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特許7142774キャリア付金属箔並びにその使用方法及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】キャリア付金属箔並びにその使用方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20220916BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B32B15/04 A
H05K3/00 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021520786
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2020019685
(87)【国際公開番号】W WO2020235537
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019094333
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宜範
(72)【発明者】
【氏名】中村 利美
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119501(JP,A)
【文献】国際公開第97/050121(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0255649(US,A1)
【文献】国際公開第2010/038559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、H05K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、前記キャリアの少なくとも一方の面上に設けられる剥離層と、前記剥離層上に設けられる金属層とを備えたキャリア付金属箔であって、
前記キャリア付金属箔が、
その全域にわたって前記キャリア、前記剥離層及び前記金属層が存在する配線用領域と、
前記キャリア付金属箔の前記少なくとも一方の面に設けられ、露光及び現像を伴う配線形成時の位置合わせに用いられるアライメントマークを成す、少なくとも2つの位置決め用領域と、
を有し、
前記アライメントマークが前記キャリアに設けられた凹部を有し、前記凹部の最大深さが0.1μm以上1000μm以下である、キャリア付金属箔。
【請求項2】
前記アライメントマークの形状が、円形、十字形及び多角形からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載のキャリア付金属箔。
【請求項3】
前記凹部の平面視形状が、外径50μm以上5000μm以下の円形である、請求項1又は2に記載のキャリア付金属箔。
【請求項4】
前記キャリアの主面と、前記凹部の内壁面の接線とがなす角度が40°以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項5】
前記凹部の開放端が丸みを帯びており、該丸みを帯びた開放端の曲率半径が100μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項6】
前記アライメントマークを2個以上200個以下有する、請求項1~のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項7】
前記キャリアがガラス又はセラミックスで構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔を使用して露光及び現像を経て配線を形成する方法であって、露光に先立ち前記キャリア付金属箔の前記位置決め用領域を基準として位置合わせを行う工程を含み、
回路幅の異なる複数の回路の露光が別々に行われ、かつ、前記複数の回路の現像が同時に行われる、方法。
【請求項9】
前記配線を形成する方法が再配線層を形成する方法であり、前記複数の回路は、回路幅が0.1μm以上5μm以下である微細回路と、回路幅が5μmより大きく500μm以下であるラフ回路とを有するものである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記微細回路の最小回路幅Fに対する前記ラフ回路の最大回路幅Rの比R/Fが2.0以上500以下である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔の製造方法であって、
キャリアを用意する工程と、
前記キャリアの少なくとも一方の面の所定領域を加工して、少なくとも2つの前記アライメントマークを構成する加工部を形成し、それにより少なくとも2つの位置決め用領域を画定する工程と、
前記キャリアの前記少なくとも一方の面に、前記剥離層及び前記金属層を順に形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
前記アライメントマークの形成が、エッチング法、ブラスト法、及びレーザーアブレーション法から選択される少なくとも一種の方法を用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャリア付金属箔並びにその使用方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚さの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア基板を用いることなく、絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付銅箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、ビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に示されるような埋め込み回路の微細化のため、極薄銅層の厚さを1μm以下としたキャリア付銅箔が望まれる。そこで、極薄銅層の厚さ低減を実現するため、スパッタリング等の気相法により極薄銅層を形成することが提案されている。例えば、特許文献2(国際公開第2017/150283号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、剥離層、反射防止層、及び極薄銅層がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。また、特許文献3(国際公開第2017/150284号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、中間層(例えば密着金属層及び剥離補助層)、剥離層及び極薄銅層(例えば膜厚300nm)がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。特許文献2及び3には、所定の金属で構成される中間層を介在させることでキャリアの機械的剥離強度の優れた安定性をもたらすことや、反射防止層が望ましい暗色を呈することで、画像検査(例えば自動画像検査(AOI))における視認性を向上させることも教示されている。
【0005】
とりわけ、電子デバイスのより一層の小型化及び省電力化に伴い、半導体チップ及びプリント配線板の高集積化及び薄型化へのニーズが高まっている。かかるニーズを満たす次世代パッケージング技術として、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)やPLP(Panel Level Packaging)の採用が近年検討されている。そして、FO-WLPやPLPにおいても、コアレスビルドアップ法の採用が検討されている。そのような工法の一つとして、コアレス支持体表面に配線層及び必要に応じてビルドアップ配線層を形成し、さらに必要に応じて支持体を剥離した後に、チップの実装を行う、RDL-First(Redistribution Layer-First)法と呼ばれる工法がある。例えば、特許文献4(特開2015-35551号公報)には、ガラス又はシリコンウエハからなる支持体の主面への金属剥離層の形成、その上への絶縁樹脂層の形成、その上へのビルドアップ層を含む再配線層(Redistribution Layer)の形成、その上への半導体集積回路の実装及び封止、支持体の除去による剥離層の露出、剥離層の除去による2次実装パッドの露出、並びに2次実装パッドの表面への半田バンプの形成、並びに2次実装を含む、半導体装置の製造方法が開示されている。
【0006】
ところで、半導体ウエハ上に回路パターンを露光転写する際、露光に先立ちアライメントマークを基準とした位置合わせを行う技術が知られている。例えば、特許文献5(特開平9-74062号公報)には、半導体ウエハ上に結晶方位を示すパターンを形成する工程と、そのパターンを検出する工程と、その検出結果に基づいてウエハを所定の露光位置に位置決めする工程と、位置決めされたウエハ上に最初の回路パターンを露光転写する工程とを含む半導体露光方法が開示されている。特許文献5によれば、かかる方法で露光転写を行うことにより、結晶方位に対して正確な位置に露光することができるとともに、異なる装置であっても同じ位置に露光することができるようになるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-101137号公報
【文献】国際公開第2017/150283号
【文献】国際公開第2017/150284号
【文献】特開2015-35551号公報
【文献】特開平9-74062号公報
【発明の概要】
【0008】
近年の電子機器の更なる小型軽量化に伴い、再配線層にはライン/スペース(L/S)が極めて高度に微細化された配線パターン(例えばL/S=2μm/2μm)を有することが望まれる。かかる要求に対応するため、特許文献2及び3に示されるような、厚さが低減された極薄銅層を備えたガラスキャリア付銅箔(あるいはセラミックスキャリア付銅箔)上に、上述したビルドアップ法等で再配線層を形成することが考えられる。一方、フォトリソプロセスにおいて、露光装置の露光解像度と露光エリアとは一般的にトレードオフの関係にあることから、微細回路形成用の露光解像度に優れた露光装置は概して露光エリアが狭い(例えば70mm角)。このため、ラフ回路を形成する露光及び現像を行った後、改めて微細回路を形成する露光及び現像を行う2段階の回路形成プロセスが採用されうる。すなわち、まずはチップ実装に必要な粗いデザインを形成すべく、露光エリアは広い(例えば250mm角)が露光解像度に劣る露光装置を用いた露光及びその後の現像を経て、ラフ回路(例えばL/S=10μm/10μmの粗い回路)を形成する(1段階目の回路形成)。次いで、微細回路形成用の露光装置を用いた露光及びその後の現像を経て微細回路を形成する(2段階目の回路形成)。しかしながら、かかる2段階の回路形成手法はプロセスが複雑である上に、先にラフ回路が形成されているため、微細回路をさらに形成するには高い位置合わせ精度が必要となり、歩留まりの低下を招きやすい。前述のとおり、半導体(Si)ウエハ上に形成した結晶方位を示すパターンを用いる位置合わせ技術は知られているものの(特許文献5参照)、そもそもキャリア付銅箔は半導体(Si)ウエハのような単結晶ではないため、結晶方位を示すパターンを形成すること自体不可能であり、キャリア付金属箔に適したアライメントマークが望まれる。
【0009】
本発明者らは、今般、キャリア付金属箔において、キャリア自体にアライメントマークを構成する加工部を設けることにより、配線形成時のラフ回路用の露光及び微細回路用の露光の両方を同じアライメントマークを基準に行うことができ、その結果、ラフ回路及び微細回路を1段階の回路形成プロセスで同時に形成できるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明の目的は、配線形成時のラフ回路用の露光及び微細回路用の露光の両方を同じアライメントマークを基準に行うことができ、その結果、ラフ回路及び微細回路を1段階の回路形成プロセスで同時に形成可能な、キャリア付金属箔を提供することにある。
【0011】
本発明の一態様によれば、キャリアと、前記キャリアの少なくとも一方の面上に設けられる剥離層と、前記剥離層上に設けられる金属層とを備えたキャリア付金属箔であって、前記キャリア付金属箔が、
その全域にわたって前記キャリア、前記剥離層及び前記金属層が存在する配線用領域と、
前記キャリア付金属箔の前記少なくとも一方の面に設けられ、露光及び現像を伴う配線形成時の位置合わせに用いられるアライメントマークを成す、少なくとも2つの位置決め用領域と、
を有する、キャリア付金属箔が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、前記キャリア付金属箔を使用して露光及び現像を経て配線を形成する方法であって、露光に先立ち前記キャリア付金属箔の前記位置決め用領域を基準として位置合わせを行う工程を含み、
回路幅の異なる複数の回路の露光が別々に行われ、かつ、前記複数の回路の現像が同時に行われる、方法が提供される。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、前記キャリア付金属箔の製造方法であって、
キャリアを用意する工程と、
前記キャリアの少なくとも一方の面の所定領域を加工して、少なくとも2つの前記アライメントマークを構成する加工部を形成し、それにより少なくとも2つの位置決め用領域を画定する工程と、
前記キャリアの前記少なくとも一方の面に、前記剥離層及び前記金属層を順に形成する工程と、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のキャリア付金属箔の一態様を示す上面模式図である。
図2図1に示されるキャリア付金属箔のA-A’線断面における層構成の一例を示す断面模式図である。
図3図2に示されるキャリア付金属箔における位置決め用領域の拡大図である。
図4】キャリアに設けられたアライメントマークを構成する加工部の拡大図であり、加工部が凹部である場合の図である。
図5】キャリアに設けられたアライメントマークを構成する加工部の拡大図であり、加工部が凹部と、凹部に周囲を囲まれた凸部とを含む場合の図である。
図6図4及び5に示される凹部の最大深さd及び外径φを説明するための図である。
図7図6において点線で囲まれる部分の拡大図であり、角度θ及び曲率半径rを説明するための図である。
図8】本発明のキャリア付金属箔に露光及び現像を行う手順の一例を説明するための工程流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
キャリア付金属箔
本発明のキャリア付金属箔の一例が図1及び2に模式的に示される。図1及び2に示されるように、キャリア付金属箔10は、キャリア12と、剥離層16と、金属層18とをこの順に備えたものである。キャリア12は、例えばガラス又はセラミックスで構成される。剥離層16はキャリア12の少なくとも一方の面上に設けられる。金属層18は剥離層16上に設けられる。所望により、キャリア付金属箔10は、キャリア12と剥離層16との間に中間層14をさらに有していてもよい。中間層14、剥離層16及び金属層18の各々は、1層から構成される単層であってもよく、2層以上から構成される多層であってもよい。キャリア付金属箔10は、キャリア12の両面に上下対称となるように上述の各種層を順に備えてなる構成としてもよい。そして、本発明のキャリア付金属箔10は、図2及び3に示されるように、配線用領域Wと、少なくとも2つの位置決め用領域Pとを有する。配線用領域Wは、その全域にわたってキャリア12、剥離層16及び金属層18が存在する配線用の領域である。一方、位置決め用領域Pは、露光及び現像を伴う配線形成時の位置合わせに用いられるアライメントマークを成す領域である。位置決め用領域Pは、キャリア12の上述した少なくとも一方の面(すなわち剥離層16及び金属層18が設けられる側の面)に設けられた加工部によって画定される。すなわち、配線用領域Wは配線の形成に用いられる領域である一方、位置決め用領域Pは露光に先立ち位置合わせを行う際の基準となる領域である。なお、位置決め用領域Pには、上述の各種層がその全域ないし一部に存在していてもよいし、一切存在していなくてもよい。また、キャリア付金属箔10には、配線用領域W及び位置決め用領域P以外の領域(すなわち配線の形成及び位置合わせの基準に用いられない領域)が存在していてもよく、例えば後述するキャリア-金属層間の剥離強度が高い領域、又はキャリア-金属層間が剥離しない領域が存在していてもよい。このように、キャリア付金属箔10において、キャリア12自体にアライメントマークを構成する加工部を設けることにより、配線形成時のラフ回路用の露光及び微細回路用の露光の両方を同じアライメントマークを基準として行うことができ、その結果、ラフ回路及び微細回路の両方を1段階の回路形成プロセスで同時に形成することが可能(すなわちラフ回路及び微細回路を同時に現像することが可能)となる。
【0016】
本発明において、配線形成とは、典型的には再配線層の形成を指し、再配線層とは、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む層を意味する。この再配線層を介して、例えば半導体チップ上に配置されたチップ電極と、プリント配線板上にチップ電極よりも大きいピッチで配置された端子とを電気的に接続することができる。本発明のキャリア付金属箔を用いた再配線層の好ましい形成方法については、後述するものとする。また、ラフ回路とは、5μmより大きく500μm以下の回路幅を有する回路を意味する。ラフ回路は、それ自体が再配線層を構成するものであってもよいし、再配線層の形成に用いるための回路(いわゆるダミー回路)であってもよい。一方、微細回路とは、0.1μm以上5μm以下の回路幅を有する回路を意味する。
【0017】
キャリア付金属箔10が有するアライメントマークの個数(換言すれば互いに離間された位置決め用領域Pの数)は2個以上200個以下が好ましく、より好ましくは4個以上100個以下、さらに好ましくは6個以上50個以下である。また、再配線層エリアには、一般に、微細回路が集合している多角形状(典型的には四角形)の微細回路集合領域が複数個互いに離れて形成されており、アライメントマークの個数は微細回路集合領域の個数の2倍以上8倍以下が好ましく、さらに好ましくは3倍以上6倍以下である。こうすることで、キャリア付金属箔10の製造効率を高く保ちつつ、再配線層の形成時に、露光装置による位置合わせをより高精度に行うことが可能となる。アライメントマークの好ましい形状(平面視形状)の例としては、円形、十字形、多角形(例えば矩形)、及びそれらの組合せが挙げられ、特に好ましくは円形である。露光装置による位置決めはアライメントマークのエッジを検出し、アライメントマークの中心点の位置を特定することを経て行われるのが一般的であるところ、アライメントマークが円形状であると、中心点を特定する際の誤差を少なくして、より一層高精度に位置決めを行うことが可能となる。
【0018】
アライメントマークはキャリア12に設けられた凹部12aを有するのが好ましい。すなわち、図4に示されるように、アライメントマークを構成する加工部は、それ自体が凹部12aであってもよい。こうすることで、凹部12a及びその周囲の明暗差ないし色差が強調される結果、アライメントマークのエッジ(すなわち凹部12aのエッジ)の視認性が向上し、より一層高精度に位置決めを行うことができる。あるいは、アライメントマークはキャリア12に設けられた凸部12bを有するのも好ましい。すなわち、図5に示されるように、アライメントマークを構成する加工部は、凹部12aと、凹部12aに周囲を囲まれた凸部12bとを含むものであってもよい。こうすることで凸部12b及びその周囲(すなわち凹部12a)の明暗差ないし色差が強調される結果、アライメントマークにおける凸部12bのエッジの視認性が向上し、より一層高精度に位置決めを行うことができる。
【0019】
図6に示されるように、凹部12aの最大深さdは0.1μm以上1000μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上800μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上500μm以下、特に好ましくは3.0μm以上400μm以下である。このような範囲内の最大深さであると、キャリアの機械的強度の低下が抑えられ、製造プロセス中のキャリアの変形や割れを効果的に防止できるとともに、キャリア上に各種層を積層した後においても、アライメントマークを構成する加工部が埋もれず、加工部と実質的に同一形状のアライメントマークが形成されて十分な視認性を確保できるため、露光時の位置合わせ精度をより一層向上することができる。同様の観点から、凹部12aの平面視形状が円形であって、その外径φが50μm以上5000μm以下であるのが好ましく、より好ましくは70μm以上3000μm以下、さらに好ましくは80μm以上1000μm以下、特に好ましくは100μm以上500μm以下である。
【0020】
アライメントマークの視認性をより一層向上する観点から、図7に示されるように、キャリア12の主面sと、凹部12aの内壁面の接線tとがなす角度θが40°以上130°以下であるのが好ましい。角度θの下限値については、より好ましくは60°以上、さらに好ましくは80°以上である。角度θの上限値は特に限定されるものではないが、加工を容易に行う観点から、典型的には角度θは130°以下であり、好ましくは110°以下である。同様に、アライメントマークの視認性をより一層向上する観点から、図7に示されるように、凹部12aの開放端が丸みを帯びており、この丸みを帯びた開放端の曲率半径rが100μm以下であるのが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。曲率半径rの下限値は特に限定されるものではないが、典型的には曲率半径rは0.1μm以上である。
【0021】
キャリア12はガラス又はセラミックスで構成されることが好ましい。ガラスキャリアないしセラミックスキャリアは樹脂キャリア等とは異なり寸法安定性が高いため、熱処理等を行った場合でもアライメントマークの位置ずれを効果的に低減することができ、それ故、位置合わせを高精度に行うことが可能となる。また、キャリア12の形態はシート、フィルム及び板のいずれであってもよい。また、キャリア12はこれらのシート、フィルム及び板等が積層されたものであってもよい。例えば、キャリア12はガラス板、セラミックス板等といった剛性を有する支持体として機能し得るものであることが好ましい。キャリア12を構成するセラミックスの好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、その他各種ファインセラミックス等が挙げられる。より好ましくは、加熱を伴うプロセスにおけるキャリア付金属箔10の反り防止の観点から、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満(典型的には1.0ppm/K以上23ppm/K以下)の材料であり、そのような材料の例としては上述したようなセラミックス及びガラスが挙げられる。また、ハンドリング性やチップ実装時の平坦性確保の観点から、キャリア12はビッカース硬度が100HV以上であるのが好ましく、より好ましくは150HV以上2500HV以下である。これらの特性を満たす材料として、キャリア12はガラスで構成されるのが特に好ましい。ガラスをキャリア12として用いた場合、軽量で、熱膨脹係数が低く、絶縁性が高く、剛直で表面が平坦なため、金属層18の表面を極度に平滑にできる等の利点がある。また、キャリア12がガラスである場合、微細回路形成に有利な表面平坦性(コプラナリティ)を有している点、配線製造工程におけるデスミアや各種めっき工程において耐薬品性を有している点、キャリア付金属箔からキャリアを剥離する際に化学的分離法が採用できる点等の利点がある。キャリア12を構成するガラスの好ましい例としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくは無アルカリガラス、ソーダライムガラス、及びそれらの組合せであり、特に好ましくは無アルカリガラスである。無アルカリガラスは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及び酸化カルシウムや酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、更にホウ酸を含有する、アルカリ金属を実質的に含有しないガラスのことである。この無アルカリガラスは、0℃から350℃までの広い温度帯域において熱膨脹係数が3ppm/K以上5ppm/K以下の範囲で低く安定しているため、加熱を伴うプロセスにおけるガラスの反りを最小限にできるとの利点がある。キャリア12の厚さは100μm以上2000μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以上1800μm以下、さらに好ましくは400μm以上1100μm以下である。このような範囲内の厚さであると、ハンドリングに支障を来さない適切な強度を確保しながら配線の薄型化、及び電子部品搭載時に生じる反りの低減を実現することができる。
【0022】
キャリア12の剥離層16に隣接する側(存在する場合には中間層14に隣接する側)の表面は、レーザー顕微鏡を用いてJIS B 0601-2001に準拠して測定される、0.1nm以上70nm以下の算術平均粗さRaを有するのが好ましく、より好ましくは0.5nm以上60nm以下、さらに好ましくは1.0nm以上50nm以下、特に好ましくは1.5nm以上40nm以下、最も好ましくは2.0nm以上30nm以下である。このようにキャリア12表面の算術平均粗さが小さいほど、金属層18の剥離層16と反対側の表面(金属層18の外側表面)において望ましく低い算術平均粗さRaをもたらすことができ、それにより、配線用領域W上の金属層18を用いて形成される配線において、高度に微細化された配線パターン(例えば、ライン/スペース(L/S)が0.1μm/0.1μmから5μm/5μmまで)を形成するのに適したものとなる。
【0023】
所望により設けられる中間層14は、1層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。中間層14が2層以上の層で構成される場合には、中間層14は、キャリア12直上に設けられた第1中間層14aと、剥離層16に隣接して設けられた第2中間層14bとを含む。第1中間層14aは、キャリア12との密着性を確保する点から、Ti、Cr、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成される層であるのが好ましい。第1中間層14aは、純金属であってもよいし、合金であってもよい。第1中間層14aの厚さは5nm以上500nm以下であるのが好ましく、より好ましく10nm以上300nm以下、さらに好ましくは18nm以上200nm以下、特に好ましくは20nm以上100nm以下である。第2中間層14bは、剥離層16との剥離強度を所望の値に制御する点から、Cuで構成される層であるのが好ましい。第2中間層14bの厚さは5nm以上500nm以下であるのが好ましく、より好ましく10nm以上400nm以下、さらに好ましくは15nm以上300nm以下、特に好ましくは20nm以上200nm以下である。第1中間層14aと第2中間層14bとの間には、別の介在層が存在していてもよく、介在層の構成材料の例としては、Ti、Cr、Mo、Mn、W及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属とCuとの合金等が挙げられる。一方、中間層14が1層構成の場合には、上述した第1中間層14aを中間層としてそのまま採用してもよいし、第1中間層14a及び第2中間層14bを、1層の中間合金層で置き換えてもよい。この中間合金層は、Ti、Cr、Mo、Mn、W、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の含有量が1.0at%以上であり、かつ、Cu含有量が30at%以上である銅合金で構成されるのが好ましい。中間合金層の厚さは5nm以上500nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上400nm以下、さらに好ましくは15nm以上300nm以下、特に好ましくは20nm以上200nm以下である。なお、上述した各層の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。中間層14を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。また、特に制限されるものではないが、中間層14の成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して混入する酸素の存在は許容される。中間層14は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、金属ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性を向上できる点で特に好ましい。
【0024】
剥離層16は、キャリア12、及び存在する場合には中間層14の剥離を可能ないし容易とする層である。剥離層16は、有機剥離層及び無機剥離層のいずれであってもよい。有機剥離層に用いられる有機成分の例としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、カルボン酸等が挙げられる。窒素含有有機化合物の例としては、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。一方、無機剥離層に用いられる無機成分の例としては、Cu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga、Moの少なくとも一種類以上の金属酸化物、炭素等が挙げられる。これらの中でも、剥離層16は主として炭素を含んでなる層であるのが剥離容易性や膜形成性の点等から好ましく、より好ましくは主として炭素又は炭化水素からなる層であり、さらに好ましくは硬質炭素膜であるアモルファスカーボンからなる層である。この場合、剥離層16(すなわち炭素層)はXPSにより測定される炭素濃度が60原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは80原子%以上、特に好ましくは85原子%以上である。炭素濃度の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。剥離層16(特に炭素層)は不可避不純物(例えば雰囲気等の周囲環境に由来する酸素、炭素、水素等)を含みうる。また、剥離層16(特に炭素層)には後に積層される金属層18等の成膜手法に起因して金属原子が混入しうる。炭素はキャリアとの相互拡散性及び反応性が小さく、300℃を超える温度でのプレス加工等を受けても、金属層と接合界面との間での高温加熱による金属結合の形成を防止して、キャリアの引き剥がし除去が容易な状態を維持することができる。剥離層16はスパッタリング等の気相法により形成された層であるのがアモルファスカーボン中の過度な不純物を抑制する点、他の層の連続生産性の点などから好ましい。剥離層16(特に炭素層)の厚さは1nm以上20nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上10nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0025】
剥離層16は、金属酸化物層及び炭素層を含むか、又は金属酸化物及び炭素を含む層であってもよい。特に、キャリア付金属箔10が中間層14を含む場合、炭素層がキャリア12の安定的な剥離に寄与するとともに、金属酸化物層が中間層14及び金属層18に由来する金属元素の加熱に伴う拡散を抑制することができ、結果として例えば350℃以上もの高温で加熱された後においても、安定した剥離性を保持することが可能となる。金属酸化物層はCu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga、Mo及びそれらの組合せで構成される金属の酸化物を含む層であるのが好ましい。金属酸化物層は金属ターゲットを用い、酸化性雰囲気下でスパッタリングを行う反応性スパッタリング法により形成された層であるのが、成膜時間の調整によって膜厚を容易に制御可能な点から特に好ましい。金属酸化物層の厚さは0.1nm以上100nm以下であるのが好ましい。金属酸化物層の厚さの上限値としては、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。金属酸化物層及び炭素層が積層される順は特に限定されない。剥離層16は、金属酸化物層及び炭素層の境界が明瞭には特定されない混相(すなわち金属酸化物及び炭素を含む層)の状態で存在していてもよい。
【0026】
同様に、高温での熱処理後においても安定した剥離性を保持する観点から、剥離層16は、金属層18に隣接する側の面がフッ化処理面及び/又は窒化処理面である金属含有層であってもよい。金属含有層にはフッ素の含有量及び窒素の含有量の和が1.0原子%以上である領域(以下、「(F+N)領域」と称する)が10nm以上の厚さにわたって存在するのが好ましく、(F+N)領域は金属含有層の金属層18側に存在するのが好ましい。(F+N)領域の厚さ(SiO換算)は、XPSを用いてキャリア付金属箔10の深さ方向元素分析を行うことにより特定される値とする。フッ化処理面ないし窒化処理面は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive ion etching)、又は反応性スパッタリング法により好ましく形成することができる。一方、金属含有層に含まれる金属元素は、負の標準電極電位を有するのが好ましい。金属含有層に含まれる金属元素の好ましい例としては、Cu、Ag、Sn、Zn、Ti、Al、Nb、Zr、W、Ta、Mo及びそれらの組合せ(例えば合金や金属間化合物)が挙げられる。金属含有層における金属元素の含有率は50原子%以上100原子%以下であることが好ましい。金属含有層は1層から構成される単層であってもよく、2層以上から構成される多層であってもよい。金属含有層全体の厚さは、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上500nm以下、さらに好ましくは50nm以上400nm以下、特に好ましくは100nm以上300以下である。金属含有層自体の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0027】
金属層18は金属で構成される層である。金属層18は、1層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。金属層18が2層以上の層で構成される場合には、金属層18は、剥離層16のキャリア12と反対の面側に、第1金属層18aから第m金属層(mは2以上の整数)までの各金属層が順に積層した構成であることができる。金属層18全体の厚さは1nm以上2000nm以下であることが好ましく、好ましくは100nm以上1500nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下、さらに好ましくは300nm以上800nm以下、特に好ましくは350nm以上500nm以下である。金属層18の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。以下、金属層18が第1金属層18a及び第2金属層18bの2層で構成される例について説明する。
【0028】
第1金属層18aは、キャリア付金属箔10に対してエッチングストッパー機能や反射防止機能等の所望の機能を付与するものであることが好ましい。第1金属層18aを構成する金属の好ましい例としては、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、Mo及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくはTi、Zr、Al、Cr、W、Ni、Mo及びそれらの組合せ、さらに好ましくはTi、Al、Cr、Ni、Mo及びそれらの組合せ、特に好ましくはTi、Mo及びそれらの組合せである。これらの元素は、フラッシュエッチング液(例えば銅フラッシュエッチング液)に対して溶解しないという性質を有し、その結果、フラッシュエッチング液に対して優れた耐薬品性を呈することができる。したがって、第1金属層18aは、後述する第2金属層18bよりもフラッシュエッチング液によってエッチングされにくい層となり、それ故エッチングストッパー層として機能しうる。また、第1金属層18aを構成する上述の金属は光の反射を防止する機能も有するため、第1金属層18aは、画像検査(例えば自動画像検査(AOI))において視認性を向上させるための反射防止層としても機能しうる。第1金属層18aは、純金属であってもよいし、合金であってもよい。第1金属層18aを構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。また、上記金属の含有率の上限は特に限定されず、100原子%であってもよい。第1金属層18aは物理気相堆積(PVD)法により形成された層であるのが好ましく、より好ましくはスパッタリングにより形成された層である。第1金属層18aの厚さは、1nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上400nm以下、さらに好ましくは30nm以上300nm以下、特に好ましくは50nm以上200nm以下である。
【0029】
第2金属層18bを構成する金属の好ましい例としては、第4族、第5族、第6族、第9族、第10族及び第11族の遷移元素、Al、並びにそれらの組合せ(例えば合金や金属間化合物)が挙げられ、より好ましくは第4族及び第11族の遷移元素、Al、Nb、Co、Ni、Mo、並びにそれらの組合せ、さらに好ましくは第11族の遷移元素、Ti、Al、Mo、及びそれらの組合せ、特に好ましくはCu、Ti、Mo、及びそれらの組合せ、最も好ましくはCuである。第2金属層18bは、いかなる方法で製造されたものでよく、例えば、無電解金属めっき法及び電解金属めっき法等の湿式成膜法、スパッタリング及び真空蒸着等の物理気相堆積(PVD)法、化学気相成膜、又はそれらの組合せにより形成した金属箔であってよい。特に好ましい第2金属層18bは、極薄化によるファインピッチ化に対応しやすい観点から、スパッタリング法や真空蒸着等の物理気相堆積(PVD)法により形成された金属層であり、最も好ましくはスパッタリング法により製造された金属層である。また、第2金属層18bは、無粗化の金属層であるのが好ましい。一方、キャリア付金属箔10をプリント配線板の製造に用いる場合には、第2金属層18bは、プリント配線板製造時の配線パターン形成に支障を来さないかぎり予備的粗化やソフトエッチング処理や洗浄処理、酸化還元処理により二次的な粗化が生じたものであってもよい。上述したようなファインピッチ化に対応する観点から、第2金属層18bの厚さは10nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上900nm以下、さらに好ましくは30nm以上700nm以下、さらにより好ましくは50nm以上600nm以下、特に好ましくは70nm以上500nm以下、最も好ましくは100nm以上400nm以下である。このような範囲内の厚さの金属層はスパッタリング法により製造されるのが成膜厚さの面内均一性や、シート状やロール状での生産性の観点で好ましい。
【0030】
第2金属層18bの第1金属層18aと反対側の表面(金属層18の外側表面)は、JIS B 0601-2001に準拠して測定される算術平均粗さRaが1.0nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0nm以上40nm以下、さらに好ましくは3.0nm以上35nm以下、特に好ましくは4.0nm以上30nm以下、最も好ましくは5.0nm以上15nm以下である。このように算術平均粗さが小さいほど、例えば金属層18の配線用領域Wを用いて形成される配線において、高度に微細化された配線パターン(例えば、ライン/スペース(L/S)が0.1μm/0.1μmから5μm/5μmまで)を形成するのに適したものとすることができる。
【0031】
金属層18が1層構成の場合には、上述した第2金属層18bを金属層18としてそのまま採用することが好ましい。一方、金属層18がm層(mは3以上の整数)構成である場合には、金属層18の第1金属層18aから第(m-1)金属層までを上述した第1金属層18aの構成とすることが好ましく、金属層18の最外層、すなわち第m金属層を上述した第2金属層18bの構成とすることが好ましい。
【0032】
キャリア付金属箔10には、切断箇所で金属層18がキャリア12から剥がれにくくなるような領域を切り代として設けてもよい。すなわち、キャリア付金属箔10に配線を形成した後、チップ等を実装する際、実装設備が処理できる大きさとなるように、キャリア付金属箔10を切断して、例えば数十mm角から数百mm角程度にダウンサイジングすることが行われうる。この点、キャリア付金属箔10の切断界面に露出した剥離層16の剥離強度が低いため、切断時ないし切断後の負荷によって金属層18がキャリア12から剥がれてしまうことがある。このため、キャリア付金属箔にキャリア-金属層間の剥離強度が高い領域(例えばJIS Z 0237-2009に準拠して測定される剥離強度が30gf/cm以上3000gf/cm以下の領域)、又はキャリア-金属層間が剥離しない領域(例えば剥離層が存在しない領域)を切り代として設けることで、切断面からの金属層18の望ましくない剥離を効果的に防止できる。上記剥離強度が高い領域は、例えば本来的に平坦なキャリア12表面に粗化処理等を行って、JIS B 0601-2001に準拠して測定される最大高さRzが1.0μm以上30.0μm以下である凹凸領域を所定のパターン状(例えば格子状、柵状又は十字状)に形成した後、各種層を積層することにより形成することができる。このような粗化処理は、キャリア12表面のアライメントマークを構成する加工部の形成と合わせて行うことで製造効率が向上する。一方、上記剥離しない領域は、例えば(i)所定のパターン状に構成されたフレームをキャリア12表面から浮かせた状態で配置したまま各種層を成膜することにより形成することができる。あるいは、(ii)キャリア12上に各種層を成膜して暫定的なキャリア付金属箔を得た後、この暫定的なガラスキャリア付金属箔に対して、レーザー照射等の手法で所定のパターン状に加熱を行うことによっても形成することができる。
【0033】
キャリア付金属箔10全体の厚さは特に限定されないが、好ましくは500μm以上3000μm以下、より好ましくは700μm以上2500μm以下、さらに好ましくは900μm以上2000μm以下、特に好ましくは1000μm以上1700μm以下である。キャリア付金属箔10のサイズは特に限定されないが、好ましくは10cm角以上、より好ましくは20cm角以上、さらに好ましくは25cm角以上である。キャリア付金属箔10のサイズの上限は特に限定されないが、1000cm角が上限の1つの目安として挙げられる。また、キャリア付金属箔10は、配線の形成前後において、それ自体単独でハンドリング可能な形態である。
【0034】
キャリア付金属箔の製造方法
本発明のキャリア付金属箔10は、(1)キャリアを用意し、(2)キャリアの所定領域を加工して、アライメントマークを形成し、(3)キャリア上に剥離層、金属層等の各種層を成膜することにより製造することができる。
【0035】
(1)キャリアの用意
まず、キャリア12を用意する。キャリア12はガラス又はセラミックスで構成されるのが好ましい。一般的にガラス製品及びセラミックス製品は平坦性に優れるため、キャリア12上に剥離層16を介して積層された金属層18の配線用領域W上の表面も平坦な形状となり、配線用領域W上の金属層18の平坦面が微細回路の形成を可能とする。キャリア12の好ましい材質や特性については前述したとおりである。なお、以下の説明においては、キャリア12の一方の表面にのみアライメントマークを構成する加工部の形成、及び各種層の成膜を行っているが、両面キャリア付金属箔を製造する場合には、キャリア12の他方の表面にも同様の操作を行って、アライメントマークを構成する加工部の形成、及び各種層の成膜を行ってよいことはいうまでもない。
【0036】
(2)アライメントマークを構成する加工部の形成
次に、キャリア12の表面の所定領域を加工して、少なくとも2つのアライメントマークを構成する加工部を形成し、それにより少なくとも2つの位置決め用領域Pを画定する。好ましい加工手法の例としては、エッチング法、ブラスト法、レーザーアブレーション法、及びそれらの組合せが挙げられ、スループットを向上させる観点から、より好ましくはブラスト法、レーザーアブレーション法、及びそれらの組合せである。特に、ブラスト法を用いてアライメントマークを構成する加工部を形成するのが好ましく、こうすることで加工汚れ(例えば加工に起因するキャリアの変質や異物の飛散等)をより一層低減することができる。ブラスト処理による加工は、キャリア12表面の所定領域(すなわちアライメントマークを構成する加工部が形成されるべき領域)に対して粒子状のメディア(投射材)をノズルから投射することにより行うことができる。好ましいノズルの吐出径は0.1mm以上10.0mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上8.5mm以下である。メディアの粒径は1.0μm以上1000μm以下であるのが好ましく、より好ましくは10.0μm以上800μm以下であり、投射量は10g/分以上3000g/分以下であるのが好ましく、より好ましくは20g/分以上2000g/分以下である。また、好ましいメディアの吐出圧力は0.01MPa以上1.0MPa以下であり、より好ましくは0.05MPa以上0.8MPa以下である。メディアの材質の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、鉄、アルミニウム、亜鉛、ガラス、スチール、グリーンカーボナイト及びボロンカーバイトが挙げられる。メディアのモース硬度は4以上が好ましく、より好ましくは5.5以上、さらに好ましくは6.0以上である。また、エッチング処理による加工の好ましい例としては、フッ酸(フッ化水素酸)を含む溶液を用いたウエットプロセス、及びフッ素を含むプロセスガス(例えばCFやSF等)を用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive ion etching)によるドライプロセスが挙げられる。一方、レーザーアブレーション処理による加工は、例えばYAGレーザー、YLFレーザー、YVOレーザー、炭酸ガスレーザー、CW(連続発振)レーザー、及び固体UVレーザー等を用いて行うことができる。加工条件は特に限定されず、公知の条件をそのまま採用してもよいし、キャリア12の材質に合わせて公知の条件を適宜変更してもよい。
【0037】
所望の領域に選択的に加工(特にブラスト処理又はエッチング処理)を行うために、マスキングを用いるのが好ましい。具体的には、加工の前に、キャリア12の表面の所定の領域(すなわちアライメントマークを構成する加工部が形成されるべき領域)以外の部分にマスキング層を形成するのが好ましい。この場合、加工後に、マスキング層を除去することが望まれる。
【0038】
(3)キャリア上への各種層の成膜
アライメントマークを構成する加工部が形成された側のキャリア12の表面に、所望により中間層14(例えば第1中間層14a及び第2中間層14b)、剥離層16、及び金属層18(例えば第1金属層18a及び第2金属層18b)を成膜し、これにより配線用領域Wを形成する。中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18の各層の成膜は、極薄化によるファインピッチ化に対応しやすい観点から、物理気相堆積(PVD)法により行われるのが好ましい。物理気相堆積(PVD)法の例としては、スパッタリング法、真空蒸着法、及びイオンプレーティング法が挙げられるが、0.05nmから5000nmまでといった幅広い範囲で膜厚制御できる点、広い幅ないし面積にわたって膜厚均一性を確保できる点等から、最も好ましくはスパッタリング法である。特に、中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18の全ての層をスパッタリング法により形成することで、製造効率が格段に高くなる。物理気相堆積(PVD)法による成膜は公知の気相成膜装置を用いて公知の条件に従って行えばよく特に限定されない。例えば、スパッタリング法を採用する場合、スパッタリング方式は、マグネトロンスパッタリング、2極スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法等、公知の種々の方法であってよいが、マグネトロンスパッタリングが、成膜速度が速く生産性が高い点で好ましい。スパッタリングはDC(直流)及びRF(高周波)のいずれの電源で行ってもよい。また、ターゲット形状も広く知られているプレート型ターゲットを使用することができるが、ターゲット使用効率の観点から円筒形ターゲットを用いることが望ましい。以下、中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18の各層の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜について説明する。なお、以下の説明において、キャリア付金属箔10は、中間層14が第1中間層14a及び第2中間層14bから構成され、剥離層16が炭素層であり、金属層18が第1金属層18a及び第2金属層18bから構成されるものとする。
【0039】
第1中間層14aの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Ti、Cr、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用い、非酸化性雰囲気下でマグネトロンスパッタリングにより行われるのが膜厚分布均一性を向上できる点で好ましい。ターゲットの純度は99.9wt%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。アルゴンガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0040】
第2中間層14bの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、銅ターゲットを用い、非酸化性雰囲気下でマグネトロンスパッタリングにより行われるのが膜厚分布均一性を向上できる点で好ましい。銅ターゲットの純度は99.9wt%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。アルゴンガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0041】
剥離層16の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、カーボンターゲットを用いてアルゴン等の不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。カーボンターゲットはグラファイトで構成されるのが好ましいが、不可避不純物(例えば雰囲気等の周囲環境に由来する酸素や炭素)を含みうる。カーボンターゲットの純度は99.99wt%以上が好ましく、より好ましくは99.999wt%以上である。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0042】
第1金属層18aの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用いて、マグネトロンスパッタ法により行われるのが好ましい。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましい。特に、第1金属層18aのマグネトロンスパッタ法による成膜は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、圧力0.1Pa以上20Pa以下で行われるのが好ましい。スパッタリング圧力は、より好ましくは0.2Pa以上15Pa以下、さらに好ましくは0.3Pa以上10Pa以下である。なお、上記圧力範囲の制御は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することにより行えばよい。アルゴンガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり1.0W/cm以上15.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。また、製膜時にキャリア温度を一定に保持するのが、安定した膜特性(例えば膜抵抗や結晶サイズ)を得やすい点で好ましい。成膜時のキャリア温度は25℃以上300℃以下の範囲内で調整することが好ましく、より好ましくは40℃以上200℃以下、さらに好ましくは50℃以上150℃以下の範囲内である。
【0043】
第2金属層18bの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Cu、Au、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用いてアルゴン等の不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。銅ターゲット等の金属ターゲットは金属銅等の金属で構成されるのが好ましいが、不可避不純物を含みうる。金属ターゲットの純度は99.9%以上が好ましく、より好ましくは99.99%、さらに好ましくは99.999%以上である。第2金属層18bの気相成膜時の温度上昇を避けるため、スパッタリングの際、ステージの冷却機構を設けてもよい。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、安定的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0044】
キャリア付金属箔の使用方法(配線の形成方法)
本発明のキャリア付金属箔10を使用して配線(例えば再配線層)を形成することができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、キャリア付金属箔10を使用して露光及び現像を経て配線を形成する方法が提供される。この方法は露光に先立ちキャリア付金属箔10の位置決め用領域Pを基準として位置合わせを行う工程を含む。また、この方法は回路幅の異なる複数の回路(好ましくは微細回路とラフ回路とを有する)の露光が別々に行われ、かつ、当該複数の回路の現像が同時に行われる。以下、本発明のキャリア付金属箔10を使用した再配線層の好ましい形成方法の一例について説明する。この方法は、(1)キャリア付金属箔にフォトレジストを積層し、(2)第一の位置合わせ後にラフ回路用の露光を行い、(3)第二の位置合わせ後に微細回路用の露光を行い、(4)現像を行ってレジストパターンを形成した後、(5)回路形成を行うことを含む。
【0045】
(1)フォトレジストの積層
図8(i)に示されるように、キャリア付金属箔10の金属層18の表面にフォトレジスト20を積層する。フォトレジスト20は再配線層の製造に一般的に用いられる公知の材料が使用可能である。フォトレジスト20はネガ型及びポジ型のいずれであってもよく、フィルムタイプ及び液状タイプのいずれであってもよい。フォトレジスト20は感光性フィルムであるのが好ましく、例えば感光性ドライフィルムである。
【0046】
(2)ラフ回路用の露光
チップ実装に必要な粗いデザインを形成すべく、フォトレジスト20の配線用領域W上の表面にラフ回路用の露光を行う。また、ラフ回路用の露光に先立ち、キャリア付金属箔10の位置決め用領域Pを基準として第一の位置合わせを行う。これにより、図8(ii)に示されるように、ラフ回路用露光部20aを形成する。ラフ回路用の露光は、露光エリアの広い(例えば250mm角)露光装置を用いて行うのが好ましい。露光装置の露光方式の例としてはステッパー方式及びLaser Direct Imaging(LDI)方式が挙げられるが、露光解像度の観点から好ましくはステッパー方式である。また、ステッパー方式の露光装置に用いるフォトマスクの例としてはガラスマスクやCrマスク等が挙げられるが、高精度に露光を行う観点からCrマスクを用いるのが好ましい。
【0047】
(3)微細回路用の露光
次いで、フォトレジスト20の配線用領域W上の表面に微細回路用の露光を行う。また、微細回路用の露光に先立ち、キャリア付金属箔10の位置決め用領域Pを基準として第二の位置合わせを行う。これにより、図8(iii)に示されるように、微細回路用露光部20bを形成する。微細回路用の露光装置の露光方式はステッパー方式が好ましく、ステッパー方式の露光装置に用いるフォトマスクはCrマスクが好ましい。ここで、ラフ回路用の露光に用いられる露光エリアの広い露光装置は概して露光解像度に劣るため、ラフ回路用の露光と微細回路用の露光とを同一の露光装置を用いて行うことは一般的に困難である。この点、キャリア付金属箔10自体に位置決め用領域Pが存在することで、別々の露光装置を用いた場合でも、同一のアライメントマークを基準として高精度に位置合わせを行うことができる。その結果、従来のように2段階の露光現像を経ることなく、1回の現像でラフ回路用及び微細回路用のレジストパターンを同時に形成することが可能となる。上記観点から、本発明の方法により形成される再配線層は、微細回路の最小回路幅Fに対するラフ回路の最大回路幅Rの比R/Fが2.0以上500以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0以上300以下、さらに好ましくは10以上100以下である。なお、ラフ回路用の露光と微細回路用の露光とを同一の露光装置を用いて行うことが可能な場合(例えば上記比R/Fが小さい場合)には、同一の露光装置を用いてラフ回路用及び微細回路用の露光を行ってよいことはいうまでもない。
【0048】
(4)レジストパターンの形成
図8(iv)に示されるように、フォトレジスト20の現像を行うことにより、ラフ回路用パターン22a及び微細回路用パターン22bで構成されるレジストパターン22を形成する。現像は、市販の現像液等を用いて再配線層の製造に一般的に用いられる公知の手法及び条件に従い行えばよく特に限定されない。このように、本発明のキャリア付金属箔を用いた再配線層の好ましい形成方法は、微細回路用の露光とラフ回路用の露光とが別々に行われ、かつ、微細回路及びラフ回路の現像が同時に行われるものであり、これにより、ラフ回路及び微細回路を1段階の回路形成プロセスで同時に形成することができる。
【0049】
(5)再配線層の形成
レジストパターン22間に電気めっき(例えば電気銅めっき)を施した後、レジストパターン22を剥離し、レジストパターン22の剥離により露出した金属層18の不要部分(すなわち配線パターンを形成しない部分)をエッチングにより除去して、ラフ回路及び微細回路を有する第1配線層を形成する。その後、キャリア付金属箔10の第1配線層が形成された面に絶縁層及び第n配線層(nは2以上の整数)を交互に形成する。こうして、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む層である再配線層が形成されたコアレス支持体を得ることができる。本工程における各種操作は、再配線層の製造に一般的に用いられる公知の手法及び条件に従い行えばよく特に限定されない。
【0050】
再配線層の形成後、再配線層上にチップ等の電子素子を搭載する工程を行い、半導体パッケージを製造してもよい。また、公知の手法によりキャリア12、中間層14(存在する場合)及び剥離層16を除去してもよい。前述したように、このように再配線層を形成した後にチップの実装を行うプロセスはRDL-First法と呼ばれる手法である。この工法によれば、チップの実装を行う前にコアレス支持体表面の配線層やその後に積層される各ビルドアップ配線層の電気検査を行うことができるため、各配線層の不良部分を避けて、良品部分にのみチップを実装できる。その結果、RDL-First法はチップの無駄使いを回避できる点で、チップの表面に配線層を逐次積層する工法であるChip-First法等と比較すると経済的に有利である。また、任意工程として想定される再配線層上に搭載される電子素子の例としては、半導体素子、チップコンデンサ、抵抗体等が挙げられる。電子素子搭載の方式の例としては、フリップチップ実装方式、ダイボンディング方式等が挙げられる。フリップチップ実装方式は、電子素子の実装パッドと、再配線層との接合を行う方式である。この実装パッド上には柱状電極(ピラー)やはんだバンプ等が形成されてもよく、実装前に再配線層表面に封止樹脂膜であるNCF(Non-Conductive Film)等を貼り付けてもよい。接合は、はんだ等の低融点金属を用いて行われるのが好ましいが、異方導電性フィルム等を用いてもよい。ダイボンディング接着方式は、再配線層に対して、電子素子の実装パッド面と反対側の面を接着する方式である。この接着には、熱硬化樹脂と熱伝導性の無機フィラーを含む樹脂組成物である、ペーストやフィルムを用いるのが好ましい。
【実施例
【0051】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0052】
例1
図1に示されるように、キャリア12上にアライメントマークを構成する加工部を形成した後、中間層14(第1中間層14a及び第2中間層14b)、剥離層16としての炭素層、及び金属層18(第1金属層18a及び第2金属層18b)をこの順に成膜してキャリア付金属箔10を作製した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0053】
(1)キャリアの用意
200mm×250mmで厚さ1.1mmのガラスシート(材質:ソーダライムガラス)をキャリア12として用意した。
【0054】
(2)アライメントマークを構成する加工部の形成
キャリア12の表面にマスキング層を、直径400μmの6つの円形状加工領域(露出部分)が互いに離間して配置されるパターンに形成した。このマスキング層の形成は、感光性フィルムを用いてロールラミネーションにより行った。次に、ブロワブラスト装置(株式会社アルプスエンジニアリング製、BSP―50D)を用いて、マスキング層で上記円形状加工領域以外の部分が被覆されたキャリア12の表面に対して、狙い深さ200μmの穴が形成されるように、吐出径0.4mmのノズルから、粒径0.05mmのメディア(材質:グリーンカーボナイト)を0.5MPa以上の吐出圧力で2~5秒間投射することで、キャリア12の露出部分に対してブラスト処理を行った。こうして、キャリア12の表面にアライメントマークを構成する加工部として凹部12aを6個形成し、位置決め用領域Pを画定した。その後、マスキング層を除去した。
【0055】
(3)第1中間層の形成
キャリア12の上記表面(凹部が形成された側の面)に第1中間層14aとして厚さ100nmのチタン層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のチタンターゲット(純度99.999%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ キャリアガス:Ar(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
‐ 成膜時温度:40℃
【0056】
(4)第2中間層の形成
第1中間層14aの上に、第2中間層14bとして厚さ100nmのCu層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のCuターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(6.2W/cm
‐ 成膜時温度:40℃
【0057】
(5)炭素層の形成
Cu層の上に、剥離層16として厚さ6nmのアモルファスカーボン層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の炭素ターゲット(純度99.999%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ キャリアガス:Ar(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:250W(0.7W/cm
‐ 成膜時温度:40℃
【0058】
(6)第1金属層の形成
剥離層16の表面に、第1金属層18aとして厚さ100nmのチタン層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のチタンターゲット(純度99.999%)
‐ キャリアガス:Ar(流量:100sccm)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
【0059】
(7)第2金属層の形成
第1金属層18aの上に、第2金属層18bとして膜厚300nmのCu層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成して、キャリア付金属箔10を得た。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のCuターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ キャリアガス:Ar(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
‐ 成膜時温度:40℃
【0060】
(8)アライメントマークの測定
レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 LEXT OLS3000)を用いて、アライメントマークを構成する凹部12aについて観察を行った。観察像の画像解析を行うことにより、凹部12aの最大深さd、凹部12aを平面視したときの外径φ、キャリア12の主面sと凹部12aの内壁面の接線tとがなす角度θ、並びに凹部12aの開放端の曲率半径rを測定した。解析には上記顕微鏡に搭載されているツール、及び、画像解析ソフトImageJを併用した。各パラメータについて、3つの円形状加工領域で測定した値の平均値を算出した。結果は表1に示されるとおりであった。なお、凹部12aの形状はキャリア上に各種層を積層した後(すなわちアライメントマークを成す凹部)においても実質同一であると考えられる。
【0061】
例2
アライメントマークの形成工程において、ブラスト処理の条件を適宜変更することにより、キャリア12の主面sと凹部12aの内壁面の接線tとがなす角度θ、及び凹部12aの開放端の曲率半径rを変化させたこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。また、アライメントマークを構成する凹部の測定も例1と同様にして行った。
【0062】
例3~5
アライメントマークの形成工程において、ブラスト処理に代えて、レーザーアブレーション処理により6つのアライメントマークを構成する凹部を形成したこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。また、アライメントマークを構成する凹部の測定も例1と同様にして行った。レーザーアブレーション処理は、キャリア12の表面における互いに離間した6地点に対して固体UVレーザーを以下の条件で照射することにより行った。
[レーザー加工条件]
‐ 装置:東レエンジニアリング株式会社製レーザーパターニング装置
‐ 出力:35mW
‐ 波長:355nm
‐ 狙い径:400μm(例3及び4)又は2000μm(例5)
‐ 狙い深さ:200μm(例3及び5)又は100μm(例4)
【0063】
評価
例1~5のキャリア付金属箔10について、以下に示されるとおり、各種評価を行った。評価結果は表1に示されるとおりであった。
【0064】
<評価1:露光現像性能>
キャリア付金属箔10の露光現像性能を以下の手順により評価した。図8に示されるように、キャリア付金属箔10の第2金属層18b上にフォトレジスト20を積層した。このキャリア付金属箔10をラフ回路用露光装置(ウシオ電機株式会社製、UX-5シリーズ)に搬入した。ラフ回路用露光装置にてキャリア付金属箔10における位置決め用領域Pのパターン情報の検出及び位置合わせを行い、配線用領域W上の表面に対して回路幅が100μmとなるパターンで露光を行った。その後、直ちにキャリア付金属箔10をラフ回路用露光装置から微細回路用露光装置(ウシオ電機株式会社製、UX-7シリーズ)に移した。微細回路用露光装置にてキャリア付金属箔10における位置決め用領域Pのパターン情報の検出及び位置合わせを行い、配線用領域W上の表面に対して回路幅が2μmとなるパターンで露光を行った。キャリア付金属箔10に対して公知の条件で現像を行い、ラフ回路用パターン22a及び微細回路用パターン22bで構成されるレジストパターン22を形成した。レジストパターン22形成後のキャリア付金属箔10に公知の条件で電気銅めっきを行い、その後レジストパターン22を剥離した。レジストパターン22の剥離によって露出した金属層18の不要部分を公知の条件でエッチング除去した。こうして、キャリア付金属箔10上に回路幅100μmのラフ回路及び回路幅2μmの微細回路を形成した。回路形成後のキャリア付金属箔10をSEMにて観察した。その結果、例1~5のいずれのキャリア付金属箔10においても、ラフ回路及び微細回路が狙いのデザインどおりに形成されていることを確認できた。
【0065】
<評価2:キャリアの割れ頻度>
キャリア12の割れ頻度を以下の手順により評価した。まず、100mm×100mmで厚さ1.1mmのガラスシート(材質:ソーダライムガラス)を5枚用意し、それぞれに例1~5と同様の条件で9つのアライメントマークを構成する凹部を形成した。各アライメントマークを構成する凹部の狙い位置(中心点)は、ガラスシートの1つの角(端部)の座標を基準点(0,0)と定め、その対角に位置する角の座標を(100,100)としたときに、(25,25)、(50,25)、(75,25)、(25,50)、(50,50)、(75,50)、(25,75)、(50,75)、及び(75,75)の座標でそれぞれ示される地点とした。次いで、アライメントマークを構成する凹部を形成したガラスシート、及び比較対象としてアライメントマークを構成する凹部を形成していないガラスシート(100mm×100mm、厚さ1.1mm、材質:ソーダライムガラス)に、規格番号:ASTM C1499-01に準拠したガラスのリング曲げ試験を実施した。アライメントマークを構成する凹部を形成していないガラスシートの面強度に対する、アライメントマークを構成する凹部を形成したガラスシートの面強度の比を算出し、以下の基準で格付けした。
‐評価A:面強度の比が0.9以上
‐評価B:面強度の比が0.7以上0.9未満
‐評価C:面強度の比が0.7未満
【0066】
<評価3:アライメントマークの視認性>
アライメントマークの視認性を以下の手順により評価した。評価2と同様、5枚のガラスシートに例1~5と同様の条件で9つのアライメントマークを構成する凹部を形成した後、例1の条件で、中間層14(第1中間層14a及び第2中間層14b)、剥離層16としての炭素層、及び金属層18(第1金属層18a及び第2金属層18b)をこの順に成膜してキャリア付金属箔10を作製した。その後、上記露光装置を用いて、形成したアライメントマークを10回繰り返し認識させて、アライメントマークの中心点の寸法誤差を測定した。次いで寸法誤差の平均値を算出し、以下の基準で格付けした。
‐評価A:寸法誤差の平均値が±50μm未満
‐評価B:寸法誤差の平均値が±50μm以上±150μm未満
‐評価C:寸法誤差の平均値が±150μm以上
【0067】
<評価4:加工汚れ>
加工汚れの評価を以下の手順により評価した。評価2と同様、5枚のガラスシートに例1~5と同様の条件で9つのアライメントマークを構成する凹部を形成した後、レーザー顕微鏡でアライメントマークを構成する凹部周囲の観察を行った(最大5mm×5mm視野)。凹部周囲に観察された変色の広がりの程度を以下の基準で格付けした。
‐評価A:凹部の周辺に変色が無いか、又は凹部の周辺に変色があるもののその変色が凹部の外縁から5μm未満の範囲内に収まっている。
‐評価B:凹部の周辺に変色が有るものの、その変色が凹部の外縁から100μm以下の範囲内に収まっている。
‐評価C:凹部の周辺に変色が有り、その変色が凹部の外縁から100μmを超える範囲に及んでいる。
【0068】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8