IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マジカナテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-屋根安全具取付金具 図1
  • 特許-屋根安全具取付金具 図2
  • 特許-屋根安全具取付金具 図3
  • 特許-屋根安全具取付金具 図4
  • 特許-屋根安全具取付金具 図5
  • 特許-屋根安全具取付金具 図6
  • 特許-屋根安全具取付金具 図7
  • 特許-屋根安全具取付金具 図8
  • 特許-屋根安全具取付金具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】屋根安全具取付金具
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/00 20060101AFI20220920BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20220920BHJP
   A62B 35/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
E04D15/00 V
E04G21/32 D
A62B35/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018166562
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020037841
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509308469
【氏名又は名称】マジカナテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】仲嶋 一郎
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110423(JP,A)
【文献】米国特許第05687535(US,A)
【文献】特開2003-155804(JP,A)
【文献】特開2017-223108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00-15/07
E04D 13/00
E04G 21/32
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体および安全具取付具を備える、屋根安全具取付金具であって、
該基板本体が、表面側において、略平行に配置された少なくとも2つの凸条部と、該凸条部の間に配置されておりかつ該表面側から裏面側に貫通する複数のネジ孔を有する第1凹条部とを備え、最も外側に配置された該凸条部の外側に、平坦な屋根材に対して密着する底部を有し、かつ該凸条部に対応して、該裏面側に裏面凹条部を有し、そして
安全具取付具の両端が該基板本体の該第1凹条部を挟んで跨るように一方側の該凸条部と他方側の該凸条部にそれぞれ固定されている、屋根安全具取付金具。
【請求項2】
最も外側に配置された前記凸条部の外側に、該凸条部と略平行に配置された第2凹条部が設けられている、請求項1に記載の屋根安全具取付金具。
【請求項3】
前記第1凹条部が、該第1凹条部の軸方向に沿って前記ネジ孔を覆うシャッター板を備える、請求項1または2に記載の屋根安全具取付金具。
【請求項4】
さらに、前記基板本体を覆うカバーを備え、かつ前記安全具取付具が、該カバーを介して該基板本体の前記凸条部に固定されている、請求項1からのいずれかに記載の屋根安全具取付金具。
【請求項5】
前記安全具取付具がアイストラップである、請求項1からのいずれかに記載の屋根安全具取付金具。
【請求項6】
建築物の屋根上に、請求項1からのいずれかに記載の屋根安全具取付金具を配置して構成される、屋根構造であって、
該屋根安全具取付金具が、該屋根上で、該屋根安全具取付金具の基板本体に設けられた第1凹条部が水平方向を指向するように配置されており、
該基板本体がネジによって該ネジ孔を介して該屋根の下部に配置された野地板と固定されており、そして
該屋根安全具取付金具の安全具取付具が露出している、屋根構造。
【請求項7】
前記屋根が化粧スレート屋根である、請求項に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根上に取り付けて安全ロープ等の留め具として用いることができる屋根安全具取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根上などの高所作業時には、落下事故を未然に防止するために、作業者は安全ロープ(安全帯)を装着することが一般的である。そして、この安全ロープの他端は、屋根上などの高所に一時的または恒久的に高所に取り付けられた安全具取付金具に固定される。
【0003】
このような安全具取付金具について、すでにいくつかの形態のものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、両端部にフック用ループが設けられたワイヤーロープを用い、一端のループを瓦の下に固定し、かつ瓦の間から外に出した他端のループに安全ロープを固定することができる安全帯取付用金具が提案されている。特許文献2では、座金に立設された支柱に環金具(シャックル)を取り付けた屋根上作業用安全金具が提案されている。特許文献3では、野地板に固着する固着部と、瓦尻側端部に掛止される掛止部と、軒側方向に延べる連結部と、作業者の安全帯が取り付けられる取付部とを備えた屋根用安全金具が提案されている。
【0005】
しかし、これらの取付用金具には、以下のような課題も存在する。例えば、特許文献1の安全帯取付用金具は、作業者が移動する毎に瓦の下から伸びるワイヤーロープ自体も動くため、ワイヤーロープが瓦と接触して破損するおそれがある。特許文献2の屋根上作業用安全金具は、支柱の設置高さに起因して引抜耐力が充分であるとは言えず、そして金具の取付および取り外しに時間を要するため、作業性に劣ると考えられる。特許文献3の屋根用安全金具は、多くの折り曲げ部を有するために製造上の手間とコストが掛かり、また当該折り曲げ部自体は延び易く引っ張り強度や引抜耐力が低下することが考えられる。
【0006】
さらに、近年では、住宅等の屋根の軽量化や屋根材自体の生産性向上等の観点から、セメントと補強繊維とを加圧成型して得られる「化粧スレート」と呼ばれる屋根材が多く採用されている。こうした化粧スレートを用いた屋根にも目立たず容易かつ強固に取り付けることのできる屋根安全具取付金具が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3113301号公報
【文献】実用新案登録第3162625号公報
【文献】特開2011-58254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、化粧スレートなどの屋根材を配置した屋根上にも容易に取り付けることができ、かつ効率良く生産することのできる屋根安全具取付金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板本体および安全具取付具を備える、屋根安全具取付金具であって、
該基板本体が、表面側において、略平行に配置された少なくとも2つの凸条部と、該凸条部の間に配置されておりかつ該表面側から裏面側に貫通する複数のネジ孔を有する第1凹条部とを備え、かつ最も外側に配置された該凸条部の外側に、平坦な屋根材に対して密着する底部を有し、かつ該凸条部に対応して、該裏面側に裏面凹条部を有し、そして
安全具取付具の両端が該基板本体の該第1凹条部を挟んで跨るように一方側の該凸条部と他方側の該凸条部にそれぞれ固定されている、屋根安全具取付金具である。
【0010】
1つの実施形態では、最も外側に配置された上記凸条部の外側に、該凸条部と略平行に配置された第2凹条部が設けられている。
【0012】
1つの実施形態では、上記第1凹条部は、該第1凹条部の軸方向に沿って上記ネジ孔を覆うシャッター板を備える。
【0013】
1つの実施形態では、本発明の屋根安全具取付金具は、さらに上記基板本体を覆うカバーを備え、かつ上記安全具取付具は、該カバーを介して該基板本体の上記凸条部に固定されている。
【0014】
1つの実施形態では、上記安全具取付具はアイストラップである。
【0015】
本発明はまた、建築物の屋根上に、上記屋根安全具取付金具を配置して構成される、屋根構造であって、
該屋根安全具取付金具が、該屋根上で、該屋根安全具取付金具の基板本体に設けられた第1凹条部が水平方向を指向するように配置されており、
該基板本体がネジによって該ネジ孔を介して該屋根の下部に配置された野地板と固定されており、そして
該屋根安全具取付金具の安全具取付具が露出している、屋根構造である。
【0016】
1つの実施形態では、上記屋根は化粧スレート屋根である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、瓦以外の屋根材(例えば、化粧スレート)で構成される屋根上への取り付けが容易となる。本発明の屋根安全具取付金具はまた、低重心の構造体で構成されていることから、屋根上の外観を損なうことなく、良好な引っ張り強度や引抜耐力を確保することができる。それにより、一端が作業者に繋がれた安全ロープの他端を確実かつ強固に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の屋根安全具取付金具の一例を示す、当該屋根安全具取付金具の斜視図である。
図2図1に示す屋根安全具取付金具の幅方向の断面図である。
図3図1に示す屋根安全具取付金具を屋根上に配置した状態を説明するための本発明の屋根構造の模式断面図である。
図4】本発明の屋根安全具取付金具の他の例を示す斜視図である。
図5図4に示す本発明の屋根安全具取付金具の幅方向の断面図である。
図6図5に示す本発明の屋根安全具取付金具の底面に配置される防水シートの一例を示す、当該防水シートの平面図である。
図7】本発明の屋根安全具取付金具の別の例を示す模式図であって、(a)は、当該屋根安全具取付金具の平面図であり、(b)は(a)に示す屋根安全取付金具のA-A断面図であり、そして(c)は(a)に示す屋根安全取付金具のB-B断面図である。
図8】本発明の屋根安全具取付金具のさらに別の例を示す模式図であって、(a)は、当該屋根安全具取付金具の平面図であり、(b)は(a)に示す屋根安全取付金具のA-A断面図であり、そして(c)は(a)に示す屋根安全取付金具のB-B断面図である。
図9図7に示す本発明の屋根安全具取付金具を屋根上に配置した状態を説明するための本発明の屋根構造の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の屋根安全具取付金具の一例を示す当該取付金具の斜視図である。
【0020】
本発明の屋根安全具取付金具100は、基板本体110と安全具取付具160とを備える。
【0021】
基板本体110は、矩形でありかつ少なくとも表側において凹凸面を備える金属製の部品である。図1において、基板本体110の表面側には、2つの凸条部112,114が基板本体110の長さ方向に対して、互いに略平行となるように配置されている。凸条部112,114はそれぞれ略平坦な上面116,118を有し、該上面116,118上に後述する安全具取付具160が固定されている。上面116,118は、凸条部112,114の軸方向に沿って配置されている。なお、本発明において、基板本体に設けることのできる凸条部の数は必ずしも2つに限定されず、例えば、2つまたはそれ以上の凸条部が設けられていてもよい。
【0022】
さらに、基板本体110には、凸条部112,114の間に第1凹条部120が設けられている。
【0023】
第1凹条部120は溝状の形態を有し、凸条部112,114と略平行に配置されている。第1凹条部120はまた、凸条部112,114の上面116,118と段差を生じる底面122を有する。底面122は略平坦であり、第1凹条部120の軸方向に沿って配置されている。底面122には、第1凹条部120の表面側から裏面側に貫通する複数のネジ孔124が、例えば略均等な間隔を空けて設けられている。ここで、本明細書中に用いられる用語「ネジ」とは、締め付けにより固定することのできるねじ山が切られた部品を総称していい、ビス、ボルト、木ねじのような雄ネジを包含する。さらに、本明細書中に用いられる用語「ネジ孔」とは、上記ネジによる固定のために設けられた孔を指していう。ネジ孔124のサイズは必ずしも限定されないが、例えば、4mm~10mmである。第1凹条部120に設けられるネジ孔124の数は必ずしも限定されないが、例えば2個~10個である。
【0024】
第1凹条部120にはまた、内側面において水平方向にも第1の水平溝125が設けられていてもよい。この第1の水平溝125は、後述するシャッター板を基板本体110の幅方向端部から挿入し、屋根への取付の際にネジ孔124を貫通するネジの頭部を覆い隠すことができる。これにより、第1凹条部120への雨水の浸入を防止または低減させることが可能となる。
【0025】
基板本体110には、凸条部112,114と略平行に配置された第2凹条部126,128が設けられていてもよい。
【0026】
第2凹条部126,128はそれぞれ溝状の形態を有し、凸条部112,114の外側(すなわち、基板本体110に対して、最も外側に配置された凸条部の外側)に配置されている。第2凹条部126,128は、凸条部112,114の上面116,118と段差を生じる底面130,132を有する。底面130,132は略平坦である。ここで、第2凹条部126,128の底面130,132は、第1凹条部120の底面部122とは、基板本体110の底部134から同一の高さとなるように配置されていてもよく、あるいは異なる高さとなるように配置されていてもよい。なお、第2凹条部126,128のさらに外側は、基板本体110の外側面の一部として、長さ方向における壁面136,138を構成する。
【0027】
一方、図1において、基板本体110の幅方向の側面は、上記壁面136,138のように閉鎖されておらず、凸条部112,114、第1凹条部120,および第2凹条部126,128の端面がそのまま現れるように開放されている。これにより、本発明の屋根安全具取付金具100が屋根上に固定された後、屋根上に降った雨水や砂埃は基板本体110の幅方向の側面を通じて外部に排出可能となる。
【0028】
図2は、図1に示す屋根安全具取付金具の幅方向の断面図である。
【0029】
図2に示すように、屋根安全具取付金具100を構成する基板本体110の裏面側には、上記凸条部112,114に対応する位置に裏面凹条部140,142が設けられている。裏面凹条部140,142は溝状の形態を有し、図示しない第2のネジ孔を介して凸条部112,114の上面116,118と連通している。裏面凹条部140,142に設けられる溝は、第2のネジ孔を貫通するネジ150(例えば、六角ボルト)の頭部の厚みを収容することができる大きさ(深さ)となるように設計されている。裏面凹条部140,142に設けられる溝がこのような大きさを有していることにより、基板本体110に安全具取付具160がネジ150によって固定された際、図2に示すように、ネジ150の頭部は裏面凹条部140,142の溝の中に全て収容され、基板本体110の底部134からネジ150の頭部が突出することを防止される。その結果、本発明の安全具取付金具100は、化粧スレートなどの平坦な屋根材に対して外周に隙間を作ることなく、底部134を密着して配置することができる。
【0030】
裏面凹条部140,142にはまた、内側面において水平方向にも第2水平溝152,153が設けられていてもよい。この第2水平溝152,153には、予めスプリングワッシャー154を基板本体110の幅方向端部から挿入しておくことにより、ナット156による軽い締め付けでも、ネジ150のネジ先155を基板本体110の表面側に向けた状態に保持することができる。こうした構成は、本発明の屋根安全具取付金具100を屋根に配置する際、安全具取付具160を予め基板本体110に固定する必要性から解放される。すなわち、例えば、安全具取付具160を予め基板本体110に固定した状態で屋根上に配置することができるだけでなく、屋根上に先に基板本体110を配置した後に、安全具取付具160を当該基板本体110に固定して、屋根上で本発明の屋根安全具取付金具100を完成させることもできるからである。
【0031】
本発明において、基板本体110は、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチールなどの金属から構成されており、押出、切削等の当業者に公知の方法で製造することができる。なお、基板本体110の外表面は、必要に応じて防錆処理がなされていてもよい。
【0032】
本発明において、基板本体110の大きさは必ずしも限定されないが、例えば、長さが90mm~280mmであり、幅が60mmから180mmであり、そして厚みが7mm~30mmである。
【0033】
再び図1を参照すると、本発明の屋根安全具取付金具100を構成する安全具取付具160は、例えば、一部が湾曲した形状を有し、上記基板本体110の凸条部112,114に固定されている。安全具取付具160は、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチールなどの金属から構成されており、例えば、アイストラップである。
【0034】
安全具取付具160の両端では、凸条部112,114から延びるネジ先155が貫通し、ナット156によって堅く締め付けられている。
【0035】
なお、図1では、安全具取付具160は、基板本体110の幅方向と略平行に配置されるように、第1凹条部120を挟んで、一方の凸条部112と他方の凸条部114との間で固定されている。当該固定によって、安全具取付具160の下方には、第1凹条部120の溝とともにより大きな空間が形成される。このため、安全具取付具160の下方の開口が大きくなり、作業者が自らの体に固定した安全ロープの他方の先端部に取り付けられた安全具を安全具取付具160に装着し易くなるという利点がある。さらに、このような配置では、安全具取付具160自体の湾曲を小さくしても、当該安全具取付具160の下方には、依然として相応の開口を設けることができる。結果として、作業者による安全具の装着し易さを保持したまま、屋根安全具取付金具100自体の高さを小さくすることができ、屋根上に配置した際の外観低下を防止するだけでなく、屋根に配置した後に作業者が作業することによって屋根安全具取付金具100が屋根から離脱するリスクも低減することができる。屋根安全具取付金具100の高さが小さいほど、屋根安全具取付金具100と屋根とに固定するネジへの引抜耐力を高めることができるからである。
【0036】
しかし、本発明において安全具取付具160の固定様式は、図1に示す実施形態にのみに限定されない。例えば、屋根安全具取付金具100と屋根とに固定するネジに対して、充分な引抜耐力が得られる場合には、安全具取付具160は、基板本体110の幅方向と直交して配置されるように、その両端が一方の凸条部112(または他方の凸条部114)のみに固定されていてもよい。
【0037】
さらに、図1では、上記安全具取付具160は、基板本体110上に1つのみが固定されている。しかし、本発明において基板本体110に固定される安全具取付具160の数は1つに限定されない。1つの基板本体110に対して、複数の安全具取付具が固定されていてもよい。
【0038】
図3は、図1に示す屋根安全具取付金具を屋根上に配置した状態を説明するための本発明の屋根構造の模式断面図である。
【0039】
図3に示すように、本発明の屋根安全具取付金具100は、化粧スレートのような屋根材で構成される屋根180上に配置され、第1凹条部120のネジ孔124に、当該第1凹条部120の表面側から裏面側に向かってネジ170を通し、屋根180の下部に配置された野地板182、好ましくは野地板182と当該野地板182の下方に配置された垂木184、まで螺着させることにより、屋根安全具取付金具100を屋根180上で強固に固定した屋根構造200を得ることができる。本発明の屋根構造200を構成するネジ169は、例えば、ネジ部分170(例えば、ビス)のネジ部にブチルゴムなどの耐水性材料が被覆されたブチルゴム付きビスであってもよい。本発明において、ネジ169としてこのようなブチルゴム付きビスを用いることにより、野地板182に固定した際、ネジ部分170は野地板182を貫通して強固に固定される一方で、耐水性材料でなる被覆は、野地板182内部には入らず、野地板182の表面で団子状に盛り上がり環状のシール材171を構成することができる。このようにして得られたシール材171は、ネジ部分170が野地板182に貫通する箇所からの漏水を防ぐことができる。また、本発明の屋根構造200では、外観の向上およびネジ170を介して雨水による漏水の防止のために、ネジ169の頭部は、第1凹条部120に設けられた第1の水平溝125にシャッター板172を挿入することにより覆い隠されていてもよい。
【0040】
なお、このような屋根構造において、屋根安全具取付金具100は、基板本体100の第1凹条部120が水平方向を指向するように屋根180上に配置されることが好ましい。
【0041】
このような配置によれば、作業者が安全具を介して屋根安全具取付金具100の安全具取付具160を引っ張った場合、図3の点Pを支点として、当該支点Pから安全具取付具160に取り付けられた安全具までの距離を最短にすることができる。その結果、当該支点Pと当該安全具との間のモーメントが最小となり、ネジ170の引き抜き方向にかかる荷重を最小にして、ネジ170の引抜耐力を向上させることができる。
【0042】
さらに、このような配置によれば、屋根の上流側から流れついた雨水は、屋根安全具取付金具100の壁面136で堰き止められ、屋根安全具取付金具100の外周を伝って下流側に流すことが可能となる。これにより、屋根安全具取付金具100内部に雨水が入り、ネジ170を介して漏水するリスクを低減することもできる。
【0043】
図4は、本発明の屋根安全具取付金具の他の例を示す斜視図である。
【0044】
本発明の屋根安全具取付金具300は、基板本体(図示せず)に、当該基板本体を覆うカバー302を備え、安全具取付部160がカバー302を介して基板本体に固定されている。
【0045】
次に。図4に示す本発明の屋根安全具取付金具300の幅方向における断面図を図5として示す。なお、図5において、図1と共通する構成には同一の符号が付されている。
【0046】
図5に示す屋根安全具取付金具300において、カバー302は、基板本体110、好ましくは基板本体110の外周および上方を覆っており、金属(例えば、アルミニウム、鉄、銅、およびステンレススチール)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フッ素樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレレンサルファイド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂)などの材料で構成されている。カバー302の内部の大きさは、内部への漏水を防ぐために、基板本体110を略またはほとんど隙間のない精度で設計されていることが好ましい。
【0047】
本発明の屋根安全具取付金具300では、安全具取付具160は、その両端がカバー302を介して基板本体110の凸条部112,114から突出したネジ先115を貫通し、かつ当該ネジ先115をナット156によって堅く締め付けていることにより固定されている。
【0048】
本発明の屋根安全具取付金具300はまた、基板本体110の底部134全面に防水シート304が配置されていてもよい。防水シート304は、図6に示すように矩形の外観を有し、図5に示す基板本体110のネジ孔124に対応する位置に孔306が設けられている。さらに、防水シート304は、基板本体110の底部134と略同一の形状に設計されている。なお、防水シート304の厚みは特に限定されず、当業者によって適切な厚みが選択され得る。このような防水シート304は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)のような耐水性を有する材料から構成されている。
【0049】
このように本発明の屋根安全具取付金具300は、カバー302および防水シート304によって、あらゆる角度からの基板本体110への水の浸入を防止することができる。これにより、屋根上に配置した際に、本発明の屋根安全具取付金具300からの漏水のリスクを一層低減することが可能となる。なお、このような防水シートは、図1に示す屋根安全具取付具にも適用することができる。
【0050】
図7は、本発明の屋根安全具取付金具の別の例を示す模式図であって、(a)は、当該屋根安全具取付金具の平面図であり、(b)は(a)に示す屋根安全取付金具のA-A断面図であり、そして(c)は(a)に示す屋根安全取付金具のB-B断面図である。なお、図7において、図1と共通する構成には同一の符号が付されている。
【0051】
図7に示す屋根安全具取付金具400は、基板本体410と、当該基板本体410に固定された安全具取付具160とを備える。
【0052】
基板本体410には、第1凹条部120に設けられた複数のネジ孔124に加えて、凸条部112,114の外側に配置された2つの第2凹条部126,128のうち、一方の第2凹条部128の底面132にも複数のネジ孔424が、例えば略均等な間隔を空けて設けられている。ネジ孔424のサイズは必ずしも限定されないが、基板本体410に設けられたネジ孔124と同一であっても異なっていてもよい。さらに、第2凹条部128に設けられるネジ孔424の数もまた必ずしも限定されず、基板本体410に設けられたネジ孔124の数と同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
図7の(a)~(c)に示すように、ネジ孔124とネジ孔424とは基板本体410の幅方向において重ならないように、第1凹条部120の底面122および第2凹条部128の底面132上にそれぞれ設けられている。ネジ孔124およびネジ孔424がこのように配置されていることにより、上下、左右、斜めに引っ張っても強固に安定した引抜耐力を確保することができる。
【0054】
図7に示す屋根安全具取付金具400は、例えば、図1に示す屋根安全具取付金具100と比較して、基板本体410全体に設けられるネジ孔の数(すなわち、ネジ孔124およびネジ孔424の合計の数)を増加させることができる。これにより、屋根上への取付強度を高めることができる。
【0055】
図8は、本発明の屋根安全具取付金具のさらに別の例を示す模式図であって、(a)は、当該屋根安全具取付金具の平面図であり、(b)は(a)に示す屋根安全取付金具のA-A断面図であり、そして(c)は(a)に示す屋根安全取付金具のB-B断面図である。なお、図8において、図1と共通する構成には同一の符号が付されている。
【0056】
図8に示す屋根安全具取付金具500は、基板本体510と、当該基板本体510に固定された安全具取付具160とを備える。
【0057】
基板本体510には、第1凹条部120に設けられた複数のネジ孔124に加えて、凸条部112,114の外側に配置された2つの第2凹条部126,128の底面130,132にも複数のネジ孔524a,524bが、例えば略均等な間隔を空けて設けられている。ネジ孔524a,524bのサイズは必ずしも限定されないが、基板本体510に設けられたネジ孔124と同一であっても異なっていてもよい。さらに、第2凹条部126,128に設けられるネジ孔524a,524bの数もまた必ずしも限定されず、基板本体510に設けられたネジ孔124の数と同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
図8の(a)~(c)に示すように、ネジ孔124とネジ孔524a、および/またはネジ孔124とネジ孔524bとは基板本体510の幅方向において重ならないように、第1凹条部120の底面122および第2凹条部126,128の底面130,132上にそれぞれ設けられている。これにより、上下、左右、斜めに引っ張っても強固に安定した引抜耐力を確保することができる。
【0059】
図8に示す屋根安全具取付金具500は、例えば、図1に示す屋根安全具取付金具100と比較して、基板本体510全体に設けられるネジ孔の数(すなわち、ネジ孔124およびネジ孔524a,524bの合計の数)を増加させることができる。これにより、屋根上への取付強度を一層高めることができる。
【0060】
図9は、図7に示す本発明の屋根安全具取付金具を屋根上に配置した状態を説明するための本発明の屋根構造の模式断面図である。なお、図9において、図3と共通する構成には同一の符号が付されている。
【0061】
図9に示すように、本発明の屋根安全具取付金具400は、化粧スレートのような屋根材で構成される屋根180上に配置され、第1凹条部120のネジ孔124および第2凹条部128のネジ孔424に、それぞれネジ169a,169bを通し、屋根180の下部に配置された野地板182、好ましくは野地板182と当該野地板182の下方に配置された垂木184、まで螺着させることにより、屋根安全具取付金具400を屋根180上で強固に固定した屋根構造600を得ることができる。
【0062】
なお、このような屋根構造600において、屋根安全具取付金具400は、第2凹条部128に設けられたネジ孔424が、第1凹条部120に設けられたネジ孔124よりも屋根180の上流側に位置するように配置されることが好ましい。
【0063】
このような配置によれば、作業者が安全具を介して屋根安全具取付金具400の安全具取付具160を引っ張る際、図9の点P’が支点となるが、この場合、屋根安全具取付金具400には、支点P’、ネジ孔124およびネジ169aによって得られるモーメント(モーメントAという)と、当該モーメントAを上回る支点P’、ネジ孔424およびネジ169bによって得られるモーメント(モーメントBという)との合計(モーメントA+モーメントB)を得ることができる。その結果、図9に示す屋根構造600では、ネジ169a,169bの合計の引抜耐力を一層高めることができる。
【0064】
このように、本発明の屋根安全具取付金具によれば、屋根上に配置した際の引っ張り強度や引抜耐力を高め、作業者が屋根上でより安全に作業することができる。さらに、本発明の屋根安全具取付金具は優れた耐久性および耐漏水性も有する点で有用である。
【符号の説明】
【0065】
100,300,400,500 屋根安全具取付金具
110,410,510 基板本体
112,114 凸条部
116,118 上面
120 第1凹条部
124,424,524a,524b ネジ孔
125 水平溝
126,128 第2凹条部
136,138 壁面
140,142 裏面凹条部
152,153 第2水平溝
160 安全具取付具
169,169a,169b ネジ
172 シャッター板
180 屋根
182 野地板
184 垂木
200,600 屋根構造
302 カバー
304 防水シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9