IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社四国総合研究所の特許一覧 ▶ エナジーサポート株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図1
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図2
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図3
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図4
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図5
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図6
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図7
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図8
  • 特許-濃度測定装置および濃度測定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】濃度測定装置および濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20220920BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G01N21/33
G01N21/47 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018162560
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020034477
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】朝日 一平
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 育彦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 剛洋
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211357(JP,A)
【文献】特開2005-172626(JP,A)
【文献】特開2013-117517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0112772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を測定対象空間に照射する照射装置と、
前記測定対象空間から放射された光を受光する受光装置と、
前記受光装置からの受信信号に基づき、測定対象ガスが吸収する第1紫外波長帯域の光の吸光度である第1吸光度と、微粒子が吸収する第2紫外波長帯域の光の吸光度である第2吸光度とを同時に測定することで、前記測定対象ガスの濃度を算出する測定部と、を備え、
前記測定部は、前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合の前記第1紫外波長帯域の光の吸光度と前記第2紫外波長帯域の光の吸光度との相関関係を記憶しており、前記相関関係および前記第2吸光度に基づいて算出された前記微粒子の影響による前記第1紫外波長帯域の光の吸光度の増加量が補正された前記第1吸光度から前記測定対象ガスの濃度を算出する、濃度測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記測定対象ガスおよび前記微粒子の濃度を同時に算出する、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記相関関係は、前記測定対象空間に前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に、前記測定対象空間に存在する前記微粒子の濃度を変化させながら、前記第1吸光度と前記第2吸光度との相関関係を予め求めたものである、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、異なる種類のガスごとの吸光度スペクトルを記憶しており、前記第2吸光度に基づいて補正された前記第1吸光度における吸光度スペクトルから、測定対象ガスの種類を特定する、請求項1ないしのいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記受光装置は、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光、および、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光を分光する分光器を有する、請求項1ないしのいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記照射装置は、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光線を前記測定対象空間に照射する重水素ランプを有する、請求項1ないしのいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項7】
少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を測定対象空間に照射し、前記測定対象空間から放射された光を受光することで、測定対象ガスが吸収する第1紫外波長帯域の光の吸光度である第1吸光度と、微粒子が吸収する第2紫外波長帯域の光の吸光度である第2吸光度とを同時に測定することで、前記測定対象ガスの濃度を算出する、濃度測定方法であって、
前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子存在する場合の前記第1紫外波長帯域の光の吸光度と前記第2紫外波長帯域の光の吸光度との相関関係および前記第2吸光度に基づいて算出された前記微粒子の影響による前記第1紫外波長帯域の光の吸光度の増加量が補正された前記第1吸光度から前記測定対象ガスの濃度を算出する、濃度測定方法。
【請求項8】
前記測定対象ガスが、煙道中のSOガスである、請求項に記載の濃度測定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在する測定対象ガスおよびダストの濃度を連続して測定することが可能な濃度測定装置および濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在する測定対象ガスの濃度を測定する技術が知られている(たとえば非特許文献1)。たとえば非特許文献1では、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在するSOガスまたはNHガスの濃度を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「紫外吸収分光法を用いた高温ガス濃度計測装置の開発」、四国電力、四国総合研究所 研究期報102(2015年6月)19-27 (URL:http://www.ssken.co.jp/research/pdf/102/102_04.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、紫外吸収分光法を用いることで、非接触により測定対象空間に存在するSOガスまたはNHガスの濃度を測定することができるが、工場、プラント、火力発電所などの煙道には微粒子(ダスト)が存在するため、微粒子(ダスト)が存在する場合でも測定対象ガスの濃度を適切に測定できる濃度測定装置が求められていた。
【0005】
本発明は、微粒子(ダスト)が存在する場合でも、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在する測定対象ガスの濃度を連続して測定することが可能な濃度測定装置および濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る濃度測定装置は、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を測定対象空間に照射する照射装置と、前記測定対象空間から放射された光を受光する受光装置と、前記受光装置からの受信信号に基づき、測定対象ガスが吸収する第1紫外波長帯域の光の吸光度である第1吸光度と、微粒子が吸収する第2紫外波長帯域の光の吸光度である第2吸光度とを同時に測定することで、前記測定対象ガスの濃度を算出する測定部と、を備え、前記測定部は、前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合の前記第1紫外波長帯域の光の吸光度と前記第2紫外波長帯域の光の吸光度との相関関係を記憶しており、前記相関関係および前記第2吸光度に基づいて算出された前記微粒子の影響による前記第1紫外波長帯域の光の吸光度の増加量が補正された前記第1吸光度から前記測定対象ガスの濃度を算出する。
上記濃度測定装置において、前記測定部は、前記測定対象ガスおよび前記微粒子の濃度を同時に算出するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記相関関係は、前記測定対象空間に前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に、前記測定対象空間に存在する前記微粒子の濃度を変化させながら、前記第1吸光度と前記第2吸光度との相関関係を予め求めたものであるように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記測定部は、異なる種類のガスごとの吸光度パターンを記憶しており、前記第2吸光度に基づいて前記第1吸光度のパターンから、測定対象ガスの種類を特定するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記受光装置は、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光、および、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光を分光する分光器を有するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記照射装置は、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光線を前記測定対象空間に照射する重水素ランプを有する構成とすることができる。
【0007】
本発明に係る濃度測定方法は、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を測定対象空間に照射し、前記測定対象空間から放射された光を受光することで、測定対象ガスが吸収する第1紫外波長帯域の光の吸光度である第1吸光度と、微粒子が吸収する第2紫外波長帯域の光の吸光度である第2吸光度とを同時に測定することで、前記測定対象ガスの濃度を算出する、濃度測定方法であって、前記測定対象ガスが存在せず前記微粒子存在する場合の前記第1紫外波長帯域の光の吸光度と前記第2紫外波長帯域の光の吸光度との相関関係および前記第2吸光度に基づいて算出された前記微粒子の影響による前記第1紫外波長帯域の光の吸光度の増加量が補正された前記第1吸光度から前記測定対象ガスの濃度を算出する。
上記濃度測定方法において、前記測定対象ガスが、煙道中のSOガスであるように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微粒子(ダスト)が存在する場合でも、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在する測定対象ガスの濃度を連続して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る濃度測定装置を示す構成図である。
図2】微粒子が存在する場合と存在しない場合の、SOガスの吸収断面積(cm)と紫外領域の波長との関係を示すグラフである。
図3】本実施形態に係るガス-ダスト同時測定処理を示すフローチャートである。
図4】本実施形態に係るガス-ダスト同時測定処理を行った実験系の一例を示す図である。
図5】測定対象空間Sに微粒子が存在しない場合の、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、測定対象ガスの濃度との関係を示す検量線データの一例を示す図である。
図6】微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子(ダスト)の濃度との関係を示す検量線データの一例を示す図である。
図7】測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度との相関関係の一例を示す図である。
図8図4に示す実験系において、SOガスと微粒子(ダスト)の濃度を同時測定した場合の、SOガスに対応する286nmの光の吸光度と、SOガスの濃度との結果を示すグラフである。
図9図4に示す実験系において、SOガスと微粒子(ダスト)の濃度を同時測定した場合の、微粒子(ダスト)に対応する340nmの光の吸光度と、微粒子(ダスト)の濃度との結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図に基づいて、本実施形態に係る濃度測定装置を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る濃度測定装置1を示す構成図である。濃度測定装置1は、図1に示すように、照射装置10と、受光装置20と、測定部30とを備えている。そして、濃度測定装置1は、照射装置10により、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を測定対象空間Sに照射し、受光装置20により、測定対象空間Sから放射された光を受光し、測定部30により、受光装置20が受光した光のうち、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域における光の吸収度、および微粒子が吸収する紫外波長帯域における光の吸光度を測定する。これにより、濃度測定装置1は、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸収度と、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光の吸収度から、測定対象空間Sにおける測定対象ガスの濃度と微粒子(ダスト)の濃度とを同時に測定するものである。本実施形態に係る微粒子は、たとえば、ばい煙発生施設で燃料やその他の物質を燃焼するのに伴い発生するダストであって、平均粒径が数十nm~数十μmのダスト粒子である。具体例を挙げると、重油燃焼ボイラーにおける20μm前後の粗アッシュと0.02μmのカーボンブラック、転炉における酸化鉄が主体となる中位径0.2μmのダストである。
【0012】
なお、本実施形態では、測定対象ガスとして、SOガスの濃度を測定する構成を例示するが、濃度測定装置1が測定可能なガスは特に限定されず、たとえば、CH,CO,O,CO,N,HS,H,NHを測定対象ガスとすることができる。また、測定対象空間Sは、たとえば、煙道の排出口付近などの開放空間でもよいし、煙道内に紫外線透過性の窓を設けた、煙道内の閉鎖空間としてもよい。以下、濃度測定装置1を構成する各構成について説明する。
【0013】
照射装置10は、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光を射出する光源11を有している。このような光源11として、重水素ランプを用いることができる。また、照射装置10は、必要に応じて、1または複数の光学系を備える構成とすることもできる。たとえば、図1に示すように、光源11から照射された光線の径を広げるための第1平凹レンズ12、第1平凹レンズ12により拡径された光線を平行光にする第2平凸レンズ13を備える構成とすることができる。
【0014】
受光装置20は、測定対象空間Sを通過した紫外光線を受光し、測定対象ガスが吸収する波長域の紫外光線(第1波長域紫外線)と、微粒子が吸収する波長域の紫外光線(第2波長域紫外線)とを分光する分光器22を有する。分光器22により分光された第1波長域紫外線および第2波長域紫外線は、それぞれ測定部30に入射される。このような分光器22としては、特に限定されないが、測定対象ガスの測定精度を高めるために、波長分解能が高いものが好ましい。また、受光装置20は、必要に応じて、1または複数の光学系を備える構成とすることができる。たとえば、図1に示すように、測定対象空間Sから射出した光を収束するために平凸レンズ21を備える構成とすることができる。
【0015】
測定部30は、信号線40を介して照射装置10に、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光の射出を指示する。測定部30は、当該指示に基づいて照射装置10により照射され、受光装置20により受光・分光された光のうち、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外線の吸光度(第1吸光度)を測定するセンサーと、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第2吸光度)を測定するセンサーを備えている。本実施形態では、測定対象ガスとしてSOガスの濃度を測定するため、SOガスが吸収する286nmの紫外線の吸光度と、微粒子(ダスト)が吸収する340nmの紫外線の吸光度とを測定するセンサーをそれぞれ備えている。
【0016】
また、測定部30は、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外線の吸光度(第1吸光度)に基づいて、測定対象空間Sに存在する測定対象ガスの濃度を算出する。さらに、測定部30は、微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外線の吸光度(第2吸光度)に基づいて、測定対象空間Sに存在する微粒子の濃度を測定する。
【0017】
ここで、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外線の吸光度は、測定対象空間Sに存在する微粒子によって影響を受ける。図2は、紫外域の波長帯域におけるSOガスの吸収断面積(cm)の一例を示すグラフであり、微粒子(ダスト)が存在する場合と、微粒子(ダスト)が存在しない場合の2通りを示している。図2に示すように、微粒子(ダスト)が存在する場合には、微粒子(ダスト)が存在しない場合と比べて、紫外域の波長帯域全体において、SOガスの吸収断面積が大きくなり、紫外線の吸収度が高くなっている。
【0018】
そのため、測定部30は、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外線の吸光度に基づいて、測定対象空間Sに存在する測定対象ガスの濃度を算出する場合、測定対象空間Sに存在する微粒子を加味して、測定対象空間Sの測定対象ガスの濃度を補正する。具体的には、測定部30は、微粒子の濃度と測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外線の吸光度の増加量との相関関係を予め記憶しており、この相関関係に基づいて、測定対象ガスの吸光度の測定結果から微粒子による吸光度の増加分を差し引くことで、測定対象ガスの吸光度の測定結果を補正し、補正した測定対象ガスの吸光度に基づいて、測定対象ガスの濃度を算出することができる。
【0019】
ここで、図3は、測定部30による測定対象ガスおよび微粒子の同時測定方法を示すフローチャートである。以下においては、図3に基づいて、測定部30による測定対象ガスおよび微粒子の同時測定方法について説明する。なお、本実施形態では、図4に示す実験系を構成し、SOガスと微粒子(ダスト)の濃度の同時測定を行った。図4に示す実施系において、光源11としては小型重水素ランプ(L10671D、浜松ホトニクス社製)、分光器22としては分光器(QE65Pro、Ocean Optics社製)、粒子発生器としてはフルイダイズドベッド粒子発生器(MODEL 3216, KANOMAX社製)を用いた。粒子発生器では、JIS試験用粉体1-10種のフライアッシュを用い、2~16μmの粒子で重量の約80%が構成されたダストを発生させた。この粒子径分布測定を外部機関に依頼したところ、分散液としてヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(0.2wt%)を用いた沈降天秤法による粒子径分布は、下記表1のとおりとなった。
【0020】
【表1】
【0021】
また、図4に示す実験系では、測定対象空間Sに、ガス-ダスト導入通路およびガス-ダスト排出通路と連通するガスセルを設ける構成とし、当該ガスセル内に存在するSOガスおよび微粒子(ダスト)の濃度を測定した。
【0022】
まず、ステップS101では、測定部30により、図5に示すように、測定対象空間Sに微粒子が存在しない場合の、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、測定対象ガスの濃度との関係を示す検量線データが取得される。なお、濃度測定装置1の構成に応じた、測定対象ガスの検量線データが、測定部30が備える記憶部31に予め記憶されており、測定部30は記憶部31から測定対象ガスの検量線データを取得することができる。
【0023】
ここで、ステップS101で取得される測定対象ガスの検量線データの作成方法について説明する。本実施形態では、測定対象ガスとしてSOガスの濃度を測定しており、図4に示す実験系において、1%のSOガスを含むSOガスとNガスとの混合気体をガス供給源からガス-ダスト導入通路を介して測定対象空間Sに供給する。そして、SOガスの流量比を調整しながら、SOガスを吸収する286nmの波長帯域の吸光度を測定することで、測定対象空間Sに微粒子が存在しない場合の、SOガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、SOガスの濃度との関係を示す検量線データを作成することができる。そして、このように作成したSOガスの検量線データを、測定部30の記憶部31に予め記憶しておく。
【0024】
ステップS102では、測定部30により、図6に示すように、微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子(ダスト)の濃度との関係を示す検量線データが取得される。なお、濃度測定装置1の構成に応じた、微粒子(ダスト)の検量線データも、測定部30が備える記憶部31に予め記憶されており、測定部30は記憶部31から微粒子(ダスト)の検量線データを取得することができる。
【0025】
ここで、ステップS102で取得される、微粒子(ダスト)の検量線データの作成方法について説明する。たとえば、図4に示す実験系において、ガラスビーズ(GB-AD、ポッターズ・バロティーニ社製)により分散させたフライアッシュを搬送用ガス(たとえば窒素ガス)により粒子発生器からガス-ダスト導入通路を介して測定対象空間Sへ供給する。そして、微粒子(ダスト)が吸収する340nmの波長帯域の吸光度を測定することで、微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外線の吸光度と、微粒子(ダスト)の濃度との関係を示す検量線データの作成することができる。なお、微粒子(ダスト)の濃度は、微粒子(ダスト)を補集したダスト補集器の濾紙重量、微粒子(ダスト)を測定対象空間Sに導入する際に使用した搬送用ガスの総流量、および粒子発生器の稼働時間に基づいて算出することができる。そして、このように作成した微粒子(ダスト)の検量線データを、測定部30の記憶部31に予め記憶しておく。
【0026】
ステップS103では、測定部30により、図7に示すように、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度との相関関係が取得される。なお、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度との相関関係も、測定部30が備える記憶部31に予め記憶されている。
【0027】
ここで、ステップS103で取得される、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度との相関関係の作成方法について説明する。たとえば、図4に示す実験系において、図6に示す微粒子(ダスト)の検量線データを作成する際に、測定対象ガスに対応する波長帯域の吸光度も測定する(すなわち、測定対象空間Sに測定対象ガスが存在してない状態で測定対象ガスに対応する波長帯域の吸光度を測定する)。そして、微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、測定対象ガスに対応する波長帯域の吸光度との関係をプロットすることで、図7に示すように、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第1吸光度)と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第2吸光度)との相関関係を作成することができる。このように、図7に示す相関関係は、測定対象ガスが存在しない場合の、微粒子(ダスト)の濃度に応じた、測定対象ガスに対応する波長帯域の吸光度を示すものであり、微粒子(ダスト)の濃度に応じた、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度の増加量を示すものともいえる。そして、このように作成した測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度との相関関係は、測定部30の記憶部31に予め記憶しておく。
【0028】
ステップS104~S109では、測定部30により、測定対象ガスおよび微粒子(ダスト)の同時測定が、測定終了指令が出されるまで、繰り返し行われる。
ステップS104では、測定部30により、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第1吸光度)と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第2吸光度)とが測定される。
【0029】
ステップS105では、測定部30により、図6に示すように、微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と微粒子(ダスト)の濃度との関係を示す検量線データに基づいて、ステップS104で測定した微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第2吸光度)から、微粒子(ダスト)の濃度が算出される。
【0030】
ステップS106では、測定部30により、図7に示すように、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第1吸光度)と、微粒子に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度(第2吸光度)との相関関係に基づいて、ステップS104で取得した微粒子(ダスト)に対応する波長帯域の紫外光線の吸光度から、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度の増加量が算出される。
【0031】
そして、ステップS107では、測定部30により、ステップS104で取得した測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度から、ステップS106で算出した測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度の増加量を差し引く補正が行われる。これにより、微粒子の影響を除外した、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度を求めることができる。
【0032】
さらに、ステップS108では、測定部30により、図5に示すように、測定対象空間Sに微粒子が存在しない場合の、測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度と、測定対象ガスの濃度との関係を示す検量線データに基づいて、微粒子の影響を除外した補正後の測定対象ガスに対応する波長帯域の紫外光線の吸光度から、測定対象ガスの濃度が算出される。
【0033】
そして、ステップS109では、測定部30により、ガス-ダストの同時測定処理を終了するか否かの判断が行われる。たとえば、ユーザにより処理終了の指示が入力された場合、測定部30はガス-ダストの濃度の同時測定を終了すると判断し、図3に示すガス-ダストの同時測定処理を終了する。一方、ガス-ダストの同時測定処理を終了しない場合には、ステップS104に戻り、ステップS104~S109のガス-ダストの濃度の同時測定を繰り返す。
【0034】
ここで、図8および図9に、図4に示す実験系において、SOガスと微粒子(ダスト)の濃度の同時測定を行った測定結果を示す。図8および図9に示す例においては、1%のSOガスを含むSOガスとNガスとの混合気体を5リットル/分の流量でガス供給源からガス-ダスト導入通路を介して測定対象空間Sに供給するとともに、フライアッシュを含むガスを10リットル/分の流量で粒子発生器からガス-ダスト導入通路を介して測定対象空間Sに供給した。
【0035】
また、図8に示す例では、SOガスの流量比を調整することでSOガスの実際の濃度を特定し、特定したSOガスの濃度の位置に、微粒子(ダスト)の濃度に応じて補正したSOガスに対応する286nmの光の吸光度をプロットした。そして、実際に測定した、補正後のSOガスに対応する286nmの光の吸光度と、SOガスの濃度との関係が、図5に示すSOガスの検量線データと一致するかを検討した。同様に、図9に示す例では、ダスト補集器の濾紙の重量などから微粒子(ダスト)の実際の濃度を特定し、特定したダストの濃度の位置に、微粒子(ダスト)に対応する340nmの光の吸光度をプロットした。そして、実際に測定した、微粒子(ダスト)に対応する340nmの光の吸光度と、微粒子(ダスト)の濃度との関係が、図6に示す微粒子(ダスト)の検量線データと一致するかを検討した。
【0036】
その結果、SOガスと微粒子(ダスト)の両方が存在する場合でも、図8に示すように、微粒子(ダスト)の濃度に応じて補正したSOガスに対応する286nmの光の吸光度は、図5に示す測定対象空間Sに微粒子が存在しない場合の測定対象ガスの検量線データとほぼ一致することが分かった。また、SOガスと微粒子(ダスト)の両方が存在する場合でも、図9に示すように、微粒子(ダスト)に対応する340nmの光の吸光度は、図6に示す測定対象空間Sに測定対象ガスが存在しない場合の微粒子(ダスト)の検量線データとほぼ一致することが分かった。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る濃度測定装置1は、測定対象ガスと微粒子(ダスト)の濃度を同時に測定する装置であり、少なくとも紫外域を含む波長帯域の光線を測定対象空間Sに照射する照射装置10と、測定対象空間Sを通過した光線を受光する受光装置20と、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度と、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光の吸光度とを同時に測定することで、測定対象ガスの濃度と微粒子の濃度とを同時に算出する測定部30と、を備える。また、濃度測定装置1は、測定部30により、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光の吸光度に基づいて、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度を補正する。ここで図2に示すように、測定対象空間Sに微粒子(ダスト)が存在する場合には、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度は、微粒子(ダスト)の影響により、微粒子(ダスト)が存在しない場合よりも大きくなる。本実施形態では、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度を補正することで、微粒子(ダスト)の影響を除外し、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度を適切に測定することができる。特に、本実施形態では、測定部30は、測定対象ガスが存在しない場合の、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度と、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光の吸光度との相関関係を記憶しており、当該相関関係に基づいて、微粒子が吸収する紫外波長帯域の光の吸光度から、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の吸光度を補正することができるため、測定対象ガスの濃度をより適切に測定することができる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
上述した実施形態では、測定部30が、測定対象ガスが吸収する紫外波長帯域の光の補正後の吸光度に基づいて、測定対象空間Sに存在するガスの濃度を測定する構成を例示したが、この構成に加えて、測定部30は、測定対象空間Sに存在するガスの種類を特定することもできる。たとえば測定部30は、記憶部31に異なる種類のガスごとの吸光度スペクトルのパターンを記憶しておくことで、補正後の吸光度スペクトルに基づいて、測定対象空間Sに存在するガスを特定することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1…濃度測定装置
10…照射装置
11…光源
12…第1平凹レンズ
13…第2平凸レンズ
20…受光装置
21…平凸レンズ
22…分光器
30…測定部
31…記憶部
40…信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9