縮力を発生させ、その圧縮力は側部338からリブ366を通じてダックビル弁組立体340の反対の側部354同士へと伝えられる。第3の実施形態のセプタム210との関連で記載したように、ダックビル弁組立体340の内部封止面370への約0.5MPa超の圧力が適切な封止を提供するが、約2.5MPa超の圧力は、繰り返しの注入においてダックビル弁組立体340の摩耗を増加させる傾向がある。他の実施形態では、セプタム310により硬いかまたはより柔らかいエラストマ材料を使う場合、より高いかまたはより低い圧力が適切な封止を提供するのに十分であり得る、または、摩耗の増加をもたらす可能性がある。リブ366の形状の変更が、低い圧力における封止を高めるために、または、特に高い圧力における針の挿入および後退の間の摩耗を最小限にするために変更されてもよい。
【0038】
図9Bおよび図9Cにおいて最も容易に見られるように、リブ366の形状は、第3の実施形態のセプタム310との関連で前述したように、ダックビル弁組立体340に、針の位置変更の間に、具体的には圧縮、曲げ、または伸長といった複数の弛緩の様態を利用させることができる。各々のリブの軸に沿っての圧縮は針が挿入されるときに起こり、そうでない場合に望ましくない摩耗をもたらす応力をいくらか軽減する。各々のリブ366は、ダックビル弁組立体340に固定された比較的薄い部分367と、内壁368に固定された比較的厚い部分369とを備え、薄い部分367と厚い部分369とは平行でない角度で配置されており、それによって、リブ366の長さに沿って幾何学的なヒンジ点371を形成している。一部の実施形態では、薄い部分367は約0.375mmの幅を有し、厚い部分369は、薄い部分367との接触位置における約0.375mmから内壁368との接触位置における約2.11mmまで増加する幅を有する。ダックビル弁組立体340を貫く針の挿入において、薄い部分367は、リブがヒンジ点371の周りで曲がるように屈折できる。それと共に、これらの特徴はリブ366を屈折させることができ、それによって、針がダックビル弁組立体340を貫いて挿入されるときに針を受け入れる。最後に、伸長する弛緩は、針の外周を受け入れるために、材料がリブ366同士の間の利用可能な空間へとスリット352に対して垂直の方向で屈折できるため、ダックビル弁組立体340の各々の側部354に沿って得ることができる。この理由のため、セプタム310は、ダックビル弁組立体340の両側部354において、離間された2つのリブ366を備える。他の実施形態では、セプタム310は、各々の側部354において追加のリブもしくはより少ないリブを備え得る、または、曲がることができる湾曲したリブを利用できる。
【0039】
エラストマのリブ366は、リブがGC入口の内側の圧力に曝される有効ダックビル表面積を縮小するため、より高い動作圧力における摩耗の影響を低減することもできる。低減された摩耗の影響が顕著となる範囲は、約3psiから約100psiの間の動作圧力である。さらに、針に対するリブ366の角度は、封止面370と針との間に追加の接触の領域を可能とし、それによって圧縮力の集中を2点から4点へと低減させる。それによって、より高い圧力におけるダックビル弁組立体340への圧縮力の低減は、封止面370における摩耗の低減をもたらす。また、針に対するリブ366の角度は、針が先の設計におけるような2点だけの代わりに4点によって支持されるため、追加的な中心付けを提供する。描写されている実施形態では、各々のリブ366の薄い部分367は、スリット352に対しておおよそ60度の角度で配向されている。他の実施形態では、角度は、セプタム310の所望の特性に応じて、5度から85度の間または30度から75度の間といった、スリットに対して垂直とならないようにできる(つまり、90度ではない)。例えば、より大きな角度は、圧縮力をダックビル弁組立体により効率的に伝えることができ、より低い動作圧力でのGCのために意図されたセプタムにおける使用により適することができ、より小さい角度は、より高い動作圧力でのGCのために意図されたセプタムにおける使用により適することができる。
【0040】
実験は、ダックビルセプタムの第4の実施形態が第1の実施形態(閉じるのを容易にするためのバネまたはリブがない)に対してダックビル弁組立体を閉じることにおいて性能の向上を呈したことを実証している。ここで図10を参照すると、有限要素解析が、低い圧力における封止についての締まり嵌めの概念の効果を立証するために使用された。解析は、封止面の方向における圧縮応力を描写するダックビル封止唇部の上面図を示しており、ダックビルセプタムの第1の実施形態と第4の実施形態とを比較している。理屈に縛られることなく、封止面に作用する圧縮応力がより高くなると、封止の性能は低い動作圧力においてもより良好になるはずである。これらの結果において、白色は、実質的に圧縮応力がないことを示しており、より暗い色はより大きな圧縮応力を示している。結果は、第4の実施形態のダックビルセプタムが、5psiでの第1のダックビルセプタム10について達成された圧縮応力より大きいダックビル唇部の圧縮応力を1psiにおいて提供したことを示している。
【0041】
ここで図11を参照すると、有限要素解析は、ダックビルセプタムの第4の実施形態について、第1の実施形態と比較して、封止面の方向における圧縮応力の低減を示している。解析は、封止面の方向における圧縮応力を描写するダックビル封止唇部の上面図を示しており、ダックビルセプタムの第1の実施形態と第4の実施形態とを比較している。これらの結果において、白色は、実質的に圧縮応力がないことを示しており、より暗い色はより大きな圧縮応力を示している。結果は、ダックビルセプタムの第4の実施形態が、20psiにおけるダックビルセプタムの第1の実施形態と同様の圧縮応力を30psiにおいて提供すると計算されることを示している。これらのより高い圧力では、より小さい圧縮応力が摩耗を低減するのに好ましい。
【0042】
有限要素解析は、針がセプタムに挿入されている状態において、第4の実施形態と比較して、0.15Nの仮想のバネ力が加えられている(第2の実施形態のダックビルセプタムにあるようなバネの効果をシミュレーションしている)第1の実施形態のダックビルセプタムについてのミーゼス応力の低減を示している。図12はそれぞれのセプタムの下面図を示しており、ミーゼス応力を描写している。これらの結果において、白色は、実質的にミーゼス応力がないことを示しており、より暗い色はより大きなミーゼス応力を示している。示されているように、第4の実施形態のダックビルセプタムは、より小さいミーゼス応力集中を有するだけでなく、接触点の増加によるより良好な針の中心付けを得られる。
【0043】
この開示を再検討した後に技術的に明らかになるように、リブの厚さ、リブの形状、または締まり嵌めへの変更によって、ダックビル弁組立体240、340に、様々な規格の鈍い/弾丸形のノーズの針の種類を受け入れさせることができると共に、動作圧力範囲および摩耗率などの所望の性能の特性を調節させることができる(閉じる力を調整することによって)。本明細書に開示されているセプタムの第3の実施形態210および第4の実施形態310は、2つの共通の種類のGC入口に嵌まるような形および大きさとされている。さらなる実施形態、または、開示されている実施形態のさらなる変更が、他の寸法のGC入口に嵌まるために使用されてもよいことは、理解されるべきである。さらに、試験は、1.0625~3.50の範囲でのリブ係合の面積の割合が、セプタムの第3の実施形態210および第4の実施形態310において好ましいレベルの性能を提供することを明らかにしている。リブ係合の面積の割合は、ダックビル弁組立体240、340と係合するリブ266、366の表面積によって除算された空洞264、364の内壁268、368に係合するリブ266、366の表面積として定められる。
【0044】
本開示の異なる実施形態の様々な態様が、以下の段落X1、X2、およびX3において述べられている。
【0045】
X1. 本開示の一実施形態は、回復力のあるエラストマ材料から形成され、中心軸を含む本体と、内壁を含む、本体における空洞と、空洞におけるダックビル弁組立体と、ダックビル弁組立体から内壁へと延びる複数のリブとを備えるセプタムを含む。
【0046】
X2. 本開示の別の実施形態は、ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法であって、回復力のあるエラストマ材料から形成される本体を有するセプタムを提供するステップであって、本体は、上端、下端、および、上端と前記下端との間で延びる少なくとも1つの側部を有する、ステップと、内壁を含む空洞を下端に提供するステップと、スリットを含むダックビル弁組立体を空洞に提供するステップと、ダックビル弁組立体から内壁へと延びる複数のリブを提供するステップであって、複数のリブの各々は、スリットに対して非垂直の角度で、ダックビル弁組立体から延びる、ステップと、下端をGC注入ポートに挿入するステップとを含み、GC注入ポートと本体との間の締まり嵌めが圧縮力を側部に加え、圧縮力はリブを通じてダックビル弁組立体へと伝えられる、方法を含む。
【0047】
X3. 本開示の別の実施形態は、ガスクロマトグラフィセプタムを使用する方法であって、エラストマ材料から形成される本体を有するセプタムを提供するステップであって、本体は、上端、下端、および、上端と前記下端との間で延びる少なくとも1つの側部を有する、ステップと、内壁を含む空洞を下端に提供するステップと、ダックビル弁組立体を空洞に提供するステップと、ダックビル弁組立体から内壁へと延びる複数のリブを提供するステップであって、複数のリブの各々は、ダックビル弁組立体から延び、ヒンジ点を含む、ステップと、下端をGC注入ポートに挿入するステップとを含み、GC注入ポートと本体との間の締まり嵌めが圧縮力を側部に加え、圧縮力はリブを通じてダックビル弁組立体へと伝えられる、方法を含む。
【0048】
なおも他の実施形態は、以下の態様のうちの1つまたは複数と組み合わされて、先の段落X1、X2、またはX3のいずれかに記載された特徴を含む。
【0049】
ダックビル弁組立体は空洞における下端から凹まされる。
【0050】
本体は、上端、下端、上端と下端との間で延びる側部、および、側部から延びるフランジを有する第1の部分と、上端、下端、上端と下端との間で延びる側部、および、上端における凹部を有する第2の部分であって、凹部は、第1の部分のフランジおよび下端を受け入れるような大きさおよび形とされる、第2の部分とを備える。
【0051】
空洞は第2の部分の下端にある。
【0052】
ダックビル弁組立体は、第2の部分の下端から空洞内に凹まされる。
【0053】
第1の部分は、中心軸に沿って延びる中心孔を備える。
【0054】
中心孔は少なくとも1つの狭窄部を含む。
【0055】
ダックビル弁組立体はスリットを備え、セプタムは、針が連続的に第1の部分の上端へと挿入され、中心孔、第1の部分の下端、凹部、およびダックビル弁組立体を通り、スリットから出ることができるように構成される。
【0056】
ダックビル弁組立体はスリットを備え、セプタムは、針が中心軸に沿って連続的に第1の部分の上端へと挿入され、中心孔、第1の部分の下端、凹部、およびダックビル弁組立体を通り、スリットから出ることができるように構成される。
【0057】
第2の部分は、形が概して円筒であり、第1の直径を有する上方部分と、第2の直径を有する下方部分とを含み、第1の直径は第2の直径より大きく、第2の直径は、ガスクロマトグラフィ注入ポート内に少なくとも一部嵌まる大きさとされる。
【0058】
複数のリブの各々はヒンジ点を含む。
【0059】
複数のリブの各々は、ダックビル弁組立体に取り付けられる薄い部分と、内壁に取り付けられる厚い部分とを含む。
【0060】
複数のリブの各々は、1.0625~3.50の範囲でのリブ係合の面積の割合を有する。
【0061】
ダックビル弁組立体は、相対する側部の対とスリットとを備え、少なくとも1つのリブが、スリットに対して非垂直の角度で、ダックビル弁組立体の各々の側部から延びる。
【0062】
角度は5度から85度の間にある。
【0063】
角度は30度から75度の間にある。
【0064】
少なくとも2つのリブがダックビル弁組立体の各々の側部から延び、リブ同士は互いから離間される。
【0065】
針をダックビル弁組立体を通じてセプタムの上端へと挿入するステップであって、針はスリットから出ていき、複数のリブの各々は、前記挿入の間に各々のリブにおいてヒンジ点の周りで曲がる、ステップをさらに含む。
【0066】
針をダックビル弁組立体を通じてセプタムの上端へと挿入するステップであって、複数のリブの各々は、前記挿入の間に各々のリブにおいてヒンジ点の周りで曲がる、ステップをさらに含む。
【0067】
前述の詳細な記載は主に理解の明確さのために提供されており、不必要な限定がそこから理解されることはなく、変更が本開示を読むことで当業者により行うことができ、本開示の精神から逸脱することなく行われ得る。特定の空間的寸法が本明細書では述べられているが、このような特定の量は単に例として提示されている。参照のシステムは、本明細書において使用されている場合、様々な方向(例えば、上、下、上方、下方、前方、後方、左、右など)を概して参照しており、これらは、本開示の様々な実施形態を読者が理解するのを助けるために提供されているだけであり、限定として解釈されるものではない。他の参照システムが、様々な実施形態を説明するために使用されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、110、210、310 ダックビルセプタム
12、312 第1の部分
14、314 上端
16、316 下端
18、318 側部
20、320 第1の直径
22、322 軸
24、324 中心孔
26、326 狭窄部
28、328 フランジ
30、330 第2の直径
32、232、332 第2の部分
34、234、334 上端
36、236、336 下端
38、238、338 側部
40、240、340 ダックビル弁組立体
42、242、342 上方部分
44、244、344 第1の直径
46、246、346 下方部分
48、248、348 第2の直径
50、250、350 凹部
52、352 スリット
54、254、354 側部
56 切込み
158 バネ
160 アーム
162 針
222 軸
264、364 空洞
266、366 リブ
267、367 薄い部分
268、368 内壁
269、369 厚い部分
270、370 内部封止面
271、371 ヒンジ点
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12