(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】重心位置測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 1/12 20060101AFI20220920BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220920BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220920BHJP
B64F 5/60 20170101ALI20220920BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G01M1/12
B64C27/08
B64C39/02
B64F5/60
G01B21/00 F
(21)【出願番号】P 2018148044
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-043061(JP,A)
【文献】実開昭59-000917(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00 - 1/38
B64C 27/08
B64C 39/02
B64F 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の重心位置測定方法であって、
第1水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第1取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第1水平方向における釣り合いの取れている
状態における2本の前記冶具の支持する2点を結んだ第1重心
線を特定するステップと、
前記第1水平方向と直交する第2水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第2取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第2水平方向における釣り合いの取れている
状態における2本の前記冶具の支持する2点を結んだ第2重心
線を特定するステップと、
前記第1水平方向及び前記第2水平方向の双方と直交する垂直方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第3取付ステップと、
2本の前記冶具が前記第1水平方向及び前記第2水平方向で規定される水平面と平行になるように前記飛行体を横に倒した状態で、2本の当該冶具夫々を1点で支持した際に前記飛行体の
前記水平面と直交する第2水平面における釣り合いの取れた
2本の前記冶具の支持する2点を結んだ第3重心
線を特定するステップと、
前記第1重心
線と、前記第2重心
線と、前記第3重心
線との交点を前記飛行体の前記重心位置として特定するステップと、
を備える、重心位置測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の重心位置測定方法であって、
前記第1取付ステップは、前記冶具を前記第1水平方向における仮想直線と
直交する方向における少なくとも2点で前記飛行体に取り付けるステップであり、
前記第2取付ステップは、前記冶具を前記第2水平方向における仮想直線と
直交する方向における少なくとも2点で前記飛行体に取り付けるステップである、
重心位置測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の重心位置測定方法であって、
前記飛行体は少なくとも前記第1水平方向又は前記第2水平方向に延びる仮想直線状に配置されるモータ部を
複数有しており、前記2本の冶具は前記モータ部に取り付けられる、
重心位置測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載の重心位置測定方法に使用される、
平行な方向に長尺の細長い棒状の少なくとも2本の冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重心位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、「飛行体」と総称する)を利用して荷物の配達を行う試みがなされている。特許文献1には、飛行体による配達システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
小型飛行体の姿勢がどの様に変化しても、安定して鉛直下方又は上方の画像を撮影可能である航空写真システムも提供されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
図1及び
図2に示されるように、飛行体は、ジンバルを介して任意の方向に傾斜自在に支持されたカメラを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許公開公報2015-0120094 A1
【文献】特開2014-167413号公報
【文献】特開2016-219941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び特許文献3に開示されている技術は、いずれも、飛行体の姿勢制御に資する構造であるが、これらの構造は、必ずしも飛行体の重心位置を考慮した構造とは言えない。従って、突発的な風向きの変化や重量物(ペイロード)の変化によって姿勢を崩した場合、機体のバランスが崩れやすく落下の原因となる。
【0006】
一方で、複雑な構造の飛行体における重心の位置を事後的に特定する方法は今だ簡易的なものが提案されていない。
【0007】
そこで、本発明は、飛行体の重心位置を簡易的な方法で特定する方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
飛行体の重心位置測定方法であって、
第1水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第1取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第1水平方向における釣り合いの取れている第1重心点を特定するステップと、
前記第1水平方向と直交する第2水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第2取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第2水平方向における釣り合いの取れている第2重心点を特定するステップと、
前記第1水平方向及び前記第2水平方向の双方と直交する垂直方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第3取付ステップと、
2本の前記冶具が前記第1水平方向及び前記第2水平方向で規定される水平面と平行になるように前記飛行体を横に倒した状態で、2本の当該冶具夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第2水平面における釣り合いの取れた第3重心点を特定するステップと、
前記第1重心点と、前記第2重心点と、前記第3重心点との交点を前記飛行体の前記重心位置として特定するステップと、
を備える、重心位置測定方法が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飛行体の重心位置を簡易的な方法で特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態によるX方向の重心位置を特定するステップを示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるY方向の重心位置を特定するステップを示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態によるZ方向の重心位置を特定するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による電子部品は、以下のような構成を備える。
[項目1]
飛行体の重心位置測定方法であって、
第1水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第1取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第1水平方向における釣り合いの取れている第1重心点を特定するステップと、
前記第1水平方向と直交する第2水平方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第2取付ステップと、
2本の前記冶具の夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第2水平方向における釣り合いの取れている第2重心点を特定するステップと、
前記第1水平方向及び前記第2水平方向の双方と直交する垂直方向に平行に延びる2本の冶具を互いに離間した状態で前記飛行体に取り付ける第3取付ステップと、
2本の前記冶具が前記第1水平方向及び前記第2水平方向で規定される水平面と平行になるように前記飛行体を横に倒した状態で、2本の当該冶具夫々を1点で支持した際に前記飛行体の前記第2水平面における釣り合いの取れた第3重心点を特定するステップと、
前記第1重心点と、前記第2重心点と、前記第3重心点との交点を前記飛行体の前記重心位置として特定するステップと、
を備える、重心位置測定方法。
[項目2]
前記第1取付ステップは、前記冶具を前記第1水平方向における仮想直線と前記飛行体とが交差する少なくとも2点に取り付けるステップであり、
前記第2取付ステップは、前記冶具を前記第2水平方向における仮想直線と前記飛行体とが交差する少なくとも2点に取り付けるステップである、
重心位置測定方法。
[項目3]
項目2に記載の重心位置測定方法であって、
前記飛行体は少なくとも前記第1水平方向又は前記第2水平方向に延びる仮想直線状に配置されるモータ部を有しており、前記2本の冶具は前記モータ部に取り付けられる、
重心位置測定方法。
[項目4]
項目2又は項目3に記載の重心位置測定方法であって、
前記飛行体は少なくとも前記第1水平方向又は前記第2水平方向に延びる仮想直線状と少なくとも2点で交差するフレーム部を有しており、前記2本の冶具は前記フレーム部の前記2点に取り付けられる、
重心位置測定方法。
[項目5]
項目2乃至項目4のいずれかに記載の重心位置測定方法であって、
前記飛行体は少なくとも前記第1水平方向又は前記第2水平方向に延びる仮想直線状と少なくとも2点で交差するプロペラガード部を有しており、前記2本の冶具は前記プロペラガード部の前記2点に取り付けられる、
重心位置測定方法。
[項目6]
項目1乃至項目5のいずれかに記載の重心位置測定方法であって、
前記第3取付ステップにおける前記冶具は、前記第1取付ステップ又は前記第2取付ステップにおいて取り付けられた冶具に取り付けられる、
重心位置測定方法。
[項目7]
項目1乃至項目6のいずれかに記載の重心位置測定方法に使用される冶具。
【0012】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<概略>
本発明の実施の形態による重心位置測定方法は、ドローン等の飛行体の重心位置を測定するための方法である。本実施の形態による重心位置測定方法は、X方向における重心が存在し得る仮想直線(「X方向重心線」と呼ぶ)と、Y方向における重心が存在し得る仮想直線及びZ方向における重心が存在し得る仮想直線の交点を飛行体の上記重心と推定するものである。
【0014】
以下、X方向重心線を測定するステップ(第1取付ステップおよび第3重心点を特定するステップ)、Y方向重心線を測定するステップ(第2取付ステップおよび第3重心点を特定するステップ)、Z方向重心線を測定するステップ(第3取付ステップおよび第3重心点を特定するステップ)の順に説明する。
【0015】
第1取付ステップでは、まず、
図1に示されるように、モータ1a、1b、1c、1dに2本の冶具を取り付ける。冶具はX向と平行な方向に長尺の細長い棒状のものである。第1治具2aはモータ1a、1bに取り付け、第2治具2bはモータ1c、1dに取り付ける。これにより、2本の冶具2a、2bは、機体に固定される。
【0016】
第1重心点を特定するステップでは、この2つの治具を利用し、機体を釣り上げる。それぞれの治具のある1点ずつP1、P2を支持点として、機体を空中に釣り上げ、機体が水平なバランスを保持するようなP1、P2の位置を特定する。その位置のP1、P2を通る線分をG1とする。このとき、G1を含みZ方向に対して平行な平面に機体の重心が存在する。
【0017】
第2取付ステップでは、まず、
図2に示されるように、モータ1a、1b、1c、1dに2本の治具を取り付ける。治具はY向と平行な方向に長尺の細長い棒状のものである。第3治具2cはモータ1a、1cに取り付け、第4治具2dはモータ1b、1dに取り付ける。これにより、2本の治具2、2dは、機体に固定される。
【0018】
第2重心点を特定するステップでは、この2つの治具を利用し、機体を釣り上げる。それぞれの治具のある1点ずつP3、P4を支持点として、機体を空中に釣り上げ、機体が水平なバランスを保持するようなP3、P4の位置を特定する。その位置のP3、P4を両端とした線分をG2とする。G2を含んでおり、かつ、Z方向に対して平行な平面は、機体の重心を含んだ平面である。
【0019】
第3取付ステップでは、まず、
図3に示されるように、機体を水平方向に対して90°傾けた状態でおく。そして、Z方向の負の向き側にある、モータ1c、1dに、それぞれ、第5治具2e及び第6治具2fを取り付ける。治具はY向と平行な方向に長尺の細長い棒状のものである。これにより、2本の治具2e、2fは、機体に固定される。
【0020】
第3重心点を特定するステップでは、この2つの治具を利用し、機体を釣り上げる。それぞれの治具のある1点ずつP5、P6を支持点として、機体を空中に釣り上げ、機体が水平なバランスを保持するようなP5、P6の位置を特定する。その位置のP5、P6を両端とした線分をG3とする。G3を含んでおり、かつZ方向に平行な平面は、機体の重心を含んだ平面である。
【0021】
上記の全ステップを踏んで得られた3平面が交わる一点は、機体の重心である。以上の手順により、機体重心位置を測定する。
【符号の説明】
【0022】
1a~1d モータ
2a 第1治具
2b 第2治具
2c 第3治具
2d 第4治具
2e 第5治具
2f 第6治具
G1 第1重心線
G2 第2重心線
G3 第3重心線
P1~6 支持点