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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】無機材料の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20220920BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E01D19/12
E04G21/02 103A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022032814
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2022-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-302061(JP,A)
【文献】特開2013-091982(JP,A)
【文献】特開2017-133344(JP,A)
【文献】特開2009-046347(JP,A)
【文献】特開平05-051912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0148062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E04G 21/02
E01C 11/18
E01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を打ち継ぐ無機材料の施工方法であって、
前記既存コンクリート部材の表面に設けられている舗装を切削して前記既存コンクリート部材の打ち継ぎ面を露出させる切削工程と、
前記切削工程で露出させた前記打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸を形成された前記打ち継ぎ面に散水することなく絶乾状態又は乾燥状態で繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程と、を含む無機材料の施工方法。
【請求項2】
既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を打ち継ぐ無機材料の施工方法であって、
前記既存コンクリート部材の表面を切削して打ち継ぎ面を露出させると共に、前記露出した打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸が形成された前記打ち継ぎ面に散水することなく絶乾状態又は乾燥状態で繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程と、を含む無機材料の施工方法。
【請求項3】
前記凹凸形成工程において、前記凸部は、前記打ち継ぎ面においてセメントペーストの隆起、細骨材の隆起、粗骨材の隆起により形成されると共に、前記凸部を形成するセメントペースト、粗骨材、細骨材を除く他の粗骨材、細骨材、及び、セメントペーストにより前記凹部を形成する請求項1又は請求項2に記載の無機材料の施工方法。
【請求項4】
前記凸部を形成する前記粗骨材及び前記細骨材は、その表面が前記セメントペーストで被覆されているものと、前記セメントペーストから露出しているものとが混在する請求項3に記載の無機材料の施工方法。
【請求項5】
前記凹凸形成工程は、ウォータージェットにより前記打ち継ぎ面に前記凹凸を形成する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無機材料の施工方法。
【請求項6】
前記凹凸形成工程は、前記ウォータージェットの吐出圧力を70MPa以上270MPa以下の範囲とする請求項5に記載の無機材料の施工方法。
【請求項7】
前記打設工程は、前記打ち継ぎ面の一端側から他端側に向かって前記繊維補強セメント複合材料を流し込み、複数回の前記繊維補強セメント複合材料の流し込みによって前記打ち継ぎ面の全体を覆い、その後、前記打ち継ぎ面の全体を一度に養生する請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無機材料の施工方法。
【請求項8】
前記打設工程は、前記打ち継ぎ面の一端側から他端側に向かって型枠により区画しながら前記繊維補強セメント複合材料を区画した領域ごとに流し込み、前記型枠により区画された複数の領域ごとの前記繊維補強セメント複合材料の流し込みによって前記打ち継ぎ面の全体を覆い、その後、前記打ち継ぎ面の全体を一度に養生する請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無機材料の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のコンクリート部材に打ち継ぐ無機材料の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高強度繊維補強コンクリート(Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete:UFC)は、水結合材比が低く、また、繊維を含んでいるため、一般的に施工管理が難しい。そのため、超高強度繊維補強コンクリートは、工場生産等によるプレキャスト部材に使用されるのが一般的であったが、緻密で高い強度を発現することから、既設コンクリート構造物の補修や増設等に適用することが検討されている。
【0003】
なお、特許文献1には、既存のコンクリート部材の表面にエポキシ樹脂系の接着剤を塗布した後、この接着剤の上面に繊維補強セメント複合材料を打設する施工方法が開示されている。しかし、この施工方法によれば、接着剤をコンクリートの表面に塗布あるいは吹付ける際には、コンクリート表面が乾燥している必要があり、コンクリート部材の一部をウォータージェットによりはつり取った後に補修材を打設する場合には、コンクリート部材の表面が乾燥するまで、接着剤を塗布することができない。
そのため、従来、特許文献2に記載されているような施工方法が提案されている。この施工方法では、既存コンクリート部材の打ち継ぎ面に水を飽和させ、繊維補強セメント複合材料を直接打設することを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-129393号公報
【文献】特許第6051497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のコンクリート部材の打ち継ぎ面に水を飽和させる施工方法では、特に、温度の高い季節において、打ち継ぎ面が乾燥しないように散水する必要がある。また、散水する場合には、打ち継ぎ面に水が飽和している必要があり、大きな面積の打ち継ぎ面に水を飽和させるためには、大量の水が必要となっている。このような観点からさらなる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、打ち継ぎ面に散水する必要がなく、簡易かつ早期に施工することを可能とした無機材料の施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を打ち継ぐ無機材料の施工方法であって、前記既存コンクリート部材の表面に設けられている舗装を切削して前記既存コンクリート部材の打ち継ぎ面を露出させる切削工程と、前記切削工程で露出させた前記打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸を形成された前記打ち継ぎ面に散水することなく絶乾状態又は乾燥状態で繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程と、を含むこととした。
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を打ち継ぐ無機材料の施工方法であって、前記既存コンクリート部材の表面を切削して打ち継ぎ面を露出させると共に、前記露出した打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸が形成された前記打ち継ぎ面に散水することなく絶乾状態又は乾燥状態で繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程と、を含むこととした。
【0009】
一般には散水し、既存のコンクリート部材の表面を湿潤状態にした上で無機材料を打ち継ぐことが広く知られている。これは無機材料が水和反応に必要とする水分を既存のコンクリート部材に吸収されることを防ぐ目的で実施される。これに対して、ほん発明にかかる無機材料の施工方法によれば、打ち継ぎ面に散水することなく、打ち継ぎ面に形成された凹凸により接着面積を広げ、繊維補強セメント複合材料が打ち継ぎ面に接着して接着強度を維持することができる状態となる。また、繊維補強セメント複合材料が高い保水力を有しているため、自らの水和反応に必要な水分を既存のコンクリート部材に吸収されないことにより、緻密で高強度な硬化体となり、ひいては、劣化因子の遮断性に優れた硬化体となる。
【0010】
なお、「繊維補強セメント複合材料」には、例えば、J-THIFCOM(登録商標)、サクセム(登録商標)、ダクタル(登録商標)、スリムクリート(登録商標)等のいわゆる超高強度繊維補強コンクリート(UFC)や高強度繊維補強モルタル等を使用すればよい。また、打ち継ぎ面に形成する複数の凸部及び凹部を備える凹凸は、凸部がセメントペースト及び細骨材から隆起する一部の粗骨材および細骨材により形成され、凹部が隆起した粗骨材及び細骨材を除く、他の粗骨材、細骨材及びセメントペーストにより形成されている。さらに、凹凸形成工程は、ウォータージェットにより凹凸を形成してもよく、その際に、ウォータージェットの吐出圧力を70MPa以上270MPa以下の範囲で行うことが好ましい。
【0011】
また、打設工程では、打ち継ぎ面の一端側から他端側に向かって繊維補強セメント複合材料を複数回流し込み、打ち継ぎ面の全体を覆い、その後、打ち継ぎ面の全体を覆った繊維補強セメント複合材料を養生することとしてもよい。また、打設工程では、打ち継ぎ面の一端側から他端側に向かって枠体により区画しながら繊維補強セメント複合材料を区画した領域ごとに流し込み、打ち継ぎ面の全体を覆った後に、打ち継ぎ面の全体を一度に養生するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無機材料の施工方法によれば、打ち継ぎ面に散水することなく、簡易かつ早期に既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を、接着強度を維持するように打ち継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る無機材料の施工方法を示すフローチャート図である。
図2】同無機材料の施工方法の切削工程を模式的に示図であって、(a)は、切削工程を模式的に示す説明図、(b)は切削した部分の状態を模式的に示す部分断面図である。
図3】同無機材料の施工方法の凹凸形成工程を示す図であって、(a)は凹凸工程を模式的に示す斜視図、(b)は凹凸を形成した状態を模式的に示す部分断面図である。
図4】同無機材料の施工方法の凹凸形成工程で凹凸が形成された打ち継ぎ面を模式的に拡大して示す拡大断面図である。
図5】同無機材料の施工方法の打設工程を模式的に示す説明図である。
図6】ミキサーを示す斜視図である。
図7】同無機材料の施工方法の打設工程の状態を模式的に拡大して示す図であり、(a)は、繊維補強セメント複合材を打ち継ぎ面に流し込んだ状態を部分的に示す部分断面図、(b)は流し込んだ繊維補強セメント複合材を均した状態を部分的に示す部分断面図、(c)は打設した繊維補強セメント複合材に舗装を施した状態を示す部分断面図である。
図8】他の形態に係る無機材料の施工方法を示すフローチャート図である。
図9】他の形態に係る同無機材料の施工方法の凹凸形成工程を示す図であって、(a)は打ち継ぎ面凹凸形成工程(凹凸形成工程)を模式的に示す斜視図、(b)は凹凸を形成した状態を模式的に示す部分断面図である。
図10】(a)、(b)は、応用例を示す無機材料の施工方法の打設工程を模式的に示す説明図である。
図11】本発明に係る実施例で使用する供試体の接着強度を測定する部位を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態では、既設のコンクリート床版の補修工事において、繊維補強セメント複合材料(無機材料)の硬化体によってコンクリート床版の表面を被覆することで、コンクリート床版への水、空気、塩等の劣化因子の浸透を抑制する場合について説明する。
本実施形態の無機材料の施工方法は、図1に示すように、切削工程S11、凹凸形成工程S12、打設工程S13を含み、打設工程S13の後に、養生工程S14を行うこととして説明する。
【0015】
ここで、本実施形態で使用する繊維補強セメント複合材料には、少なくとも、セメント、石灰石フィラー、シリカフュームからなる材料に補強用繊維、細骨材、減水剤、収縮低減剤、消泡剤および水を混練して生成された超高強度繊維補強コンクリートを使用するものとする。本実施形態では、このような超高強度繊維補強コンクリートとして、J-THIFCOM(登録商標)を使用する。なお、繊維補強セメント複合材料に添加する材料は、前記のものに限定されない。
【0016】
なお、繊維補強セメント複合材料には、J-THIFCOM(登録商標)の他、サクセム(登録商標)、ダクタル(登録商標)、スリムクリート(登録商標)等のいわゆる超高強度繊維補強コンクリート(UFC)が使用できる。
本実施形態では、既設のコンクリート床版の補修工事に使用する補修材として、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を採用するが、補修材は、床版としての十分な強度を有し、かつ、水や空気等の劣化因子が遮断可能な緻密性を有し、なおかつ、ひび割れ等の破損が生じることがない耐力を有した繊維補強セメント複合材料であれば限定されるものではない。
【0017】
セメントには、普通ポルトランドセメントを使用する。なお、セメントは、普通ポルトランドセメントに限定されるものではない。例えば、早期の強度発現を求める場合には、早強ポルトランドセメントまたは超早強ポルトランドセメントを使用することができる。本実施形態では、混合体(超高強度繊維補強コンクリート7)1m当たり300~450Lの範囲内、好ましくは330~400Lの範囲内でセメントを添加する。セメントの添加量が、混合体1m当たり300L未満の場合は、十分な劣化因子の遮断性能を確保できなくなるおそれがある。また、混合体1m当たり450Lを超えると、流動性を確保できなくなるおそれがある。
【0018】
石灰石フィラーには、密度が2.7~3.0g/cm程度で、CaCo(炭酸カルシュム)成分が95%以上の石灰石粉末を使用する。石灰石フィラーは、混合体1m当たり100~200Lの範囲内、好ましくは120~180Lの範囲内で添加する。石灰石粉末は形状が良好であり、セメントペーストの流動性を改善する効果がある。なお、石灰石フィラーの添加量が、混合体1m当たり100L未満の場合は、打設時の適度な流動性を確保できないおそれがある。また、石灰石フィラーの添加量が、混合体1m当たり200Lを超えると、十分な劣化因子の遮断性能を確保できなくなるおそれがある。
【0019】
シリカフュームには、直径0.1~0.2μm程度のガラス質シリカ球状の超微粒子粉末を使用する。シリカフュームは、コンクリートの強度と耐久性の向上に寄与し、低水粉体比のコントロールにより、コンクリートの施工(混練時)の改善に有効である。シリカフュームは、混合体1m当たり30~80Lの範囲内、好ましくは40~60Lの範囲内で添加する。シリカフュームの添加量が、混合体1m当たり30L未満だと、粘性および材料分離抵抗性が低下し、所定の流動性が確保できなくなる。また、シリカフュームの添加量が、混合体1m当たり80Lを超えると、混合体の化学組成バランスや粒度分布のバランスが崩れ、十分な劣化因子の遮断性能を確保できなくなる恐れがある。
【0020】
補強用繊維には、直径0.15~0.3mmで長さが6~25mmの繊維を用いる。この場合の繊維は、金属製あるいは有機系繊維のいずれか一方、または、これらを組み合わせたものを使用すればよい。有機系繊維としては、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維などがある。
補強用繊維は、混合体の容積率で1~6%の範囲で加える。補強用繊維の容積率が1%未満だと繊維の補強効果が減少し、十分な劣化因子の遮断性能が得られない恐れがある。また、補強用繊維の容積率が6%より大きいと、コンクリートの流動性が低下する恐れがあるとともに補強用繊維を均等に分散させることができなくなる恐れがある。繊維の単位量はひずみ硬化特性が低下しない範囲で混合体1m当たり、好ましくは75~315kg/m、より好ましくは150~240kg/mである。
【0021】
細骨材には、粒径0.05~0.3mmの金属製細骨材(例えば、鉄粉)あるいは珪砂を用いる。なお、補強用繊維と細骨材を組み合わせることで練り混ぜ中の繊維の分散向上とファイバーボールを発生させないためのミキサー内全体の材料に対する比重の安定化に貢献する。細骨材の混入量はひずみ硬化特性が低下しない範囲で混合体1m当たり、好ましくは75~315kg/m、より好ましくは150~240kg/mである。珪砂の場合の混入量は混合体1m当たり、好ましくは25~110kg/m、より好ましくは50~85kg/mである。
【0022】
減水剤には、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラニン系、ポリカルボン酸系、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤を用いることができる。減水剤の配合量は、モルタルの流動性、分離抵抗性、硬化後の強度および緻密性を考慮して、混合体1m当たり、好ましくは21~48kg/m、より好ましくは25~40kg/mである。
【0023】
収縮低減剤には、化学式RO(AO)mHで示される化合物を主成分とするものを用いる。化学式中Rは、水素又は炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。収縮低減剤の添加量は、モルタルの作業性、分離抵抗性、硬化後の強度やクラックの抵抗性を考慮して、混合体1m当たり25~45kg/m、より好ましくは30~40kg/mである。
【0024】
消包剤には、リン酸エステル系、シリコン系、ポリアルキレングリコール系、ポリオキシアルキレン系等が挙げられる。消包材は、混合体1m当たりの添加量が、好ましくは7~16kg/mより好ましくは8~12kg/mである。
【0025】
水/結合材比は、モルタルの流動性や分離抵抗性、硬化後の強度や耐久性から10~20質量%が好ましく、より好ましくは13~19質量%とする。なお、水/結合材比が10質量%未満だと混練出来ないおそれがある。一方、水/結合材比が20質量%を超えると、十分な劣化因子の遮断性能を確保できないおそれがある。
本実施形態の混合体には、必要に応じて、膨張材・凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、合成樹脂粉末、ポリマーエマルジョン、ポリマーディスパージョン等を添加してもよい。
【0026】
続いて、無機材料の施工方法につて、各工程を下記に示すように具体的に説明する。
切削工程S11は、図2(a)および図2(b)に示すように、コンクリート床版(既存コンクリート部材)1の表面を切削する工程である。
コンクリート床版1の表面には、舗装2が敷設されている。なお、本実施形態の舗装2は、表層2aと基層2bとにより構成されているが、舗装構成はこれに限定されない。
【0027】
切削工程S11では、路面切削機RBを用いて舗装2の部分を切削する。路面切削機RBは、一例として、路面を切削する切削機構と、切削機構で切削した舗装切削片を搬出するトラックなどの搬送車両TRに送る切削片送出機構と、路上を走行するクローラあるいはホイール等の走行機構とを備えている。この路面切削機RBは、既存のものを使用することができる。
なお、切削工程S11では、路面切削機RBを使用して舗装2の大部分を切削した後に、コンクリート床版1の表面の一部に路面切削機RBで切削しきれなかった舗装2の一部等が残る場合がある。そのような残りの舗装2の一部や、防水、タックコート等は、チッピング等により取り除かれることが好ましい。
【0028】
切削工程S11に続いて、凹凸形成工程S12を行う。
凹凸形成工程S12は、一例として、図3(a)に示すように、高圧水(ウォータージェット)を噴射する複数のノズル(図示せず)が下向きに設けられているハツリ機3を使用することができる。既設のコンクリート床版1の表面に残ったアスファルトや防水、タックコート等を除去した上で、凹凸形成工程S12では、既設コンクリートの脆弱部をすべて撤去する。そのために、ハツリ機3により、ウォータージェットを用いて表面を研掃(水を噴射してはつり取りながら表面を掃除する)することで、複数の凸部12及び凹部13を備える凹凸14を有する打ち継ぎ面11を形成している。一例として、ウォータージェットによりコンクリート床版1の表面を研掃して、超高強度繊維補強コンクリートの打ち継ぎ面11を露出させて凹凸14を形成している。なお、コンクリート床版1の凹凸形成手段はウォータージェットに限定されるものではない。
【0029】
本実施形態では、路面切削機RBによって舗装2を切削・撤去してコンクリート床版1の表面を露出させた後、図3(a)に示すように、ハツリ機3を利用してコンクリート床版1の表面を研掃しながら凹凸14を形成する。
ハツリ機3による凹凸の形成作業は、ポンプ車31から送水管32を介して圧送された高圧水をノズルからコンクリート床版1に向けて吹付けることにより行う。このとき、ハツリ機3を随時移動させることで、所定の範囲に対して高圧水を噴射して打ち継ぎ面11に複数の凸部12及び凹部13を備える凹凸14を形成する。
【0030】
ここで、凹凸形成工程S12において、図4に示すように、形成された凸部12は、既存のコンクリート床版1に使用されている粗骨材22、細骨材23がセメントペーストから隆起していることで形成される部分と、セメントペースト21が他のセメントペースト21よりも隆起していることで形成されている部分とによる。
より具体的には、凸部12は、既存のコンクリート床版1の粗骨材22及び細骨材23が、直接、セメントペースト21から露出した状態で隆起して形成される。また、凸部12は、既存のコンクリート床版1の粗骨材22及び細骨材23の一部又は前全部がセメントペースト21で覆われた状態でセメントペースト21から隆起した状態となることで形成される。さらに、凸部12は、既存のコンクリート床版のセメントペースト21の一部が研削され他のセメントペースト21より隆起することで形成される。
凹部13は、隆起した部分のセメントペースト21、粗骨材22及び細骨材23を除き、それ以外のセメントペースト21の表面、セメントペースト21とほぼ同等の底面に露出する粗骨材22の表面及び細骨材23の表面により形成される。
【0031】
凹凸14は、凸部12の頂部と凹部13の底部との平均高さが1mm~15mmの範囲であることが好ましい。つまり、複数の凸部12及び凹部13は、既存のコンクリートで使用されている粗骨材22及び細骨材23による凸部12の頂部と、凸部12以外の粗骨材22,細骨材23及びセメントペースト21による凹部13の底部との平均高さが1mm以上で15mm以下であることが望ましい。凹部13の底部から凸部12の頂部までの平均高さが1mm未満では、打設する超高強度繊維補強コンクリート7と既存のコンクリートの打ち継ぎ面11との接着強度が維持されにくくなる可能性がある。また、平均高さが、15mmを超えた場合では、小さく隆起したセメントペースト21の上に粗骨材22あるいは細骨材23が、接触面積が小さい状態で配置される構成が発生することがあり、打ち継ぎ面11に脆弱部分が発生してしまう可能性がある。
そのため、平均高さの下限値は、1mm以上であり、2mm以上であることが好ましく、より好ましくは、3mm以上である。また、平均高さの上限値は、15mm以下であればよい。
【0032】
なお、打ち継ぎ面11において凸部12の頂部と凹部13の底部との平均高さとは、打ち継ぎ面11内において、等間隔離れた所定数の領域で高さを測定した値の平均とする。例えば、打ち継ぎ面11が4m×25mの100mであったとき、長さ方向となる25mにおいて等間隔の3か所に1m×1mとなる1mを枠体で囲む測定領域を設ける。そして、その測定領域において、路面粗さの分析方法として示されるJIS D8301の附属書Fに規定された「体積法による舗装面のマクロのきめ深さの測定」を行うことで測定する。ここに規定された測定方法は、サンドパッチ法と呼ばれている。この方法では、路面上に多数の微少なガラスビーズあるいは砂が散布される。ガラスビーズ又は砂は、路面の凹所を埋め尽くすようにして前記した枠体で囲まれた測定領域に拡げられる。測定領域に拡げられたガラスビーズ群あるいは砂の直径及び体積が測定され、この測定値に基づいて測定面の凹凸の高さが測定される。したがって、所定数の測定領域において測定された測定値の平均値を、凸部12の頂部と凹部13の底部との平均高さとすることができる。ここでは、打ち継ぎ面11の3/100の面積を測定領域として測定することで、凸部12の頂部と凹部13の底部との平均高さとしている。
【0033】
さらに、ハツリ機3で使用するウォータージェットの吐出圧力は、例えば、70MPa以上270MPa以下の範囲であることが好ましい。吐出圧力が70MPa未満であると所望の凹凸14が形成しにくく、時間が著しくかかる可能性がある。また、吐出圧力が270MPaを超えるとコンクリート床版1の表面を削りすぎる可能性が高い。そのため、ウォータージェットの吐出圧力は、下限値が70MPa以上であり、好ましくは、90MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。また、ウォータージェットの吐出圧力は、上限値が、270MPa以下であり、好ましくは、260MPa以下であり、さらに好ましくは250MPa以下である。
【0034】
凹凸形成工程S12で発生した舗装2またはコンクリート床版1の切削物(ガラ)および排水は吸引除去する。本実施形態では、バキューム車4から延設されたバキューム管41の先端から吸引することでガラおよび排水をバキューム車4のタンクに回収する。
ガラの回収に伴い、必要に応じて切削面(打ち継ぎ面11)の表面を清掃することとしてもよい。また、ガラの回収除去は、作業者が箒等の用具により行っても構わない。
【0035】
凹凸形成工程S12を行った後に打設工程S13を行う。なお、打設工程S13で打設する超高強度繊維補強コンクリートは、打設するタイミングに合わせて現場にて製造することが好ましい。本実施形態では、施工現場の作業ヤード内に設置したミキサーM(図5参照)を利用して超高強度繊維補強コンクリート7を製造する。
ミキサーMの種類は限定されるものではないが、縦軸、横軸回転の機構を持ち、定格200~400Vで、回転数45~55ppm/minのものを使用するのが望ましい。本実施形態のミキサーMは、図6に示すように、側壁ブレードB1が1本、床ブレードB2が2本および棒状ブレードB3を4本有している。側壁ブレードB1、床ブレードB2および棒状ブレードB3は、ミキサーMの中心部に設けられた縦軸を中心に回転(公転)する。さらに、4本の棒状ブレードB3は、棒状ブレードB3同士の中心部に設けられた縦軸を中心に回転(自転)する。
【0036】
超高強度繊維補強コンクリートは、まず、水、減水剤等の液状混和剤および補強用繊維を除いた材料を2分間混練する(空練り)。次に、水および液状混和剤を加えて5分から20分間混練する(本練り)。続いて、補強用繊維を加えて2分間混練して、超高強度繊維補強コンクリートを製造する。なお、超高強度繊維補強コンクリートの製造方法(手順は、これに限定されない。
【0037】
打設工程S13は、図5及び図7(a)~(c)に示すように、打ち継ぎ面11に超高強度繊維補強コンクリート7を打設する工程である。なお、図5では、説明を分かりやすくするために、各構成の一部をデフォルメして示している。
打設工程S13では、特に打ち継ぎ面11に接着剤を介することなく、かつ、散水工程として散水をすることなく打設作業を行っている。そのため、ウォータージェットで凹凸14を形成した後の打ち継ぎ面11に、超高強度繊維補強コンクリート7を打設する打設工程S13を直接行っている。
超高強度繊維補強コンクリート7は、打ち継ぎ面11の一端側から他端側に向かって打設する。本実施形態では、ミキサーによって製造された超高強度繊維補強コンクリート7を、ホイール式トラクターショベル等の建設搬送機械Sにより打設箇所まで搬送した後、打ち継ぎ面の一端側に流し込む(図5図7(a)参照)。
【0038】
打ち継ぎ面11の一端側に超高強度繊維補強コンクリート7が流し込まれると、超高強度繊維補強コンクリート7は打ち継ぎ面11に沿って広がるように流動する。このとき、超高強度繊維補強コンクリート7は、打ち継ぎ面11において一部で、打設する高さよりも高くなるように打ち継ぎ面11に流し込む。そして、フィニッシャF等により設定された高さになるように均される。打設工程S13では、超高強度繊維補強コンクリート7を打ち継ぎ面11の一端側から他端側に向かって建設搬送機械Sにより搬送して流し込み、さらに、フィニッシャFにより均す作業を繰り返し行う。打設工程S13は、このような作業を行うことで、打ち継ぎ面11の全体に超高強度繊維補強コンクリート7を打設する。なお、ここでは、フィニッシャFを用いて超高強度繊維補強コンクリート7を打設することとして説明したが、超高強度繊維補強コンクリート7は、流動性および自己充填性を有しているため、打ち継ぎ面11内に流し込むことで、自然に均等に敷き均されるようにして打設することとしても構わない。
【0039】
養生工程S14は、コンクリート床版1上に打設された超高強度繊維補強コンクリート7の養生を行う工程である。
超高強度繊維補強コンクリート7の養生はいわゆる普通養生にて行う。なお、養生工程S14では、天候や外気の気温等に応じてシートを被せる等して、表面の保護を行ってもよい。
なお、養生工程S14を行った後には、図7(c)に示すように、打設した超高強度繊維補強コンクリート7の表面に舗装2を設置するための接着剤を設けた上で、アスファルト等の舗装2を設置する作業を行う。
【0040】
本実施形態の無機材料の施工方法によれば、打ち継ぎ面11に水の散布を行うことなく、絶乾状態、乾燥状態で、打ち継ぎ面に設けた凹凸14を介して、超高強度繊維補強コンクリート7を打設して基準となる既存のコンクリート床版1との接着強度を確保することができる。これは超高強度繊維補強コンクリートの水分が既存のコンクリート床版1に必要以上吸収されることがないため、打ち継ぎ面11の凹凸14により接触面積が増加することで、超高強度繊維補強コンクリートの接着強度を確保することがでる。そのため、超高強度繊維補強コンクリート7は、水和反応を促進し、透気係数が0.001×10-16以下の緻密で高強度な硬化体となる。また、超高強度繊維補強コンクリート7は、緻密な硬化体が形成されるため、防水材や遮水材等を表面に設置する必要がない。
【0041】
また、超高強度繊維補強コンクリート7は、補強用繊維の架橋効果によって、ひびわれが防止され、硬化体が高密度かつ高強度になる。そのため、超高強度繊維補強コンクリート7の硬化体は、塩化物イオン浸透深さが、JIS A 1171-2000試験方法で0以下であり、かつ、中性化深さがJIS A 1171-2000試験方法で0以下であり、いわゆる塩害による被害を抑制することができる。
【0042】
また、凹凸形成工程S12のウォータージェットによって打ち継ぎ面11が濡れている場合であっても、打ち継ぎ面11の乾燥に要する手間や時間を省略できるため、接着剤を使用する従来の施工方法や、飽和状態の散水を行う従来の施工方法に比べて工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。また、凹凸形成工程S12から打設工程S13へ連続して施工することができるため、工期短縮化を図ることができる。
【0043】
補修材として、超高強度繊維補強コンクリート7を使用しているため、従来の補修材に比べて、硬化体の強度が高く、薄肉化を図ることができる。そのため、橋梁等の上部工の軽量化が可能となり、ひいては、耐震性の向上を図ることができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0044】
前記実施形態では、既設構造物の一部を切削(切削工程)した後、超高強度繊維補強コンクリート7を打ち継ぐ場合について説明したが、切削工程は必要に応じて実施すればよい。すなわち、例えば、前もって打設したコンクリート部材(新設構造物)に打ち継ぐ場合には、接合面に凹凸を形成した状態で、新設の繊維補強セメント複合材料を打設してもよい。また、既設コンクリート部材の表面に増厚コンクリートを直接打設する場合にも本発明の無機材料の施工方法を採用してもよい。
【0045】
補修工として本発明の無機材料の施工方法を採用する場合において、補修の対象となる構造物は床版に限定されるものではない。例えば、橋脚を補修する場合に、この無機材料の施工方法を採用してもよい。なお、橋脚を補修する場合には、橋脚の上面に限定されるものではなく、側面等の補修も可能である。なお、本実施形態の超高強度繊維補強コンクリート7は、自己充填性に優れていることが確認されているため、既存コンクリート部材の側面や下面の打設する場合であっても、型枠内に充填することで、接合面に密着させることができる。
【0046】
本発明の無機材料の施工方法に使用する繊維補強セメント複合材料は、超高強度繊維補強コンクリートに限定されるものではない。例えば、繊維補強セメント複合材料として、繊維補強モルタルを使用してもよい。
また、繊維補強セメント複合材料の配合は、前記実施形態で示した配合に限定されるものではない。
【0047】
次に、無機材料の施工方法について、図7乃至図10を参照して、他の実施形態を説明する。
この無機材料の施工方法では、既存コンクリート部材の表面を切削して打ち継ぎ面を露出させると共に、露出した打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸打ち継ぎ面形成工程(凹凸形成工程)S12Aと、凹凸が形成された打ち継ぎ面に繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程S13と、を含む。
凹凸打ち継ぎ面形成工程S12Aは、舗装2及び既存のコンクリート床版1の表面を切削してコンクリート床版1の表面を切削して打ち継ぎ面11を露出させ、露出した打ち継ぎ面11に複数の凸部12及び凹部13を備える凹凸14を形成している。この工程S12Aでは、舗装2及びコンクリート床版1の表面を路面切削機RBにより切削することで打ち継ぎ面11に凹凸14を形成した状態で打ち継ぎ面11を露出させている。
【0048】
凹凸打ち継ぎ面形成工程S12Aでは、例えば、予備研削作業を予め補修する道路上の一部で行い、舗装2の厚みの確認と既存のコンクリート床版1の切削する厚みを、例えば路面切削機RBに設定する。そして、予備研削作業により確認した舗装2の厚みの設定と既存のコンクリート床版1の切削する厚みの設定とを、路面切削機RBに行う。この工程S12Aでは、舗装2の表面から既存のコンクリート床版1の表面を研削する厚みまでを設定した路面切削機RBで研削することで、舗装2及び既存のコンクリート床版1の所定の厚みを切削して打ち継ぎ面11を露出さている。なお、打ち継ぎ面11は、路面切削機RBで研削することで複数の凸部12及び凹部13を備える凹凸14が形成されることになる。この凹凸14は、既に説明したものと同等の構成である。
【0049】
凹凸打ち継ぎ面形成工程S12Aを行った後に、研削したときに散乱する研削物の破片(ガラ)を除去する除去作業を行うことが好ましい。なお、除去作業(除去作業工程)では、ウォータージェットを使用しても構わない。ウォータージェットを使用する場合には、既に説明したように所定範囲の吐出圧で水を吐出することが好ましい。なお、除去作業では、ハツリ機3によりウォータージェットを使用することで、路面切削機RBで打ち継ぎ面11に形成した凹凸14を調整して軟弱な部分が残留していた場合には、その軟弱な部分を削除することが可能となる。そして、除去作業では、ハツリ機3を使用しながら、バキューム車4により吐出した水とガラを吸引して除去することが好ましい。
【0050】
凹凸打ち継ぎ面形成工程S12A、あるいは、凹凸打ち継ぎ面形成工程S12Aと除去作業の工程とが終了した後に、打設工程S13が行われる。この打設工程S13は、凹凸14を形成した打ち継ぎ面11に超高強度繊維補強コンクリート7を打設する工程である。この打設工程S13は、既に説明した工程と同じであるので、ここでは説明を省略する。打設工程S13が行われた後には、養生工程S14が行われる。この養生工程S14もすでに説明した工程と同じであるので、ここでは説明を省略する。養生工程S14の後に、補修した超高強度繊維補強コンクリート7の上に新たな舗装2が接着材を介して設置される。
【0051】
なお、打ち継ぎ面11の水分率を示す場合、飽和状態、湿潤状態、湿潤未満の状態、表面乾燥状態、絶乾状態について、例えば、一般社団法人日本建設機械施工協会の榎園正義・谷倉泉が建設機械施工Vol.65 No.8 August2013で発表している「コンクリート床版表面の水分管理に適した水分計の開発」に記載されている測定方法で示される測定結果を示すカウント値において132以下のカウント値で示す範囲となる。
【0052】
前記した測定結果をカウント値で示す場合、絶乾状態は10~55カウント、乾燥状態は60~132カウント、表面乾燥状態は、137~230カウント、湿潤状態は、235~520カウント、帯水状態(飽和状態)は521~744カウント(744以上)とする。したがって、散水状態をカウント値で示す場合には、133カウント以上の値である。
【0053】
ここで測定されたカウント値は、前記した論文に記載されているように、電気抵抗式水分計が使用されている。ここで使用されている電気抵抗式水分計は、上記した論文にも記載されている通り、測定するコンクリート面の凹凸の影響を受けにくい測定装置であり、測定するコンクリート表面の含水率を定量的に把握できる。なお、電気抵抗式水分計の一例として、株式会社ケット化学研究所の「道路橋床版水分計HI‐100」を使用することができる。ちなみに、高周波容量式水分計での水分量では、表面乾燥状態が2.7%前後となり飽和状態(帯水状態)では10.4%以上となる。
【0054】
以上、無機材料の施工方法、他の形態の無機材料の施工方法について説明したが、各施工工程において、図12(a)、(b)で示すように、型枠5を使用して打設工程S13を行っても構わない。例えば、打ち継ぎ面11の周囲に型枠5を設置する。このとき、型枠5とコンクリート床版1との当接面には隙間が形成されることがないように間詰処理を行うのが望ましい。なお、型枠5に使用する材料は限定されるものではなく、例えば、木板を使用すればよい。また、型枠5を設置する範囲は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、打設工程において打設される補修材を製造する装置の能力(製造可能な補修材の量)に応じて設定すればよい。
【0055】
次に、型枠5内に超高強度繊維補強コンクリート7を打設する。すでに説明した(図7参照)施工方法では、ミキサーによって製造された超高強度繊維補強コンクリート7を、ホイール式トラクターショベル等の建設搬送機械Sにより打設箇所まで搬送した後、型枠5内に流し込む(図7(a)参照)。
型枠5内に超高強度繊維補強コンクリート7を流し込むと、超高強度繊維補強コンクリート7は、型枠5内で流動する。超高強度繊維補強コンクリート7は、流動性および自己充填性を有しているため、型枠5内に流し込むことで、型枠5内に均等に敷き均される。
【0056】
型枠5内に均等に敷き均された超高強度繊維補強コンクリートがある程度形状を保つ程度になったら、型枠5を移動して図12(b)に示すように、初めの型枠5によって打設した超高強度繊維補強コンクリート7に連続するように型枠5配置する。そして、先に打設した超高強度繊維補強コンクリート7に連続するように新に超高強度繊維補強コンクリート7を型枠5内に流し込む。このような型枠5を使用する打設工程を繰り返し行うことで、全ての打ち継ぎ面11に超高強度繊維補強コンクリート7を打設するようにしてもよい。なお、養生工程S14は、全ての打ち継ぎ面11に超高強度繊維補強コンクリート7を打設した後にまとめて行うことが好ましい。
【実施例
【0057】
次に、無機材料の施工方法について、超高強度繊維補強コンクリートを使用して既存のコンクリート床版と超高強度繊維補強コンクリートとの接着強度について試験した試験結果を実施例として説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではないことは勿論である。初めに試験条件について以下に説明する。
[A1]300×300×60mm JIS A5371附属書Bに示される普通コンクリート平板を準備する。
[A2]準備した普通コンクリート平板にウォータージェットの吐出力を240MPaとして水を吹き付け、凹凸処理を施して打ち継ぎ面に相当する凹凸面を、凸部の頂部と凹部の底部との平均高さが3mmとなるように形成した。また、なお、打ち継ぎ面を平坦化して凹凸が形成されない状態である普通コンクリート平板(表1の供試体(7)に相当)を準備した。
【0058】
[A3]前記凹凸面の表面水分率(表面水分量)を湿潤(飽和)状態~絶乾状態までの6パラメータとした。なお、表面水分率の値は、形成した供試体の打ち継ぎ面(供試体(1)~(6)は凹凸が形成された面、供試体(7)は、試験対象となる平面)において異なる領域の10箇所を測定し、その測定した値の平均値として示している。
[A4]前記打ち継ぎ面の表面水分率(表面水分量)の測定は、電気抵抗式水分計(道路橋床版水分計HI‐100)を用いて行った。
[A5]前記凹凸面に超高強度繊維補強コンクリート(J-THIFCOM:(登録商標))を20mm厚で直接打設した。
[A6]打設してからの養生期間を28日とし、間恒温室で養生して供試体(1)~(7)を形成した。形成した供試体(1)~(7)は、材齢が7日の状態で付着強度試験を行った。
【0059】
[A7]形成した供試体(1)~(7)について、土木学会基準 JSCE―K561(φ5cmの治具)に準じた付着強度試験を行った。なお、付着強度試験では、φ5cmの治具により、コア形状にした部分の上面にエポキシ樹脂の接着剤を介して金属性の治具を取り付け、所定の荷重で引っ張り上げることで、接着強度を測定した。また、一枚の供試体の5箇所/枚において付着強度試験を行い、その平均値を各供試体の接着強度とした。図13に示すように、供試体の平面視において、中央と、その中央から四隅に向かって同距離となる4箇所の合計5箇所での試験位置TSでの接着強度の試験を行った。なお、供試体の面内であれば、特に供試体のいずれの位置であってもよく、5箇所の試験位置TSの平均値を付着強度の測定値とすればよい。
[A8]前記付着試験の結果、表面水分率の多寡に関わらず良好な値であった。なお、付着試験の結果については後記する。
【0060】
表1~表3において、破壊形態は、A:母材の破壊、B:母材(一部界面含む)の破壊、C:接着剤から破壊、D:超高強度繊維補強コンクリートの表層での破壊(剥離)としている。なお、破壊形態としてのABは、Bの一部界面含むBよりも界面の割合が少ない状態として破壊されたものを示している。
付着強度試験の結果を表1~表3に示す。なお、表1乃至表3を分けて示しているが紙面の関係上見やすくするために表を分けており、特に技術的な区別をしているわけではない。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表1~表3において、供試体(1)~(7)におけるコンクリート表面での水分率は、道路橋床版水分計HI‐100を用い、高周波容量水分計の値(%で示す水分量の値)と、電気抵抗式水分計の値(カウント値で示す値)とで示している。すなわち、表中の種類の(1)は、湿潤であり水分量10.4%以上:カウント値で235-520の範囲である。表中の種類の(2)は、水分量5.0%:カウント値で250である。表中の種類の(3)は、水分量4.0%:カウント値で200である。表中の種類の(4)は、水分量3.1%:カウント値で155である。表中の種類の(5)は、水分量1.9%:カウント値で95である。表中の種類(6)は、絶乾であり水分量1.1%以下:カウント値で10-55の範囲である。表中の種類(7)は、(1)と同じ水分状態とした。
【0065】
表1~表2に示すように、凹凸を形成した打ち継ぎ面の表面水分率(表面水分量)を湿潤(飽和)状態~絶乾状態までの6パラメータである供試体(1)~(6)において、接着強度が3.00~3.88(N/mm)であり、十分な接着強度が確保できていることが分かる。また、表3で示すように、超高強度繊維補強コンクリートを打設する打ち継ぎ面に凹凸が形成されていない供試体(7)であっても、平均の接着強度の値が1.99となっている。この実施例の結果で分かるように、表面乾燥状態の供試体(5)の接着強度が一番高いことが分かる。つまり、超高強度繊維補強コンクリートの接着強度が高く、特に、供試体の打ち継ぎ面に凹凸が形成されていることで、供試体の打ち継ぎ面の散水することなく、高い接着強度を確保することが可能であることが分かる。これは、繊維補強セメント複合材料が高い保水力を有しているため、自らの水和反応に必要な水分を既存のコンクリート部材に吸収されないことにより、緻密で高強度な硬化体となり、ひいては、劣化因子の遮断性に優れた硬化体となっていると推測される。なお、接着強度は、この好ましい平均値の値として、1.90(N/mm)以上がよく、さらに、2.70(N/mm)以上がさらによく、3.00(N/mm)以上が最も好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1 コンクリート床版(既存コンクリート部材)
11 打ち継ぎ面
12 凸部
13 凹部
14 凹凸
21 セメントペースト
22 粗骨材
23 細骨材
2 舗装
3 ハツリ機
4 バキューム車
5 型枠
6 フロー板
7 超高強度繊維補強コンクリート(繊維補強セメント複合材料)
S11 切削工程
S12 凹凸形成工程
S12A 凹凸打ち継ぎ面形成工程(凹凸形成工程)
S13 打設工程
S14 養生工程
【要約】
【課題】打ち継ぎ面に散水する必要がなく、簡易かつ早期に施工することを可能とした無機材料の施工方法を提案すること。
【解決手段】無機材料の施工方法は、既存コンクリート部材に繊維補強セメント複合材料を打ち継ぐ無機材料の施工方法であって、前記既存コンクリート部材の表面に設けられている舗装を切削して前記既存コンクリート部材の打ち継ぎ面を露出させる切削工程S11と、切削工程S11で露出させた前記打ち継ぎ面に複数の凸部及び凹部を備える凹凸を形成する凹凸形成工程S12と、前記凹凸を形成された前記打ち継ぎ面に繊維補強セメント複合材料を直接打設する打設工程S13と、を含む。
【選択図】図1
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