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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20220920BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020127012
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024423
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 潔
(72)【発明者】
【氏名】寺杣 友貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060283(JP,A)
【文献】登録実用新案第3114930(JP,U)
【文献】特開平06-042700(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203721(WO,A1)
【文献】特開2004-224287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源からガスの流量を計測しながらガス管路を介して搬送する充填機構を本体ハウジング(2)内に備え、前記充填機構の前記ガス管路の出口に接続される充填ホース(3)と、該充填ホース(3)の先端に備えられる充填ノズル(4)を有するガス充填装置(1)において、
前記本体ハウジング(2)に回転自在のサポート用アーム機構(5)を設け、該サポート用アーム機構(5)にはサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転を規制する回転規制手段(8)を備え、前記サポート用アーム機構(5)の先端にひも状部材(9)を介して前記充填ノズル(4)に係止可能なフック(10)を備え、
前記回転規制手段(8)は、サポート用アーム(6)の回転軸(7)が接続部材(21)を介して接続された円板(22)の上面に固定された凸片(11)と、本体ハウジング(2)の上部に設けられたストッパー(12)を備えており、
前記ストッパー(12)は前記凸片(11)の外方突出部の可動範囲両端に相当する箇所に配設されていることを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
本体ハウジングの上部には、サポート用アーム機構と放爆手段とが配設されている請求項のガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素の様な燃料ガスを車両の燃料タンク等に充填するガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我国は化石燃料に乏しく、海外から輸入することに頼っているため国際情勢の影響を受け易いという事情等から、近年では、様々な資源から作ることが出来る水素が注目を集めている。そして水素は、環境に優しく、エネルギー安全保障に役立つ等の種々のメリットを有している。
水素ガスの利用態様の一つとして、高圧(例えば82MPa以上)に加圧された水素ガスを車両の燃料タンクへ充填している。その様な利用態様においては、高圧に耐えられるように、ガス充填装置の充填ノズルは重量が重く、更に充填ホースも重量が重いものが使用されている。
ここで、充填ホースに高圧が付加されると、更に充填ホースの重量が重くなり、水素ガス充填作業を行う作業員に重労働を強いることになってしまう。
【0003】
近年、水素ステーションの普及に向けて、省令や保安規則を改正してセルフ式の水素ステーションが展開されている。
本出願人は、充填ノズルを支持することにより、軽作業にてガス充填を行うことが出来るサポート用アーム機構を提案している(特許文献1参照)。
この従来技術(特許文献1)は有効な技術であるが、ガス充填装置とは別体でサポート用アーム機構を設けるため、設備の構造が大型化してしまう。そのため、新規の水素ステーションにおける設置には適しているが、既存の水素ステーションにおいてはサポート用アーム機構を設置するスペースが確保できないという問題を有している。
【0004】
その他の従来技術においても、充填ノズルを支持するサポート用アームを備えた充填装置が提案されているが(例えば特許文献2参照)、係る従来技術では、充填装置のケーシング外部に取り付けた部品(ストッパー)にサポート用アームを当接させることによりサポート用アームの回動(回転角度)を規制しているので、構造が大型化すると当該部品(ストッパー)も大型化させる必要がある。
また、充填ノズルで充填できる領域或いは範囲が異なる複数種類のガス充填装置へ設置するためには、ストッパー部材の設置位置を種類毎に調整してサポート用アームの回転角度或いは回動範囲を調整しなければならず、係る調整作業に多大な労力及びコストが費やされてしまう。
それに加えて、サポート用アーム本体にストッパーが当接するので、サポート用アーム表面に傷や凹みが形成されてしまい、意匠的な面で不利益が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-19872号公報
【文献】特開2020-60283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、新規の設備として或いは既存設備の改良として設置することが出来て、ガス充填作業の軽作業化を図れると共に、充填装置の構造が大型化することなく容易に設置することが出来て、サポート用アームの表面が損傷する恐れが無いガス充填装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス充填装置(1)は、ガス供給源からガスの流量を計測しながらガス管路を介して搬送する充填機構を本体ハウジング(2)内に備え、前記充填機構の前記ガス管路の出口に接続される充填ホース(3)と、該充填ホース(3)の先端に備えられる充填ノズル(4)を有するガス充填装置(1)において、
前記本体ハウジング(2)に回転自在のサポート用アーム機構(5)を設け、該サポート用アーム機構(5)にはサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備え、前記サポート用アーム機構(5)の先端にひも状部材(9:例えばワイヤ)を介して前記充填ノズル(4)に係止可能なフック(10)を備え、
前記回転規制手段(8)は、サポート用アーム(6)の回転軸(7)が接続部材(21)を介して接続された円板(22:下部円板)の上面に固定された凸片(11)と、本体ハウジング(2)の上部に設けられたストッパー(12)を備えており、
前記ストッパー(12)は前記凸片(11)の外方突出部の可動範囲両端に相当する箇所に配設されていることを特徴としている。
【0008】
本発明において、本体ハウジング(2)の上部には、サポート用アーム機構(5)と放爆手段(14)とが配設されているのが好ましい。ここで、放爆手段(14)は、万が一において爆風が生じた場合に、本体ハウジング(2)のパネルが損傷するよりも早いタイミングで放爆パネル(14A)が開放し、爆風を逃がして、ガス充填装置(1)の周囲に被害が及ばない様な構造(放爆構造)を有している。
【0009】
本発明の実施に際しては、サポート用アーム(6)のアーム部(6A)が伸縮自在であるのが好ましい。具体的には、アーム部(6A)自体が公知の伸縮機構(入れ子式機構等)を備えて伸縮可能であっても良いし、或いは、アーム部(6A)の基部がアーム機構ハウジング(6B)に収容される長さ(或いは、アーム機構ハウジング6Bの外部に存在するサポート用アーム6の長さ)が変更可能に構成されていても良い。
また、サポート用アーム(6)のアーム収納部(6B:アーム機構ハウジング)が支持部材(或いはアーム回転軸7)に対して移動可能であるのが好ましい。
さらに、前記サポート用アーム機構(5)の基部(5A)が(或いはサポート用アーム機構5全体が)本体ハウジング(2)に対して移動可能に構成されていることが好ましい。
そして、これ等の構成を組み合わせてサポート用アーム(6)のアーム部(6A)の長さ或いは先端部(6T)の位置を適宜調整することが好ましい。
【0010】
また本発明の実施に際しては、本体ハウジング(2)には、前記フック(10)を係止する取付具(15)が設けられているのが好ましい。
そして、前記回転規制手段(8)におけるストッパー(12)には、緩衝部材(16)が取り付けられているのが好ましい。
或いは、前記ひも状部材(9:ワイヤ)の途中には緊急離脱機構(17:ワイヤカップリング)が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明のガス充填装置(1)によれば、前記本体ハウジング(2)に回転自在のサポート用アーム機構(5)を設け、前記サポート用アーム機構(5)の先端にひも状部材(9:例えばワイヤ)を介して前記充填ノズル(4)に係止可能なフック(10)を備えているので、充填ノズル(4)がひも状部材(9)に吊り下げられ、充填ホース(3)及び充填ノズル(4)の重量は、サポート用アーム(6)により負担(支持)される。そのため、重量が重い充填ホース(3)及び充填ノズル(4)を用いてガス充填作業を行うに際して、サポート用アーム機構(5)により充填ホース(3)及び充填ノズル(4)の重量を支持して、ガス充填作業における作業員の負荷を軽減して、軽作業化を図ることが出来る。
ガス充填作業の際に作業者が誤って充填ノズル(4)を落下させたとしても、充填ノズル(4)はひも状部材(9)に吊り下げられているので、地面に衝突する直前で落下が止まり、衝突時の衝撃で充填ノズル(4)が破損してしまうことが防止される。それに加えて、サポート用アーム機構(5)により充填ホース(3)及び充填ノズル(4)の重量が支持されているので、作業者が充填ノズル(4)を確実に保持することが出来て、充填ノズル(4)を手から脱落させてしまう可能性が減少する。
【0012】
また、前記サポート用アーム機構(5)にはサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備えているので、サポート用アーム(6)の回転角度を所定角度に調整(サポート用アーム6の可動範囲を所定範囲に調整)して、ガス充填作業の作業性を向上させることが出来る。
さらに、設備全体が大型化してしまうことが防止され、新規の水素ステーションにおける設置は勿論、既存の水素ステーションにおいて設置することが出来る。
【0013】
それに加えて、本発明によれば前記サポート用アーム機構(5)にはサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備えているので、充填ノズル(4)で充填できる領域が異なる複数種類のガス充填装置(1)へ設置するに際しても、ガス充填装置(1)の種類に対応して前記サポート用アーム機構(5)の一部の部品を交換することにより、回転角度或いは回動範囲を容易に調整することが出来る。
また、サポート用アーム本体(6)は回転規制手段(8)は当接しないので、サポート用アーム(6)表面に傷や凹みが形成され難い。そのため、意匠的に(いわゆる「見た目」が)良好である。
さらに、本発明では回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備えており、アーム自体を規制するためのストッパーに比較して回転規制手段(8)は大きくならず、アーム自体を規制するストッパーの取り付けに要するスペースに比較して回転規制手段(8)の取付スペースも大きくない。そのため、他の形態の異なるガス充填装置に対しても容易に適用することが出来る。
【0014】
本発明において、前記回転規制手段(8)はサポート用アーム(6)の回転軸(7)に配設された凸片(11)と、本体ハウジング(2)の上部に配設されたストッパー(12)を備えていれば、前記凸片(11)がストッパー(12)に当接することにより回転軸(7)の回転が規制され、充填ノズル(4)の操作(移動)範囲が規制される。それにより、充填ノズル(4)を吊り下げているひも状部材(9:例えばワイヤ)が本体ハウジング(2)に接触、干渉することが防止される。
【0015】
そして本発明において、サポート用アーム機構(5)の回転軸(7:サポート用アーム6の回転軸)を本体ハウジング(2)に取り付ける取付箇所には回転角度保持手段(13:トルクヒンジ)が設けられていれば、サポート用アーム(6)を移動した際に(サポート用アーム6の)慣性力によりサポート用アーム(6)が所望の位置よりも振られてしまう(回動し過ぎてしまう)事態を防止して、所望の位置で停止することが出来る。そのため、ガス充填作業において充填ノズル(4)の位置を調整し易くなり、作業性が向上する。
【0016】
さらに、本体ハウジング(2)の上部に、サポート用アーム機構(5)と放爆手段(14)とが配設されていれば、ガス充填装置(1)の設置に対する制限(ガス充填装置と道路境界線との所定距離等の制約)を充足して、水素ステーションでの配置に対する自由度が増す。
ここで、サポート用アーム機構(5)の放爆手段(14)に対する位置を選択することにより、放爆手段(14)の作動時にサポート用アーム(6)に干渉することを防止出来る。すなわち、放爆手段(14)が作動しても(扉14Aが開いても)、サポート用アーム機構(5)が扉(14A)と干渉して損傷してしまうことが防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るガス充填装置の斜視図である。
図2】サポート用アーム機構の回転規制手段におけるハウジングを除去した状態を示す斜視図である。
図3図2で示す回転規制手段の詳細を示す部分拡大斜視図である。
図4図3の回転規制手段において、凸片がストッパーに当接した状態を示す部分拡大斜視図である。
図5】サポート用アーム機構を図2の矢印B方向から見た拡大断面図である。
図6】サポート用アーム機構のアーム先端位置を変更する態様を示す説明図である。
図7】サポート用アーム機構のアーム先端位置を変更する態様であって、図6とは異なる態様を示す説明図である。
図8】放爆構造の作動を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、実施形態に係るガス充填装置1は、ガス供給源からガス流量を計測しつつガス管路を介して搬送する充填機構(図示せず)を本体ハウジング2内に備えており、充填機構におけるガス配管(図示せず)の出口に接続される充填ホース3と、充填ホース3の先端に備えられる充填ノズル4とを有している。図1において、符号18は、ガス充填装置1における表示器を示している。
図示の実施形態では水素ガス充填装置を例示して説明するが、CNGガス、その他のガス充填装置についても、図示の実施形態を適用することが出来る。
図示しない充填機構におけるその他の構成及び作用効果は、公知技術の充填機構と同様である。
【0019】
図1において、充填ホース3、充填ノズル4を備えた本体ハウジング2の上面(頂部面)にはサポート用アーム機構5が設けられている。サポート用アーム機構5はサポート用アーム6(アーム部6A及びアーム機構ハウジング6B:図6図7参照)、サポート用アーム6の回転軸7(図3参照)、回転軸7の回転を規制する(制限する)回転規制手段8を備えている。回転規制手段8の詳細は図2図4を参照して後述する。図1では回転規制手段8におけるハウジングのみが示されている。
サポート用アーム機構5の先端6Tからひも状部材9(例えばワイヤ)が垂下しており、ワイヤ9の他端(垂下した先端)はフック10(ワイヤ側フック)を有し、フック10は充填ノズル4の把持部近傍に設けられたフック取付具19に係止可能である。
ワイヤ9側のフック10を充填ノズル4側のフック取付具19に係止することにより充填ノズル4がワイヤ9に吊り下げられ、充填ホース3及び充填ノズル4の重量は、サポート用アーム6により負担(支持)される。そのため、重量が重い充填ホース3及び充填ノズル4を用いて水素充填作業を行うに際して、サポート用アーム機構5が充填ホース3及び充填ノズル4の重量を支持して、ガス充填作業の作業員の負荷を軽減して、軽作業化している。
なお、ワイヤ9側のフック10と充填ノズル4側のフック取付具19とは、係止可能であり且つ自在に解除可能である。
【0020】
図1では明示されていないが、サポート用アーム機構5には、ワイヤ9を巻き取り、巻き出しを行うワイヤリール、リトラクタ等で構成される公知のワイヤ巻取装置が設けられている。ここで、図示しないワイヤ巻取装置は、ワイヤ9の巻取り、巻出しを行うワイヤリールが正回転或いは逆回転する際に、一定の回転力を付与する回転力付与機構を備えている。
さらに図示しないワイヤ巻取装置は、ワイヤ9の巻出し、巻戻しを停止させたときにワイヤ9を(その時の位置に)保持するワイヤ保持機構を備えている。図示しないワイヤ保持機構により、ワイヤ9の巻き上げを一旦停止すればワイヤ9の上昇は停止するので、無負荷状態においてワイヤ9が巻き上げられて高い位置に移動することが防止される。ワイヤ保持機構でワイヤ9が停止(保持)された状態で、作業者がワイヤ9を下向きに引っ張れば、ワイヤ9の保持は解除されワイヤ9は上下方向に昇降する。
水素ガス充填作業の際に作業者が誤って充填ノズル4を落下させた場合に、充填ノズル4はワイヤ9に吊り下げられているので、充填ノズル4が地面に衝突する直前で吊り下げられ、地面との衝突により充填ノズル4が破損することが防止される。また、サポート用アーム機構5により充填ホース3及び充填ノズル4の重量が支持されているので、作業者は充填ノズル4を手で確実に保持することが出来、作業者の手から充填ノズル4が脱落する可能性が減少する。
【0021】
図1において、ワイヤ9の途中には緊急離脱機構17(ワイヤカップリング)が設けられている。図示はされていないが、ワイヤカップリング17は、サポート用アーム機構5側のワイヤ9に接続されるアーム側部材と、フック10側(充填ノズル4側)のワイヤ9に接続されるフック側部材により構成されている。そして、アーム側部材とフック側部材を接続することでワイヤカップリング17として機能し、ワイヤ9に所定以上の引張力が作用するとアーム側部材とフック側部材の接続が解除される様に構成されている。例えば、充填ノズル4を接続した状態の車輌が誤発進して、充填ノズル4が所定以上の力で引っ張られた場合には、ワイヤカップリング17のアーム側部材とフック側部材の接続が解除され、ワイヤ9と充填ノズル4との接続は解除される。これにより、ワイヤ9の損傷や、サポート用アーム機構5の損傷のみならず、ガス充填装置1における各種機器への悪影響を防止することが出来る。
緊急離脱機構17としては、ワイヤカップリング以外の公知の機構も適用可能である。
【0022】
図1において、本体ハウジング2の上部には、サポート用アーム機構5に加えて、放爆手段14が配設されている。
放爆手段14は、万が一、本体ハウジング2の内部で爆風が生じた場合に、爆風を逃がして、本体ハウジング2やガス充填装置1の構成機器に被害が及ばない様に構成されており、本体ハウジング2の上面に形成した開口14B(図5図8参照)と扉14Aを有している。扉14Aは、定常時は開口14Bを閉鎖しており、図1では扉14Aが放爆手段14を示す部材として表示されている。放爆手段14については図8を参照して後述する。
図1において、符号20は本体ハウジング2内の換気用のスリットを示す。
【0023】
次に、図2図4を参照して、サポート用アーム機構5の回転規制手段8を説明する。
図2において、本体ハウジング2の上面に配置されたサポート用アーム機構5から、回転規制手段8のハウジングを除去した状態が示されている。図2では、回転規制手段8の要部が、二点鎖線及び符号Aで示されている。
図3は、図2における要部Aを拡大して示している。図3において、サポート用アーム6の回転軸7を回転(回動)することにより、サポート用アーム機構5のサポート用アーム6を適切な回転角度位置まで移動して、ワイヤ9(図1図2)を介して指示した充填ノズル4(図1)を支持することが出来る。その際、前記サポート用アーム6が回動する範囲が広過ぎると、ガス充填装置1周辺の構築物(図示せず)とアーム6或いは充填ノズル4が干渉する恐れがあり、充填作業の作業性が低下する恐れがある。
ここで、前記回転軸7に対して、公知の駆動装置により回転(回動)駆動力を付与することが可能である。
図示の実施形態においては、サポート用アーム6の回転(回動)を規制する回転規制手段8を設けて、サポート用アーム6の回転角度を所定角度内に調整(サポート用アーム6の可動範囲を所定範囲に調整)し、周辺構造物との干渉を防止して、充填作業の作業性を向上させている。
【0024】
図3において、回転規制手段8は、サポート用アーム6の回転軸7に配設された凸片11と、本体ハウジング2の上部に配設されたストッパー12を備えている。
詳細には、サポート用アーム6(サポート用アーム機構5)の回転軸7は接続部材21を介して下部円板22に接続されており、下部円板22の上面に、端部を半径方向外方に突出させた断面コ字状の凸片11が固定されている。一方、本体ハウジング2の上面においてはストッパー取付板23が設けられ、ストッパー取付板23の上面の2箇所に断面L字状のストッパー12が固定されている。そして、回転軸7に配設された凸片11がストッパー12に当接することにより、サポート用アーム6の回転が規制される。
回転軸7に対して凸片11と2箇所のストッパー12がなす角度の領域が、サポート用アーム6の回転角度すなわち可動範囲であり、サポート用アーム6は、凸片11が一方のストッパー12に当接した回転(回動)角度の位置から、凸片11が他方のストッパー12に当接した回転(回動)角度の位置の間の範囲で回転(回動)することが出来る。
図3において、凸片11は2箇所のストッパー12の概略中間の角度に位置している。
回転規制手段8のストッパー12には、緩衝部材16が取り付けられている。
【0025】
図4は、凸片11が一方のストッパー12に当接した状態を示している。図4に示す状態から回転軸7がさらに時計方向に回転(回動)することはなく、サポート用アーム6の時計方向の回転は図4において凸片11と当接しているストッパー12によって規制されている。図4では示されていないが、サポート用アーム6の反時計方向の回転は図4において凸片11と当接していないストッパー12によって規制されている。図3図4では、サポート用アーム機構5(サポート用アーム6)の回転(回転)角度は概略90°である。
【0026】
図5を参照して回転角度保持手段13(トルクヒンジ)について説明する。
回転角度保持手段13(トルクヒンジ)は、サポート用アーム機構5の回転軸7を本体ハウジング2に取り付ける箇所であって、回転規制手段8が設けられる箇所に設けられている。
図5において、下部円板22の下面には回転軸側円板24が(例えば締結部材により)固定され、ストッパー取付板23の上面には回転軸側円板24と概略同寸法の本体ハウジング側円板25が(例えば溶接により)固定されている。回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25の間には皿ばね26が介在しており、回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25により皿ばね26を挟み込むような構造となっている。そして、下部円板22とストッパー取付板23に挟持され、回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25により皿ばね26を挟み込む構造により、回転角度保持手段13(トルクヒンジ)が構成されている。
【0027】
ここで、回転角度保持手段13は、サポート用アーム6を移動(回動)した際に、サポート用アーム6の慣性力によりサポート用アーム6が所望の位置よりも振られてしまう(回動し過ぎてしまう)事態を防止して、サポート用アーム6を所望の位置で停止させる機能を有している。そのため、水素ガス充填作業において充填ノズル4の位置を調整し易くなり、作業性が向上する。ここで、トルクヒンジ自体の構成は公知である。
図5において、サポート用アーム機構5及び回転角度保持手段13が配置される位置の左側(図5で)には、放爆手段14の扉14Aが配置されている。
【0028】
再び図1において、水素ステーションの営業終了後等、充填作業を行わない際には、充填ノズル4に対する悪戯等を防止するため、収納扉27により、本体ハウジング2内のノズル掛けに充填ノズル4を出し入れする開口部分を閉鎖する。収納扉27を閉鎖する際に、充填ノズル4のフック取付具19からワイヤ9のフック10を外して、ワイヤ9が収納扉27と干渉して、充填ノズル4を出し入れする本体ハウジング2の開口部分が閉鎖できなくなることを防止している。
本体ハウジング2にはフック10を係止する取付具15が設けられており、充填ノズル4のフック取付具19から外されたワイヤ9のフック10は、本体ハウジング2の取付具15に係止される。充填ノズル4から外されたワイヤ9のフック10が、ガス充填装置1周辺の人や車両に引っ掛かる事態を防止するためである。
【0029】
ここで、車両とガス充填装置1の相対位置や、ガス充填装置と周辺構造物の相対位置によっては、車両或いは周辺構造物とサポート用アーム6とが干渉することを防止するため、サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整するべき場合が存在する。
そのような場合について、図6図7を参照して説明する。
図6(A)、(B)において、サポート用アーム6のアーム部6Aの基部(図6では左方の領域)は、アーム機構ハウジング6Bに収納可能であり、アーム機構ハウジング6B内に収納される長さは可変である。図6で示す例では、アーム機構ハウジング6Bと回転軸7(支持部材)との相対位置(図6で左右方向位置)は固定されている。図6において、符号8は回転規制手段を示している。
図6(A)と図6(B)を比較すると明らかな様に、アーム部6Aがアーム機構ハウジング6Bに収容される長さを可変とする(アーム機構ハウジング6B外部におけるアーム部6Aの長さを調整する)ことにより、サポート用アーム6の先端6Tの位置を種々選択することが出来る。
図6には明示されていないが、サポート用アーム6のアーム部6A自体を伸縮可能に構成する(例えば入れ子式に構成する)ことが出来る。サポート用アーム6を伸縮可能にしても、先端6Tの位置を調整出来る。
【0030】
また図7で示す様に、アーム機構ハウジング6Bと回転軸7(支持部材)との相対位置を調整して、アーム部6Aの先端6Tの位置を調整することが出来る。
図7(A)と図7(B)を比較すると明らかな様に、アーム部6Aの長さは図7(A)と図7(B)で同一であるが、サポート用アーム6の先端6Tの位置は、図7(B)の方が図中右方に延在しており、アーム6が伸長している。図7(A)ではアーム機構ハウジング6Bの概略右端の位置に回転軸7が位置されているのに対して、図7(B)ではアーム機構ハウジング6Bの左右方向中央の位置に回転軸7が位置しているため、アーム機構ハウジング6Bの概略右端の位置から中央の位置に至る長さの分だけ、アーム先端6Tの位置が図7において右側に延伸されている。
アーム機構ハウジング6Bと回転軸7の相対位置は、公知技術を適用して調整することが出来る。
アーム機構ハウジング6Bと回転軸7との相対位置を調整することにより、サポート用アーム6の先端6Tの位置を、複数通りの位置から選択することが出来る。
【0031】
サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整する態様であって、上述した以外の態様について、図7(B)を参照して説明する。
図7(B)において、回転軸7が、サポートアーム機構5の下方部分である基部5Aを貫通することなく、基部5Aで軸支すれば、基部5Aの位置を本体ハウジング2に対して(図7(B)において左右方向に)移動することにより、サポート用アーム機構5全体の本体ハウジング2に対する取付位置を移動して、アーム部6Aを伸縮した場合と同様に、サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整することが出来る。
サポートアーム機構5の基部5Aが本体ハウジング2に対して移動可能であれば、例えば既存のガス充填装置1にサポートアーム機構5を後付けする場合に、サポートアーム6の位置を適宜調整して、ガス充填装置周囲の構造物と干渉することを防止できる。
サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整する際は、上述した複数の態様のうち1つを選択して実施することも出来るし、或いは複数の態様を組合せて実施することも可能である。
【0032】
図8において、本体ハウジング2の上面に放爆手段14が設けられている。
図1を参照して上述した様に、放爆手段14は開口14B及び扉14A(パネル)を備え、扉14Aは通常は開口14Bを閉鎖している。万が一、本体ハウジング2の内部で爆風が生じた場合には、本体ハウジング2のパネルが損傷するよりも早いタイミングで扉14Aが開放し、本体ハウジング2内で生じた爆風を逃がして、当該爆風によりガス充填装置1の内外が損傷することを防止している。扉14Aは、本体ハウジング2内が所定値以上の圧力になった場合に開放される様に設定されている。
図8では、万が一の非常時において、本体ハウジング2内部の爆風により、扉14Aが開放された状態を示している。上述した様に、万が一の非常時以外には、扉14Aにより開口14Bは閉鎖されている。
明確には図示されていないが、サポート用アーム機構5と放爆手段14との相対位置は、例えば、図1図8で示す様に、放爆手段14が作動して扉14Aが開放する際に、サポート用アーム6に干渉しない位置に設定されている。換言すれば、放爆手段14が作動して扉14Aが開いても、サポート用アーム機構5は損傷しない様に、サポート用アーム機構5と放爆手段14との相対位置が設定されている。
【0033】
図示の実施形態によれば、本体ハウジング2に回転自在のサポート用アーム機構5を設け、サポート用アーム6の先端6Tにワイヤ9を垂下し、ワイヤ9の他端のフック10を充填ノズル4側のフック取付具19に係止させ充填ノズル4を吊り下げて、充填ホース3及び充填ノズル4の重量を、サポート用アーム6により負担(支持)されている。そのため、重量が重い充填ホース3及び充填ノズル4を用いてガス充填作業を行うに際して、ガス充填作業の作業者の負担を軽減して、ガス充填作業を軽作業化することが出来る。
また、ガス充填作業の際に作業者が誤って充填ノズル4を落下させたとしても、充填ノズル4はワイヤ9に吊り下げられているので、地面に落下する直前で吊り下げられ、落下した衝撃で破損することが防止され、また、サポート用アーム機構5により充填ホース3及び充填ノズル4の重量が支持されているので、作業者が充填ノズル4を手から脱落させてしまう可能性が減少する。
【0034】
また、図示の実施形態によれば、サポート用アーム機構5にはサポート用アーム6の回転軸7の回転(回動)を規制する回転規制手段8を備えており、回転規制手段8はサポート用アーム6の回転軸7(に接続された下方円板22)に配設された凸片11と、本体ハウジング2の上部(に設けられたストッパー取付板23)に配設されたストッパー12を備えており、前記凸片11がストッパー12に当接することにより回転軸7の回転が規制され、充填ノズル4の操作(移動)範囲が規制される。それにより、サポート用アーム6が無制限に回転することが抑制され、充填ノズル4を吊り下げているワイヤ9が本体ハウジング2に接触、干渉することが防止される。
そして、回転軸7の回転を規制するに際してサポート用アーム6にはストッパー12は当接しないので、サポート用アーム6表面に傷や凹みが形成され難くなり、意匠的に(いわゆる「見た目」が)良好である。
そして図示の実施形態では、新規の製造ステーションにおける設置は勿論、既存の水素ステーションに設置することが出来る。
それに加えて、充填ノズル4で充填できる領域が異なる複数種類のガス充填装置1へ設置するに際しても、ガス充填装置1の種類に対応してサポート用アーム機構5(回転規制手段8)の一部の部品を交換することにより、サポート用アーム6の回動範囲を容易に調整することが出来る。
【0035】
また、図示の実施形態によれば、サポート用アーム機構5の回転軸7を本体ハウジング2に取り付ける取付箇所には、回転軸側円板24、本体ハウジング側円板25、皿ばね26を備える回転角度保持手段13(トルクヒンジ)が設けられているので、サポート用アーム6が回転した際に、慣性力によりサポート用アーム6が所望の位置よりも回動し過ぎてしまう事態が防止される。
さらに、本体ハウジング2の上部に、サポート用アーム機構5と共に放爆手段14とが配設されており、ガス充填装置1の設置に対する各種制限を充足しているため、水素ステーションにおけるレイアウトの自由度が増加する。
【0036】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0037】
1・・・ガス充填装置(水素ガス充填装置)
2・・・本体ハウジング
3・・・充填ホース
4・・・充填ノズル
5・・・サポート用アーム機構
5A・・・基部(サポート用アーム機構の基部)
6・・・サポート用アーム
6A・・・アーム部
6B・・・アーム機構ハウジング
7・・・回転軸(サポート用アームの回転軸)
8・・・回転規制手段
9・・・ワイヤ(ひも状部材)
10・・・フック
11・・・凸片
12・・・ストッパー
13・・・回転角度保持手段(トルクヒンジ)
14・・・放爆手段
14A・・・扉(放爆パネル)
15・・・フック取付具
16・・・緩衝部材
17・・・緊急離脱機構(ワイヤカップリング)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8