(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】台車の補助輪及びブレーキ機構
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20220920BHJP
B62B 5/04 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B62B5/04 A
(21)【出願番号】P 2018017670
(22)【出願日】2018-01-17
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】598085526
【氏名又は名称】ホッタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 国男
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-026026(JP,A)
【文献】実開昭61-062676(JP,U)
【文献】特開2005-231553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/02
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠の前後に前主車輪と後主車輪を取り付けた車両で、
前補助輪と後補助輪の少なくとも一方の補助輪を昇降可能にして前記前主車輪または後主車輪の近傍に床面より浮かせて取り付け、
前記補助輪を回動軸と長穴とブレーキシューが付設してある車輪昇降枠の前記長穴に軸を介して取り付け、
ペダルを付設の連結軸を前記回動軸に接続した状態で前記車輪昇降枠を前記車両の台枠に固定してあって、
前記補助輪が床面より浮いた位置で、前記ペダルを踏んで前記車輪昇降枠と前記補助輪を下方に回動して前記補助輪を着床させ、着床状態で前記長穴で前記補助輪の回動を逃がして前記車輪昇降枠のみを回動させ、前記ブレーキシューを前記補助輪に圧接することを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1の車両であって、
前記回動軸に加圧座と前記連結軸に受け座をそれぞれ取り付け、前記加圧座と前記受け座の間に弾性体を装着して前記連結軸の回動を前記弾性体を介して前記回動軸に伝達することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、台車等の走行及び停止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の階を有する建物の中では、階から階への荷物運搬には台車等に荷物を載せてエレベーターを使って階移動をするケースが多くあり、その際に台車の車輪がエレベーターの扉の溝に嵌ったり、引っかかると言ったトラブルや、エレベーター待ちで停車している際には、台車が動かないように手で支えている場面をよく目にする。
そんな運搬作業の煩わしさの解消と安全性向上のための、溝や窪みに影響されない走行機構と、確実に駐停車するための停止機構とが求められている。
【0003】
こうした台車等の走行機構や停止機構として、例えば、特許文献1には台車本体の四隅に取付けたキャスターをつなぐ輪郭線の内側に2輪以上のキャスターが任意に取付け可能で、窪地・溝も容易に乗り越えられる運搬台車が開示されているが、多数の車輪が接地状態で走行するため、操舵性が悪く長距離走行にとっては使い勝手が悪い。また、特許文献2には車体の中央に走行輪を設けて、前記走行輪の両側に補助輪を配設し、通常走行は中央の走行輪を使用し、溝部を渡る際に補助輪が接地する方式の機構が開示されているが、ハンドルを有しない台車や、車体を水平にして走行する使用条件には不向きであり、また、両者とも駐停車用の停止機構は備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2008-65450
【文献】特願2010-79534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、台車の主車輪の進行方向に対して、前後の近傍で主車輪と干渉しない位置に補助輪を取り付け、前記補助輪の少なくとも1個を台車の停止体として兼用することにより、溝の横断走行と駐車時のブレーキが可能な簡便な台車の機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の車両は、車両の前後に設けた走行用の主車輪に加えて、前記主車輪と同時に溝や窪みを通過しない位置で、平坦走行時には床面と接触しない高さに補助輪を浮かせて、支持台を介して車両に取り付けてある。
これにより、主車輪と補助輪とで溝や窪みの影響を受けずに走行することがが可能。
【0007】
請求項2の車両は、請求項1の補助輪をブレーキシューと回動軸を付設の車輪昇降枠に軸を介して昇降可能な状態に取り付けると共に、前記回動軸に前記補助輪を昇降するペダルを連結した構成にしてあり、前記ペダルを踏むことで前記車輪昇降枠を回動し、前記補助輪を降下させて着床させ、その後に前記ブレーキシューを圧接してロックする。
これにより、ロックした補助輪と床面の摩擦抵抗で車両を停止することが可能。
【0008】
請求項3の車両は、請求項2の補助輪において車輪昇降枠の回動軸に弾性体を介してペダルを取り付けると共に、前記車輪昇降枠の下降端を少し下げた構成にしてある。
これにより、床面の少々の凹凸は弾性体が吸収し、更に安定した状態で車両を停止することが可能。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の台車の補助輪及びブレーキ機構は、両者を複合することでシンプルで安価となり普及が期待できる機構である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】 ペダルをロックした状態を示す昇降式補助輪の平面図
【
図8】 固定式補助輪と昇降式補助輪を台車に組み込んだ状態の正面図
【
図11】 溝を通過する前の状態を示す台車の正面図
【
図12】 溝を通過している状態を示す台車の正面図
【
図13】 溝を通過した後の状態を示す台車の正面図
【
図14】 昇降式補助輪の車輪が着床した状態を示す台車の正面図
【
図15】 昇降式補助輪の車輪が台車を持ち上げた状態を示す台車の正面図
【
図16】 昇降式補助輪の車輪が床面を加圧した状態を示す台車の正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願発明の補助輪及びブレーキ機構の実施形態について図を参照して説明する。
まず最初に、固定式補助輪の構成について、
図1、
図2及び
図3及び
図8、
図10を参照して説明する。
支持台51に対向して付設の車輪取付け枠52a、52bに設けた軸受穴53a、53bに軸54を介して車輪55を回転可能な状態で取り付けてある。また、支持台51には、ねじ込み式の主車輪2a、2bの取付け台3a、3bに前記主車輪で挟み込んで台車枠1に取り付けるための穴56を設けてあり、その穴56と車輪55の位置関係は前記台車枠に取り付けたとき、前記車輪が床面に接触しない高さに設定してある。
【0012】
続いて、昇降式補助輪の構成ついて、
図4、
図5、
図6及び
図8、
図10を参照して説明する。
コの字状の車輪昇降枠102の対向面を横架して回動軸103が付設してあると共に、前記回動軸の軸心を中心とする円弧状の長穴104a、104bが設けてある。また、前記車輪昇降枠の車輪に接触する面にはゴム系のブレーキシュー111が付設してある。
内支持板107は前記車輪昇降枠に付設の回動軸103の軸受穴107a及び前記軸受穴の穴心を中心とする円弧状の長穴107bを設けてある。また、前記支持板の側面にはL字に曲がった停止板107cと弾性体109の片端を支持するためのピン110を設けてある。
外支持板108は前記内支持板と同様に、軸受穴108a、長穴108bを設けてあるが、停止板は設けていない。
また、長穴107b、108bの寸法については、台車に積載する荷重を支えることができるように、車輪105の上昇端で軸106と接する寸法にしてある。
そして、前述の車輪昇降枠102は回動軸103の両端を内支持板107の軸受穴107a及び外支持板108の軸受穴108aにそれぞれ挿通して組み合わせ、これを支持台101を挟み込んで、ネジ118で固定してある。
次に、軸106を外支持板108の長穴108b、車輪昇降枠102の長穴104a、104bと車輪105及び内支持板107の長穴107bに挿通して、前記車輪を回転可能に、且つ、長穴107b、108bに沿って回動可能な状態で取付けてある。
この状態で、弾性体109を支持するピン114とネジ穴115が付設してあるL字の弾性体受け座113を付設してある接続具112の貫通穴に前記車輪昇降枠に設けた回動軸103の片側を挿し、前記接続具にロックネジで固定して、前記内支持板に付設のピン110とピン114で弾性体109の両端を支持してある。これにより、車輪昇降枠102を反時計方向、つまり車輪105を上方に常時付勢している。
【0013】
次に、左右の昇降式補助輪100を連結して、ペダル121で昇降する部分について
図4、
図5、
図6及び
図8、
図9、
図10を参照して説明する。
回動軸103を挿入していない側の接続具112の貫通穴には、左右一対の弾性体加圧座122とペダル121を取り付けの連結棒120を挿入し固定してある。尚、前記ペダルの下面には踏み込んだ位置でペダル121を維持固定するためのロック具123が軸124および弾性体125を介して回動可能に付設してあり、前記弾性体加圧座には連結ネジ127を挿通するための穴126が設けてある。また、ロック具123は弾性体125により常時、ロックする方向に付勢してある。
そして、左右の弾性体受け座113と弾性体加圧座122との間に弾性体116を装着し、連結ネジ127を前記弾性体加圧座の穴126から挿入し前記弾性体受け座のネジ穴115に締結し、ペダル121の操作で左右の昇降式補助輪100を昇降可能な状態で連結してある。
これにより、ペダル121を踏まずに上方にある時は、昇降式補助輪100の車輪105が床面より浮いた待機状態となり、前記ペダルを踏むと車輪昇降枠102が回動して車輪105が降下して着床し、その後に弾性体116によりブレーキシュー111が前記車輪に圧接し、同時に前記ペダルをロック具123が停止板107cの下に進入して固定する。この状態から、前記ロック具を外してペダル121を開放すると前述のように車輪105が上方で待機した状態に戻る。
【0014】
次に、本願発明の実施形態の一例として、台車の前方に左右一対の固定式補助輪と後方に左右一対の昇降式補助輪をそれぞれ取り付けた状態での構成と使用方法について説明する。
最初に、
図8、
図9、及び
図10を参照して構成を説明する。尚、
図8は
図10の下半分を削除した図にしてある。
矩形に構成した台車枠1のコーナー付近に設けた車輪取付け台3a、3b、3c、3dにはそれぞれ主車輪2a、2b、2c、2dを取り付けてあり、台車前方に位置する主車輪2a、2bの内側に固定式補助輪50が支持台51に設けた穴56に主車輪2a、2bのねじで挟み込んで取り付けてある。
そして、台車後方に位置する主車輪2c、2dの内側に昇降式補助車輪100が支持台101に設けた穴119に主車輪2c、2dのねじで挟み込んで取り付けてあると共に、左右の昇降式補助輪100はペダル121を付設の連結棒120を接続具112に挿入し、弾性体116を介して車輪昇降枠102が回動可能な状態で連結してある。
【0015】
次に、使用方法について説明する。
最初に、溝の上を走行する場合について
図11、
図12及び
図13を参照して説明するが、図は手前側から見た正面図とし、付番の記載は手前側のみとしてある。
図は前方に左右一対の固定式補助輪50と後方に左右一対の昇降式補助輪100とを取り付けた台車が、図面右から左方向に走行する様子を示してある。
図11は床面にある溝200に差し掛かる前の状態を示したもので、台車の前後にある主車輪2a、2cは床面に接触し、固定式補助輪50の車輪55及び昇降式補助輪100の車輪105は床面より僅かに浮いた状態となっている。
この状態から、左方向に進むと
図12に示すように、床面にある溝200の位置で、前方の主車輪2aが前記溝に落ち込もうとするが、近傍に配置してある固定式補助輪50が着床した時点で止まる。このとき、僅かな走行抵抗は発生するが走行には影響の無い程度である。また、このとき更に走行抵抗を小さくするには主車輪と補助車輪の上下差を小さくすることが有効であり、使用条件に合せて補助輪の上下位置が調整できる可変式にしても良い。
次に、
図12の状態から更に左方向に進むと
図13に示すように主車輪2aは溝前方の床面に乗り移り、前記固定式補助輪は床面より浮いた位置に戻り、溝200に影響されない状態になる。
また、台車後方の昇降式補助輪100においても、同じ原理で前記溝を通過することができる。
以上により、前記固定式補助輪及び前記昇降式補助輪を床面との隙間、つまり上下方向には通常走行に支障をきたさない範囲で、できる限り低い高さに、また前後方向には主車輪と溝幅以上の間隔をおいた位置に取り付けるだけで、煩わしい操作を必要とせずに溝上を走行することができる。
【0016】
次に、昇降式補助輪100を用いてブレーキを使用する場合について、
図4、
図5、
図6、
図7と
図14、
図15、
図16及び
図8を参照して説明する。尚、
図14、
図15、
図16は
図8と同様に部分削除した図である。
図8はペダル121が上方に位置して、昇降式補助輪100の車輪105が床面より僅かに浮き、台車の走行が可能な状態を示す図である。
この状態から、前記ペダルを踏み前記車輪を降下して行くと、
図14に示すように前記車輪が着床する。
更にペダル121を踏むと連結棒120が回動し、前記連結棒に付設の弾性体加圧座122、弾性体116及び弾性体受け座113を経由して車輪昇降枠102を時計方向に回動し、床面または停止棒117と前記車輪昇降枠に付設のブレーキシュー111とにより車輪105を圧接し、その反力で
図15に示すように、主車輪2bを支点に後方の主車輪2dを浮かせ、同時にペダル121に設けてあるロック具123が時計方向に回動し、前記ロック具の先端が内支持板107に設けた停止板107cの下端に進入し、
図7に示す状態でペダル121を固定する。
これにより、ブレーキを掛けた車輪105と床面との摩擦抵抗により台車の動きを制止する。
また、このとき弾性体116の付勢力を変えることで、
図16に示すように台車に荷物300を載せた状態では、前記荷物の重量で前記弾性体が縮んで前記主車輪の浮上量を吸収し、台車を傾けることなく制止することもできる。
次に、前述の状態からロック具123の後端を外方向に蹴ると、前記ロック具の弾性体125を圧縮して、前記ロック具が反時計方向に回動し、その先端は前記内支持板に設けた停止板107cから外れて
図6の状態になる。同時に弾性体109により車輪昇降枠102が反時計方向に回動して車輪105を持ち上げ、ペダル121も上昇し、車輪105のブレーキを解除して
図8の状態に戻る。
以上、固定式補助輪と昇降式補助輪を併設した例で説明したが、台車の停止機能を必要としないケースにおいては全てを固定式補助輪にしても構わないし、台車をより頑強に停止したいケースや台車の前後でブレーキを掛けたいケースにおいては全てを昇降式補助輪にしても構わない。
【符号の説明】
【0017】
1 台車枠
2a、2b、2c、2d 主車輪
3a、3b、3c、3d 取付け台
50 固定式補助輪
51 支持台
52a、52b 車輪取付け枠
53a、53b 軸受穴
54 軸
55 車輪
56 穴
100 昇降式補助輪
101 支持台
102 車輪昇降枠
103 回動軸
104a、104b 長穴
105 車輪
106 軸
107 内支持板
107a 軸受穴
107b 長穴
107c 停止板
108 外支持板
108 軸穴
108b 長穴
109 弾性体
110 ピン
111 ブレーキシュー
112 接続具
113 弾性体受け座
114 ピン
115 ネジ穴
116 弾性体
117 停止棒
118 ネジ
119 穴
120 連結棒
121 ペダル
122 弾性体加圧座
123 ロック具
125 弾性体
126 穴
127 連結ネジ
128 ロックネジ
200 溝
300 荷物