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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】フランジ補強治具およびその取付方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20220920BHJP
   F16L 23/036 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
F16B7/04 301B
F16L23/036
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018159234
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020034042
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】597033085
【氏名又は名称】岡山市
(73)【特許権者】
【識別番号】397012923
【氏名又は名称】大成機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宗友 信夫
(72)【発明者】
【氏名】矢野 光信
(72)【発明者】
【氏名】安井 忍
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023659(JP,A)
【文献】特開2014-062613(JP,A)
【文献】特表2007-505267(JP,A)
【文献】特開2002-227812(JP,A)
【文献】特開2016-125599(JP,A)
【文献】特開2014-141995(JP,A)
【文献】特開2011-102619(JP,A)
【文献】特開平11-051270(JP,A)
【文献】特開2000-154894(JP,A)
【文献】特開2018-179015(JP,A)
【文献】米国特許第04538841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/04
F16B 2/12
F16L 23/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒状部材の端部から径外方向に突出した第一突出部と第二筒状部材の端部から径外方向に突出し前記第一突出部に対向する第二突出部とを挟持する第一挟持部材と、
前記第一挟持部材を締結する第一締結機構と、
第三筒状部材の端部から径外方向に突出した第三突出部と第四筒状部材の端部から径外方向に突出し前記第三突出部に対向する第四突出部とを挟持する第二挟持部材と、
前記第二挟持部材を締結する第二締結機構と、
前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを近接させる近接方向の力を印加する連結機構と、を備え、
前記連結機構は連結ボルトを有しており、当該連結ボルトは前記第一締結機構および前記第二締結機構と兼用されているフランジ補強治具。
【請求項2】
前記第一挟持部材は、第一挿入部と、前記近接方向に沿って前記第一挿入部を受け入れる第一被挿入部とを有し、
前記第二挟持部材は、第二挿入部と、前記近接方向に沿って前記第二挿入部を受け入れる第二被挿入部とを有している請求項1に記載のフランジ補強治具。
【請求項3】
前記第二締結機構は、前記第二挿入部に形成され前記連結ボルトに螺合される雌ねじ部と、前記第二被挿入部の外面を押圧する押圧ナットと、を有しており、
前記第二締結機構は、前記連結ボルトを前記雌ねじ部に螺合して締め付けることにより前記第二挿入部が前記第二被挿入部に引き寄せ固定される請求項2に記載のフランジ補強治具。
【請求項4】
前記第一締結機構は、前記第一被挿入部の外面を押圧して前記第一被挿入部の前記第一挿入部に対する相対位置を調整する位置調整ナットと、前記第一挿入部の外面を前記近接方向に押圧する近接ナットと、を有しており、
前記第一締結機構は、前記位置調整ナットにより前記相対位置が調整された状態で前記連結ボルトに前記近接ナットを螺合して締め付けることにより前記第一挿入部が前記第一被挿入部に引き寄せ固定される請求項3に記載のフランジ補強治具。
【請求項5】
前記第一挟持部材が前記第二挟持部材よりも鉛直方向の上側にあり、
前記第一挿入部が前記第一被挿入部よりも鉛直方向の上側にあり、前記第二被挿入部が前記第二挿入部よりも鉛直方向の上側にある請求項4に記載のフランジ補強治具。
【請求項6】
前記第一被挿入部のうち前記第二突出部の外側面を押圧する押圧部と前記第二被挿入部のうち前記第三突出部の外側面を押圧する押圧部とに亘って係止され、前記第一被挿入部の押圧部と前記第二被挿入部の押圧部との間隔を保持する間隔保持部材をさらに備えた請求項5に記載のフランジ補強治具。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフランジ補強治具の取付方法であって、
前記連結機構,前記第一締結機構および前記第二締結機構が仮止めされた状態の前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを、前記第一突出部および前記第二突出部と前記第三突出部および前記第四突出部とに近接移動させる第一工程と、
前記第一挿入部の押圧部を前記第一突出部の外側面に当接させると共に、前記第二被挿入部の押圧部を前記第三突出部の外側面に当接させる第二工程と、
前記押圧ナットが前記第二被挿入部の外面を押圧している状態で、前記連結ボルトを締め付けて前記第二挿入部を前記第二被挿入部に引き寄せ固定する第三工程と、
前記位置調整ナットを回転させて前記第一被挿入部の押圧部を前記第二突出部の外側面に当接させる第四工程と、
前記近接ナットを締め付けて前記第一挿入部を前記第一被挿入部に引き寄せ固定する第五工程と、を備えたフランジ補強治具の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両筒状部材の径外方向に突出した両突出部どうしを補強するフランジ補強治具およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁ケース(補修弁ケース)を短管(筒状部材)と弁箱(筒状部材)とで構成し、短管の端部から径外方向に突出した第一突出部と弁箱の端部から径外方向に突出した第二突出部とをボルトで接合した分割部に装着される補強治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の補強治具は、第一突出部と第二突出部とを挟持する挟持部材と、挟持部材を分割部の接合方向に引き寄せて固定する締結機構とを備え、これら挟持部材が第一突出部の外側面のうち、ボルトの頭部の周方向に沿った両側の領域を押圧する2つの押圧部を有している。この構成を備えることにより、補修弁の老朽化に伴いボルトが強度低下を招いている場合でも、補強治具によって分割部のボルト周りが補強され、分割部の隙間からの漏水を防止することができるものである。特に、特許文献1の補強治具は、ボルトの頭部の両側の領域を押圧しているので、補修弁ケースのようにボルトより径内方向の部位の空間が狭隘である場合でも装着することが可能であり、利便性が高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-23659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分割部を有する補修弁ケースの形状は様々なものが存在している。例えば、第一突出部や第二突出部の突出量が小さい補修弁ケースや、短管の外周面が連なって形成されており第一突出部を有さない補修弁ケースが存在している。第一突出部や第二突出部の突出量が極めて小さい補修弁ケースに特許文献1の補強治具を装着した場合、押圧部の押圧面積が小さくなるので、ボルト周りの補強が不十分となるばかりか補強治具が脱落するおそれがある。
【0006】
短管の外周面が連なって形成されており第一突出部を有さない補修弁ケースの場合、短管の上端に接続される空気弁ケースの接続管等の端部から突出したフランジと第二突出部との間の長い距離を引き寄せて固定する補強治具が必要となるので、補強治具の全体寸法が大きくなり、補強治具が全体的に大型化してしまう。また、弁箱のうち操作部が突出している部位には補強治具の装着が困難であるため、所望の離脱防止力を発揮することができないおそれがある。このように、様々な形状を有する補修弁全てにおいて、従来の補強治具で対応することが難しく改善の余地があった。
【0007】
そこで、両筒状部材の径外方向に突出した両突出部どうしを補強すると共に弁ケース分割部の補強も可能な作業効率の高いフランジ補強治具およびその取付方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフランジ補強治具の特徴構成は、第一筒状部材の端部から径外方向に突出した第一突出部と第二筒状部材の端部から径外方向に突出し前記第一突出部に対向する第二突出部とを挟持する第一挟持部材と、前記第一挟持部材を締結する第一締結機構と、第三筒状部材の端部から径外方向に突出した第三突出部と第四筒状部材の端部から径外方向に突出し前記第三突出部に対向する第四突出部とを挟持する第二挟持部材と、前記第二挟持部材を締結する第二締結機構と、前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを近接させる近接方向の力を印加する連結機構と、を備え、前記連結機構は連結ボルトを有しており、当該連結ボルトは前記第一締結機構および前記第二締結機構と兼用されている点にある。
【0009】
本構成のフランジ補強治具は、両筒状部材の両突出部を挟持する第一挟持部材と第二挟持部材とを近接させる連結機構を備えている。これにより、両筒状部材の両突出部を補強するだけでなく、第二筒状部材と第三筒状部材とが補修弁の短管と弁箱とで構成されている場合には、連結機構により第一挟持部材と第二挟持部材とを近接させることで弁ケース分割部の補強もすることができる。しかも、第一挟持部材と第二挟持部材との距離が離れている場合でも、連結機構の寸法のみを変更すれば良く、第一挟持部材および第二挟持部材の寸法を変更する必要がない。よって、フランジ補強治具が大型化することなく、製造コストを節約することができる。
【0010】
また、本構成では、連結機構の連結ボルトを、第一挟持部材を締結する第一締結機構と第二挟持部材を締結する第二締結機構とで兼用すれば、第一締結機構および第二締結機構に用いられるボルトの設置スペースが別途不要となるので、部品点数を少なくして製造コストを節約できると共にフランジ補強治具をコンパクトに構成できる。
【0011】
このように、両筒状部材の径外方向に突出した両突出部どうしを補強すると共に弁ケース分割部の補強も可能な作業効率の高いフランジ補強治具を提供できた。
【0012】
他の特徴構成は、前記第一挟持部材は、第一挿入部と、前記近接方向に沿って前記第一挿入部を受け入れる第一被挿入部とを有し、前記第二挟持部材は、第二挿入部と、前記近接方向に沿って前記第二挿入部を受け入れる第二被挿入部とを有している点にある。
【0013】
本構成のように、第一挟持部材および第二挟持部材を共に、挿入部と近接方向に沿って挿入部を受け入れる被挿入部とで構成すれば、筒状部材の軸方向(近接方向)による作業が多くなるため、作業効率を高めることができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記第二締結機構は、前記第二挿入部に形成され前記連結ボルトに螺合される雌ねじ部と、前記第二被挿入部の外面を押圧する押圧ナットと、を有しており、前記第二締結機構は、前記連結ボルトを前記雌ねじ部に螺合して締め付けることにより前記第二挿入部が前記第二被挿入部に引き寄せ固定される点にある。
【0015】
本構成では、筒状部材の軸方向(近接方向)の作業となる連結ボルトを締め付け操作することにより、第二挿入部を第二被挿入部に引き寄せ固定できるため、作業効率が高い。
【0016】
他の特徴構成は、前記第一締結機構は、前記第一被挿入部の外面を押圧して前記第一被挿入部の前記第一挿入部に対する相対位置を調整する位置調整ナットと、前記第一挿入部の外面を前記近接方向に押圧する近接ナットと、を有しており、前記第一締結機構は、前記位置調整ナットにより前記相対位置が調整された状態で前記連結ボルトに前記近接ナットを螺合して締め付けることにより前記第一挿入部が前記第一被挿入部に引き寄せ固定される点にある。
【0017】
本構成では、近接ナットを締め付けるだけで第一挿入部が第一被挿入部に引き寄せ固定されるので、作業効率が高い。
【0018】
他の特徴構成は、前記第一挟持部材が前記第二挟持部材よりも鉛直方向の上側にあり、前記第一挿入部が前記第一被挿入部よりも鉛直方向の上側にあり、前記第二被挿入部が前記第二挿入部よりも鉛直方向の上側にある点にある。
【0019】
本構成のように、第一挟持部材が第二挟持部材よりも上側にあり、近接ナットが外面に当接する第一挿入部が第一被挿入部よりも上側にあるため、近接ナットを上側から回転操作することで第一締結機構を機能させることが可能となり、連結ボルトを上側から回転操作することで連結機構および第二締結機構を機能させることが可能となる。つまり、連結機構、第一締結機構および第二締結機構を全て上側から操作することが可能となるため、筒状部材を収容しているマンホールと筒状部材との間隔が狭い場合でも工具を上側から操作することができる。よって、フランジ補強治具の装着にあたってマンホールを取り壊す必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0020】
他の特徴構成は、第一被挿入部のうち前記第二突出部の外側面を押圧する押圧部と前記第二被挿入部のうち前記第三突出部の外側面を押圧する押圧部とに亘って係止され、前記第一被挿入部の押圧部と前記第二被挿入部の押圧部との間隔を保持する間隔保持部材をさらに備えた点にある。
【0021】
本構成のように、位置調整ナットで下側への移動が規制された第一被挿入部の押圧部と、第二被挿入部の押圧部とに亘って間隔保持部材を設ければ、第二被挿入部が自重により下降して、第二被挿入部と第二挿入部との間隔が第三突出部および第四突出部の厚みよりも小さくなることが無い。その結果、上側からのフランジ補強治具を挿入すれば、第二被挿入部の押圧部および第二挿入部の押圧部を第三突出部および第四突出部の外側面に対向させることができる。よって、筒状部材を収容しているマンホールと筒状部材との間隔が狭い場合でも、フランジ補強治具の挿入にあたってマンホールを取り壊す必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0022】
本発明に係るフランジ補強治具の取付方法の特徴構成は、前記連結機構,前記第一締結機構および前記第二締結機構が仮止めされた状態の前記第一挟持部材と前記第二挟持部材とを、前記第一突出部および前記第二突出部と前記第三突出部および前記第四突出部とに近接移動させる第一工程と、前記第一挿入部の押圧部を前記第一突出部の外側面に当接させると共に、前記第二被挿入部の押圧部を前記第三突出部の外側面に当接させる第二工程と、前記押圧ナットが前記第二被挿入部の外面を押圧している状態で、前記連結ボルトを締め付けて前記第二挿入部を前記第二被挿入部に引き寄せ固定する第三工程と、前記位置調整ナットを回転させて前記第一被挿入部の押圧部を前記第二突出部の外側面に当接させる第四工程と、前記近接ナットを締め付けて前記第一挿入部を前記第一被挿入部に引き寄せ固定する第五工程と、を備えた点にある。
【0023】
本方法では、第一挟持部材および第二挟持部材を連結機構により一体化した状態で取付作業が実行されるので、夫々を個別に取付ける場合に比べて作業効率を高めることができる。また、第二挟持部材は連結ボルトを締め付けることで締結され、第一挟持部材は近接ナットを締め付けることで締結されるので、フランジ補強治具を迅速に取付けることができる。しかも、連結ボルトおよび近接ナットを全て上側から操作して連結機構、第一締結機構および第二締結機構を機能させることが可能となるため、筒状部材を収容しているマンホールと筒状部材との間隔が狭い場合でも工具を上側から操作することができる。よって、フランジ補強治具の装着にあたってマンホールを取り壊す必要がなく、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】筒状部材の斜視図である。
図2】分割部の平面図である。
図3】筒状部材の拡大縦断面図である。
図4】第一挟持部材の被挿入部の概略構成を示す図である。
図5】第一挟持部材の挿入部の概略構成を示す図である。
図6】第二挟持部材の被挿入部の概略構成を示す図である。
図7】第二挟持部材の挿入部の概略構成を示す図である。
図8】筒状部材の突出部にフランジ補強治具を取付けた状態を示す斜視図である。
図9】筒状部材の突出部にフランジ補強治具を取付けた状態を示す平面図である。
図10図9のX-X矢視図である。
図11】フランジ固定治具の取付方法の第一工程~第二工程を示す図である。
図12】フランジ固定治具の取付方法の第三工程を示す図である。
図13】フランジ固定治具の取付方法の第四工程~第五工程を示す図である。
図14】別実施形態1に係るフランジ補強治具の縦断面図である。
図15】別実施形態2に係るフランジ補強治具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るフランジ補強治具およびフランジ補強治具の取付方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0026】
本実施形態では、フランジ補強治具(以下、「補強治具P」と言う。)を用いて、両フランジ部11a,Vaおよび両フランジ部Ta,12aを補強すると共に、弁箱Vと短管Tとで構成される鋳鉄製の補修弁ケースXの分割部1に押付力を作用させることにより、分割部1からの漏水を防止する場合を説明する。
【0027】
図1図3には、接続管11(第一筒状部材の一例),短管T(第二筒状部材の一例),弁箱V(第三筒状部材の一例)および分岐管12(第四筒状部材の一例)と、短管Tと弁箱Vとの分割部1が示される。短管Tの一端には、弁箱Vの第二分割部1Bが接合される第一分割部1Aが、短管Tの径外方向に突出形成されている。短管Tの他端には、空気弁や消火栓などの接続管11の径外方向に突出した円盤状の接続フランジ部11a(第一突出部の一例)が取付けられる円盤状の短管フランジ部Ta(第二突出部の一例)が、短管Tの径外方向に突出形成されている。また、弁箱Vの一端には、短管Tの第一分割部1Aが接合される第二分割部1Bが、弁箱Vの径外方向に突出形成されている。弁箱Vの他端には、水道本管(不図示)の分岐管12の径外方向に突出した円盤状の分岐フランジ部12a(第四突出部の一例)が取付けられる円盤状の弁箱フランジ部Va(第三突出部の一例)が、弁箱Vの径外方向に延出形成されている。
【0028】
第一分割部1Aおよび第二分割部1Bは、平面視矩形状に形成されている。これら第一分割部1Aおよび第二分割部1Bには、後述するボール弁体Vbを回動操作可能な操作部10が接続されている。
【0029】
図2図3に示すように、第一分割部1Aには、接合方向(軸芯方向)に貫通する複数(本実施形態では4箇所)の貫通孔3aが周方向に離間して形成されている。また、第二分割部1Bには、接合面1bとは反対側が閉塞された複数の孔部3b(本実施形態では4箇所)が周方向に離間して形成されている。夫々の孔部3bの内周面には雌ねじ3cが形成されており、第二分割部1Bの外側面1aからボルト4が突出しないように、雄ねじ4bを雌ねじ3cに螺合することで第一分割部1Aおよび第二分割部1Bが接合されている。つまり、第一分割部1Aの外側面1aにはボルト4の頭部4aが露出しており、第二分割部1Bの外側面1aは、ボルト4が突出しない平坦面で構成されている。なお、本実施形態におけるボルト4は、頭部4aを有するボルトの例を示しているが、両ねじボルトをナットで締め付ける構成であっても良い。
【0030】
図1に示すように、空気弁や消火栓などの接続管11の接続フランジ部11aと短管Tの他端に形成された短管フランジ部Taとは、ボルト41a,ナット41bで連結されている。水道管などの分岐管12の分岐フランジ部12aと、弁箱Vの他端に形成された弁箱フランジ部Vaとは、ボルト42a,ナット42bで連結されている。
【0031】
図3に示すように、弁箱Vの内部には、ボール弁体Vbが収納されており、操作部10の開閉操作によりボール弁体Vbが回動し、流路の連通、非連通が切換えられる。
【0032】
以下、図1および図3に示す接続フランジ部11a,短管フランジ部Ta,第一分割部1A,第二分割部1B,弁箱フランジ部Vaおよび分岐フランジ部12aにおいて、夫々が連結部材により連結された際に接合方向(以下、「軸芯方向」と称する。)で相互に対向する面を接合面1bとし、この接合面1bと平行で軸芯方向に垂直な外表面を外側面1aとして説明する。また、鉛直方向に対して上側、下側として説明し、重力方向が下側となる。
【0033】
(補強治具の基本構成)
図8に示すように、補強治具Pは、両フランジ部11a,Taおよび両フランジ部Va,12aに装着される鋳鉄製の第一挟持部材10Aおよび第二挟持部材10Bと、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとを近接させる近接方向の力を印加する連結機構Rと、を備えている。また、補強治具Pは、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとの間隔を保持する間隔保持部材9を備えている。
【0034】
図8図10に示すように、第一挟持部材10Aは、接続管11の接続フランジ部11aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット41bの間の領域を押圧する2つの押圧部5Cを有する第一挿入部5と、短管Tの短管フランジ部Taの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト41aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部6Bを有する第一被挿入部6と、を備えている。また、これら第一挿入部5および第一被挿入部6を、接続管11の接続フランジ部11aおよび短管Tの短管フランジ部Taの接合方向に引き寄せて(近接させて)締付固定する第一締結機構Kaを備えている。本実施形態における第一締結機構Kaは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaが兼用されている。
【0035】
図5および図10に示すように、第一挿入部5は、金属部材により構成され、角筒部5Aと、角筒部5Aの外面5aから全周に亘って外方側に延出する鍔状部5Bと、鍔状部5Bの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部5Cとを一体的に備えている。角筒部5Aは、横断面視において、外面5aが接続フランジ部11aに近付くほど拡径する台形状を呈し、内面5bが円形状の有底角筒状で形成されている。
【0036】
角筒部5Aの内面5bは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿通可能となっている。鍔状部5Bは、接合方向と垂直な断面視で台形状に形成され、中央部分から角筒部5Aが延出している。押圧部5Cは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成されている。また、押圧部5Cのうち角筒部5A側の先端部位が、平坦な押圧面5eとして形成されている。
【0037】
図4および図10に示すように、第一被挿入部6は、金属部材により構成され、角筒部6Aと、角筒部6Aの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部6Bとを一体的に備えている。角筒部6Aは、横断面視(接合方向と垂直な断面視)において、外面6aおよび内面6bが短管フランジ部Taに近付くほど拡径する台形状を呈した有底角筒状で形成されている。また、押圧部6Bは、角筒部6Aの外面6aの四辺のうちの一辺から外方側に向かって二股状に延出して形成されている。
【0038】
角筒部6Aは、両フランジ部11a,Taの外周面と対向する内表面(外面6a)の周方向に沿った両端部に径内方向に突出して形成され、両フランジ部11a,Taに当接可能な当接部6hを有している。第一挿入部5と第一被挿入部6とを第一締結機構Kaで固定する際、当接部6hが両フランジ部11a,Taに当接することで、第一挟持部材10Aの回転が阻止される。
【0039】
角筒部6Aの内部には、両フランジ部11a,Taの接合方向に沿って、第一挿入部5の角筒部5Aを受け入れる筒状内部空間6cが形成されている。筒状内部空間6cは横断面視で台形状に形成され、断面台形状の第一挿入部5の角筒部5Aの外径よりも若干大きく形成されている。このため、第一挿入部5の角筒部5Aの外面5aと第一被挿入部6の角筒部6Aの内面6bとの接合方向に垂直な断面形状は、第一挿入部5を第一被挿入部6に挿入すると、挿入方向(筒状内部空間6cの長手方向)には摺動可能であるが、挿入方向周り(筒状内部空間6cの長手方向に沿った軸周り)での相対回転が不能となるように形成されている。
【0040】
また、筒状内部空間6cにおいて、押圧部6Bが形成された側とは反対側が開口形成されている。筒状内部空間6cにおける押圧部6Bが形成された側は、後述する連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿入可能な挿通孔6dが、角筒部5Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。
【0041】
押圧部6Bは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成され、先端側に行くにつれて挿通孔6dから遠ざかるテーパー形状に形成されている。また、押圧部6Bのうち筒状内部空間6cの開口側の先端部位が、平坦な押圧面6eとして形成されている。
【0042】
図10に示すように、第一締結機構Kaは、連結ボルトRaと近接ナット91と位置調整ナット92とを有している。第一挿入部5の押圧部5Cを接続管11の接続フランジ部11aの外側面1aに当接させた状態で、第一被挿入部6の外面6aに当接する位置調整ナット92を連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合することで、第一被挿入部6の押圧部6Bが短管Tの短管フランジ部Taの外側面1aに当接し、第一被挿入部6の第一挿入部5に対する相対位置が調整される。そして、近接ナット91を締め付けることにより、第一挿入部5および第一被挿入部6を両フランジ部11a,Taの接合方向に引き寄せて締結固定する。これにより、第一締結機構Kaが機能すると共に、第一挿入部5の押圧部5Cが接続管11の接続フランジ部11aを下側に押圧して分割部1の接合面1bからの漏水を防止するための連結機構Rが機能する。
【0043】
図8および図10に示すように、第二挟持部材10Bは、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット42bの間の領域を押圧する2つの押圧部7Bを有する第二被挿入部7と、分岐管12の分岐フランジ部12aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト42aの間の領域を押圧する2つの押圧部8Cを有する第二挿入部8と、を備えている。また、これら第二被挿入部7および第二挿入部8を、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaおよび分岐管12の分岐フランジ部12aの接合方向に引き寄せて(近接させて)締付固定する第二締結機構Kbを備えている。本実施形態における第二締結機構Kbは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaが兼用されている。
【0044】
図6および図10に示すように、第二被挿入部7は、金属部材により構成され、角筒部7Aと押圧部7Bとを一体的に備えている。角筒部7Aは、横断面視(接合方向と垂直な断面視)において、外面7aおよび内面7bが弁箱フランジ部Vaに近付くほど拡径する台形状を呈した有底角筒状で形成されている。また、押圧部7Bは、角筒部7Aの外面7aの四辺のうちの一辺から外方側に向かって二股状に延出して形成されている。
【0045】
角筒部7Aは、両フランジ部Va,12aの外周面と対向する内表面(外面7a)の周方向に沿った両端部に径内方向に突出して形成され、両フランジ部Va,12aに当接可能な一対の当接部7hを有している。第二被挿入部7と第二挿入部8とを第二締結機構Kbで固定する際、当接部7hが両フランジ部Va,12aに当接することで、第二挟持部材10Bの回転が阻止される。
【0046】
角筒部7Aの内部には、両フランジ部Va,12aの接合方向に沿って、後述する第二挿入部8の角筒部8Aを受け入れる筒状内部空間7cが形成されている。筒状内部空間7cは横断面視で台形状に形成され、台形状の角筒部8Aの外径よりも若干大きく形成されている。このため、第二挿入部8の角筒部8Aの外面8aと第二被挿入部7の角筒部7Aの内面7bとの接合方向に垂直な断面形状は、第二挿入部8を第二被挿入部7に挿入すると、挿入方向(筒状内部空間7cの長手方向)には摺動可能であるが、挿入方向周り(筒状内部空間7cの長手方向に沿った軸周り)での相対回転が不能となるように形成されている。
【0047】
また、筒状内部空間7cにおいて、押圧部7Bが形成された側とは反対側が開口形成されている。筒状内部空間7cにおける押圧部7Bが形成された側は、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿入可能な挿通孔7dが、角筒部7Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。
【0048】
押圧部7Bは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成され、先端側に行くにつれて挿通孔7dから遠ざかるテーパー形状に形成されている。また、押圧部7Bのうち筒状内部空間7cの開口側の先端部位が、平坦な押圧面7eとして形成されている。
【0049】
図7および図10に示すように、第二挿入部8は、金属部材により構成され、角筒部8Aと、角筒部8Aの外面8aから全周に亘って外方側に延出する鍔状部8Bと、鍔状部8Bの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部8Cとを一体的に備えている。角筒部8Aは、横断面視において、外面8aが分岐フランジ部12aに近付くほど拡径する台形状を呈し、内面8bが円形状の有底角筒状で形成されている。
【0050】
角筒部8Aの内面8bには、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を螺合可能な雌ねじ部8fが形成されている。鍔状部8Bは、接合方向と垂直な断面視で台形状に形成され、中央部分から角筒部8Aが延出している。押圧部8Cは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成されている。また、押圧部8Cのうち角筒部8A側の先端部位が、平坦な押圧面8eとして形成されている。
【0051】
図10に示すように、第二締結機構Kbは、連結ボルトRaと押圧ナット93と位置決めナット94とを有している。連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を第二挿入部8の角筒部8Aの内面8bの雌ねじ部8fに螺合し、位置決めナット94により押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧するように固定された状態で連結ボルトRaを締め付け、第二被挿入部7および第二挿入部8を両フランジ部Va,12aの接合方向に引き寄せて締結固定する。これにより、第二締結機構Kbが機能すると共に、第二挿入部8の押圧部8Cが分岐管12の分岐フランジ部12aを上側に押圧して分割部1の接合面1bからの漏水を防止するための連結機構Rが機能する。なお、第二被挿入部7の位置を固定するものであれば、押圧ナット93および位置決めナット94に限定されず、連結ボルトRaに一体化した溶接ピース等であっても良い。
【0052】
連結機構Rは、連結ボルトRaを有している。位置決めナット94により押圧ナット93を位置決めした状態で連結ボルトRaを締め付け、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとを近接移動させることで、補修弁ケースXの分割部1に押圧力を付与している。また、上述したように、第一締結機構Kaは、連結機構Rの連結ボルトRaに近接ナット91および位置調整ナット92を螺合して構成されており、第二締結機構Kbは、連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に押圧ナット93および位置決めナット94を螺合して構成されている。つまり、本実施形態における連結機構Rの連結ボルトRaは、締結機構Ka,Kbと兼用されており、連結ボルトRaを用いて、第一挿入部5および第一被挿入部6の引き寄せと、第二被挿入部7および第二挿入部8の引き寄せと、両挟持部材10A,10Bの近接移動とを実行することができる。
【0053】
図10に示すように、間隔保持部材9は、第一被挿入部6の押圧部6Bと第二被挿入部7の押圧部7Bとに亘って係止された弾性部材である。連結ボルトRaで連結された状態の両挟持部材10A,10Bを装着する際、間隔保持部材9の圧縮力により、位置調整ナット92が第一被挿入部6の外面6aを押圧するまで第一被挿入部6が引っ張られ、押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧するまで第二被挿入部7が引っ張られる。これによって、第一被挿入部6の押圧部6Bと第二被挿入部7の押圧部7Bとの間隔が維持される。その結果、第一挿入部5の押圧部5Cと第一被挿入部6の押圧部6Bとの間隔が維持されることで、両フランジ部11a,Taの外側面1aに対向するように、第一挟持部材10Aの押圧部5C,6Bを挿入することができる。また、第二被挿入部7の押圧部7Bと第二挿入部8の押圧部8Cとの間隔が維持されることで、両フランジ部Va,12aの外側面1aに対向するように、第二挟持部材10Bの押圧部7B,8Cを挿入することができる。
【0054】
続いて、補強治具Pの取付方法について、図11図13を用いて説明する。
【0055】
図11に示すように、位置調整ナット92,押圧ナット93および位置決めナット94を螺合した状態の連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を、第二挟持部材10Bの第二挿入部8の雌ねじ部8fに螺合して仮止めする。また、第二被挿入部7の外面7aを押圧ナット93が押圧している状態で、位置決めナット94により押圧ナット93が移動しないように位置固定している。そして、この連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に第一挟持部材10Aを挿入し、近接ナット91を螺合する。このとき、第一挿入部5の押圧部5Cと第二被挿入部7の押圧部7Bとの間隔は、接続フランジ部11aと弁箱フランジ部Vaとの間隔以上となるように、近接ナット91が第一挿入部5の外面5aから離間している。そして、第一被挿入部6の押圧部6Bと第二被挿入部7の押圧部7Bとに亘って間隔保持部材9を装着する。このとき、位置調整ナット92が第一被挿入部6の外面6aを押圧することにより第一挿入部5の押圧部5Cと第一被挿入部6の押圧部6Bとの間隔が維持されており、押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧することにより第二被挿入部7の押圧部7Bと第二挿入部8の押圧部8Cとの間隔が維持されている。このように、連結機構R,第一締結機構Kaおよび第二締結機構Kbが仮止めされた状態の第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとを、夫々両フランジ部11a,Taと両フランジ部Va,12aに対向する位置まで近接移動させる(第一工程)。
【0056】
次いで、第二被挿入部7の押圧部7Bを弁箱フランジ部Vaの外側面1aに当接させた状態で、第一挿入部5の押圧部5Cを接続フランジ部11aの外側面1aに当接させる(第二工程)。そして、第一挿入部5の押圧部5Cを接続フランジ部11aの外側面1aに当接させるとき、第一挿入部5の押圧部5Cを上側に移動させながら位置調整する。次いで、図12に示すように、押圧ナット93が第二被挿入部7の外側面1aを押圧している状態で、連結ボルトRaを締め付けることにより、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を第二挿入部8の雌ねじ部8fに螺合させて、第二挿入部8を第二被挿入部7に引き寄せ固定する(第三工程)。このとき、ラチェットレンチやスパナ等の工具(不図示)を用いて連結ボルトRaの頭部Ra1を締め付けることで第二挿入部8が上側に移動し、分岐フランジ部12aの外側面1aには第二挿入部8の押圧部8Cから上向きの力が作用するため、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとが近接移動する。これにより、両フランジ部Va,12aの接合面1bからの漏水を防止すると共に、分割部1の接合面1bからの漏水を防止することができる。このように、本実施形態では、連結ボルトRaの頭部Ra1を上側から操作可能な工具を用いて締め付けることで、連結機構Rの機能と第二締結機構Kbの機能とを同時に実行できるため、補修弁ケースXと補修弁ケースXを収容しているマンホール(不図示)との間の隙間が小さい場合でもマンホールを取り壊す必要がなく、効率的である。しかも、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとの距離が離れている場合でも、第一挟持部材10Aや第二挟持部材10Bの寸法を変更する必要がなく、連結ボルトRaの寸法のみを変更すれば良い。よって、補強治具Pが大型化することなく、製造コストを節約できる。
【0057】
次いで、図13に示すように、上側から手動により第一被挿入部6の外面6aを押圧している位置調整ナット92を回転させて第一被挿入部6の押圧部6Bを短管フランジ部Taの外側面1aに当接させる(第四工程)。この位置調整ナット92の回転操作は、マンホールの上部から手を挿入することで容易に行うことができる。次いで、ラチェットレンチやスパナ等の工具(不図示)を用いて近接ナット91を締め付けて、第一挿入部5を第一被挿入部6に引き寄せ固定する(第五工程、図8参照)。このとき、工具を用いて近接ナット91を締め付けることで第一挿入部5が下側に移動し、接続フランジ部11aの外側面1aには第一挿入部5の押圧部5Cから下向きの力が作用するため、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとが近接移動すると共に、分割部1を閉じる方向の力が作用する。これにより、両フランジ部Va,12aの接合面1bからの漏水を防止すると共に、分割部1の接合面1bからの漏水を防止することができる。本実施形態では、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した近接ナット91を上側から操作可能な工具を用いて締め付けることで、第一締結機構Kaを機能させることができるため、補修弁ケースXとマンホールとの間の隙間が小さい場合でもマンホールを取り壊す必要がない。
【0058】
このように、本実施形態では、連結機構Rの連結ボルトRaを第一締結機構Kaおよび第二締結機構Kbに兼用しているので、第一締結機構Kaおよび第二締結機構Kbを引き寄せ固定するボルトを別途設ける必要がなく、部品点数を節約して製造コストを節約できると共に、補強治具Pをコンパクトに構成できる。
【0059】
また、第一挟持部材10Aにおける第一挿入部5の第一被挿入部6に対する挿入方向や第二挟持部材10Bにおける第二挿入部8の第二被挿入部7に対する挿入方向は、連結機構Rによる第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとの近接移動方向と同方向であるため、該同方向による作業が多くなり、マンホールと補修弁ケースXとの間の隙間が小さい場合でもマンホールを取り壊す必要がない。
【0060】
しかも、本実施形態では、第一挟持部材10Aが第二挟持部材10Bよりも上側にあり、第一挿入部5が第一被挿入部6よりも上側にあり、第二被挿入部7が第二挿入部8よりも上側にある。この配置により、連結ボルトRaを上側から工具により回転操作することで連結機構Rおよび第二締結機構Kbを機能させることが可能となり、近接ナット91を上側から工具により回転操作することで第一締結機構Kaを機能させることが可能となる。つまり、連結機構R,第一締結機構Kaおよび第二締結機構Kbを全て上側から操作することが可能となるため、補修弁ケースXを収容しているマンホールと補修弁ケースXとの間隔が狭い場合でも、補強治具Pを装着することができる。よって、補強治具Pの装着にあたってマンホールを取り壊す必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0061】
なお、第一挟持部材10Aにあっては、第一被挿入部6が第一挿入部5よりも上側にあるように構成しても良い。本構成では、近接ナット91を締め付けることにより、第一被挿入部6と第一挿入部5とが引き寄せられる。この場合でも、上述した実施形態における作用効果を奏することができる。
【0062】
以下、別実施形態に係る補強治具Pについて、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、図面の理解を容易にするため、上述した実施形態と同じ部材名称および符号を用いて説明する。
【0063】
[別実施形態1]
図14に示すように、第二挟持部材10Bを第一挟持部材10Aと同一の構成としても良い。この場合、第二挟持部材10Bは、第一挟持部材10Aを上下反転させた状態となっている。つまり、第二挟持部材10Bは、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット42bの間の領域を押圧する2つの押圧部6Bを有する第一被挿入部6と、分岐管12の分岐フランジ部12aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト42aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部5Cを有する第一挿入部5と、を備えている。また、第二締結機構Kbは、連結ボルトRaと近接ナット91と位置調整ナット92とを有している。なお、本実施形態における連結ボルトRaは、寸切ボルトを採用しているが頭部を有するボルトを採用しても良い。
【0064】
本実施形態では、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した第二挟持部材10Bの近接ナット91を工具を用いて締め付けるとき、側方からの操作が必要となるが、補修弁ケースXとマンホールとの間に十分な空間があれば問題が無い。
【0065】
[別実施形態2]
図15に示すように、第二挟持部材10Bを第一挟持部材10Aよりも上側に配置しても良い。この場合、第二挿入部8が第二被挿入部7よりも上側にあり、第一被挿入部6が第一挿入部5よりも上側にあり、連結ボルトRaの頭部Ra1が最も下側にある。つまり、第一挟持部材10Aは、分岐管12(第一筒状部材の一例)の分岐フランジ部12a(第一突出部の一例)の外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト42aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部5Cを有する第一挿入部5と、弁箱V(第二筒状部材の一例)の弁箱フランジ部Va(第二突出部の一例)の外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット42bの間の領域を押圧する2つの押圧部6Bを有する第一被挿入部6と、を備えている。第二挟持部材10Bは、短管T(第三筒状部材の一例)の短管フランジ部Ta(第三突出部の一例)の外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト41aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部7Bを有する第二被挿入部7と、接続管11(第四筒状部材の一例)の接続フランジ部11a(第四突出部の一例)の外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット41bの間の領域を押圧する2つの押圧部8Cを有する第二挿入部8と、を備えている。
【0066】
本実施形態では、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を第二挿入部8の雌ねじ部8fに螺合することにより締め付けて、第二挿入部8を第二被挿入部7に引き寄せ固定する。このとき、工具を用いて連結ボルトRaの頭部Ra1を締め付けることで第二挿入部8が下側に移動し、接続フランジ部11aの外側面1aには第二挿入部8の押圧部8Cから下向きの力が作用するため、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとが近接移動する。次いで、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した第一挟持部材10Aの近接ナット91を工具を用いて締め付けることで、第一挿入部5を第一被挿入部6に引き寄せ固定する。このとき、工具を用いて近接ナット91を締め付けることで第一挿入部5が上側に移動し、分岐フランジ部12aの外側面1aには第一挿入部5の押圧部5Cから上向きの力が作用するため、第一挟持部材10Aと第二挟持部材10Bとが近接移動する。その結果、両フランジ部11a,Taおよび両フランジ部Va,12aの接合面1bからの漏水を防止すると共に、分割部1の接合面1bからの漏水を防止することができる。
【0067】
この場合、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した近接ナット91や連結ボルトRaの頭部Ra1を工具を用いて締め付けるとき、側方又は下方からの操作が必要となるが、補修弁ケースXとマンホールとの間に十分な空間があれば問題が無い。
【0068】
[その他の実施形態]
(1)連結ボルトRaは、雄ねじ部Ra2よりも径内方向に引退した頭部Ra1に限定されず、雄ねじ部Ra2よりも径外方向に突出した頭部Ra1であっても良い。
(2)2つの押圧部5C,6B,7B,8Cの間に、ボルト41a,42a又はナット41b,42bが配置されるように、挟持部材10A,10Bを配置しても良い。つまり、ボルト41a,42a又はナット41b,42bの両側に2つの押圧部5C,6B,7B,8Cが配置されることとなる。
(3)挟持部材10A,10Bの押圧部5C,6B,7B,8Cは、二股状に形成されたものに限定されず、単一の押圧部で構成しても良い。
(4)補強治具Pは、補修弁ケースXに用いる場合に限定されず、分割部1を有さない配管どうし、流体機器どうし、又は流体機器と配管の接合部に装着しても良く、あらゆる接合部からの漏水を防止するために用いることができる。また、補強治具Pを、接合部からの漏水を防止するために用いる場合に限定されず、接合部から他の液体や気体の漏出を防止するために用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、両筒状部材の径外方向に突出した両突出部どうしを補強するフランジ補強治具およびその取付方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1a :外側面
5 :第一挿入部
5C :押圧部
6 :第一被挿入部
6B :押圧部
7 :第二被挿入部
7B :押圧部
8 :第二挿入部
9 :間隔保持部材
10A :第一挟持部材
10B :第二挟持部材
11 :接続管(第一筒状部材)
11a :接続フランジ部(第一突出部)
12 :分岐管(第四筒状部材)
12a :分岐フランジ部(第四突出部)
91 :近接ナット
92 :位置調整ナット
93 :押圧ナット
Ka :第一締結機構
Kb :第二締結機構
P :補強治具(フランジ補強治具)
R :連結機構
Ra :連結ボルト
T :短管(第二筒状部材)
Ta :短管フランジ部(第二突出部)
V :弁箱(第三筒状部材)
Va :弁箱フランジ部(第三突出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15