(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂化合物用の硬化剤組成物、エポキシ樹脂化合物、および多成分エポキシ樹脂系
(51)【国際特許分類】
C08G 59/56 20060101AFI20220916BHJP
C04B 26/14 20060101ALI20220916BHJP
E04B 1/41 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
C08G59/56
C04B26/14
E04B1/41 503A
(21)【出願番号】P 2021515091
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019073939
(87)【国際公開番号】W WO2020058016
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-18
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ベーレンス
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535865(JP,A)
【文献】特開2008-94961(JP,A)
【文献】特表2015-502416(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化剤組成物(B)であって、次の構造を有する式Iaによる物質、式Ibによる物質、またはそれらの混合物からなる群から選択されるベンゾオキサジン-アミン付加物であって、
【化1】
および
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5が、各々独立して、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニル基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせから選択され、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
R
6およびR
7が、各々独立して、H、または脂肪族、脂環式、もしくは芳香族、もしくは芳香脂肪族アミン基からなる群から選択されるアミノ、ジアミノ、もしくはポリアミノ基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせを表し、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
Zが、直接結合、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(R
8)(R
9)-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(R
9)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(アリール)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-O-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)
2-[C(R
10)(R
11)]
n-、二価のヘテロ環、および-[C(R
8)(R
9)]
m-アリーレン-[C(R
10)(R
11)]
n-から選択され、mおよびnが、各々独立し
て0~1
0であり、R
8、R
9、R
10、およびR
11が、各々独立して、前記R
1~R
5の基と同じ意味を有する、ベンゾオキサジン-アミン付加物と、
エポキシ基に反応性であり、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族アミンからなる群から選択され、窒素原子に結合している反応性水素原子を、分子あたり平均して少なくとも2個有する、アミンと、を含み、前記硬化剤組成物が、
硝酸塩(NO
3
-
)、ヨウ化物(I
-
)、トリフラート(CF
3
SO
3
-
)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)を含むことを特徴とする、硬化剤組成物(B)。
【請求項2】
R
3およびR
5の各々が、Hを表す、請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
Zが、直接結合、-C(R
8)(R
9)-、-C(R
8)(アリール)-、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、二価のヘテロ環、および-[C(R
8)(R
9)]
m-アリーレン-[C(R
10)(R
11)]
n-から選択され、式中、mおよびnが、各々独立して、0~5である、請求項1または2に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
R
3およびR
5が、各々Hを表し、Zが、直接結合、および-C(R
8)(R
9)-から選択され、式中、R
8およびR
9が、各々、HもしくはC
1-C
4アルキル基か
ら独立して選択されるか、または一緒にラクトン基を形成する、請求項1~3の何れか1つに記載の硬化剤組成物(B)。
【請求項5】
前記ベンゾオキサジン-アミン付加物が、前記脂肪族および/または芳香脂肪族アミン、ジアミン、および/またはポリアミンの群からのアミンと、ベンゾオキサジンを反応させることによって得ることができ、前記ベンゾオキサジンが、次の構造を有する、請求項1~4の何れか1つに記載の硬化剤組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
または
【化7】
【請求項6】
エポキシ基に反応性の前記アミンが、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサンおよびそれらの混合物、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,4-BAC)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK A)、(3(4),8(9)ビス(アミノメチル)ジシクロ[5.2.1.02,6]デカンおよびその異性体混合物(TCD-ジアミン)、アミノメチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカンおよびその異性体混合物(TCD-アミン)、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(pXDA)、ならびにN,N’-ジメチル-1,3-ベンゼンジメタンアミン、ならびにそれらの2種以上の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~5の何れか1つに記載の硬化剤組成物。
【請求項7】
エポキシ基に反応性の前記アミンが、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシク
ロヘキサン(IPDA)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK A)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(mXDA)、および1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項8】
前記塩(S)が、前記硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で前記硬化剤組成物に含有されることを特徴とする、請求項1~
7の何れか1つに記載の硬化剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂と、請求項1~
8のいずれか一項に記載の硬化剤組成物と、を含有する、エポキシ樹脂化合物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂化合物が、多成分エポキシ樹脂化合物であることを特徴とする、請求項
9に記載のエポキシ樹脂化合物。
【請求項11】
エポキシ樹脂成分(A)および硬化剤成分を含む多成分エポキシ樹脂系であって、前記エポキシ樹脂成分(A)が、硬化性エポキシ樹脂を含有し、前記硬化剤成分が、ベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含み、前記ベンゾオキサジン-アミン付加物が、次の式を有する式Iaによる物質、式Ibによる物質、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
【化8】
および
【化9】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5が、各々独立して、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミ
ノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニル基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせから選択され、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
R
6およびR
7が、各々独立して、H、または脂肪族、脂環式、もしくは芳香族、もしくは芳香脂肪族アミン基からなる群から選択されるアミノ、ジアミノ、もしくはポリアミノ基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせを表し、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
Zが、直接結合、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(R
8)(R
9)-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(R
9)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(アリール)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-O-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)
2-[C(R
10)(R
11)]
n-、二価のヘテロ環、および-[C(R
8)(R
9)]
m-アリーレン-[C(R
10)(R
11)]
n-から選択され、mおよびnが、各々独立し
て0~1
0であり、R
8、R
9、R
10、およびR
11が、各々独立して、前記R
1~R
5の基と同じ意味を有し、エポキシ基に反応性である前記アミンが、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族アミンからなる群から選択され、窒素原子に結合している反応性水素原子を、分子あたり平均して少なくとも2個有し、
硝酸塩(NO
3
-
)、ヨウ化物(I
-
)、トリフラート(CF
3
SO
3
-
)、およびそれらの混合物から選択される塩(S)が、前記エポキシ樹脂成分(A)および/または前記硬化剤成分に含有されることを特徴とする、多成分エポキシ樹脂系。
【請求項12】
前記塩(S)が、前記硬化剤成分に含有されることを特徴とする、請求項
11に記載の多成分エポキシ樹脂系。
【請求項13】
請求項
9または
10に記載のエポキシ樹脂化合物、または請求項
11または
12に記載の多成分エポキシ樹脂系が、化学的留め付けに使用される、掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けするための方法。
【請求項14】
化学的に留め付けするためのエポキシ樹脂化合物における加速剤としての、
硝酸塩(NO
3
-
)、ヨウ化物(I
-
)、トリフラート(CF
3
SO
3
-
)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)の使用であって、前記エポキシ樹脂化合物が、ベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含み、前記ベンゾオキサジン-アミン付加物が、次の構造を有する式Iaによる物質、式Ibによる物質、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
【化10】
および
【化11】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5が、各々独立して、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニル基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせから選択され、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
R
6およびR
7が、各々独立して、H、または脂肪族、脂環式、もしくは芳香族、もしくは芳香脂肪族アミン基からなる群から選択されるアミノ、ジアミノ、もしくはポリアミノ基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせを表し、前記基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
Zが、直接結合、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(R
8)(R
9)-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(R
9)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(アリール)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-O-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)
2-[C(R
10)(R
11)]
n-、二価のヘテロ環、および-[C(R
8)(R
9)]
m-アリーレン-[C(R
10)(R
11)]
n-から選択され、mおよびnが、各々独立し
て0~1
0であり、R
8、R
9、R
10、およびR
11が、各々独立して、前記R
1~R
5基と同じ意味を有し、エポキシ基に反応性である前記アミンが、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族アミンからなる群から選択され、窒素原子に結合している反応性水素原子を、分子あたり平均して少なくとも2個有する、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設要素を化学的に留め付けるためのエポキシ樹脂化合物用の硬化剤組成物、エポキシ樹脂化合物、および多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明はさらに、掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法に関する。本発明はまた、化学的に留め付けるためのエポキシ樹脂化合物における加速剤としての塩(S)の使用に関し、エポキシ樹脂化合物が、ベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含む。
【0002】
硬化性エポキシ樹脂およびアミン硬化剤に基づく多成分モルタル化合物は、しばらく前から知られており、接着剤、亀裂を修復するための補修ペースト、ならびに掘削孔内の様々な基材にアンカーロッド、強化バー、およびネジなどの建設要素を留め付けるための接着系アンカーとして使用されている。しかしながら、モルタル化合物の耐荷重(破壊荷重)は、35℃の温度から減少し始めるので、既知のモルタル化合物は、アラブ首長国連邦などの高温国での使用が非常に限定される。さらに、高温は、建設現場でのモルタル化合物の取り扱い挙動および処理時間に悪影響を及ぼす。
【0003】
良好な取り扱い挙動を実現するには、従来のモルタル化合物では、高い割合の低粘度成分、低い割合の充填剤、および粗い充填剤を提供する必要があるが、これは、高温での荷重下のクリープ挙動が低いという点で不利である。加えて、非反応性または非架橋性の希釈剤の割合が高く、反応性成分が少ない結果、長い処理時間が達成され、これが硬化時間の短縮を妨げる。
【0004】
エポキシアミン系モルタル化合物は、一般に硬化速度が遅く、ポットライフまたはゲル化時間が長く、通常、耐熱性および耐クリープ性が低い。これは、それらが狭い温度範囲でのみ容易に取り扱うことができ、良好な荷重値に到達することができることを意味する。エポキシアミン系モルタル化合物の硬化時間は、一般に、適切なアミンを選択することによって、および/または三級アミン、アルコール、および酸などの触媒を添加することによって設定される。
【0005】
多成分エポキシ樹脂化合物用の硬化剤成分に、ベンゾオキサジン-アミン付加物とアミンとの組み合わせを使用することが従来技術では既知である。例えば、特許文献1は、ベンゾオキサジンとプロトン化アミンとの水性分散液について記載している。分散液を乾燥および硬化させて、表面コーティングおよびプライマーを生成することができる。ベンゾオキサジンとアミンとの混合物は、135℃で硬化する。
【0006】
特許文献2は、ベンゾオキサジン、アミン、およびエポキシからなり、およそ100℃の高温で硬化する、特にコーティング用の多成分系について記載している。ベンゾオキサジン-アミン-エポキシ付加物およびベンゾオキサジン-アミン付加物が、可能な中間生成物として提案されている。
【0007】
特許文献3は、ベンゾオキサジンと、アミンおよびチオールの混合物との反応からのオリゴマーおよびポリマーについて記載している。硬化温度が少なくとも100℃である、ベンゾオキサジン、チオール、およびアミンの硬化性組成物が開示されている。
【0008】
ベンゾオキサジン-アミン付加物が使用される従来技術における既知のエポキシ系の不利な点は、それらの硬化時間が遅いことである。これにより、これらの系は、化学的留め付けとして、特に接着系アンカーとして掘削孔内でのアンカー固定留め付け手段としては好適ではない。温度を80℃超に上げることは、特に屋外用途では現実的ではない。したがって、特にベンゾオキサジン、アミン、およびエポキシ成分からなる、従来技術では既知である混合物は、建設現場で使用するには硬化が遅すぎ、したがって好適ではない。
【0009】
未だ未公開の特許文献4は、ベンゾオキサジン-アミン付加物とアミンとを含む硬化剤組成物について記載しており、このベンゾオキサジン-アミン付加物は、硬化剤組成物中に少なくとも8.5重量%の割合で存在する。エポキシとアミンとの反応を加速するベンゾオキサジン-アミン付加物に固有のOHおよびtert-アミン官能基に起因する、粘度関連などの問題を避けるために、ベンゾオキサジン-アミン付加物の使用は、通常、ポリマーまたはオリゴマー加速剤(ノボラックなど)を用いずに行われ得る。それにもかかわらず、ベンゾオキサジン-アミン付加物が硬化剤として使用されるエポキシ樹脂化合物は、一般に、およそ10~12時間の長い硬化時間を有する。これは、硬化剤組成物が高い割合のベンゾオキサジン-アミン付加物を有する場合、特に重要である。
【0010】
しかしながら、接着系アンカーの硬化時間が長いと、建設現場での作業が遅れるので、例えば6時間後にはすでに十分な強度を有するエポキシ-アミン系を用いて作業することが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第014 99 89号明細書
【文献】国際特許出願公開第2013/063236号明細書
【文献】国際特許出願公開第2013/048851号明細書
【文献】特許出願第17207545.9号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明によって対処される問題は、少なくとも1種のベンゾオキサジン-アミン付加物を含有し、留め付け目的に好適なエポキシ樹脂化合物を提供することである。従来のモルタル化合物と比較して、硬化時間はより短く、比較的高い引抜き強度を有することを意図する。特に、本発明によって対処される問題は、従来のモルタル化合物と比較して、高温、例えば35℃~50℃の温度範囲で、より短い硬化時間および改善された引き抜き強度を有するエポキシ樹脂化合物を提供することである。さらに、エポキシ樹脂化合物が、従来のモルタル化合物と比較して、水で満たされた掘削孔において改善された引き抜き強度を呈することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって対処される問題は、請求項1に記載の硬化剤組成物によって解決される。本発明による硬化剤組成物の好ましい態様は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせることができる。
【0014】
本発明はさらに、請求項10に記載のエポキシ樹脂化合物、および請求項12に記載の多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明によるエポキシ樹脂化合物および多成分エポキシ樹脂系の好ましい態様は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせることができる。
【0015】
本発明はさらに、請求項14に記載の掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法に関する。
【0016】
本発明はまた、請求項15に記載のエポキシ樹脂化合物における加速剤としての少なくとも1種の塩(S)の使用を網羅する。
【0017】
本発明の文脈内で、上および次の記載で使用される用語は、次の意味を有する。
「脂肪族化合物」とは、芳香族化合物を除く、非環式または環式の飽和または不飽和炭素化合物であり、
「脂環式化合物」とは、ベンゼン誘導体または他の芳香族系を除く、炭素環構造を有する化合物であり、
「芳香脂肪族化合物」とは、官能化された芳香脂肪族化合物の場合、存在する官能基が化合物の芳香族部分ではなく脂肪族に結合しているような芳香族骨格を有する脂肪族化合物であり、
「芳香族化合物」とは、ヒュッケル則(4n+2)に従う化合物であり、
「アミン」とは、1個、2個、または3個の水素原子を炭化水素基で置き換えることによってアンモニアから誘導され、一般構造RNH2(一級アミン)、R2NH(二級アミン)、およびR3N(三級アミン)を有する化合物であり(参照:A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997)によって編集されたIUPAC Chemical Terminology,2nd ed.(the “Gold Book”))、
「塩」とは、正に帯電したイオン(カチオン)および負に帯電したイオン(アニオン)で構成される化合物である。これらのイオン間にはイオン結合がある。表現「硝酸の塩」とは、硝酸(HNO3)から誘導され、アニオンとして硝酸塩(NO3
-)を含む化合物について記載している。表現「亜硝酸の塩」とは、亜硝酸(HNO2)から誘導され、アニオンとして亜硝酸塩(NO2
-)を含む化合物について記載している。表現「ハロゲンの塩」とは、周期表の第7族の元素をアニオンとして含む化合物について記載している。特に、表現「ハロゲンの塩」とは、アニオンとしてフッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)を含む化合物を意味すると理解されるべきである。表現「トリフルオロメタンスルホン酸の塩」とは、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)から誘導され、アニオンとしてトリフラート(CF3SO3
-)を含む化合物について記載している。本発明の文脈において、用語「塩」とはまた、塩の対応する水和物を網羅する。加速剤として使用される塩(S)はまた、本発明の文脈において「塩」と称される。
【0018】
本発明によれば、硬化剤組成物(B)は、ベンゾオキサジン-アミン付加物を含み、ベンゾオキサジン-アミン付加物が、次の構造を有する式Iaによる物質、式Ibによる物質、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
【化1】
および
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5が、各々独立して、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニル基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせから選択され、これらの基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
R
6およびR
7が、各々独立して、H、または脂肪族、脂環式、もしくは芳香族アミン基からなる群から選択されるアミノ、ジアミノ、もしくはポリアミノ基、およびまたこれらの基のうちの2種以上の組み合わせを表し、これらの基が、各々非置換または任意選択的に置換可能であり、
Zが、直接結合、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(R
8)(R
9)-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(R
9)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(R
8)(アリール)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-C(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-O-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)-[C(R
10)(R
11)]
n-、-[C(R
8)(R
9)]
m-S(O)
2-[C(R
10)(R
11)]
n-、二価のヘテロ環、および-[C(R
8)(R
9)]
m-アリーレン-[C(R
10)(R
11)]
n-から選択され、mおよびnが、各々独立して、0~10、好ましくは0~5であり、R
8、R
9、R
10、およびR
11が、各々独立して、R
1~R
5の基と同じ意味を有する。
【0019】
さらに、硬化剤組成物(B)は、エポキシ基に反応性であり、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族アミンからなる群から選択され、窒素原子に結合している反応性水素原子を、分子あたり平均して少なくとも2個有する、アミンを含む。
【0020】
本発明によれば、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群からの少なくとも1種の塩(S)が、加速剤として使用される。好ましくは、塩(S)は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で硬化剤組成物に含有される。
【0021】
従来技術は、関連するベンゾオキサジンおよびアミン成分と平衡状態で、溶液形態で存在するベンゾオキサジン-アミン付加物について記載している。これらの混合物は、加熱によって重合することができる。ベンゾオキサジンとアミンとの混合物にエポキシ成分を添加する場合、これらの3種の成分から多数の異なる付加物が形成され、これらの付加物も加熱されると重合する。
【0022】
本発明は、建設現場での高温における、「接着系アンカー」と称されるものとしてのベンゾオキサジン-アミン付加物含有エポキシ樹脂化合物を使用することを可能にする。したがって、高温での短い硬化時間の後でさえも、有利な荷重特性を有する接着系アンカーが得られる。
【0023】
留め付け目的のエポキシ樹脂化合物に、本発明による硬化剤組成物を使用することにより、硬化反応の相当な加速をもたらす。硬化化合物は、高温で優れた引き抜き強度を呈し、したがって、短期間、およそ4~6時間以内、場合によってはさらにはるかに早い時間の後に、荷重を受けることができる。したがって、本発明による硬化剤組成物およびそれから調製されるエポキシ樹脂化合物は、高温な国での使用に特に好適である。さらに、硬化化合物は、水で満たされた掘削孔内で優れた引き抜き強度を呈する。
【0024】
構造IaおよびIbによるベンゾオキサジン-アミン付加物では、R3およびR5が、各々Hであることが好ましい。
【0025】
さらに、Zは、好ましくは、直接結合、-C(R8)(R9)-、-C(R8)(アリール)-、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)2-、二価のヘテロ環、および-[C(R8)(R9)]m-アリーレン-[C(R10)(R11)]n-から選択され、式中、mおよびnが、各々独立して、0~5である。Zは、特に好ましくは、直接結合、または-C(R8)(R9)-から選択され、式中、R8およびR9が、各々独立して、HもしくはC1-C4アルキル基、好ましくはHもしくはメチルから選択されるか、または一緒に二価のラクトン基を形成する。
【0026】
有利な態様では、ベンゾオキサジン-アミン付加物における構造IaおよびIbによるR3およびR5は、各々Hであり、Zは、上に示される意味を有する。
【0027】
好ましい態様では、ベンゾオキサジン-アミン付加物は、9重量%~65重量%、好ましくは9.5重量%~55重量%、より好ましくは10重量%~45重量%、特に好ましくは10重量%~35重量%の割合で硬化剤組成物(B)中に存在する。
【0028】
ベンゾオキサジン-アミン付加物は、少なくとも1種のベンゾオキサジン成分を、少なくとも1種のアミン成分、好ましくは芳香族アミン、または芳香脂肪族アミン、ジアミン成分、および/もしくはポリアミン成分と反応させることによって得られる。本発明の範囲を限定するものではないが、ベンゾオキサジン-アミン付加物の調製に好適なベンゾオキサジンは、好ましくは、次の構造を有し、
【化3】
または
【化4】
式中、R
1~R
5、およびZが、上に示される意味を有する。
【0029】
ベンゾオキサジン-アミン付加物の有利な態様では、R3およびR5は、各々Hを表し、Zは、直接結合、-C(R8)(R9)-、-C(R8)(アリール)-、-C(O)-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)2-、二価のヘテロ環、および-[C(R8)(R9)]m-アリーレン-[C(R10)(R11)]n-から選択され、式中、mおよびnが、各々独立して、0~5である。Zは、特に好ましくは、直接結合、または-C(R8)(R9)-から選択され、式中、R8およびR9が、各々独立して、HもしくはC1-C4アルキル基、好ましくはHもしくはメチルから選択されるか、または一緒に二価のラクトン基を形成する。
【0030】
ベンゾオキサジンは、好ましくは、次の構造から選択される:
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
および
【化9】
【0031】
本発明の範囲を限定するものではないが、ベンゾオキサジン-アミン付加物の調製に、および/またはエポキシ基に反応性であるアミンとして硬化剤組成物(B)で使用するのに好適なアミンは、好ましくは、非分岐または分岐C2-C10アルキルジアミン、C2-C10ポリアルキレンポリアミン、ならびに好ましくは置換または無置換のベンゼン環を含有する芳香族および芳香脂肪族アミンの群から選択される。
【0032】
アミンは、個々に、または上記のアミンのうちの2種以上の混合物としてのいずれかで使用することができる。2種以上のアミンで構成されるアミン混合物が有利であることが見出されている。
【0033】
アルキルジアミンは、好ましくは、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサンおよびそれらの混合物(TMD)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,4-BAC)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK A)、(3(4),8(9)ビス(アミノメチル)ジシクロ[5.2.1.02,6]デカンおよびその異性体混合物(TCD-ジアミン)、アミノメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンおよびその異性体混合物(TCD-アミン)、ならびに1,6-ヘキサメチレンジアミンから選択される。
【0034】
ポリアルキレンポリアミンは、好ましくは、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA)から選択される。
【0035】
芳香族アミンは、好ましくは、ジエチルメチルベンゼンジアミンおよび4,4’-スルホニルジアニリンから選択され、芳香脂肪族ポリアミンは、好ましくは、1,3-ベンゼンジメタンアミン(mXDA)、および1,4-ベンゼンジメタンアミン(pXDA)、およびN、N’-ジメチル-1,3-ベンゼンジメタンアミンから選択される。
【0036】
特に好ましいアミンは、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK A)、m-キシリレンジアミン(mXDA)、および1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、およびそれらの混合物である。
【0037】
次のアミン、例えば、1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、1,3-ジアミノペンタン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-および1,4-ジアミノシクロヘキサン(1,2-DACHおよび1,4-DACH)、メチルシクロヘキシルジアミン(mCDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキソンデカン(trioxundecane)、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジアミノ-メチル-3-アザペンタン、1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、4-アミノメチル-1,8-ジアミノオクタン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン、5-(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチルアミン(NBDA、ノルボルナンジアミン)、ジメチルジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピル-アミノプロピルアミン(DMAPAPA)、ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、混合多環式アミン(MPCA)(例えばAncamine 2168)、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin C260)、N-エチルアミノピペラジン(N-EAP)、1,14-ジアミノ-4,11-ジオキサテトラデカン、ジプロピレントリアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、二級ポリオキシプロピレンジアミンおよびトリアミン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、ビス(アミノ-メチル)トリシクロペンタジエン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、ビス-(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ジペンチルアミン、N-2-(アミノエチル)ピペラジン(N-AEP)、N-3-(アミノプロピル)ピペラジン、ならびにピペラジンもまた好適である。
【0038】
上記のすべての物質またはそれらの混合物は、ベンゾオキサジン-アミン付加物を調製するための、ベンゾオキサジンおよびアミン成分として使用することができる。当業者には、ベンゾオキサジン-アミン付加物を調製するための様々な方法が知られている。
【0039】
ベンゾオキサジン-アミン付加物を調製するために、好ましくは、上記のベンゾオキサジン成分のうちの1種を溶媒に溶解させ、高温でアミン成分と反応させる。アミンは、好ましくは過剰量で添加される。溶媒の代わりに、過剰量のアミン成分にベンゾオキサジンを溶解させてもよい。
【0040】
反応時間は、好ましくは30時間以下、より好ましくは26時間以下、特に好ましくは最長およそ24時間である。
【0041】
反応温度は、好ましくは少なくとも50℃かつ80℃未満、好ましくは75℃未満、より好ましくは70℃未満、さらにより好ましくは65℃未満、特に好ましくは60℃未満である。得られるベンゾオキサジン-アミン付加物は、単独で、またはアミン成分中の溶液として得られる。
【0042】
さらなる方法によれば、ベンゾオキサジン成分は、アミン成分中に溶解される。これは、他の物質、特に硬化剤組成物(B)で追加的に使用される物質と混合することができる。混合物は、少なくとも8.5重量%のベンゾオキサジン-アミン付加物の割合を有する混合物を得るために、室温(21℃)で少なくとも5日間、好ましくは少なくとも6日間、より好ましくは少なくとも1週間貯蔵される。混合物が十分に長い時間貯蔵されない場合、ベンゾオキサジン-アミン付加物濃度は十分に高くない。
【0043】
硬化剤組成物(B)は、エポキシ基に反応性である少なくとも1種のアミンをさらに含む。エポキシ基に反応性のアミンは、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族アミンからなる群から選択され、窒素原子に結合している反応性水素原子を、分子あたり平均して少なくとも2個有する、ジアミンまたはポリアミンである。アミンは、上記のすべてのアミン、およびエポキシアミン系として当業者に既知の従来のアミンから選択することができる。
【0044】
本発明の範囲を限定するものではないが、しかしながら好適なアミンの例を以下に示す:1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサンおよびそれらの混合物(TMD)、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,2-BAC)、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,2-および1,4-ジアミノシクロヘキサン(1,2-DACHおよび1,4-DACH)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ジエチレントリアミン(DETA)、4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキソンデカン、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジアミノ-メチル-3-アザペンタン、1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、4-アミノメチル-1,8-ジアミノオクタン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、pXDA)、5-(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチルアミン(NBDA、ノルボルナンジアミン)、ジメチルジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)、2-メチルペンタンジアミン(DYTEK A)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン(IPDA))、ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、ジエチルメチルベンゼンジアミン(DETDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(ダプソン)、混合多環式アミン(MPCA)(例えばAncamine 2168)、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin C260)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、(3(4),8(9)ビス(アミノメチルジシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン、TCD-ジアミン)、メチルシクロヘキシルジアミン(MCDA)、N,N’-ジアミノプロピル-2-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジアミン、N,N’-ジアミノプロピル-4-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジアミン、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、ならびに2-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)プロパン-1,3-ジアミン。
【0045】
本発明による硬化剤組成物中の好ましいアミンは、2-メチルペンタンジアミン(DYTEK A)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、PXDA)、1,6-ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン(TMD)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、N-エチルアミノピペラジン(N-EAP)、(3(4),8(9)ビス(アミノメチル)ジシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン、TCD-ジアミン)、1,14-ジアミノ-4,11-ジオキサテトラデカン、ジプロピレントリアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、二級ポリオキシプロピレンジアミンおよびトリアミン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、ビス(アミノ-メチル)トリシクロペンタジエン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、ジペンチルアミン、N-2-(アミノエチル)ピペラジン(N-AEP)、N-3-(アミノプロピル)ピペラジン、ピペラジン、ならびにメチルシクロヘキシルジアミン(mCDA)などのポリアミンである。
【0046】
エポキシ基に反応性のアミン、およびベンゾオキサジン-アミン付加物を調製するために使用されるアミンは、同じであっても異なっていてもよい。エポキシ基に反応性のアミン、およびベンゾオキサジン-アミン付加物を調製するためのアミンの両方に、同じアミンを使用することが好ましい。
【0047】
好ましくは脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族チオール、およびそれらの混合物からなる群から選択されるチオール、ジチオール、および/またはポリチオールを、アミンの代替物として、および/または硬化剤組成物(B)のさらなる添加剤として使用してもよい。
【0048】
本発明によれば、硬化剤組成物は、加速剤として少なくとも1種の塩(S)を含有する。本発明によれば、塩(S)は、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種の塩である。塩(S)は、好ましくは、硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩である。硝酸塩(NO3
-)、ヨウ化物(I-)、トリフラート(CF3SO3
-)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩(S)が特に好ましいことが見出されている。
【0049】
アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、硝酸ランタニド、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適な硝酸の塩である。対応する硝酸の塩は、市販されている。好ましくは、Ca(NO3)2またはNaNO3などのアルカリ金属硝酸塩および/またはアルカリ土類金属硝酸塩が、硝酸の塩として使用される。硝酸の塩の溶液、例えば、Ca(NO3)2/HNO3を含有する溶液を塩(S)として使用することも可能である。この溶液を調製するためには、CaCO3をHNO3に溶解させる。
【0050】
アルカリ金属亜硝酸塩、アルカリ土類金属亜硝酸塩、亜硝酸ランタニド、亜硝酸アルミニウム、亜硝酸アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適な亜硝酸の塩である。対応する亜硝酸の塩は、市販されている。好ましくは、アルカリ金属亜硝酸塩、および/またはCa(NO2)2などのアルカリ土類金属亜硝酸塩が、亜硝酸の塩として使用される。
【0051】
ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化ランタニド、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適なハロゲンの塩である。対応するハロゲンの塩は、市販されている。ハロゲンは、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、使用するにはヨウ化物が特に好ましい。
【0052】
アルカリ金属トリフラート、アルカリ土類金属トリフラート、ランタニドトリフラート、アルミニウムトリフラート、アンモニウムトリフラート、およびそれらの混合物は、特に好適なトリフルオロメタンスルホン酸の塩である。トリフルオロメタンスルホン酸の対応する塩は、市販されている。好ましくは、アルカリ金属硝酸塩および/またはCa(CF3SO3)2などのアルカリ土類金属硝酸塩が、トリフルオロメタンスルホン酸の塩として使用される。
【0053】
原則として、塩(S)のカチオンは、有機、無機、またはそれらの混合物であってもよい。塩(S)のカチオンは、好ましくは無機カチオンである。
【0054】
好適な有機カチオンは、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオンなどの、C1-C6-アルキル基などの有機基で置換されているアンモニウムカチオンである。
【0055】
塩(S)の好適な無機カチオンは、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アルミニウム、アンモニウム(NH4
+)、およびそれらの混合物からなる群から、より好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から、さらにより好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカチオンである。塩(S)のカチオンは、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0056】
したがって、次の化合物または成分は、塩(S)として特に好適である:Ca(NO3)2(硝酸カルシウム、通常カルシウム、Ca(NO3)2四水和物として使用される)、Ca(NO3)2/HNO3、KNO3(硝酸カリウム)、NaNO3(硝酸ナトリウム)、Mg(NO3)2(硝酸マグネシウム、通常Mg(NO3)2六水和物として使用される)、Al(NO3)3(硝酸アルミニウム、通常Al(NO3)3九水和物として使用される)、NH4NO3(硝酸アンモニウム)、Ca(NO2)2(硝酸カルシウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、NaBr(臭化ナトリウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)、Ca(CF3SO3)2(カルシウムトリフラート)、Mg(CF3SO3)2(マグネシウムトリフラート)、およびLi(CF3SO3)2(チリウムトリフラート)の混合物。
【0057】
本発明による硬化剤組成物は、1種以上の塩(S)を含み得る。塩は、個々に、および指定の塩のうちの2種以上の混合物で、の両方で使用することができる。
【0058】
硬化剤組成物中の塩(S)の溶解特性を改善するために、塩(S)を好適な溶媒に溶解させてもよく、したがって溶液として使用してもよい。この目的には、例えば、メタノール、エタノール、およびグリセロールなどの有機溶媒が好適である。しかしながら、水を溶媒として使用してもよく、上記の有機溶媒との混合物でも可能である。対応する塩溶液を調製するために、塩(S)を溶媒に添加し、好ましくは完全に溶解するまで撹拌する。
【0059】
好ましくは、塩(S)は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で硬化剤組成物に含有される。好ましくは、塩(S)は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、硬化剤組成物中0.5~12重量%の割合で、より好ましくは1.0~10重量%の割合で、さらにより好ましくは1.5~8.0重量%の割合で含有される。
【0060】
さらに有利な態様では、硬化剤組成物(B)は、加速剤、接着促進剤、増粘剤、および充填剤の群から選択される少なくとも1種のさらなる添加剤を含む。
【0061】
好ましくは、非反応性希釈剤(溶媒)は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、最大30重量%、例えば、1~20重量%の量で含有され得る。好適な溶媒の例は、メタノール、エタノール、またはグリコールなどのアルコール、アセトンなどの低級アルキルケトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低級アルキル低級アルカノイルアミド、キシレン、またはトルエン、フタル酸エステル、またはパラフィンなどの低級アルキルベンゼンである。溶媒の量は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは≦5重量%である。
【0062】
加速剤は、硬化剤組成物(B)の総重量に基づいて、0.001~20重量%、好ましくは0.001~5重量%の重量割合で硬化剤組成物(B)に含有される。好適な加速剤の例は、特に、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)フェノール、およびビス[(ジメチルアミノ)メチル]フェノールである。好適な共加速剤混合物は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびビス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含有する。この種の混合物は、例えば、Ancamine(登録商標)K54(Evonik)として市販されている。
【0063】
接着促進剤を使用することにより、掘削孔壁とモルタル化合物との架橋が改善され、それにより、硬化状態での接着が増加する。好適な接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル-ジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノエチル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの少なくとも1個のSi結合加水分解性基を有するシランの群から選択される。特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AMMO)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、2-アミノエチル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(DAMO)、およびトリメトキシシリルプロピルジエチレンテトラミン(TRIAMO)が接着促進剤として好ましい。さらなるシランは、例えば、欧州特許出願公開第3000792号明細書に記載されており、その内容は、本出願に組み込まれる。
【0064】
接着促進剤は、硬化剤組成物の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%の量で含有され得る。
【0065】
好ましくは、ケイ酸が増粘剤として使用される。増粘剤は、硬化剤組成物(B)の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の量で含有され得る。
【0066】
無機充填剤、特に、ポルトランドセメントもしくはアルミン酸セメントなどのセメント、ならびに他の水硬性無機物質、石英、ガラス、コランダム、磁器、陶器、バライト、ライトスパー(light spar)、石膏、タルク、および/またはチョーク、およびそれらの混合物は、充填剤として使用される。さらに、ヒュームドシリカなどの増粘剤を無機充填剤として使用することもできる。特に好適な充填剤は、Millisil W3、Millisil W6、Millisil W8、およびMillisil W12、好ましくはMillisil W12などの、表面処理されていない石英粉末、微細石英粉末、および超微細石英粉末である。シラン化石英粉末、微細石英粉末、および超微細石英粉末も使用することができる。これらは、例えば、QuarzwerkeからのSilbond製品シリーズから市販されている。製品シリーズSilbond EST(エポキシシラン修飾)およびSilbond AST(アミノシラン処理)が特に好ましい。さらに、デンカ社(日本)からのASFPタイプ(d50=0.3μm)、またはタイプ指定45(d50<0.44μm)、07(d50>8.4μm)、05(d50<5.5μm)、および03(d50<4.1μm)を有するDAWもしくはDAMなどのグレードの酸化アルミニウム超微細充填剤などの酸化アルミニウム系充填剤が可能である。さらに、Hoffman MineralからのAktisil AMタイプ(アミノシラン処理、d50=2.2μm)、およびAktisil EM(エポキシシラン処理、d50=2.2μm)の表面処理された微細および超微細充填剤を使用してもよい。
【0067】
無機充填剤は、砂、細粉、または成形体の形態、好ましくは繊維またはボールの形態で添加され得る。充填剤は、以下に記載の多成分エポキシ樹脂系の1種またはすべての成分中に存在し得る。タイプおよび粒子サイズ分布/(繊維)長さに関する充填剤の好適な選択を使用して、レオロジー挙動、押し出し力、内部強度、引張強度、引き抜き力、および衝撃強度など、用途に関連する特性を制御することができる。
【0068】
有利な態様では、硬化剤組成物(B)は、20~1000g/EQ、好ましくは30~500g/EQ、より好ましくは40~350g/EQ、さらにより好ましくは50~225g/EQ、特に好ましくは50~150g/EQのAHEW(アミン水素当量)を有する。AHEW値は、アミンの分子量(Mw)を分子あたりの反応性水素原子の数で除算することによって決定する(H eq.=Mw/官能性)。
【0069】
実験では、エポキシ樹脂(既知のEEWを有する)とアミン成分との混合物からガラス転移温度(Tg)を決定することによってAHEW値を得ることができる。この場合、エポキシ樹脂/アミン混合物のガラス転移温を、異なる比で決定する。試料を、-20K/分の加熱速度で21℃から-70℃に冷却し、第1の加熱サイクルで250℃(加熱速度10K/分)まで加熱し、次いで、-70℃まで再冷却し(加熱速度-20K/分)、最後のステップで200℃まで加熱する(20K/分)。第2の加熱サイクルで最高のガラス転移温度(「Tg2」)を有する混合物は、エポキシ樹脂とアミンとの最適な比を有する。AHEW値は、既知のEEWおよび最適なエポキシ樹脂/アミン比から計算することができる。
例:EEW=158g/モル
最大Tg2を有するアミン/エポキシ樹脂混合物:4.65gのエポキシ樹脂を含む1gのアミン
【数1】
【0070】
本発明はさらに、少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂および上述の硬化剤組成物を含むエポキシ樹脂化合物に関する。エポキシ樹脂化合物は、好ましくは多成分エポキシ樹脂化合物、より好ましくは二成分エポキシ樹脂化合物である。
【0071】
当業者には既知であり、この目的のために市販されている、分子あたり平均して2個以上のエポキシ基、好ましくは2個のエポキシ基を含有する多数の化合物は、エポキシ樹脂成分(A)中の硬化性エポキシとして使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、飽和および不飽和の両方、ならびに脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得、ヒドロキシル基を有してもよい。それらはまた、混合または反応条件下で破壊的な二次反応を引き起こさない置換基、例えば、アルキルまたはアリール置換基、エーテル基などを含有し得る。本発明の文脈では、三量体および四量体エポキシも好適である。
【0072】
エポキシ樹脂は、好ましくは、多価アルコール、特にビスフェノールおよびノボラックなどの多価フェノール、特に、平均1.5個以上、特に2個以上、例えば、2~10個のグリシジル基官能性を有するものから誘導されたグリシジルエーテルである。
【0073】
エポキシ樹脂を調製するために使用される多価フェノールの例は、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、ノボラック、4,4’-ジヒドロキシフェニルシクロヘキサン、および4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパンである。
【0074】
エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA、またはビスフェノールF、またはそれらの混合物のジグリシジルエーテルである。150~300/g/EQのエポキシ当量(EEW)を有するビスフェノールAおよび/またはFに基づく液体ジグリシジルエーテルが特に好ましく使用される。
【0075】
さらなる例は、例えばMn≦2000g/モルの平均分子量を有する、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、および/またはビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂である。
【0076】
本発明はさらに、エポキシ樹脂成分(A)および硬化剤成分を含む多成分エポキシ樹脂系であって、エポキシ樹脂成分(A)が、硬化性エポキシ樹脂を含有し、硬化剤成分が、式Iaによる物質、式Ibによる物質、またはそれらの混合物からなる群から選択されるベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとである、多成分エポキシ樹脂系に関する。多成分エポキシ樹脂系はまた、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせから選択される塩(S)を含み、塩(S)が、エポキシ樹脂成分(A)および/または硬化剤成分に含有される。多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは二成分エポキシ樹脂系である。
【0077】
上の記述は、硬化性エポキシ樹脂、式Iaおよび式Ibによる物質、ならびに塩(S)に適用される。
【0078】
加速剤として使用される塩(S)は、エポキシ樹脂成分(A)もしくは硬化剤成分、またはエポキシ樹脂成分(A)と硬化剤成分との両方に含有され得る。塩(S)は、少なくとも硬化剤成分に、好ましくは硬化剤成分のみに含有されることが好ましい。この場合、上述の硬化剤組成物は、多成分エポキシ樹脂系で使用される。
【0079】
エポキシ樹脂成分(A)中のエポキシ樹脂の割合は、エポキシ樹脂成分(A)の総重量に基づいて、>0重量%~100重量%、好ましくは10~70重量%、特に好ましくは30重量%~60重量%である。
【0080】
エポキシ樹脂成分(A)は、エポキシ樹脂に加えて、任意選択的に、少なくとも1種の反応性希釈剤を含有してもよい。芳香族基を含有するエポキシよりも低い粘度を有する、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族のモノアルコール、または特に多価アルコールのグリシジルエーテルが、反応性希釈剤として使用される。反応性希釈剤の例は、モノグリシジルエーテル、例えば、o-クレジルグリシジルエーテル、および1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ならびにグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)、またはトリメチロールエタントリグリシジルエーテル(TMETGE)などのトリ-もしくはより高次のグリシジルエーテルなどの少なくとも2個のエポキシド官能性を有するグリシジルエーテルであり、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルが好ましい。また、これらの反応性希釈剤のうちの2種以上の混合物、好ましくはトリグリシジルエーテルを含有する混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)との、または1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)とトリメチロールエタントリグリシジルエーテル(TMETGE)との混合物を使用してもよい。
【0081】
反応性希釈剤は、好ましくは、エポキシ樹脂成分(A)の総重量に基づいて、0重量%~60重量%、より好ましくは1重量%~20重量%の量で存在する。
【0082】
好適なエポキシ樹脂および反応性希釈剤はまた、Michael Dornbusch,Ulrich Christ and Rob Rasing,“Epoxidharze,”Vincentz Network GmbH & Co.KG(2015),ISBN 13:9783866308770の標準参照に見出すことができる。これらの化合物は、参照により本明細書に含まれる。
【0083】
さらなる態様では、エポキシ樹脂成分(A)は、共加速剤を含有し得るが、ただし、エポキシ樹脂と適合性であることを条件とする。例えば、三級アミン、イミダゾール、または三級アミノフェノール、オルガノホスフィン、リン酸エステルなどのルイス塩基もしくは酸、またはそれらの2種以上の混合物を共加速剤として使用することができる。上記のように、これらの共加速剤もまた、硬化剤組成物(B)中に存在し得る。
【0084】
多成分エポキシ樹脂系の総重量に対するエポキシ樹脂成分(A)の割合は、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、さらにより好ましくは30重量%~70重量%、または最も好ましくは40重量%~60重量%である。
【0085】
エポキシ樹脂は、120~2000g/Eq、好ましくは140~400g/Eq、特に150~300g/EqのEEWを有し得る。複数のエポキシ樹脂の混合物を使用してもよい。
【0086】
多成分エポキシ樹脂系の総重量に対する硬化剤組成物(B)の割合は、好ましくは10重量%~95重量%、より好ましくは15重量%~80重量%、さらにより好ましくは15重量%~60重量%、または特に好ましくは20重量%~40重量%である。
【0087】
さらに、エポキシ樹脂成分(A)は、硬化剤組成物について既に記載されているように、従来の添加剤、特に接着促進剤および充填剤を含有し得る。
【0088】
接着促進剤は、エポキシ樹脂成分(A)の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは1.0~5.0重量%の量で含有され得る。
【0089】
好ましくは、上述の無機充填剤が、充填剤として使用される。充填剤はまた、多成分モルタル化合物の1種またはすべての成分中に存在してもよい。充填剤の割合は、モルタル化合物の総重量に基づいて、好ましくは0重量%~90重量%、例えば10重量%~90重量%、好ましくは15重量%~75重量%、より好ましくは20重量%~50重量%、さらにより好ましくは25重量%~40重量%である。
【0090】
多成分エポキシ樹脂化合物へのさらに想定される添加剤はまた、任意選択的に有機的に後処理されたヒュームドシリカ、ベントナイト、アルキル-およびメチルセルロース、ならびにヒマシ油誘導体などのチキソトロープ剤、フタル酸エステルもしくはセバシン酸エステルなどの可塑剤、安定剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー助剤、湿潤剤、例えば、混合時に制御性を改善するための成分の異なる染色のための染料もしくは顔料などの着色添加剤、ならびに湿潤剤、減感剤、分散剤、ならびに反応速度用の他の制御剤、またはそれらの2種以上の混合物である。
【0091】
非反応性希釈剤(溶媒)はまた、好ましくは、関連成分(エポキシ樹脂成分および/または硬化剤成分)の総重量に基づいて、最大30重量%、例えば、1重量%~20重量%の量で含有され得る。好適な溶媒の例は、メタノールまたはエタノールなどのアルコール、アセトンなどの低級アルキルケトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低級アルキル低級アルカノイルアミド、キシレン、またはトルエン、フタル酸エステル、またはパラフィンなどの低級アルキルベンゼンである。
【0092】
この種のさらなる添加剤は、好ましくは、エポキシ樹脂成分の総重量に基づいて、合計で0重量%~40重量%の重量割合で添加され得る。
【0093】
多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは、エポキシ樹脂成分(A)と硬化剤成分、好ましくは硬化剤組成物(B)とを別個に配置して反応を防止する、2つ以上の別個のチャンバを備えることを特徴とする、カートリッジまたはフィルムパウチ内に存在する
【0094】
多成分エポキシ樹脂系の意図される使用のために、エポキシ樹脂成分(A)と硬化剤成分とは別個のチャンバから排出され、好適なデバイス、例えば、スタティックミキサまたは溶解器で混合される。次いで、エポキシ樹脂成分(A)と硬化剤成分との混合物を、既知の注入デバイスの手段によって、事前に清浄した掘削孔に導入する。次いで、留め付ける構成要素をエポキシ樹脂化合物に挿入し、位置合わせする。硬化剤成分の反応性成分が、重付加によって樹脂成分(A)のエポキシ樹脂と反応することによって、エポキシ樹脂化合物が、所望の期間内、好ましくは数時間以内に環境条件下で硬化する。
【0095】
成分AおよびBは、好ましくは、EEWおよびAHEW値に応じてバランスのとれた化学量論が得られる比で混合される。
【0096】
本発明によるエポキシ樹脂化合物または本発明による多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは、建設目的で使用される。表現「建設目的」は、コンクリート/コンクリート、鋼/コンクリート、または鋼/鋼、または他の鉱物材料との当該材料のうちの1種の構造的接着、コンクリート、レンガ、および他の鉱物材料で作製された構成要素の構造強化、繊維強化ポリマーを用いる建築物の強化用途、コンクリート、鋼、または他の鉱物材料で作製された表面の化学的留め付け、特に建設要素の化学的留め付け、ならびにアンカーロッド、アンカーボルト、(ネジ山付き)ロッド、(ネジ山付き)スリーブ、強化バー、ネジなどの、(強化)コンクリート、レンガ、他の鉱物材料、金属(例えば鋼)、セラミック、プラスチック、ガラス、および木材などの掘削孔内の様々な基材へのアンカー固定手段を指す。最も特に好ましくは、本発明によるエポキシ樹脂化合物および本発明による多成分エポキシ樹脂系は、化学的に留め付けるアンカー固定手段のために使用される。
【0097】
本発明はまた、掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法、建設要素を化学的に留め付けるために上述のように使用される、本発明によるエポキシ樹脂化合物または本発明による多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明による方法は、コンクリート/コンクリート、鋼/コンクリート、または鋼/鋼、または他の鉱物材料との当該材料のうちの1種の構造的接着、コンクリート、レンガ、および他の鉱物材料で作製された構成要素の構造強化、繊維強化ポリマーを用いる建築物の強化用途、コンクリート、鋼、または他の鉱物材料で作製された表面の化学的留め付け、特に建設要素の化学的留め付け、ならびにアンカーロッド、アンカーボルト、(ネジ山付き)ロッド、(ネジ山付き)スリーブ、強化バー、ネジなどの、(強化)コンクリート、レンガ、他の鉱物材料、金属(例えば鋼)、セラミック、プラスチック、ガラス、および木材などの掘削孔内の様々な基材へのアンカー固定手段に特に好適である。本発明による方法は、非常に特に好ましくは、アンカー固定手段の化学的留め付けに使用される。
【0098】
本発明はまた、建設要素の化学的留め付け、特に留め付け要素を掘削孔内にアンカー固定するためのエポキシ樹脂化合物における加速剤としての、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)の使用に関する。エポキシ樹脂化合物は、上述の式Iaおよび/または式Ibによる少なくとも1種のベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含む。エポキシ樹脂化合物は、上述のエポキシ樹脂成分(A)と硬化剤成分とを含む多成分エポキシ樹脂系の形態であることが好ましい。また、塩(S)は、硬化剤成分に含有されること、したがって、上述の硬化剤組成物(B)に使用されることが好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂化合物、特に多成分エポキシ樹脂系における加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、エポキシ樹脂化合物の硬化時間を大幅に短縮し、さらにわずか4~6時間後に十分な引き抜き強度を確保することを可能にする。さらに、硬化エポキシ樹脂化合物は、高温および水で満たされた掘削孔内で優れた引き抜き強度を有する。
【0100】
本発明はまた、エポキシ樹脂の、特に他成分エポキシ樹脂化合物における加速剤としての、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)の使用に関する。エポキシ樹脂化合物は、上述の式Iaおよび/または式Ibによる少なくとも1種のベンゾオキサジン-アミン付加物と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含む。エポキシ樹脂化合物は、エポキシ樹脂成分(A)と上述の硬化剤成分とを含む多成分エポキシ樹脂系の形態であることが好ましい。また、塩(S)は、硬化剤成分に含有されること、したがって、硬化剤組成物(B)に使用されることが好ましい。エポキシ樹脂化合物、特に多成分エポキシ樹脂化合物、より好ましくは多成分エポキシ樹脂化合物の硬化剤成分における、加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、特に、高温、例えば35℃~50℃の温度範囲でエポキシ樹脂化合物の引き抜き強度の増加を可能にする。
【0101】
さらに、エポキシ樹脂化合物、特に多成分エポキシ樹脂化合物、より好ましくは多成分エポキシ樹脂化合物の硬化剤成分における、加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、水で満たされている掘削孔内でのエポキシ樹脂化合物の引き抜き強度の増加を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本発明のさらなる利点は、次の好ましい実施例の記載に見出すことができるが、しかしながら、決して限定するものとして理解されるものではない。本発明のすべての態様は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることができる。
【実施例】
【0103】
エポキシ樹脂成分(A)
出発材料
実施例では、それぞれAraldite GY 240およびAraldite GY 282(Huntsman)の名称で市販されているビスフェノールA系およびビスフェノールF系エポキシ樹脂をエポキシ樹脂として使用した。
【0104】
Dynalsylan GLYMO(登録商標)(Evonik Industries)の名称で入手可能な3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシシラン(trimethoxysysilane)を接着促進剤として使用した。
【0105】
それぞれAraldite DY-026およびAraldite(登録商標)DY-T(Huntsman)の名称で市販されている1,4-ブタンジオール-ジグリシジルエーテルおよびトリメチオルプロパン(methyolpropane)-トリグリシジルエーテルを反応性希釈剤として使用した。
【0106】
液体成分は、手で事前に混合した。その後、石英(Quarzwerke FrechenからのMillisil(登録商標)W12)を充填剤として添加し、ヒュームドシリカ(Cabot RheinfeldenからのCab-O-Sil(登録商標)TS-720)を増粘剤として添加し、80mbarの負圧、3500rpmで10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で混合物を撹拌した。
【0107】
実施例で使用したエポキシ樹脂成分(A)の組成を以下の表1に示す。
【表1】
【0108】
硬化剤組成物(B)
出発材料
硬化剤組成物(B)の調製に使用するベンゾオキサジンは、Araldite MT 35600 CH(ベンゾオキサジンA、CAS番号:154505-70-1)、Araldite MT 35700 CH(ベンゾオキサジンF、CAS番号:214476-06-9)、およびAraldite MT 35710 FST(ベンゾオキサジンFST:ベンゾオキサジンFと3-フェニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,3]オキサジンの混合物)の商品名でHuntsman Advanced Materials(Basel,Switzerland)から入手可能である。
【0109】
三菱ガス化学社(MGC、日本)からの1,3-シクロヘキサンジメタンアミン(1,3-BAC)、m-キシリレンジアミン(mXDA)、Sigma Aldrich(ドイツ)からの2-ピペラジノ-エチルアミン(N-AEP)、Evonik Degussa(ドイツ)からのイソホロンジアミン(IPDA)、Invista(tオランダ)からの2-メチルペンタメチレンジアミン(Dytek A)を、硬化剤組成物(B)を調製するためのアミンとして使用した。
【0110】
Evonik DegussaからDynasylan AMEOの商品名で入手可能な3-アミノプロピルトリエトキシシランを接着促進剤として使用した。
【0111】
石英(Quarzwerke FrechenからのMillisil(登録商標)W12)およびアルミン酸カルシウムセメント(Kerneos SAからのSecar 80)を充填剤として使用し、ヒュームドシリカ(Cabot RheinfeldenからのCab-O-Sil(登録商標)TS-720)を増粘剤として使用した。
【0112】
ベンゾオキサジン-アミン付加物の調製
対応するベンゾオキサジンを過剰量のアミンに溶解させ、溶液を撹拌しながら24時間55℃(B2では80℃)に加熱した。黄~黄褐色の粘稠な溶液を得た(アミン中およそ60%のベンゾオキサジン/アミン付加物)。
【0113】
次のベンゾオキサジン-アミン付加物を調製した:
B1:ベンゾオキサジンFST/1,3-BAC、1,3-BAC中60%
B2:ベンゾオキサジンF/IPDA、IPDA中60%
B3:ベンゾオキサジンF/mXDA、mXDA中60%
B4:ベンゾオキサジンA/N-AEP、N-AEP中60%
【0114】
加速剤
硬化剤組成物(B)で使用される塩(S)または加速剤を調製するために、以下の表2に示される成分を使用した。
【表2】
【0115】
硝酸カルシウムの塩およびヨウ化ナトリウムの塩は、グリセロール(1,2,3-プロパントリオール、CAS番号56-81-5、Merck、G)中の溶液として使用した。硝酸カルシウム溶液を調製するために、400.0gの硝酸カルシウム四水和物を100.0gのグリセロールに添加し、完全に溶解するまで(3時間)50℃で撹拌した。この方式で調製した溶液は、80.0%の硝酸カルシウム四水和物を含有した。ヨウ化ナトリウム溶液を調製するために、36.4gのヨウ化ナトリウムを63.6gのグリセロールに添加し、完全に溶解するまで50℃で撹拌した。この方式で調製した溶液は、36.4%のヨウ化ナトリウムを含有した。
【0116】
カルシウムトリフラートは、特定の硬化剤のアミン中に固体として溶解させた。
【0117】
硝酸カルシウム/硝酸溶液も加速剤として使用した。この溶液を調製するために、52.6gの炭酸カルシウムを135.2gの硝酸にゆっくりと添加し、次いで5分間撹拌した。
【0118】
実施例1~7
以下の実施例1~7による硬化剤組成物(B)を調製するために、関連するベンゾオキサジン-アミン付加物を、関連するアミン中の溶液として使用し、以下の表に従って関連するさらなるアミンで希釈した。加速剤を添加し、次いで石英粉末およびケイ酸を添加し、3500rpmの真空下で10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で撹拌した。
【0119】
この方式で調製した硬化剤組成物(B)の組成を、以下の表3に示す:
【表3】
【0120】
比較例1~5
以下の比較例1~5による硬化剤組成物(B)を調製するために、関連するベンゾオキサジン-アミン付加物を、関連するアミン中の溶液として使用し、以下の表に従って関連するさらなるアミンで希釈した。加速剤を添加し、次いで石英粉末およびケイ酸を添加し、80mbarの負圧、3500rpmで10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で撹拌した。
【0121】
表4は、比較例1~5の硬化剤成分(B)の組成を示している。
【表4】
【0122】
モルタル化合物および引き抜き試験
EEWおよびAHEW値に従ってバランスのとれた化学量論を生じる比のエポキシ樹脂成分(A)および硬化剤組成物(B)を、スピードミキサーで混合した。混合物を可能な限り気泡をたてずに一液型カートリッジに注ぎ、すぐに引き抜き試験用に作製した掘削孔に注入した。
【0123】
上の実施例によるエポキシ樹脂成分(A)および硬化剤組成物(B)を混合することによって得たモルタル化合物の引き抜き強度は、関連するモルタル化合物をC20/25コンクリートに用い、直径14mm、掘削孔の深さ69mmを有するハンマードリルであけた掘削孔にダボで接合した高強度ネジ山付きアンカーロッドM12を使用して、ETAG 001パート5に従って決定した。掘削孔は、圧縮空気(2×6bar)、ワイヤブラシ(2×)、および再び圧縮空気(2×6bar)の手段によって清浄する。
【0124】
掘削孔は、掘削孔の底部から3分の2まで、各々の場合に試験されるモルタル化合物で満たした。ネジ山付きロッドを手で押し込んだ。スパチュラを使用して、過剰なモルタルを除去した。
【0125】
試験1の硬化時間は、21℃で4時間であった。試験2では、硬化時間は、21℃で6時間であった。試験3では、硬化時間は、21℃で24時間であった。
【0126】
破壊荷重は、ネジ山付きアンカーロッドをしっかりと支えて中央から引き抜くことによって決定した。実施例1~7および比較例1~5による硬化剤組成物(B)を使用したモルタル化合物で得た荷重値を、以下の表5に示す。
【表5】
【0127】
引き抜き試験は、本発明による実施例のモルタル化合物が各々、わずか4時間の硬化時間後に、比較例のモルタル化合物よりも有意に高い荷重値を有することを示している。比較例1、2、4、および5のモルタル化合物は、4時間の硬化時間後も依然として軟らかい。6時間後の引き抜き試験は、モルタル化合物の硬化のさらなる進行を示し、本発明による実施例は各々、6時間の硬化時間後に、比較例のモルタル化合物よりも有意に高い荷重値を有する。